(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007672
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/16 20200101AFI20240112BHJP
B62J 43/23 20200101ALI20240112BHJP
B62J 25/04 20200101ALI20240112BHJP
B62M 7/12 20060101ALI20240112BHJP
B62K 5/05 20130101ALN20240112BHJP
【FI】
B62J43/16
B62J43/23
B62J25/04
B62M7/12
B62K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108898
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小山 博史
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AB00
3D011AD19
(57)【要約】
【課題】バッテリの着脱性を向上させることが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両100は、前輪1および後輪2と、前後方向に延在し、乗員の荷重を受ける荷重部とバッテリ7を収容するケース部50とを有する基部3と、ケース部50に収容されたバッテリ7と電気的に接続され、後輪2を駆動する走行モータ4と、を備える。ケース部50は、バッテリ7を着脱可能に保持する可動ケースを有し、可動ケースは、バッテリ7を収容姿勢と起立姿勢とで保持するように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪と、
前後方向に延在し、乗員の荷重を受ける荷重部と蓄電器を収容する収容部とを有する基部と、
前記収容部に収容された前記蓄電器と電気的に接続され、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方を駆動する電動機と、を備え、
前記収容部は、前記蓄電器を着脱可能に保持する保持部を有し、
前記保持部は、前記蓄電器を第1姿勢と該第1姿勢とは異なる第2姿勢とで保持するように設けられることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記基部は、前方側における左右方向長さである第1長さと、後方側の左右方向長さである第2長さと、が異なるように設けられ、
前記保持部は、前記第1姿勢のときに、前記保持部に対する前記蓄電器の着脱方向が相対的に鉛直方向となる姿勢となり、前記第2姿勢のときに、前記第1姿勢のときの前記着脱方向が相対的に水平方向となる姿勢となるように設けられるとともに、前記第1姿勢において前記蓄電器の鉛直方向の下方を向く面を保持する下面保持部が、前記第2姿勢のときに、前記第1長さと前記第2長さとのうちいずれか長い方の側に配置されることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記下面保持部に、前記蓄電器の第1端子と着脱可能な第2端子を有することを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記保持部の前記下面保持部と反対側の面に、前記第2端子と電気的に接続される電力線をさらに備えることを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両において、
前記保持部は、
一端側が該保持部の第1被連結部に連結され、他端側が前記車両の骨格または車体に連結される第1部材と、
一端側が該保持部の第2被連結部に連結され、他端側が第3部材の第3被連結部に連結される第2部材と、を有することを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記第1部材の前記他端側は、前記第3部材の第4被連結部に連結されることを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車両において、
前記保持部は、一端側が該保持部の第5被連結部に連結され、他端側が前記骨格または前記車体に連結される第4部材をさらに有し、
前記第4部材は、前記保持部が前記第1姿勢と前記第2姿勢とに変化する動きを減衰する減衰部を有することを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の車両において、
前記収容部は、鉛直方向における上方を向く面に、平坦部を有し、
前記荷重部は、前記平坦部に配置されることを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両において、
