(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076688
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20240530BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188369
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 智一
(72)【発明者】
【氏名】中込 優
【テーマコード(参考)】
2H189
2H192
【Fターム(参考)】
2H189DA07
2H189JA14
2H189LA10
2H189LA14
2H189LA15
2H192AA24
2H192BB12
2H192BB53
2H192BC34
2H192CB02
2H192CB08
2H192CB37
2H192CB83
2H192CC73
2H192EA03
2H192EA42
2H192EA62
2H192EA67
2H192JA32
(57)【要約】
【課題】TFT基板100と対向基板200との平行方向のずれを抑制し、輝度が高い、かつ、コントラストが高い高精細液晶表示装置を可能とする。
【解決手段】
TFT(薄膜トランジスタ)を覆って有機パッシベーション膜115が形成され、有機パッシベーション膜115の上に画素電極とコモン電極が形成され、有機パッシベーション膜115には画素電極とTFTを接続するためのスルーホール130が形成されたTFT基板100と、液晶層300を挟んで対向基板200が配置した液晶表示装置であって、対向基板200には、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定する柱状スペーサ10が形成され、スルーホール130内には樹脂による平坦化膜30が形成され、スルーホール130内には、平坦化膜30の表面とスルーホール130の側壁とで構成される凹部が形成され、柱状スペーサ10の先端は凹部内に存在することを特徴とする液晶表示装置。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体膜、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極を有するTFT(薄膜トランジスタ)を覆って有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に画素電極とコモン電極が形成され、前記有機パッシベーション膜には前記画素電極と前記TFTを接続するためのスルーホールが形成されたTFT基板と、液晶層を挟んで前記TFT基板と対向した対向基板が配置した液晶表示装置であって、
前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板の間隔を規定する柱状スペーサが形成され、
前記スルーホール内には樹脂による平坦化膜が形成され、
前記スルーホール内には、前記平坦化膜の表面と前記スルーホールの側壁とで構成される凹部が形成され、
前記柱状スペーサの先端は前記凹部内に存在することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記柱状スペーサは前記凹部と接触していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記柱状スペーサは前記凹部と接触していないことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記柱状スペーサは、前記TFT基板あるいは前記対向基板が押し圧力を受けた場合に、前記凹部と接触することを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
平面で視て、前記凹部の径は、前記柱状スペーサの径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記凹部の深さは0.4μm乃至0.8μmであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記平坦化膜は前記有機パッシベーション膜と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記平坦化膜は、前記スルーホール外においても存在し、前記スルーホール内における前記平坦化膜の厚さは、前記スルーホール外における前記平坦化膜の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記柱状スペーサ、前記平坦化膜、前記スルーホール、前記ゲート電極、及び前記半導体膜は、平面で視て重複していることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記半導体膜は、酸化物半導体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
