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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076668
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】レーザー樹脂溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20240530BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20240530BHJP
【FI】
B29C65/16
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188347
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 昭
(72)【発明者】
【氏名】方山 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 勝幸
【テーマコード(参考)】
4E168
4F211
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168BA90
4E168CB03
4E168EA17
4F211AG01
4F211AG08
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC09
4F211TC11
4F211TN27
(57)【要約】
【課題】汎用性およびメンテナンス性を向上できるレーザー樹脂溶着装置を提供する。
【解決手段】レーザー樹脂溶着装置1は、出射ユニット30と反射鏡駆動部42が取り付けられたロボットアーム20とを有する。反射鏡駆動部42は、反射鏡41を支持し、かつ、出射ユニット30から出射されるレーザー光Lの光軸Aを中心に反射鏡41を回転させる。レーザー樹脂溶着装置1の制御部50は、光軸Aが第1樹脂部品101と第2樹脂部品102の環状の溶着部103の中心軸線Cxと平行な状態で、出射ユニット30および反射鏡41が中心軸線Cxを中心に旋回するように、ロボットアーム20の先端部21を移動させるとともに、反射鏡41で反射したレーザー光Lが常に環状の溶着部103に向かって照射されるように、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第1樹脂部品の外周面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第2樹脂部品の内周面とを、環状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する、レーザー樹脂溶着装置であって、
前記第1樹脂部品および前記第2樹脂部品を所定の位置に固定する第1ワーク固定部と、
移動可能な先端部を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの前記先端部に取り付けられて前記レーザー光を出射する出射ユニットと、
前記出射ユニットから出射された前記レーザー光を反射させて前記レーザー光の照射方向を変更する反射鏡と、
前記ロボットアームの前記先端部に取り付けられて前記出射ユニットから出射される前記レーザー光の光軸上に位置するように前記反射鏡を支持し、かつ、前記反射鏡を前記ロボットアームの前記先端部および前記出射ユニットに対して相対的に前記光軸を中心に回転させる反射鏡駆動部と、
前記出射ユニットによる前記レーザー光の照射と、前記ロボットアームの前記先端部の移動と、前記反射鏡駆動部による前記反射鏡の回転を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記レーザー光の前記光軸が前記環状の溶着部の中心軸線と平行な状態で、前記出射ユニットおよび前記反射鏡が前記中心軸線を中心に旋回するように、前記ロボットアームの前記先端部を移動させるとともに、前記出射ユニットおよび前記反射鏡が旋回する時に、常に前記反射鏡で反射した前記レーザー光が前記環状の溶着部に向かって照射されるように、前記反射鏡駆動部による前記反射鏡の回転を制御することを特徴とするレーザー樹脂溶着装置。
【請求項2】
前記反射鏡駆動部は、前記レーザー光の前記光軸上において、前記反射鏡の位置および角度の少なくとも一方を手動または電動により変更できるように、前記反射鏡を支持することを特徴とする請求項1に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項3】
前記反射鏡駆動部は、前記反射鏡を着脱可能に支持することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項4】
前記レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第3樹脂部品の平坦面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第4樹脂部品の平坦面とを、線状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する場合に、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品を所定の位置に固定する第2ワーク固定部をさらに備え、
前記反射鏡が前記反射鏡駆動部から取り外されている時に、前記制御部は、前記レーザー光が前記線状の溶着部に沿って照射されるように、前記ロボットアームの前記先端部を前記線状の溶着部と平行に移動させることを特徴とする請求項3に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項5】
前記第2ワーク固定部は、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品の2つの前記平坦面が前記中心軸線に平行な直線と交差するように、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品を固定し、
前記制御部は、前記線状の溶着部を溶着する時に、前記レーザー光の前記光軸が前記中心軸線と平行な状態で、前記ロボットアームの前記先端部を移動させることを特徴とする請求項4に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項6】
