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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076709
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20240530BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20240530BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F04C29/12 J
F04C23/00 F
F04C18/356 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188397
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石飛 政和
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善彰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀作
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA02
3H129AA04
3H129AA10
3H129AA12
3H129AA21
3H129AB03
3H129AB12
3H129BB32
3H129CC03
(57)【要約】
【課題】ロータリ圧縮機構の製作や組付けに要するコストを削減することができる圧縮機を提供する。
【解決手段】軸線Xの方向に延在しているとともに、軸線Xに対して偏心した偏心軸部41を有している回転軸15と、偏心軸部41に設けられているロータ42と、ロータ42を収容した圧縮室C1が内部に形成されているシリンダ44と、を備え、シリンダ44には、外部から冷媒が導かれる吸入空間44a及び圧縮室C1と吸入空間44aとを連通した連通穴44bが形成され、連通穴44bは、軸線Xの方向と直交する第1方向D1に対して傾斜した第2方向D2に沿って延在しているとともにシリンダ44の外周面を貫通していない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の方向に延在しているとともに、前記軸線に対して偏心した偏心軸部を有している回転軸と、
前記偏心軸部に設けられているロータと、
該ロータを収容した圧縮室が内部に形成されているシリンダと、
を備え、
前記シリンダには、外部から冷媒が導かれる吸入空間及び前記圧縮室と前記吸入空間とを連通した連通穴が形成され、
該連通穴は、前記軸線の方向と直交する第1方向に対して傾斜した第2方向に沿って延在しているとともに前記シリンダの外周面を貫通していない
圧縮機。
【請求項2】
前記第2方向に沿った前記連通穴の延長線は、該連通穴が形成された前記シリンダと干渉していない
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記偏心軸部及び前記シリンダの対の数は複数とされ、
各前記シリンダは、前記軸線の方向に並んで配置され、
各前記シリンダに形成された前記吸入空間は、前記軸線の方向に沿って互いに連通している
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータリ圧縮機構を備えている圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ圧縮機構機(ロータリ圧縮機)のシリンダには、外部から圧縮室へ冷媒を導くための冷媒流路が形成されている。
冷媒流路の一部は、例えば特許文献1に開示されているように、シリンダの外周面から径方向にドリル等の工具を挿入することで横穴を加工して、横穴の加工後に封止栓で開口を封止することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/217385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、横穴を加工することで冷媒流路を形成する方法では、特許文献1のように、封止栓(プラグ)が必要となるので、封止栓を製作するためのコストや封止栓をシリンダに組み付けるためのコストがかかってしまう。すなわち、ロータリ圧縮機構の製作や組付けに要するコストがかかってしまう。