カラーフィルタは前記TFT基板側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記コモン電極と重複して、金属膜を含む遮光膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記対向基板の表示領域にはブラックマトリクスは存在していないことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして画素毎に、液晶分子によりバックライトからの光の透過率を制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置は、VR(Virtual Reality)表示装置(以後VRともいう)等の、高精細画面を必要とする表示装置にも使用される。高精細画面では、画素ピッチが小さくなるので、画素の透過率が問題となる。特許文献1には、画素における光透過率の減少を抑制するために、画素内の配線に透明である酸化物半導体を使用する構成が記載されている。また、特許文献1には、TFTと画素電極を接続するための、有機パッシベーション膜に形成されるスルーホール部分にTFT基板側から対向基板側に向かう柱状スペーサを配置して画素面積を節約する構成が記載されている。
【0004】
TFT基板と対向基板の間のスペースを維持するために、一般には柱状スペーサが使用される。しかし、通常の柱状スペーサは、TFT基板と対向基板との水平方向のズレは抑制することが出来ない。特許文献2及び特許文献3には、対向基板に柱状スペーサを形成した状態において、TFT基板側に凹部を形成し、柱状スペーサの先端をこの凹部にはめ込むことによって、TFT基板と対向基板の横ずれを防止する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-153055号公報
【特許文献2】特開2019-174736号公報
【特許文献3】特開2019-120761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示装置が高精細化すると、液晶表示パネルの光透過率が問題となる。TFT、配線、接続のためのスルーホール等の要素は各画素から省略することはできないので、必然的に画像を形成するための光透過領域が小さくなる。一方、画素ピッチが小さくなるにしたがって、TFT基板と対向基板との平行方向のずれ(以後、横方向のずれともいう)の影響が出やすくなる。すなわち、従来では問題にならなかった横ずれの量でも、画素ピッチが小さくなると問題が出る場合があるからである。
【0007】
本発明の課題は、画素ピッチが小さい、高精細の液晶表示装置において、透過率の減少を抑制し、かつ、TFT基板と対向基板の間の横ずれを抑制することが出来る液晶表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0009】
(1)半導体膜、ゲート電極、ドレイン電極、ソース電極を有するTFT(薄膜トランジスタ)を覆って有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜の上に画素電極とコモン電極が形成され、前記有機パッシベーション膜には前記画素電極と前記TFTを接続するためのスルーホールが形成されたTFT基板と、液晶層を挟んで前記TFT基板と対向した対向基板が配置した液晶表示装置であって、前記対向基板には、前記TFT基板と前記対向基板の間隔を規定する柱状スペーサが形成され、前記スルーホール内には樹脂による平坦化膜が形成され、前記スルーホール内には、前記平坦化膜の表面と前記スルーホールの側壁とで構成される凹部が形成され、前記柱状スペーサの先端は前記凹部内に存在することを特徴とする液晶表示装置。
【0010】
(2)前記柱状スペーサは前記凹部と接触していることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0011】
(3)平面で視て、前記凹部の径は、前記柱状スペーサの径よりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0012】
(4)前記平坦化膜は、前記スルーホール外においても存在し、前記スルーホール内における前記平坦化膜の厚さは、前記スルーホール外における前記平坦化膜の厚さよりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0013】
(5)前記柱状スペーサ、前記平坦化膜、前記スルーホール、前記ゲート電極、及び前記半導体膜は、平面で視て重複していることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】比較例による液晶表示装置の表示領域の断面図である。
