(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007666
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】エアゾール容器用の吐出部材及びそれを備えた吐出製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20240112BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B65D83/20 100
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108887
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和之
【テーマコード(参考)】
3E014
4F033
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC02
3E014PC03
3E014PD01
3E014PE06
3E014PE07
3E014PE14
3E014PE17
3E014PE24
4F033RA02
4F033RC01
4F033RC08
4F033RC15
(57)【要約】
【課題】2重梃子を用いたエアゾール容器用の吐出部材の改良を図る。
【解決手段】第1梃子部材20と、第2梃子部材30と、第1梃子部材20と第2梃子部材30とをそれぞれ回動可能に取り付ける基体40とを備え、第1梃子部材20の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材30の回動に用いられ、第2梃子部材30の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器2のバルブ機構4aの吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、第1梃子部材20が、第1梃子部材20を回動させるために被吐出物Mに押し当てられる押し当て部21を備え、押し当て部21が被吐出物Mに押し当てられた際に吐出予定部Pを取り囲む、周方向に連続する連続壁Cを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1梃子部材と、
第2梃子部材と、
第1梃子部材と第2梃子部材とをそれぞれ回動可能に取り付ける基体と、を備え、
第1梃子部材の回動で得られる梃子の力が第2梃子部材の回動に用いられ、第2梃子部材の回動で得られる梃子の力がエアゾール容器のバルブ機構の吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、
第1梃子部材が、第1梃子部材を回動させるために被吐出物に押し当てられる押し当て部を備え、
被吐出物に押し当て部が押し当てられた際に吐出予定部を取り囲む、周方向に連続する連続壁を備えている、
エアゾール容器用の吐出部材。
【請求項2】
押し当て部が連続壁を備え、
連続壁と基体とがそれぞれ開口端を有し、
押し当て部の開口端と基体の開口端とが共に被吐出物に向くようにして、押し当て部が基体に収容されており、
押し当て部の開口端を被吐出物に押し当てたとき、押し当て部の開口端と基体の開口端とが略同一平面上に並ぶようにして、押し当て部が基体に取り付けられている、
請求項1記載のエアゾール容器用の吐出部材。
【請求項3】
押し当て部が連続壁を備え、
押し当て部を被吐出物に押し当てる前は連続壁に囲まれ、押し当て部を被吐出物に押し当てたときは連続壁から突出する吐出ノズルを備えている、
請求項1記載のエアゾール容器用の吐出部材。
【請求項4】
第1梃子部材の回動を規制する規制部材を備えている、
請求項1記載のエアゾール容器用の吐出部材。
【請求項5】
上記請求項1から4のいずれかに記載のエアゾール容器用の吐出部材と、
エアゾール容器と、を備える、吐出製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられる吐出部材およびそれを備えた吐出製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被噴射面に押圧操作部材を押し当てることでステムを押し下げて内容物を噴射する噴射部材において、第1梃子部材と第2梃子部材とからなる2段梃子(2重梃子)を利用してステムを押し下げることで、ステムを直接押し下げるものと比べて押し下げ力を小さくできることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、押圧操作部材が球体や棒状の突出部から構成されており、マッサージ以外の用途では使い難く、改良が望まれる。
