IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力の管理システム 図1
  • 特開-電力の管理システム 図2
  • 特開-電力の管理システム 図3
  • 特開-電力の管理システム 図4
  • 特開-電力の管理システム 図5
  • 特開-電力の管理システム 図6
  • 特開-電力の管理システム 図7
  • 特開-電力の管理システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076721
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】電力の管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/04 20060101AFI20240530BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240530BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240530BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240530BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240530BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240530BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240530BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02J3/04
H02J3/38 120
H02J3/32
H02J3/00 170
H02J7/34 B
H02J7/35 K
H02J7/02 F
H02J7/00 302B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188414
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】石田 文章
(72)【発明者】
【氏名】山下 育男
(72)【発明者】
【氏名】横井 健司
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AA05
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G066KB06
5G066LA02
5G503AA01
5G503AA04
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】再エネ由来電力/非再エネ由来電力が混在した電力量を、デマンドに応じて各電力使用区画のユーザに配分し、その配分実績を管理できるようにする。
【解決手段】コントローラ2は、各ラックA,B,C,Dについて、再エネ由来電力/非再エネ由来電力の内訳を含む、必要電力量の情報を取得する。前記必要電力量を合算することで、データセンター100として必要な再エネ由来電力の電力量の合計である第1合計電力量と、非再エネ由来電力の電力量の合計である第2合計電力量とを求める。前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電を目標値として、データセンター100の電力調達を行う受電制御を行う。さらに、実際に受電した前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を、ラックA,B,C,Dの各々が希望する前記内訳に応じて配分する配分処理を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の独立した電力使用区画を有し、電力の受電設備と、前記電力使用区画への配電設備とを備えるセンター施設と、
前記センター施設に対する受電制御および前記電力使用区画への配電制御を行うコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記電力使用区画の各々について、再生可能エネルギー由来の第1電力と、前記第1電力以外の非再生可能エネルギー由来の第2電力との内訳を含む、必要電力量の情報を取得し、
前記電力使用区画の各々の前記必要電力量を合算することで、前記センター施設として必要な前記第1電力の電力量の合計である第1合計電力量と、前記第2電力の電力量の合計である第2合計電力量とを求め、
前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電を目標値として、前記センター施設の電力調達を行う受電制御を行い、
調達した前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を、前記電力使用区画の各々に対して前記内訳に応じて配分する配分処理を行う、電力の管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力の管理システムにおいて、