【
図4】
図3に対応する液晶表示装置において、有機パッシベーション膜のスルーホールを形成するまでを記載した平面図である。
【
図5】
図4に対し、さらに、画素電極とコモン電極を記載した平面図である。
【
図7】比較例における他の問題点を示す断面図である。
【
図8】比較例のさらに他の問題点を示す平面図である。
【
図12】
図11に対応するスルーホール、平坦化膜、柱状スペーサの関係を示す平面図である。
【
図14】
図13に対応する、スルーホール、平坦化膜、柱状スペーサの関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。液晶表示装置には、画素電極とコモン電圧の上下関係によって、画素電極トップ、コモン電極トップの方式が存在する。また、従来は、カラーフィルタは対向基板に形成される場合が多かったが、高精細液晶表示装置では、TFT基板に形成される場合もある。これは、COA(Color Filter on Array)と呼ばれている。本発明は、このいずれの方式でも適用することが出来る。
【実施例0016】
図1は液晶表示装置の平面図であり、
図2は
図1のA-A断面図である。
図1及び
図2において、TFT基板100と対向基板200が周辺でシール材150を介して接着し、内部に液晶300が封止されている。TFT基板100と対向基板200が重なった領域に表示領域50が形成されている。表示領域50内のTFT基板100には、横方向(x方向)に走査線51が延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線52が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線51と映像信号線52に囲まれた領域に画素53が形成されている。
【0017】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分は端子領域60となっている。端子領域60には、液晶表示装置に電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板62が接続している。また、端子領域60には、映像信号等を形成するための、ドライバIC61が配置している。なお、端子領域60の面積が小さい場合は、ドライバIC62はフレキシブル配線基板側に搭載される場合もある。
【0018】
TFT基板100と対向基板200の間隔、すなわち、液晶層300の厚さは、表示領域全体にわたって一定に保たれている必要がある。このために、
図2においては、柱状スペーサ10、20を対向基板200側に配置し、TFT基板100と対向基板200の間隔を維持している。なお、柱状スペーサはTFT基板100側に形成される場合もある。
【0019】
柱状スペーサにはメイン柱状スペーサ10とサブ柱状スペーサ20が存在している。メイン柱状スペーサ10は通常状態において、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定している。サブ柱状スペーサ20は、メイン柱状スペーサ10より高さが低く形成されている。サブ柱状スペーサ20は通常状態ではTFT基板100に接触していないが、対向基板200あるいはTFT基板100に押し圧力が加わった場合にTFT基板100に接触することによって、TFT基板100と対向基板200のギャップが極端に小さくなることを防止している。サブ柱状スペーサ20の直径はメイン柱状スペーサ10の直径よりも大きく、また、サブ柱状スペーサ20の数はメイン柱状スペーサ10の数よりも多い。
【0020】
図1において、表示領域50の両側の額縁部分には、走査信号を形成する走査信号駆動回路が形成されている。本実施例では、表示領域50のTFTには酸化物半導体TFTが使用され、周辺駆動回路には、ポリシリコン半導体TFTが使用されている。ポリシリコン半導体は移動度が酸化物半導体よりも大きいので、周辺回路の形成には好適である。一方、酸化物半導体を用いたTFTの移動度はポリシリコン半導体よりも小さいが、リーク電流がポリシリコン半導体を用いたTFTよりも小さいので、画素におけるスイッチング素子として好適である。
【0021】
図3は、比較例による液晶表示装置における、酸化物半導体TFTを有する画素領域の断面図と額縁領域に形成されたポリシリコン半導体TFTを有する周辺回路の断面図である。
図3において、左側は周辺駆動回路の断面図であり、右側が画素部の断面図である。画素部も周辺駆動回路も同一のプロセスで形成されるので、周辺回路部も画素部も同じ層は同じ番号となっている。周辺駆動回路において、回路の詳細は省略されており、回路に使用されるポリシリコン半導体102を用いたTFTのみ記載されている。
【0022】
