(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076715
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】圧縮機及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
F04B 39/12 20060101AFI20240530BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20240530BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
F04B39/12 J
F04B39/12 C
F04C18/02 311B
F04C29/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188403
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石飛 政和
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀作
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
【テーマコード(参考)】
3H003
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AB04
3H003AC03
3H003CD01
3H003CD03
3H003CE02
3H003CE05
3H039AA03
3H039AA12
3H039BB08
3H039CC01
3H039CC33
3H129AA02
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA14
3H129AA18
3H129AB03
3H129BB32
3H129BB33
3H129CC02
3H129CC09
(57)【要約】
【課題】ハウジングに対して圧縮部の芯出しを簡便に行うことができる圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機は、ハウジング11と、ハウジング11内に収容されたロータリ圧縮部と、ロータリ圧縮部を駆動する回転軸15と、ロータリ圧縮部をハウジング11に対して溶接して固定する栓溶接部35と、ロータリ圧縮部である下部軸受32の腕部32bの外周面とハウジング11の内周面との間に挿入されたシム37と、を備えている。複数の腕部32bはそれぞれが半径方向に延び、各腕部32bの外周面に栓溶接部35が設けられ、栓溶接部35の周囲にシム37が配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する回転軸部と、
前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定部と、
前記圧縮部の外周面と前記ハウジングの内周面との間に挿入されたシムと、
を備えている圧縮機。
【請求項2】
前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部を備え、
前記腕部の外周面に前記溶接固定部が設けられ、
前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記シムには、前記溶接固定部に対応する位置に孔部が形成されている請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記シムを前記圧縮部に固定する固定部を備えている請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する回転軸部と、
を備えた圧縮機の組立方法であって、
前記ハウジングの内周面が接するように前記圧縮部をハウジング内に挿入する挿入工程と、
前記圧縮部の外周面とハウジング内周面の隙間に対してシムを取り付けるシム取付工程と、
前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定工程と、
を有する圧縮機の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及びその組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハウジングの内部に、冷媒を圧縮する圧縮部が設けられた圧縮機が知られている(特許文献1参照)。同文献には、圧縮部の軸芯を調芯するために円筒状の支持枠を用いることとしている。支持枠は、スポット溶接によってハウジングに対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、支持枠を用いて圧縮部の調芯を行う際に、支持枠を固定するボルトを締め直して調整する必要があり、作業が煩雑となるという問題がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ハウジングに対して圧縮部の芯出しを簡便に行うことができる圧縮機及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された圧縮部と、前記圧縮部を駆動する回転軸部と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定部と、前記圧縮部の外周面と前記ハウジングの内周面との間に挿入されたシムと、を備えている。
