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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076788
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】サーボシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
H02P27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188550
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海田 僧太
(72)【発明者】
【氏名】大野 悌
(72)【発明者】
【氏名】福原 仁
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA18
5H505BB05
5H505CC05
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505FF07
5H505GG01
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA07
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ18
5H505JJ22
5H505JJ23
5H505JJ24
5H505JJ26
5H505KK05
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】制御装置と、複数のサーボドライバとを含むサーボシステムにおいて、スイッチングに起因するノイズを抑制する。
【解決手段】制御装置と、複数のサーボドライバとを含み、該複数のサーボドライバのそれぞれは、該制御装置からの動作指令に従って複数のモータを同期制御可能に構成された、サーボシステムであって、複数のサーボドライバのそれぞれは、サーボ信号生成部と、パルス変調されたPWM制御信号を生成するPWM演算部と、インバータと、を備える。そして、PWM演算部は、サーボドライバ及びモータによる回路構成に関連して設定される所定パラメータを用いて、指令信号が低電圧領域に属する場合に複数のモータに対応する制御軸毎に異なる、指令信号に重畳させる重畳信号を生成する第1処理と、重畳信号を指令信号に加算して所定のキャリア信号と比較することで、PWM制御信号を生成する第2処理と、を実行するように構成される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、複数のサーボドライバとを含み、該複数のサーボドライバのそれぞれは、該制御装置からの動作指令に従って複数のモータを同期制御可能に構成された、サーボシステムであって、
前記複数のサーボドライバのそれぞれは、
前記動作指令に基づいて、対応する前記モータのための指令信号を生成するサーボ信号生成部と、
前記サーボ信号生成部によって生成された前記指令信号に基づいて、パルス変調されたPWM制御信号を生成するPWM演算部と、
前記PWM演算部によって生成された前記PWM制御信号に基づいてスイッチング素子をスイッチングすることで前記モータを駆動する駆動電圧を生成するインバータと、
を備え、
前記PWM演算部は、
前記サーボドライバ及び前記モータによる回路構成に関連して設定される所定パラメータを用いて、前記指令信号が低電圧領域に属する場合に前記複数のモータに対応する制御軸毎に異なる、前記指令信号に重畳させる重畳信号を生成する第1処理と、
前記重畳信号を前記指令信号に加算して所定のキャリア信号と比較することで、前記PWM制御信号を生成する第2処理と、
を実行するように構成される、
サーボシステム。
【請求項2】
前記所定パラメータは、前記インバータでのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定される、
請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項3】
前記所定パラメータは、前記複数のモータに対応する制御軸毎に異なる値が設定される、
請求項1に記載のサーボシステム。
【請求項4】
前記PWM演算部は、前記モータの各相に対応する前記指令信号の値と、前記所定パラメータの値との大小を比較して抽出される、該指令信号の値と該所定パラメータの値の何れか一つに関連する所定値を、前記重畳信号に含ませることで前記第1処理を実行する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のサーボシステム。
【請求項5】
前記モータは三相交流モータであって、
前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号の値と前記所定パラメータの値との中から最大値と最小値の少なくとも一方を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値とする、
請求項4に記載のサーボシステム。
【請求項6】
前記モータは三相交流モータであって、
前記PWM演算部は、前記第2処理で、二相変調方式によって前記PWM制御信号を生成し、
前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号における最大値及び最小値のそれぞれの絶対値の大小に基づいて、該モータの各相に対応する該指令信号の値と該所定パラメータの値との中から最大値又は最小値を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値とする、
請求項4に記載のサーボシステム。
【請求項7】
前記モータは三相交流モータであって、
前記PWM演算部は、前記第2処理で、二相変調方式によって前記PWM制御信号を生成し、
前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号及び前記所定パラメータにおける最大値及び最小値のそれぞれの絶対値の大小に基づいて、該モータの各相に対応する該指令信号の値と該所定パラメータの値との中から最大値又は最小値を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値とする、
請求項4に記載のサーボシステム。
【請求項8】
前記モータは三相交流モータであって、
前記重畳信号は、前記モータの各相に対応する前記指令信号の第3次高調波であって、
前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号の振幅値と前記所定パラメータの値の中から最大値を抽出し、その抽出された値に関連する値を、前記第3次高調波に含まれる前記所定値とする、
請求項4に記載のサーボシステム。
【請求項9】
前記所定パラメータの値は、時間経過とともに変動しない固定値である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のサーボシステム。
【請求項10】