前記レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第5樹脂部品の平坦面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第6樹脂部品の平坦面とを、線状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する場合に、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品を所定の位置に固定する第3ワーク固定部をさらに備え、
前記制御部は、前記反射鏡で反射した前記レーザー光が前記線状の溶着部に沿って照射されるように、前記反射鏡駆動部によって前記反射鏡を回転させることなく、前記ロボットアームの前記先端部を前記線状の溶着部と平行に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項7】
前記第3ワーク固定部は、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品の2つの前記平坦面が前記中心軸線に沿うように、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品を固定し、
前記制御部は、前記線状の溶着部を溶着する時に、前記レーザー光の前記光軸が前記中心軸線と平行な状態で、前記ロボットアームの前記先端部を移動させることを特徴とする請求項6に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記出射ユニットの姿勢を維持しながら前記出射ユニットおよび前記反射鏡が前記中心軸線を中心に旋回するように、前記ロボットアームの前記先端部を移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【請求項9】
前記反射鏡駆動部は、前記出射ユニットから出射された前記レーザー光が通過する孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー樹脂溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂部品の外周面と、レーザー光に対して透過性を有する樹脂部品の内周面とを、レーザー光によって溶着するために用いられるレーザー樹脂溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂部品と、レーザー光に対して透過性を有する樹脂部品とを重ね合わせて、レーザー光を照射することで、樹脂部品同士を溶着させることが行われている。例えば、特許文献1には、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂部品の外周面と、レーザー光に対して透過性を有する樹脂部品の内周面とを、環状の溶着部において溶着するレーザー樹脂溶着装置が開示されている。特許文献1に記載されたレーザー樹脂溶着装置は、レーザー光を出射する出射ユニットと、出射ユニットから出射されたレーザー光を反射させる反射鏡と、出射ユニットおよび反射鏡が取り付けられるプーリー(またはギア)と、プーリーを駆動する機構と、2つの樹脂部品を固定するワーク固定部とを備える。2つの樹脂部品は、環状の溶着部の中心軸線がプーリーの回転中心軸線と一致するようにワーク固定部に固定される。出射ユニットは、プーリーが回転した時に姿勢の変化を抑えつつ旋回できるように、軸受けを介してプーリーに取り付けられている。反射鏡は、出射ユニットから出射されて反射鏡で反射したレーザー光が環状の溶着部に向かって照射されるようにプーリーに固定される。プーリーを回転させつつ出射ユニットからレーザー光を出射させることにより、環状の溶着部に全周にわたってレーザー光が照射されて溶着部が溶着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6682063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたレーザー樹脂溶着装置では、出射ユニットおよび反射鏡がプーリーに取り付けられている。そのため、溶着部のサイズ毎に出射ユニットおよび反射鏡の位置を手動でプーリーの径方向に変更する必要があり、変更に手間を要する。
【0005】
また、特許文献1に記載されたレーザー樹脂溶着装置では、例えば、樹脂部品がL字状に曲がった形状などの複雑な形状である場合、樹脂部品をワーク固定部に固定できないか、もしくは、ワーク固定部に固定できるものの、プーリーを回転させた時に樹脂部品がレーザー樹脂溶着装置の一部と干渉し、溶着できない場合がある。このように、特許文献1に記載されたレーザー樹脂溶着装置は、汎用性が十分ではなかった。
【0006】
また、特許文献1に記載されたレーザー樹脂溶着装置では、プーリーまたはギアが出射ユニットを旋回させており、しかも、出射ユニットの旋回半径は比較的大きいため、精密機器である出射ユニットが振動しやすい。この振動によって、樹脂部品に対するレーザー光の照射位置がずれる場合がある。このようなずれが生じると、治具などを用いて調整する必要があり、メンテナンスに手間を要する。
【0007】
本発明は、様々なサイズの環状の溶着部をより容易に溶着することができ、かつ、汎用性およびメンテナンス性を向上できるレーザー樹脂溶着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のレーザー樹脂溶着装置は、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第1樹脂部品の外周面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第2樹脂部品の内周面とを、環状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する、レーザー樹脂溶着装置であって、前記第1樹脂部品および前記第2樹脂部品を所定の位置に固定する第1ワーク固定部と、移動可能な先端部を有するロボットアームと、前記ロボットアームの前記先端部に取り付けられて前記レーザー光を出射する出射ユニットと、前記出射ユニットから出射された前記レーザー光を反射させて前記レーザー光の照射方向を変更する反射鏡と、前記ロボットアームの前記先端部に取り付けられて前記出射ユニットから出射される前記レーザー光の光軸上に位置するように前記反射鏡を支持し、かつ、前記反射鏡を前記ロボットアームの前記先端部および前記出射ユニットに対して相対的に前記光軸を中心に回転させる反射鏡駆動部と、前記出射ユニットによる前記レーザー光の照射と、前記ロボットアームの前記先端部の移動と、前記反射鏡駆動部による前記反射鏡の回転を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記レーザー光の前記光軸が前記環状の溶着部の中心軸線と平行な状態で、前記出射ユニットおよび前記反射鏡が前記中心軸線を中心に旋回するように、前記ロボットアームの前記先端部を移動させるとともに、前記出射ユニットおよび前記反射鏡が旋回する時に、常に前記反射鏡で反射した前記レーザー光が前記環状の溶着部に向かって照射されるように、前記反射鏡駆動部による前記反射鏡の回転を制御することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によると、ロボットアームが出射ユニットおよび反射鏡を旋回させるため、出射ユニットおよび反射鏡の旋回半径を容易に変更できる。