(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076734
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188431
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 正人
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】長塚 敬一郎
(72)【発明者】
【氏名】清宮 大司
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自車の運転支援に必要な情報を削ることなく、かつ不要な情報を除外して選択することが可能な運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される運転支援装置であって、地図情報と、車載センサ情報と、に基づいて自車の周辺環境を認識する周辺環境認識部と、前記周辺環境認識部の情報に基づいて前記自車の運転支援を判断する運転支援判断部と、前記自車の外部からの通信情報を取得する通信情報取得部と、前記車載センサ情報および前記地図情報に基づいて前記自車の取り得る運転行動を判断する運転行動判断部と、前記運転行動に基づいて前記通信情報の取得領域を設定する通信情報取得領域設定部と、前記取得領域内に存在する前記通信情報のうち前記自車の前記運転行動に影響する可能性のある通信情報を選択する通信情報取得判断部と、を備え、前記周辺環境認識部は、前記通信情報取得判断部で選択した通信情報を用いて前記自車の周辺環境を認識する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報と、自車に搭載されたセンサからの車載センサ情報と、に基づいて自車の周辺環境を認識する周辺環境認識部と、
前記周辺環境認識部の情報に基づいて前記自車の運転支援を判断する運転支援判断部と、
前記自車の外部から発信された通信情報を取得する通信情報取得部と、
前記車載センサ情報および前記地図情報に基づいて前記自車の取り得る運転行動を判断する運転行動判断部と、
前記運転行動に基づいて前記通信情報の取得領域を設定する通信情報取得領域設定部と、
前記取得領域内に存在する前記通信情報のうち前記自車の前記運転行動に影響する可能性のある通信情報を選択する通信情報取得判断部と、を備え、
前記周辺環境認識部は、前記通信情報取得判断部で選択した前記通信情報を用いて前記自車の周辺環境を認識することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記通信情報取得領域設定部は、前記運転行動に基づいて前記通信情報に含まれる物標情報の取得領域を設定し、
前記通信情報取得判断部は、前記取得領域内に存在する前記物標情報のうち前記自車の前記運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択し、
前記周辺環境認識部は、前記通信情報取得判断部で選択した前記物標情報を用いて前記自車の周辺環境を認識することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転行動判断部は、前記自車が走行中の道路の種別、制限速度、もしくは車線位置、前記自車が今後走行する予定の合流路もしくは交差点、または前記自車の車速の少なくとも1つに基づいて前記運転行動を判断することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記通信情報取得領域設定部は、前記運転行動が交差点通過の場合、前記交差点に前記自車が到達するまでの時間または距離に基づいて前記交差点を起点とした取得領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記通信情報取得領域設定部は、前記運転行動が合流地点通過の場合、前記合流地点に前記自車が到達するまでの時間または距離に基づいて前記合流地点を起点とした取得領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記通信情報取得領域設定部は、前記運転行動の前記自車の速度または前記自車が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合、前記自車の速度または前記制限速度に応じて前記取得領域を拡大または縮小するものとし、前記取得領域を拡大または縮小する際はその変化量に制限をかけることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記通信情報取得領域設定部は、交差点または合流地点を起点とした取得領域を設定した場合、前記自車が当該交差点または合流地点を通過するまでは設定された当該取得領域を削除しないことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記通信情報取得判断部は、前記取得領域内の前記自車から所定範囲内の物標情報を選択する、前記自車の前後を前記自車の進行方向と同方向に移動する物標情報において前記自車から近い順に所定個数を選択する、前記自車から所定距離に到達するまでの時間または距離が所定値以内の物標情報を選択する、または、前記物標情報の種別に基づいて選択する条件が異なることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記通信情報取得判断部は、前記自車の進行方向に対して後方に存在し、かつ前記自車の進行方向に対して逆方向に移動する物標情報を選択対象外とする、または、前記自車が走行している道路の対向車線との間に中央分離帯が存在する場合は前記対向車線の物標情報を選択対象外とすることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記通信情報取得判断部は、前記取得領域に交差点または合流地点が含まれている場合、前記交差点または前記合流地点から所定範囲内の物標情報を選択することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記通信情報取得判断部は、選択可能な物標情報の個数を限定する場合、前記物標情報の優先順位を前記自車との干渉リスクに基づいて決定し、前記優先順位順に選択するものとし、前記干渉リスクは、前記自車と前記物標情報との距離、前記自車から所定距離に前記物標情報が到達するまでの時間、前記自車と前記物標情報の走行車線位置、または前記物標情報の種別の少なくとも1つに基づいて演算されることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記通信情報取得部は、前記自車と前記物標情報との距離が所定値以上、または前記自車から所定距離に前記物標情報が到達するまでの時間が所定値以上の場合、前記物標情報の取得間隔を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記通信情報取得判断部は、前記取得領域内の物標情報の属性のうち、同じ種別であり、かつ位置および速度の差分が所定範囲内の2つ以上の物標情報が存在した場合、当該物標情報の信頼度の高い方を選択することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項14】
前記通信情報は、物標情報、信号機情報、速度規制情報、車線規制情報、渋滞情報、道路工事情報、事故情報、天候情報、または路面状態情報の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体において、特に通信を利用して自車周辺の情報を取得し、それらの情報を用いて運転支援を実施する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラやレーダなどの外界認識センサを用いて自車両周辺の物体(車両、二輪車、自転車、歩行者、構造物など)を検出するための技術が種々提案されている。また、これらの技術では外界認識センサの検出範囲が限られるため、車車間通信や路車間通信等の通信技術を用いて他の通信端末を保有する車両や路側に設置したインフラ等から自車の運転支援に必要な情報を取得し、これらの情報を用いて運転支援を実施する技術が開発されている。
【0003】
上記の通信によって得られる情報は、通信端末を保有する車両や路側に設置したインフラ等がセンシングした物体の情報を含むため、非常に多くの情報が含まれる。それに対し、これらの情報を受信する自車側の運転支援装置は、使用可能なメモリ量や計算リソースに限りがあるため、すべての情報を受信することができず、必要な情報のみを受信するような仕組みが必要となる。