前記センター設備は、前記配電設備に接続された蓄電池を備え、
前記コントローラは、前記蓄電池の充放電制御を実行可能であって、前記電力調達において前記第1合計電力量が不足したとき、前記蓄電池から不足電力量の放電を実行させ、前記第1合計電力量が過剰となったとき、前記蓄電池に過剰電力量の充電を実行させる、電力の管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力の管理システムにおいて、
前記コントローラは、前記配分処理として、所定の時間単位からなるコマ単位で、前記受電制御による前記センター施設の前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電実績値を取得し、前記電力使用区画の各々の前記内訳に応じて、前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を配分する、電力の管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電力の管理システムにおいて、
電力量の計算時間単位である時間コマでの前記配分の結果、前記第1電力の電力量が不足した不足電力使用区画が生じた場合、
前記コントローラは、前記時間コマの後の後続時間コマにおける前記配分において、前記第1電力の電力量の不足分を埋め合わせるように、前記不足電力使用区画へ前記第1電力の電力量を配分する、電力の管理システム。
【請求項5】
請求項3に記載の電力の管理システムにおいて、
前記複数の電力使用区画のうち、必要電力量の全量を前記第1電力で賄うことを希望する特定電力使用区画が存在する場合、
前記コントローラは、前記第1合計電力量を前記特定電力使用区画へ優先的に配分する、電力の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を一括受電して複数の独立した電力使用区画に配電する設備を備えたセンター施設における電力の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンピュータやデータ通信機器等をラック単位で収容するデータセンターのように、ユーザの使用機器を独立した使用区画に収容するサービスを行うセンター施設が存在する。このようなセンター施設では、一般オフィスのようにテナント毎に電力使用量を精算するのではなく、センター施設が一括して受電して各使用区画へ配電し、ユーザは電力使用量を含んだ前記使用区画の使用料を支払うことで精算が行われている。
【0003】
しかし、温室効果ガスの排出量管理の重要性が広く認識され、使用電力の種別を明確化する機運が高まる中、前記使用区画のユーザにおいて、再生可能/非再生可能エネルギー由来の電力使用量の管理が求められる趨勢にある。
【0004】
特許文献1には、データセンターに配置されたコンピュータ機器の使用電力源を、ユーザは再生可能エネルギーカテゴリーまたは非再生可能エネルギーカテゴリーの中から選択できるシステムが開示されている。しかし、データセンターのラック単位での、再生可能/非再生可能エネルギー由来の電力使用量の管理について、特許文献1では言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6254288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
温室効果ガスの排出量管理の一環として、データセンター(センター施設)が一括して受電した、再生可能/非再生可能エネルギー由来の電力が混在した電力量を、デマンドに応じて各ラック(電力使用区画)のユーザに配分し、その配分実績を管理するニーズが生じる。本発明は、このような管理を可能とする電力の管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る電力の管理システムは、複数の独立した電力使用区画を有し、電力の受電設備と、前記電力使用区画への配電設備とを備えるセンター施設と、前記センター施設に対する受電制御および前記電力使用区画への配電制御を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記電力使用区画の各々について、再生可能エネルギー由来の第1電力と、前記第1電力以外の非再生可能エネルギー由来の第2電力との内訳を含む、必要電力量の情報を取得し、前記電力使用区画の各々の前記必要電力量を合算することで、前記センター施設として必要な前記第1電力の電力量の合計である第1合計電力量と、前記第2電力の電力量の合計である第2合計電力量とを求め、前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電を目標値として、前記センター施設の電力調達を行う受電制御を行い、調達した前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を、前記電力使用区画の各々に対して前記内訳に応じて配分する配分処理を行う。