【0007】
本開示の圧縮機の組立方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された圧縮部と、前記圧縮部を駆動する回転軸部と、を備えた圧縮機の組立方法であって、前記ハウジングの内周面が接するように前記圧縮部をハウジング内に挿入する挿入工程と、前記圧縮部の外周面とハウジング内周面の隙間に対してシムを取り付けるシム取付工程と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
シムを用いることによってハウジングに対して圧縮部の芯出しを簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る圧縮機を示した縦断面図である。
【
図2】
図1の矢視Aから見た下部軸受を示す横断面図である。
【
図4A】シムを折り曲げる前の展開状態を示した平面図である。
【
図4B】シムをL字状に折り曲げた状態を示した平面図である。
【
図5】ハウジングに対してロータリ圧縮部を挿入する前の状態を示した縦断面図である。
【
図6】ハウジングに対してロータリ圧縮部を挿入した後の状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、圧縮機1は、空調機に用いられ、例えば二酸化炭素等のガスである冷媒Rを二段圧縮する。圧縮機1は、脚部3を介して設置面FLに対して固定されている。圧縮機1はハウジング11と、ハウジング11の内部に設けられたロータリ圧縮機構(圧縮部)12と、スクロール圧縮機構13と、電動モータ14と、回転軸(回転軸部)15とを備えている。
【0011】
ハウジング11は、円筒状をなす本体部21と、本体部21の上下の開口を閉塞する上部蓋部22及び下部蓋部23とを備えている。そしてハウジング11の内部は密閉空間を形成している。ハウジング11の本体部21は、管状材や丸棒材を切削して製作されており、平板を曲げ形成して端部を溶接して製作したものよりも寸法精度が高い。したがって、本体部21には軸方向に延在する溶接線が形成されていない。
【0012】
回転軸15は、ハウジング11の内部で軸線Xに沿って上下に延在して設けられている。回転軸15の上端(一端)側は、上部軸受31によって回転可能に支持されている。回転軸15の下端(他端)側は、下部軸受32によって回転可能に支持されている。下部軸受32は、ロータリ圧縮機構12と一体的に組み立てられており、ロータリ圧縮機構12とともにロータリ圧縮部(圧縮部)を構成している。
【0013】
電動モータ14は、回転軸15の長手方向における中央でかつ回転軸15の外周側に配置され、回転軸15を軸線X回りに回転させる。電動モータ14は、回転軸15の外周面に固定されたロータ38と、ロータ38の外周面と隙間を空けてロータ38と径方向に対向し、ハウジング11の本体部21の内壁に焼嵌め等によって固定されたステータ39とを有している。
【0014】
ロータ38には、周方向に所定間隔で設けられたロータ通路38aが設けられている。各ロータ通路38aは、上下方向(軸線X方向)にロータ38を貫通している。これらロータ通路38aを介して、ロータリ圧縮機構12から吐出された冷媒が上方へ流れる。ロータ38の上部には、油分離プレート38bが固定されている。油分離プレート38bは、円板形状とされており水平方向に延在するように配置されている。油分離プレート38bは、ロータ38とともに軸線X回りに回転する。
【0015】
ステータ39の外周には、周方向に所定角度間隔で複数のステータ通路39aが形成されている。
図1に示すように、ステータ39の上部には巻線が折り返された上側コイルエンド39bが位置し、ステータ39の下部には巻線が折り返された下側コイルエンド39cが位置している。電動モータ14は、不図示のインバータを介して電源に接続されており、回転軸15を周波数可変として回転させる。
【0016】
ロータリ圧縮機構12は、ハウジング11の内部で、回転軸15の下端(他端)側に設けられている。ロータリ圧縮機構12は、本実施形態では2気筒とされており、回転軸15に設けられた偏心軸部41と、偏心軸部41に固定され、回転軸15の回転に伴って軸線Xに対して偏心して圧縮室C1内で回転するロータ42と、圧縮室C1が形成されたシリンダ44とを備えている。
【0017】
