(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076652
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240530BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240530BHJP
G01N 27/9093 20210101ALI20240530BHJP
G01S 15/88 20060101ALI20240530BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
G01N21/84 C
G01N27/9093
G01S15/88
B25J15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188319
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】隅井 唯
(72)【発明者】
【氏名】野阪 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 建也
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 裕輔
【テーマコード(参考)】
2G051
2G053
3C707
5J083
【Fターム(参考)】
2G051AA89
2G051AB12
2G051AC19
2G051CB01
2G051DA03
2G053AA11
2G053AB21
2G053BA03
2G053DA01
2G053DB19
2G053DB26
3C707AS13
3C707AS14
3C707AS23
3C707BS12
3C707FS01
3C707FT02
3C707KS33
3C707KV18
3C707KX06
3C707MT04
5J083AA02
5J083AB20
5J083AC40
5J083AD30
5J083AE01
5J083AF01
5J083CA32
(57)【要約】
【課題】装置と被測定物との位置関係を制御して表面の状態を適切に検出できる姿勢を実現する検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】被測定物に対して送信波を送信する送信部および送信波が被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部を有する検出器2と、被測定物を吸着して当該被測定物と検出器2との相対位置を規制する吸着器3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に対して送信波を送信する送信部および前記送信波が前記被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部を有する検出器と、
前記被測定物を吸着して当該被測定物と前記検出器との相対位置を規制する吸着器と、を備える検査装置。
【請求項2】
前記吸着器を複数備える請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
それぞれの前記吸着器の動作の有無を独立に制御できる請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検出器が、前記被測定物に当接する当接面を有し、
それぞれの前記吸着器が、前記被測定物に当接する吸着パッドを有し、
少なくとも二つの前記吸着パッドが、前記当接面と平面を画定する配置で設けられている請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検出器および前記吸着器を支持し、かつ、前記検出器および前記吸着器を移動させる移動手段と、
前記被測定物の位置を特定する位置特定手段と、
少なくとも前記移動手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段が、前記位置特定手段により特定された前記被測定物の位置に、前記検出器および前記吸着器を移動させるように、前記移動手段を制御する請求項1~4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記移動手段がロボットアームである請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検出器が前記被測定物に当接する力を検出する力センサをさらに備え、
前記移動手段が、前記力センサにより検出される力が所定の範囲になるように、前記検出器を移動させる請求項5に記載の検査装置。
【請求項8】
被測定物に対して送信波を送信する送信部および前記送信波が前記被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部を有する検出器と、前記被測定物を吸着する吸着器と、を備える検査装置を用いる検査方法であって、
前記吸着器に前記被測定物を吸着させる吸着工程と、
前記吸着器に吸着されている前記被測定物の表面の状態を前記検出器によって検出する検出工程と、を含む検査方法。
【請求項9】
前記検査装置が、さらに、前記検出器および前記吸着器を支持し、かつ、前記検出器および前記吸着器を移動させる移動手段と、前記被測定物の位置を特定する位置特定手段と、少なくとも前記移動手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記吸着工程より前に、
