(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007670
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車いす
(51)【国際特許分類】
A61G 5/10 20060101AFI20240112BHJP
A61G 5/14 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A61G5/14 711
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108893
(22)【出願日】2022-07-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年6月8日~6月10日にバリアフリー2022(第28回高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展)にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸明
(57)【要約】
【課題】誤操作により着座部が起き上がってしまうことを抑制できる車いすを提案する。
【解決手段】ロック操作レバー57を操作位置としてアクチュエータ40を駆動させることにより、着座部30を座位姿勢から起立姿勢または所望の傾斜姿勢に変換される一方、ロック操作レバー57を非操作位置としたままで、アクチュエータ40が駆動された場合には、着座部30を構成する座フレーム部3がロック片部61により係止されて、該着座部30が座位姿勢で保持されるようにした。かかる構成によれば、誤操作によりアクチュエータ40が駆動された場合に、着座部30が起き上がってしまうことを抑制でき、該誤操作により起立された着座部30を戻す作業に要する手間の発生を抑制できる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の主車輪が設けられたベースフレーム部と、
前記ベースフレーム部の前部に上下方向へ回動可能に連結され、使用者の臀部を支持する着座部を構成する座フレーム部と、
前記座フレーム部の後部を昇動させて、前記着座部を、使用者を着座させる座位姿勢から該使用者を起立させる起立姿勢へ変換させるアクチュエータと、
使用者の操作により前記アクチュエータを駆動制御するものであって、前記着座部を、座位姿勢と起立姿勢との間の所望の傾斜姿勢に変換可能な操作制御手段と
を備え、
さらに、前記ベースフレーム部に設けられ、座位姿勢の座フレーム部の後部に係止されて該後部を昇動不能にする係止位置と、該座フレーム部の後部に係止されない非係止位置とに変換されるロック片部と、
使用者の操作により、前記ロック片部を係止位置または非係止位置に変換させるロック解除操作手段と
を有し、前記着座部が座位姿勢にあり且つ前記ロック片部が係止位置にある状態で、前記アクチュエータが駆動されると、該ロック片部が座フレーム部の後部に係止されて該座位姿勢を保持する一方、該着座部が座位姿勢にあり且つ前記ロック片部が非係止位置に変換された状態で、前記アクチュエータが駆動されると、該座フレーム部の後部が昇動される誤作動防止手段を備えたものであることを特徴とする車いす。
【請求項2】
誤作動防止手段は、非係止位置に変換されたロック片部を係止位置に復帰させるロック復帰手段を備え、
前記ロック復帰手段は、
着座部が傾斜姿勢から座位姿勢に変換されることにより、前記ロック片部を係止位置に復帰させる機能を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者を着座させた姿勢と起立させた姿勢とに姿勢変換できる車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、下肢に障害を持つ使用者を起立させた姿勢にすることができる車いすが提案されている。かかる構成は、着座部(シート部)と背もたれ部とを着座状態から起立状態へ変換させるバネと、該着座部および背もたれ部を該着材状態と起立状態との間の所定位置で固定する固定装置と、該固定装置を作動させる操作レバーとを備えており、着座状態から起立状態へ変換させる場合には、着座した使用者が操作レバーを操作して着座部の固定を解除することにより、前記バネの付勢力により該着座部が起き上がる。