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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076753
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】鋼材切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 23/00 20060101AFI20240530BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20240530BHJP
   B23D 35/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B23D23/00 B
B23D33/02 Z
B23D35/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188467
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏光
(72)【発明者】
【氏名】赤川 幸平
(72)【発明者】
【氏名】高島 浩樹
【テーマコード(参考)】
3C039
3C051
【Fターム(参考)】
3C039DA05
3C051BB00
3C051GG05
(57)【要約】
【課題】鋼材の切断面にバリが発生しにくくなる鋼材切断装置を提供する。
【解決手段】固定刃1と、移動刃2と、押さえ部材3と、を備える。固定刃1は、鋼材Pが通る第1孔部10を有する。移動刃2は、固定刃1と隣接し、鋼材Pが通る第2孔部20を有する。押さえ部材3は、移動刃2と隣接し、鋼材Pが通る第3孔部30を有する。移動刃2は、鋼材Pが第2孔部20を通る方向D1と交差する方向D2において、固定刃1と押さえ部材3とに対して移動自在に形成される。第3孔部30は、第2孔部20と対向する。第3孔部30の開口縁部31は、鋼材Pが第3孔部30を通る方向D1から見て、第2孔部20の形状に沿って、第2孔部20を囲うように位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材が通る第1孔部を有する固定刃と、
前記固定刃と隣接し、前記鋼材が通る第2孔部を有する移動刃と、
前記移動刃と隣接し、前記鋼材が通る第3孔部を有する押さえ部材と、
を備え、
前記移動刃は、前記鋼材が前記第2孔部を通る方向と交差する方向において、前記固定刃と前記押さえ部材とに対して移動自在に形成され、
前記第3孔部は、前記第2孔部と対向し、
前記第3孔部の開口縁部は、前記鋼材が前記第3孔部を通る方向から見て、前記第2孔部の形状に沿って、前記第2孔部を囲うように位置する、
鋼材切断装置。
【請求項2】
前記第2孔部は、前記鋼材が前記第2孔部を通る方向と交差する方向で並ぶ複数の並設孔部を有し、
前記押さえ部材は、前記鋼材が前記第3孔部を通る方向から見て、前記複数の並設孔部の間に位置する変形抑制部を有する、
請求項1に記載の鋼材切断装置。
【請求項3】
前記第2孔部は、前記鋼材が前記第3孔部を通る方向から見て、U字状に形成されている、
請求項1又は2に記載の鋼材切断装置。
【請求項4】
前記第3孔部は、幅寸法の異なる二つの対向孔部を有する、
請求項3に記載の鋼材切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼材切断装置に関する。より詳細には、本開示は、固定刃と移動刃と押さえ部材とを備える鋼材切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋼材の切断装置が記載されている。この切断装置は、固定刃と移動刃とを備える。固定刃は、搬送される鋼材が通過する形状の孔型刃物を有する。移動刃は、鋼材が通過する形状の孔型刃物を有する。また移動刃は、鋼材の搬送方向と交叉する方向へ移動自在であって、鋼材の搬送方向において固定刃と並設される。移動刃および/または固定刃には、案内部材が設けられる。案内部材は、搬送時の鋼材に当接することにより、鋼材と移動刃の孔型刃物および/または固定刃の前記孔型刃物との接触を防止しながら鋼材を案内するとともに、鋼材の切断時には鋼材から離間する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3414258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような鋼材の切断装置では、鋼材の切断面にバリが発生しないことが望まれている。