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ロータリ圧縮機構の製作や組付けに要するコストを削減することができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の圧縮機は、以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る圧縮機は、軸線の方向に延在しているとともに、前記軸線に対して偏心した偏心軸部を有している回転軸と、前記偏心軸部に設けられているロータと、該ロータを収容した圧縮室が内部に形成されているシリンダと、を備え、前記シリンダには、外部から冷媒が導かれる吸入空間及び前記圧縮室と前記吸入空間とを連通した連通穴が形成され、該連通穴は、前記軸線の方向と直交する第1方向に対して傾斜した第2方向に沿って延在しているとともに前記シリンダの外周面を貫通していない。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ロータリ圧縮機構の製作や組付けに要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る圧縮機の断面図である。
図2】ロータリ圧縮機構の断面図である。
図3】シリンダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係る圧縮機について、図面を参照して説明する。
【0010】
[圧縮機の概要]
図1に示すように、圧縮機1は、空調機に用いられ、例えば二酸化炭素等のガスである冷媒Rfを二段圧縮する。圧縮機1は、脚部3を介して設置面FLに対して固定されている。
圧縮機1は、ハウジング11と、ハウジング11の内部に設けられたロータリ圧縮機構(低段側圧縮機構)12と、スクロール圧縮機構(高段側圧縮機構)13と、電動モータ14と、回転軸15とを備えている。
【0011】
ハウジング11は、円筒状をなす本体部21と、本体部21の上部の開口を閉塞する上蓋部22と、本体部21の下部の開口を閉塞する下蓋部23とを備えている。
そして、本体部21、上蓋部22及び下蓋部23によって画定されたハウジング11の内部には、密閉空間が形成されている。
【0012】
回転軸15は、ハウジング11の内部で軸線Xに沿って上下に延在して設けられている。回転軸15は、電動モータ14からの駆動力をロータリ圧縮機構12及びスクロール圧縮機構13に伝達するための部材である。
回転軸15の上端(一端)側の部分は、スクロール側軸受31によって回転可能に支持されている。また、回転軸15の下端(他端)側の部分は、上部軸受32A(ロータリ側上部軸受)及び下部軸受32B(ロータリ側下部軸受)の2つの軸受によって回転可能に支持されている。
【0013】
電動モータ14は、回転軸15の長手方向における中央でかつ回転軸15の外周側に配置され、回転軸15を軸線X回りに回転させる。
電動モータ14は、回転軸15の外周面に固定されたロータ38と、ロータ38の外周面と隙間を空けてロータ38と径方向に対向し、ハウジング11の本体部21の内壁に焼嵌め等によって固定されたステータ39とを有している。
【0014】
ロータ38には、軸線Xに対する周方向に所定間隔で設けられたロータ通路38aが設けられている。各ロータ通路38aは、上下方向(軸線X方向)にロータ38を貫通している。これらのロータ通路38aを介して、ロータリ圧縮機構12から吐出された冷媒Rfが上方へ流れる。
ロータ38の上面及び下面には、ロータウェイト37(バランスウェイト)が設けられている。各ロータウェイト37は、ロータ38が有する積層された鋼板を軸線X方向に貫通したピン38cによって固定されている(共締め)。ロータウェイト37の形状の詳細については後述する。
ロータ38の上部に設置されたロータウェイト37の上面には、油分離プレート38bが固定されている。油分離プレート38bは、円板形状とされており水平方向に延在するように配置されている。油分離プレート38bは、ロータ38とともに軸線X回りに回転する。
【0015】
電動モータ14は、インバータ(図示せず)を介して電源に接続されており、回転軸15を周波数可変として回転させる。
【0016】
ロータリ圧縮機構12は、ハウジング11の内部で回転軸15の下端側に設けられている。
ロータリ圧縮機構12は、冷媒Rfを圧縮する圧縮室C1を有している。圧縮室C1で圧縮された冷媒Rfは、上部軸受32Aを介してロータリ吐出管43からハウジング11内の電動モータ14の下方の領域に吐出される。
ロータリ圧縮機構12の詳細については後述する。
【0017】
スクロール圧縮機構13は、ハウジング11の内部で回転軸15の上端側に設けられている。
スクロール圧縮機構13は、スクロール側軸受31に固定された固定スクロール51と、固定スクロール51の下方で固定スクロール51に対向して配置された旋回スクロール57とを備えている。
【0018】
固定スクロール51は、スクロール側軸受31の上面に固定された端板52及び端板52から下方に突出する固定ラップ53を有している。
端板52の中央部(軸線X近傍)には、軸線X方向に沿って貫通する吐出孔52aが形成されている。