シリンダ44に形成された圧縮室C1には、吸入管33から吸入ボス36を介して冷媒Rが供給されるようになっている。圧縮室C1にて圧縮された冷媒は、下部軸受32を介してロータリ吐出管43からハウジング11内の電動モータ14の下方の領域に吐出される。
【0018】
シリンダ44は、下部軸受32に対してボルト48によって下方から固定されている。シリンダ44の下方には、シリンダ44とともにボルト48によって固定された油ポンプ49が設けられている。油ポンプ49によって、ハウジング11の下部の油溜まりO1から油が吸い込まれ、回転軸15の軸線Xに沿って貫通された油供給穴15aを通過して上部軸受31側へと導かれる。
【0019】
スクロール圧縮機構13は、ハウジング11の内部で電動モータ14の上方に配置されている。スクロール圧縮機構13は、上部軸受31に固定された固定スクロール51と、固定スクロール51の下方で固定スクロール51に対向して配置された旋回スクロール57とを備えている。
【0020】
固定スクロール51は、上部軸受31の上面に固定された端板52と、端板52から下方に突出する固定ラップ53とを有している。端板52の中央部(軸線X近傍)には、上下に貫通する吐出孔52aが形成されている。
【0021】
旋回スクロール57は、上部軸受31と固定スクロール51との間に挟まれるようにして配置されている。旋回スクロール57は、回転軸15の上端側に接続された端板58と、端板58から上方に突出する旋回ラップ59とを有している。
【0022】
端板58は、回転軸15の上端に設けられた偏心軸部56に対してドライブブッシュ55を介して連結されており、回転軸15の回転に伴って軸線Xに対して偏心して旋回運動する。
【0023】
旋回ラップ59は、固定ラップ53と噛み合うことで固定ラップ53との間に冷媒Rを圧縮する圧縮室C2を形成している。
【0024】
上部軸受31の中央側の凹所と旋回スクロール57の下方との間には、バランスウェイト室63が形成されている。バランスウェイト室63内では、回転軸15とともにバランスウェイト54が回転する。
【0025】
ロータリ圧縮機構12で圧縮されてハウジング11内に吐出された冷媒Rは、スクロール圧縮機構13の外周側から圧縮室C2内に吸い込まれて、中心側に向かって圧縮される。圧縮された冷媒Rは、固定スクロール51の吐出孔52aを介して、吐出管34からハウジング11の外部へ吐出される。
【0026】
上部軸受31の下方には、上部軸受31を覆うようにカバー45が設けられている。カバー45は、板金加工されて成形されており、下方から上方に向かって拡径された略円錐形状とされている。カバー45の外周側における上端は、ボルト等によって上部軸受31に対して固定されている。
【0027】
カバー45の下端には吸入開口45aが設けられている。すなわち、吸入開口45aは、下方を向いており、カバー45と回転軸15との間に形成された円環状の領域である。カバー45によってハウジング11の下方の空間と上部軸受31側の空間とが仕切られており、吸入開口45aから吸い込まれた冷媒がスクロール圧縮機構13に導かれるようになっている。
【0028】
ハウジング11の外部でかつ下方には、オイルレベルタンク60が設けられている。オイルレベルタンク60は、中空の容器とされ下部配管61と上部の均圧管62を介してハウジング11内と連通している。オイルレベルタンク60は、ハウジング11内の油溜まりO1から下部配管61を介して油を導くことによって、油溜まりO1の油面高さを計測するものである。
【0029】
ハウジング11の下方側部には、オイルセパレータ返油管65の下流端が接続されている。オイルセパレータ返油管65の上流端は、図示しないオイルセパレータに接続されている。圧縮機1から吐出された冷媒はオイルセパレータにて油を分離し、その分離した油が、オイルセパレータ返油管65を介してハウジング11内の油溜まりO1へと戻される。オイルセパレータ返油管65の下流端がハウジング11に接続される高さ位置は、下部軸受32の下方とされている。
【0030】
ハウジング11内には、ハウジング11の内壁に接触しつつ上下方向に延在する油戻し管67が設けられている。油戻し管67は、上端(一端)が上部軸受31に固定され、下端(他端)がハウジング11の下部の油溜まりO1に位置するように設けられている。
【0031】
<ロータリ圧縮部の固定構造>
以下に、下部軸受32及びロータリ圧縮機構12を含むロータリ圧縮部の固定構造について説明する。
図2には、下部軸受32を見た横断面が示されている。下部軸受32は、中央の円筒部32aと、円筒部32aから半径方向に延びた3つの腕部32bとを備えている。各腕部32bは、周方向に等角度間隔で120°の角度を有して配置されている。各腕部32bの先端は、栓溶接(プラグ溶接)が行われた栓溶接部(溶接固定部)35によってハウジング11の内面に対して固定されている。
【0032】
各腕部32bの外周面とハウジング11の内周面との間には、シム37が設けられている。シム37によって、各腕部32bの外周面とハウジング11の内周面との間の隙間が埋められている。シム37は、ボルト(固定部)40によって腕部32bに対して固定されている。