【0004】
このような仕組みを持つ従来技術として、特許文献1がある。特許文献1には、自車の進行路に基づいて進行領域を求め、車車間通信で取得した他車両が検出した対象のうち、進行路領域内に存在する対象の情報を記憶部に記憶する車載電子制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている従来技術を用いることで、メモリ使用量を削減できる。しかしながら、特許文献1においては、今後の自車の予定する進行路に基づいて情報を取得する進行路領域を設定するため、次のような運転支援を実施する場合に情報が不足する可能性が高く、適切な運転支援が実施できなくなる可能性がある。例えば、運転支援として車線変更支援を実施する場合には自車後方の隣接車線の情報が必要不可欠であるが、特許文献1の進行路領域は、自車後方の領域を含まないため、車線変更支援を適切に実行することが難しい。また、例えば、運転支援として交差点において直交してくる車両(直交車)に対して自動緊急ブレーキを実施する場合には車速が高い直交車ほど遠方に位置している状態からの情報が必要不可欠であるが、特許文献1の進行路領域は、交差点においては自車の予定する進行路方向の領域をとり、他の交差方向の道路は領域に含まれないため、自動緊急ブレーキを適切に実行することが難しい。
【0007】
本発明は、前述した事情を鑑みてなされたもので、通信を用いて自車周辺の情報を取得する際に、取得する情報のうち、自車の運転支援に必要な情報を削ることなく、かつ不要な情報を除外して選択することが可能な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、車両に搭載される運転支援装置であって、地図情報と、自車に搭載されたセンサからの車載センサ情報と、に基づいて自車の周辺環境を認識する周辺環境認識部と、前記周辺環境認識部の情報に基づいて前記自車の運転支援を判断する運転支援判断部と、前記自車の外部から発信された通信情報を取得する通信情報取得部と、前記車載センサ情報および前記地図情報に基づいて前記自車の取り得る運転行動を判断する運転行動判断部と、前記運転行動に基づいて前記通信情報の取得領域を設定する通信情報取得領域設定部と、前記取得領域内に存在する前記通信情報のうち前記自車の前記運転行動に影響する可能性のある通信情報を選択する通信情報取得判断部と、を備え、前記周辺環境認識部は、前記通信情報取得判断部で選択した前記通信情報を用いて前記自車の周辺環境を認識することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、通信によって得られる情報から運転支援に必要となる情報のみを取り込むことで計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0010】
前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例における運転支援装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施例における運転支援装置の全体処理のフローチャートである。
【
図3】本発明の具体例(交差点通過)を説明するための図であり、(a)は自車両から交差点までの距離が十分離れている状況の取得領域設定および物標情報選択の一例、(b)は
図3(a)の状況から自車両が交差点に近づいて交差点までの距離が所定値以内となった状況の取得領域設定および物標情報選択の一例である。
【
図4】本発明の具体例(合流地点通過)を説明するための図であり、(a)は自車両から合流開始点までの距離が十分離れている状況の取得領域設定および物標情報選択の一例、(b)は
図4(a)の状況から自車両が合流地点に近づいて合流開始地点までの距離が所定値以内となった状況の取得領域設定および物標情報選択の一例である。
【
図5】本発明の具体例(自動車専用道路の走行車線(左車線)走行)を説明するための図であり、(a)は取得領域設定および物標情報選択の一例、(b)は取得領域設定および物標情報選択の他例である。
【
図6】本発明の具体例(交差点通過)を説明するための図であり、(a)は自車両から交差点までの距離が十分離れている状況の取得領域設定および物標情報選択の一例、(b)は
図6(a)の状況から自車両が交差点に近づいて交差点までの距離が所定値以内となった状況の取得領域設定および物標情報選択の一例である。
【
図7】本発明で取得する物標情報の具体例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施例による運転支援装置の概略構成図である。
図1に例示される運転支援装置としての制御装置100aは、自車両を制御するコンピュータであり、不図示の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することによって、通信情報取得部1、地図情報取得部2、運転行動判断部3、通信情報取得領域設定部4、通信情報取得判断部5、周辺環境認識部6、運転支援判断部7、車両制御部8、HMI制御部9として機能する。
【0014】
制御装置100aは、自車両の操舵装置111、駆動装置112、制動装置113、及び変速装置114と、自車両に設けられた通信装置101、外環境認識装置102、音発生装置115、表示装置116とに接続されている。また、制御装置100aは、自車両のCAN(不図示)や専用線などの伝送路に接続されており、これらの伝送路を経由して自車両の車速、舵角、シフト位置などの車両情報及びスイッチ入力、タッチパネル入力などのユーザ操作情報が入力される。
【0015】
通信装置101は、Wi-Fi(IEEE802.11)や4G、5G等の無線通信方式を用いて車外と通信し、自車両の運転支援に必要な情報を受信する。車外との通信相手は、他車両に搭載された通信装置、路側に設置された各種インフラ(信号機、ETCゲート、専用設備等)の通信装置、人等が保持している携帯電話、データセンタ(複数の情報を蓄積して必要な情報を送信する設備)等であり、自車両が受信する情報は、物標情報(通信相手そのものの情報、通信相手がセンシングした情報等)、信号機情報(現在の信号色、信号色が他の色に切り替わるまでの時間等)、速度規制情報(規制速度、規制区間等)、車線規制情報(規制車線、規制区間等)、渋滞情報(渋滞区間、渋滞末尾位置等)、道路工事情報(工事位置、規制内容等)、事故情報(事故位置、規制内容等)、天候情報(天候内容、区間情報等)、路面状態情報(路面状態、区間/位置情報等)である。また、物標情報としては、物標の種別(普通車、大型車、緊急車両、二輪車、自転車、人、その他識別不明なもの等)、位置、速度、移動方向、信頼度(情報を信頼できる度合いで、例えば1~100の数値で100が最も信頼できる値とする)等である。
【0016】
外環境認識装置102は、自車両の周囲環境に関する情報を取得する装置であって、例えば、車両周囲環境を撮影する単眼カメラやステレオカメラなどの車載カメラである。車載カメラにより得られた画像は、アナログデータのまま、又はA/D変換して、専用線などの伝送路を経由して制御装置100aに出力される。また、車載カメラ以外にもミリ波やレーザー光を用いて物体との距離を計測するレーダ、超音波を用いて物体との距離を計測するソナー等を用いることができる。車載カメラなどのこれらの装置は、検出した物体との距離とその方角、速度や物体の種別等の情報を専用線などの伝送路を経由して制御装置100aに出力する構成としても良い。
【0017】
操舵装置111は、外部からの駆動指令により電動や油圧のアクチュエータなどによって舵角を制御できる電動パワーステアリング、油圧パワーステアリング等で構成される。
【0018】
駆動装置112は、外部からの駆動指令により電動のスロットルなどでエンジントルクを制御できるエンジンシステムや、外部からの駆動指令によりモータなどの駆動力を制御できる電動パワートレインシステム等で構成される。
【0019】
制動装置113は、外部からの制動指令により電動や油圧のアクチュエータなどで制動力を制御できる電動ブレーキや油圧ブレーキ等で構成される。
【0020】
変速装置114は、外部からの変速指令により電動や油圧のアクチュエータなどで前進や後退を切り替え可能なトランスミッション等で構成される。
【0021】
音発生装置115は、スピーカー等で構成され、運転者に対する警報や音声ガイダンス等を出力する情報報知部として機能する。
【0022】
表示装置116は、ナビゲーション装置等のディスプレイ、メーターパネル、警告灯等で構成される。表示装置116は、制御装置100aの操作画面や、自車両が障害物に衝突する危険があることなどを運転者に視覚的に伝える警告画面等の情報を報知する情報報知部として機能する。