前記荷重部よりも前後方向における前方、かつ、鉛直方向における上方に、前記乗員の足が置かれる足置部をさらに備えることを特徴とする車両。
【請求項10】
請求項9に記載の車両において、
前記足置部は、前記平坦部から前後方向における前方、かつ、鉛直方向における上方に延出するように設けられることを特徴とする車両。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の車両において、
前記収容部は、鉛直方向における上方を向く面に、開閉可能な蓋部を有することを特徴とする車両。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の車両において、
車速の上限値を第1上限値に制限する第1モードと、前記第1上限値よりも小さい第2上限値に制限する第2モードと、に切り換えるモード切換部をさらに備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪と後輪とを有する電動式の車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前輪と後輪とを有する立ち乗り式の電動車両が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、車両に搭載されたバッテリからの電力により電動機を駆動して車両を走行させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、車両の高位置にバッテリが配置されるので、車両の低位置にバッテリを搭載することによって車両の安定性が向上する余地がある。また、バッテリを車両の低位置に搭載する場合、バッテリを使用する保持状態とバッテリを着脱する着脱状態とで姿勢を異ならせることによって、着脱状態における着脱性も向上させることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である車両は、前輪および後輪と、前後方向に延在し、乗員の荷重を受ける荷重部と蓄電器を収容する収容部とを有する基部と、収容部に収容された蓄電器と電気的に接続され、前輪および後輪の少なくとも一方を駆動する電動機と、を備える。収容部は、蓄電器を着脱可能に保持する保持部を有し、保持部は、蓄電器を第1姿勢と該第1姿勢とは異なる第2姿勢とで保持するように設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の安定性が向上するとともに、蓄電器の着脱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示す斜視図であり、蓋が閉鎖された状態を示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示す平面図であり、蓋が取り外された状態を示す図。
【
図3】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示す斜視図であり、蓋が開放された状態を示す図。
【
図4】本発明の実施形態に係る車両の全体構成を示す斜視図であり、バッテリが起立された状態を示す図。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両の斜視図であり、姿勢変更機構の構成を示す図。
【
図7】本発明の実施形態に係る車両の側面図であり、姿勢変更機構の構成を示す図。
【
図8】走行モードの切換に係る車両の制御構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図10を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両は、ユーザが着座姿勢で乗車する電動スクーターとして構成される。
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の全体構成を示す斜視図であり、
図2は、平面図である。以下では、図示のように車両100の前後方向(長さ方向)、左右方向(幅方向)および上下方向(高さ方向)を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
図1は、車両100を斜め前方から見た斜視図である。なお、
図2は、基部3の上面の蓋51(
図1)を取り外した状態を示す。
【0009】
図1に示すように、車両100は、左右方向の中心を通って前後方向に延在する中心線CL0に関し、ほぼ左右対称に構成される。車両100は、左右方向に延在する軸線CL1を中心にして回転する前輪1と、左右方向に延在する軸線CL2を中心にして回転する後輪2とを有する。前輪1は、中心線CL0の左右両側に配置された2つの車輪によって構成され、後輪2は、中心線CL0に沿って配置された単一の車輪によって構成される。すなわち、車両100は、前輪2輪、後輪1輪の3輪車両として構成され、これにより安定して自立することができる。