【0005】
本開示の課題は、鋼材の切断面にバリが発生しにくい鋼材切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鋼材切断装置は、固定刃と、移動刃と、押さえ部材と、を備える。前記固定刃は、鋼材が通る第1孔部を有する。前記移動刃は、前記固定刃と隣接し、前記鋼材が通る第2孔部を有する。前記押さえ部材は、前記移動刃と隣接し、前記鋼材が通る第3孔部を有する。前記移動刃は、前記鋼材が前記第2孔部を通る方向と交差する方向において、前記固定刃と前記押さえ部材とに対して移動自在に形成される。前記第3孔部は、前記第2孔部と対向する。前記第3孔部の開口縁部は、前記鋼材が前記第3孔部を通る方向から見て、前記第2孔部の形状に沿って、前記第2孔部を囲うように位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第2孔部の周囲部分が第3孔部の開口縁部で補強されて歪みにくくなり、鋼材の切断面にバリが発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態を模式的に示す正面図である。
図2図2は、本開示の実施形態を模式的に示す平面図である。
図3図3は、本開示の実施形態を模式的に示す背面図である。
図4図4は、本開示の実施形態を模式的に示す側面図である。
図5図5Aは、本開示の固定刃を示す平面図である。図5Bは、本開示の固定刃を示す背面図である。
図6図6は、本開示の移動刃を示す正面図である。
図7図7Aは、本開示の押さえ部材を示す平面図である。図7Bは、本開示の押さえ部材を示す背面図である。
図8図8は、本開示のガイド部材を示す正面図である。
図9図9は、本開示の実施形態の動作を模式的に示す説明図である。
図10図10は、本開示の実施形態の動作を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、実施形態に係る鋼材切断装置100について、図面を参照して説明する。各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。図中にX軸、Y軸及びZ軸を規定する矢印を図示しているが、これらの矢印は、説明の都合上図示しているだけであり、鋼材切断装置100の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する。
【0010】
(1)概要
本実施形態に係る鋼材切断装置100は、長尺の鋼材(形鋼)Pを所望の長さに切断する装置である(図10参照)。本実施形態では、鋼材Pとして溝形鋼を示しているが、これに限定されない。鋼材切断装置100は鋼等で形成される金型であって、固定刃1と、移動刃2と、押さえ部材3と、を備える。
【0011】
固定刃1は、鋼材Pが通る第1孔部10を有する(図3参照)。移動刃2は、固定刃1と隣接する(図2参照)。また移動刃2は、鋼材Pが通る第2孔部20を有する(図1参照)。押さえ部材3は、移動刃2と隣接する(図2参照)。また押さえ部材3は、鋼材Pが通る第3孔部30を有する(図1参照)。
【0012】
移動刃2は、鋼材Pが第2孔部20を通る方向D1と交差する方向D2において、固定刃1と押さえ部材3とに対して移動自在に形成される(図9図10参照)。第3孔部30は、第2孔部20と対向する(図1参照)。第3孔部30の開口縁部31は、鋼材Pが第3孔部30を通る方向D1から見て、第2孔部20の形状に沿って、第2孔部20を囲うように位置する。
【0013】
長尺の鋼材Pは、X軸に沿って連続的に搬送されながら、鋼材切断装置100により切断される。このとき、長尺の鋼材Pは、X軸に沿って前方に送られて、第1孔部10、第2孔部20、第3孔部30の順で通過していく。そして、X軸の前方から見て、移動刃2が、X軸と交差する方向で、固定刃1と押さえ部材3とに対して移動することにより、鋼材Pが固定刃1と移動刃2とでせん断応力を受けて切断される。
