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特開2024-76724凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076724
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20240530BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240530BHJP
   A23L 17/40 20160101ALI20240530BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240530BHJP
   A23B 4/037 20060101ALI20240530BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240530BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
A23L17/00 Z
A23L17/40 Z
A23L5/10 A
A23L5/10 D
A23B4/037
A23L5/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188417
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森 厚樹
(72)【発明者】
【氏名】西原 孝裕
(72)【発明者】
【氏名】松本 英士
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B035LC03
4B035LC11
4B035LE11
4B035LE17
4B035LE20
4B035LG12
4B035LG35
4B035LG42
4B035LG43
4B035LK01
4B035LP06
4B035LP07
4B035LP24
4B035LP43
4B035LP46
4B042AC05
4B042AC06
4B042AC09
4B042AD04
4B042AD18
4B042AD39
4B042AD40
4B042AE03
4B042AE10
4B042AG03
4B042AG07
4B042AG12
4B042AG34
4B042AG59
4B042AH01
4B042AH09
4B042AK06
4B042AK11
4B042AK17
4B042AP03
4B042AP05
4B042AP17
4B042AP18
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、復元した際の肉類及び/又は魚介類の食感を向上することができる凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法を提供する。
【解決手段】肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程と、油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮する蒸煮工程と、蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥する凍結乾燥工程とを含み、前記油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調する、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法若しくは凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程と、
油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮する蒸煮工程と、
蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥する凍結乾燥工程とを含み、
前記油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調することを特徴とする凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法。
【請求項2】
前記油調工程後の肉類及び/又は魚介類の重さが、前記油調工程前の肉類及び/又は魚介類の重さ以上である請求項1に記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法。
【請求項3】
前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品が、チキンカツの玉子とじ、チキンカツカレー、チキンカツのおろしポン酢、とんかつの玉子とじ、とんかつカレー、みそかつ、ホタテフライ、及びタイフライからなる群から選択されるいずれかである請求項1から2のいずれかに記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法。
【請求項4】
肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程と、
油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮する蒸煮工程と、
蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥する凍結乾燥工程とを含み、
前記油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調することを特徴とする凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法。
【請求項5】
前記油調工程後の肉類及び/又は魚介類の重さが、前記油調工程前の肉類及び/又は魚介類の重さ以上である請求項4に記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法。
【請求項6】
