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特開2024-76667ガラスの製造方法、及びガラス製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076667
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】ガラスの製造方法、及びガラス製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 3/02 20060101AFI20240530BHJP
   C03B 5/237 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
C03B3/02
C03B5/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188345
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】板谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸敏
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AB01
4G014AF01
(57)【要約】
【課題】入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減可能にし、また、単位時間当たりのガラス製品の生産量が大幅に低下する問題を回避可能なガラスの製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスの製造方法は、ガラス原料を準備する準備工程と、準備されたガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程とを含む。準備工程では、ガラス製造装置11からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成し、ガラス原料にメタホウ酸を含める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を準備する準備工程と、準備された前記ガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程と、を含むガラスの製造方法であって、
前記準備工程では、ガラス製造装置からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成し、前記ガラス原料に前記メタホウ酸を含める、
ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記排熱は、前記溶融工程に基づく排熱を利用する、
請求項1に記載のガラスの製造方法。
【請求項3】
前記排熱は、前記溶融工程とは別の溶融工程に基づく排熱を利用する、
請求項1に記載のガラスの製造方法。
【請求項4】
前記排熱は、前記ガラス製造装置における溶融炉、フィーダー、成形部、及びアニーラーのいずれか1つの煙道の排熱を利用する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラスの製造方法。
【請求項5】
前記煙道に熱交換器を配置し、前記熱交換器を介して前記メタホウ酸を生成する乾燥機に前記排熱の熱エネルギーを移動させる、
請求項4に記載のガラスの製造方法。
【請求項6】
前記熱交換器の内部を通過した空気を、前記乾燥機の乾燥容器に直接投入して前記乾燥容器を通過させる、
請求項5に記載のガラスの製造方法。
【請求項7】
前記煙道における前記熱交換器の上流側に分岐した分岐排気部を設け、前記分岐排気部から前記排熱の一部を排気することで前記熱交換器の周辺の温度を調整する、
請求項5に記載のガラスの製造方法。
【請求項8】
前記分岐排気部の排気量を調整することで、前記熱交換器の周辺の温度を調整する、
請求項7に記載のガラスの製造方法。
【請求項9】
前記乾燥機の内部が前記メタホウ酸でコーティングされている状態で前記メタホウ酸を生成する、
請求項5に記載のガラスの製造方法。
【請求項10】
前記メタホウ酸は単斜晶である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のガラスの製造方法。
【請求項11】
ガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融炉と、
排熱を外部に逃がすための煙道と、
前記煙道に配置された熱交換器と、
前記熱交換器に接続され、前記熱交換器を介して移動される前記排熱の熱エネルギーによってオルトホウ酸からメタホウ酸を生成する乾燥機と、
を備えた、ガラス製造装置。
【請求項12】
前記煙道における前記熱交換器の上流側には、分岐した分岐排気部が設けられている、
請求項11に記載のガラス製造装置。
【請求項13】
前記分岐排気部は、排気量を調整可能な調整弁を有する、