【0008】
この電力の管理システムによれば、電力使用区画毎に再生可能/非再生可能エネルギー由来の内訳(第1電力/第2電力の内訳)を含む必要電力量が求められ、個々の必要電力量からセンター施設として必要な、再生可能エネルギー由来の第1合計電力量および非再生可能エネルギー由来の第2合計電力量が求められる。これら第1および第2合計電力量の受電を目標値として受電が行われ、その受電電力が前記内訳に応じて電力使用区画へ配分される。従って、各々の電力使用区画の希望に添った第1電力及び/又は第2電力を配分できると共に、その配分実績を把握することが可能となる。
【0009】
上記の電力の管理システムにおいて、前記センター設備は、前記配電設備に接続された蓄電池を備え、前記コントローラは、前記蓄電池の充放電制御を実行可能であって、前記電力調達において前記第1合計電力量が不足したとき、前記蓄電池から不足電力量の放電を実行させ、前記第1合計電力量が過剰となったとき、前記蓄電池に過剰電力量の充電を実行させることが望ましい。
【0010】
この態様によれば、第1電力の調達に過不足が生じた場合、蓄電池をバッファとして前記過不足を補うことが可能となる。
【0011】
上記の電力の管理システムにおいて、前記コントローラは、前記配分処理として、所定の時間単位からなるコマ単位で、前記受電制御による前記センター施設の前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電実績値を取得し、前記電力使用区画の各々の前記内訳に応じて、前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を配分することが望ましい。
【0012】
この態様によれば、受電制御の結果としての受電実績値に基づいて、第1合計電力量および第2合計電力量が電力使用区画の各々に配分される。この配分の結果に基づき、電力使用区画の各々について、第1電力および第2電力の電力量の使用実績値を正確に取得することができる。
【0013】
上記の電力の管理システムにおいて、電力量の計算時間単位である時間コマでの前記配分の結果、前記第1電力の電力量が不足した不足電力使用区画が生じた場合、前記コントローラは、前記時間コマの後の後続時間コマにおける前記配分において、前記第1電力の電力量の不足分を埋め合わせるように、前記不足電力使用区画へ前記第1電力の電力量を配分することが望ましい。
【0014】
この態様によれば、一つの時間コマの実績値で不足電力使用区画が生じても、後続時間コマでの配分で、不足分を埋め合わせることができる。従って、トータルとしての第1電力の使用電力量を、当該電力使用区画の希望値にマッチングさせることができる。
【0015】
上記の電力の管理システムにおいて、前記複数の電力使用区画のうち、必要電力量の全量を前記第1電力で賄うことを希望する特定電力使用区画が存在する場合、前記コントローラは、前記第1合計電力量を前記特定電力使用区画へ優先的に配分する態様としても良い。
【0016】
この態様によれば、必要電力量の全量を前記第1電力で賄うとする特定電力使用区画の要請に、確実に応えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センター施設が一括して受電した、再生可能/非再生可能エネルギー由来の電力が混在した電力量を、各使用区画の要請に応じて分配し、その分配実績を管理することが可能な電力の管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、データセンターにおける電力調達と電力使用料金の支払いの関係を示す図である。
図2図2は、本発明に係る電力管理システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、前記電力管理システムが備えるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、前記コントローラが実行する受電制御のフローチャートである。
図5図5は、前記受電制御の動作を説明するための模式図である。
図6図6は、前記コントローラが実行する配分処理のフローチャートである。
図7図7は、前記配分処理の動作を説明するための模式図である。
図8図8は、再エネ由来電力の過不足分を次の時間コマへ割り付ける調整処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る電力の管理システムの実施形態を詳細に説明する。本発明の電力管理システムは、複数の独立した電力使用区画を有し、電力を一括受電する受電設備と、前記電力使用区画への配電設備とを備えるセンター施設に適用できる。以下の実施形態では、センター施設として、コンピュータやデータ通信機器等を収容する複数のラックを備えるデータセンターを例示する。センター施設は、電力使用料金込みで賃貸される雑居ビル、倉庫、ハウジングサービス施設などであっても良い。