【0010】
車両100は全長が1m程度、全高も1m程度、全幅が0.5m程度に構成され、標準的な自転車よりも長さが短く、高さも低い。車両100の全幅も自転車よりも短い。したがって、自転車に比べ小型かつ軽量であり、取り扱い性が容易である。なお、車両100を標準的な自転車と同程度の大きさに構成してもよく、それより大型に構成してもよい。
【0011】
車両100は、前輪1から後輪2にかけて前後方向に延在する基部3を有する。基部3は車両100の骨格を形成するフレーム30を有する。フレーム30は、前輪1と後輪2との間に配置された中央フレーム31と、中央フレーム31の前端部から左右の前輪1の間の空間にかけて前方に突設された前フレーム32と、中央フレーム31の後端部から後方に突設された後フレーム33とを有する。
【0012】
後輪2は、後フレーム33により軸線CL2を中心に回転可能に支持される。後輪2の内側には、バッテリ7から電力を供給されて駆動する走行モータ(インホイールモータ)4と、ブレーキユニット5とが収納される。ブレーキユニット5は、ドラムブレーキやディスクブレーキにより構成される。走行モータ4は、直流電力によって駆動するDCモータである。なお、走行モータ4は、交流電力によって駆動するACモータであってもよい。車両100は、走行モータ4の駆動により走行し、ブレーキユニット5の作動により制動力が付与される。後輪2はリアフェンダー2aによって覆われる。リアフェンダー2aの後端部には尾灯2bが設けられる。
【0013】
前フレーム32には、ステアリングフレーム40が上下方向に延在する軸線を中心にして左右方向に回動可能に支持される。ステアリングフレーム40は、前フレーム32から上方に向けて、厳密には上方かつやや後方(斜め後方)に延在し、その上端部にハンドル41が支持される。ハンドル41は左右方向に延在し、その左右両端部に、ユーザによって把持されるグリップ42が設けられる。グリップ42の近傍には、ブレーキレバー43が配置される。ステアリングフレーム40の前面には、前照灯44が設けられる。
【0014】
なお、図示は省略するが、ハンドル41の左右方向中央部には、車両100のメイン電源をオンする電源スイッチ、高速モードと低速モードとに走行モードを切り換えるモード切換スイッチ、右左折を指令するウィンカースイッチ、前照灯44の点消灯を指令するスイッチ、および車両情報を表示するモニタなどが、ユーザにより操作可能に設けられる。モニタには、車速やバッテリ残量などの情報が表示される。
【0015】
前輪1と前フレーム32との間には、軸線CL1を中心にして前輪1を回転可能に支持する前輪支持部45と、前輪1を左右方向に転舵する転舵機構46とが設けられる。前輪支持部45は、平行四辺形リンクを構成し、前輪1の路面に対する接地点を支点にして、ステアリングフレーム40とともに前輪1を左右方向に揺動可能に支持する。転舵機構46は、タイロッド、ナックルおよびキングピン等を含み、ハンドル41の回動操作を前輪1に伝達し、前輪1を左右方向に転舵する。
【0016】
中央フレーム31には、バッテリ7を収容するケース部50が設けられる。
図2に示すように、ケース部50には、下方に向けて略ボックス状の収容空間SPが形成され、収容空間SPにバッテリ7が収容される。
図1に示すように、収容空間SPの上面は、蓋51により覆われる。ケース部50の後方、すなわち中央フレーム31の後端部に設けられた取付部35aには、シートフレーム35が立設される。シートフレーム35の上端部には、乗員が着座するシート36が支持される。
【0017】
ケース部50の上面50aは、略水平方向に延在する平坦面として形成される。なお、蓋51の上面51aはケース部50の上面50aに含まれる。ケース部50の上面50aは、シート36に着座したユーザが足を載せる足置部として機能する。シートフレーム35の取付部35aは、ユーザの自重が作用する荷重部として機能する。なお、ケース部50の上面50aの足置部も、ユーザからの荷重が作用する荷重部として機能する。
【0018】
シート36の高さは、シート36に着座してグリップ42を把持する乗車姿勢において、ユーザがゆったりとした姿勢で上面51aに足を載せることができるように設定される。例えば、ユーザの足裏から膝までの高さと同程度の高さに設定される。これによりユーザは、膝の角度を約90°に保った状態で乗車できる(
図10のA参照)。なお、シート36の高さは調整可能である。
【0019】
図2に示すように、ケース部50は、後端部から前方にかけて左右方向の長さ(幅)が徐々に拡大するように設けられる。より詳しくは、ケース部50の左右の側面は、収容空間SPよりも後方に位置する角部53から収容空間SPの前端部近傍に位置する角部54にかけて前方かつ左右方向外側に向けて傾斜して延在し、角部54,54間の長さL1は角部53,53間の長さL2よりも長い。このようにケース部50の上面50aを収容空間SPよりも幅広に設けるとともに、前側を後側よりも幅広に設けることで、乗車姿勢のユーザの足置きのスペースが拡大し、ユーザの乗車姿勢を安定化することができる。