それにより、プーリーまたはギアが出射ユニットおよび反射鏡を旋回させる特許文献1のレーザー樹脂溶着装置に比べて、様々なサイズの環状の溶着部をより容易に溶着することができる。
【0010】
また、上記の構成によると、ロボットアームが出射ユニットおよび反射鏡を旋回させるため、特許文献1のレーザー樹脂溶着装置に比べて、出射ユニットおよび反射鏡の旋回中心に配置される第1樹脂部品および第2樹脂部品の配置スペースをより広く確保できる。そのため、樹脂部品(第1樹脂部品または第2樹脂部品)が、例えば、L字状に曲がった形状などの複雑な形状であっても第1ワーク固定部に固定できる。また、樹脂部品(第1樹脂部品または第2樹脂部品)が複雑な形状であっても、出射ユニットおよび反射鏡の旋回時に樹脂部品(第1樹脂部品または第2樹脂部品)がレーザー樹脂溶着装置と干渉しないように旋回半径を大きくすることができる。したがって、本発明のレーザー樹脂溶着装置は、特許文献1のレーザー樹脂溶着装置に比べて、より複雑な形状の樹脂部品(第1樹脂部品または第2樹脂部品)を溶着することができる。このように、本発明のレーザー樹脂溶着装置は、特許文献1のレーザー樹脂溶着装置に比べてより高い汎用性を有する。
【0011】
また、上記の構成によると、ロボットアームが出射ユニットを旋回させるため、プーリーまたはギアが出射ユニットおよび反射鏡を旋回させる場合に比べて、出射ユニットの振動が生じにくい。そのため、振動に起因する樹脂部品に対するレーザー光の照射位置のずれが生じにくい。したがって、特許文献1のレーザー樹脂溶着装置に比べて、レーザー樹脂溶着装置のメンテナンスの手間を低減できる。
【0012】
(2)上記(1)のレーザー樹脂溶着装置において、前記反射鏡駆動部は、前記レーザー光の前記光軸上において、前記反射鏡の位置および角度の少なくとも一方を手動または電動により変更できるように、前記反射鏡を支持してもよい。
【0013】
上記の構成によると、反射鏡の位置や角度を変更することで、より多様な形状の樹脂部品を溶着することができ、レーザー樹脂溶着装置の汎用性をより高めることができる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)のレーザー樹脂溶着装置において、前記反射鏡駆動部は、前記反射鏡を着脱可能に支持してもよい。
【0015】
上記の構成によると、レーザー樹脂溶着装置は、反射鏡が反射鏡駆動部に支持されていない状態でも溶着することができる。そのため、より多様な形状の樹脂部品を溶着することができ、レーザー樹脂溶着装置の汎用性をより高めることができる。
【0016】
(4)上記(3)のレーザー樹脂溶着装置は、さらに以下の特徴を有してもよい。レーザー樹脂溶着装置は、前記レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第3樹脂部品の平坦面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第4樹脂部品の平坦面とを、線状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する場合に、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品を所定の位置に固定する第2ワーク固定部をさらに備え、前記反射鏡が前記反射鏡駆動部から取り外されている時に、前記制御部は、前記レーザー光が前記線状の溶着部に沿って照射されるように、前記ロボットアームの前記先端部を前記線状の溶着部と平行に移動させる。
【0017】
上記の構成によると、レーザー樹脂溶着装置は、第1樹脂部品の外周面と第2樹脂部品の内周面とを環状の溶着部で溶着できることに加えて、反射鏡が反射鏡駆動部から取り外された状態で、第3樹脂部品の平坦面と第4樹脂部品の平坦面とを線状の溶着部で溶着できるため、レーザー樹脂溶着装置の汎用性をより高めることができる。
【0018】
(5)上記(4)のレーザー樹脂溶着装置は、さらに以下の特徴を有してもよい。前記第2ワーク固定部は、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品の2つの前記平坦面が前記中心軸線に平行な直線と交差するように、前記第3樹脂部品および前記第4樹脂部品を固定し、前記制御部は、前記線状の溶着部を溶着する時に、前記レーザー光の前記光軸が前記中心軸線と平行な状態で、前記ロボットアームの前記先端部を移動させる。
【0019】
上記の構成によると、第3樹脂部品の平坦面と第4樹脂部品の平坦面とを線状の溶着部で溶着する時の出射ユニットから出射されるレーザー光の光軸の方向が、第1樹脂部品の外周面と第2樹脂部品の内周面とを環状の溶着部で溶着する時と同じであるため、出射ユニットに接続される光ファイバーのねじれを抑制できる。
【0020】
(6)上記(1)~(5)のいずれかのレーザー樹脂溶着装置は、さらに以下の特徴を有してもよい。レーザー樹脂溶着装置は、前記レーザー光に対して吸収性を有する樹脂材料からなる第5樹脂部品の平坦面と、前記レーザー光に対して透過性を有する樹脂材料からなる第6樹脂部品の平坦面とを、線状の溶着部において前記レーザー光によって溶着する場合に、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品を所定の位置に固定する第3ワーク固定部をさらに備え、前記制御部は、前記反射鏡で反射した前記レーザー光が前記線状の溶着部に沿って照射されるように、前記反射鏡駆動部によって前記反射鏡を回転させることなく、前記ロボットアームの前記先端部を前記線状の溶着部と平行に移動させる。
【0021】