前記位置特定手段が前記被測定物の位置を特定する位置特定工程と、
前記制御手段が、前記位置特定手段により特定された前記被測定物の位置に、前記検出器および前記吸着器を移動させるように、前記移動手段を制御する移動工程と、をさらに含む請求項8に記載の検査方法。
【請求項10】
前記移動手段がロボットアームである請求項9に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装やコーティングなどに代表される種々の産業分野において、製品等の表面の状態に興味がもたれており、被測定物の表面の状態を検出する種々の装置が提案されている。
【0003】
たとえば、特開2011-27599号公報(特許文献1)には、検査器に取り付けられるアタッチメントを複数有し、それらのアタッチメントを適宜選択して使用することで、被検査物の色、光沢度、ブロンズ現象等を一つの光源と一つのセンサとで検査可能とする技術が開示されている。また、特開2017-58139号公報(特許文献2)には、受光部への赤外光の入射を抑制した測色計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-27599号公報
【特許文献2】特開2017-58139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面の状態を検出する各種の測定を正確に行うためには、測定を実施する装置と被測定物との位置関係を適切に制御することが求められる。この種の装置は、被測定物の表面または塗装等に覆われた基材に対して何らかの物理的な働きかけをして、その反応を検出することによって表面の状態を検出することが多いため、被測定物の表面に対して装置が適切な姿勢で配置されることが、測定精度を高めるために望まれるのである。しかし、特許文献1および特許文献2の技術では、測定を実施する装置と被測定物との位置関係について、十分に検討されていなかった。
【0006】
そこで、装置と被測定物との位置関係を制御して表面の状態を適切に検出できる姿勢を実現する検査装置および検査方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る検査装置は、被測定物に対して送信波を送信する送信部および前記送信波が前記被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部を有する検出器と、前記被測定物を吸着して当該被測定物と前記検出器との相対位置を規制する吸着器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る測定方法は、被測定物に対して送信波を送信する送信部および前記送信波が前記被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部を有する検出器と、前記被測定物を吸着する吸着器と、を備える検査装置を用いる検査方法であって、前記吸着器に前記被測定物を吸着させる工程と、前記吸着器に吸着されている前記被測定物の表面の状態を前記検出器によって検出する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、吸着器によって被測定物と検出器との相対位置を規制できるので、表面の状態を適切に検出できる姿勢を実現できる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1中のII線の方向で検出器および吸着器を見た図である。
【
図3】
図1中のIII線の方向で検出器および吸着器を見た図である。
【
図4】実施形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】第一の段階の後の検出器および吸着器とバンパーとの位置関係を示す図である。
【
図6】第二の段階の後の検出器および吸着器とバンパーとの位置関係を示す図である。
【
図7】変形例における検出器および吸着器の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る検査装置および検査方法の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る検査装置を、自動車用バンパーB(被測定物の一例である。以下、単に「バンパーB」と称する。)の検査に供される検査装置1、および検査装置1を用いてバンパーBを検査する検査方法、に適用した例について説明する。なお、バンパーBは、検査装置1による検査を受ける前に塗装が施されたものであり、検査装置1による検査はその塗装品質を評価することを目的とする。また、バンパーBは、搬送装置(不図示)により搬送されて検査装置1が設置されているブースに進入し、当該ブース内で検査を受ける。
【0014】
〔検査装置の構成〕
本実施形態に係る検査装置1は、検出器2と、吸着器3と、力センサ4と、ロボットアーム5(移動手段の一例である。)と、スキャナ6(位置特定手段の一例である。)と、制御装置7(制御手段の一例である。)と、を備える(
図1~
図4)。検出器2および吸着器3はロボットアーム5の先端に支持されており、このうち検出器2は力センサ4を介して支持されている。検出器2、吸着器3、ロボットアーム5、スキャナ6、および力センサ4は、いずれも制御装置7と通信可能である。なお
