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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076706
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/225 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
B60N2/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188393
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ブッシュ押し効率を改善し、摺動トルクを低減し、伝達ロスを低減することができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シートクッションに対して、傾動可能に取り付けられるシートバックの傾動の中心位置に取り付けられ、傾動用の電動モーターによってタウメル機構が作動し、シートバックに傾動機能を与えるリクライニング装置100において、回転シャフト30には、ブッシュ40に対して回転力を伝達する伝達部が2箇所以上設けられていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、中心に軸方向と同軸の外歯ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記外歯ボスに同軸に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記外歯ボスの外周面と前記内歯歯車の貫通孔の内周との間に配置され、内周側にカム収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転する一部が切り欠かれた円環状又はリング状の部材からなるブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記外歯歯車の前記外歯ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記外歯歯車の前記外歯ボスの外周面と摺動し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記ブッシュ及び前記外歯ボスに同時に接触させる方に付勢するスプリングと、を備え、
前記回転シャフトには、前記ブッシュに対して回転力を伝達する伝達部が2箇所以上設けられていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記伝達部は、一部が切り欠かれた円環状又はリング状のブッシュの両側端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記伝達部は、外歯ボスの中心からくさび状カムと外歯ボスとの接点への放射方向の角度線に対して±10°の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリクライニング装置。
【請求項4】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、中心に貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に内歯ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記内歯ボスに同軸に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記内歯歯車の前記内歯ボスの外周面と前記外歯歯車の貫通孔の内周との間に配置され、内周側にカム収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転する一部が切り欠かれた円環状又はリング状の部材からなるブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記内歯歯車の前記内歯ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記内歯歯車の前記内歯ボスの外周面と摺動し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記ブッシュ及び前記内歯ボスに同時に接触させる方に付勢するスプリングと、を備え、
前記回転シャフトには、前記ブッシュに対して回転力を伝達する伝達部が2箇所以上設けられていることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項5】
前記伝達部は、一部が切り欠かれた円環状又はリング状のブッシュの両側端部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のリクライニング装置。
【請求項6】
前記伝達部は、内歯ボスの中心からくさび状カムと外歯ボスとの接点への放射方向の角度線に対して±10°の範囲に設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のリクライニング装置。






【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置としては、タウメル機構からなるものがある。例えば、一般的に、図6に示すように、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の内歯ボスが形成された外歯歯車310と、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車320と、外歯歯車310の外歯ボス311に同軸かつ回転自在に嵌挿されるとともに、外歯歯車310又は内歯歯車320のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフト330と、外歯歯車310の外歯ボス311の外周面と内歯歯車320の貫通孔の内周との間に配置され、内周側にカム収容部を有し、かつ回転シャフト330の回転に伴い回転するブッシュ340と、カム収容部に収容され、外歯歯車310の外歯ボス311とブッシュ340とを押圧してブッシュ340を内歯歯車320の貫通孔の内周面に接触させることによって、外歯歯車310と内歯歯車320の相対回転を規制するとともに、回転シャフト330を回転させることによって、ブッシュ340と外歯歯車310の外歯ボス311又はブッシュ340と内歯歯車320の貫通孔の内周面を摺動させて外歯歯車310と内歯歯車320の相対回転を許容する一対のくさび状カム350と、一対のくさび状カム350をブッシュ340及び外歯ボス311に同時に接触させる方に付勢するスプリング360と、を備えたリクライニング装置300が提案されている。
【0003】
かかるリクライニング装置300は、回転シャフト330によってブッシュ340の端部を押すように回転させるものである。このようにブッシュ340に対して回転力を伝達する伝達部が一箇所であることから、伝達部に加わる力がとても大きくなり、回転シャフト330の剛性を高くしなければならないという問題があった。また、図6に示すように、回転シャフト330からブッシュ340に対して加わる入力方向Aは、くさび状カム350の外歯ボス311に対する摺動方向Bと大きく異なるから、回転シャフト330からの入力方向とカムの作動方向が大きく異なり、角度差分の伝達ロスが発生しているという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、ブッシュ押し効率を改善し、摺動トルクを低減し、伝達ロスを低減することができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0006】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、中心に軸方向と同軸の外歯ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記外歯ボスに同軸に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記外歯歯車の前記外歯ボスの外周面と前記内歯歯車の貫通孔の内周との間に配置され、内周側にカム収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転する一部が切り欠かれた円環状又はリング状の部材からなるブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記外歯歯車の前記外歯ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記内歯歯車の貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記外歯歯車の前記外歯ボスの外周面と摺動し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記ブッシュ及び前記外歯ボスに同時に接触させる方に付勢するスプリングと、を備え、