【0023】
通信情報取得部1は、通信装置101で受信した(自車両の外部から発信された)自車両の運転支援に必要な情報(通信情報)を取得する。
【0024】
地図情報取得部2は、自車両周辺の地図情報を取得する。取得される地図情報は、ポリゴンやポリライン等で表現される実際の道路形状に近い形状データや、通行規制情報(制限速度、通行可能車両種別等)、車線区分(本線、追越車線、登坂車線、直進車線、左折車線、右折車線等)とその区画線の種別や位置、信号機や標識等の有無(有の場合はその位置情報)等の情報である。
【0025】
運転行動判断部3は、外環境認識装置102で認識した自車両の周囲環境に関する情報と地図情報取得部2により取得した自車両周辺の地図情報を用いて自車両の取り得る運転行動を判断する。自車両の運転行動とは具体的には、自車両が走行中の道路の種別(自動車専用道路、一般道路等)や制限速度、自車両が走行している車線位置、自車両が今後走行する予定の交差点や合流路の形状やそこまでの距離、自車両の現在の車速等を用いて、例えば、片側2車線の制限速度50km/hの一般道の右車線を45km/hで走行しており、100m先の十字路交差点に進入しようとしている、といった内容となる。他には、自動車専用道路につながる1車線の制限速度40km/hの接続道路を38km/hで走行しており、150m先の合流路から本線に合流しようとしている、といった内容等がある。
【0026】
通信情報取得領域設定部4は、運転行動判断部3により判断された自車両の取り得る運転行動に基づいて通信情報取得部1で取得した情報(通信情報)を選択する領域(取得領域)を設定する。例えば、自車両の運転行動が十字路交差点に進入しようとしている場合は、自車が走行している道路に加えて交差道路も取得領域として設定する。また、自車の運転行動が合流路に進入しようとしている場合は、自車が走行している接続路に加えて合流部分の前後の本線車線も取得領域として設定する。
【0027】
通信情報取得判断部5は、通信情報取得領域設定部4により設定された領域内の情報のうち、運転行動判断部3により判断された自車両の取り得る運転行動に影響する可能性のある情報を選択する。例えば、自車両の運転行動が十字路交差点に進入しようとしている場合は、交差道路を交差点方向に走行している車両や、交差点の横断歩道を歩行中の人や、自車が走行している方向の信号機の色情報等を選択する。
【0028】
周辺環境認識部6は、外環境認識装置102から入力された情報、地図情報取得部2により取得した地図情報、通信情報取得判断部5により選択された通信情報を用いて、自車両周辺の障害物や車両が走行可能なフリースペースを検出する。障害物に関しては、種別や位置、移動方向や移動速度等を検出する。障害物の種別としては、普通車や大型車、緊急車両等の車両、二輪車、自転車、歩行者、ガードレール、縁石、壁、フェンス、植栽、落下物などである。障害物の種別や位置は、既知の技術であるパターンマッチングによって検出する方法を用いることができるが、他の技術を用いて検出してもよい。フリースペースに関しては、区画線や路端、車両が走行可能な路面情報、障害物情報等を用いて、車両が走行可能な領域情報として検出する。
【0029】
運転支援判断部7は、周辺環境認識部6の出力に基づいて適切な運転支援を判断する。運転支援の内容としては、例えば、障害物との衝突を予測して警報や制動を実施する自動緊急ブレーキ、隣接車線の車両との位置関係を考慮して適切なタイミングで車線変更の実施を支援する車線変更/合流支援、前方の低速車を対向車線にはみ出しての追い越しを支援する低速車追越支援、信号機の現在の色や今後の色の移り変わりの情報から信号機のある場所の通過を支援する信号機通過支援等がある。
【0030】
車両制御部8は、運転支援判断部7で判断された運転支援の内容に基づき、自車両の走行を制御する。例えば、車線変更/合流支援として、隣接車線への操舵アシストと速度調節を行う場合、車両制御部8は、状況に応じた目標舵角と目標速度を演算する。そして、車両制御部8は、その目標舵角を実現するための目標操舵トルクを操舵装置111へ出力する。また、車両制御部8は、目標速度を実現するための目標エンジントルクや目標ブレーキ圧を駆動装置112や制動装置113へ出力する。さらに別の運転支援において、自車両の進行方向を変更する必要がある場合、変速指令を変速装置114に出力する。
【0031】
HMI制御部9は、運転支援判断部7で判断された運転支援の内容に基づき、ユーザに報知するための情報を状況に応じて適宜生成し、音発生装置115および表示装置116に出力する。例えば、自動緊急ブレーキの警報を出力する場合、音発生装置115および表示装置116のそれぞれに自動緊急ブレーキ警報の出力信号を送信する。
【0032】
次に、フローチャートを用いて制御装置100aの処理手順を説明する。
【0033】
図2は、制御装置100aの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図2の処理S201では、制御装置100aは、通信装置101から通信により受信した通信情報を取得する。
【0035】
処理S202では、制御装置100aは、外環境認識装置102から外界環境の認識結果を取得する。
【0036】
処理S203では、自車両の車速、舵角、シフト位置などの車両情報を取得する。
【0037】
処理S204では、自車両周辺の地図情報を取得する。
【0038】
処理S205では、処理S202で取得した外界環境認識結果と処理S204で取得した地図情報に基づいて、自車両の運転行動を判断する。
【0039】
処理S206では、処理S205で判断した運転行動に基づいて処理S201で取得した通信情報を選択する取得領域を設定する。
【0040】
処理S207では、処理S206で設定した取得領域内の情報のうち、処理S205で判断した運転行動に影響する可能性のある情報を選択する。
【0041】
処理S208では、処理S201で取得した通信情報、処理S204で取得した地図情報、処理S207で選択された通信情報を用いて、自車両周辺の障害物や車両が走行可能なフリースペースを検出する。
【0042】
処理S209では、処理S208の出力に基づいて適切な運転支援を判断する。
【0043】
処理S210では、処理S209で判断した運転支援の内容に基づき、自車両の走行を制御する。また、ユーザに報知する情報を出力し、一連の処理を終了する。
【0044】
以上説明したフローを実行することで、通信によって得られる情報から運転支援に必要となる情報のみを取り込むことで計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0045】
次に、
図3(a)から
図6(b)を用いて、具体的な動作について説明する。
【0046】
図3(a)、(b)は、自車両300が交差点に向かって走行している状況を想定している。ここで、自車両300以外の車両、歩行者、自転車はすべて通信情報取得部1により取得されている情報とする。
【0047】
図3(a)は、自車両300から交差点までの距離Xcが十分離れている場合であり、自車両300は片側1車線道路を図中の左の方向に向かっている状況である。このときの自車両300の運転行動は、「片側1車線道路を走行」であり、これ以外の取り得る運転行動としては、何かを避けるためにもしくは低速車を追い越すために対向車線にはみ出す、対向車線を横切って商用施設駐車場等に入る、左折して歩道を横切って商用施設駐車場等に入る、左の歩道に車を寄せて停車する、といった内容等が考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により破線領域301を取得領域として設定する。この領域の大きさとして、自車両300の左方向の幅Wlは左側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、右方向の幅Wrは右側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、前方向の長さLfは対向車との正面衝突を回避できる範囲を、後方向の長さLrは後続車との衝突を回避できる範囲を設定する。WlとWrについては、歩道の幅が地図情報から取得できればその値を利用し、地図情報から取得できない(地図情報に歩道の情報がない場合を含む)場合は外環境認識装置102により認識された情報に基づいて歩道の幅を算出するか、車道の境界から所定の幅(例えば5m)を歩道の幅として利用する。