そして、着座状態から起立状態への変換途中で、操作レバーの操作と非操作とを繰り返すことにより、該着座部を段階的に起き上げることができる。こうして使用者を起立させた姿勢にできる。一方、着座状態へ戻す場合には、操作レバーを操作した状態で使用者が腰を降ろすように体重を後方へかけることにより、着座部を降動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来構成(特許文献1)は、着座部が固定装置により着座状態で固定されていることから、使用者が操作レバーを操作しなければ、該着座状態で保持される。これにより、常態では、着座状態の着座部に使用者が安定して着座できる。ところが、使用者が着座していない状態で操作レバーが誤って操作されると、着座部が起き上がってしまい、使用者が着座できなくなる。そのため、起き上がった着座部を着座状態に戻さねばならないが、前述した腰を降ろす動作と同様に力をかけることが難しく、着座部を戻すために多くの労力と時間とを要する場合があった。
【0005】
本発明は、誤操作により着座部が起立されてしまうことを抑制でき、該誤操作によって起立された着座部を戻すために要する手間の発生を抑制し得る車いすを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、左右一対の主車輪が設けられたベースフレーム部と、前記ベースフレーム部の前部に上下方向へ回動可能に連結され、使用者の臀部を支持する着座部を構成する座フレーム部と、前記座フレーム部の後部を昇動させて、前記着座部を、使用者を着座させる座位姿勢から該使用者を起立させる起立姿勢へ変換させるアクチュエータと、使用者の操作により前記アクチュエータを駆動制御するものであって、前記着座部を、座位姿勢と起立姿勢との間の所望の傾斜姿勢に変換可能な操作制御手段とを備え、さらに、前記ベースフレーム部に設けられ、座位姿勢の座フレーム部の後部に係止されて該後部を昇動不能にする係止位置と、該座フレーム部の後部に係止されない非係止位置とに変換されるロック片部と、使用者の操作により、前記ロック片部を係止位置または非係止位置に変換させるロック解除操作手段とを有し、前記着座部が座位姿勢にあり且つ前記ロック片部が係止位置にある状態で、前記アクチュエータが駆動されると、該ロック片部が座フレーム部の後部に係止されて該座位姿勢を保持する一方、該着座部が座位姿勢にあり且つ前記ロック片部が非係止位置に変換された状態で、前記アクチュエータが駆動されると、該座フレーム部の後部が昇動される誤作動防止手段を備えたものであることを特徴とする車いすである。
【0007】
かかる構成にあっては、ロック解除操作手段の操作によりロック片部を非係止位置に変換しなければ、操作制御手段によりアクチュエータを駆動させても、着座部が座位姿勢から起き上がられない。すなわち、着座部を座位姿勢から起き上げるためには、操作制御手段の操作前に、ロック片部を非係止位置に変換するロック解除操作手段の操作が必須となる。これにより、使用者が着座していない状態で、誤って操作制御手段が操作されても、着座部が起き上がらない。したがって、本発明の構成によれば、使用者の非着座状態で誤操作により着座部が起立してしまうことを抑制でき、使用されていない着座部を座位姿勢に戻さなければならない状況が発生することを抑制できる。
【0008】
前述した本発明の車いすにあって、誤作動防止手段は、非係止位置に変換されたロック片部を係止位置に復帰させるロック復帰手段を備え、前記ロック復帰手段は、着座部が傾斜姿勢から座位姿勢に変換されることにより、前記ロック片部を係止位置に復帰させる機能を備えたものである構成が提案される。
【0009】
かかる構成にあっては、着座部を起き上げた後に座位姿勢に戻すと、自動的にロック片部が係止位置に復帰することから、座位姿勢に戻す毎に、ロック片部の非係止位置への変換が着座部の姿勢変換に必須となる。これにより、操作制御手段の誤操作により着座部が起立してしまうことを抑制するという、前述した本発明の作用効果が一層安定して発揮できる。
【0010】