【0020】
[現状のデータセンターにおける電力の使用態様]
図1は、従来の一般的なデータセンターにおける電力調達と電力使用料金の支払いの関係を示す図である。センター設備の所有者等であるデータセンター事業者10は、データセンター用建屋内に、独立した電力使用区画となる複数のラック11を有する。ラック11は各々、データセンターのユーザに賃貸され、ユーザはラック11にサーバ等のコンピュータ関連機器を設置する。図1では、複数のラック11として、ユーザX,Y,Zの3者に賃貸されるラックが例示されている。
【0021】
データセンター事業者10は、データセンター内で使用される電力を一括して受電し、その受電電力を複数のラック11の契約電力に応じて配電する。データセンター事業者10の電力調達先は、外部の小売電気事業者12や、データセンター敷地内に設置される敷地内電力設備13である。小売電気事業者12は、例えば地域の電力会社や発電設備を保有する事業会社である。敷地内電力設備13は、データセンターの建屋の屋根や敷地内の空き地に設置される太陽光発電設備や、蓄電池などの電力供給を行う設備である。
【0022】
データセンター事業者10は、一括受電した電力使用量に応じた電気料金を小売電気事業者12に支払う。一方、ユーザX,Y,Zは、各々のラック11での電力使用量に対応する電気料金を含んだラック賃貸料を、データセンター事業者10に支払う。つまり、ラック11単位で個別に電力使用量を計量・管理し、その電力使用量に応じた電気料金をユーザX,Y,Zが支払うという体制になっていないのが大多数である。
【0023】
2022年改正省エネ法下では、ラック11のユーザX,Y,Zも、他社から供給された電力の使用者として、Scope2の温室効果ガスの間接排出量の報告対象者と扱われる。前記報告は義務化までは至っていないが、地球温暖化対策への積極的な取り組み姿勢を示す企業が増加していることから、報告者の増加が見込まれる。このため、ラック11単位で、再生可能/非再生可能エネルギー由来の電力使用量の管理が求められる趨勢にある。本発明は、このような趨勢に鑑みて為されたものである。
【0024】
[電力管理システムの構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る電力管理システム1の構成を示すブロック図である。電力管理システム1は、上述した複数のラック11(電力使用区画)を備えたデータセンター100、コントローラ2およびデータ記録サーバ3を備える。データセンター100は、電力調達先110から所要の電力を調達して一括受電し、データセンター内部配電網101(配電設備)を用いて、受電した電力を複数のラック11へ配電する。調達された電力の一部は、データセンター100外の送電網である外部送電網111で、残部はデータセンター100の敷地内の送電網であるデータセンター内部送電網112で、それぞれデータセンター100へ供給される。データセンター100の受電口は、送電網111、112を取り纏めた一つである。
【0025】
図2では、複数のラック11として、4つのラックA,B,C,Dを示している。もちろん、ラック数は4つに限られるものではない。各ラックA,B,C,Dの右隣には、各々のラックにおける再生可能エネルギー由来の第1電力(以下、「再エネ由来電力」という)と、再エネ由来電力以外の非再生可能エネルギー由来の第2電力(以下、「非再エネ由来電力」という)との内訳が示されている。再エネ由来電力は、例えば太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱などをエネルギー源として発電された電力、これら電力を一時的に蓄電して放電された電力である。非再エネ由来電力は、上掲以外のエネルギー源を用いて発電された電力であり、例えば石油、石炭、LNGを燃焼させる火力などをエネルギー源とする発電電力である。
【0026】
図2において、「RE」で表示されているパーセンテージは、再エネ由来電力への依存度を示す。すなわち、ラックAは再エネ由来電力REが0%、つまり非再エネ由来電力を100%受電することを所望するラックである。ラックBは再エネ由来電力RE=50%、ラックCは再エネ由来電力RE=100%、ラックDは再エネ由来電力RE=20%を各々所望するラックである。各ラックA,B,C,Dで実際に受電された電力量は、データセンター内部配電網101に設置された内部電力量計L1,L2,L3,L4にて、それぞれ計量される。
【0027】
コントローラ2は、データセンター100に対する受電制御およびラックA,B,C,Dへの配電制御を行う。データ記録サーバ3は、内部電力量計L1,L2,L3,L4の時間コマ単位の計量値、後述する再エネ由来電力の配分結果など、データセンター100における電力使用量に関するデータが記録されるサーバである。コントローラ2およびデータ記録サーバ3については、後記でさらに説明を加える。
【0028】