Lfについては、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて対向車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は100km/h(自車両と対向車ともに50km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lf=100÷3.6×3≒83[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。Lrについては、Lfと同様に、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて後続車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は50km/h(自車両は停車、後続車は50km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lr=50÷3.6×3≒42[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、走行中の道路の制限速度が変化する場合は、その変化地点でLfが急変し、範囲の境界での物標情報の出入りも急変する。そのため、このように運転行動の自車両の速度または自車両が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合において、自車両の速度または制限速度が高い時は取得領域を広く設定し、自車両の速度または制限速度が低い時は取得領域を狭く設定するものとし(言い換えると、自車両の速度または制限速度に応じて取得領域を拡大または縮小するものとし)、取得領域を拡大または縮小する場合においては、その変化量に時間的もしくは距離的に制限をかけることで急変を抑えることが可能となる。
【0048】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域301内の物標情報のうち、自車両300の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図3(a)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。自車両300の近傍に存在する物標に関しては、自車両300の運転行動の急な変化や物標の急な動きの変化の可能性を考慮して、自車両300から所定範囲内(例えば10m以内)の物標情報はすべて選択する。自車両300の前方に存在する物標に関しては、自車両300の進行方向に存在する物標のため、基本的にはすべての物標を選択するが、自車両300と同一方向に移動しておりかつ自車両300から遠い物標(例えばLf/2より遠方)は自車両300との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよく、同様に自車両300に接近してきておりかつ自車両300に到達するまでの予測時間が長い物標(例えば予測時間3秒以上)も自車両300との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。言い換えると、自車両近傍(自車両から所定距離)に到達するまでの時間または距離が所定値以内の物標を選択してもよい。自車両300の後方に存在する物標に関しては、自車両300と同一方向に移動している物標は基本的にはすべて選択するが、物標種別が人の場合は非選択とする(人は自車両300の近傍で選択している分で十分なため)。言い換えると、物標種別に基づいて選択する条件を変更してもよい。また、自車両300の進行方向に対して後方でかつ自車両300から離れていく方向(自車両300の進行方向に対して逆方向)に移動している物標(対向車線の車両等)は自車両300と干渉する可能性はないために非選択とする。
【0049】
図3(b)は、
図3(a)の状況から自車両300が交差点に近づいて交差点までの距離Xcが所定値以内となった状況である。このときの自車両300の運転行動は、「片側1車線道路を走行、かつ十字路交差点に進入しようとしている」であり、
図3(a)での内容に、十字路交差点を直進/右折/左折する、といった内容等が追加で考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により
図3(a)の破線領域301と同等の破線領域302に加えて一点鎖線領域303を取得領域として設定する。破線領域302の設定方法は破線領域301と同じであり、一点鎖線領域303の大きさとして、交差道路の幅Wcは両側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、交差道路の長さLcは交差車両との衝突を回避できる範囲を設定する。Wcについては、歩道の幅が地図情報から取得できればその値を利用し、地図情報から取得できない(地図情報に歩道の情報がない場合を含む)場合は外環境認識装置102により認識された情報に基づいて歩道の幅を算出するか、車道の境界から所定の幅(例えば5m)を歩道の幅として利用する。Lcについては、地図情報の制限速度の情報を用いて交差車両の速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は交差車両の速度の最大値も50km/hであり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、自車両300が走行している道路幅を6mとすると、Lc=(50÷3.6×3)×2+6≒89[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、一点鎖線領域303を設定するタイミングとして自車両300から交差点までの距離Xcが所定値以内としているが、この所定値の設定方法としては固定値(例えば100m)としてもよいが、自車両300が交差点に到達するまでの時間を設定して(例えば3秒)この時間と自車両300の車速をかけて求めた距離を所定値としても良く、後者のようにすることでより適切なタイミングで一点鎖線領域303の設定が可能となる。ただし、この場合、一旦一点鎖線領域303を設定後に自車両300の車速が小さくなると上記の所定値が小さくなるために一点鎖線領域303を設定する条件から外れてしまう。一旦一点鎖線領域303を設定後に一点鎖線領域303を削除すると一点鎖線領域303内で選択した物標情報も一旦なくなってしまうことから情報の出入りが激しくなり非効率である。そのため、交差点領域の一点鎖線領域303を設定後は自車両300がその交差点を通過するまでは設定された一点鎖線領域303を削除しないことが望ましい。
【0050】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域302内および一点鎖線領域303内の物標情報のうち、自車両300の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図3(b)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。破線領域302内の選択方法は
図3(a)で説明した方法と同じである。一点鎖線領域303内の選択方法は次の通りである。交差点を起点とする領域(例えば破線領域302と一点鎖線領域303の重なっている領域)に存在する物標に関しては、自車両300の運転行動に干渉する可能性が高いためにすべて選択する。交差点に進入してくる物標に関しては、基本的にはすべての物標を選択するが、交差点に到達するまでの予測時間が長い物標(例えば予測時間3秒以上)は自車両300との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。言い換えると、交差点から所定範囲内の物標を選択してもよい。交差点から離れていく物標に関しては、自車両300と干渉する可能性はないために非選択とする。
【0051】
図4(a)、(b)は、自車両400が自動車専用道路の合流地点に向かってその接続道路(歩道なし)を走行している状況を想定している。ここで、自車両400以外の車両はすべて通信情報取得部1により取得されている情報とする。
【0052】