【0005】
本発明は、2重梃子を用いたエアゾール容器用の吐出部材の改良を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール容器用の吐出部材は、第1梃子部材20、20Aと、第2梃子部材30、30Aと、第1梃子部材20、20Aと第2梃子部材30、30Aとをそれぞれ回動可能に取り付ける基体40、40Bと、を備え、第1梃子部材20、20Aの回動で得られる梃子の力が第2梃子部材30、30Aの回動に用いられ、第2梃子部材30、30Aの回動で得られる梃子の力がエアゾール容器2のバルブ機構4aの吐出操作に用いられる2重梃子を構成しており、第1梃子部材20、20Aが、第1梃子部材20、20Aを回動させるために被吐出物Mに押し当てられる押し当て部21を備え、被吐出物Mに押し当て部21が押し当てられた際に吐出予定部Pを取り囲む、周方向に連続する連続壁Cを備えていることを特徴としている。
【0007】
上記吐出部材においては、押し当て部21が連続壁Cを備え、連続壁Cと基体40、40Bとがそれぞれ開口端(21a、41a)を有し、押し当て部21の開口端(21a)と基体40、40Bの開口端(41a)とが共に被吐出物Mに向くようにして、押し当て部21が基体40、40Bに収容されており、押し当て部21の開口端(21a)を被吐出物Mに押し当てたとき、押し当て部21の開口端(21a)と基体40、40Bの開口端(41a)とが略同一平面上に並ぶようにして、押し当て部21が基体40、40Bに取り付けられていることが好ましい。
【0008】
押し当て部21が連続壁Cを備え、押し当て部21を被吐出物Mに押し当てる前は連続壁Cに囲まれ、押し当て部21を被吐出物Mに押し当てたときは連続壁Cから突出する吐出ノズル5を備えていることが好ましい。
【0009】
第1梃子部材20、20Aの回動を規制する規制部材41cを備えていてもよい。
【0010】
本発明の吐出製品は、上記いずれかのエアゾール容器用の吐出部材10、10A、10Bと、エアゾール容器2と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアゾール容器用の吐出部材と吐出製品は、被吐出物に押し当て部が押し当てられた際に吐出予定部を取り囲む、周方向に連続する連続壁を備えているため、使用者は、内容物が吐出される位置を事前に把握することができ、所望する位置へ内容物を吐出することができる。
【0012】
押し当て部が連続壁を備え、連続壁と基体とがそれぞれ開口端を有し、押し当て部の開口端と基体の開口端とが共に被吐出物に向くようにして、押し当て部が基体に収容されており、押し当て部の開口端を被吐出物に押し当てたとき、押し当て部の開口端と基体の開口端とが略同一平面上に並ぶようにして、押し当て部が基体に取り付けられている場合、基体によって押し当て部の被吐出物への過剰な押し付けを防止することができる。また、基体によって被吐出物との距離を一定に保つことができ、吐出物による設計通りの効果が得られやすい(冷却性能、吐出物の吐出される面積)。
【0013】
押し当て部が連続壁を備え、押し当て部を被吐出物に押し当てる前は連続壁に囲まれ、押し当て部を被吐出物に押し当てたときは連続壁から突出する吐出ノズルを備える場合、押し当て部を吐出ノズルの保護カバーとして利用することができる。
【0014】
第1梃子部材の回動を規制する規制部材を備えている場合、意図しない内容物の吐出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吐出製品の一部縦断面図である。
【
図5】他の吐出製品の一部縦断面図であり、
図5Aは非押し当て状態を、
図5Bは吐出状態を示す。
【
図6】他の吐出製品の一部縦断面図であり、
図6Aはロック状態を、
図6Bは解除状態且つ吐出状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す吐出製品1は、エアゾール容器2と、エアゾール容器2のバルブ機構4aの吐出操作をするための吐出部材10とを備えている。以下、各構成部品について説明していくが、説明の簡単のため、
図1、
図3に示す方向(上下前後左右)に従って説明をする。
【0017】
エアゾール容器2は、内容物を収容する容器本体3と、容器本体3の開口を塞ぐバルブアッセンブリ4とを備えている。このエアゾール容器2には、内容物として、原液と、原液を吐出するための加圧剤(ガス)とが充填されている。
【0018】
容器本体3は、