【0033】
図3には、シム37が取り付けられた位置の部分拡大縦断面図が示されている。同図に示されているように、シム37は、同図のような縦断面視において略直角に折り曲げられたL字形状とされている。
【0034】
図4Aには、シム37を略直角に折り曲げる前の展開状態が示されている。シム37は、SHPC(熱間圧延軟鋼板)等の金属製の板状体とされている。シム37の厚さは、例えば0.1mm以上0.6mm以下とされる。但し、シム37の厚さは、組立時に形成されるハウジング11の内周面と腕部32bの外周面との間の隙間に応じて決定される。
シム37は、一端に設けられた本体部37aと、他端に設けられた固定用片部37bと、本体部37aと固定用片部37bとを接続する接続部37cとを備えている。
【0035】
シム37の本体部37aは、
図3に示された取付状態において、ハウジング11の内周面と腕部32bの外周面との間の隙間を埋める。
図4Aに示すように、本体部37aは、先端が円弧形状とされており、中央に丸穴とされた栓溶接用孔部37a1が形成されている。本体部37aの先端が円弧形状とされているので、組立時にスクロール圧縮部をハウジング11に挿入する際に抵抗が少なくなる。本体部37aの栓溶接用孔部37a1は、
図3に示したように、栓溶接部35を確保できる形状とされており、栓溶接部35の周囲近傍において、ハウジング11の内周面と腕部32bの外周面との間の隙間を本体部37aで埋めることができるようになっている。
【0036】
シム37の固定用片部37bは、
図3に示したように、腕部32bの外周面に連接する端面に取り付けられる。
図4Aに示すように、固定用片部37bの中央には丸穴とされた固定用孔部37b1が形成されている。
図3に示したように、固定用孔部37b1を挿通するようにボルト40を取り付けてシム37が腕部32bに固定される。
【0037】
図4Aに示すように、シム37の接続部37cは、本体部37aと固定用片部37bとの間に位置し、幅寸法(
図4Aにおいて左右方向の寸法)が本体部37a及び固定用片部37bよりも小さくなっている。これにより、シム37が容易にL字状に折り曲げやすくなっている。シム37は、プレス加工等によって接続部37cを中心としてL字状に折り曲げられて
図4Bのような形状となる。
【0038】
上述した構成の圧縮機1は、以下のように動作する。
図示しない蒸発器で蒸発した冷媒が吸入管33から吸入ボス36を介して圧縮機1内に吸い込まれ、ロータリ圧縮機構12で圧縮される。ロータリ圧縮機構12で圧縮された冷媒は、ロータリ吐出管43からハウジング11の内部に吐出される。
ハウジング11内に吐出された冷媒は、カバー45の吸入開口45aから吸い込まれ、カバー45内の流路を通りスクロール圧縮機構13へと導かれて圧縮される。スクロール圧縮機構13で圧縮された冷媒は、固定スクロール51の吐出孔52aを通り吐出管34から外部のガスクーラ又は凝縮器へと吐出される。
【0039】
<ロータリ圧縮部の組立工程>
ロータリ圧縮部は、以下のように組み立てられる。
図5に示すように、ハウジング11の本体部21に対してスクロール圧縮機構13の上部軸受31とステータ39が組み付けられた後に、上部軸受31及びロータリ圧縮機構12を含むロータリ圧縮部と、回転軸15と、ロータ38とが一体化された組立体を、ハウジング11内に挿入する(挿入工程)。この後、下部軸受32の各腕部32bには、シム37が取り付けられる(シム取付工程)。なお、
図5は、組立時の上下位置に対応しており、
図1と上下が逆となっている。
【0040】
本実施形態のようにシム37を用いない場合には、
図5の状態でハウジング11側とロータリ圧縮部側の組立体の両方を支持するとともに、互いの軸線を合わせながらロータリ圧縮部を挿入する組立治具が必要となる。このような組立治具は大型となり、製作コストが増大してしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態ではシム37を用いるだけで、上述のような組立治具は不要となる。
シム37の厚さは、例えば0.1mm以上0.6mm以下とされており、ハウジング11の本体部21の内周面の寸法精度と下部軸受32の腕部32bの外周面の寸法精度から算出ないし計測することによって得られる。すなわち、本体部21の内周面及び腕部32bの外周面は切削によって所望の寸法精度が得られるので、0.1mm以上0.6mm以下の厚さのシム37によって下部軸受32の芯出しが可能となる。
【0042】
そして、
図6のようにロータリ圧縮部を、ハウジング11内に挿入した後に、下部軸受32の各腕部32bの先端に栓溶接を行うことによって(
図3の栓溶接部35参照)、ロータリ圧縮部をハウジング11に対して固定する(溶接固定工程)。
【0043】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
ハウジング11の内周面と下部軸受32の腕部32bの外周面との間にシム37を挿入することによって、組立治具を用いることなく、回転軸15に対するスクロール圧縮部の芯出しを正確に行うことができる。