【0020】
ケース部50の左右側面は、角部54の前方において左右方向内側に傾斜して延在する。これにより、ケース部50の前端部と前輪1との間に十分な隙間ができ、前輪1の転舵時に、前輪1とケース部50とが接触することを防止できる。なお、前輪1とケース部50との接触を防止できるのであれば、角部54は、収容空間SPの前端部よりも前方にあってもよい。
【0021】
図3は、
図1と同様、車両100を斜め前方から見た斜視図であり、蓋51を開放した状態を示す。
図3に示すように、蓋51は、ケース部50の左端部において前後方向に延在する回動軸52を支点にして上下方向に回動可能に設けられる。蓋51は、シート36やステアリングフレーム40と干渉することなく閉鎖状態から90°を超える角度まで開放可能であり、蓋51を全開した状態では、バッテリ7の上方空間が開放される。なお、
図1,
図3におけるバッテリ7の姿勢、すなわち収容空間SPに収容されたバッテリ7の姿勢を、収容姿勢と呼ぶ。
【0022】
本実施形態は、可搬式のバッテリ7がケース部50に着脱可能に設けられる点に特徴がある。より詳しくは、
図4に示すように、蓋51を開放した状態で、姿勢変更機構60を介してバッテリ7を起立させた後、ケース部50からバッテリ7を取り外す点に特徴がある。なお、
図4のバッテリ7の姿勢を起立姿勢と呼ぶ。姿勢変更機構6はケース部50に含まれる。
【0023】
図5は、バッテリ7の単体の全体構成を示す斜視図である。
図5では、
図4のバッテリ7の姿勢(起立姿勢)に対応して前後方向、左右方向および上下方向を定義する。
図5に示すように、バッテリ7は、上下方向の長さが前後方向および左右方向の長さよりも長く、全体が略直方体形状に形成される。
【0024】
バッテリ7は、例えばリチウムイオン電池などの蓄電池、すなわち二次電池である。バッテリ7の底面には、前後方向中央部よりも前側(収容姿勢では上側)に凹状のレセプタクル71が設けられる。レセプタクル71は、バッテリ7の底面に設けられた凹部に配置される電極を有し、雌型端子として構成される。バッテリ7の上部には、ユーザによって把持される取っ手72が設けられる。取っ手72は、左右方向中央部に、前後方向に延在するように設けられる。
図4に示すように、バッテリ7の起立姿勢では、取っ手72が上方に位置するため、ユーザは取っ手72を把持してバッテリ7を持ち上げて、ケース部50から取り外すことができる。
【0025】
姿勢変更機構60の構成について説明する。
図6は、姿勢変更機構60の構成を示す車両100の斜視図であり、
図7は、側面図である。なお、
図6では、バッテリ7が起立姿勢であり、バッテリ7と姿勢変更機構60と姿勢変更機構60の周囲のケース部50以外は、便宜上、二点鎖線で示す。
図7では、バッテリ7が収容姿勢であり、ケース部50の一部を切断して姿勢変更機構60の一部を示す。
【0026】
図6、
図7に示すように、バッテリ7は可動ケース55に収容され、可動ケース55が固定ケース56に対し、左右一対の姿勢変更機構60を介して移動可能に設けられる。
図6に示すように、可動ケース55は、起立姿勢におけるバッテリ7の前面、後面、左面、右面および底面を覆うように複数の板部材によって略ボックス状に形成される。
図6の状態では、バッテリ7は、自重によって可動ケース55に保持される。なお、バッテリ7の左右側面には、可動ケース55の側面部における側面ケース551が対向し、バッテリ7の底面には、可動ケース55の底面ケース552(
図7)が対向する。
【0027】
固定ケース56は、車体を形成し、左右一対の側面ケース561と、左右の側面ケース561の前端部同士を接続する前ケース562と、左右の側面ケース561の後端部同士を接続する後ケース563と、左右の側面ケース561の下端部同士を接続する底ケース564とを有する。これら複数のケース561~564によって、上方が開口された収容空間SPが形成される。なお、固定ケース56が車両100の骨格を形成してもよい。側面ケース561は、前後方向および上下方向に延在する板部材により構成される。固定ケース56は中央フレーム31(
図1)の一部であり、前ケース562に前フレーム32(
図1)が固定され、後ケース563に後フレーム33(
図1)が固定される。なお、
図7では固定ケース56の図示を省略する。
【0028】
姿勢変更機構60は、左右の側面ケース551と左右の側面ケース561との間に配置されたリンク機構により構成される。より詳しくは、
図6,
図7に示すように、姿勢変更機構60は、細長形状の板材からなる長尺リンク61と、長尺リンク61よりも長さが短い細長形状の板材からなる短尺リンク62と、板材からなる中間リンク63とを有する。短尺リンク62は、長尺リンク61よりも左右方向内側に配置され、中間リンク63は、左右方向における長尺リンク61と短尺リンク62との間に配置される。