図2において、各要素間の関係について、機械的な接続を実線で、配管接続を一点鎖線で、電気的接続を破線で、それぞれ示している。
【0015】
検出器2は、バンパーBの表面の状態を検出する装置である。検査装置1による検査はバンパーBの塗装品質の評価を目的としており、検出器2は、具体的には、測色計、膜厚計、探傷試験機、などの装置、またはこれらの測定器が複合された装置、として公知の装置でありうる。
【0016】
上記の例示から明らかなように、検出器2は、典型的には接触型の測定器であり、バンパーBのうちの測定対象とする被測定部位B1に検出器2の当接面21を接触させた状態で、表面の状態の検出が行われる。この場合、検出器2を用いた測定を適切に行うためには、当接面21を被測定部位B1に適切な力で当接させることが望ましい。ここでいう適切な力の大きさは、検出器2の仕様および被測定物(本実施形態ではバンパーB)の剛性などによって決定づけられる。すなわち、被測定物(バンパーB)の変形や検出器2への環境光の進入などの誤差要因を避けられるように、適切な力の大きさが決定されうる。
【0017】
なお、検出器2は非接触型の測定器であってもよい。この場合、検出器2を用いた測定を適切に行うためには、当接面21と被測定部位B1との相対位置を適切に制御することが望ましい。より詳細には、当接面21と被測定部位B1との相対位置が、検出器2の仕様に適合した相対位置であり、かつ複数回の測定において再現されることが望まれる。なお、ここでは検出器2が接触型の測定器である場合と共通して説明するために、便宜上「当接」面というが、検出器2が非接触型の測定器である場合は、当接面21は被測定物と当接しない。
【0018】
吸着器3は、バンパーBを吸着する装置である。吸着器3は、たとえば真空吸着器であり、バンパーBに当接する吸着パッド31と、吸着パッド31に接続されたエジェクタ32と、吸着パッド31A、31Bを支持するブラケット33と、を含む(
図1~
図4)。ブラケット33は、検出器2と平行に延びている。
【0019】
検出器2は、被測定物に対して送信波を送信する送信部22と、送信波が被測定物に当たることにより生じる返信波を受信する受信部23と、を有する。検出器2は、送信波を発信して被測定物に何らかの作用を与え、その作用によって生じる返信波を検出することによって、被測定物の表面の状態を検出する。
【0020】
第一の例として、検出器2が測色計である場合は、送信部22は被測定物に対して可視光を照射する光源であり、受信部23は反射光を検出する光センサである。この例では、可視光の照射が送信波の送信にあたり、反射光の検出が返信波の受信にあたる。照射する可視光の波長が一定であれば、反射光の波長は被測定物の表面の色調に依存するので、反射光を検出することによって被測定物の表面の色調を特定できる。
【0021】
第二の例として、検出器2が超音波式膜厚計である場合は、送信部22は被測定物に対して超音波を発信する超音波源であり、受信部は被測定物において反射した超音波を受信する受信機である。ここでは、超音波の発信が送信波の送信にあたり、反射した超音波の受信が返信波の受信にあたる。この例では、送信部22が発信した超音波が被測定物の基材に反射して受信部23に検出されるまでの時間をもとに塗膜の厚さを決定する。
【0022】
第三の例として、検出器2が探傷試験機である場合は、一つのコイルが送信部22および受信部23を兼ねており、当該コイルが被測定物に渦電流を生じさせる電磁波を発信するとともに、当該渦電流による磁場の変化を検出して傷の有無を特定する。ここでは、電磁波の発信が送信波の送信にあたり、磁場の検出が返信波の受信にあたる。
【0023】
このように、送信波は検出器2の検出原理に応じて決定される何らかの波であり、紫外光、可視光、赤外光、マイクロ波、などの電磁波や、超音波域、可聴域、または超低周波の音波、などでありうるが、これらに限定されない。また、返信波は、送信波の種類および検出対象の物性により決定付けられ、送信波が反射したものや、送信波によって誘導されて生じたもの、などでありうる。
【0024】
吸着パッド31は弾性変形可能な部材(たとえばポリプロピレンなど)で形成されている。検出器2および吸着器3(吸着パッド31)がいずれもロボットアーム5に支持されていることから、吸着器3がバンパーBを吸着することで、バンパーB(特に被測定部位B1)と検出器2(特に当接面21)との相対位置を規制できる。本実施形態では、二つの吸着器3(3A、3B)が設けられており、吸着器3A、3Bは、それぞれ独立に、吸着パッド31A、31Bおよびエジェクタ32A、32Bを有する。エジェクタ32A、32Bはロボットアーム5に固定されている。
【0025】
検出器2および吸着器3A、3Bは、二つの吸着パッド31A、31Bを結ぶ直線を外れた位置に当接面21が配置されるように、設けられている(
図3)。すなわち、当接面21および二つの吸着パッド31A、31Bは、これらの三点により平面を画定できる配置で設けられている。この配置により、当接面21および吸着パッド31A、31Bが全てバンパーBに当接したときに、当接状態が安定しやすい。なお、ここでいう当接面21および吸着パッド31A、31Bの位置は、当接面21に正対する方向から見たとき(すなわち
図3の視点である。)の各部材の中心をもって特定する。
【0026】
吸着器3の通常の状態において、吸着パッド31は、当接面21より前方に位置している。ここで前方とは、当接面21を被測定部位B1に近づける方向(