【0044】
半径方向に延びる複数の腕部32bの外周面に栓溶接部35を設けることによってロータリ圧縮部をハウジング11に対して固定する。そして、栓溶接部35の周囲にシム37を配置することとしたので、シム37によるロータリ圧縮部の芯出しが行われた状態で正確に溶接固定が行われる。
【0045】
シム37に対して、栓溶接部35に対応する位置に固定用孔部37b1を形成することによって、栓溶接が可能となる。また、栓溶接部35の周囲をシム37によって確実に隙間調整を行うことができる。栓溶接の妨げにならない様に、栓溶接部35用の穴径よりシム37の栓溶接用孔部37a1の穴径が大きい方が望ましい。
【0046】
ボルト40によってシム37を下部軸受32に固定することとし、圧縮機1の運転中にシム37が下部軸受32から脱落することを回避することができる。
【0047】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変形することができる。
図7に示すように、シム37の本体部37aのハウジング11に接触する面を湾曲させて曲面形状としても良い。曲面形状は、ハウジング11の内周面に対応する円筒面形状とされる。これにより、組立時に本体部37aがハウジング11の内周面に対して挿入し易くなり、組立性が向上する。
【0048】
図4Aのように丸穴とした栓溶接用孔部37a1に代えて、
図8に示すように、本体部37aの一側方(同図において左方)に向かって開口する切欠穴とされた栓溶接用孔部37a2としても良い。これにより、栓溶接穴位置の位置調整を行う際にピン等の治具を入れたままシム37を挿入することができる。
【0049】
図4Aのように丸穴とした固定用孔部37b1に代えて、
図9に示すように、固定用片部37bの一側方(同図において左方)に向かって開口する切欠穴とされた固定用孔部37b2としても良い。これにより、シム37を設置した後にシム37の位置を微調整することができる。
また、図示しないが、
図8に示した切欠穴とされた栓溶接用孔部37a2と、
図9に示した切欠穴とされた固定用孔部37b2とを組み合わせたシム37としても良い。
【0050】
なお、上述した実施形態では、ロータリ圧縮部の固定について説明したが、本開示は圧縮形式がロータリ式に限定されるものではなく、一般に圧縮部をハウジングに対して固定するものであれば適用できる。
【0051】
以上説明した各実施形態に記載の圧縮機及びその組立方法は、例えば以下のように把握される。
【0052】
本開示の第1態様に係る圧縮機(1)は、ハウジング(11)と、前記ハウジング内に収容された圧縮部(32,12)と、前記圧縮部を駆動する回転軸部(15)と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定部(35)と、前記圧縮部の外周面と前記ハウジングの内周面との間に挿入されたシム(37)と、を備えている。
【0053】
ハウジングの内周面と圧縮部の外周面との間にシムを挿入することによって、組立治具を用いることなく、回転軸部に対する圧縮部の芯出しを正確に行うことができる。
【0054】
本開示の第2態様に係る圧縮機は、前記第1態様において、前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部(32b)を備え、前記腕部の外周面に前記溶接固定部が設けられ、前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている。
【0055】
半径方向に延びる複数の腕部の外周面に溶接固定部を設けることによって圧縮部をハウジングに対して固定する。そして、溶接固定部の周囲にシムを配置することとしたので、シムによる圧縮部の芯出しが行われた状態で正確に溶接固定が行われる。
【0056】
本開示の第3態様に係る圧縮機は、前記第1態様又は前記第2態様において、前記シムには、前記溶接固定部に対応する位置に孔部(37a1,37a2)が形成されている。
【0057】
シムに対して、溶接固定部に対応する位置に孔部を形成することによって、ハウジングと圧縮部との溶接が可能となる。また、溶接固定部の周囲をシムによって確実に隙間調整を行うことができる。
【0058】
本開示の第4態様に係る圧縮機は、前記第1態様から前記第3態様のいずれかにおいて、前記シムを前記圧縮部に固定する固定部(40,37b1,37b2)を備えている。
【0059】
固定部によってシムを圧縮部に固定することとし、圧縮機の運転中にシムが圧縮部から脱落することを回避することができる。例えば、シムにボルト用の孔部を形成し、ボルトで圧縮部にシムを固定することができる。
【0060】