図4(a)は、自車両400から合流開始点までの距離Xmが十分離れている場合であり、自車両400は1車線の接続道路を合流開始地点に向かっている状況である。このときの自車両400の運転行動は、「1車線の接続道路を走行」であり、これ以外の取り得る運転行動としては、先行車の状況に合わせて減速/加速/停車する、といった内容等が考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により破線領域401を取得領域として設定する。この領域の大きさとして、前方向の長さは先行車との衝突を回避できる範囲を、後方向の長さは後続車との衝突を回避できる範囲を、幅はこの接続道路には歩道がないために道幅分の範囲をそれぞれ設定する。前方向の長さについては、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて先行車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は50km/h(自車両は50km/h、先行車は停車)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lf=50÷3.6×3≒42[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。後方向の長さについては、前方向の長さと同様に、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて後続車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は50km/h(自車両は停車、後続車は50km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lr=50÷3.6×3≒42[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、走行中の道路の制限速度が変化する場合は、その変化地点でLfが急変し、範囲の境界での物標情報の出入りも急変する。そのため、このように運転行動の自車両の速度または自車両が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合において、自車両の速度または制限速度が高い時は取得領域を広く設定し、自車両の速度または制限速度が低い時は取得領域を狭く設定するものとし(言い換えると、自車両の速度または制限速度に応じて取得領域を拡大または縮小するものとし)、取得領域を拡大または縮小する場合においては、その変化量に時間的もしくは距離的に制限をかけることで急変を抑えることが可能となる。
【0053】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域401内の物標情報のうち、自車両400の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図4(a)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。自車両400の前方に存在する物標に関しては、自車両400の進行方向に存在する物標のため、基本的にはすべての物標を選択するが、自車両400の前方に複数台の車両が並んでいる場合は所定台数より先(例えば3台目より先)は自車両400との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。同様に、自車両400の後方に存在する物標に関しては、自車両400と同一方向に移動する物標のため、基本的にはすべての物標を選択するが、自車両400の後方に複数台の車両が並んでいる場合は所定台数より後ろ(例えば3台目より後ろ)は自車両400との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。言い換えると、自車両400の前後を自車両400の進行方向と同方向に移動する物標において自車両400から近い順に所定個数(例えば前後2台目まで)を選択してもよい。
【0054】
図4(b)は、
図4(a)の状況から自車両400が合流地点に近づいて合流開始地点までの距離Xmが所定値以内となった状況である。この時の自車両400の運転行動は、「1車線の接続道路を走行、かつ合流路から本線に合流しようとしている」であり、
図4(a)での内容に、合流路から車線変更して本線に合流する、合流路から本線に合流できずに合流路で停車する、といった内容等が追加で考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により
図4(a)の破線領域401と同等の破線領域402に加えて一点鎖線領域403を取得領域として設定する。破線領域402の設定方法は破線領域401とほぼ同じであるが、前方の領域が合流開始地点を越えているために合流開始地点以降は本線も含む領域を設定している。一点鎖線領域403の大きさとしては、幅は本線道路の道路幅をカバーできる範囲を、長さLmは自車両400が本線を走行する車両との衝突を回避しつつ車線変更するために必要な範囲を設定する。Lmについては、地図情報から取得可能な本線との合流路(合流開始地点から合流終了地点)の長さ(地図情報から取得できない場合は固定値、例えば200mとする)に加えて、地図情報の本線制限速度等を用いて合流開始地点より手前側の範囲を含めるものとする。具体的には、合流開始地点より手前側の範囲は、本線制限速度に比例した長さにする方法や、本線制限速度に基づいたテーブルから参照する方法等がある。例えば前者を用いる場合は、長さ[m]=本線制限速度[km/h]×比例定数、と表すことができ、本線制限速度100km/h、比例定数1.5の時は、長さは150mとなり、地図情報から取得した合流路の長さが180mの場合はLm=180+150=330[m]となる。なお、一点鎖線領域403を設定するタイミングとして自車両400から合流開始地点までの距離Xmが所定値以内としているが、この所定値の設定方法としては固定値(例えば100m)としてもよいが、自車両400が合流開始地点に到達するまでの時間を設定して(例えば3秒)この時間と自車両400の車速をかけて求めた距離を所定値としても良く、後者のようにすることでより適切なタイミングで一点鎖線領域403の設定が可能となる。ただし、この場合、一旦一点鎖線領域403を設定後に自車両400の車速が小さくなると上記の所定値が小さくなるために一点鎖線領域403を設定する条件から外れてしまう。一旦一点鎖線領域403を設定後に一点鎖線領域403を削除すると一点鎖線領域403内で選択した物標情報も一旦なくなってしまうことから情報の出入りが激しくなり非効率である。そのため、本線領域の一点鎖線領域403を設定後は自車両400が合流地点を通過するまでは設定された一点鎖線領域403を削除しないことが望ましい。
【0055】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域402内および一点鎖線領域403内の物標情報のうち、自車両400の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図4(b)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。破線領域402内の選択方法は
図4(a)で説明した方法と同じである。一点鎖線領域403内の選択方法としては、本線の走行車線(左車線)を走行している車両は合流する際に直接影響があり、追越車線(右車線)を走行している車両も走行車線に車線変更してくる可能性があるため、基本的にはすべての物標を選択するが、本線車線が渋滞しているなどで本線の走行速度が遅い場合はすべての物標を選択すると非効率になる場合があるため、例えば合流開始地点に到達するまでの予測時間が長い物標(例えば予測時間3秒以上)は自車両400との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。言い換えると、合流地点から所定範囲内の物標を選択してもよい。
【0056】
図5(a)、(b)は、自車両500が中央分離帯510で対向車線と物理的に仕切られている片側2車線の自動車専用道路の走行車線(左車線)を走行している状況を想定している。ここで、自車両500以外の車両はすべて通信情報取得部1により取得されている情報とする。
【0057】