【0014】
鋼材Pがせん断により切断された場合には、鋼材Pの切断面にバリ(カエリ)が発生することがある。バリが発生する一因は、二つの刃物が鋼材Pに食い込む際に、刃物が歪んで変形するためであると考えられる。
【0015】
そこで、本実施形態では、鋼材Pが第3孔部30を通る方向D1(X軸の前方)から見て、第3孔部30の開口縁部31が、第2孔部20の形状に沿って、第2孔部20を囲うように位置するように形成されている。これにより、第2孔部20の開口縁部が全長にわたって第3孔部30で補強され、鋼材Pのせん断時に第2孔部20が歪みにくくなる。従って、鋼材Pの切断面にバリが発生しにくくなる。
【0016】
(2)詳細
図2図4に示すように、本実施形態の鋼材切断装置100は、固定刃1、移動刃2及び押さえ部材3を備える。鋼材切断装置100は、さらに、ノッカー4、ケース5、移動刃保持具6、ガイド7などを備える。
【0017】
<固定刃>
固定刃1は、移動刃2とともに鋼材Pを切断する部材である。図5A図5Bに示すように、固定刃1はダイス鋼等の金属製で、平板状に形成され、正面視(X軸の前方から見て)で矩形状である。固定刃1は凹部15を有する。凹部15は、固定刃1の左右方向(Y軸に沿った方向)の両端部に設けられ、上下方向(Z軸方向に沿った方向)に延びている。
【0018】
固定刃1は第1孔部10を有する。第1孔部10は、正面視において、固定刃1の上下方向と左右方向の中央部に設けられる。第1孔部10は、前後方向(X軸に沿った方向)で、固定刃1を貫通する。第1孔部10は、正面視における形状が、切断する対象の鋼材Pの断面形状と相似形を有する。本実施形態では、切断する対象の鋼材Pが溝形鋼であるため、第1孔部10は、正面視の形状がU字状である。
【0019】
第1孔部10は、鋼材Pが通過可能な大きさに形成される。従って、第1孔部10は、第1孔部10を通過する鋼材Pと第1孔部10の開口縁部との間にクリアランスが生じる大きさに形成される。第1孔部10の幅W1は、第1孔部10の全長にわたってほぼ一定であり、例えば、鋼材Pの板厚の5%~50%大きければ良く、鋼材Pの板厚が5.8mmの場合、第1孔部10の幅W1は7.4mmとし、クリアランスを鋼材Pの板厚に対して0.8mmとすることができる。
【0020】
固定刃1は、第1刃部11を有する。第1刃部11は、第1孔部10に露出して形成される。第1刃部11は、第1孔部10の正面視の形状に沿って、第1孔部10を全周にわたって囲むように設けられる。固定刃1には、ケース5に取り付けたり、ガイド7を取り付けたりするための固定孔12が複数形成されている。
【0021】
<移動刃>
移動刃2は、固定刃1とともに鋼材Pを切断する部材である。図6に示すように、移動刃2はダイス鋼等の金属製で、平板状に形成され、正面視(X軸の前方から見て)で八角形である。移動刃2の上面は、押圧面25として形成される。押圧面25は平坦な面であって、Z軸と直交する面である。
【0022】
移動刃2の右下面は第1ガイド面26として形成される。また移動刃2の左上面は第2ガイド面27として形成される。第1ガイド面26及び第2ガイド面27は、平坦な面であって、互いに平行に形成されている。第1ガイド面26及び第2ガイド面27は、X軸に対しては傾いていないが、Y軸及びZ軸に対して傾いている。第1ガイド面26と第2ガイド面27とは、同じ角度で、傾いており、例えば、Y軸に対して45°又はZ軸に対して45°で傾いている。
【0023】
移動刃2の左下面は支持傾斜面28として形成されている。支持傾斜面28は、平坦な面であって、X軸に対しては傾いていないが、Y軸及びZ軸に対して傾いている。支持傾斜面28は、Y軸及びZ軸に対して、第1ガイド面26及び第2ガイド面27と同じ角度で傾いていてもよいし、異なる角度で傾いていてもよい。なお、移動刃2の右上面は傾斜面29として形成されている。傾斜面29は、支持傾斜面28と平行に形成され、Y軸及びZ軸に対して傾いている。
【0024】