尚、本構成にあって、ロック復帰手段は、ロック片部を係止位置に付勢する付勢手段と、ロック解除操作手段の操作により非係止位置に変換された前記ロック片部を、座フレーム部の昇動まで該非係止位置で保持する機能、および傾斜姿勢から座位姿勢への着座部の変換に伴って、前記ロック片部を係止位置に復帰させる機能を有するロック片部作動機構とを備えたものである構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあっては、付勢手段とロック片部作動機構とにより機械的にロック片部を係止位置に復帰させるものであり、該復帰させる作動を一層安定かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車いすによれば、座位姿勢の着座部が誤操作により起き上がってしまうことを抑制でき、使用されていない着座部を座位姿勢に戻さなければならない状況の発生を抑制できる。したがって、誤操作により起き上がった着座部を座位姿勢に戻すために要する手間と時間とが発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施例の車いすを構成する本体フレーム1の側面図である。
【
図2】本体フレーム1の一部を省略して示す縦断面図である。
【
図3】着座部30を座位姿勢から起立姿勢へ変換する過程を示す説明図である。
【
図7】着座部30を座位姿勢へ戻す過程を示す説明図である。
【
図9】誤作動防止機構51の作動態様を示す説明図である。
【
図10】起立姿勢における操作フレーム部5の位置を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる車いすを具体化した実施例を、以下で詳細に説明する。
図1に、本実施例の車いすを構成する本体フレーム1を示す。本体フレーム1は、左右の主車輪6を支持するベースフレーム部2と、該ベースフレーム部2に上下方向へ回動可能に連結された座フレーム部3と、該座フレーム部3に連結された背もたれフレーム部4とを備える。これら各フレーム部2~4は、主に金属製パイプまたはFRP製パイプなどで形成されている。尚、背もたれフレーム部4には、介助者により操作される操作ハンドルが連結されるが、各図面では該操作ハンドルを省略している。
【0015】
ベースフレーム部2は、
図1,2に示すように、左右一対のベースサイドフレーム部11と、左右のベースサイドフレーム部11に差し渡された複数のベース連結杆部12~14とを備え、左右のベースサイドフレーム部11がベース連結杆部12~14によって左右方向に所定間隔をおいて対設されてなる。そして、左右のベースサイドフレーム部11には、図示しない軸受け部を介して主車輪6が夫々設けられている。ベースサイドフレーム部11は、上側フレーム部15、下側フレーム部16、および前側フレーム部17が一体的に固結されてなり、該下側フレーム部16に前輪7が回転自在に連結されている。そして、前側フレーム部17には、フットレスト部9が設けられている。また、左右の上側フレーム部15に前記ベース連結杆部12が差し渡され、左右の下側フレーム部16に前記ベース連結杆部13が差し渡されている。
【0016】
座フレーム部3は、左右一対の座サイドフレーム部21と、左右の座サイドフレーム部21に差し渡された複数の座連結杆部22,23とを備え、左右の座サイドフレーム部21が座連結杆部22,23によって左右方向に所定間隔をおいて対設されている。座サイドフレーム部21は、前後方向の支持フレーム部25と、該支持フレーム部25の上方に配置された着座フレーム部26と、該着座フレーム部26に固結された横フレーム部27とを備え、該横フレーム部27の前端部が前記ベースサイドフレーム部11の前側フレーム部17の上端部に回動可能に連結されている。支持フレーム部25は、その前部で前記ベースサイドフレーム部11の上側フレーム部15の前端部に回動可能に連結されており、左右の支持フレーム部25の後端部に前記座連結杆部22が差し渡されている。また、左右の着座フレーム部26の後端部に前記座連結杆部23が差し渡されると共に、左右の着座フレーム部26に座シート29が差し渡されている。この座シート29によって、使用者の臀部を支持する着座部30が構成されている。
【0017】