前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品が、チキンカツの玉子とじ、チキンカツカレー、チキンカツのおろしポン酢、とんかつの玉子とじ、とんかつカレー、みそかつ、ホタテフライ、及びタイフライからなる群から選択されるいずれかである請求項4から5のいずれかに記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の変化や嗜好の多様化などにより、お湯を注いで少し待つだけで食べることができる即席食品に対する需要が近年増々高まっている。例えば、凍結乾燥工程などを含む方法により製造された各種製品が提供されている。また、即席食品についての様々な開発が行われている。
【0003】
例えば、外観上ボリューム感のある海老天ぷらであって、本物の海老の風味を有し、かつ良好な湯戻り性を有する乾燥海老天ぷらに関する技術として、海老肉のすり身又は切り身を主体とする生地を成形して天ぷら種を得る工程、さらに天ぷら種に海老の尻尾又はその疑似体を装着させ又は装着させずに凍結又は加熱処理する工程、フライ工程及び乾燥工程を経る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
即席食品に用いられる凍結乾燥野菜において、復元性を改良することによって食味食感の良い乾燥野菜を製造するための技術として、生野菜を焼成工程および/または油揚げ工程を加えた後に蒸煮し、凍結乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
湯戻りが良く、熱湯を注ぐことにより食感及び外観の良好な天ぷらとなる凍結乾燥天ぷらを、簡単な工程で製造効率良く得ることができる技術として、前処理された原料種に、打ち粉を付着させずに、所定のバッターを付着させ、次いで、バッターを付着させた原料種に揚げ玉を付着させ、この揚げ玉を付着させた原料種を加熱し、その後、凍結乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
フリーズドライ製法で得られた成型加工していない肉厚な畜肉の湯戻り性や、湯戻し後の食感を簡便に向上させる方法として、厚さ1.5cm以上にカットされた畜肉を、pH7.0~9.0に調整された水溶液で15時間以上浸漬処理し、その後、凍結乾燥する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/074721号
【特許文献2】特開2015-123032号公報
【特許文献3】特開2009-284827号公報
【特許文献4】特開2018-186732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、湯戻し後(以下、「復元後」と称することもある。)の食感に対して消費者が求めるレベルは高くなっている。そのため、復元した際の肉類及び/又は魚介類の食感を向上することができる技術の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、簡易な方法で、復元した際の肉類及び/又は魚介類の食感を向上することができる凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調することで、簡易な方法で、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品を復元した際の食感を向上させることができることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程と、
油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮する蒸煮工程と、
蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥する凍結乾燥工程とを含み、
前記油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調することを特徴とする凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法である。
<2> 前記油調工程後の肉類及び/又は魚介類の重さが、前記油調工程前の肉類及び/又は魚介類の重さ以上である前記<1>に記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法である。
<3> 前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品が、チキンカツの玉子とじ、チキンカツカレー、チキンカツのおろしポン酢、とんかつの玉子とじ、とんかつカレー、みそかつ、ホタテフライ、及びタイフライからなる群から選択されるいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法である。
<4> 肉類及び/又は魚介類を油調する油調工程と、
油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮する蒸煮工程と、
蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥する凍結乾燥工程とを含み、
前記油調工程において、前記肉類及び/又は魚介類を、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度が40℃以下となる条件で油調することを特徴とする凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法である。
<5> 前記油調工程後の肉類及び/又は魚介類の重さが、前記油調工程前の肉類及び/又は魚介類の重さ以上である前記<4>に記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法である。
<6> 前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品が、チキンカツの玉子とじ、チキンカツカレー、チキンカツのおろしポン酢、とんかつの玉子とじ、とんかつカレー、みそかつ、ホタテフライ、及びタイフライからなる群から選択されるいずれかである前記<4>から<5>のいずれかに記載の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、簡易な方法で、復元した際の肉類及び/又は魚介類の食感を向上することができる凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法並びに凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法)