【0029】
図7に示すように、長尺リンク61の一端部は、可動ケース55の側面ケース551の端部551a(
図7では後端部であり、
図6では上端部)に、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。長尺リンク61の他端部は、中間リンク63の端部63a(前端部)に、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。短尺リンク62の一端部は、側面ケース551の端部551aよりも上方かつ前方(
図6では端部551aよりも前方かつ下方)の端部551bに、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。短尺リンク62の他端部は、中間リンク63の端部63b(端部63aよりも後方かつ上方の端部)に、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。
図7の状態では、略前後方向に延在する長尺リンク61の上方に、長尺リンク61と略平行に短尺リンク62が配置される。
【0030】
図6に示すように、姿勢変更機構60の一部(例えば長尺リンク61の端部)は、固定ケース56の側面ケース561の端部561a(前端部かつ上端部)に、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。さらに姿勢変更機構60は、可動ケース55の後方にダンパ64を有する。ダンパ64の後端部は、固定ケース56の側面ケース561の後端部561bに、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。ダンパ64の前端部は、可動ケース55の側面ケース551の端部551c(後端部)に、左右方向に延在する軸部を介して回動可能に連結される。ダンパ64は、可動ケース55の動きを減衰する機能を有する。なお、
図6の状態では、長尺リンク61の下端部が短尺リンク62の下端部よりも前方に位置し、長尺リンク61と短尺リンク62とが交差する。
【0031】
このように姿勢変更機構60を構成することにより、
図3、
図7の状態からユーザが後端部の取っ手72を把持し、バッテリ7を持ち上げて前方に回動させると、
図6に示すように、姿勢変更機構60を介して可動ケース55が90°前方に回動する。この可動ケース55の姿勢はダンパ64により保持される。これにより
図4に示すように、バッテリ7がケース部50から上方に突出し、バッテリ7を収容姿勢から起立姿勢に姿勢変更することができる。起立姿勢では、バッテリ7は、収容空間SPの前後方向中央部よりも前方で起立する。
【0032】
バッテリ7が起立姿勢になると、ユーザは、取っ手72を把持してバッテリ7を上方に持ち上げることによりバッテリ7を可動ケース55から取り外すことができる。また、取り外されたバッテリ7を取り付ける際には、取っ手72を把持してバッテリ7を可動ケース55の上方から降下させることにより、バッテリ7を可動ケース55に装着することができる。このため、バッテリ7の着脱が容易である。
【0033】
図7に示すように、収容姿勢において、バッテリ7の前面のレセプタクル71には、前方からプラグ75(雄型端子)が嵌合され、バッテリ7の電極とプラグ75の電極とが接続される。プラグ75は、可動ケース55の底面ケース552に取り付けられる。プラグ75には、バッテリ7の反対側にケーブル76が接続され、ケーブル76を介して走行モータ4にバッテリ7からの電力が供給される。なお、走行モータ4がACモータであるある場合、ケーブル76を介してバッテリ7からの電力をインバータに供給し、インバータで交流に変換した後、走行モータ4に供給するようにしてもよい。
【0034】
プラグ75は、ケーブル76をたるませた状態でレセプタクル71に嵌合される。このため、プラグ75がレセプタクル71に嵌合されたまま、バッテリ7の姿勢を水平姿勢から起立姿勢に変更することができる。したがって、バッテリ7の着脱時におけるプラグ75の挿抜を、バッテリ7の起立姿勢で行うことができる。すなわち、取っ手72を把持して可動ケース55に沿ってバッテリ7を降下することで、レセプタクル71にプラグ75を嵌合することができる。また、可動ケース55に沿ってバッテリ7を持ち上げることで、レセプタクル71をプラグ75から取り外すことができる。
【0035】
本実施形態の車両100は、ハンドル41に設けられたモード切換スイッチの操作により高速モードと低速モードとに走行モードを切換可能である。
図8は、走行モードの切換に係る車両100の制御構成を示すブロック図である。