図2の右方向)をいい、後方はその逆である。
【0027】
吸着パッド31が当接面21より前方に位置していることによって、検出器2および吸着器3をバンパーB(被測定部位B1)に近づけるときに、吸着パッド31が検出器2に先行してバンパーBに近づく。吸着パッド31とバンパーBとの距離が近づくと、バンパーBが吸着パッド31に引き寄せられたのちに、当接面21が被測定部位B1に当接する、という順序で、測定可能な状態が完成する。なお、吸着パッド31はバンパーBを吸着したときに変形し、吸着パッド31より後方に配置されている当接面21がバンパーBに当接することを妨げない。
【0028】
また、従来は、被測定物の剛性が低い場合などに、検出器を押し付ける際に被測定物の裏側から検出器および被測定物を押さえる必要があった。これは、裏側を押さえること無く検出器を押し付けたときに、被測定物が変形してその品質を損なったり、そもそも適切な測定姿勢を実現することが難しかったりするためであった。一方、本実施形態では、吸着器3の作用によって被測定物を引き寄せて測定姿勢を実現するため、被測定物の裏側から押さえることなく、適切な測定姿勢を実現できる。
【0029】
力センサ4は、検出器2の基端部(当接面21の反対側である。)とロボットアーム5との間に介在する配置で設けられている。力センサ4は、検出器2をバンパーBに押し付ける場合に、その押し付ける力を検出できる。
【0030】
本実施形態において、吸着器3によってバンパーBを吸着する方法に替えて、検出器2をバンパーBに押しつける方法(すなわち従来の検査装置と同様の方法である。)で測定を行なうことは、妨げられない。力センサ4は、この態様で測定を行う際に適切な測定姿勢を実現しやすくする役割を果たす。すなわち、この押し付ける力の大小は、バンパーBに対して検出器2を押し付ける態様で当接させる姿勢の適否を示す指標となりうるので、押し付ける力が適切な水準となるようにロボットアーム5を制御すれば、適切な測定姿勢が実現されうる。すなわち、力センサ4により検出される力が所定の範囲になるように、検出器2を移動させるとよい。
【0031】
本実施形態に係るロボットアーム5としては、たとえば、六軸垂直多関節型の産業用ロボットとして公知のものを使用できる。ロボットアーム5は、その先端に装着された検出器2および吸着器3を、所望の位置に、所望の経路で移動させることができる。ロボットアーム5の動作は、あらかじめ制御装置7に保存された教示プログラムに従って制御される。かかる教示プログラムの形式は任意であり、教示点を各軸パルスの形式で記憶するもの、教示点をワールド座標系空間座標の形式で記憶するもの、などを使用できる。
【0032】
スキャナ6は、バンパーBをスキャンしてその位置および形状を三次元的に検出できる装置である。スキャナ6は、検査装置1が設置されているブース内に、検出器2、吸着器3、ロボットアーム5、および力センサ4を含むユニットと別体に設けられている。
【0033】
制御装置7は、検査装置1の各部の動作を制御する装置であり、産業用ロボット(本実施形態ではロボットアーム5)の動作を制御する制御装置として公知のものを使用できる。また、制御装置7は、検出器2、吸着器3、力センサ4、およびスキャナ6の制御および検出された信号の処理も担う。
【0034】
〔検査装置の制御および検査方法〕
次に、検査装置1を用いる検査方法について説明する。なお、以下では、検出器2が接触型の測定器である場合の例について説明する。本実施形態に係る検査方法は、吸着器3にバンパーBを吸着させる第一の段階と、吸着器3に吸着されているバンパーBに検出器2を接触させる第二の段階と、吸着器3に吸着されているバンパーBの表面の状態を検出器2によって検出する第三の段階と、を含む。
【0035】
なお、一連の手順を実現するための検査装置1の各部の動作は、制御装置7によって制御される。また、一連の手順を開始する前において、検査装置1は、検出器2および吸着器3がバンパーBから離れた位置にあり、吸着パッド31が当接面21より前方に位置している状態にある(
図2)。
【0036】
(1)第一の段階
検査装置1が設置されているブース内に測定対象のバンパーBが搬入されると、スキャナ6がバンパーBをスキャンして、その位置および形状を三次元的に検出する(位置特定工程)。この検出信号は、制御装置7に入力される。制御装置7は、あらかじめ入力されているマスターデータにおけるバンパーBの位置および形状と、スキャナ6によって実測されたバンパーBの位置および形状と、を比較して、マスターデータと現状との乖離度を特定する。
【0037】
続いて制御装置7は、被測定部位B1の位置および当該被測定部位B1に対して検出器2および吸着器3を当接させる姿勢に関するマスターデータ中の情報を、特定された乖離度に基づいて補正する。その後、特定された情報に基づいてロボットアーム5を操作して、検出器2および吸着器3を被測定部位B1に移動させる(移動工程)。
【0038】
吸着器3をバンパーB(被測定部位B1)に近づけると、吸着パッド31が検出器2に先行してバンパーBに近づく。吸着パッド31とバンパーBとの距離が近づくと、吸着パッド31の吸着力がバンパーBに作用して、バンパーBが吸着パッド31に引き寄せられる(
図5、吸着工程)。
【0039】
(2)第二の段階
吸着器3(吸着パッド31)に引き寄せられたバンパーBは当接面21に対して引き付けられ、これによって、当接面21が被測定部位B1に対して適切な姿勢および力で当接している状態が完成する(