本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法は、油調工程と、蒸煮工程と、凍結乾燥工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法は、油調工程と、蒸煮工程と、凍結乾燥工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法は、本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法と同様にして実施することができるため、以下では、本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の製造方法と本発明の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の食感向上方法をまとめて説明する。
【0014】
<肉類及び/又は魚介類>
前記肉類及び/又は魚介類としては、食品に用いることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、凍結乾燥した際に構造を維持することができ、復元した際にほぐれやすい肉類及び/又は魚介類が好適に挙げられる。具体的には、例えば、鶏肉、牛肉、羊肉、豚肉、タラ、タイ、ホタテなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記肉類及び/又は魚介類の使用する部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
<凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品>
前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品は、前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類のみからなるものであってもよいし、さらにその他の成分を含むものであってもよい。
【0017】
前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品におけるその他の成分としては、特に制限はなく、熱湯で湯戻しするタイプの凍結乾燥した即席食品に通常用いられる調味液や具材などを目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
前記凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、チキンカツの玉子とじ、チキンカツカレー、チキンカツのおろしポン酢、とんかつの玉子とじ、とんかつカレー、みそかつ、ホタテフライ、及びタイフライからなる群から選択されるいずれかが好適に挙げられる。
【0019】
<油調工程>
前記油調工程は、肉類及び/又は魚介類を油調(以下、「フライ」、「油揚げ」と称することがある。)する工程である。
【0020】
油調する前記肉類及び/又は魚介類の厚み、形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記肉類及び/又は魚介類は、解凍された状態のものを用いてもよいし、凍結又は半凍結の状態のものを用いてもよい。
【0021】
前記肉類及び/又は魚介類は、そのまま油調してもよいし、衣材により被覆したものを油調してもよい。
前記衣材としては、特に制限はなく、通常油調する食品に用いられるものを適宜選択することができ、例えば、小麦粉、でんぷん、植物性蛋白、油脂、水溶性多糖類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、衣材は、市販のバッターミックス粉を使用することもできる。
前記衣材により被覆する程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記油調に用いる油(以下、「揚げ油」と称することがある。)としては、食品に用いることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、紅花油、ヒマワリ油、米油、コーン油、パーム油、エゴマ油、ラード、ヘットなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記油調の条件としては、揚げ油から引き上げたときの前記肉類及び/又は魚介類の中心部の温度が40℃以下となる条件であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
上記した油調の条件とすることで、油調の際に、肉類及び/又は魚介類の水分量が保持され、復元した際の食感が向上する。
【0024】
本発明において、肉類及び/又は魚介類の中心部とは、前記肉類及び/又は魚介類の表面から最も遠い(深い)位置又はその近傍のことをいい、前記肉類及び/又は魚介類の深部程度の意味である。
前記肉類及び/又は魚介類の中心部の温度は、例えば、棒状(針状)の温度センサーを備えた温度計により測定することができる。
【0025】
本発明において、揚げ油から引き上げたときの中心部の温度は、肉類及び/又は魚介類を室温にて揚げ油から引き上げた直後に測定した温度のことをいう。
前記室温とは、15~30℃の範囲内の温度のことをいう。
前記引き上げた直後とは、引き上げてから10秒間以内のことをいう。
【0026】
前記揚げ油から引き上げたときの肉類及び/又は魚介類の中心部の温度としては、40℃以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。前記好ましい範囲内であると、復元した際の食感をより良好にすることができる点で、有利である。
【0027】
前記油調の温度(以下、「揚げ油の温度」と称することがある。)としては、揚げ油から引き上げたときの前記肉類及び/又は魚介類の中心部の温度が40℃以下となる温度であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。なお、揚げ油の温度の上限としては、揚げ油の引火点を超えない温度で適宜選択することができるが、220℃程度が好ましい。前記好ましい範囲内であると、油調した肉類及び/又は魚介類の外観がより優れる点で、有利である。
【0028】