本開示の第3態様に係る圧縮機の組立方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された圧縮部と、前記圧縮部を駆動する回転軸部と、を備えた圧縮機の組立方法であって、前記ハウジングの内周面が接するように前記圧縮部をハウジング内に挿入する挿入工程と、前記圧縮部の外周面とハウジング内周面の隙間に対してシムを取り付けるシム取付工程と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定工程と、を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 圧縮機
3 脚部
11 ハウジング
12 ロータリ圧縮機構(圧縮部)
13 スクロール圧縮機構
14 電動モータ
15 回転軸(回転軸部)
15a 油供給穴
21 本体部
22 上部蓋部
23 下部蓋部
31 上部軸受(軸受部)
32 下部軸受(圧縮部)
32a 円筒部
32b 腕部
33 吸入管
34 吐出管
35 栓溶接部
36 吸入ボス(ボス部)
37 シム
37a 本体部
37a1,37a2 栓溶接用孔部
37b 固定用片部
37b1,37b2 固定用孔部
37c 接続部
38 ロータ
38a ロータ通路
38b 油分離プレート
39 ステータ
39a ステータ通路
39b 上側コイルエンド
39c 下側コイルエンド
40 ボルト(固定部)
41 偏心軸部
42 ロータ
43 ロータリ吐出管
44 シリンダ
45 カバー
45a 吸入開口
48 ボルト
49 油ポンプ
51 固定スクロール
52 端板
52a 吐出孔
53 固定ラップ
54 バランスウェイト
55 ドライブブッシュ
56 偏心軸部
57 旋回スクロール
58 端板
59 旋回ラップ
60 オイルレベルタンク
61 下部配管
62 均圧管
63 バランスウェイト室
65 オイルセパレータ返油管
67 油戻し管
C1 圧縮室
C2 圧縮室
FL 設置面
O1 油溜まり
X 軸線
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する回転軸部と、
前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定部と、
前記圧縮部の外周面と前記ハウジングの内周面との間に挿入されたシムと、
を備え、
前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部を備え、
前記腕部の外周面に前記溶接固定部が設けられ、
前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている圧縮機。
【請求項2】
前記シムには、前記溶接固定部に対応する位置に孔部が形成されている請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記シムを前記圧縮部に固定する固定部を備えている請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する回転軸部と、
を備えた圧縮機の組立方法であって、
前記ハウジングの内周面が接するように前記圧縮部を該ハウジング内に挿入する挿入工程と、
前記圧縮部の外周面とハウジング内周面の隙間に対してシムを取り付けるシム取付工程と、
前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定工程と、
を有し、
前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部を備え、
前記溶接固定工程によって、前記腕部の外周面に溶接固定部が設けられ、
前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている圧縮機の組立方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された圧縮部と、前記圧縮部を駆動する回転軸部と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定部と、前記圧縮部の外周面と前記ハウジングの内周面との間に挿入されたシムと、を備え、前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部を備え、前記腕部の外周面に前記溶接固定部が設けられ、前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示の圧縮機の組立方法は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された圧縮部と、前記圧縮部を駆動する回転軸部と、を備えた圧縮機の組立方法であって、前記ハウジングの内周面が接するように前記圧縮部を該ハウジング内に挿入する挿入工程と、前記圧縮部の外周面とハウジング内周面の隙間に対してシムを取り付けるシム取付工程と、前記圧縮部を前記ハウジングに対して溶接して固定する溶接固定工程と、を有し、前記圧縮部は、半径方向に延びる複数の腕部を備え、前記溶接固定工程によって、前記腕部の外周面に溶接固定部が設けられ、前記溶接固定部の周囲に前記シムが配置されている。