請求項12に記載のガラス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの製造方法、及びガラス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスの製造方法は、準備したガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程を含む。ガラス原料としては、珪素源の他にホウ素源等が調合される。ホウ素源としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、無水ホウ酸等が挙げられる。そして、例えば、特許文献1では、水分量の最も少ない無水ホウ酸をガラス原料に含めることで、溶融工程での水の蒸発に基づくエネルギーロスを抑制可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開(WO)2009/054314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無水ホウ酸は、入手が難しいとともに非常に高価である。また、オルトホウ酸よりも含有する水分量の少ないメタホウ酸も、オルトホウ酸に比べて入手が難しいとともに高価である。オルトホウ酸は、入手が容易であるとともに安価であるものの含有する水分量が多いことから、オルトホウ酸を用いた場合では溶融工程でのエネルギーロスが大きくなるという問題がある。すなわち、ガラス原料のホウ素源としてオルトホウ酸を含めた場合では、ガラス原料を正常に溶融させるためにエネルギーの消費が増大してしまうという問題がある。また、オルトホウ酸は含有する水分量が多いため、溶融工程における初期の原料の溶解で、ホウ素源による発泡物が生成される。そして、この発泡物により、溶融炉への連続的なバッチ投入が阻害されることで、単位時間当たりのガラス製品の生産量(以下、「流量」とする)が大幅に低下する問題がある。
【0005】
本発明の目的は、入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減可能にするとともに、流量の大幅な低下を回避可能としたガラスの製造方法、及びガラス製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記課題を解決するガラスの製造方法は、ガラス原料を準備する準備工程と、準備された前記ガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融工程と、を含むガラスの製造方法であって、前記準備工程では、ガラス製造装置からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成し、前記ガラス原料に前記メタホウ酸を含める。
【0007】
同方法によれば、ガラス製造装置からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成するため、特に別のエネルギーを消費することなく、入手が容易なオルトホウ酸からメタホウ酸を得ることができる。そして、ガラス原料には準備工程で生成されたメタホウ酸が含まれるため、例えば、ガラス原料にメタホウ酸を用いずにオルトホウ酸を含めた場合に比べて、後の溶融工程においてエネルギーの消費を低減できる。すなわち、少ないエネルギーでガラス原料を正常に溶融することができる。よって、入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、エネルギーの消費を低減することができる。また、メタホウ酸は、オルトホウ酸に比べ、含有する水分量が顕著に少ないため、メタホウ酸をホウ素源として使用することで、溶融工程の初期の原料の溶解段階で、ホウ素源に起因する発泡物の生成を抑制でき、流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【0008】
[2]上記[1]に記載のガラスの製造方法において、前記排熱は、前記溶融工程に基づく排熱を利用することが好ましい。
同方法によれば、排熱は、同製造方法における溶融工程に基づく排熱を利用するため、例えば、他のガラス製造装置を用いることなく、1つのガラス製造装置でエネルギーの消費を低減することができる。
【0009】
[3]上記[1]に記載のガラスの製造方法において、前記排熱は、前記溶融工程とは別の溶融工程に基づく排熱を利用することが好ましい。
同方法によれば、排熱は、同製造方法における溶融工程とは別の溶融工程に基づく排熱を利用するため、例えば、排熱の利用が難しいガラス製造装置においてもメタホウ酸を用いて、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減することができる。また、前述の流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【0010】
[4]上記[1]から上記[3]のいずれか1つに記載のガラスの製造方法において、前記排熱は、前記ガラス製造装置における溶融炉、フィーダー、成形部、及びアニーラーのいずれか1つの煙道の排熱を利用することが好ましい。
【0011】