移動刃2は第2孔部20を有する。第2孔部20は、正面視において、移動刃2の上下方向と左右方向の中央部よりもやや右上(傾斜面29に近い位置)に設けられる。第2孔部20は、前後方向(X軸に沿った方向)で、移動刃2を貫通する。第2孔部20は、正面視における形状が、切断する対象の鋼材Pの断面形状と相似形を有する。本実施形態では、切断する対象の鋼材Pが溝形鋼であるため、第2孔部20は、第1孔部10と同様に、正面視の形状がU字状である。
【0025】
第2孔部20は、二つの並設孔部21を有する。各並設孔部21は、上下方向(Z軸に沿って)に長く形成されている。二つの並設孔部21は、互いに対向している。また二つの並設孔部21は、互いに平行である。二つの並設孔部21は、連結孔部22で連結される。連結孔部22は左右方向(Y軸に沿って)長く形成されており、連結孔部22の一端が一方の並設孔部21の下端と連続し、連結孔部22の他の一端が他方の並設孔部21の下端と連続している。そして、二つの並設孔部21の間の部分は、入駒部23として形成されている。
【0026】
第2孔部20は、鋼材Pが通過可能な大きさに形成される。従って、第2孔部20は、第2孔部20を通過する鋼材Pと第2孔部20の開口縁部との間にクリアランスが生じる大きさに形成される。第2孔部20の幅W2は、第2孔部20の全長にわたってほぼ一定であり、鋼材Pの板厚の5~50%大きければ良く、例えば、鋼材Pの板厚が5.8mmの場合、第2孔部20の幅W2は7.8mmとし、クリアランスを鋼材Pの板厚に対して1.0mmとすることができる。このように、第2孔部20の幅W2は、第1孔部10の幅W1よりも大きく(W1<W2)、第2孔部20は、第1孔部10よりも大きなクリアランスを有する。
【0027】
移動刃2は、第2刃部24を有する。第2刃部24は、第2孔部20に露出して形成される。第2刃部24は、第2孔部20の正面視の形状に沿って、第2孔部20を全周にわたって囲むように設けられる。
【0028】
<押さえ部材>
押さえ部材3は、移動刃2を固定刃1側へと押すための部材である。よって、移動刃2は、固定刃1と押さえ部材3の間に移動自在に挟まれて保持される。図7A図7Bに示すように、押さえ部材3は炭素鋼などの金属製で、平板状に形成され、正面視(X軸の前方から見て)で矩形状である。押さえ部材3は凹部35を有する。凹部35は、押さえ部材3の左右方向(Y軸に沿った方向)の両端部に設けられ、上下方向(Z軸方向に沿った方向)に延びている。
【0029】
押さえ部材3は第3孔部30を有する。第3孔部30は、正面視において、押さえ部材3の上下方向と左右方向の中央部に設けられる。第3孔部30は、前後方向(X軸に沿った方向)で、押さえ部材3を貫通する。第3孔部30は、正面視における形状が、切断する対象の鋼材Pの断面形状と相似形を有する。本実施形態では、切断する対象の鋼材Pが溝形鋼であるため、第3孔部30は、第1孔部10及び第2孔部20と同様に、正面視の形状がU字状である。
【0030】
第3孔部30は、鋼材Pが通過可能な大きさに形成される。第3孔部30は、切断された鋼材Pが、第3孔部30の開口縁部に当たらない大きさに形成される。従って、第3孔部30は、第3孔部30を通過する鋼材Pと第3孔部30の開口縁部との間に大きなクリアランスが生じる大きさに形成される。
【0031】
このように本実施形態では、第1孔部10の幅W1よりも第2孔部20の幅W2が大きく、第2孔部20の幅W2よりも第3孔部30の幅W3が大きく形成されている。すなわち、本実施形態では、鋼材Pが通過する順番(第1孔部10、第2孔部20、第3孔部30の順)で、鋼材Pが通過する孔部が大きくなっている。従って、第1孔部10、第2孔部20、第3孔部30の順で、鋼材Pとのクリアランスが大きくなる。
【0032】
第3孔部30は、二つの対向孔部34を有する。各対向孔部34は、上下方向(Z軸に沿って)に長く形成されている。二つの対向孔部34は、変形抑制部33を挟んで、互いに対向している。また二つの対向孔部34は、互いに平行である。二つの対向孔部34は、接続孔部36で連結される。接続孔部36は左右方向(Y軸に沿って)長く形成されており、接続孔部36の一端が一方の対向孔部34の下端と連続し、接続孔部36の他の一端が他方の対向孔部34の下端と連続している。そして、二つの対向孔部34の間の部分は、変形抑制部33として形成されている。