図6)。たとえば、エジェクタ32の出力を調節するなどの方法で吸着パッド31の吸着力を制御することによって、検出器2がバンパーBに当接する力を適切な範囲に制御できる。また、ここでいう適切な姿勢とは、検出器2の仕様などにより決定づけられるが、典型的には、検出器2がバンパーBに垂直に当接する姿勢や当接面21が被測定部位B1に正体する姿勢などとして特定されうる。
【0040】
(3)第三の段階
その後、検出器2を動作させて、バンパーB(被測定部位B1)の表面の状態を検出する(検出工程)。たとえば検出器2が測色計である場合、色調の測定は環境光の影響を受けやすいため、正確な測定を行うためには当接面21に環境光が入り込まないようにすることが望まれる。本実施形態では、検出器2とバンパーBとの姿勢を当接面21が被測定部位B1に正体する姿勢に規制し、受信部23に環境光が入り込みにくい状態を実現しているので、色調を正確に測定しやすい。
【0041】
また、たとえば検出器2が超音波式膜厚計である場合、送信部22が発信した超音波がバンパーBの基材に反射して受信部23に検出されるまでの時間をもとに塗膜の厚さを決定する。そのため、塗膜の厚さを正確に測定するためには、当接面21が被測定部位B1に正体していることが望まれる。本実施形態では、検出器2とバンパーBとの姿勢を当接面21が被測定部位B1に正体する姿勢に規制しているので、塗膜の厚さを正確に測定しやすい。
【0042】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る検査装置および検査方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0043】
上記の実施形態では、二つの吸着器3(3A、3B)が設けられている構成を例として説明したが、本発明において吸着器の数は限定されない。ただし、吸着器が複数設けられている方が、吸着器に吸着される被測定物の姿勢が安定しやすいため、好ましい。また、吸着器が複数設けられる場合は、それぞれの吸着器の動作の有無を独立に制御できることが好ましい。たとえば、三つ以上の吸着器を設けて、被測定物の測定対象の部位の形状に合わせてそれぞれの吸着器の動作の有無を制御すれば、当該部位の形状にかかわらず検出器の適切な測定姿勢を実現しやすい。
【0044】
吸着器を四つ設けた変形例を
図7に示す。
図7では、
図3と同様の視点で、検出器2(当接面21)と吸着器3(吸着パッド31)との位置関係を示している。当変形例に係る検査装置では、長方形の四つの頂点にあたる位置に四つの吸着器3(吸着パッド31)が設けられており、当該長方形の中心にあたる位置に検出器2(当接面21)が設けられている。
【0045】
上記の実施形態では、二つの吸着パッド31A、31Bが当接面21と平面を画定する配置で設けられている構成を例として説明したが、この構成に限定されない。たとえば、上記のように吸着器が単数であってもよく、この場合は明らかに当接面と吸着パッド(単数である。)とが平面を画定しない。また、二つの吸着パッドを結ぶ線分上に当接面が配置されている場合も、これらの三点は平面を画定しない。
【0046】
上記の実施形態では、検出器2および吸着器3がロボットアーム5に支持されている構成を例として説明した。しかし本発明に係る検査装置は、ロボットアームを備えない構成でありうる。たとえば、検出器および吸着器を備える可搬型の検査装置も、本発明の一つの実施形態である。この場合も、被測定物と検出器との位置関係を吸着器によって規制できるので、従来のポータブル型の検査装置に比べて適切な測定姿勢を実現しやすい。また、測定器が接触式の測定器である場合に、測定器を押し付ける際に、被測定物の裏側から測定器および被測定物を押さえる力を必要としない。
【0047】
なお、上述のように、吸着器によって被測定物を吸着する方法に替えて、検査部を被測定物に押しつける方法(すなわち従来の検査装置と同様の方法である。)でも測定を行なえるように、本発明を構成してもよい。この場合は、吸着器を前後方向に移動できるようにして、実施する測定方法に応じて検出器(当接面)と吸着器(吸着パッド)との相対位置を選択できるようにするとよい。なお、後者の方法が採用される場合は、検査部を押しつけられた被測定物の移動および変形を抑制するため、被測定物の裏側において測定器および被測定物を押さえる措置を講ずることが望ましく、具体的には、被測定物の裏側に支持部材(不図示)を配置する、または手を添える、といった方法が採用されうる。ただし、被測定物の剛性等の条件によっては、かかる措置を要さない場合もある。
【0048】
上記の実施形態では、位置特定手段の一例としてのスキャナ6を備える構成を例として説明した。しかし本発明において、位置特定手段の有無は任意である。また、位置特定手段を設ける場合、上記に例示したスキャナのほか、カメラや光電管などを用いてもよい。
【0049】
上記の実施形態では、検査装置1が力センサ4を備える構成を例として説明したが、本発明において力センサの有無は任意である。
【0050】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 :検査装置
2 :検出器
21 :当接面
22 :送信部
23 :受信部
3 :吸着器
31 :吸着パッド
4 :力センサ
5 :ロボットアーム
6 :スキャナ
7 :制御装置