同方法によれば、排熱は、ガラス製造装置における溶融炉、フィーダー、成形部、及びアニーラーのいずれか1つの煙道の排熱を利用するため、排熱を容易に利用できる。例えば、ガラス製造装置が元々備える煙道の構造を一部変更することで、大掛かりな構造の変更を不要としながら排熱を利用できる。また、溶融炉、フィーダー、成形部、及びアニーラーの温度は、それぞれ異なるため、同方法において適切な排熱温度を選定することができ、効率よく所望のメタホウ酸を生成することができる。一例として、ホウケイ酸ガラスを製造する場合、溶融炉の温度は1200~1500℃であり、フィーダーの温度は1300~1000℃であり、成形部の温度は800~1000℃であり、アニーラーの温度は600~800℃である。
【0012】
[5]上記[4]に記載のガラスの製造方法において、前記煙道に熱交換器を配置し、前記熱交換器を介して前記メタホウ酸を生成する乾燥機に前記排熱の熱エネルギーを移動させることが好ましい。
【0013】
同方法によれば、煙道に熱交換器を配置し、熱交換器を介してメタホウ酸を生成する乾燥機に排熱の熱エネルギーを移動させるため、煙道の排熱を効率良く利用できる。すなわち、例えば、煙道を通過する排気を直接乾燥機に当てる構成に比べて、効率良く排熱の熱エネルギーを利用できるとともに、生成されるメタホウ酸が、排気に含まれる不純物により汚染されることを回避できる。
【0014】
[6]上記[5]に記載のガラスの製造方法において、前記熱交換器の内部を通過した空気を、前記乾燥機の乾燥容器に直接投入して前記乾燥容器を通過させることが好ましい。
【0015】
同方法によれば、熱交換器の内部を通過した空気を、乾燥機の乾燥容器に直接投入して乾燥容器を通過させるため、メタホウ酸が生成された際に発生する水分を乾燥容器の外部に効率良く排出できる。
【0016】
[7]上記[5]または上記[6]に記載のガラスの製造方法において、前記煙道における前記熱交換器の上流側に分岐した分岐排気部を設け、前記分岐排気部から前記排熱の一部を排気することで前記熱交換器の周辺の温度を調整することが好ましい。
【0017】
同方法によれば、煙道において熱交換器の上流側に分岐した分岐排気部を設け、分岐排気部から排熱の一部を排気することで熱交換器の周辺の温度を調整するため、例えば、熱交換器の周辺の温度が過度な高温になることを抑制できる。よって、例えば、所望のメタホウ酸を良好に生成することができる。
【0018】
[8]上記[7]に記載のガラスの製造方法において、前記分岐排気部の排気量を調整することで、前記熱交換器の周辺の温度を調整することが好ましい。
同方法によれば、分岐排気部の排気量を調整することで、熱交換器の周辺の温度を調整するため、例えば、熱交換器の周辺の温度を最適な温度に適宜調整することができる。よって、例えば、所望のメタホウ酸をより良好に生成することができる。
【0019】
[9]上記[5]から上記[8]のいずれか1つに記載のガラスの製造方法において、前記乾燥機の内部が前記メタホウ酸でコーティングされている状態で前記メタホウ酸を生成することが好ましい。
【0020】
同方法によれば、乾燥機の内部がメタホウ酸でコーティングされている状態でメタホウ酸を生成するため、例えば、生成するメタホウ酸に乾燥機を構成する金属の成分が混入してしまうことが抑制される。
【0021】
[10]上記[1]から上記[9]のいずれか1つに記載のガラスの製造方法において、前記メタホウ酸は単斜晶であることが好ましい。
同方法によれば、生成するメタホウ酸は単斜晶であるため、状態が安定するとともに、取り扱い易くなる。すなわち、メタホウ酸が斜方晶の場合、水分を吸収し易く状態が不安定であり、メタホウ酸が立方晶の場合、生成した際に粘りが生じ易く取り扱いが難しいが、これらを回避することができる。
【0022】
[11]上記課題を解決するガラス製造装置は、ガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する溶融炉と、排熱を外部に逃がすための煙道と、前記煙道に配置された熱交換器と、前記熱交換器に接続され、前記熱交換器を介して移動される前記排熱の熱エネルギーによってオルトホウ酸からメタホウ酸を生成する乾燥機と、を備える。
【0023】
同構成によれば、排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成することができるため、特に別のエネルギーを消費することなく、入手が容易なオルトホウ酸からメタホウ酸を得ることができる。そして、ガラス原料に生成したメタホウ酸を含めれば、例えば、ガラス原料にメタホウ酸を用いずにオルトホウ酸を含めた場合に比べて、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減できる。すなわち、少ないエネルギーでガラス原料を正常に溶融することができる。よって、入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、エネルギーの消費を低減することができる。また、前述の流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【0024】