図1に示すように有底筒状であって、底部3aと、胴部3bと、肩部3cとを有している。上端は開口している。この容器本体3は、例えば、ブリキやアルミニウム等の金属製であって、上端にビード部3dを有している。ビード部3dと肩部3cとの間には溝部3eが形成されている。なお、容器本体3の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂製であってもよい。
【0019】
バルブアッセンブリ4は、バルブ機構4aと、バルブ機構4aを収容するハウジング4bと、ハウジング4bを容器本体3に固定するマウンティングカップ4cとを備えている。
【0020】
バルブ機構4aは、ステム孔を備えたステム4a1と、ステム孔を塞ぐステムラバー(図示しない)と、常時ステム4a1を上方に付勢し、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態を維持する付勢部材(図示しない)とを備えている。このバルブ機構4aは、ステム4a1を押し下げる(ハウジング4b側に押し込む)か又は傾倒させるといった吐出操作を行うことで、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態が解かれ、エアゾール容器2に収容された内容物を吐出できるようになっている。いわゆるエアゾールバルブである。
【0021】
ハウジング4bは有底筒状であって、内部空間にバルブ機構4aを収容している。
【0022】
マウンティングカップ4cは、エアゾール容器2内を気密状態に維持するアルミニウムやブリキ等の金属製の蓋であって、ステム4a1を上方に突出させた状態で、平面視中心部にハウジング4bやバルブ機構4aを抱持している。外周部は容器本体3のビード部3dにクリンプされ、容器本体3に固定されている。なお、容器本体3とマウンティングカップ4cとにネジを設け、螺合により固定するようにしてもよい。
【0023】
吐出部材10は、第1梃子部材20と、第2梃子部材30と、第1梃子部材20と第2梃子部材30とをそれぞれ容器本体3の上部(ステム4a1側の端部)に取り付けるための基体40とを備えている。吐出部材10の材質は、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン等の合成樹脂である。ただ、金属製であってもよい。
【0024】
第1梃子部材20は、内容物を吐出しようとする対象物(被吐出物)Mに押し当てられる押し当て部21と、押し当て部21を基体40に対して左右軸周りに回動可能に取り付けるための第1回動機構22と、第2梃子部材30に当接して第1梃子部材20の回動方向の力を伝達するための伝達部23とを備えている。
【0025】
押し当て部21は、
図2に示すように、上下方向に延びる略筒状(略円筒状)であって周方向に連続する連続壁Cを有している。この押し当て部21は、連続壁Cの上側の開口端である上端21aが被吐出物Mに当接する当接部となる。この上端21aは、押し当て前において、前下がりになる(第1回動機構22に向かって下がる)ように水平面に対して傾斜している。傾斜角度は一定であるため、前下がりの平面で筒体を切断した状態と形容できる。押し当て部21の下端には底面21bが形成されている。底面21bの、平面視、後述する吐出ノズル31aと重なる位置には、吐出ノズル31aや吐出された内容物を通すための挿通孔21b1が設けられている(
図3参照)。
【0026】
第1回動機構22は、
図1に示すように、押し当て部21の前部に位置している。この第1回動機構22は、基体40側に設けられた軸41bと、第1梃子部材20側に設けられた軸受22aとによって構成されている。ただ、軸41bと軸受22aとを逆に設けてもよい。また、軸41bと軸受22aとによる軸支ではなく、素材の可撓性を利用したヒンジでも良い。
【0027】
伝達部23は、底面21bの下面から下方に突出する突起状であって、前後方向において、第1回動機構22と押し当て部21の後部との間に位置している。具体的には、平面視、挿通孔21b1の左右両側にそれぞれ設けられている(
図3の破線部参照)。そして、後述する第2梃子部材30の被伝達部32に当接している。
【0028】
上記第1梃子部材20は、押し当て部21の上端21aの後部が力点、第1回動機構22が支点、伝達部23が作用点となる第2種梃子を構成している。従って、第1梃子部材20を回動させれば梃子の力が得られる。この梃子の力は、第2梃子部材30を回動させるための力として用いられる。
【0029】
第2梃子部材30は、ステム4a1を操作するステム操作部31と、ステム操作部31から延出され、第1梃子部材20の伝達部23と当接する被伝達部32と、ステム操作部31を基体40に対して左右軸回りに回動可能に取り付けるための第2回動機構33とを備えている。この第2梃子部材30は、第1梃子部材20の下方(エアゾール容器2側)に位置している。