図8に示すように、コントローラ80には、モード切換スイッチ81と、センサ82とからの信号が入力される。センサ82は、ユーザによる走行指令部の操作を検出するセンサである。走行指令部は、車両100の加減速を指令する操作部材であり、ハンドル41またはその近傍に設けられるスイッチやレバー、あるいは回動可能なグリップ42により構成される。走行指令部の操作量(例えばスロットル開度)が多いほど、車速の指令値が増加する。センサ82は、走行指令部の操作を検出することで、車速の指令値を検出する。
【0036】
コントローラ80は、CPU,ROM,RAMおよびその他の周辺回路を有するコンピュータを含んで構成される。コントローラ80は、モード切換スイッチ81とセンサ82とのからの信号に応じて走行モータ4と灯体83とに制御信号を出力する。灯体83は、前照灯44(
図1)の近傍に設けられる前側灯体と、尾灯2b(
図1)の近傍に設けられる後側灯体とを含む。これら灯体83(前側灯体、後側灯体)は、いずれも第1の色(例えば水色)と第2の色(例えば緑色)とで点滅可能に構成される。なお、灯体83は、車両100の前方および後方から周囲の歩行者等が視認可能な位置であれば、他の位置に設けられてもよい。
【0037】
コントローラ80は、モード切換スイッチ81により高速モードが指令されると、車速の上限値を第1上限値V1(例えば20km/h)に制限する。したがって、センサ82により最大の車速指令値が検出されると、コントローラ80は、車両100が第1上限値V1で走行するように走行モータ4に制御信号を出力する。さらにコントローラ80は、前後の灯体83が第1の色で点滅するように灯体83に制御信号を出力する。
【0038】
一方、モード切換スイッチ81により低速モードが指令されると、コントローラ80は、車速の上限値を第2上限値V2(例えば10km/h)に制限する。したがって、センサ82により最大の車速指令値が検出されると、コントローラ80は、車両100が第2上限値V2で走行するように走行モータ4に制御信号を出力する。さらにコントローラ80は、前後の灯体83が第2の色で点滅するように灯体83に制御信号を出力する。
【0039】
上記実施形態では、モード切換スイッチ81の操作に応じてセンサ82の検出値に対する異なる信号を走行モータ4へ出力し、最高車速を異なる値V1,V2に制限する。これに代えて、例えば走行指令部の操作を制限するストッパを設けるとともに、モード切換スイッチ81の操作に応じてアクチュエータを駆動してストッパを作動または解除し、これにより車速上限値を第1上限値V1または第2上限値V2に制限するようにしてもよい。なお、車速上限値V1,V2は、法規に適合するように適宜設定することができる。
【0040】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両100は、前輪1および後輪2と、前後方向に延在し、乗員(ユーザ)の荷重を受ける荷重部(シートフレーム35の取付部35aや乗員の足置部など)とバッテリ7を収容するケース部50とを有する基部3と、ケース部50に収容されたバッテリ7と電気的に接続され、後輪2を駆動する走行モータ4と、を備える(
図1)。ケース部50は、バッテリ7を着脱可能に保持する可動ケース55および姿勢変更機構60を有し、姿勢変更機構60は、バッテリ7を収容姿勢と起立姿勢とで保持するように設けられる(
図6,
図7)。これにより、車両100の低位置にバッテリ7を搭載することができ、車両100の安定性を向上することができる。また、バッテリ7の姿勢を収容姿勢から起立姿勢に変更することができるため、バッテリ7を車体にコンパクトに収容しながら、バッテリ7の着脱性を向上させることができる。
【0041】
(2)基部3(ケース部50)は、前方側における左右方向長さ、すなわち角部54,54間の長さL1が、後方側の左右方向長さ、すなわち角部53,53間の長さL2よりも長くなるように設けられる(
図2)。可動ケース55は、バッテリ7が起立姿勢のときに、可動ケース55に対するバッテリ7の着脱方向(可動ケース55の開放側)が鉛直方向に沿った方向となり、バッテリ7が収容姿勢のときに、可動ケース55の開放側が水平方向に沿った方向となるように設けられる(
図6,
図7)。さらに、バッテリ7の起立姿勢においてバッテリ7の底面を保持する底面ケース552が、バッテリ7が収容姿勢であるときには、左右方向長さが長いケース部50の前方側に配置される(
図2)。これによりケース部50の上面50aにおけるユーザの十分な足置きのスペースを確保しつつ、バッテリ7を良好に配置できる。
【0042】
(3)車両100は、可動ケース55の底面ケース552に、バッテリ7のレセプタクル71と着脱可能なプラグ75を有する(
図7)。これにより、バッテリ7を可動ケース55に装着することで、プラグ75とレセプタクル71とが嵌合され、バッテリ7の端子と車両100側の端子とを容易に接続することができる。
【0043】