前記油調の時間としては、揚げ油から引き上げたときの前記肉類及び/又は魚介類の中心部の温度が40℃以下となる時間であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、揚げ油の温度を180℃とした場合には、1~3分間などが挙げられ、揚げ油の温度を220℃とした場合には、30秒間などが挙げられる。
【0029】
前記油調は、前記油調工程後の肉類及び/又は魚介類の重さが、前記油調工程前の肉類及び/又は魚介類の重さ以上となる条件で行うことが好ましい。
【0030】
なお、前記油調は、前記肉類及び/又は魚介類の中心部の温度が40℃以下となるようにする以外は通常の油調と同様とすることができ、例えば、前記肉類及び/又は魚介類の表面は、火が通る程度に油調することができる。
【0031】
<蒸煮工程>
前記蒸煮工程は、油調した肉類及び/又は魚介類を蒸煮(以下、「スチーム」と称することがある。)する工程である。
【0032】
前記蒸煮の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0033】
前記蒸煮の条件としては、特に制限はなく、公知の条件を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肉類及び/又は魚介類の中心温度が70~90℃に達してから3分間以下などが挙げられる。
【0034】
<凍結乾燥工程>
前記凍結乾燥工程は、蒸煮した肉類及び/又は魚介類を凍結乾燥(以下、「真空凍結乾燥」と称することがある。)する工程である。
【0035】
前記凍結乾燥の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、まず、蒸煮した肉類及び/又は魚介類を予備凍結し、次いで、真空凍結乾燥する方法などが挙げられる。
【0036】
前記予備凍結の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、-10℃以下で完全に凍結するまで静置するなどが挙げられる。なお、凍結の際の温度は、一定であってもよいし、異なる温度で段階的に凍結してもよい。
【0037】
前記真空凍結乾燥は、公知の凍結乾燥機を用いて行うことができる。
前記真空凍結乾燥の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができるが、真空度90Pa以下に減圧するとともに、最高棚温80℃程度となるように段階的に昇温させて真空凍結乾燥させることが好ましい。
前記真空凍結乾燥後の凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品の水分量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以下が好ましい。
【0038】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カット工程、充填工程、冷凍工程、調味材充填工程などが挙げられる。
【0039】
前記カット工程は、肉類及び/又は魚介類をカットする工程である。
【0040】
前記充填工程は、肉類及び/又は魚介類を容器に充填する工程である。
【0041】
前記冷凍工程は、蒸煮工程後や調味材充填後の肉類及び/又は魚介類を冷凍し、凍結する工程である。
前記冷凍の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
前記調味材充填工程は、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品に用いる調味液や具材を、肉類及び/又は魚介類と混合し、容器に充填する工程である。
前記調味材充填工程は、蒸煮工程よりも後に行うことが好ましい。
【0043】
本発明によれば、簡易な方法で、凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品を復元した際の食感を向上することができる
【実施例0044】
以下に試験例、製造例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例、製造例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(試験例1)
<油調工程>
市販の冷凍ササミカツ(衣付き、約75g、厚み約1.5cm)を、下記の表1に記載の油調温度(揚げ油の温度)にて、油調後のササミカツの中心温度が下記の表1の温度となるように油調した。なお、揚げ油には、パーム油を使用した。
【0046】
<蒸煮工程>
油調したササミカツを4分割し、トレイに詰めた。
トレイに詰めたササミカツを、ササミカツの中心温度が下記の表1に記載の蒸煮中心温度となるように蒸煮した。なお、蒸煮は、蒸煮中心温度に達温した時点で停止した。
【0047】
<凍結乾燥工程>
蒸煮後のササミカツをトレイごと-25℃で8時間以上静置し、凍結させた。
凍結させたササミカツを、凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製)を用い、60Paの圧力で真空凍結乾燥を行い、真空凍結乾燥ササミカツ(水分量は、5質量%以下)を得た。
【0048】
<評価>
得られた真空凍結乾燥ササミカツをカップ容器に入れ、熱湯を200mL注ぎ、1分間放置後、熱湯から引き上げ、訓練された3名の評価者が喫食し、下記の評価基準で、食感(肉の柔らかさ、ジューシーさ)を評価した。結果の平均点を表1に示す。
[評価基準]
5点 : 試験区Oのものの食感と比べて、非常に柔らかく、非常にジューシーである。
4点 : 試験区Oのものの食感と比べて、柔らかく、ジューシーである。
3点 : 試験区Oのものの食感と同等である。
2点 : 試験区Oのものの食感と比べて、硬く、ジューシーさに欠ける。
1点 : 試験区Oのものの食感と比べて、非常に硬く、非常にジューシーさに欠ける。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示したように、油調後中心温度が高くなるにつれて、油調後のササミカツ重量が軽くなる傾向が認められた。また、蒸煮後のササミカツ重量は、蒸煮中心温度に関わらず、油調後のササミカツ重量からほとんど変わらなかった。
凍結乾燥後のササミカツ重量は、条件によらずほぼ同じであった。
昇華水分量(蒸煮後のササミカツ重量から凍結乾燥後のササミカツ重量を差し引いた値)は、油調後中心温度が低いものほど多く、蒸煮中心温度は昇華水分量への影響が小さいことが確認された。
【0051】