図5(a)、(b)ともに、このときの自車両500の運転行動は、「2車線の自動車専用道路の走行車線を走行」であり、これ以外の取り得る運転行動としては、追越車線に車線変更する、先行車の状況に合わせて減速/加速/停車する、といった内容等が考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により破線領域501を取得領域として設定する。この領域の大きさとして、前方向の長さLfは先行車との衝突を回避できる範囲を、後方向の長さLrは後続車との衝突を回避できる範囲を、幅に関しては対向車線が物理的に中央分離帯510で仕切られているために、対向車線を含まず、自車両500が走行している2車線の道幅分のみの範囲をそれぞれ設定する。前方向の長さLfについては、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて先行車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が100km/hの場合は相対速度の最大値は100km/h(自車両は100km/h、先行車は停車)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lf=100÷3.6×3≒83[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。後方向の長さLrについては、前方向の長さLfと同様に、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて後続車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が100km/hの場合は相対速度の最大値は100km/h(自車両は停車、後続車は100km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lr=100÷3.6×3≒83[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、走行中の道路の制限速度が変化する場合は、その変化地点でLfが急変し、範囲の境界での物標情報の出入りも急変する。そのため、このように運転行動の自車両の速度または自車両が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合において、自車両の速度または制限速度が高い時は取得領域を広く設定し、自車両の速度または制限速度が低い時は取得領域を狭く設定するものとし(言い換えると、自車両の速度または制限速度に応じて取得領域を拡大または縮小するものとし)、取得領域を拡大または縮小する場合においては、その変化量に時間的もしくは距離的に制限をかけることで急変を抑えることが可能となる。
【0058】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域501内の物標情報のうち、自車両500の運転行動に干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図5(a)、(b)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。自車両500の前方に存在する物標に関しては、自車両500の進行方向に存在する物標のため、
図5(a)に示すように基本的にはすべての物標を選択するが、自車両500の前方に複数台の車両が並んでいる場合は
図5(b)に示すように所定台数より先(例えば3台目より先)は自車両500との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。同様に、自車両500の後方に存在する物標に関しては、自車両500と同一方向に移動する物標のため、
図5(a)に示すように基本的にはすべての物標を選択するが、自車両500の後方に複数台の車両が並んでいる場合は
図5(b)に示すように所定台数より後ろ(例えば3台目より後ろ)は自車両500との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。言い換えると、自車両500の前後を自車両500の進行方向と同方向に移動する物標において自車両500から近い順に所定個数(例えば前後2台目まで)を選択してもよい。また、前述のように、自車両500が走行している道路の対向車線との間に中央分離帯510が存在する場合において、破線領域501の幅に関しては、対向車線を含まず、自車両500が走行している2車線の道幅分のみの範囲に設定されているため、対向車線の物標は非選択(選択対象外)となる。
【0059】
図6(a)、(b)は、自車両600が片側2車線道路の左車線を交差点に向かって走行している状況を想定している。ここで、自車両600以外の車両、歩行者、自転車はすべて通信情報取得部1により取得されている情報とする。
【0060】
図6(a)は、自車両600から交差点までの距離Xcが十分離れている場合であり、自車両600は片側2車線道路の左車線を図中の左の方向に向かっている状況である。このときの自車両600の運転行動は、「片側2車線道路の左車線を走行」であり、これ以外の取り得る運転行動としては、右車線に車線変更する、左折して歩道を横切って商用施設駐車場等に入る、左の歩道に車を寄せて停車する、といった内容等が考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により破線領域601を取得領域として設定する。この領域の大きさとして、自車両600の左方向の幅Wlは左側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、右方向の幅Wrは右側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、前方向の長さLfは対向車との正面衝突を回避できる範囲を、後方向の長さLrは後続車との衝突を回避できる範囲を設定する。WlとWrについては、歩道の幅が地図情報から取得できればその値を利用し、地図情報から取得できない(地図情報に歩道の情報がない場合を含む)場合は外環境認識装置102により認識された情報に基づいて歩道の幅を算出するか、車道の境界から所定の幅(例えば5m)を歩道の幅として利用する。Lfについては、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて対向車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は100km/h(自車両と対向車ともに50km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lf=100÷3.6×3≒83[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。Lrについては、Lfと同様に、地図情報の制限速度の情報もしくは自車両の速度の情報を用いて後続車と自車両の相対速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は相対速度の最大値は50km/h(自車両は停車、後続車は50km/h)であり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、Lr=50÷3.6×3≒42[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、走行中の道路の制限速度が変化する場合は、その変化地点でLfが急変し、範囲の境界での物標情報の出入りも急変する。そのため、このように運転行動の自車両の速度または自車両が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合において、自車両の速度または制限速度が高い時は取得領域を広く設定し、自車両の速度または制限速度が低い時は取得領域を狭く設定するものとし(言い換えると、自車両の速度または制限速度に応じて取得領域を拡大または縮小するものとし)、取得領域を拡大または縮小する場合においては、その変化量に時間的もしくは距離的に制限をかけることで急変を抑えることが可能となる。
【0061】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域601内の物標情報のうち、自車両600の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図6(a)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。自車両600の近傍に存在する物標に関しては、自車両600の運転行動の急な変化や物標の急な動きの変化の可能性を考慮して、自車両600から所定範囲内(例えば10m以内)の物標情報はすべて選択する。自車両600の前方に複数台の車両が並んでいる場合は所定台数より先(例えば3台目より先)は自車両600との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよく、自車両600の2車線隣の車線より遠方(対向車線の左車線とその向こうの歩道)も自車両600との干渉リスクが小さいと判断して非選択としてもよい。自車両600の後方に存在する物標に関しては、自車両600と同一方向に移動している物標は基本的にはすべて選択するが、物標種別が人の場合は非選択とする(人は自車両600の近傍で選択している分で十分なため)。また、自車両600の進行方向に対して後方でかつ自車両600から離れていく方向(自車両600の進行方向に対して逆方向)に移動している物標(対向車線の車両等)は自車両600と干渉する可能性はないために非選択とする。