(4)車両100は、可動ケース55の底面ケース552のバッテリ7の反対側に、プラグ75と電気的に接続されるケーブル76をさらに備える(
図7)。これにより、バッテリ7からの電力を、ケーブル76を介して走行モータ4に供給することができる。
【0044】
(5)姿勢変更機構60は、一端側が可動ケース55の端部551aに連結され、他端側が固定ケース56の端部561aに連結される長尺リンク61と、一端側が可動ケース55の端部551bに連結され、他端側が中間リンク63の端部63bに連結される短尺リンク62と、を有する(
図6,
図7)。さらに長尺リンク61の他端側は、中間リンク63の端部63aに連結される(
図7)。このように複数のリンクによって姿勢変更機構60を構成することで、可動ケース55を固定ケース56から上方に突出させた状態で可動ケース55を起立させることができ、バッテリ7の着脱が容易である。
【0045】
(6)姿勢変更機構60は、一端側が可動ケース55の端部551cに連結され、他端側が固定ケース56の端部561bに連結されるダンパ64をさらに有する(
図6)。ダンパ64は、可動ケース55に保持されたバッテリ7が起立姿勢と収容姿勢とに変化する動きを減衰する機能を有する。これによりバッテリ7の姿勢変更を、衝撃を与えずに良好に行うことができる。
【0046】
(7)ケース部50は、その上面50aに平坦部を有する(
図1)。この平坦部が荷重部として機能して、平坦部に乗員の足が載置される。これにより、乗員が安定した姿勢で車両100に乗車できる。
【0047】
(8)ケース部50は、その上面50aに、開閉可能な蓋51を有する(
図3)。したがって、バッテリ7を、外部に露出させずにケース部50に収容できる。
【0048】
(9)車両100は、車速の上限値を第1上限値V1に制限する高速モードと、第1上限値V1よりも小さい第2上限値V2に制限する低速モードと、に切り換えるモード切換スイッチ81を備える(
図8)。これにより、高速モードへの切換時に車両100を、自転車等と同様、自転車道を走行可能に構成することができ、低速モードへの切換時に車両100を、電動車いす等と同様、歩道を走行可能に構成することができる。すなわち、1台の車両100を、制限速度の異なる用途に用いることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、ケース部50の上面50aを、ユーザの足が載置される足置部として用いるようにしたが、足置部のスペースをより拡大するようにしてもよい。
図9Aはその一例を示す車両100の平面図である。
図9Aは
図2の変形例であり、
図2と比較してハッチングで示す拡大部50bだけ、上面50aが拡大する。特に、前端部が左右方向に大きく拡大する。拡大部50bは、例えば蓋51の上面51aと同一面状に延在する板部材により構成される。これによりユーザは、より左右方向に足を広げた状態で車両100に乗車することができ、安定した乗車姿勢が得られる。
【0050】
図9Bは、
図2のさらなる変形例を示す図である。
図9Bでは、ケース部50の上面50aの左右両側に、平面視略矩形のステップ57が設けられる。ステップ57は、ケース部50の左右側面に取り付けられ、ケース部50の上面50aよりも下方において略水平方向に延在する。
図9Bの例では、ユーザは、ケース部50を挟んで左右のステップ57の上面に左右の両足を載置する。これによりユーザは、より安定した姿勢で車両100に乗車することができる。
【0051】
図10は、足置部のさらなる別の例を示す車両100の側面図である。
図10では、ケース部50の上面50aの前端部から前方かつ上方にかけて足置部58が設けられる。足置部58は、下端部がケース部50の上面50aに固定された板材(例えば略円弧状の板材)により構成され、ステアリングフレーム40の左右両側に設けられる。このように荷重部としてのケース部50の上面50aよりも前方かつ上方に、より詳しくは、平坦部である上面50aから前方、かつ、上方に延出するように足置部58を設けることで、乗車時のユーザの足の位置をA位置からB位置に移動することができる。その結果、ユーザは、足の疲労が小さいリラックスした姿勢で乗車できる。
【0052】
なお、足置部58を、左右方向に幅の狭いフレームに置き換えるとともに、フレームに左右方向外側に延在する棒状のステップ59(点線)を固定するようにしてもよい。すなわち、面状の足置部58に代えて、棒状のステップ59を設けるようにしてもよい。これによりユーザの足置きの自由度が向上し、ユーザの乗車時の疲労を一層軽減することができる。
【0053】
上記実施形態では、前輪1と後輪2との間を前後方向に延在する基部3に、乗員の荷重を受ける荷重部と、蓄電器としてのバッテリ7を収容するケース部(収容部)とを設けるようにしたが、荷重部と収容部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、バッテリ7に電気的に接続された走行モータ4(電動機)により後輪2を駆動するようにしたが、電動機により前輪を駆動するようにしてもよく、前輪と後輪の双方を電動機により駆動するたようにしてもよい。上記実施形態では、可動ケース55にバッテリ7を着脱可能に保持するようにしたが、保持部の構成はこれに限らない。