【0033】
ここで、第3孔部30の幅W3は、第3孔部30の全長にわたって一定ではなく、二つの対向孔部34は、幅寸法が異なる。すなわち、二つの対向孔部34のうち、第一の対向孔部341の幅W31は、第二の対向孔部342の幅W32よりも大きく形成されている。第一の対向孔部341は、第二の対向孔部342よりも、Y軸に沿って、移動刃2の移動方向前側に位置する。つまり、移動刃2は、鋼材Pを切断する際に、Y軸において、定位置(ノッカー4で押圧される前の位置)から矢印D4の方向(図9参照)に移動するが、第一の対向孔部341は、第二の対向孔部342よりも、矢印D4が指す方向(先側)に位置する。これにより、鋼材Pが移動刃2で切断される際に、移動刃2で押されても、第一の対向孔部341の開口縁部に接触しにくくなる。
【0034】
<ノッカー>
ノッカー4は炭素鋼などの金属製であって、移動刃2を移動させるための部材である。図9に示すように、ノッカー4の下面は、移動刃2の上面に当たっている。そして、ノッカー4に上方から力を加えると、ノッカー4は下動し、それに伴って、移動刃2が左斜め下方向に移動する。また、上方からの力をノッカー4からなくすと、左斜め下方向に移動した移動刃2が移動刃保持具6により押されて元の状態へ戻るように、右斜め上方に移動し、それに伴って、ノッカー4は上動する。
【0035】
<ケース>
ケース5は圧延鋼板等の金属製であって、固定刃1、移動刃2、押さえ部材3、ノッカー4及び移動刃保持具6を一体的に保持するものである。ケース5は、図1図4に示すように、土台部50と上蓋51と二つのサイド部材52とを備えている。
【0036】
土台部50は、鋼材切断装置100の下部に設けられており、土台部50の上面には浅い凹部501が形成されている。そして、凹部501に、固定刃1、押さえ部材3、二つのサイド部材52などが設置されている。
【0037】
上蓋51は、鋼材切断装置100の上部に設けられており、上蓋51の下面には浅い凹部511が形成されている。そして、凹部511に、固定刃1、押さえ部材3、二つのサイド部材52などが設置されている。また上蓋51には、ノッカー孔部512が設けられている。ノッカー孔部512は、上蓋51を上下方向(Z軸に沿う方向)で貫通している。またノッカー孔部512は、上蓋51の前後方向(X軸に沿う方向)及び左右方向(Y軸に沿う方向)の中央部に設けられている。ノッカー孔部512には、ノッカー4が差し込まれて設けられており、ノッカー4は、上蓋51に対して上下移動自在に形成されている。
【0038】
サイド部材52は、鋼材切断装置100の側端部に一つずつ設けられている。サイド部材52は平面視でコ字状に形成され、前部523と、後部521及び側部522とを有している。前部523は、押さえ部材3の凹部35に嵌め込まれる(図2参照)。後部521は、固定刃1の凹部15に嵌め込まれる(図2参照)。
【0039】
また一方のサイド部材52にはバネ孔524が設けられている。バネ孔524は、移動刃保持具6のバネ部材60を配置する孔である。バネ孔524は、左右方向(Y軸に沿う方向)で側部522を貫通している。
【0040】
<移動刃保持具>
移動刃保持具6は、移動刃2を保持する部材である。移動刃保持具6は、バネ部材60と、受け部材61と、バネ保持部材62とを備えている。バネ部材60は、鋼等の金属バネであって、コイルばねで形成されている。バネ部材60は、バネ孔524に通して設けられており、左右方向に沿って伸縮自在に形成されている。受け部材61は移動刃2を左斜め下方から支持する部材である。
【0041】
受け部材61は、正面視で三角形であり、移動刃2の厚みとほぼ同じ厚み(X軸に沿った方向の寸法)を有している。受け部材61は、支持斜面611を有している。支持斜面611は、移動刃2の支持傾斜面28と対向して配置される。また受け部材61の側面には、バネ部材60の一端が接続されている。受け部材61は、土台部50の凹部501上に左右方向に沿ってスライド移動自在に配置されている。
【0042】