[12]上記[11]に記載のガラス製造装置において、前記煙道における前記熱交換器の上流側には、分岐した分岐排気部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、煙道における熱交換器の上流側には分岐した分岐排気部が設けられているため、熱交換器の周辺の温度を調整することができ、例えば、熱交換器の周辺の温度が過度な高温になることを抑制できる。よって、例えば、所望のメタホウ酸を良好に生成することができる。
【0025】
[13]上記[12]に記載のガラス製造装置において、前記分岐排気部は、排気量を調整可能な調整弁を有することが好ましい。
同構成によれば、分岐排気部は、排気量を調整可能な調整弁を有するため、分岐排気部の排気量を調整することで、例えば、熱交換器の周辺の温度を最適な温度に適宜調整することができる。よって、例えば、所望のメタホウ酸をより良好に生成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のガラスの製造方法、及びガラス製造装置によれば、入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減できる。また、前述の流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、一実施形態のガラス製造装置を示す概略平面図である。
図2図2は、一実施形態のガラス製造装置の一部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、ガラス製造装置、及びガラスの製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0029】
(ガラス製造装置11の構成)
図1に示すように、ガラス製造装置11は、溶融炉12と、フィーダー13と、成形部14と、アニーラー15と、熱交換器16と、乾燥機17とを備える。
【0030】
溶融炉12は、投入口12aと流出口12bとを有し、投入口12aから投入されたガラス原料を加熱することでガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成するための箱形の装置である。フィーダー13は、溶融炉12の流出口12bから流出した溶融ガラスを成形部14に流す通路である。成形部14は、フィーダー13を通過した溶融ガラスを所望の形状に成形する装置である。アニーラー15は、成形部14にて成形されたガラスの歪みを除去する装置である。
【0031】
フィーダー13には煙道18が設けられている。煙道18は、フィーダー13から分岐した気体用の通路であって、高温の気体を排熱として外部に逃がすために設けられている。
【0032】
図2に示すように、煙道18は、排気部18aと分岐排気部18bとを有する。排気部18aは、煙道18の終端位置で上方の外部に開口するように設けられている。分岐排気部18bは、煙道18の中間位置で分岐して上方の外部に開口するように設けられている。また、分岐排気部18bは、排気量を調整可能な調整弁18cを有する。調整弁18cは、分岐排気部18bの開口の大きさを調整可能な蓋であって、本実施形態の調整弁18cは、手動によって操作可能である。
【0033】
熱交換器16は、煙道18内の終端位置に配置されている。乾燥機17は、熱交換器16に接続され、熱交換器16を介して移動される排熱の熱エネルギーによってオルトホウ酸からメタホウ酸を生成する装置である。
【0034】
詳しくは、熱交換器16は、金属パイプよりなり、第1端部16aと、第2端部16bと、それらの間に設けられたコイル状の本体部16cとを有する。熱交換器16は、本体部16cが煙道18内に配置され、第1端部16aが煙道18の外部でエアポンプAPに接続されている。エアポンプAPは、外部の空気を第1端部16aから熱交換器16内に供給して第2端部16bから噴射させることが可能な装置である。熱交換器16は、エアポンプAPが駆動されると、煙道18内の本体部16cを通過することで暖められた空気を第2端部16bから噴射する。
【0035】
乾燥機17は、乾燥容器19と、撹拌棒20と、モータ21とを有する。乾燥容器19は、円筒部19aと、円筒部19aの一端を閉塞する第1閉塞部19bと、円筒部19aの他端を閉塞する第2閉塞部19cとを有する。第1閉塞部19bの上部には、乾燥容器19の内部と連通しつつ外部に突出する流入筒部19dが設けられている。流入筒部19dには、熱交換器16の第2端部16bが挿入されている。なお、流入筒部19dは、第2端部16bが挿入されている部分以外は閉塞されている。第2閉塞部19cの上部には、乾燥容器19の内部と連通しつつ外部に突出する流出筒部19eが設けられている。流出筒部19eは、外部に開口している。円筒部19aの上部には、開閉可能な投入口19fが設けられている。第1閉塞部19bの下部には、開閉可能な取り出し口19gが設けられている。撹拌棒20は、乾燥容器19内に収容されつつ円筒部19aの軸中心に沿って延びる軸部20aと、軸部20aから軸直交方向に延びる羽根部20bとを有する。羽根部20bは、軸部20aの長手方向に複数設けられている。軸部20aの長手方向に隣り合う羽根部20b同士は、軸部20aから異なる方向に延びている。モータ21は、第2閉塞部19cの外側に固定されるとともに、撹拌棒20の軸部20aと連結されている。モータ21は、撹拌棒20を回転させることが可能な装置である。