【0054】
上記実施形態では、姿勢変更機構60を介してバッテリ7を起立姿勢(第1姿勢)と収容姿勢(第2姿勢)とに、姿勢変更可能に設けたが、第1姿勢と第2姿勢は上述した以外の姿勢であってもよい。上記実施形態では、バッテリ7が起立姿勢のときに、可動ケース55に対するバッテリ7の着脱方向が鉛直方向に沿った方向となり、バッテリ7が収容姿勢のときに、第1姿勢のときの着脱方向が水平方向に沿った方向となるようにした。しかし、第1姿勢のときの着脱方向が第2姿勢のときよりも相対的に鉛直方向寄りになるのであれば、第1姿勢のときの着脱方向は鉛直方向に沿った方向でなくてもよく、鉛直方向に対し傾いた方向であってもよい。また、第1姿勢のときの着脱方向が第2姿勢になったときに水平方向に沿った方向とならなくてもよく、水平方向に対し傾いた方向となってもよい。上記実施形態では、ケース部50の前側の角部54,54間の長さ(第1長さL1)を後側の角部53,53間の長さ(第2長さL2)よりも長くしたが、第1長さと第2長さとを等しく設定して、あるいは第1長さを第2長さよりも短くして、
図10の足置部58やステップ59を設けるようにしてもよい。上記実施形態では、起立姿勢におけるバッテリ7の底面を底面ケース552により保持するようにしたが、下面保持部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、バッテリ7の収容姿勢において、底面ケース552が第1長さL1側に配置されるようにしたが、第2長さL2側に配置されるようにしてもよい。
【0055】
上記実施形態では、底面ケース525に、バッテリ7のレセプタクル71(第1端子)と着脱可能なプラグ75(第2端子)を設けるようにしたが、第1端子を凸状に、第2端子を凹状に設けてもよい。バッテリ7の底面以外に第1端子を設けるとともに、これに対応して保持部に第2端子を設けてもよい。したがって、ケーブル76(電力線)の配置も上述したものに限らない。上記実施形態では、長尺リンク61の一端部が可動ケース55の端部551a(第1被連結部)に、他端部が固定ケース56の端部に561aそれぞれ連結されるようにしたが、第1部材の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、短尺リンク62の一端部が可動ケース55の端部551b(第2被連結部)に連結され、他端部が中間リンク63の端部63b(第3被連結部)に連結されるようにしたが、第2部材の構成は上述したものに限らない。
【0056】
上記実施形態では、長尺リンク61の他端部が中間リンク63の端部63a(第4被連結部)に連結されるようにしたが、第3部材としての中間リンク63の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、可動ケース55の後方に、減衰部を有する長尺のダンパ64を設けるとともに、ダンパ64の一端部を可動ケースの端部551c(第5被連結部)に、他端部を固定ケース56の端部561bに連結するようにしたが、第4部材の構成は上述したものに限らない。第4部材が、弾性力を付与するばね材であってもよい。上記実施形態では、ケース部50の上面50aを平坦部として、平坦部に荷重部を配置するようにしたが、平坦部以外に荷重部を配置してもよい。
【0057】
上記実施形態では、ケース部50の上面51aに開閉可能な蓋51を設けるようにしたが、蓋部の構成は上述したものに限らない。上記実施形態では、モード切換スイッチ81の切換により高速モード(第1モード)と低速モード(第2モード)とに走行モードを切り換えるようにしたが、モード切換部をスイッチ以外によって構成してもよい。第1モードと第2モードに加えて、さらに別のモードに走行モードを切り換えるようにしてもよい。
【0058】
上記実施形態では、車両100を、前輪2輪、後輪1輪の3輪車両として構成したが、前輪1輪、後輪2輪の3輪車両として構成してもよい。前輪1輪、後輪1輪の2輪車両、前輪2輪、後輪2輪の4輪車両等、車両を3輪車両以外として構成してもよい。
【0059】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 前輪、2 後輪、3 基部、7 バッテリ、50 ケース部、50a 上面、51 蓋、55 可動ケース、56 固定ケース、60 姿勢変更機構、61 長尺リンク、62 短尺リンク、63 中間リンク、63a,63b 端部、64 ダンパ、71 レセプタクル、75 プラグ、76 ケーブル、81 モード切換スイッチ、100 車両、551a,551b,551c 端部、552 底面ケース、L1,L2 長さ