前記回転シャフトには、前記ブッシュに対して回転力を伝達する伝達部が2箇所以上設けられていることを特徴とする。
【0007】
回転力を伝達する伝達部を2箇所以上設けることにより、回転シャフトを回転させた場合に、2箇所以上に力を分散させて回転させることができ、一箇所にかかる面圧力を低減することができる。また、2箇所以上で押圧することによって、くさび状カムの外歯ボスの外周面に対する接点における摺動方向と、ブッシュへの入力方向との角度差が小さくなるため、伝達ロスを低減することができ、より低い力で回転させることができる。
【0008】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、前記伝達部は、一部が切り欠かれた円環状又はリング状のブッシュの両側端部に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0009】
かかる構成を採用することによって、ブッシュ全体に力が加わるので、ブッシュに対する負荷を最小限にすることができる。
【0010】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置において、前記伝達部は、くさび状カムと外歯ボスとの接点と同じ角度の放射方向の線に対して±10°の範囲に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
くさび状カムと外歯ボスとの接点と同じ角度の放射方向の線上又は、この近傍である放射方向に対して±10°の範囲に伝達部を設けることによって、くさび状カムと外歯ボスとの摺動方向と伝達部におけるブッシュへの入力方向がほぼ同じ方向になるので、伝達ロスを低減することができ、より低い力で回転させることができる。
【0012】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、中心に貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に内歯ボスが形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記内歯ボスに同軸に嵌挿されるとともに、前記外歯歯車又は前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に回転させる回転シャフトと、
前記内歯歯車の前記内歯ボスの外周面と前記外歯歯車の貫通孔の内周との間に配置され、内周側にカム収容部を有し、かつ前記回転シャフトの回転に伴い回転する一部が切り欠かれた円環状又はリング状の部材からなるブッシュと、
前記カム収容部に収容され、前記内歯歯車の前記内歯ボスと前記ブッシュとを押圧して前記ブッシュを前記外歯歯車の貫通孔の内周面に接触させることによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記回転シャフトを回転させることによって、前記内歯歯車の前記内歯ボスの外周面と摺動し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
一対の前記くさび状カムを前記ブッシュ及び前記内歯ボスに同時に接触させる方に付勢するスプリングと、を備え、
前記回転シャフトには、前記ブッシュに対して回転力を伝達する伝達部が2箇所以上設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
本発明は、前述した発明が、外周面に外歯が形成され、中心に軸方向と同軸の外歯ボスが形成された外歯歯車と、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に貫通孔が形成された内歯歯車との組み合わせであったのに対し、外周面に外歯が形成され、中心に貫通孔が形成された外歯歯車と、内周面に少なくとも前記外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ略中心に内歯ボスが形成された内歯歯車と、の組み合わせにしたものである。それ以外の構成及び技術的概念は前述と同様である。
【0014】
同様に、前記伝達部は、一部が切り欠かれた円環状又はリング状のブッシュの両側端部に設けられていることを特徴とするものであってもよいし、前記伝達部は、前記伝達部は、外歯ボスの中心からくさび状カムと外歯ボスとの接点への放射方向と同じ角度線に対して±10°の範囲に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の別実施形態を示す正面図である。
図5図5は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図6図6は、従来のリクライニング装置100の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、車両用シート200の模式図であり、図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、図3は、リクライニング装置100の分解斜視図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0017】
本発明にかかるリクライニング装置100は、図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、傾動用の電動モーターによってタウメル機構が作動し、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、リクライニング装置100は、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0018】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、図2又は図3に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、回転シャフト30、ブッシュ40、一対のくさび状カム50a,50b(50)、スプリング60、スプリングカバー70及びプレートカバー80を備えている。なお、図2では、内部構造を見やすくするため、スプリング60の一部、スプリングカバー70及びプレートカバー80は省略されている。
【0019】
外歯歯車10は、図2又は図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成されている。外歯歯車10の中心には、円筒形に形成された外歯ボス12が設けられている。
【0020】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内側面20aに内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心が偏心するように内歯21と外歯11とが噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は、外歯歯車10が内歯21の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中央には円筒状の貫通孔22が形成されている。
【0021】