【0036】
(ガラスの製造方法とその作用)
ガラスの製造方法は、ガラス原料を準備する「準備工程」と、準備されたガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する「溶融工程」と、溶融ガラスを所望の形状に成形する「成形工程」とを含む。
【0037】
準備工程では、珪素源の他にホウ素源等を調合してガラス原料を準備する。本実施形態のホウ素源は、メタホウ酸を採用している。また、この準備工程における珪素源は珪砂であって、珪砂とメタホウ酸は共に粉体の状態である。溶融工程では、準備されたガラス原料を投入口12aから溶融炉12に投入し、溶融炉12内でガラス原料を加熱することでガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成する。溶融ガラスは、溶融炉12の流出口12bからフィーダー13を通過して成形部14に到達する。成形工程では、成形部14にて溶融ガラスを所望の形状に成形し、アニーラー15にて成形されたガラスの歪みを除去する。
【0038】
ここで、上記した準備工程では、ガラス製造装置11からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成し、その生成したメタホウ酸をガラス原料に含める。本実施形態では、メタホウ酸を含めたガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成するガラス製造装置11と、オルトホウ酸からメタホウ酸を生成するガラス製造装置11とは同じものである。すなわち、本実施形態では、準備工程で用いる排熱は、1つのガラス製造装置11による同製造方法における溶融工程に基づく排熱を利用する。
【0039】
詳しくは、準備工程では、まず投入口19fから乾燥容器19に粉体のオルトホウ酸を投入する。そして、ガラス製造装置11からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成する。この際、ガラス製造装置11からの排熱は、フィーダー13の煙道18の排熱を利用する。詳しくは、煙道18に熱交換器16を配置し、その熱交換器16を介して乾燥機17に排熱の熱エネルギーを移動させる。より詳しくは、熱交換器16の内部を通過した空気を、乾燥機17の乾燥容器19に直接投入して乾燥容器19を通過させる。また、その際、モータ21を駆動することで撹拌棒20を回転させて、乾燥容器19内のオルトホウ酸を撹拌する。
【0040】
また、この際、煙道18の分岐排気部18bから排熱の一部を排気することで熱交換器16の周辺の温度を調整する。本実施形態では、調整弁18cを操作して分岐排気部18bの開口の大きさを調整し、分岐排気部18bの排気量を調整することで、熱交換器16の周辺の温度を調整する。
【0041】
また、準備工程で生成するメタホウ酸は単斜晶である。生成されるメタホウ酸が単斜晶となるか、斜方晶となるか、立方晶となるかは、オルトホウ酸を加熱する温度で決まることが知られている。そこで、本実施形態では、熱交換器16の第2端部16bから噴射される空気が300℃となり、流出筒部19eから流出する空気が200℃となるようにしている。
【0042】
また、本実施形態では、第2端部16bから噴射される空気が300℃となるようにすべく、熱交換器16の周辺の温度が600℃となるように分岐排気部18bの排気量を調整している。なお、これらの各温度は、各種条件で異なるものであり、上記のように限定されるものではない。本実施形態では、乾燥容器19に15キログラムのオルトホウ酸を投入し、エアポンプAPから1分当たり70リットルの空気を熱交換器16に供給しながら乾燥機17を8時間駆動する場合に単斜晶のメタホウ酸が生成される温度が上記した各温度となっている。
【0043】
また、準備工程では、乾燥機17の内部がメタホウ酸でコーティングされている状態、詳しくは乾燥容器19の内面と撹拌棒20の表面がメタホウ酸でコーティングされている状態で、メタホウ酸を生成する。なお、本実施形態の乾燥容器19及び撹拌棒20は、金属製である。そして、例えば、乾燥機17の内部がメタホウ酸でコーティングされていない状態で準備工程と同様にオルトホウ酸からメタホウ酸を生成する試運転工程を1回または複数回行うことで、乾燥機17の内部をメタホウ酸でコーティングするようにしている。また、この試運転工程で生成されるメタホウ酸は、乾燥機17を構成する金属の成分が混入している虞があるため、例えば、廃棄する。
【0044】
上記のように、準備工程、溶融工程、及び成形工程を行うことでガラスが製造される。
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)ガラス製造装置11からの排熱を利用してオルトホウ酸からメタホウ酸を生成するため、特に別のエネルギーを消費することなく、入手が容易なオルトホウ酸からメタホウ酸を得ることができる。