背もたれフレーム部4は、左右一対の背フレーム部31と、背フレーム部31を前記座サイドフレーム部21と相対的に傾動可能に連結する連結板部32とを備える。連結板部32は、背フレーム部31の下端部に固結されると共に、前記座フレーム部3の座連結杆部22,23に夫々回動可能に連結されている。背フレーム部31の上部には、肘掛け部34が回動可能に連結されている。また、左右の背フレーム部31には、図示しない背シートが差し渡されており、該背シートによって、使用者の背を支持する背もたれ部(図示せず)が構成されている。
【0018】
こうした本実施例の車いすは、座フレーム部3を構成する支持フレーム部25と横フレーム部27との各前端部がベースフレーム部2に回動可能に連結されていることから、座フレーム部3の後部を昇降動させることによって該座フレーム部3をベースフレーム部2に対して上下方向に回動できる(
図3~8参照)。そして、背もたれフレーム部4が、所定の傾斜角を保ったまま、座フレーム部3と一体的に回動される。
【0019】
本体フレーム1には、座フレーム部3の後部を昇降動させるアクチュエータ40が配設されている。本実施例にあって、アクチュエータ40は、ガススプリングにより構成されており、一端が、左右の下側フレーム部16に差し渡されたベース連結杆部13に回動自在に連結され、他端が、左右の支持フレーム部25の差し渡された座連結杆部22に回動自在に連結されている。本実施例の車いすには、二個のアクチュエータ40が左右方向に所定間隔をおいて並設されている。
【0020】
アクチュエータ40を構成するガススプリングは、長手方向に伸長作動するものであり、ストローク範囲内の任意位置で停止保持(ロック)できるロック機能を有している。こうしたロック機能付きのガススプリングは、一般的に知られた構成のものを適用でき、本実施例では、後述する昇降操作レバー41によりロック機能を操作できる。すなわち、昇降操作レバー41が操作されると、ガススプリングのシリンダ内のガス圧力が上昇して該ガススプリングが伸長作動する。そして、昇降操作レバー41の操作を解除すると、前記シリンダ内のガス圧力の増減が停止してガススプリングが作動停止する。この操作解除状態では、シリンダ内へのガスの入出がブロックされることから、ガススプリングが伸縮作動できずに保持される。また、昇降操作レバー41が操作されている状態で、ガス圧力よりも大きな力を作用させると、ガススプリングを縮小できる。尚、ガススプリングは、前述したように公知のものを適用できることから、その詳細な説明を省略する。
【0021】
こうしたアクチュエータ(ガススプリング)40の伸縮作動によって、前記着座部30を、
図1,2に示す座位姿勢と、
図6に示す起立姿勢とに変換することができる共に、該座位姿勢と起立姿勢との間の所望の傾斜姿勢で停止保持することが可能である。詳述すると、座位姿勢で昇降操作レバー41が操作されると、アクチュエータ40の伸長作動により座フレーム部3の後部が昇動されて、着座部30が該座位姿勢から前方へ傾動する。そして、昇降操作レバー41の操作が継続されて、着座部30が起立姿勢に達すると、座フレーム部3の昇動が停止する。この状態で、昇降操作レバー41の操作が解除されると、着座部30が起立姿勢で保持される。一方、座位姿勢と起立姿勢との間で昇降操作レバーの操作が解除されると、座フレーム部3が停止し、着座部30が傾斜姿勢で保たれる。また、昇降操作レバー41が操作されている状態で、座フレーム部3の後部を下方へ押圧すると、着座部30が下方へ傾動する。これにより、着座部30を座位姿勢へ戻すことができる。このように昇降操作レバー41の操作と座フレーム部3への押圧とを適宜を行うことにより、着座部30を座位姿勢と起立姿勢とに変換できると共に所望の傾斜姿勢で停止できる。
【0022】
前記した昇降操作レバー41は、
図1,10に示すように、左右のベースフレーム部2に上下方向へ傾動可能に夫々設けられた操作フレーム部5に配設されている。操作フレーム部5は、ベースフレーム部2の上側フレーム部15に、傾斜位置決め機構42を介して連結されている。この傾斜位置決め機構42は、上側フレーム部15に固結された機構基部43と、操作フレーム部5の基端部に取り付けられた機構可動部44と、該操作フレーム部5に配設された位置変換レバー45とから構成されている。機構基部43には、略円弧状の外周縁に係合溝部47が、該外周縁の円弧方向に所定間隔をおいて複数設けられている。また、機構可動部44には、前記係合溝部47に入出可能な係合突部48が、該係合溝部47に挿入されて係合する係合位置と該係合溝部47から脱出される非係合位置とに移動可能に設けられている。この係合突部48は、図示しないバネ等の付勢手段により係合位置に付勢されており、前記位置変換レバー45の操作によって係合位置から非係合位置に移動でき、該操作の解除によって係合位置で保持される。