電力調達先110は、外部送電網111を経由した調達先となる系統電力、オフサイトPPAおよび自己託送と、データセンター内部送電網112を経由した調達先となるオンサイトPVおよび蓄電池とを含む。外部送電網111は、一般送配電事業者の保有する送配電ネットワーク設備である。データセンター内部送電網112は、データセンター100の敷地内に敷設された送電網である。なお、データセンターは、必ずしも系統電力、オフサイトPPA、自己託送、オンサイトPVおよび蓄電池の全てを電源とするものではなく、系統電力以外の受電を行っていない場合もある。
【0029】
系統電力、オフサイトPPAおよび自己託送から、外部送電網111を通してデータセンター100に受電された電力量は、第1外部電力量計M1により一括して計量される。オンサイトPVおよび蓄電池から、データセンター内部送電網112を通してデータセンター100に受電された電力量は、第2、第3外部電力量計M2、M3により各々計量される。全体としてデータセンター100に受電された電力量は、第4外部電力量計M4によって計量される。
【0030】
電力調達先110の系統電力は、主に地域の一般電気事業者が所有する発電設備および電力系統から供給される電力である。データセンター100は、この系統電力に100%依存しない部分供給方式を採る需要家の例である。また、データセンター100は、系統電力から供給される電力の一部を再エネ由来電力で賄う、「再エネメニュー」の導入契約を前記一般電気事業者と締結しているものとする。従って、系統電力からは、一般電力である非再エネ由来電力と、再エネメニューに基づいた再エネ由来電力とが、データセンター100に供給可能な状態である。
【0031】
オフサイトPPAは、再エネ由来電力の調達先であって、他社の敷地内に設置された他社の発電設備で発電された再エネ由来電力をデータセンター100に供給する。自己託送も、再エネ由来電力の調達先であって、データセンター100の敷地外に設置された自家用の太陽光発電設備などで発電された再エネ由来電力を、外部送電網111の貸与を受けてデータセンター100に供給する。
【0032】
オンサイトPVは、データセンター100の敷地内に設置された自身の太陽光発電設備などで発電された再エネ由来電力を、データセンター内部送電網112を通してデータセンター内部配電網101へ供給する。蓄電池は、オンサイトPVの再エネ由来電力で充電され、継続的または断続的に実行される放電動作によって再エネ由来電力を、データセンター内部送電網112を通してデータセンター内部配電網101へ供給する。
【0033】
上掲の電力調達先110のうち、オフサイトPPA、自己託送およびオンサイトPVについては、予め定めた計画値に応じた電力量がデータセンター100に供給される。蓄電池から供給される電力量は、前記計画値に基づいてコントローラ2によって制御される。系統電力からは、オフサイトPPA、自己託送、オンサイトPVおよび蓄電池からの電力供給では賄えない分の電力量が供給される。すなわち、オフサイトPPA、自己託送、オンサイトPVおよび蓄電池から供給される電力量は実質的に固定値、系統電力から供給される電力量は、データセンター100の電力需要に時々刻々追随した変動値となる。
【0034】
[コントローラの機能構成]
図3は、電力管理システム1が備えるコントローラ2の機能構成を示すブロック図である。コントローラ2は、マイクロコンピュータ等を含む演算処理装置であって、所定のプログラムが読み出されることにより、電力使用量予測部21、ユーザ情報記憶部22、電力調達量算出部23、調達制御部24、受電電力算出部25および配分調整部26を機能的に具備するように動作する。
【0035】
電力使用量予測部21は、データセンター100が備える各ラックA,B,C,Dの必要電力量の情報を取得する処理を行う。電気は、計算時間単位として、例えば30分の時間コマの単位での取引、つまり電力量の計量および料金計算が為されることが多い。電力使用量予測部21は、例えば過去3回の時間コマにおいて使用された電力量実績値の平均を算出し、その算出値を次の時間コマでの各ラックA,B,C,Dにおける必要電力量の予測値として導出する。ラックA,B,C,Dに収容されるデータサーバ等は、電力消費量が比較的安定しているため、過去の実績値平均を予測値とする手法は有用である。これに代えて、電力使用量予測部21が、蓄積された電力使用量の過去データの学習処理にて得られた予測式から、各ラックA,B,C,Dにおける次の時間コマの必要電力量の推測値を導出する態様としても良い。
【0036】
ユーザ情報記憶部22は、ラックA,B,C,Dのユーザの属性情報等に加えて、各々のユーザが希望する再エネ由来電力の供給比率を記憶する。図2の例では、上述の通り、ラックA,B,C,Dの再エネ由来電力REの全供給電力に対する比率は、それぞれ0%、50%、100%、20%である。電力使用量予測部21は、当該供給比率を用いて、次の時間コマで予測される必要電力量の、再エネ由来電力と非再エネ由来電力との内訳も算出する。
【0037】