図3において、例えば、ガラスで形成されたTFT基板100の上に下地膜101が形成されている。下地膜101の役割は、ガラス基板100等からの不純物がポリシリコン半導体102あるいは酸化物半導体107を汚染することを防止することである。下地膜101は一般には、窒化シリコン層(以後SiN層とも言う)と酸化シリコン層(以後SiOとも言う)の2層構造となっている。
【0023】
下地膜101の上には、周辺駆動回路において、ポリシリコン半導体膜102が形成されている。ポリシリコン半導体膜102は、当初はa-Si膜が形成され、これがエキシマレーザによってポリシリコンに変換されたものである。下地膜101とa-Si膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)によって連続して形成される。
【0024】
ポリシリコン半導体膜102を覆って、第1ゲート絶縁膜103が形成される。第1ゲート絶縁膜103は、TEOS(Tetraethoxysilane)を原料としたSiO膜である。第1ゲート絶縁膜103の上に第1ゲート電極104が形成される。第1ゲート電極104は、MoW、Ti、又は、Ti-Al-Tiの積層膜等で形成される。一方、画素側では、第1ゲート電極104と同じ材料で、同じプロセスによって、第1遮光膜105が形成されている。第1遮光膜105は、
図1における走査線51と同じ方向に延在し、走査線51と同じ方向に配列している。第1遮光膜105は、酸化物半導体TFT、スルーホール130等を下側から覆って、バックライトからの光を遮光する。
【0025】
以後の説明は、画素の断面構造について行う。第1遮光膜105を覆って、第1層間絶縁膜絶縁膜106が形成されている。第1層間絶縁膜106は、2層構造であり、下層はSiN層で上側がSiO層となっている。第1層間絶縁膜106の上に形成される酸化物半導体107から酸素を抜かないようにするためである。第1層間絶縁膜106の上に形成される酸化物半導体膜107は、第2ゲート電極109の下において、TFTのチャンネルを形成する。
【0026】
酸化物半導体膜107を覆って第2ゲート絶縁膜108が形成されている。第2ゲート絶縁膜107は2層のSiO層で形成されている。酸化物半導体膜107のチャンネル部に対応する部分は、酸素リッチな第1SiO層であり、その他の部分は緻密な膜を有する第2SiO膜である。第1SiO膜は酸化物半導体膜107に酸素を供給出来るようにするために、酸素リッチな膜としている。
【0027】
第2ゲート絶縁膜108の上に第2ゲート電極109が形成されている。第2ゲート電極109の材料は、第1ゲート電極103と同様な材料を使用することが出来る。ところで、
図3では、第2ゲート電極109の下にTFTのチャンネル部が形成されるトップゲートになっているが、第1遮光膜105にゲート電圧を印加すれば、デュアルゲート方式のTFTとすることが出来る。
【0028】
第2ゲート電極109を覆って第2層間絶縁膜110が形成されている。第2層間絶縁膜110もSiN層及びSiO層の2層構造のものが多い。また、SiO層が下層の場合が多い。酸化物半導体膜膜107から酸素を抜かないようにするためである。
【0029】
第2層間絶縁膜110を形成後、周辺回路では、4層の絶縁膜、すなわち、第1ゲート絶縁膜103、第1層間絶縁膜106、第2ゲート絶縁膜108、第2層間絶縁膜110、にスルーホールを形成して第1ドレイン電極111及び第2ソース電極112形成する。同時に画素領域では、第2ゲート絶縁膜108及び第2層間絶縁膜110にスルーホール131を形成して第2ドレイン電極113を形成し、また、スルーホール132を形成して第2ソース電極114を形成する。第1ドレイン電極111、第1ソース電極112、第2ドレイン電極113は金属で形成されるが、第2ソース電極114は透明電極であるITO(Indium Tin Oxide)で形成され、画素電極116と接続する。スルーホール131において、映像信号線52がドレイン電極113の役割を有し、導電性を付与された酸化物半導体膜107と接続する。映像信号線52の材料は、第1ゲート電極104等と同様に、MoW、Ti、又は、Ti-Al-Tiの積層膜等で形成することが出来る。
【0030】
ドレイン電極111、113、ソース電極112、114、第2層間絶縁膜110を覆って有機パッシベーション膜115が形成される。有機パッシベーション膜115は、平坦化膜として作用させるためと、映像信号線52と、画素電極116あるいはコモン電極119との容量カップリングを抑制するために2乃至4μmと、厚く形成される。
【0031】
図3はコモン電極トップ構成であるから、有機パッシベーション膜115の上に画素電極116が透明導電膜であるITOによって形成される。画素電極116は画素の形に合わせて矩形となっている。有機パッシベーション115には、画素電極116とソース電極114を接続するために、スルーホール130が形成されている。