【0023】
操作フレーム部5は、位置変換レバー45の操作により上下方向へ傾動させ、該位置変換レバー45の操作を解除して、係合突部48を係合させる係合溝部47を変えることによって、段階的に傾斜位置を変換できる。これにより、前述した着座部30の姿勢に応じて操作フレーム部5の傾斜位置を変換することで、使用者が昇降操作レバー41と位置変換レバー45とを操作し易くできると共に、操作フレーム部5に手をかけて体重を支えたり、着座部30に体重をかけて後下方へ押圧し易くなる。
【0024】
さらに、本実施例にあっては、
図2に示すように、着座部30の座位姿勢と起立姿勢とへの姿勢変更に従って、前記フットレスト部9を昇降動させるフットレスト昇降機構81を備えている。フットレスト昇降機構81は、前記ベースサイドフレーム部11の前側フレーム部17に設けられた円筒状の昇降シリンダ部82と、該昇降シリンダ部82に昇降動可能に内嵌された可動杆部83とを備え、該可動杆部83の下端部にフットレスト部9が取り付けられている。そして、昇降シリンダ部82には、長手方向に沿って案内長孔部85が開口形成されており、該案内長孔部85を介して可動杆部83に可動連結部84の一端部が回動自在に連結されている。この可動連結部84の他端部が、座フレーム部3の支持フレーム部25の前端部に回動自在に連結されており、
図3~6に示すように座フレーム部3の後部が昇動することによって、可動連結部84を介して可動杆部83が昇降シリンダ部82に沿って降動する一方、
図6~8に示すように該座フレーム部3の後部が降動することによって、該可動杆部83が該昇降シリンダ部82に従って昇動する。このように座フレーム部3の後部の昇動に連動して、フットレスト部9が降動し、該座フレーム部3の後部の降動に連動して、該フットレスト部9が昇動する。
【0025】
また、本実施例の車いすには、
図2に示すように、着座部30が座位姿勢にある状態で、前記昇降操作レバー41の誤操作による座フレーム部3の昇動を防止する誤作動防止機構51が設けられている。誤作動防止機構51は、ロック解除操作部52とロック作動部53とを備えており、該ロック解除操作部52が、左右の上側フレーム部15に差し渡されたベース連結杆部12に設けられ、ロック作動部53が、左右のベースサイドフレーム部11に差し渡されたベース連結杆部14に設けられている。さらに、誤作動防止機構51は、ロック解除操作部52とロック作動部53とを連係して作動させる連結杆部54を備えている。
【0026】
ロック解除操作部52は、前記ベース連結杆部12に回動自在に連結された平板状の回動板部56と、該回動板部56に固結されたロック操作レバー57とを備え、該回動板部56に開口形成された長孔部58に、前記連結杆部54の一端部が回動自在かつ該長孔部58の長手方向に移動自在に連結されている。ロック操作レバー57は、回動板部56に固結された左右方向の軸部と該軸部の先端から屈曲された操作部とからなる略L字形を成し(図示せず)、該操作部が左右一方のベースサイドフレーム部11の直上に配置されて、使用者により操作可能となっている。
【0027】
ロック作動部53は、ベース連結杆部14に回動自在に連結されたロック片部61と、該ロック片部61の上部を前方へ付勢するバネ部材62とを備えており、該ロック片部61の下端部に前記連結杆部54の他端部が回動自在に連結されている。ロック片部61の上部には、着座部30の座位姿勢で座フレーム部3の座連結杆部22が当接される傾斜当接縁部64と、座連結杆部22が昇動不能に係止される円弧状の座係止部65と、座係止部65よりも前方へ突出された第一被押圧部66と、ロック片部61の上端部に形成された第二被押圧部67とを備える。ここで、傾斜当接縁部64は、後方へ上方傾斜された形態で設けられ、円弧状の座係止部65に連成されている。第二被押圧部67は、前方へ下方傾斜された形態で設けられ、第一被押圧部66に連成されている。
【0028】