【0030】
ステム操作部31は上下方向に延びる筒状である。下端がステム4a1の上端と接続し、ステム4a1内と連通している。上端には、ステム4a1から送られてくる内容物を所望の状態(例えば霧状、泡状、ジェル状等)で吐出するための吐出ノズル31aが取り付けられている。吐出ノズル31aの吐出孔31a1は、第2梃子部材30が回動したときに上を向くよう、回動前はやや後方に傾いている。
【0031】
被伝達部32は、ステム操作部31の側面から前方に延びている。上面に伝達部23の下端を当接させるため、平面視、伝達部23の下端と重なる位置に設けられている。
【0032】
第2回動機構33は、ステム操作部31の後方に位置している。具体的には、ステム操作部31から後方に延びる延出部33aが設けられ、この延出部33aの後端がヒンジを介して基体40の下側部42に連結されることで第2回動機構33を構成している。なお、第2回動機構33は素材の可撓性を利用したヒンジに限らず、軸と軸受とによる軸支によって構成されてもよい。
【0033】
上記第2梃子部材30は、被伝達部32が力点、第2回動機構33が支点、ステム操作部31の下端が作用点となる第2種梃子を構成している。要は、前後方向において、被伝達部32と第2回動機構33の間にステム操作部31が位置している。従って、第2梃子部材30を回動させれば梃子の力が得られる。この梃子の力はバルブ機構4aの吐出操作(ステム4a1の押し下げ又は傾倒)に用いられる。また、第2梃子部材30は、第1梃子部材20の作用点である伝達部23から梃子の力を受けるため、吐出部材10は2重梃子を構成しているといえる。
【0034】
基体40は全体として上下方向に延びる略筒状(略円筒状)であって、内部に第1梃子部材20と第2梃子部材30とを収容する収容空間を備えている。基体40は、開口端を被吐出物Mに向けたとき、押し当て部21の開口端も被吐出物Mに向くようにして、第1梃子部材20を収容している。
【0035】
基体40の上側部41は、上方に向かって拡がるテーパー状である。上側部41の上側の開口端である上端41aは水平面に対して平行である。この上端41aは、押し当て部21を被吐出物Mに押し当てる際に被吐出物Mに接触する接触部になる。この上側部41の内周面の前部に第1梃子部材20が回動可能に取り付けられている。また、第1梃子部材20の押し当て部21を被吐出物Mに押し当てない状態(非押し当て状態)では、押し当て部21の上端21aが水平面(基体40の上端41a)に対して前下がりになるように、且つ押し当て部21の上端21aの主として後部が基体40の上端41aから上方に突出するように取り付けられている。さらに、押し当て部21を被吐出物Mに十分に押し当てて第1梃子部材20を基体40に対して回動させた状態(吐出操作状態)では、押し当て部21の上端(当接部)21aと基体40の上側部41の上端(接触部)41aとが略同一平面上に並ぶように、換言すれば、押し当て部21の開口端と基体40の開口端とが略同一平面上に並ぶように取り付けられている(
図4のS3参照)。
【0036】
基体40の下側部42は、上側部41の下端からまっすぐ下に延びる外筒部42aを有している。この外筒部42aが、基体40を容器本体3の上部に取り付けるための取付部となる。外筒部42aの内側で且つ上方には内筒部42bが設けられている。第2梃子部材30は、内筒部42bの内周面の後部に回動可能に取り付けられている。
【0037】
なお、基体40は、上側部41と下側部42の2つの部材に分かれているが、1つの部材で構成してもよい。
【0038】
次に内容物を吐出させる方法について説明する。まず、エアゾール容器2の例えば胴部3bを手で握り、基体40の上側部41の上端41aの前部を被吐出物Mに当接させる(
図4のS1参照)。次に、この当接点を回動中心として、吐出製品1の下部を後方に向かって回動させ、第1梃子部材20の押し当て部21の上端21aの主として後部を被吐出物Mに押し当てる(S2参照)。吐出製品1の回動を続けると、押し当て力を受けて、押し当て部21が徐々に基体40内に収容されるようにして第1梃子部材20が下向きに回動する。また、第1梃子部材20の回動に伴って、伝達部23が第2梃子部材30の被伝達部32を下方に押し下げる。押し下げによって第2梃子部材30が下向きに回動し、ステム操作部31に連結されたステム4a1を押し下げる(又は傾倒させる)。これにより、ステムラバーによるステム孔の閉塞が解かれ、エアゾール容器2内から内容物が吐出される。吐出孔31a1は、押し当て部21の押し当て方向に開口しており、内容物は被吐出物Mに吐出される(S3参照)。