電力調達量算出部23は、電力使用量予測部21が導出したラックA,B,C,Dの各々の再エネ由来電力および非再エネ由来電力の必要電力量を合算する処理を行う。この合算処理により、次の時間コマにおいてデータセンター100全体として必要な再エネ由来電力の電力量の合計である第1合計電力量と、非再エネ由来電力の電力量の合計である第2合計電力量とが把握される。
【0038】
調達制御部24は、前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電を目標値として、データセンター100の電力調達を行う受電制御を行う。すなわち、調達制御部24は、予測された前記第1・第2合計電力量と調達が見込まれる電力量とを比較し、過不足があればこれを埋める調整を行う。上述の通り、オフサイトPPA、自己託送およびオンサイトPVの電力量は予め定めた計画値であるため、制御の余地があるのは蓄電池4の充放電量である。前記第1合計電力量の不足が見込まれる場合、調達制御部24は、充放電制御器41を制御して、蓄電池4から通常の放電分に加えて、不足電力量の放電を実行させる。他方、前記第1合計電力量が過剰であると見込まれる場合、調達制御部24は、充放電制御器41を制御して、蓄電池4に過剰電力量の充電を実行させる。
【0039】
受電電力算出部25は、ラックA,B,C,Dの電力使用量の実績値を把握する。内部電力量計L1,L2,L3,L4の計量値は、データ記録サーバ3に記録される。受電電力算出部25は、データ記録サーバ3にアクセスし、時間コマ単位のラックA,B,C,Dの電力使用量を取得する。また、受電電力算出部25は、上記のラック毎の受電実績値を合算して、データセンター100全体としての、前記第1合計電力量および前記第2合計電力量の受電実績値を求める。
【0040】
配分調整部26は、実際にデータセンター100で受電された前記第1合計電力量および前記第2合計電力量を、ラックA,B,C,Dの各々に対して、ユーザ情報記憶部22に記録されているユーザ毎の再エネ由来電力の供給比率に応じて配分する配分制御を行う。実際の配分では、ある時間コマでの前記配分において、再エネ由来電力の電力量の配分が不足したラック(不足電力使用区画)が生じることがある。この場合、配分調整部26は、当該時間コマの後の後続時間コマにおける前記配分において、再エネ由来電力の電力量の不足分を埋め合わせるように、前記ラックへ再エネ由来電力の電力量を配分する。配分調整部26による配分の結果は、データ記録サーバ3に記録される。
【0041】
[受電制御]
続いて、コントローラ2が実行するデータセンター100の電力調達のための受電制御の一例について説明する。図4は、受電制御のフローチャート、図5は、受電制御の動作を説明するための模式図である。図4では、例えば30分単位の一つの時間コマにおける電力調達のための制御を示している。なお、時間コマは、1時間単位、1日単位などであっても良い。
【0042】
処理が開始されると、コントローラ2の電力使用量予測部21(図3)は、データセンター100に備えられた稼働中の各ラックA,B,C,D(図4ではn個分を表している。以下同じ)の、次の時間コマのおける電力使用量の予測値R1、R2、R3、R4を取得する処理を行う(ステップS1)。既述の通り、過去3回の時間コマにおいて使用された電力量実績値の平均を、各ラックの予測値とすることができる。さらに、電力使用量予測部21は、各ラックA,B,C,Dのユーザがそれぞれ所望する再エネ由来電力の供給比率データrg1、rg2、rg3、rg4をユーザ情報記憶部22から読み出し、予測値R1、R2、R3、R4に紐付ける(ステップS2)。図5(A)は、ステップS1、S2の処理を模式的に示している。
【0043】
続いて、電力調達量算出部23が、データセンター100全体の必要電力量を、再エネ由来電力および非再エネ由来電力ごとに算出する(ステップS3)。合計の再エネ由来電力量GRE(第1合計電力量)は下記の式(1)で、合計の非再エネ由来電力量NGE(第2合計電力量)は下記の式(2)で、それぞれ求めることができる。図5(B)は、ステップS3の処理を模式的に示している。
【数1】
【0044】
その後、調達制御部24が、現状の電力調達先110において確保できている電力調達量を仮算出する(ステップS4)。オフサイトPPAから供給される電力量をEPPA、自己託送の電力量をEself、オンサイトPVの電力量をEsite、系統電力から調達する電力量をEDとする。既述の通り、EPPA、EselfおよびEsiteは予め計画値として設定された電力量であるので、バッファ要素となるのはEDと、蓄電池の放電量Ebattとである。ここでは先ず、下記の式(3)を満たすEDの値を算出することで、系統電力から調達が必要な電力量を求める。
GRE+NGE=EPPA+Eself+Esite+ED ・・・(3)
【0045】
さらに調達制御部24は、現状で確保できている再エネ由来電力の合計電力量GRcを算出する(ステップS5)。EPPA、Eself、Esiteは再エネ由来電力であるが、系統電力からの調達電力量EDには、非再エネ由来電力が含まれている。従って、式(3)から得られたEDには、「再エネメニュー」の契約で定めた再エネ由来電力の電力量比率recoを乗じる必要がある。再エネ由来電力の合計電力量GRcは、次の式(4)によって求めることができる。