【0032】
図3において、画素電極116の上に容量絶縁膜117が形成され、その上に金属によって第2遮光膜118が形成され、その上にITOによってコモン電極119が形成されている。容量絶縁膜117は、画素電極116とコモン電極119の間に形成される画素容量を構成するので、このように呼ばれている。容量絶縁膜117は、比誘電率の大きい、SiNで形成される。容量絶縁膜117の上に第2遮光膜118とコモン電極119が形成されている。
【0033】
第2遮光膜118は、金属で形成され、Molybdenum(Mo)、Titanium(Ti)、Aluminum(Al)等が使用される。第2遮光膜118はバックライトからの不要な光を遮光して画像のコントラストを向上させる。
図3の構成では、対向基板200にも遮光効果を有するブラックマトリクス202が形成されているが、第2遮光膜118を配置することによって、より、画像のコントラストを向上させることが出来る。但し、第2遮光膜118を形成することによって、光の透過率は減少するので、対向基板200にブラックマトリクス202が存在する場合は、第2遮光膜118は省略してもよい。あるいは、遮光効果目的ではなく、コモン電極119における電圧降下を防止する作用をさせるために、形状を変えて使用してもよい。
【0034】
コモン電極119はITOで形成されている。ITOは比較的抵抗が高いので、金属で形成された第2遮光膜118を積層することによって抵抗を下げ、画像の均一性を維持することが出来る。コモン電極119は、複数の画素に共通で形成され、画素毎にスリット1191が形成されている。
【0035】
コモン電極119を覆って第1配向膜120が形成されている。第1配向膜120は、対向基板200側に形成される第2配向膜204とともに、液晶分子の初期配向を規定する。配向膜120,204はポリイミドによって形成される。配向膜120,204の配向処理は、ラビング方法でもよいし、偏向紫外線による光配向処理でもよい。
【0036】
画素電極116に電圧が印加されると、コモン電極119のスリット1191において、画素電極116からコモン電極119に向かって液晶層300を通過する電気力線が発生し、液晶分子を回転させ、液晶層300の透過率を変化させる。液晶層300の透過率を画素毎に変化させて画像を形成する。すなわち、IPS(In Plane Switching)動作を行う。
【0037】
実施例1における画素の面積は非常に小さい。一方、有機パッシベーション膜115の膜厚は小さくできないので、スルーホール130も小さくすることが難しい。そこで、スペースを節約するために、
図3では、TFTの直上に有機パッシベーション膜115のスルーホール130を形成している。
【0038】
図3において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200には、カラーフィルタ201、ブラックマトリクス202が形成されている。カラーフィルタ201はカラー画像を形成するためであり、ブラックマトリクス202は画像のコントラストを向上させるためである。カラーフィルタ201及びブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203は、カラーフィルタ201内の色顔料が液晶層300の中に染み出すことを防止する。オーバーコート膜203を覆って第2配向膜204が形成されている。第2配向膜204の役割は第1配向膜120で説明したのと同じである。
【0039】
図4は、
図3におけるTFT基板100側において、有機パッシベーション膜115のスルーホール130が形成されるまでの平面図である。
図4において、第1遮光膜105と走査線109が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)配列している。また、映像信号線52が縦方向に延在し、横方向に配列している。
図4において、第1遮光膜105の上方にTFTが形成されている。すなわち、TFT等は、バックライトから遮光されている。なお、
図4における点線の円10は、対向基板200がTFT基板100と合わせられた際の柱状スペーサの位置を示す。
【0040】
図4において、映像信号線52上に形成されたスルーホール131からドレイン配線としての、酸化物半導体膜107が走査線109側に画素内を縦方向に延在している。酸化物半導体膜107は導電性を付与されており、かつ透明なので、光透過率を大きく低下させることは無い。
【0041】
図4において酸化物半導体膜107はさらに下側に延在し、スルーホール132においてITOで形成されたソース電極114と接続する。ソース電極114はy方向上側に延在し、スルーホール130において、
図5に示す画素電極106と接続する。