上記の構成によると、レーザー樹脂溶着装置は、第1樹脂部品の外周面と第2樹脂部品の内周面とを環状の溶着部で溶着できることに加えて、反射鏡が反射鏡駆動部に支持された状態で、第5樹脂部品の平坦面と第6樹脂部品の平坦面とを線状の溶着部で溶着できるため、レーザー樹脂溶着装置の汎用性をより高めることができる。
【0022】
(7)上記(6)のレーザー樹脂溶着装置は、さらに以下の特徴を有してもよい。前記第3ワーク固定部は、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品の2つの前記平坦面が前記中心軸線に沿うように、前記第5樹脂部品および前記第6樹脂部品を固定し、前記制御部は、前記線状の溶着部を溶着する時に、前記レーザー光の前記光軸が前記中心軸線と平行な状態で、前記ロボットアームの前記先端部を移動させる。
【0023】
上記の構成によると、第5樹脂部品の平坦面と第6樹脂部品の平坦面とを線状の溶着部で溶着する時の出射ユニットから出射されるレーザー光の光軸の方向が、第1樹脂部品の外周面と第2樹脂部品の内周面とを環状の溶着部で溶着する時と同じであるため、出射ユニットに接続される光ファイバーのねじれを抑制できる。
【0024】
(8)上記(1)~(7)のいずれかのレーザー樹脂溶着装置は、さらに以下の特徴を有してもよい。前記制御部は、前記出射ユニットの姿勢を維持しながら前記出射ユニットおよび前記反射鏡が前記中心軸線を中心に旋回するように、前記ロボットアームの前記先端部を移動させる。
【0025】
上記の構成によると、出射ユニットおよび反射鏡が旋回する時、出射ユニットの姿勢が維持されるため、出射ユニットに接続される光ファイバーのねじれを抑制できる。
【0026】
(9)上記(1)~(8)のいずれかのレーザー樹脂溶着装置において、前記反射鏡駆動部は、前記出射ユニットから出射された前記レーザー光が通過する孔を有してもよい。
【0027】
上記の構成によると、反射鏡駆動部は、反射鏡を安定的に支持しつつ、出射ユニットから出射されたレーザー光の光軸を中心に反射鏡を回転させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、様々なサイズの環状の溶着部をより容易に溶着することができ、かつ、レーザー樹脂溶着装置の汎用性およびメンテナンス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係るレーザー樹脂溶着装置が、第1ワーク固定部に固定された樹脂部品を溶着している状態を示す模式図である。
図2】(a)は、実施形態に係るレーザー樹脂溶着装置の部分拡大図であって、(b)は、(a)をX方向に見た図である。
図3】実施形態に係るレーザー樹脂溶着装置が、第1ワーク固定部に固定された樹脂部品を溶着している時のロボットアームの先端部の移動と、反射鏡駆動部による反射鏡の回転とを説明する図である。
図4】第1ワーク固定部に固定された樹脂部品の環状の溶着部のサイズが異なる場合の出射ユニットと反射鏡と溶着部との位置関係の例を示す図である。
図5】実施形態に係るレーザー樹脂溶着装置が、第2ワーク固定部に固定された樹脂部品を溶着している状態を示す模式図である。
図6】実施形態に係るレーザー樹脂溶着装置が、第3ワーク固定部に固定された樹脂部品を溶着している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1に示すように、レーザー樹脂溶着装置1は、第1ワーク固定部11と、ロボットアーム20と、出射ユニット30と、反射鏡ユニット40と、制御部50とを備える。反射鏡ユニット40は、反射鏡41と、反射鏡駆動部42とを含む。また、図5に示すように、レーザー樹脂溶着装置1は、第2ワーク固定部12をさらに備える。また、図6に示すように、レーザー樹脂溶着装置1は、第3ワーク固定部13をさらに備える。
【0032】
図1に示すように、第1ワーク固定部11は、レーザー光Lに対して吸収性を有する樹脂材料からなる樹脂部品101の外周面と、レーザー光Lに対して透過性を有する樹脂材料からなる樹脂部品102の内周面とを、環状の溶着部103においてレーザー光Lによって溶着する場合に、樹脂部品101および樹脂部品102を所定の位置に固定する。樹脂部品101は、本発明の第1樹脂部品に相当し、樹脂部品102は、本発明の第2樹脂部品に相当する。樹脂部品101の外周面と樹脂部品102の内周面とが接触するように、樹脂部品102は樹脂部品101の外側に配置される。第1ワーク固定部11は、溶着される環状の溶着部103の中心軸線Cxが所定のX方向と平行になるように、樹脂部品101および樹脂部品102を固定する。図1では、X方向は垂直方向であるが、X方向は水平方向でもよい。環状の溶着部103の形状は、例えば、円形または正多角形である。第1ワーク固定部11は、様々なサイズの環状の溶着部103を有する樹脂部品101および樹脂部品102を固定できるように構成されている。樹脂部品101および樹脂部品102の形状によっては、環状の溶着部103の中心軸線Cxの位置が変更されてもよい。つまり、第1ワーク固定部11は、複数箇所で樹脂部品101および樹脂部品102を固定できるように構成されてもよい。なお、本明細書において、溶着部という用語は、溶着後であるかどうかを問わずに、溶着される箇所を意味する。
【0033】
第2ワーク固定部12(図5参照)および第3ワーク固定部13(図6参照)の説明は後述する。
【0034】
ロボットアーム20は、移動可能な先端部21を有する。以下の説明において、ロボットアーム20の先端部21を、アーム先端部21と称する。ロボットアーム20は、所定の可動領域内において、アーム先端部21を自在に移動させることができる。ロボットアーム20は、アーム先端部21を移動させるための複数の電動モーター(図示せず)を有する。図1に示すロボットアーム20は、多関節ロボット(垂直多関節型)であるが、ロボットアーム20は、直角座標型ロボット(直交座標型)でもよく、スカラロボット(水平多関節型)でもよく、パラレルロボット(パラレルリンク型)でもよい。
【0035】
ロボットアーム20は、吊り下げられた状態で設置される。つまり、ロボットアーム20は、ロボットアーム20を支持するロボット支持部22から下方向に延びている。ロボットアーム20を支持するロボット支持部22とロボットアーム20との関係はこれに限らない。ロボットアーム20は、ロボット支持部22から上方向または横方向に延びていてもよい。
【0036】