【0062】
図6(b)は、
図6(a)の状況から自車両600が交差点に近づいて交差点までの距離Xcが所定値以内となった状況である。このときの自車両600の運転行動は、「片側2車線道路の左車線を走行、かつ十字路交差点に進入しようとしている」であり、
図6(a)での内容に、十字路交差点を直進/左折する(左車線からは右折が禁止されている道路とする)、といった内容等が追加で考えられる。これらの運転行動を考慮して通信情報取得領域設定部4により
図6(a)の破線領域601と同等の破線領域602に加えて一点鎖線領域603を取得領域として設定する。破線領域602の設定方法は破線領域601と同じであり、一点鎖線領域603の大きさとして、交差道路の幅Wcは両側の歩道の領域までをカバーできる範囲を、交差道路の長さLcは交差車両との衝突を回避できる範囲を設定する。Wcについては、歩道の幅が地図情報から取得できればその値を利用し、地図情報から取得できない(地図情報に歩道の情報がない場合を含む)場合は外環境認識装置102により認識された情報に基づいて歩道の幅を算出するか、車道の境界から所定の幅(例えば5m)を歩道の幅として利用する。Lcについては、地図情報の制限速度の情報を用いて交差車両の速度が最大となる値を求め、例えば自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングを考慮して算出する。具体的には、制限速度が50km/hの場合は交差車両の速度の最大値も50km/hであり、自動緊急ブレーキの警報を実施するタイミングが衝突までの予測時間3秒の場合、自車両600が走行している道路幅を6mとすると、Lc=(50÷3.6×3)×2+6≒89[m]となるが、制限速度以上での走行の可能性もあるために相対速度の最大値を少し大きめにして算出してもよい。なお、一点鎖線領域603を設定するタイミングとして自車両600から交差点までの距離Xcが所定値以内としているが、この所定値の設定方法としては固定値(例えば100m)としてもよいが、自車両600が交差点に到達するまでの時間を設定して(例えば3秒)この時間と自車両600の車速をかけて求めた距離を所定値としても良く、後者のようにすることでより適切なタイミングで一点鎖線領域603の設定が可能となる。
【0063】
次に、通信情報取得判断部5により破線領域602内および一点鎖線領域603内の物標情報のうち、自車両600の運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択する(
図6(b)の中で選択した物標に〇印、非選択の物標に×印をつけている)。破線領域602内の選択方法は
図6(a)で説明した方法と同じである。一点鎖線領域603内の選択方法は次の通りである。交差点を起点とする領域(例えば破線領域602と一点鎖線領域603の重なっている領域)に存在する物標に関しては、自車両600の運転行動に干渉する可能性が高いために基本的にはすべて選択するが、現時点の自車両600の位置からは右折ができない状態のため、自車両600から見て右側の歩行者は非選択とする。交差点に進入してくる物標に関しては、基本的にはすべての物標を選択するが、自車両600が交差点に到達するまでの予測時間が長い(例えば予測時間3秒以上)場合は自車両600との干渉リスクが小さいと判断して交差点に一番近い物標のみを選択する、もしくはすべて非選択としてもよい。言い換えると、交差点から所定範囲内の物標を選択してもよい。交差点から離れていく物標に関しては、自車両600と干渉する可能性はないために非選択とする。
【0064】
以上説明したように、通信によって得られる情報から運転支援に必要となる情報のみを取り込むことで計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0065】
また、本手法を実現するためのハードウェアやソフトウェアを想定した場合、メモリ使用量の上限が存在することが想定されるため、選択可能な物標情報の個数には上限を設定し、その上限以内の個数の情報で運転支援等を実施する。このように個数を制限する場合、物標情報に優先順位を付けて選択することが望ましい。従来の通信情報を使わずに外環境認識装置102の検出結果のみを利用する場合は、基本的には自車両から近い位置に存在する物標から順に選択する方法が一般的である。通信情報を利用する場合、この優先順位の付け方としては、自車両と物標との干渉リスクに基づいて決定する方法が効率的である。すなわち、通信情報取得判断部5は、選択可能な物標情報の個数を限定する場合、物標情報の優先順位を自車両との干渉リスクに基づいて決定し、優先順位順に選択(格納)することが望ましい。この干渉リスクは、自車両と物標との距離、自車両近傍に物標が到達するまでの時間、自車両と物標の走行車線位置の関係、物標の種別等に基づいて演算する。
図3(a)から
図6(b)を用いて干渉リスクの説明を実施した通りであり、自車両と同一方向に移動する物標、自車両から離れていく方向(自車両の進行方向に対して逆方向)に移動する物標、等の移動方向も加味して干渉リスクを決定する。また、物標の種別として、緊急車両が取得できる場合は、自車両の運転支援として緊急車両を優先するための車両制御やユーザへの通知が早い段階で必要となるため、通信情報取得領域設定部4で設定した取得領域内に緊急車両が存在する場合は干渉リスクを最も高く設定して優先順位を高くしておくことが有効である。また、このような場合は取得領域の設定を
図3(a)から
図6(b)で説明した範囲より大きく設定することも有効であるが、メモリ使用量の上限も鑑みて設定することが望ましい。
【0066】
次に、
図7を用いて、通信によって得られる情報をさらに厳選する手法について説明する。
【0067】
図7は、自車両があるタイミングで取得した物標に関しての通信情報の一部である。物標情報の項目として、ID、種別、位置(X,Y)、速度(Vx,Vy)、信頼度の情報をそれぞれ取得しているとする。ここで、IDの“A-1”はAが送信元を表す固有IDであり、1がこの固有IDが検出して出力している物標のIDである。
図7のID:A-1とID:B-2を比較すると、両者の種別は自動車で同じであり、位置はXが0.7m、Yが0.1m、速度はVxが0.5km/h、Vyが0.1km/h異なっている。そこで、通信情報取得判断部5は、ID:A-1とID:B-2は同一種別であり、位置も速度もほぼ同じ値(位置および速度の差分が所定範囲内)であることから同一物標である可能性が非常に高いため、信頼度の値が高いID:A-1の情報を選択し、信頼度の値が低いID:B-2の情報を非選択とする。同様に、ID:A-3とID:B-3を比較すると、両者は同一種別であり、位置も速度もほぼ同じ値(位置および速度の差分が所定範囲内)であることから同一物標である可能性が非常に高いため、信頼度の値が高いID:A-3の情報を選択し、信頼度の値が低いID:B-3の情報を非選択とする。また、ID:C-1とID:D-1を比較すると、両者は同一種別であり、位置も速度もほぼ同じ値(位置および速度の差分が所定範囲内)であることから同一物標である可能性が非常に高いため、信頼度の値が高いID:D-1の情報を選択し、信頼度の値が低いID:C-1の情報を非選択とする。すなわち、通信情報取得判断部5は、取得領域内の物標情報の属性のうち、同じ種別であり、かつ位置および速度の差分が所定範囲内の2つ以上の物標情報が存在した場合、当該物標情報の信頼度の高い方を選択する。ここで、同一物標であるか否かの判定に位置と速度の差を用いているが、例えば位置のXとYのそれぞれの差が1m以内、速度のVxとVyのそれぞれの差が1km/h以内を判定の閾値とする。また、判定の閾値は物標の種別毎に異なる値に設定しても良く、さらには自車両からの距離に基づいて閾値を変更(例えば自車両から遠いほど閾値を大きく設定する)してもよい。
【0068】
以上のように異なる送信元が同じ物標を検出している可能性を考慮して、物標の信頼度の情報を用いて送信元から取得した情報を取捨選択(換言すると、物標の信頼度の情報を用いて重複している情報を排除)することで、さらに計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0069】
また、
図1の構成では通信情報取得部1で通信情報を取得後に通信情報取得領域設定部4で取得領域を設定後に通信情報取得判断部5で取得した通信情報を取捨選択する構成としたが、通信情報取得領域設定部4で取得領域を先に設定し、設定された取得領域内の通信情報を通信情報取得部1で取得する構成としてもよく、このような構成にすることで通信装置101で受信した情報が膨大な場合に通信情報取得部1で取得する通信情報量を減らすことが可能となる。