【0045】
そして、ガラス原料には準備工程で生成されたメタホウ酸が含まれるため、例えば、ガラス原料にメタホウ酸を用いずにオルトホウ酸を含めた場合に比べて、後の溶融工程でのエネルギーの消費を低減できる。すなわち、少ないエネルギーでガラス原料を正常に溶融することができる。よって、入手が容易なオルトホウ酸を利用しつつ、エネルギーの消費を低減することができる。また、溶融工程の初期の原料の溶解段階で、ホウ素源に起因する発泡物の生成を抑制でき、前述の流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【0046】
なお、生成するホウ素源がメタホウ酸なので、無水ホウ酸よりも取り扱い易くなる。詳しくは、例えば、ガラス製造装置11からの排熱を利用して粉体のオルトホウ酸から無水ホウ酸を生成しようとしても、無水ホウ酸は融液状になるため、粉体同士がまとまって1つの固まりになることから、ガラス原料に含める際等の取り扱いが困難となってしまうが、これを回避できる。
【0047】
(2)メタホウ酸を含めたガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成するガラス製造装置11と、オルトホウ酸からメタホウ酸を生成するガラス製造装置11とは同じものである。すなわち、準備工程で用いる排熱は、同製造方法における溶融工程に基づく排熱を利用する。そのため、例えば、他のガラス製造装置11を用いる必要がないため、溶融工程でのエネルギーの消費を低減することができる。
【0048】
(3)準備工程で用いる排熱は、フィーダー13の煙道18の排熱を利用するため、排熱を容易に利用できる。例えば、ガラス製造装置11が元々備える煙道18の構造を一部変更することで、大掛かりな構造の変更を不要としながら排熱を利用できる。また、本実施形態では、フィーダー13の煙道18の排熱を利用するため、溶融炉12や成形部14やアニーラー15に設けられる煙道の排熱を利用する場合に比べて、排熱を容易に利用できる。例えば、溶融炉12に設けられる煙道の排熱を利用する場合では、温度が高くなり過ぎることで、熱交換器16の耐久性が低下するとともに温度管理が難しくなる虞があるが、これを回避できる。また、例えば、成形部14やアニーラー15に設けられる煙道の排熱を利用する場合では、温度が低いことで温度管理が難しくなる虞があるが、これを回避できる。
【0049】
(4)煙道18に熱交換器16を配置し、熱交換器16を介してメタホウ酸を生成する乾燥機17に排熱の熱エネルギーを移動させるため、煙道18の排熱を効率良く利用できる。すなわち、例えば、煙道18を通過する排気を直接乾燥機に当てるといった構成に比べて、効率良く排熱の熱エネルギーを利用できる。また、例えば、生成されるメタホウ酸が、排気に含まれる不純物により汚染されることを回避できる。
【0050】
(5)熱交換器16の内部を通過した空気を、乾燥機17の乾燥容器19に直接投入して乾燥容器19を通過させるため、メタホウ酸が生成された際に発生する水分を乾燥容器19の外部に効率良く排出できる。
【0051】
(6)煙道18における熱交換器16の上流側に分岐した分岐排気部18bを設け、分岐排気部18bから排熱の一部を排気することで熱交換器16の周辺の温度を調整するため、例えば、熱交換器16の周辺の温度が過度な高温になることを抑制できる。よって、例えば、所望のメタホウ酸であって、本実施形態では単斜晶のメタホウ酸を良好に生成することができる。
【0052】
(7)分岐排気部18bの排気量を調整することで、熱交換器16の周辺の温度を調整するため、例えば、熱交換器16の周辺の温度を最適な温度に適宜調整することができる。よって、例えば、所望のメタホウ酸であって、本実施形態では単斜晶のメタホウ酸をより良好に生成することができる。
【0053】
(8)乾燥機17の内部がメタホウ酸でコーティングされている状態でメタホウ酸を生成するため、例えば、生成するメタホウ酸に乾燥機17を構成する金属の成分が混入してしまうことが抑制される。
【0054】
(9)生成するメタホウ酸は単斜晶であるため、状態が安定するとともに、取り扱い易くなる。すなわち、メタホウ酸が斜方晶の場合、水分を吸収し易く状態が不安定であり、メタホウ酸が立方晶の場合、生成した際に粘りが生じ易く取り扱いが難しいが、これらを回避することができる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、メタホウ酸を含めたガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成するガラス製造装置11と、オルトホウ酸からメタホウ酸を生成するガラス製造装置11とが同じものであるとしたが、これらが別のガラス製造装置であってもよい。すなわち、準備工程で用いる排熱は、同製造方法における溶融工程とは別の溶融工程に基づく排熱を利用してもよい。
【0056】