出射ユニット30および反射鏡駆動部42は、アーム先端部21に取り付けられている。出射ユニット30および反射鏡駆動部42の一方または両方が、アーム先端部21に固定されてもよい。出射ユニット30および反射鏡駆動部42は、アーム先端部21に対する出射ユニット30および反射鏡駆動部42の位置を一体的に微調整できるように、調整機構(図示せず)を介してアーム先端部21に連結されてもよい。出射ユニット30は、アーム先端部21および反射鏡駆動部42に対する出射ユニット30の位置を微調整できるように、調整機構(図示せず)を介してアーム先端部21に連結されてもよい。反射鏡駆動部42は、アーム先端部21および出射ユニット30に対する反射鏡駆動部42の位置を微調整できるように、調整機構(図示せず)を介してアーム先端部21に連結されてもよい。但し、調整機構による位置調整は、溶着しない時に行われる。
【0037】
出射ユニット30は、レーザー光Lを出射するように構成される。出射ユニット30は、光ファイバー31によってレーザー発振器(図示せず)に連結される。レーザー発振器で発振されたレーザー光Lは、光ファイバー31を介して出射ユニット30に伝送される。出射ユニット30は、内部に集光レンズ(図示せず)を有する。この集光レンズを通ったレーザー光Lが、出射ユニット30から出射される。そのため、出射ユニット30は、出射ユニット30の外部の焦点で集光するようにレーザー光Lを出射する。以下の説明において、出射ユニット30から出射されるレーザー光Lの光軸Aを、出射光軸Aと称する。出射光軸Aは、出射ユニット30を通る。出射光軸Aは、アーム先端部21の移動に伴って移動する。
【0038】
上述したように、反射鏡ユニット40は、反射鏡41と、反射鏡駆動部42とを含む。反射鏡41は、出射ユニット30から出射されたレーザー光Lを反射させて、レーザー光Lの照射方向を変更するために設けられる。反射鏡駆動部42は、反射鏡41が出射光軸A上に位置するように反射鏡41を支持する。反射鏡駆動部42は、反射鏡41によってレーザー光Lの照射方向を約90°変更するように、反射鏡41を支持する。反射鏡駆動部42は、出射光軸Aに対する反射鏡41の傾斜角度を手動または電動で変更できて、レーザー光Lの照射方向を、例えば、30°~150°の任意の角度だけ変更できるように、反射鏡41を支持してもよい。また、反射鏡駆動部42は、反射鏡41をアーム先端部21および出射ユニット30に対して相対的に出射光軸Aを中心に回転させる。
【0039】
図2(a)および図2(b)に示すように、反射鏡ユニット40は、反射鏡41が設けられる反射鏡アタッチメント43と、反射鏡駆動部42で構成される。反射鏡駆動部42は、反射鏡アタッチメント43が着脱可能に取り付けられる連結部材44を有する。つまり、反射鏡駆動部42は、反射鏡41を着脱可能に支持する。反射鏡アタッチメント43は、連結部材44に対する取り付け位置を出射光軸Aと平行な方向に、使用者が手動で変更できるように構成される。具体的には、反射鏡アタッチメント43は、出射光軸Aと平行に延びる複数の棒状部43aを有する。複数の棒状部43aが、連結部材44に形成された複数の孔に挿入された状態で、ボルトなどによって反射鏡アタッチメント43は連結部材44に固定される。反射鏡アタッチメント43および連結部材44は、棒状部43aの挿入深さを変更できるように構成されている。このように、反射鏡駆動部42は、出射光軸A上において反射鏡41の位置を手動により変更できるように、反射鏡41を支持する。
【0040】
反射鏡駆動部42は、連結部材44に加えて、電動モーター45と、駆動プーリー46と、従動プーリー47と、ベルト48と、ブラケット49とを有する。ブラケット49は、アーム先端部21に固定されるか、もしくは、上述の調整機構(図示せず)を介してアーム先端部21に連結される。電動モーター45のハウジングは、ブラケット49に固定される。電動モーター45の出力軸は、駆動プーリー46に固定される。ブラケット49には、円形の孔49aが形成されている。従動プーリー47は、軸受を介してブラケット49の円形の孔49aの周囲に連結されている。従動プーリー47は、出射光軸Aを中心に相対回転可能にブラケット49に連結されている。連結部材44は環状であって、従動プーリー47の側面に固定される。出射ユニット30から出射されたレーザー光Lは、ブラケット49の円形の孔49aと、従動プーリー47の内側と、環状の連結部材44の内側を通り抜けた後、反射鏡41に入射する。このように、反射鏡駆動部42は、出射ユニット30から出射されたレーザー光Lが通過する孔を有する。なお、連結部材44の形状は、レーザー光Lを遮らず、かつ、反射鏡アタッチメント43を着脱可能であれば、環状でなくてもよい。電動モーター45の出力軸の回転は、駆動プーリー46とベルト48とを介して従動プーリー47に伝達される。それにより、連結部材44が、反射鏡41が設けられた反射鏡アタッチメント43と一体的に出射光軸Aを中心に回転する。このように、反射鏡駆動部42は、電動モーター45によって反射鏡41を回転させる。
【0041】
制御部50(図1参照)は、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射と、アーム先端部21の移動と、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。制御部50は、出射ユニット30およびレーザー発振器(図示せず)の少なくとも一方を制御することで、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射を制御する。制御部50は、ロボットアーム20が有する複数の電動モーター(図示せず)を制御することで、アーム先端部21の位置と姿勢を制御する。制御部50は、反射鏡駆動部42が有する電動モーター45を制御することで、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転速度と回転角度を制御する。制御部50は、情報処理を実行するプロセッサと、プログラムなどの情報を記憶する記憶部とを有する。制御部50は、使用者によって制御部50に入力された情報に基づいて、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射と、アーム先端部21の移動と、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。
【0042】
制御部50は、第1ワーク固定部11に固定された樹脂部品101と樹脂部品102との環状の溶着部103を溶着する時に、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射と、アーム先端部21の移動と、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。ここで、第1ワーク固定部11に固定された樹脂部品101と樹脂部品102との環状の溶着部103を溶着する場合の制御部50による制御を、第1溶着制御と称する。第1溶着制御により、環状の溶着部103は全周にわたって溶着される。