【0019】
旋回スクロール57は、軸線X方向においてスクロール側軸受31と固定スクロール51との間に挟まれるようにして配置されている。
旋回スクロール57は、回転軸15の偏心軸部56に接続された端板58及び端板58から上方に突出する旋回ラップ59を有している。
【0020】
端板58は、回転軸15の上端に設けられた偏心軸部56に対してドライブブッシュ55を介して摺動可能に連結されており、回転軸15の回転に伴って軸線Xに対して偏心して旋回運動する。
【0021】
旋回ラップ59は、固定ラップ53と噛み合うことで固定ラップ53との間に冷媒Rfを圧縮する圧縮室C2を形成している。
【0022】
スクロール側軸受31の中央に形成された凹所と旋回スクロール57の下部との間には、バランスウェイト室63が形成されている。このバランスウェイト室63には、油が溜まっている。
バランスウェイト室63では、回転軸15とともに回転軸ウェイト54(バランスウェイト)が回転する。
【0023】
回転軸ウェイト54は、ドライブブッシュ55に焼きばめされ、偏心軸部56に挿入されている。
回転軸ウェイト54は、回転軸15の回転に伴って軸線Xに対して偏心して旋回運動をすることで、軸線Xに対して偏心して回転する旋回スクロール57との回転軸15に対するつり合いを取る。
【0024】
ロータリ圧縮機構12で圧縮されてハウジング11内に吐出された冷媒Rfは、スクロール圧縮機構13の外周側から圧縮室C2内に吸い込まれて、中心側に向かって圧縮される。
圧縮された冷媒Rfは、固定スクロール51に形成された吐出孔52aを介して、吐出管34等を介してハウジング11の外部へ吐出される。
【0025】
スクロール側軸受31の下方には、スクロール側軸受31を覆うようにカバー48が設けられている。
カバー48は、板金加工されて成形されており、下方から上方に向かって段階的に拡径された筒形状とされている。
カバー48の下端には、吸入開口48a形成されている。すなわち、吸入開口48aは、下方を向いて開口した、軸線Xに対する周方向においてカバー48と回転軸15との間に形成された円環状の領域である。
カバー48によってハウジング11の電動モータ14側の空間とスクロール側軸受31側の空間とが仕切られており、吸入開口48aから吸い込まれた冷媒Rfのみがスクロール圧縮機構13に導かれるようになっている。
【0026】
ハウジング11の外部でかつ下方には、オイルレベルタンク60が設けられている。
オイルレベルタンク60は、中空の容器とされ、下部に設けられた下部配管61と上部に設けられた均圧管62を介してハウジング11の内部と連通している。
オイルレベルタンク60の上部にはソケット65が設けられており、ソケット65にはレベル計(図示せず)が設置される。
オイルレベルタンク60の内部には、ハウジング11の内部の油溜まりから下部配管61を介して油が導かれ、ソケット65に設置されるレベル計によって油溜まりの油面高さを計測することができる。
【0027】
ハウジング11内には、ハウジング11の内壁に接触しつつ上下方向に延在する油戻し管67が設けられている。油戻し管67は、上端(一端)がスクロール側軸受31に固定され、下端(他端)がハウジング11の下部の油溜まりに位置するように設けられている。
【0028】
[ロータリ圧縮機構の詳細について]
図2に示すように、ロータリ圧縮機構12は、例えば2気筒とされており、回転軸15に設けられた2つの偏心軸部41、各偏心軸部41に固定されたロータ42、圧縮室C1が内部に形成された2つのシリンダ44及び上部のシリンダ44と下部のシリンダ44とを隔てる1枚のセパレートプレート45を備えている。
【0029】
各偏心軸部41は、回転軸15の回転軸線である軸線Xに対して偏心した軸部である。
一方の偏心軸部41及び他方の偏心軸部41は、軸線X方向に互いに離間して設けられている。
【0030】
各ロータ42は筒状の部材であり、各偏心軸部41に挿入されて固定されている。
各ロータ42は各シリンダ44の内部に形成された空間に収容されており、各シリンダ44とともに圧縮室C1を形成している。
【0031】
2気筒とされた本実施形態のロータリ圧縮機構12ではシリンダ44は2つとされ、一方のシリンダ44及び他方のシリンダ44は、各偏心軸部41の位置に対応するように、軸線X方向に離間して設けられている。
また、上部のシリンダ44と下部のシリンダ44との間には各シリンダ44と密着するようにセパレートプレート45が設けられており、上部の圧縮室C1と下部の圧縮室C1とを仕切っている。
【0032】
各圧縮室C1には、シリンダ44の外部から冷媒Rfが供給されるようになっている。
具体的には、上部のシリンダ44に形成された圧縮室C1の場合、冷媒Rfは、吸入管33、吸入ボス35(ボス部)及び上部軸受32Aに形成された冷媒流路36を介して上部のシリンダ44に形成された吸入空間44aに供給された後、吸入空間44aと圧縮室C1とを連通する連通穴44bを介して圧縮室C1に供給されるように構成されている。