図4において、ソース電極114にはハッチングを施しており、平面で視て、ソース電極114と酸化物半導体膜107は重複している。
【0042】
ところで、TFT基板100と対向基板200の間隔を維持するために、断面が円形の柱状スペーサ10がスルーホール130とスルーホール130の間、すなわち、映像信号線の上に形成されるが、
図4では、その位置を点線の円で示している。ている。
【0043】
図5は
図4の構成に対して、さらに、画素電極116とコモン電極119を形成した状態を示す平面図である。
図5には、画素116とコモン電極119のみ記載されている。画素電極116は、画素の形に添って矩形に形成されている。コモン電極119は、複数の画素に共通に形成され、画素電極116と重複する位置にスリット1191が形成されている。
【0044】
画素電極116はスルーホール130において、ソース電極114と接続する。画素電極116に電圧が印加されると、このスリット1191において、画素電極116とコモン電極119の間に電気力線が発生し、液晶分子を回転させて画素における光の透過率を制御する。
【0045】
図5において、TFT基板100と対向基板200の間隔を維持するための、対向基板200に形成された断面が円形の柱状スペーサ10がスルーホール130とスルーホール130の間、すなわち、映像信号線52の上に配置している。この柱状スペーサ10は対向基板200に形成された、メイン柱状スペーサ10であり、通常状態で、TFT基板100側に接触している。柱状スペーサはこの他にサブ柱状スペーサ20が存在している。サブ柱状スペーサ20は、通常状態では、TFT基板100側には接触していないが、対向基板200等に押し圧力が加わったりすると、TFT基板100側に接触する。柱状スペーサ10、20は、全ての画素に配置するわけではなく、いくつかの画素おきに配置される。高精細画面になると、柱状スペーサ10、20の配置位置が問題になる。以後、メイン柱状スペーサ10で代表して説明する。
【0046】
図6は、
図5のB-B断面図であり、TFT基板100と対向基板200が互いに横方向(x方向)にずれた時の問題点を示す断面図である。
図6において、TFT基板100の断面は省略して記載されている。TFT基板100の上のTFT回路層70は、TFT、走査線、映像信号線等を含む層である。TFT回路層70の上に有機パッシベーション膜115が形成されている。
図6では、画素電極116やコモン電極119は省略されて、有機パッシベーション膜115の上に配向膜120が形成されている。
【0047】
図6において、対向基板200にはカラーフィルタ201、ブラックマトリクス202、オーバーコート膜203、配向膜204が形成され、オーバーコート膜203の上に柱状スペーサ10が形成されている。柱状スペーサ10は、有機パッシベーション膜115に形成されたスルーホール130とスルーホール130の間に配置しているが、画素ピッチが小さいので、このスペースは大きくとることはできない。
【0048】
例えば、
図6に示すように、TFT基板100が対向基板200に対して、矢印のように、x方向の左側に移動すると対向基板200に形成された柱状スペーサ10は、スルーホール130内に落ち込んでしまい、TFT基板100と対向基板200との間の適正な間隔を維持することが出来なくなる。
【0049】
図7は、
図5のC-C断面図であり、TFT基板100と対向基板200が斜め方向、すなわち、x方向とy方向に対して角度をもってずれた時の問題点を示す断面図である。
図7において、
図6で説明したのと同様に、TFT基板100の断面は省略して記載されている。但し、
図7では、有機パッシベーション膜115に形成されたスルーホール130は存在していない。
図7の対向基板200側では、柱状スペーサ10が形成された領域及びその周辺を覆って遮光膜であるブラックマトリクス202が形成され、その他の部分にはカラーフィルタ201が形成されている。
【0050】
例えば、
図7に示すように、TFT基板100が対向基板200に対して、矢印のように、x方向とある角度をもって、すなわち、
図5における斜め方向に移動すると、対向基板200に形成された柱状スペーサ10は、相対的に、
図7における右に移動し、ブラックマトリクス202で覆われた範囲外に移動する。配向膜120が柱状スペーサ10によって擦られた部分121は、配光特性が劣化して、液晶分子を配光することが出来なくなる。したがって、この部分は光漏れが生ずる。
【0051】
ブラックマトリクス202の幅を十分大きくとることが出来れば問題ないが、高精細になると画素ピッチが小さくなるので、ブラックマトリクス202の幅を十分に大きくとれなくなる。そうすると、
図7に示すように、TFT基板100と対向基板200とのずれが解消して柱状スペーサ10が正規の位置に戻ったあとでも、配向膜120が劣化した領域がブラックマトリクス202を越えて存在することになる。そうすると、通常状態において、白矢印で示すような光漏れが生ずることになる。これは、画像のコントラストを劣化させる。