GRc=EPPA+Eself+Esite+ED・reco ・・・(4)
【0046】
続いて、調達制御部24は、ステップS3で求められたラックA,B,C,Dの次の時間コマにおける再エネ由来電力のデマンドの、ステップS5で求められた再エネ由来電力の確保分による充当度合いを評価する(ステップS6)。この評価に際しては、前の時間コマからの調整分Bgrが補正値として考慮される。調整分Bgrは、先の時間コマにおける配分において、再エネ由来電力の過不足分を加減する補正項となる。調達制御部24は、次の式(5)を用いて、充当度合いを評価する。Bgrは、先の時間コマで再エネ由来電力の電力量が不足していた場合は正値となり、再エネ由来電力の電力量が過剰であった場合は負値となる。
GRc>GRE+Bgr ・・・(5)
【0047】
調達制御部24は、式(5)が満足される場合(ステップS6でYES)、蓄電池4にGRcとGRE+Bgrとの差分に相当する余剰分の電力量を、蓄電池4に充電させるように充放電制御器41を制御する(ステップS7)。これに対し、式(5)が満足されない場合(ステップS6でNO)、調達制御部24は、前記差分に相当する不足分の電力量を、蓄電池4に放電させるように充放電制御器41を制御する(ステップS8)。以上のステップS4~S8の処理が、図5(C)に模式的に示されている。
【0048】
[配分処理]
次に、コントローラ2が実行する受電電力の実績値の、各ラックへの配分処理の一例について説明する。図6は、前記配分処理のフローチャート、図7は、前記配分処理の動作を説明するための模式図である。この配分処理は、一つの時間コマにおける電力調達を終えた後に、受電電力の再エネ由来電力分と非再エネ由来電力分とを、各ラックA,B,C,Dに割り当てる処理である。
【0049】
処理が開始されると、コントローラ2の受電電力算出部25(図3)は、各ラックA,B,C,Dの、先の時間コマのおける電力使用量を取得する(ステップS11)。この電力使用量は、内部電力量計L1、L2、L3、L4の計量実績値をデータ記録サーバ3から読み出すことで取得できる。さらに、受電電力算出部25は、各ラックA,B,C,Dのユーザがそれぞれ所望する再エネ由来電力の供給比率データrg1、rg2、rg3、rg4をユーザ情報記憶部22から読み出し、電力使用量実績値のL1、L2、L3、L4に紐付ける(ステップS12)。
【0050】
続いて、受電電力算出部25は、データセンター100全体の先の時間コマにおける受電力量を算出する(ステップS13)。データセンター100の全体受電電力量は、外部電力量計M4の計量値で取得できる。しかし、再エネ由来電力の内訳を求める必要があるので、受電電力算出部25は、外部送電網111に設置された外部電力量計M1の計量値と、データセンター内部送電網112に設置された外部電力量計M2、M3の計量値とをデータ記録サーバ3から取得する。
【0051】
さらに受電電力算出部25は、全体受電電力量のうち、再エネ由来電力および非再エネ由来電力の電力量が各々どれだけ含まれるかを求める。オフサイトPPAからの受電電力量EPPAおよび自己託送からの受電電力量Eselfは、予め定められた計画値をそのまま適用して再エネ由来電力の受電実績値とする。オンサイトPVからの受電電力量および蓄電池からの受電電力量は、それぞれ外部電力量計M2、M3の計量値が再エネ由来電力の受電実績値となる。系統電力からの受電電力量EDは、外部電力量計M1の計量値からEPPAおよびEselfを除外した値となる。すなわち、受電電力量EDは、下記の式(6)で求めることができる。
ED=M1-(EPPA+Eself) ・・・(6)
【0052】
式(6)のEDは、再エネ由来電力と非再エネ由来電力との合算である。EDに、「再エネメニュー」の契約で定めた再エネ由来電力の電力量比率recoを乗じた電力量が、再エネ由来電力の電力量となる。従って、非再エネ由来電力の電力量EDnon、つまり系統電力のうち一般電力分は、下記の式(7)で求めることができる。図7では、<受電実績>として、上記の通りの処理で、データセンター100の全体受電電力量の、再エネ由来電力分と非再エネ由来電力分との内訳が取得された状態が示されている。
EDnon=ED・(1-reco) ・・・(7)
【0053】
その後、配分調整部26が、全体受電電力量の再エネ由来電力分と非再エネ由来電力分とを、各ラックA,B,C,Dに配分する処理を行う。図7には、その配分の様子が示されている。先ず、100%ニーズを有するラック、つまり再エネ由来電力に100%依存するラック(RE100%)、または非再エネ由来電力に100%依存するラック(RE0%)に、全体受電電力量が割り付けられる(ステップS14)。本実施形態では、ラックC(特定電力使用区画)が、必要電力量の全量を再エネ由来電力で賄うことを希望する、RE100%のラックである。このラックCには、全体受電電力量の再エネ由来電力分が優先的に配分され、ラックCのユーザの要請に確実に対応する。また、ラックAは、必要電力量の全量を非再エネ由来電力で賄うことを希望する、RE0%のラックである。このラックAには、全体受電電力量の非再エネ由来電力分が優先配分される。