また、下部のシリンダ44に形成された圧縮室C1の場合、冷媒Rfは、上部のシリンダ44に形成された吸入空間44a及びセパレートプレート45に形成された連通空間45aを介して下部のシリンダ44に形成された吸入空間44aに供給された後、吸入空間44aと圧縮室C1とを連通する連通穴44bを介して圧縮室C1に供給されるように構成されている。
【0033】
なお、上部のシリンダ44に形成された吸入空間44aは該シリンダ44を軸線X方向に貫通しているが、下部のシリンダ44に形成された吸入空間44aは該シリンダ44を軸線X方向に貫通しておらず有底である。
また、各吸入空間44aは、軸線X方向に沿って互いに連通するように連続的に形成されていれば、その具体的な形状は問わない。
【0034】
図2及び図3に示すように、連通穴44bは、シリンダ44を形成している部材・材料によって隔てられている圧縮室C1と吸入空間44aとを連通している貫通穴である。
連通穴44bは、第2方向D2に沿って延在している。言い換えれば、連通穴44bは、第2方向D2に沿った軸線を有している。
連通穴44bは、シリンダ44の外周面には到達していない。
【0035】
第2方向D2は、軸線X方向と直交する第1方向D1に対して傾斜している。
例えば、軸線Xが鉛直方向に延在している場合、第1方向D1は水平方向に延在することになり、第2方向D2は水平方向に対して傾斜することになる。
ただし、第2方向D2は、軸線X方向と一致しないものとする。
【0036】
連通穴44bの大きさ、位置、角度(すなわち、第2方向D2の角度)は、次のように設定されることが好ましい。
すなわち、図3に示すように、連通穴44bを第2方向D2に沿って仮想的に延長したときに、その延長線(図3において二点鎖線で描画)がシリンダ44(当該連通穴44bが設けられたシリンダ44を形成している部材)と干渉しないように設定されることが好ましい。
これによって、例えばドリル等の切削工具を第2方向D2に沿って圧縮室C1の内側(シリンダ44の内周面)から吸入空間44aに向かって挿入することで、ドリルがシリンダ44に干渉することなく、かつ、シリンダ44の外周面に他の穴を開けることなく、連通穴44bを形成することができる。
【0037】
なお、連通穴44b(第2方向D2)は、図3に示すように、吸入空間44aから圧縮室C1に向かって下方に傾斜してもよいし、吸入空間44aから圧縮室C1に向かって上方に傾斜してもよい。
ただし、冷媒Rfの円滑な流れの観点から、吸入空間44aから圧縮室C1に向かって下方に傾斜している方が好ましい。
【0038】
図2に示すように、各シリンダ44及びセパレートプレート45は、上部軸受32Aと下部軸受32Bとに挟まれるような形態で、上部軸受32A及び下部軸受32Bに対してボルト(図示せず)によって下方から固定(締結)されている。
【0039】
図1に示すように、シリンダ44の下方には、ボルトによって固定された油ポンプ49が設けられている。
油ポンプ49は、ハウジング11の下部にある油溜まりから油を吸い込み、回転軸15の軸線Xに沿って貫通された油供給穴15aを介してスクロール側軸受31側へと導く。
【0040】
なお、ロータリ圧縮機構12は、単気筒であってもよいし、3気筒以上であってもよい。この場合、偏心軸部41の数、ロータ42の数、シリンダ44の数及びセパレートプレート45の数は、気筒の数に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
また、各シリンダ44に形成される吸入空間44aは、セパレートプレート45の連通空間45aを介して軸線X方向に沿って連続的に形成されていればよく、それらの形状は特に限定されない。
【0041】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
シリンダ44に形成された連通穴44bは、軸線Xの方向と直交する第1方向D1に対して傾斜した第2方向D2に沿って延在しているとともにシリンダ44の外周面を貫通していないので、連通穴44bを成形するにあたって、圧縮室C1(シリンダ44の内周面)から吸入空間44aに向かって工具を第2方向D2に沿って挿入すればよく、シリンダ44の外周面から圧縮室C1に向かって工具を挿入する必要がない。
そのため、シリンダ44の外周面と内周面とを連通する横穴、すなわちシリンダ44の外部と圧縮室C1とを連通する横穴が形成されないので、横穴を塞ぐためのプラグの製作や組付けが不要となる。これによって、ロータリ圧縮機構12の製作や組付けに要するコストを削減することができる。
【0042】
また、第2方向D2に沿った連通穴44bの延長線は、その連通穴44bが形成されたシリンダ44と干渉しないので、圧縮室C1から吸入空間44aに向かって工具を第2方向D2に沿って挿入しやすくなる。