【0043】
図3は、環状の溶着部103の溶着を開始する時点におけるアーム先端部21、出射ユニット30、電動モーター45およびブラケット49を実線で、反射鏡アタッチメント43および反射鏡41を破線で表示している。また、図3は、環状の溶着部103の溶着を行っている時のアーム先端部21、出射ユニット30、電動モーター45、ブラケット49、反射鏡アタッチメント43および反射鏡41を二点鎖線で表示している。
【0044】
制御部50は、第1溶着制御において、出射ユニット30からレーザー光Lを出射させつつ、アーム先端部21を移動させつつ、反射鏡駆動部42によって反射鏡41を回転させる。制御部50は、第1溶着制御において、出射光軸Aが中心軸線Cxと平行な状態で、出射ユニット30の姿勢を維持しながら、出射ユニット30および反射鏡41が中心軸線Cxを中心に旋回するように、アーム先端部21を移動させる。ここで、出射ユニット30の姿勢を維持するとは、X方向に直交する任意の方向(例えば、図3の紙面左右方向)に対する出射ユニット30の傾きを変化させないことを意味する。そのため、出射ユニット30に接続された光ファイバー31のねじれを抑制しつつ、出射ユニット30および反射鏡41を旋回させることができる。また、制御部50は、第1溶着制御において、出射ユニット30および反射鏡41が中心軸線Cxを中心に旋回する時に、常に反射鏡41で反射したレーザー光Lが環状の溶着部103に向かって照射されるように、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。つまり、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転角度は、中心軸線Cxを中心とした出射ユニット30および反射鏡41の旋回角度に基づいて設定される。制御部50は、第1溶着制御の実行前に、第1溶着制御による溶着が可能となるように、アーム先端部21と反射鏡駆動部42とを制御する。
【0045】
出射ユニット30から溶着部103までのレーザー光Lの経路長は、レーザー光Lの焦点が溶着部103またはその付近に位置するように設定される。また、反射鏡41から溶着部103までのレーザー光Lの経路長は、以下の2つの理由から、所定の範囲内に設定されることが好ましい。第1の理由は、反射鏡41から溶着部103までのレーザー光Lの経路長が長すぎる場合、反射鏡41の僅かなずれが照射位置の許容できないずれに繋がりやすいからである。第2の理由は、反射鏡41から溶着部103までのレーザー光Lの経路長が短すぎる場合、つまり、出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長が長すぎる場合、反射鏡41に照射されるレーザー光Lが集中しすぎて、反射鏡41の温度が高くなりすぎる虞があるからである。
【0046】
第1溶着制御において、レーザー光Lは、環状の溶着部103に対して、1回(1周)のみ照射されてもよく、複数回(複数周)照射されてもよい。レーザー光Lを複数回照射した場合、より強固に溶着することができる。レーザー光Lを複数回照射する場合、制御部50は、出射ユニット30および反射鏡41を同じ軌道で複数回旋回させる。
【0047】
レーザー樹脂溶着装置1は、ロボットアーム20によって出射ユニット30および反射鏡41を旋回させる。そのため、出射ユニット30および反射鏡41の旋回半径を容易に変更できる。それにより、様々なサイズの環状の溶着部103を容易に溶着することができる。
【0048】
また、レーザー樹脂溶着装置1は、ロボットアーム20によって出射ユニット30を旋回させるため、出射ユニット30および反射鏡41の旋回中心に配置される樹脂部品101および樹脂部品102の配置スペースを広く確保できる。そのため、樹脂部品101または樹脂部品102が、例えば、L字状に曲がった形状などの複雑な形状であっても第1ワーク固定部11に固定できる。また、樹脂部品101または樹脂部品102が複雑な形状であっても、出射ユニット30および反射鏡41の旋回時に樹脂部品101または樹脂部品102がレーザー樹脂溶着装置1と干渉しないように旋回半径を大きくすることができる。したがって、レーザー樹脂溶着装置1は、樹脂部品101または樹脂部品102の形状が複雑であっても溶着することができる。このように、レーザー樹脂溶着装置1は、高い汎用性を有する。
【0049】
また、レーザー樹脂溶着装置1は、ロボットアーム20によって出射ユニット30を旋回させるため、出射ユニット30の振動が生じにくい。そのため、振動に起因する樹脂部品101、102に対するレーザー光Lの照射位置のずれが生じにくい。したがって、レーザー樹脂溶着装置1のメンテナンスの手間を低減できる。
【0050】
ここで、図4(a)~図4(c)を用いて、サイズが異なる2つの環状の溶着部103を溶着する場合の出射ユニット30と反射鏡41と溶着部103との位置関係の例について説明する。2つの環状の溶着部103のうちサイズが小さい方を、溶着部103Sとし、溶着部103Sを有する樹脂部品101および樹脂部品102を、樹脂部品101Sおよび樹脂部品102Sとする。また、2つの環状の溶着部103のうちサイズが大きい方を、溶着部103Bとし、溶着部103Bを有する樹脂部品101および樹脂部品102を、樹脂部品101Bおよび樹脂部品102Bとする。図4(a)は、溶着部103Sを溶着する時の出射ユニット30と反射鏡41との位置関係の例を示し、図4(b)および図4(c)は、溶着部103Bを溶着する時の出射ユニット30と反射鏡41との位置関係の2つの例を示す。溶着部103Sを溶着する時の出射ユニット30および反射鏡41の旋回半径を、旋回半径RSとし、溶着部103Bを溶着する時の出射ユニット30および反射鏡41の旋回半径を、旋回半径RBとする。溶着部103Sを溶着する時の出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長を、経路長LSとし、溶着部103Bを溶着する時の出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長を、経路長LBとする。出射ユニット30から溶着部103Bまでのレーザー光Lの経路長と、出射ユニット30から溶着部103Sまでのレーザー光Lの経路長は、同じであることが好ましい。そこで、図4(b)に示すように、溶着部103Bを溶着する時、経路長LBを経路長LSと同じにしつつ、旋回半径RBを旋回半径RSよりも長くしてもよい。また、図4(c)に示すように、溶着部103Bを溶着する時、旋回半径RBを旋回半径RSと同じにしつつ、経路長LBを経路長LSよりも長くしてもよい。反射鏡駆動部42が、出射光軸A上で反射鏡41の位置を変更できるように反射鏡41を支持するため、出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長を変更することができる。そのため、出射ユニット30および反射鏡41の旋回半径を変えることなく、サイズの異なる環状の溶着部103S、103Bを容易に溶着することができる。したがって、レーザー樹脂溶着装置1の高い汎用性を確保しつつ、制御部50による制御を簡素化できる。