【0052】
図8は、比較例において、押し圧力等によって、TFT基板100と対向基板200との間にずれが生じて、柱状スペーサ10が移動する現象に対応した、他の対策手段である。
図8において、赤カラーフィルタ201R、緑カラーフィルタ201G、青カラーフィルタ201B、が縦方向(x方向)に配列している。カラーフィルタ201と対向基板200の間には格子形状にブラックマトリクス202が形成されている。
【0053】
図8において、押し圧力等によって、TFT基板100と対向基板200がずれることを見込んで、柱状スペーサ10が形成された部分のブラックマトリクス202の幅が広くなっている。
図8において、メイン柱状スペーサ10とサブ柱状スペーサ20が、別の場所における、赤カラーフィルタ201Rと青カラーフィルタ201Bの列の間に形成されている。サブ柱状スペーサ20の径d3は、メイン柱状スペーサ10の径d1よりも大きい。一方、メイン柱状スペーサ10に対応するブラックマトリクスの径d2は、サブ柱状スペーサ20に対応するブラックマトリクスの径d4よりも大きい。対向基板200等が押し圧力を受けた場合、メイン柱状スペーサ10の変位量のほうがサブ柱状スペーサ20の変位量よりも大きいからである。
【0054】
いずれにせよ、柱状スペーサ10、20が形成された領域では、ブラックマトリクス202の幅を大きくする必要があるので、画素の光透過率を低下させる。つまり、画面輝度が低下する。
【0055】
図9は、以上の問題を対策した本発明を示す断面図である。
図10は
図9に対応する平面図である。
図9が比較例の
図3と異なる点は、平坦化膜30がスルーホール130内に形成され、かつ、柱状スペーサ10がスルーホール130と対応した位置に移動していることである。
図9において、スルーホール130内にコモン電極119が形成された後、平坦化膜30をスルーホール130内に形成する。平坦化膜30には、種々の樹脂を用いることが出来るが、有機パッシベーション膜115と同じ材料を用いてもよい。平坦化膜30はスルーホール130の上端まで形成するのではなく、スルーホール130の上部には凹部が形成されている。この凹部は、平坦化膜30の表面とスルーホール130の内側壁で構成されると言うことも出来る。この凹部内に柱状スペーサ10を配置する。
【0056】
図9のような構成であれば、TFT基板100が対向基板200に対して横ずれしようとした場合、柱状スペーサ10が凹部の壁に接触し、TFT基板100の対向基板200に対するズレを抑える作用が生ずる。また、
図9のような構成であれば、柱状スペーサ10の高さを極端に高くする必要がない。
【0057】
図10は
図9に対応する平面図である。
図9が比較例である
図5と異なる点は、スルーホール130内に平坦化膜30が形成され、柱状スペーサ10の位置がスルーホール130の上に配置している点である。
図10の構成であれば、柱状スペーサ10の動きは、スルーホール130内に限定されるので、TFT基板100と対向基板200とのずれが抑制されることになる。
【0058】
以上の説明は、メイン柱状スペーサ10についてであるが、サブ柱状スペーサ20の場合も同じである。すなわち、サブ柱状スペーサ20は、通常状態ではTFT基板100には接していないが、TFT基板100と対向基板200のズレの原因となる、外部からストレスが加わった場合は、TFT基板100側に接触するので、メイン柱状スペーサ10の場合と同じ原理によって、TFT基板100と対向基板200のズレを抑制する。
【0059】
図11は、本発明の要部を取り出した断面図である。
図11は、比較例である
図6と対応する。
図11が
図6と異なる点は、有機パッシベーション膜115に形成されたスルーホール130内に平坦化膜30が形成され、その上に配向膜120が形成され、このスルーホール130内の配向膜120に接して柱状スペーサ10が配置されている点である。
【0060】
図11において、平坦化膜30はスルーホール130の上端まで形成されているのではなく、スルーホール130の上部には凹部が形成されている。したがって、柱状スペーサ10はこの凹部内でのみの移動に制限され、TFT基板100と対向基板200の横ずれは抑制されることになる。
図11において、凹部の深さh1は、例えば0.4μm乃至0.8μmである。因みに、TFT基板100と対向基板200の間隔g、つまり、液晶層300の層厚gは1.8μm乃至2μmである。一方、有機パッシベーション膜115の厚さは2μm乃至4μmである。
【0061】
例えば、液晶層300の層厚が2μm、有機パッシベーション膜115の厚さが2μmとした場合、平坦化膜30が無ければ、柱状スペーサ10の高さは4μmになり、非常に高くなる。一方、本発明のように、平坦化膜を用い、例えば、スルーホール130内に形成された凹部の深さh1を0.4μmとした場合、柱状スペーサ10の高さは2.2μmに抑えられ、製造プロセスの負荷が軽減する。