バネ保持部材62は、バネ孔524を設けた一方のサイド部材52の外面に設けられている。バネ保持部材62には、収容凹部621が形成されている。収容凹部621は、バネ保持部材62をサイド部材52に取り付けた状態で、バネ孔524と連通するように形成されている。収容凹部621には、バネ孔524から外側に突出するバネ部材60の他端(受け部材61と反対側の端部)が収容されている。バネ保持部材62は、サイド部材52に対して着脱自在であり、バネ保持部材62をサイド部材52から取り外すと、バネ部材60が露出してバネ孔524から取り外せるように形成されている。
【0043】
<ガイド>
ガイド7は、移動刃2の移動をガイドするものである。図8に示すように、ガイド7はダイス鋼等の金属製であって、正面視で三角形に形成されている。ガイド7は、固定刃1に対して二つ設けられている。一方のガイド7は、上ガイド72であり、正面視において、固定刃1の左斜め上に取り付けられている(図9参照)。一方のガイド7は、下ガイド71であり、正面視において、固定刃1の右斜め下に取り付けられている(図9参照)。なお、図8には、4つのガイド7を示すが、このうち二つのガイド7(71、72)が一つの鋼材切断装置100に使用される。
【0044】
上ガイド72は、上ガイド面721を有する。上ガイド面721は、移動刃2の左上面の第2ガイド面27と対向して配置される。下ガイド71は、下ガイド面711を有する。下ガイド面711は、移動刃2の右上面の第1ガイド面26と対向して配置される。
【0045】
<鋼材切断装置の動作>
まず、動作前の鋼材切断装置100は、以下のように構成されている。
【0046】
固定刃1、押さえ部材3、受け部材61及び二つのサイド部材52が土台部50の凹部501に配置されている。固定刃1と押さえ部材3とは、移動刃2を挟んでX軸の方向で対向配置されている。すなわち、移動刃2は、間隙502を介して土台部50の上方に配置されている。図9に示すように、移動刃2の支持傾斜面28は受け部材61の支持斜面611と接触している。従って、移動刃2は受け部材61で支持されている。受け部材61は、バネ部材60の弾性力で移動刃2の方に押されている。従って、移動刃2は、自重では下方に移動せず、間隙502が保たれている。
【0047】
また移動刃2は、固定刃1に取り付けた二つのガイド71、72の間に保持されている。上ガイド72の上ガイド面721は、移動刃2の左上面の第2ガイド面27と対向している。下ガイド71の下ガイド面711は、移動刃2の右上面の第1ガイド面26と対向している。
【0048】
固定刃1の前面(正面)と移動刃2の後面(背面)とは、前後方向(X軸に沿った方向)で対向し、接触して配置されている。また、図3に示すように、固定刃1の第1孔部10と移動刃2の第2孔部20とは、前後方向で対向配置されている。第1孔部10と第2孔部20とは、ほぼ同じ大きさでほぼ同じ形状をしているので、重なって配置される。
【0049】
押さえ部材3の後面(背面)と移動刃2の前面(正面)とは、前後方向(X軸に沿った方向)で対向し、接触して配置されている。
【0050】
また、図1に示すように、押さえ部材3の第3孔部30と移動刃2の第2孔部20とは、前後方向で対向配置されている。第3孔部30は、第2孔部20よりも大きいので、正面視において(X軸の方向から見て)、第3孔部30は、第2孔部20の形状に沿って、第2孔部20を囲うように位置している。第2孔部20は、移動刃2の移動に伴って、第3孔部30に対して移動しても、第3孔部30の開口縁部が第2孔部20に重ならないように、十分な大きさを有している。また押さえ部材3の変形抑制部33は、移動刃2の入駒部23(二つの並設孔部21の間の部分)の前方に位置している。変形抑制部33は、入駒部23の前面に対向し、接触して配置されている。
【0051】
上蓋51は、固定刃1、移動刃2、押さえ部材3及び二つのサイド部材52の上方に配置されている。上蓋51のノッカー孔部512には、ノッカー4が上下動自在に設けられている。ノッカー4の上端部は、上蓋51の上方に位置している。ノッカー4の下端部は、上蓋51の下方に位置し、移動刃2の押圧面25と接触している。
【0052】
固定刃1は、土台部50、上蓋51及び二つのサイド部材52とボルト等の締結具で締結されている。また押さえ部材3は、土台部50、上蓋51及び二つのサイド部材52とボルト等の締結具で締結されている。