【0051】
また、樹脂部材101または樹脂部材102の形状によっては、反射鏡41から溶着部103までのレーザー光Lの経路長を上述した所定の範囲内に設定すると、樹脂部材101または樹脂部材102が反射鏡アタッチメント43などと干渉する場合がある。このような場合には、干渉を回避するために、反射鏡41から溶着部103までのレーザー光Lの経路長が所定の範囲よりも長くなるように、出射ユニット30および反射鏡41の旋回半径を設定する。それに加えて、出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長を短くする。それにより、出射ユニット30から溶着部103までのレーザー光Lの経路長が長くなりすぎることを抑制できる。反射鏡駆動部42が、出射光軸A上で反射鏡41の位置を変更できるように反射鏡41を支持するため、出射ユニット30から反射鏡41までのレーザー光Lの経路長を変更することができる。そのため、樹脂部材101または樹脂部材102が特殊な形状であっても溶着することができる。したがって、レーザー樹脂溶着装置1の汎用性をより高められる。
【0052】
樹脂部品101の外周面と樹脂部品102の内周面とを、X方向に並列する2つの環状の溶着部103を溶着する場合には、制御部50は、第1溶着制御により1つ目の環状の溶着部103にレーザー光Lを照射して溶着した後、出射ユニット30からレーザー光Lを照射させることなく、ロボット先端部をX方向(溶着部103の中心軸線Cxに平行な方向)に移動させる。その後、制御部50は、第1溶着制御により2つ目の環状の溶着部103にレーザー光Lを照射して溶着する。特許文献1のレーザー樹脂溶着装置では、並列する2つの環状の溶着部の溶着を行う場合、1つ目の環状の溶着部を溶着した後、ワーク固定部に対する樹脂部品の取り付け位置を変更する必要がある。そのため、レーザー樹脂溶着装置1は、並列する2つの環状の溶着部103を、特許文献1のレーザー樹脂溶着装置よりも容易に溶着することができる。なお、環状の溶着部103は、3つ以上でもよい。
【0053】
図5に示すように、第2ワーク固定部12は、レーザー光Lに対して吸収性を有する樹脂材料からなる樹脂部品201の平坦面201aと、レーザー光Lに対して透過性を有する樹脂材料からなる樹脂部品202の平坦面202aとを、線状の溶着部203においてレーザー光Lによって溶着する場合に、樹脂部品201および樹脂部品202を所定の位置に固定する。樹脂部品201は、本発明の第3樹脂部品に相当し、樹脂部品202は、本発明の第4樹脂部品に相当する。樹脂部品201および樹脂部品202の2つの平坦面201a、202aは重ね合わされる。線状の溶着部203の形状は、特に限定されない。第2ワーク固定部12は、2つの平坦面201a、202aがX方向と交差するように、樹脂部品201および樹脂部品202を固定する。つまり、第2ワーク固定部12は、2つの平坦面201a、202aが、第1ワーク固定部11に樹脂部品101および樹脂部品102が固定された時の環状の溶着部103の中心軸線Cxに平行な直線と交差するように、樹脂部品201および樹脂部品202を固定する。第2ワーク固定部12は、2つの平坦面201a、202aがX方向と直交するように、樹脂部品201および樹脂部品202を固定してもよい。なお、第1ワーク固定部11は、第2ワーク固定部12を兼ねていてもよい。
【0054】
樹脂部品201と樹脂部品202との溶着を行う場合、予め、使用者によって反射鏡アタッチメント43は、反射鏡駆動部42から取り外される。
【0055】
制御部50は、第2ワーク固定部12に固定された樹脂部品201と樹脂部品202との線状の溶着部203を溶着する時に、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射と、アーム先端部21の移動とを制御する。ここで、第2ワーク固定部12に固定された樹脂部品201と樹脂部品202との線状の溶着部203を溶着する場合の制御部50による制御を、第2溶着制御と称する。制御部50は、反射鏡41が反射鏡駆動部42に支持されていない状態で、第2溶着制御を実行する。
【0056】
制御部50は、第2溶着制御において、出射ユニット30から出射されたレーザー光Lが、第2ワーク固定部12に固定された樹脂部品201および樹脂部品202の線状の溶着部203に沿って照射されるように、出射ユニット30からレーザー光Lを出射させつつ、アーム先端部21を線状の溶着部203と平行に移動させる。制御部50は、第2溶着制御において、出射光軸AがX方向と平行な状態で、アーム先端部21を移動させる。これにより、出射ユニット30に接続された光ファイバー31のねじれを抑制できる。制御部50は、第2溶着制御の実行前に、第2溶着制御による溶着が可能となるように、ロボットアーム20を制御する。
【0057】
このように、レーザー樹脂溶着装置1は、樹脂部品101、102の外周面と内周面とを溶着部103で溶着できることに加えて、樹脂部品201、202の2つの平坦面201a、202aを溶着部203で溶着できるため、汎用性が高い。さらに、レーザー樹脂溶着装置1は、反射鏡41が反射鏡駆動部42から取り外された状態で、溶着部203を溶着できる。そのため、より多様な形状の樹脂部品を溶着することができ、レーザー樹脂溶着装置1の汎用性をより高めることができる。
【0058】