また、回帰分析の結果、油調後中心温度が低いほど、復元後の食感が良くなる傾向が認められた(y=-0.0196x+4.2293、R=0.6768)。一方、蒸煮中心温度は、復元後の食感との相関が低かった(y=-0.0068x+3.8606、R=0.0077)。
【0052】
油調温度を高温にした試験区Sでは、衣がしっかりときつね色となっており、また、より低温の油調温度で油調した場合と比べても同等の食感が得られていた。
【0053】
以上の結果から、油調時にササミカツに極力熱をかけないことで、ササミカツの水分量が保持され、復元後の食感が向上したと考えられる。
【0054】
(試験例2)
<油調工程>
市販の冷凍タラ(約60g、厚み約2cm、長さ約8cm)に小麦粉、卵液、及びパン粉にて衣付けしたものを用い、下記の表2に記載の油調温度にて、油調後のタラの中心温度が下記の表2の温度となるように油調した。なお、揚げ油には、パーム油を使用した。
【0055】
<蒸煮工程>
油調したタラを4分割し、トレイに詰めた。
トレイに詰めたタラを、タラの中心温度が下記の表2に記載の蒸煮中心温度となるように蒸煮した。なお、蒸煮は、蒸煮中心温度に達温した時点で停止した。
【0056】
<凍結乾燥工程>
試験例1と同様にして凍結乾燥工程を行い、真空凍結乾燥タラ(水分量は、5質量%以下)を得た。
【0057】
<評価>
-食感-
試験区2-2のものを基準(3点)とした以外は、試験例1と同様にして真空凍結乾燥タラの復元後の食感を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
-復元性-
得られた真空凍結乾燥タラの復元性を下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
[評価基準]
5点 : 湯戻し後、1分間で復元する。
4点 : 湯戻し後、1分間でおおむね復元する。
3点 : 湯戻し後1分間を超えても、復元していない部分がある。
2点 : 湯戻ししても完全には復元しない。
1点 : 湯戻ししても全く復元しない。
【0059】
【表2】
【0060】
(試験例3)
<油調工程>
市販の冷凍ホタテ(約25g、厚み約2cm)に小麦粉、卵液、及びパン粉にて衣付けしたものを用い、下記の表3に記載の油調温度にて、油調後のホタテの中心温度が下記の表3の温度となるように油調した。なお、揚げ油には、パーム油を使用した。
【0061】
<蒸煮工程>
油調したホタテを4分割し、トレイに詰めた。
トレイに詰めたホタテを、ホタテの中心温度が下記の表3に記載の蒸煮中心温度となるように蒸煮した。なお、蒸煮は、蒸煮中心温度に達温した時点で停止した。
【0062】
<凍結乾燥工程>
試験例1と同様にして凍結乾燥工程を行い、真空凍結乾燥ホタテ(水分量は、5質量%以下)を得た。
【0063】
<評価>
-食感-
試験区3-2のものを基準(3点)とした以外は、試験例1と同様にして真空凍結乾燥ホタテの復元後の食感を評価した。結果を表3に示す。
【0064】
-復元性-
得られた真空凍結乾燥ホタテの復元性を試験例2と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
【0066】
試験例1~3に示したように、様々な種類の肉類や魚介類において、油調時の中心温度を下げることで、復元後の食感向上効果が得られることが確認された。
【0067】
(製造例1:チキンカツの玉子とじ)
<油調工程>
市販の冷凍ササミカツ(衣付き、約75g、厚み約1.5cm)を、油調温度180℃にて、油調後のササミカツの中心温度が10℃になるように油調した。なお、揚げ油には、パーム油を使用した。
【0068】
<蒸煮工程>
油調したササミカツを4分割し、トレイに詰めた。
トレイに詰めたササミカツを、ササミカツの中心温度が90℃になるように蒸煮した。なお、蒸煮は、殺菌するのに十分な加熱とするため、蒸煮中心温度90℃に達してから、3分間保持した。
【0069】
<冷凍工程>
蒸煮したササミカツを冷凍し、凍結させた。
【0070】
<調味材充填工程>
上記で調製した冷凍ササミカツを容器に充填した後、更にその上から、かき玉を含む玉子とじの調味液及び具材の混合液を容器に充填した。
【0071】
<凍結乾燥工程>
容器に充填したチキンカツの玉子とじを容器ごと-40℃で8時間以上静置し、凍結させた。
凍結させたチキンカツの玉子とじを、凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製)を用い、60Paの圧力で真空凍結乾燥を行い、真空凍結乾燥チキンカツの玉子とじ(水分量は、5質量%以下)を得た。
【0072】
得られた真空凍結乾燥チキンカツの玉子とじをカップ容器に入れ、熱湯を120mL注ぎ、1分間放置後に喫食したところ、復元性が良好であり、食感も柔らかくしっとりとした良好な食感であった。
【0073】
(製造例2:チキンカツカレー)
<油調工程>
市販の冷凍ササミカツ(衣付き、約75g、厚み約1.5cm)を、油調温度180℃にて、油調後のササミカツの中心温度が10℃になるように油調した。なお、揚げ油には、パーム油を使用した。
【0074】
<蒸煮工程>
油調したササミカツを4分割し、トレイに詰めた。
トレイに詰めたササミカツを、ササミカツの中心温度が90℃になるように蒸煮した。なお、蒸煮は、殺菌するのに十分な加熱とするため、蒸煮中心温度90℃に達してから、3分間保持した。
【0075】
<冷凍工程>
蒸煮したササミカツを冷凍し、凍結させた。
【0076】
<調味材充填工程>
上記で調製した冷凍ササミカツを容器に充填した後、更にその上から、カレーの調味液及び具材の混合液を容器に充填した。
【0077】
<凍結乾燥工程>
容器に充填したチキンカツカレーを容器ごと-10℃以下で13時間以上静置し、凍結させた。
凍結させたチキンカツカレーを、凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製)を用い、90Paの圧力で真空凍結乾燥を行い、真空凍結乾燥チキンカツカレー(水分量は、5質量%以下)を得た。
【0078】
得られた真空凍結乾燥チキンカツカレーをカップ容器に入れ、熱湯を140mL注ぎ、1分間放置後に喫食したところ、復元性が良好であり、食感も柔らかくしっとりとした良好な食感であった。
【0079】
以上のように、本発明によれば、復元した際の食感が良好な凍結乾燥肉類及び/又は魚介類含有食品を簡易な方法で製造することができることが示された。