【0054】
続いて配分調整部26は、100%以外のニーズを有するラックに、残りの再エネ由来電力の受電電力量および非再エネ由来電力の受電電力量を割り付ける(ステップS15)。本実施形態では、ラックB、Dが100%以外のニーズを有するラックである。ラックBは、再エネ由来電力に50%依存するラック(RE50%)、ラックDは、再エネ由来電力に20%依存するラック(RE20%)である。これらラックB、Dに、残りの受電電力量が割り付けられる。なお、再エネ由来電力または非再エネ由来電力の電力量に過不足が生じた場合、その過不足分がラックB、Dに比例配分される。
【0055】
ここで、配分元となる再エネ由来電力の合計電力量EgAは、前の時間コマにおける再エネ由来電力の調整分Bgrを含めた値とされる。調整分Bgrは、以前の時間コマでの配分において、再エネ由来電力の電力量の過剰分もしくは不足分を、以降の時間コマに繰り越すための加減電力量である。これは、天候不順や設備トラブル等で再エネ由来電力の供給が不調となり、一つの時間コマでは帳尻を合わせられないことが生じ得ることを考慮したものである。すなわち、今回の時間コマで配分されるEgAは、次の式(8)で求められる。
EgA=EPPA+Eself+M2+M3+ED・reco±Bgr・・・(8)
【0056】
図8は、再エネ由来電力の過不足分を次の時間コマへ割り付ける調整処理を説明するための模式図である。ここでは、ラックB(RE50%)における調整例を示している。再エネ由来電力の過不足がなければ、ラックBが実際に使用した電力量L2について、例えば時間コマT1、T2のように、再エネ由来電力RE=50%、非再エネ由来電力=50%となるように配分される。しかし、時間コマT3のように、何らかの原因で再エネ由来電力REが-W1だけ不足したとする。この場合、次の時間コマT4においては、再エネ由来電力RE=50%+W1となるように配分される。また、時間コマT6のように、再エネ由来電力REを+W2だけ過剰に割り付けることができた場合、次の時間コマT7においては、再エネ由来電力RE=50%-W2となるように配分される。
【0057】
なお、累積した調整分Bgrは、一つの時間コマのEgAで全てを調整しても良いが、以降の複数の時間コマのEgAで按分して調整しても良い。また、再エネ由来電力の電力量の不足分を、図2に示しているように証書で相殺する処理を行っても良い。前記証書は、系統電力の一般電力から調達した電力量を、再エネ由来電力からの調達であったことに置換する有償の証書である。なお、前記証書は、再エネ由来電力の電力量の不足分が生じていない場合において、再エネ由来電力の一部を担わせる使い方をしても良い。
【0058】
しかる後、配分調整部26は、各ラックA,B,C,Dへの電力量の配分結果をデータ記録サーバ3に記録する(ステップS16)。一つの時間コマにおける各ラックA,B,C,Dへの再エネ由来電力の電力量の配分は、Dg1、Dg2、Dg3、Dg4として、非再エネ由来電力の電力量の配分はL1-Dg1、L2-Dg2、L3-Dg3、L4-Dg4として、各ラックの識別符号に関連付けて記録される。これら一つの時間コマの電力量を積算することで、各ラックの1日または1ヶ月の電力使用実績を求めることができる。
【0059】
最後に、配分調整部26は、電力量の割り付けにおいて生じた過不足を求め、これを調整分Bgrとして次の時間コマの配分に繰り越す処理を行う(ステップS17)。調整分Bgrは、次の式(9)にて求めることができる。
【数2】
【0060】
以上説明した本実施形態に係る電力管理システム1によれば、電力使用区画であるデータセンター100のラックA,B,C,D毎に、再エネ由来電力/非再エネ由来電力の内訳を含む必要電力量が求められる。さらに、各ラックA,B,C,Dの必要電力量から、データセンター100として必要な、再エネ由来電力の合計電力量および非再エネ由来電力の合計電力量が求められる。これらの合計電力量の受電を目標値として受電が行われ、その受電電力量がラックA,B,C,Dが希望する再エネ由来電力/非再エネ由来電力の割合に応じて配分される。従って、各々のラックA,B,C,Dの希望に添った再エネ由来電力/非再エネ由来電力を配分し、その配分実績を把握できる。このため、ラックA,B,C,Dのユーザは、Scope2の報告に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 電力管理システム
10、A,B,C,D ラック(電力使用区画)
100 データセンター(センター設備)
101 データセンター内部配電網(配電設備)
110 電力調達先
2 コントローラ
21 電力使用量予測部
22 ユーザ情報記憶部
23 電力調達量算出部
24 調達制御部
25 受電電力算出部
26 配分調整部
3 データ記録サーバ
4 蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8