こうした誤作動防止機構51は、連結杆部54により連結されたロック解除操作部52とロック作動部53とが連動するものであり、ロック操作レバー57が、非操作位置(
図2,3(A)参照)と操作位置(
図3(B)参照)とに位置変換可能となっている。そして、ロック解除操作部52のロック操作レバー57の操作と、座フレーム部3の座連結杆部22からロック作動部53に作用する力と、バネ部材62の付勢力とにより、誤作動防止機構51が作動する。
【0029】
誤作動防止機構51は、ロック操作レバー57が操作位置へ操作された状態で、前述した昇降操作レバー41の操作により、座フレーム部3の後部を昇降動でき、着座部30を座位姿勢から起き上げたり該座位姿勢に戻したりすることができる(
図3~8参照)。一方、ロック操作レバー57が被操作位置にある状態で、昇降操作レバー41が操作れると、座フレーム部3の座連結杆部22がロック片部61の座係止部65に係止されて、着座部30が座位姿勢から起き上がり不能となる(
図9参照)。こうした誤作動防止機構51の作動を、着座部30の姿勢変更に従って以下に説明する。
【0030】
着座部30の座位姿勢では、
図2,3(A)に示すようにロック操作レバー57が被操作位置にある場合に、座フレーム部3の座連結杆部22がロック片部61の傾斜当接縁部64に当接される。ロック片部61は、バネ部材62の付勢力による回動が座連結杆部22によって止められ、該座連結杆部22に傾斜当接縁部64が当接された位置で保たれる。さらに、連結杆部54の一端部が、回動板部56の長孔部58の上端部に位置する。このようにロック操作レバー57(および回動板部56)、ロック片部61、および連結杆部54が位置する状態を、誤作動防止機構51の基準作動状態という。尚、この着座部30の座位姿勢では、フットレスト部9が所定の高さ位置(以下、基準高さ位置という)で保たれる。
【0031】
着座部30を座位姿勢から起き上げる場合には、
図3(B)に示すように、ロック操作レバー57を操作位置へ傾動させる。これにより、回動板部56がロック操作レバー57を一体的に回動し、ロック片部61の上部が後方へ傾動する。これに伴って、ロック片部61が座フレーム部3の座連結杆部22から離れる。このようにロック操作レバー57を操作位置とした状態で、昇降操作レバー41が操作されると、アクチュエータ40が伸長作動する。これにより、
図4(A)に示すように、座フレーム部3の後部が昇動して、該座フレーム部3の座連結杆部22がロック片部61の第一被押圧部66に当接する。このままアクチュエータ40の伸長作動が継続することにより、
図4(B)に示すように、ロック片部61の第一被押圧部66が後方へ押圧されて、ロック片部61の上部が後方へ傾動する。このロック片部61の傾動に伴って、連結杆部54の一端部が、回動板部56の長孔部58に従って前方へ移動する。
【0032】
この後、
図5に示すように、座フレーム部3の後部がロック片部61の第一被押圧部66よりも上方へ昇動すると、ロック片部61の上部を後方へ押圧する力が解除されることから、バネ部材62の付勢力に従って該ロック片部61の上部が前方へ傾動する。これに伴って、回動板部56が回動してロック操作レバー57が前方へ傾動する。ここで、連結杆部54は、その一端部が回動板部56の長孔部58の下端部に位置することから、ロック操作レバー57は、前記被操作位置よりも前側に傾斜した位置(以下、作動時位置という)で停止する。また、座フレーム部3が前方へ傾動することにより、フットレスト昇降機構81の作動を介してフットレスト部9が前記基準高さ位置から降動する。
【0033】
尚、このように着座部30を座位姿勢から起き上げた状態で、昇降操作レバー41の操作が解除されると、アクチュエータ40の伸長作動が停止して保持されることから、着座部30を傾斜姿勢で保つことができる。この着座部30の傾斜姿勢は、昇降操作レバー41の操作解除によって、座位姿勢と起立姿勢との間で任意に変換保持できることから、使用者の好みや都合に応じて変えることができる。
【0034】
昇降操作レバー41の操作が継続されることにより、
図6に示すように着座部30を起立姿勢に変換できる。そして、この起立姿勢で昇降操作レバー41の操作を解除することで、着座部30を該起立姿勢で保持できる。本実施例では、起立姿勢が、着座部30を起き上げる上限とされていることから、昇降操作レバー41の操作を継続しても、これ以上は前方へ傾動しない。尚、着座部30を起立姿勢まで変換する際には、誤作動防止機構51が前述した