【0053】
次に、鋼材切断装置100の動作を説明する。
【0054】
鋼材切断装置100は、長尺の鋼材Pを連続的に搬送しながら、所望の長さで鋼材Pを切断する。図10に示すように、長尺の鋼材Pは、X軸の方向に沿った一方向(方向D1の矢印向き)に連続して搬送されている。鋼材Pは、第1孔部10と第2孔部20と第3孔部30とを通って搬送されている。そして、鋼材Pの所望の切断位置が第1孔部10と第2孔部20との間に位置したときに、移動刃2を固定刃1と押さえ部材3とに対して移動させる。
【0055】
鋼材Pの切断時の移動刃2は、図9に示すように、Y-Z面において、鋼材Pの搬送方向(第1孔部10と第2孔部20と第3孔部30とを通る方向)と交差する方向(方向D2の矢印向き)に移動する。このとき、移動刃2は、ノッカー4により下動する。すなわち、プレス機等によりノッカー4を上方から押すと(矢印D3参照)、ノッカー4の下端部により移動刃2が押され、移動刃2が左斜め下方向(矢印D2の方向)に移動する。ノッカー4の押圧力は、移動刃2の左右方向の略中央部にZ軸に沿ってまっすぐかかるが、移動刃2は第1ガイド面26と下ガイド71の下ガイド面711の傾斜方向(矢印D2の方向)に沿って、斜め下方に移動する。また、移動刃2の移動により、受け部材61は、支持斜面610が移動刃2の支持傾斜面28で押されて、Y軸に沿った方向(矢印D4の方向で、バネ部材60が縮む方向)に押される。これにより、バネ部材60の弾性力に反して受け部材61を押しながら、移動刃2は、間隙502の上下寸法が狭くなるように移動する。
【0056】
上記のように、移動刃2が、鋼材Pの搬送方向と交差する方向に移動すると、移動刃2の移動前には、重なって対向していた第1孔部10と第2孔部20が位置ずれする。すなわち、第1孔部10に対して第2孔部20が左斜め下方向(矢印D2の方向)に移動する。これにより、第1孔部10の第1刃部11と第2孔部20の第2刃部24とで鋼材Pが挟まれ、第1刃部11と第2刃部24とのせん断により鋼材Pが切断される。所定の寸法に切断された鋼材Pは、第3孔部30を通って鋼材切断装置100の前方に搬送される。
【0057】
鋼材Pを切断した後(直後)に、ノッカー4を押すことを停止し、ノッカー4を押し下げている押圧力を取り除く。これにより、下動している移動刃2は、バネ部材60の弾性力により、元の位置(下動する前の位置)に戻される。すなわち、バネ部材60の弾性力により、受け部材61がY軸に沿って押され、矢印D4の向きと反対向きに移動する。これにより、受け部材61で移動刃2が押されて上動する。この場合、移動刃2が右斜め上方向(矢印D2の方向と反対向き)に移動する。つまり、移動刃2は第1ガイド面26と下ガイド71の下ガイド面711の傾斜方向に沿って斜め上方に移動する。そして、移動刃2がノッカー4を押し上げるとともに、正面視で、第1孔部10と第2孔部20とが重なって対向する。この後、鋼材Pの搬送方向において、所定の寸法に切断された鋼材Pよりも後側の部分の鋼材Pが、第1孔部10、第2孔部20、第3孔部30に順次通っていく。このようにして、長尺の鋼材Pを連続して所定の寸法に切断することができる。
【0058】
そして、本実施形態の鋼材切断装置100では、第2孔部20の周囲部分が第3孔部30の開口縁部31で補強されて歪みにくくなり、鋼材Pの切断面にバリが生じにくい。特に、移動刃2の入駒部23は、二つの並設孔部21に挟まれているため、入駒部23はその上端でしか支持されていない。従って、鋼材Pを切断する際のせん断力(の反力)で入駒部23は歪んで変形しやすい。そこで、本実施形態では、変形抑制部33を押さえ部材3に設け、変形抑制部33を入駒部23の前面(正面)に接触させるようにして配置している。これにより、入駒部23の歪が変形抑制部33で抑えられて変形しにくくなり、鋼材Pの切断面にバリが生じにくくなる。
【0059】
また本実施形態の鋼材切断装置100では、移動刃2が、正面視(Y-Z面内)において、斜め45°移動するように、カムの原理を利用して移動刃2の左右方向の略中央部をノッカー4でZ軸に沿った垂直方向に押圧して、移動刃2を下方向に移動させている。このため、ケース5(特に、移動刃保持具6を設けていないサイド部材52)に大きな力がかかりにくい。従って、ケース5が歪みにくくなって、移動刃2の移動がスムーズに行なえて、鋼材Pの切断面にバリが生じにくい。