【0043】
偏心軸部41及びシリンダ44の対の数は複数とされ、各シリンダ44は、軸線X方向に並んで配置され、吸入空間44aは、軸線X方向に沿って複数のシリンダ44にわたって連続的に形成されている各シリンダ44に形成された吸入空間44aは、軸線Xの方向に沿って互いに連通しているので、多気筒のロータリ圧縮機構12においても、製作や組付けに要するコストを削減することができる。
【0044】
なお、連通穴44bが形成されたシリンダ44を備えているロータリ圧縮機構12の構造は、本実施形態のようにロータリ圧縮機構12及びスクロール圧縮機構13を備えている圧縮機1のみならず、例えばロータリ圧縮機構12のみを備えている圧縮機にも適用できる。
【0045】
以上の通り説明した一実施形態に係る圧縮機は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の第1態様に係る圧縮機(1)は、軸線(X)の方向に延在しているとともに、前記軸線に対して偏心した偏心軸部(41)を有している回転軸(15)と、前記偏心軸部に設けられているロータ(42)と、該ロータを収容した圧縮室(C1)が内部に形成されているシリンダ(44)と、を備え、前記シリンダには、外部から冷媒(Rf)が導かれる吸入空間(44a)及び前記圧縮室と前記吸入空間とを連通した連通穴(44b)が形成され、該連通穴は、前記軸線の方向と直交する第1方向(D1)に対して傾斜した第2方向(D2)に沿って延在しているとともに前記シリンダの外周面を貫通していない。
【0046】
本態様に係る圧縮機によれば、シリンダには、外部から冷媒が導かれる吸入空間及び圧縮室と吸入空間とを連通した連通穴が形成され、連通穴は、軸線の方向と直交する第1方向に対して傾斜した第2方向に沿って延在しているとともにシリンダの外周面を貫通していないので、連通穴を成形するにあたって、圧縮室(シリンダの内周面)から吸入空間に向かって工具を第2方向に沿って挿入すればよく、シリンダの外周面から圧縮室に向かって工具を挿入する必要がない。そのため、シリンダの外周面と内周面とを連通する横穴、すなわちシリンダの外部と圧縮室とを連通する横穴が形成されないので、横穴を塞ぐためのプラグの製作や組付けが不要となる。これによって、ロータリ圧縮機構の製作や組付けに要するコストを削減することができる。
【0047】
また、本開示の第2態様に係る圧縮機は、第1態様において、前記第2方向に沿った前記連通穴の延長線は、該連通穴が形成された前記シリンダと干渉していない。
【0048】
本態様に係る圧縮機によれば、第2方向に沿った連通穴の延長線は、その連通穴が形成されたシリンダと干渉しないので、圧縮室から吸入空間に向かって工具を第2方向に沿って挿入しやすくなる。
【0049】
また、本開示の第3態様に係る圧縮機は、第1態様又は第2態様において、前記偏心軸部及び前記シリンダの対の数は複数とされ、各前記シリンダは、前記軸線の方向に並んで配置され、各前記シリンダに形成された前記吸入空間は、前記軸線の方向に沿って互いに連通している。
【0050】
本態様に係る圧縮機によれば、偏心軸部及びシリンダの対の数は複数とされ、各シリンダは、軸線の方向に並んで配置され、各シリンダに形成された吸入空間は、軸線の方向に沿って互いに連通しているので、多気筒のロータリ圧縮機構においても、製作や組付けに要するコストを削減することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 圧縮機
3 脚部
11 ハウジング
12 ロータリ圧縮機構(低段側圧縮機構)
13 スクロール圧縮機構(高段側圧縮機構)
14 電動モータ
15 回転軸
15a 油供給穴
21 本体部
22 上蓋部
23 下蓋部
31 スクロール側軸受
32A 上部軸受(ロータリ側上部軸受)
32B 下部軸受(ロータリ側下部軸受)
33 吸入管
34 吐出管
35 吸入ボス(ボス部)
36 冷媒流路
37 ロータウェイト(バランスウェイト)
38 ロータ
38a ロータ通路
38b 油分離プレート
38c ピン
39 ステータ
41 偏心軸部
42 ロータ
43 ロータリ吐出管
44 シリンダ
44a 吸入空間
44b 連通穴
45 セパレートプレート
45a 連通空間
48 カバー
48a 吸入開口
49 油ポンプ
51 固定スクロール
52 端板
52a 吐出孔
53 固定ラップ
54 回転軸ウェイト(バランスウェイト)
55 ドライブブッシュ
56 偏心軸部
57 旋回スクロール
58 端板
59 旋回ラップ
60 オイルレベルタンク
61 下部配管
62 均圧管
63 バランスウェイト室
65 ソケット
C1 圧縮室
C2 圧縮室
D1 第1方向
D2 第2方向
FL 設置面
X 軸線
図1
図2
図3