図5の状態(ロック操作レバー57が作動時位置にある状態)で保たれる。
【0035】
こうした着座部30の姿勢変換に伴ってフットレスト部9が降動し、起立姿勢では、該フットレスト部9が地面に最も近接した最下位置で停止される。
【0036】
前述した起立姿勢(又は傾斜姿勢)から着座部30を座位姿勢に戻す場合には、ロック操作レバー57を操作して、着座部30を後方へ倒すように力をかける。ここで、アクチュエータ40に生ずるガス圧力よりも大きな力を着座部30にかけることによって、該着座部30を後方へ倒すことができる。車いすを使用中の使用者であれば、着座部30に腰を降ろすように体重を後方へかけることによって、比較的容易に行うことができる。尚、ロック操作レバー57の操作を解除すると、解除時の傾斜姿勢で停止することから、座位姿勢に戻す場合には、該ロック操作レバー57の操作を維持する。
【0037】
着座部30を倒していくと、
図7(A)~(B)に示すように、座フレーム部3の座連結杆部22がロック片部61の第二被押圧部67に接する。さらに着座部30を倒していくことにより、ロック片部61の上部が後方へ傾動し、
図8(A)に示すように、座連結杆部22が該ロック片部61の第一被押圧部66に接する。このようにロック片部61の上部が後方へ傾動することにより、回動板部56が回動してロック操作レバー57が後方へ傾動する。この後に、
図8(B)に示すように、座フレーム部3の座連結杆部22が第一被押圧部66の下方へ移動して傾斜当接縁部64に当接する。この際に、ロック片部61の上部がバネ部材62の付勢力により前方へ傾動することにより、ロック解除操作部52が前方へ傾動し、これに伴って回動板部56が回動する。そして、連結杆部54の一端部が長孔部58に沿って移動して上端部に位置すると、ロック操作レバー57が被操作位置に復帰する。このように本実施例の誤作動防止機構51では、着座部30を起立姿勢(又は傾斜姿勢)から座位姿勢に戻すことによって、ロック操作レバー57が自動的に被操作位置に復帰する。これにより、誤作動防止機構51が基準作動状態に戻る。
【0038】
このように着座部30を起立姿勢から座位姿勢まで戻すことにより、フットレスト部9が前記最下位置(
図6参照)から昇動して、前記した基準高さ位置(
図8(B)参照)に戻る。
【0039】
次に昇降操作レバー41を誤って操作した場合について説明する。
着座部30が座位姿勢にある状態で、
図9(A)に示すように、ロック操作レバー57が操作されることなく、昇降操作レバー41が誤って操作されると、アクチュエータ40が伸長作動する。このアクチュエータ40の伸長作動により、座フレーム部3の後部が昇動し、
図9(B)に示すように、該座フレーム部3の座連結杆部22がロック片部61の座係止部65に係止され、該座フレーム部3が昇動できなくなる。この際に、ロック片部61が座連結杆部22を介して受ける力によって、該ロック片部61の上部が前方へ傾動する。これに伴って、連結杆部54の一端部が回動板部56の長孔部58内で移動することから、該回動板部56とロック操作レバー57とが前方へ傾動して、該ロック操作レバー57が前記作動時位置に位置する。このように昇降操作レバー41が誤って操作された場合には、着座部30が僅かに昇動するものの、略座位姿勢で保たれる。
【0040】
ロック片部61の座係止部65に座フレーム部3の座連結杆部22が係止された状態を解除するには、ロック操作レバー57を操作して着座部30を下方へ押し込む。これにより、座フレーム部3の後部が降動して、座連結杆部22が座係止部65から傾斜当接縁部64に移動する。これに伴ってロック片部61の上部が後方へ傾動することから、連結杆部54の一端部が長孔部58の上端部に移動して、ロック操作レバー57が被操作位置に復帰する。これにより、誤作動防止機構51が基準作動状態に戻る。
【0041】
また、本実施例の車いすは、前述したように、操作フレーム部5の傾斜位置を段階的に変換できることから(
図10参照)、着座部30を座位姿勢と起立姿勢とに変換する際に、該操作フレーム部5の傾斜位置を変換することにより、該着座部30に着座した使用者が昇降操作レバー41を容易に操作することができる。