【0060】
また本実施形態の鋼材切断装置100は、ノッカー4の位置を鋼材切断装置100のセンターに配置し、プレスの稼働方向と同軸に移動刃2へ直接、荷重をかけることにより、軸の垂直方向の反力を減少させる。また、クリアランス保持のために移動刃2を抑えている押さえ部材3は、鋼材Pのせん断時に、移動刃2の入駒部23の根元の歪みを抑制するための変形抑制部33を有するため、より安定して第3孔部30と鋼材Pとのクリアランスを保持することができる。
【0061】
本実施形態の鋼材切断装置100は、厚板(板厚4.5mm以上)の鋼材Pの切断に特に有効な技術である。
【0062】
(3)変形例
実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0063】
鋼材切断装置100は、第1孔部10、第2孔部20及び第3孔部30の形状を変更することにより、様々な断面形状を有する鋼材Pに対応することができる。例えば、鋼材Pとしては、山形鋼、リップ溝形鋼、H形鋼、T形鋼、I形鋼、C形鋼などを例示することができ、さらに複雑な断面形状を有する鋼材であってもよい。
【0064】
上記の実施形態では、移動刃2の左右方向の略中央部をノッカー4で押圧して下方向に移動させていたが、これに限定されない。例えば、移動刃2の右斜め上方の傾斜面29をノッカー4で押圧しても良い。
【0065】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る鋼材切断装置(100)は、固定刃(1)と、移動刃(2)と、押さえ部材(3)と、を備える。固定刃(1)は、鋼材(P)が通る第1孔部(10)を有する。移動刃(2)は、固定刃(1)と隣接し、鋼材(P)が通る第2孔部(20)を有する。押さえ部材(3)は、移動刃(2)と隣接し、鋼材(P)が通る第3孔部(30)を有する。移動刃(2)は、鋼材(P)が第2孔部(20)を通る方向(D1)と交差する方向(D2)において、固定刃(1)と押さえ部材(3)とに対して移動自在に形成される。第3孔部(30)は、第2孔部(20)と対向する。第3孔部(30)の開口縁部(31)は、鋼材(P)が第3孔部(30)を通る方向(D1)から見て、第2孔部(20)の形状に沿って、第2孔部(20)を囲うように位置する。
【0066】
この態様によれば、第2孔部(20)の周囲部分が第3孔部(30)の開口縁部(31)で補強されて歪みにくくなり、鋼材(P)の切断面にバリが発生しにくくなる。
【0067】
第2の態様は、第1の態様に係る鋼材切断装置(100)であって、第2孔部(20)は、鋼材(P)が第2孔部(20)を通る方向(D1)と交差する方向で並ぶ複数の並設孔部(21)を有する。押さえ部材(3)は、鋼材(P)が第3孔部(30)を通る方向(D1)から見て、複数の並設孔部(21)の間に位置する変形抑制部(33)を有する。
【0068】
この態様によれば、複数の並設孔部(21)の間の部分が変形抑制部(33)により補強されて歪みにくくなり、鋼材(P)の切断面にバリが発生しにくくなる。
【0069】
第3の態様は、第1又は2の態様に係る鋼材切断装置(100)であって、第2孔部(20)は、鋼材(P)が第3孔部(30)を通る方向(D1)から見て、U字状に形成されている。
【0070】
この態様によれば、U字状の鋼材(P)の切断面にバリが発生しにくくなる。
【0071】
第4の態様は、第3の態様に係る鋼材切断装置(100)であって、第3孔部(30)は、幅寸法の異なる二つの対向孔部(34)を有する。
【0072】
この態様によれば、U字状の鋼材(P)が第3孔部(30)の開口縁部に接触しにくくなる。
【符号の説明】
【0073】
100 鋼材切断装置
1 固定刃
10 第1孔部
2 移動刃
20 第2孔部
21 並設孔部
3 押さえ部材
30 第3孔部
31 開口縁部
33 変形抑制部
34 対向孔部
P 鋼材
図1
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