図6に示すように、第3ワーク固定部13は、レーザー光Lに対して吸収性を有する樹脂材料からなる樹脂部品301の平坦面301aと、レーザー光Lに対して透過性を有する樹脂材料からなる樹脂部品302の平坦面302aとを、線状の溶着部303においてレーザー光Lによって溶着する場合に、樹脂部品301および樹脂部品302を所定の位置に固定する。樹脂部品301は、本発明の第5樹脂部品に相当し、樹脂部品302は、本発明の第6樹脂部品に相当する。樹脂部品301および樹脂部品302の2つの平坦面301a、302aは重ね合わされる。線状の溶着部303の形状は、特に限定されない。第3ワーク固定部13は、2つの平坦面301a、302aがX方向に沿うように、樹脂部品301および樹脂部品302を固定する。つまり、第3ワーク固定部13は、2つの平坦面301a、302aが、第1ワーク固定部11に樹脂部品101および樹脂部品102が固定された時の環状の溶着部103の中心軸線Cxに沿うように、樹脂部品301および樹脂部品302を固定する。第3ワーク固定部13は、2つの平坦面301a、302aがX方向と平行になるように、樹脂部品301および樹脂部品302を固定してもよい。なお、第1ワーク固定部11は、第3ワーク固定部13を兼ねていてもよい。また、第2ワーク固定部12は、第3ワーク固定部13を兼ねていてもよい。
【0059】
制御部50は、第3ワーク固定部13に固定された樹脂部品301と樹脂部品302との線状の溶着部303を溶着する時に、出射ユニット30によるレーザー光Lの照射と、アーム先端部21の移動を制御する。ここで、第3ワーク固定部13に固定された樹脂部品301と樹脂部品302との線状の溶着部303を溶着する場合の制御部50による制御を、第3溶着制御と称する。制御部50は、第3溶着制御において、反射鏡駆動部42を制御しない。つまり、制御部50は、第3溶着制御において、反射鏡駆動部42によって反射鏡41を回転させない。
【0060】
制御部50は、第3溶着制御において、出射ユニット30から出射されて反射鏡41で反射したレーザー光Lが、第3ワーク固定部13に固定された樹脂部品301および樹脂部品302の線状の溶着部303に照射されるように、出射ユニット30からレーザー光Lを出射させつつ、アーム先端部21を線状の溶着部303と平行に移動させる。制御部50は、第3溶着制御において、出射光軸AがX方向と平行な状態で、アーム先端部21を移動させる。これにより、出射ユニット30に接続された光ファイバー31のねじれを抑制できる。制御部50は、第3溶着制御の実行前に、第3溶着制御による溶着が可能となるように、ロボットアーム20と反射鏡駆動部42とを制御する。
【0061】
このように、レーザー樹脂溶着装置1は、樹脂部品101、102の外周面と内周面とを溶着部103で溶着できることに加えて、樹脂部品301、302の2つの平坦面301a、302aを溶着部303で溶着できるため、汎用性が高い。
【0062】
また、レーザー樹脂溶着装置1は、反射鏡41が反射鏡駆動部42に支持されていない状態で、樹脂部品201、202の2つの平坦面201a、202aを溶着部203で溶着できることに加えて、反射鏡41が反射鏡駆動部42に支持されている状態で、樹脂部品301、302の2つの平坦面301a、302aを溶着部303で溶着できる。そのため、より多様な形状の樹脂部品を溶着することができ、レーザー樹脂溶着装置1の汎用性をさらに高めることができる。
【0063】
第1溶着制御と第3溶着制御とを変更して組み合わせることで、レーザー樹脂溶着装置1は、円形でも正多角形でもない周面の溶着部を溶着することもできる。例えば、X方向に見てU字状の溶着部を溶着することができる。この場合、制御部50は、出射ユニット30からレーザー光Lを照射させつつ、ロボットアーム20によって出射ユニット30および反射鏡41をU字状に移動させつつ、反射鏡41で反射したレーザー光Lが常にU字状の溶着部に照射されるように、反射鏡駆動部42による反射鏡41の回転を制御する。
【0064】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0065】
上記実施形態は、例えば、次のように変更可能である。
【0066】
反射鏡駆動部42は、駆動プーリー46と従動プーリー47とベルト48との代わりに、駆動ギアと従動ギアを有してもよい。駆動ギアは、従動ギアと噛み合う。駆動ギアは、電動モーター45の出力軸に固定される。電動モーター45の出力軸の回転は、駆動ギアを介して従動ギアに伝達される。従動ギアのその他の構成は、従動プーリー47と同様である。また、駆動ギアと従動ギアとの間に、少なくとも1つの中間ギアが設けられ、電動モーター45の出力軸の回転が、駆動ギアと少なくとも1つの中間ギアとを介して、従動ギアに伝達されてもよい。少なくとも1つの中間ギアは、軸受を介してブラケット49に連結される。
【0067】
反射鏡駆動部42は、反射鏡41を回転させるための電動モーターとして、中空モーターを有してもよい。中空モーターは、中空の出力軸を有する。中空の出力軸は、例えば、反射鏡アタッチメント43に固定される。中空モーターのハウジングは、アーム先端部21に固定されるか、もしくは、上述の調整機構(図示せず)を介してアーム先端部21に連結される。
【0068】
反射鏡駆動部42が備える、出射光軸A上において、反射鏡41の位置を手動で変更するための構成は、上述した構成に限らない。また、反射鏡駆動部42は、出射光軸A上において、反射鏡41の位置を電動で変更できるように構成されてもよい。例えば、反射鏡駆動部42は、電動モーターと、この電動モーターの出力軸の回転を直線運動に変換する機構とを備えていてもよい。
【0069】
制御部50は、第1溶着制御において、出射ユニット30の姿勢が維持されることなく、出射ユニット30および反射鏡41が中心軸線Cxを中心に旋回するように、アーム先端部21を移動させてもよい。つまり、出射ユニット30および反射鏡41が、中心軸線Cxを中心に1周旋回する間に、X方向に交差する任意の方向に対する出射ユニット30の傾きを所定の角度だけ変化させてもよい。所定の角度は、例えば、45°以下の角度でもよい。制御部50は、出射光軸Aが中心軸線Cxと平行な状態で、出射ユニット30の姿勢が維持されることなく、出射ユニット30および反射鏡41が中心軸線Cxを中心に旋回するように、アーム先端部21を移動させてもよい。
【0070】
反射鏡駆動部42は、出射光軸A上において、反射鏡41の位置を変更できないように、反射鏡41を支持してもよい。反射鏡駆動部42は、着脱不能に反射鏡41を支持してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 レーザー樹脂溶着装置
11 第1ワーク固定部
12 第2ワーク固定部
13 第3ワーク固定部
20 ロボットアーム
21 先端部
30 出射ユニット
41 反射鏡
42 反射鏡駆動部
101、101B、101S、102、102B、102S、201、202、301、302 樹脂部品
103、103B、103S、203、303 溶着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6