【0042】
このように本実施例の車いすは、着座部30を誤って起き上げてしまうことを防止する誤作動防止機構51を備えたものであるから、例えば、車いすを誰も使用していない状態で昇降操作レバー41が誤操作された場合に、着座部30が起き上がってしまうことを防止でき、該着座部30が座位姿勢で保たれる。これにより、昇降操作レバー41が誤操作された後でも、使用者が着座部30に容易に着座することができ、該着座部30に着座することで、誤作動防止機構51を基準作動状態に戻すことができるため、本実施例の車いすを通常通り使用することができる。
【0043】
本実施例の車いすは、使用者の使用中にロック操作レバー57を操作位置に変換した後に昇降操作レバー41を操作することにより、着座部30を座位姿勢から起き上げることができ、起立姿勢や所望の傾斜姿勢に姿勢変換することができる。そして、昇降操作レバー41を操作した状態で使用者が腰を降ろすように体重をかけることにより、着座部30を倒すことができ、座位姿勢に戻すことができる。座位姿勢に戻れば、前述したように誤作動防止機構51が基準作動状態に復帰する。このように使用中であれば着座部30の姿勢変換を繰り返し容易に行うことができる。
【0044】
さらに、本実施例の構成では、着座部30の姿勢変換に連動してフットレスト部9が昇降動することから、該着座部30の姿勢に合わせた高さ位置に使用者の足を置くことができる。これにより、着座部30を姿勢変換する際に、比較的自然な姿勢で使用者が利用できる。また、操作フレーム部5の傾斜位置を段階的に変換できることから、着座部30の姿勢変換に合わせて該操作フレーム部5の傾斜位置を変えることにより、昇降操作レバー41を使用者が操作し易いと共に、操作フレーム部5に手をかけて支えることもできる。これにより、着座部30の姿勢変換する際に、使用者の使い易さが向上するという優れた利点がある。
【0045】
前述した本実施例にあって、昇降操作レバー41が、本発明にかかる操作制御手段に相当する。ロック操作レバー57が、本発明にかかるロック解除操作手段に相当する。ロック操作レバー57が被操作位置にある状態におけるロック片部61の位置(
図2,3(A)参照)が、本発明にかかる非係止位置に相当し、該ロック操作レバー57が操作位置にある状態におけるロック片部61の位置(
図3(B)参照)が、本発明にかかる係止位置に相当する。ロック片部61、バネ部材62、連結杆部54、および回動板部56の長孔部58により、本発明にかかるロック復帰手段が構成されている。
【0046】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
実施例の車いすは、アクチュエータがガススプリングから構成されたものであるが、これに限らず、例えば、エアシリンダや板バネ等により構成されたものとすることも可能である。
実施例の構成では、誤作動防止機構51が ロック解除操作部52とロック作動部53とを連結杆部54により関連して作動する機械的な構成としたが、これに限らず、例えば、モータやソレノイドなどによりロック片部を作動制御する電気的な構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 本体フレーム
2 ベースフレーム部
3 座フレーム部
4 背もたれフレーム部
5 操作フレーム部
6 主車輪
7 前輪
9 フットレスト部
11 ベースサイドフレーム部
12~14 ベース連結杆部
15 上側フレーム部
16 下側フレーム部
17 前側フレーム部
21 座サイドフレーム部
22,23 座連結杆部
25 支持フレーム部
26 着座フレーム部
27 横フレーム部
29 座シート
30 着座部
31 背フレーム部
32 連結板部
34 肘掛け部
40 アクチュエータ
41 昇降操作レバー
42 傾斜位置決め機構
43 機構基部
44 機構可動部
45 位置変換レバー
47 係合溝部
48 係合突部
51 誤作動防止機構
52 ロック解除操作部
53 ロック作動部
54 連結杆部
56 回動板部
57 ロック操作レバー
58 長孔部
61 ロック片部
62 バネ部材
64 傾斜当接縁部
65 座係止部
66 第一被押圧部
67 第二被押圧部
81 フットレスト昇降機構
82 昇降シリンダ部
83 可動杆部
84 可動連結部
85 案内長孔部