【0039】
このように上記構成の吐出部材10では、第1梃子部材20と第2梃子部材30とによって2重梃子が構成されているため、単にステム4a1を押し下げたり傾倒させたりするものと比べて小さな力で内容物を吐出させることができる。
【0040】
ところで、第1梃子部材20の押し当て部21の上端21aを被吐出物Mに押し付けていくと、ある程度押し付けた段階で、押し当て部21の連続壁Cが、内容物が吐出される吐出予定部Pを取り囲む。そのため、押し当て部21の連続壁Cが、内容物の飛び散りを防止する飛散防止壁として機能する。押し当て部21の上端21aの全周が被吐出物Mに当接するタイミングで、ステム孔の閉塞が解かれて内容物が吐出されるようにしてもよい。また、
図4のS3に示すように、押し当て部21が完全に基体40内に収容されると、それ以上、第1梃子部材20を押し付けられなくなり、第1梃子部材20の過度な押し付けが防止される。また、基体40が吐出孔31a1と被吐出物Mとの距離を一定に保ち、例えば設計通りの冷却効果が保たれ、さらに過冷却を防止できる。なお、被吐出物Mの表面が略平坦であれば、基体40の上側部41の上端41aが全周にわたって被吐出物Mに当接する。また、押し当て部21の上端21aも全周にわたって被吐出物Mに当接する。押し当て部21と基体40の上側部41で吐出予定部Pを2重に覆うため、吐出音が周囲の人に聞こえにくくなり、静かな環境や周囲に人がいる場合でも使用しやすい。
【0041】
吐出を止める場合は、第1梃子部材20の被吐出物Mへの押し当てを止めればよい。バルブ機構4aの付勢部材の付勢力によってステム4a1が押し下げ前の元の位置に戻り、ステム孔がステムラバーにより再び閉塞される。また、付勢部材の付勢力や屈曲したヒンジが元の形状に戻ることによって第2梃子部材30が上向きに回動し、その回動に伴って第1梃子部材20も上向きに回動し、押し当て前の元の位置に戻る。
【0042】
次に、
図5に示す吐出製品1Aについて説明する。
図1の吐出製品1では、第2梃子部材30のステム操作部31がステム4a1に直接連結されていたが、この吐出製品1Aの吐出部材10Aでは、ステム操作部31とステム4a1とは直接連結されておらず、ステム操作部31は純粋な上下方向の力のみをステム4a1に伝達するようになっている。
【0043】
具体的には、第2梃子部材30Aの回動によってステム操作部31は前後方向に移動するが、ステム操作部31がステム4a1やステム4a1に直接取り付けられる吐出ノズル5に前後方向から当接しないよう、ステム操作部31とステム4a1や吐出ノズル5との間に前後方向の隙間Gが設けられている。ステム4a1を押し下げ操作する力は、ステム4a1や吐出ノズル5から径外方向に延び、ステム操作部31の下端に当接する押し下げ部(例えばフランジ部)5aを介してステム4a1に伝達される。
【0044】
上記構成の吐出部材10Aでは、
図5Bに示すように、第2梃子部材30Aが回動してもステム4a1が傾倒しないため、ステム4a1や吐出ノズル5を常に同じ方向に向けることができ、吐出方向を安定させることができる。さらに、押し当て部21の連続壁Cによって吐出孔31a1と被吐出物Mとの距離を一定に保つことができる。そのため、吐出ノズル5としてインスリンや美容液などを体内に投与するマイクロニードルや殺虫成分を寝具等の内部に噴射するための針等を使用する場合に好適である。
【0045】
吐出ノズル5の上部は押し当て部21内に位置している。吐出ノズル5の先端は、第1梃子部材20Aの押し当て部21を被吐出物Mに押し当てない状態(
図5A:非押し当て状態)では、押し当て部21の上端21aよりも下に位置している。この状態は、押し当て部21の連続壁Cが吐出ノズル5の周囲を囲む保護カバーとして機能しているともいえる。保護カバーとしての機能は、吐出ノズル5の先端と同じ高さもしくはそれよりも上に設けられた底面21bによってさらに向上している。すなわち、底面21bが連続壁Cの開口の大きさを実質的に小さくする絞り部として機能し、吐出ノズル5への意図しない接触を軽減させている。一方で、押し当て部21を被吐出物Mに十分に押し当てた状態(
図5B:吐出操作状態)では、吐出ノズル5の押し下げ量よりも押し当て部21の押し下げ量が大きくなり、吐出ノズル5の先端は上端21aよりも上に突出する。そのため、先端を被吐出物Mに刺し込むことができる。
【0046】
他の構成については、上記吐出部材10と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0047】