回転シャフト30は、外歯歯車10の外歯ボス12に対して同軸上に嵌挿されている。また、回転シャフト30は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、モーター(図示しない。)からの回転力を受けるために内筒面には、セレーション31が設けられている。さらに、回転シャフト30は、後述するブッシュ40に設けられる突起部42と嵌合する嵌合凹部32が2箇所形成されている。嵌合凹部32は、突起部42を両側から挟み込むようにして取り付けられており、この嵌合凹部32によってブッシュ40の突起部42に入力し、ブッシュ40に対して回転力を伝達する伝達部46を形成する。従って、時計周り、反時計周りのいずれの方向に回転シャフト30を回転させても、ブッシュ40は回転シャフト30と同様に回転する。
【0022】
ブッシュ40は、外歯歯車10の外歯ボス12の外周面12aと、内歯歯車20の貫通孔22に配置される一部が切り欠かれた円環状又はリング状の部材である。ブッシュ40は、内周側に後述するくさび状カム50が収容されるカム収容部44を有している。カム収容部44は、くさび状カム50の形状に合わせて、向かい合った側から徐々に隙間が狭くなるように2箇所形成されており、くさび状カム50はこのカム収容部44に嵌挿される。ブッシュ40には、前述した嵌合凹部32と嵌合する突起部42が側面に設けられている。突起部42は、図2又は図3に示すように、ブッシュ40の両方の端部に設けられている。このように突起部42を2箇所設けることによって、回転シャフト30を回転させた場合に、回転力を伝達する伝達部46a、46bが2箇所となるため、1箇所にかかる面圧力を低減することができる。そのため、回転シャフト30の熱処理等の工程を省くことができ、コストダウンを図ることができるという効果も有する。また、両方の端部に突起部42を設けることによって、ブッシュ全体に力が加わりやすく、ブッシュ40に対する負荷を最小限にすることができる。また、この両端部の2箇所で押圧することによって、図2に示すように、ブッシュ40への回転力の入力方向Aとくさび状カム50の外歯ボス12の外周面12aに対する接点Cにおける摺動方向Bと、の角度差θ1が小さくなるため、伝達ロスを低減することができ、より低い力で回転させることができる。
【0023】
また、より好ましくは、伝達部46のうち少なくとも1つは、図4に示すように、外歯ボス12の中心からくさび状カム50と外歯ボス12との接点Cへの放射方向の線Dに対して、±10°の範囲θ3に設けるとよい。このように構成することで、図4に示すように、ブッシュへの回転力の入力方向Aとくさび状カム50の外歯ボス12の外周面12aに対する接点における摺動方向Bと、の角度差θ2をより小さくすることができるため、角度差による伝達ロスをさらに低減することができ、より低い力で回転させることができる。
【0024】
ブッシュ40のカム収容部44の内周面と、外歯歯車10の外歯ボス12の外周面12aとの間には、両者に接触するように一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50b(50)が設けられている。くさび状カム50aとくさび状カム50bは、図3に示すように、面対称に配置されており、くさび状カム50の凹面51(内側の面)は、外歯ボス12の外周面12aの曲面と一部同一の曲面を有し、凸面52(外側の面)は肉厚が向かい合った側から徐々に薄くなるように形成されている。
【0025】
スプリング60は、図3に示すように、環状部61と、この環状部61から90°折れるように立ち上がった端部62a、62bとを有し、この端部62a、62bは、くさび状カム50a及びくさび状カム50bの厚肉部側の端面に配置され、それぞれのくさび状カム50a及びくさび状カム50bを互いに離間させる方向へ付勢する。これによって、内歯歯車20に対して外歯歯車10を押し付けて噛合させることができる。
【0026】
スプリングカバー70は、図4に示すように、スプリング60が外れることがないように、保持するためのカバーであり、スプリング60を保持できる形態であれば、特に限定するものではない。
【0027】
プレートカバー80は、円環状に形成された金属板で形成されており、内歯歯車20の外周側の端部に溶接等で固定され、外歯歯車10の軸方向への移動を規制する機能を有する。
【0028】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト30に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング60によって付勢され、ブッシュ40と外歯歯車10の外歯ボス12の外周面12aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0029】
このロック状態から、回転シャフト30を例えば図2において、時計方向に回転させると、回転シャフト30と係合しているブッシュ40も同様に回転する。またブッシュ40のカム収容部44の内壁にクサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。ブッシュ40の回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。回転シャフト30、ブッシュ40は、内歯歯車20に対して、時計方向に回転し、この結果、ブッシュ40と外歯ボス12及びブッシュ40と内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング60の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト30、ブッシュ40とともに摺動するように時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト30は、差動歯車機構を構成することになる。なお、反時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0030】
この際に、このように伝達部を2箇所設けることによって、回転シャフト30を回転させた場合に、回転力を伝達する伝達部が2箇所となり、2箇所で力を加えて回転させることによって、一箇所にかかる面圧力を低減することができる。2箇所で押圧することによって、ブッシュ40への回転力の入力方向とくさび状カム50の外歯ボス12の外周面12aに対する接点における摺動方向と、の角度差が小さくなるため、伝達ロスを低減することができ、より低い力で回転させることができる。
【0031】
なお、伝達部は、2箇所に限定されるものではなく、3箇所又はそれ以上設けても良い。ブッシュ40への回転力の入力方向とくさび状カム50の外歯ボス12の外周面12aに対する接点における摺動方向と、の角度差が小さくなる部位に伝達部を複数設けることによって、さらに、伝達ロスを低減することができる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるクライニング装置101が図5に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置101は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100に対して、外周面に外歯11が形成され、中心に貫通孔15が形成された外歯歯車10と、内周面に少なくとも外歯11よりも1つ以上多く設けられた外歯11と噛合可能な内歯21を有し、かつ略中心に内歯ボス25が形成された内歯歯車20と、の組み合わせにしたものである。それ以外の構成及び技術的概念は前述と同様である。従って、ブッシュ40及びくさび状カム50は、外歯歯車10の貫通孔15と内歯歯車20の内歯ボス25との間に配置されることとなる。その他の構成及び機能は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
10…外歯歯車、11…外歯、12…外歯ボス、12a…外周面、20…内歯歯車、20…内歯歯車、20a…内側面、21…内歯、22…貫通孔、25…内歯ボス、30…回転シャフト、31…セレーション、42…突起部、32…嵌合凹部、40…ブッシュ、44…カム収容部、50a,50b(50)…くさび状カム、51…凹面、52…凸面、60…スプリング、61…環状部、62a、62b…端部、70…スプリングカバー、80…プレートカバー、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6