このようにすると、例えば、排熱の利用が難しいガラス製造装置においてもメタホウ酸を用いて、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減することができる。例えば、ハロゲンを含んだガラス原料を溶融して溶融ガラスを生成するガラス製造装置では、上記実施形態の金属製の熱交換器16が腐食する虞があるため、排熱の利用が難しい。そのような排熱の利用が難しいガラス製造装置においても他のガラス製造装置11の排熱を利用して生成したメタホウ酸を用いることで、溶融工程におけるエネルギーの消費を低減することができる。また、前述の流量が大幅に低下する問題を回避できる。
【0057】
・上記実施形態では、準備工程で用いる排熱は、フィーダー13の煙道18の排熱を利用するとしたが、これに限定されず、溶融炉12や成形部14やアニーラー15に設けられる煙道の排熱を利用してもよい。また、準備工程で用いる排熱は、煙道18以外の排熱を利用してもよい。例えば、ガラス製造装置11を構成する筐体の一部にメタホウ酸を生成する乾燥機を接触させることで排熱を利用してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、煙道18に熱交換器16を配置し、熱交換器16を介して乾燥機17に排熱の熱エネルギーを移動させるとしたが、これに限定されず、例えば、煙道18を通過する排気を直接乾燥機に当てて排熱を利用してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、熱交換器16の内部を通過した空気を、乾燥機17の乾燥容器19に直接投入して乾燥容器19を通過させるとしたが、これに限定されず、他の構成に変更してもよい。例えば、熱交換器16は、排熱の熱エネルギーを乾燥機17に移動させることができれば、他の構成の熱交換器としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、煙道18における熱交換器16の上流側に設けられた分岐排気部18bから排熱の一部を排気することで熱交換器16の周辺の温度を調整するとしたが、これに限定されず、他の構造や方法で温度を調整してもよい。例えば、煙道18において熱交換器16の上流側に水冷式の冷却部材を配置して熱交換器16の周辺の温度を調整してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、分岐排気部18bの排気量を調整することで、熱交換器16の周辺の温度を調整するとしたが、これに限定されず、例えば、調整弁18cを有さずに、一定量の排気を行う分岐排気部18bとしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、乾燥機17の内部が、メタホウ酸でコーティングされている状態でメタホウ酸を生成するとしたが、これに限定されず、コーティングされていない状態でメタホウ酸を生成してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、生成するメタホウ酸は単斜晶であるとしたが、これに限定されず、生成するメタホウ酸を斜方晶や立方晶としてもよい。
・上記実施形態では、乾燥機17は、乾燥容器19と撹拌棒20とモータ21とを有するものとしたが、他の構成の乾燥機に変更してもよい。例えば、撹拌棒20を有さずに乾燥容器が回転するものとしてもよい。また、例えば、オルトホウ酸を水平に移動させつつ熱を加える連続式の乾燥機としてもよい。また、乾燥容器自体が、生成したメタホウ酸を保管する保管容器として利用されるものとしてもよい。なお、この場合、例えば、保管容器に窒素等の不活性ガスを充満させたり、保管容器内を減圧環境としたりすることで、メタホウ酸が水分を吸収し難くすることができ、メタホウ酸を安定して保管することができる。この場合、乾燥機17は、煙道18から接続分離が可能にすることができ、複数の乾燥機を用いことで、多量のメタホウ酸を保管することができる。
【0064】
・上記実施形態では、乾燥容器19に15キログラムのオルトホウ酸を投入し、エアポンプAPから1分当たり70リットルの空気を熱交換器16に供給しながら乾燥機17を8時間駆動するとしたが、これら数値はそれぞれ変更してもよい。例えば、乾燥容器19の大きさ等に応じて、10キログラムや30キログラムのオルトホウ酸を投入してもよい。また、例えば、金属パイプよりなる熱交換器16の内径等に応じて、エアポンプAPから1分当たり50リットルや100リットルの空気を熱交換器16に供給してもよい。また、例えば、投入するオルトホウ酸の量等に応じて、乾燥機17を6時間や10時間駆動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
11…ガラス製造装置、12…溶融炉、12a…投入口、12b…流出口、13…フィーダー、14…成形部、15…アニーラー、16…熱交換器、16a…第1端部、16b…第2端部、16c…本体部、17…乾燥機、18…煙道、18a…排気部、18b…分岐排気部、18c…調整弁、19…乾燥容器、19a…円筒部、19b…第1閉塞部、19c…第2閉塞部、19d…流入筒部、19e…流出筒部、19f…投入口、19g…取り出し口、20…撹拌棒、20a…軸部、20b…羽根部、21…モータ、AP…エアポンプ。
図1
図2