【0070】
さらに、
図1の構成では運転支援を実施するための構成としたが、自動運転を実施するための構成にも本発明は適用可能である。
図1の構成に対して、自動運転を実施する場合には、運転支援判断部7が自動運転判断部に置き換わるような構成となる。また、自動運転を実現する場合、自動運転は今後走行する経路を車線レベルで計画して制御を行うため、
図1の運転行動判断部3により細かい運転行動(次の交差点を左折する、次の分岐点を右に進行する、等)をフィードバックすることで、通信情報取得領域設定部4で設定する取得領域を効率よく設定可能となる。
【0071】
以上、具体的な動作として物標情報を例にとって説明したが、通信情報取得部1で取得する物標情報以外の信号機情報、速度規制情報、車線規制情報、渋滞情報、道路工事情報、事故情報、天候情報、路面状態情報も同様の処理を実施することにより、運転支援に必要となる情報のみを取り込むことが可能となるため、計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0072】
さらに、通信情報取得部1で取得する通信情報は、通信相手から定周期で受信することが想定される。そのため、通信情報に含まれる位置情報(例えば、物標位置、信号機位置等)から自車両との距離を算出し、距離に基づいて受信間隔を間引くことで計算負荷を下げることができる。すなわち、通信情報取得部1は、自車両と物標情報との距離が所定値以上、または自車両近傍(自車両から所定距離)に物標情報が到達するまでの時間が所定値以上の場合、物標情報の受信間隔(取得間隔)を大きくすることで、遠方の物標は時間的に間引いて取得する。具体的には、物標までの距離が200m以上の場合は受信間隔を1秒程度となるように間引き(200ms定周期であれば4回分を間引く)、100m以上200m未満の場合は0.5秒程度となるように間引き(200ms定周期であれば2回分を間引く)、100m未満の場合は間引かないで受信する、のようにする。
【0073】
以上説明したように、本実施例の制御装置100aは、地図情報と、自車に搭載されたセンサ(車載カメラ等)からの車載センサ情報と、に基づいて自車の周辺環境を認識する周辺環境認識部6と、前記周辺環境認識部6の情報に基づいて前記自車の運転支援を判断する運転支援判断部7と、前記自車の外部から発信された通信情報を取得する通信情報取得部1と、前記車載センサ情報および前記地図情報に基づいて前記自車の取り得る運転行動を判断する運転行動判断部3と、前記運転行動に基づいて前記通信情報の取得領域を設定する通信情報取得領域設定部4と、前記取得領域内に存在する前記通信情報のうち前記自車の前記運転行動に影響する可能性のある通信情報を選択する通信情報取得判断部5と、を備え、前記周辺環境認識部6は、前記通信情報取得判断部5で選択した前記通信情報を用いて前記自車の周辺環境を認識する。
【0074】
前記通信情報取得領域設定部4は、前記運転行動に基づいて前記通信情報に含まれる物標情報の取得領域を設定し、前記通信情報取得判断部5は、前記取得領域内に存在する前記物標情報のうち前記自車の前記運転行動に対して干渉する可能性のある物標情報を選択し、前記周辺環境認識部6は、前記通信情報取得判断部5で選択した前記物標情報を用いて前記自車の周辺環境を認識する。
【0075】
前記運転行動判断部3は、前記自車が走行中の道路の種別、制限速度、もしくは車線位置、前記自車が今後走行する予定の合流路もしくは交差点、または前記自車の車速の少なくとも1つに基づいて前記運転行動を判断する。
【0076】
前記通信情報取得領域設定部4は、前記運転行動が交差点通過の場合、前記交差点に前記自車が到達するまでの時間または距離に基づいて前記交差点を起点とした取得領域を設定する(
図3(a)、(b)、
図6(a)、(b))。
【0077】
前記通信情報取得領域設定部4は、前記運転行動が合流地点通過の場合、前記合流地点に前記自車が到達するまでの時間または距離に基づいて前記合流地点を起点とした取得領域を設定する(
図4(a)、(b))。
【0078】
前記通信情報取得領域設定部4は、前記運転行動の前記自車の速度または前記自車が走行中の道路の制限速度に基づいて取得領域を設定する場合、前記自車の速度または前記制限速度に応じて前記取得領域を拡大または縮小するものとし(前記自車の速度または前記制限速度が高い時は前記取得領域を広く設定し、前記自車の速度または前記制限速度が低い時は前記取得領域を狭く設定するものとし)、前記取得領域を拡大または縮小する際はその変化量に制限をかける。
【0079】
前記通信情報取得領域設定部4は、交差点または合流地点を起点とした取得領域を設定した場合、(車速変動などがあっても)前記自車が当該交差点または合流地点を通過するまでは設定された当該取得領域を削除しない。
【0080】
前記通信情報取得判断部5は、前記取得領域内の前記自車から所定範囲内の物標情報を選択する、前記自車の前後を前記自車の進行方向と同方向に移動する物標情報において前記自車から近い順に所定個数を選択する、前記自車から所定距離(前記自車近傍)に到達するまでの時間または距離が所定値以内の物標情報を選択する、または、前記物標情報の種別に基づいて選択する条件が異なる。
【0081】
前記通信情報取得判断部5は、前記自車の進行方向に対して後方に存在し、かつ前記自車の進行方向に対して逆方向に移動する物標情報を選択対象外(非選択)とする、または、前記自車が走行している道路の対向車線との間に中央分離帯が存在する場合は前記対向車線の物標情報を選択対象外(非選択)とする。
【0082】
前記通信情報取得判断部5は、前記取得領域に交差点または合流地点が含まれている場合、前記交差点または前記合流地点から所定範囲内の物標情報を選択する(
図3(a)、(b)、
図4(a)、(b)、
図6(a)、(b))。
【0083】
前記通信情報取得判断部5は、選択可能な物標情報の個数を限定する場合、前記物標情報の優先順位を前記自車との干渉リスクに基づいて決定し、前記優先順位順に選択(格納)するものとし、前記干渉リスクは、前記自車と前記物標情報との距離、前記自車から所定距離(前記自車近傍)に前記物標情報が到達するまでの時間、前記自車と前記物標情報の走行車線位置、または前記物標情報の種別の少なくとも1つに基づいて演算される。
【0084】
前記通信情報取得部1は、前記自車と前記物標情報との距離が所定値以上、または前記自車から所定距離(前記自車近傍)に前記物標情報が到達するまでの時間が所定値以上の場合、前記物標情報の取得間隔(受信間隔)を大きくする。
【0085】
前記通信情報取得判断部5は、前記取得領域内の物標情報の属性のうち、同じ種別であり、かつ位置および速度の差分が所定範囲内の2つ以上の物標情報が存在した場合、当該物標情報の信頼度の高い方を選択する。
【0086】
前記通信情報は、物標情報、信号機情報、速度規制情報、車線規制情報、渋滞情報、道路工事情報、事故情報、天候情報、または路面状態情報の少なくとも1つを含む。
【0087】
すなわち、本実施例の制御装置100aは、自車の取り得る運転行動に基づいて通信で情報を取得する領域を設定し、領域内に存在する対象のうち自車の運転行動に対して干渉する可能性のある対象を選択し、周辺環境認識部6に出力する。
【0088】
本実施例によれば、通信によって得られる情報から運転支援に必要となる情報のみを取り込むことで計算負荷やメモリ使用量の増大を防ぐことができ、適切な状況判断と運転支援を実行することが可能になる。
【0089】
なお、本実施例はいくつかのパターンを例にとって説明したが、ほかのパターンおいても本発明は適用可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の様態で実施することができる。
【0090】
また、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0091】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0092】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0093】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0094】
1 通信情報取得部
2 地図情報取得部
3 運転行動判断部
4 通信情報取得領域設定部
5 通信情報取得判断部
6 周辺環境認識部
7 運転支援判断部
8 車両制御部
9 HMI制御部
100a 制御装置(運転支援装置)
300、400、500、600 自車両