図6はさらに別の吐出製品1Bと吐出部材10Bを示している。この吐出部材10Bでは、基体40Bの上側部41Bが下側部42に対して上下軸回りに回動可能に取り付けられている。
図6Aは、上側部41Bを下側部42に対して平面視反時計回りに回動させた状態を示している。第1梃子部材20Aは上側部41Bに取り付けられているため、上側部41Bの回動にあわせて上下軸周りに回動している。なお、第2梃子部材30Aは、下側部42に取り付けられているため回動せず元の位置に留まっている。
【0048】
この吐出部材10Bは、第1梃子部材20Aの回動を規制する規制部材41cを備えている。具体的に説明すると、上側部41Bの前部下端から径内方向に向かって延びる規制部材41cが設けられており、この規制部材41cが第2梃子部材30Aの被伝達部32の下方に位置して第2梃子部材30Aの下方向への回動を規制することで、伝達部23を介して第2梃子部材30Aと当接状態にある第1梃子部材20Aの回動を間接的に規制している(ロック状態)。なお、規制部材41cは、平面視、第1梃子部材20Aの伝達部23とは重なっておらず、回動方向にずれて設けられている。
【0049】
ロック状態では、押し当て部21に触れても第1梃子部材20Aが回動しないため、吐出ノズル5は、連続壁Cと底面21bとに覆われた状態を維持するとともに、内容物は吐出されない。そのため、意図せず吐出ノズル5を露出させたり、内容物を吐出してしまうことを防止することができる。
【0050】
ロック状態を解除するには、
図6Bに示すように、上側部41Bを下側部42に対して上下軸回りに回動させて、規制部材41cを被伝達部32の下方から横方向にずらす。これにより、第2梃子部材30Aを回動させることができるようになり、第1梃子部材20Aも回動させることができるようになる。この状態で、第1梃子部材20Aを回動させれば内容物を吐出することができる。
【0051】
他の構成については、上記吐出部材10、10Aと同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0052】
以上に、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、押し当て部21に連続壁Cを設けていたが、基体40、40Bの上端41aも周方向に連続しているため、これを連続壁Cとしてもよい。この場合、押し当て部21に連続壁Cを設けなくても吐出予定部Pを取り囲むことができる。また、内容物の飛散を防止することもできる。
【0053】
基体40、40Bの上端41aは必ずしも周方向に連続している必要は無く、上端が周方向に点在するように設けてもよい。第1梃子部材20、20Aの押し当て部21の上端21aについても周方向に連続している必要は無く、周方向に点在するように設けてもよい。
【0054】
押し当て部21の上端21aを側面視直線状としていたが、被吐出物Mの表面形状に合わせて円弧状や波形等種々の形状を採用することができる。なお、上端21aの後部が被吐出面Mに当接し易いよう、全体として前下がりとすることが好ましいが、必ずしも最後部(第1回動機構22の反対側の端部)を最も上方に突出させる必要は無い。平面視、伝達部23よりも後方を被吐出物Mに当接させることができれば第2種梃子を構成し、2重梃子になる。前後方向において、伝達部23とステム操作部31とが同じ位置に設けられてもよい。規制部材41cは、
図1の吐出部材10や
図5の吐出部材10Aに設けてもよい。また、
図4において、吐出部材10を上方に向けた正立状態で内容物を吐出させていたが、吐出部材を下方に向けた倒立状態で内容物を吐出させてもよい。
図5の吐出部材10Aや
図6の吐出部材10Bでも同様である。
【符号の説明】
【0055】
1、1A、1B 吐出製品
2 エアゾール容器
3 容器本体
3a 底部
3b 胴部
3c 肩部
3d ビード部
3e 溝部
4 バルブアッセンブリ
4a バルブ機構
4a1 ステム
4b ハウジング
4c マウンティングカップ
10、10A、10B 吐出部材
20、20A 第1梃子部材
21 押し当て部
21a 上端
21b 底面
21b1 挿通孔
22 第1回動機構
22a 軸受
23 伝達部
30、30A 第2梃子部材
31 ステム操作部
31a 吐出ノズル
31a1 吐出孔
32 被伝達部
33 第2回動機構
33a 延出部
40、40B 基体
41、41B 上側部
41a 上端
41b 軸
41c 規制部材
42 下側部
42a 外筒部
42b 内筒部
5 吐出ノズル
5a 押し下げ部
M 被吐出物
P 吐出予定部
C 押し当て部の連続壁
G ステム操作部とステムや吐出ノズルとの間の隙間