【0062】
図11は、凹部の底面に、柱状スペーサ10が接触している部分の平面図である。凹部の平面形状は正方形で、この部分における凹部の辺の長さをdrとし、柱状スペーサ10の径をd1であるとすると、柱状スペーサ10は、(dr-d1)/2の範囲でのみ動くことが出来る。したがって、TFT基板100と対向基板200の横ずれもこの範囲に抑制することが出来る。
【0063】
図11及び
図12は、平坦化膜30をスルーホール130内にのみ形成した場合の例である。しかし、この平坦化膜は、スルーホール13付近の平坦化膜30として使用することも出来る。つまり、スルーホール130は厚い有機パッシベーション膜115に形成するので、スルーホール130の径が大きくなる。スルーホール130とスルーホール130が隣接する部分ではスルーホール130どうしが干渉し、スルーホール130とスルーホール130との間における有機パッシベーション膜115の厚さが小さくなる可能性がある。
【0064】
図13は、これに対処する構成を示す断面図であり、
図14は
図13に対応する平面図である。
図13及び
図14において、平坦化膜30は横ストライプ状に、複数のスルーホール130を覆って形成されている。平坦化膜30が形成された部分は、平坦化するが、スルーホール130は深いので、この部分は、凹部が形成される。凹部の深さh1は、塗布するときの平坦化膜材料の粘土、レベリング炉における乾燥条件等によって決めることが出来る。
【0065】
図14は、
図13に対応する平面図である。
図14において、平坦化膜30が横ストライプ状に形成され、複数のスルーホール130を覆っている。スルーホール130における平坦化膜30の表面は、他の部分の平坦化膜の表面よりも低くなっている。すなわち、矩形状に凹部が形成されている。径d1の柱状スペーサ10がこの凹部内において、TFT基板100側に接触している。
図14において、凹部の辺の長さをdrとし、柱状スペーサ10の径はd1であるとすると、柱状スペーサ10は、(dr-d1)/2の範囲でのみ動くことが出来る。したがって、TFT基板と対向基板の横ずれもこの範囲に抑制することが出来る。この作用は、
図11、
図12の構成と同じである。
【0066】
以上の説明では、わかりやすくするために、柱状スペーサ10は縦断面形状が台形であるとしたが、実際の柱状スペーサはこのようにきれいな台形になることはない。
図15は、例えば、突起状の形状をしている柱状スペーサ10の例である。
図15は、例えば、根本の径がw1であり、断面が楕円状の突起である。
図15のような形状であれば、突起の先端の高さは比較的容易に測定することが出来る。しかし、突起の先端の径d1を測定することは難しい。このような場合、突起の径d1は、突起の高さh1の90%の高さにおける突起の幅を用いればよい。
【0067】
以上の説明は、メイン柱状スペーサ10について行った。しかし、サブ柱状スペーサ20の場合についても同様である。サブ柱状スペーサ20は、通常はTFT基板100に接触していないが、TFT基板100と対向基板200にずれが生ずる場合、TFT基板100あるいは対向基板200に押し圧力等のストレスがかかった場合である。この場合は、サブ柱状スペーサ20もTFT基板100と接触することになるので、メイン柱状スペーサ10と同じ現象が生ずる。
【0068】
以上は、コモン電極トップの構造について説明をした。液晶表示装置では、画素電極トップの構造も存在する。この場合も有機パッシベーション膜115内のスルーホール130が形成され、このスルーホールにおいて、画素電極とTFTのソース電極が接続することはコモン電極トップの場合と同じである。したがって、
図11乃至
図15で説明した実施例1の構成は、画素電極トップの場合であってもそのまま適用することが出来る。
通常は、対向基板200側にカラーフィルタ201やブラックマトリクス202が形成される。カラーフィルタ201やブラックマトリクス202は、TFT基板100と対向基板200を組み合わせるときの合わせ精度によっては、平面で視て、TFT基板100側に形成された画素とずれる可能性がある。高精細画面になると、この程度の合わせ精度が問題となる場合がある。このような問題を防止するために、実施例2では、TFT基板100側にカラーフィルタ201を形成し、また、ブラックマトリクス202に代わる遮光膜を形成する構成である。このような構成は、COA(Color Filter ON Array)と呼ばれている。なお、COAは、カラーフィルタ201のみTFT基板100側に形成し、ブラックマトリクス201は対向基板200に形成する場合と、カラーフィルタ201もブラックマトリクス202も、ともに、TFT基板100に形成する場合の両方を指す場合がある。