前記所定パラメータの値は、時間経過とともに変動する変動値である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のサーボシステム。
【請求項11】
前記所定パラメータの値は、前記制御装置に接続されている前記複数のサーボドライバ及び前記複数のモータによる回路構成に基づいて自動的に決定される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のサーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で用いられるロボットや設備機械には多くのモータが組み込まれ、各対象物のアクチュエータとして利用されている。一般に、上位の制御装置からの駆動指令に従ってモータの駆動電流を生成するドライバにおいて、PWM制御方式による電力変換が行われるインバータが備えられている。PWM制御方式では、モータの各相(例えば、三相モータの場合はU相、V相、W相)を流れる電流を疑似的に正弦波状に制御することで、モータから出力されるトルクを自在にコントロールすることができる。しかしインバータにおけるスイッチングに起因して種々のノイズが発生し、その低減が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、モータが低駆動状態であると判断されたときに、ドライバにおけるキャリア信号との比較対象となる指令信号に、制御軸ごとに異なる信号を重畳させる構成が採用されている。当該構成により、インバータでのスイッチングのタイミングが制御軸毎にずれることになり、各軸で発生するノイズの重なり合いが抑制されることができる。また、特許文献2にも、ドライバにおいて、指令信号に所定の信号を重畳させたうえでキャリア信号と比較する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6528138号公報
【特許文献2】特開2011-211777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
制御装置と、複数のサーボドライバ(以下、単に「ドライバ」ともいう)とを含むサーボシステムにおいて、各サーボドライバにより駆動されるモータについて同期制御を行う場合がある。その複数のモータの同期制御が行われている状態で、各制御軸に対応するドライバのインバータ(電力変換装置)におけるスイッチングのタイミングが重なってしまったり、もしくは極めて近いタイミングとなってしまったりした場合、各スイッチング制御に起因したノイズが大きくなり得る。
【0006】
特に、モータの駆動電圧が低い低駆動状態でスイッチングのタイミングが重なる傾向があることから、従来技術ではモータが低駆動状態であるか否かを判断した上で、ノイズ抑制のための信号重畳が行われている。しかし、このような判断処理を介する場合、判断処理にある程度の処理時間を要することから、モータの駆動状態の変化に応じた円滑なPWM制御が阻害されるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、制御装置と、複数のサーボドライバとを含むサーボシステムにおいて、スイッチングに起因するノイズの好適な抑制を図る技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の一側面に係るサーボシステムは、制御装置と、複数のサーボドライバとを含み、該複数のサーボドライバのそれぞれは、該制御装置からの動作指令に従って複数のモータを同期制御可能に構成された、サーボシステムである。そして、前記複数のサーボド
ライバのそれぞれは、前記動作指令に基づいて、対応する前記モータのための指令信号を生成するサーボ信号生成部と、前記サーボ信号生成部によって生成された前記指令信号に基づいて、パルス変調されたPWM制御信号を生成するPWM演算部と、前記PWM演算部によって生成された前記PWM制御信号に基づいてスイッチング素子をスイッチングすることで前記モータを駆動する駆動電圧を生成するインバータと、を備える。更に、前記PWM演算部は、前記サーボドライバ及び前記モータによる回路構成に関連して設定される所定パラメータを用いて、前記指令信号が低電圧領域に属する場合に前記複数のモータに対応する制御軸毎に異なる、前記指令信号に重畳させる重畳信号を生成する第1処理と、前記重畳信号を前記指令信号に加算して所定のキャリア信号と比較することで、前記PWM制御信号を生成する第2処理と、を実行するように構成される。
【0009】
このように構成されるサーボシステムでは、複数のサーボドライバのそれぞれにおいて、サーボ信号生成部により制御装置からの動作指令に従ってモータを駆動するための指令信号が生成され、当該指令信号を基にしてPWM演算部より当該インバータを実際に駆動するためのPWM制御信号が生成され、当該PWM制御信号を基にしてインバータがモータを駆動するための駆動電圧を生成する。そして、当該サーボシステムでは、これらの複数のサーボドライバによって、対応するモータの同期制御が実行可能である。同期制御において、特に各制御軸のモータの動きが同じもしくは近い低電圧での駆動状態では、インバータでのスイッチングのタイミングが重なりやすくなり、ノイズの増大を招く可能性が高くなる。
【0010】
そこで、上記サーボシステムにおけるサーボドライバは、PWM演算部により第1処理と第2処理を行うように構成される。第1処理では、サーボドライバ及びモータによる回路構成に関連して設定される所定パラメータを用いて、指令信号に重畳させる重畳信号を生成する。当該所定パラメータは、制御軸毎に異なる値となるように設定されるのが好ましく、その結果、指令信号が低電圧領域に属する場合には当該重畳信号も制御軸毎に異なることとなる。なお、所定パラメータは、ノイズ発生の電気的要因である、モータの駆動電力が供給されるサーボドライバとモータによる電気的な回路構成を考慮して適宜設定される。所定パラメータは、ユーザにより任意の値に設定されてもよく、サーボドライバによって自動的に設定されてもよい。一方で、指令信号が低電圧領域に属しない場合には、ノイズ増大の可能性は抑えられるため、当該重畳信号の当初の目的を達成させるべく重畳信号は制御軸毎に異ならないのが好ましい。続いて、第2処理では、指令信号に重畳信号が加算されて、その加算後の信号が所定のキャリア信号と比較されることで、インバータを駆動するためのPWM制御信号が生成される。
【0011】
このような構成を有するPWM演算部を各サーボドライバが有することで、指令信号が低電圧領域に属しノイズが増大しやすい場合であっても、各制御軸でのインバータでのスイッチングのタイミングを好適にずらすことができる。その結果、複数のモータを制御対象とするサーボシステムにおいて、スイッチングに起因するノイズの好適な抑制を図ることができる。
【0012】
ここで、上記のサーボシステムにおいて、前記所定パラメータは、前記インバータでのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定されてもよい。すなわち、モータの駆動電力が供給されるサーボドライバとモータによる電気的な回路構成は、スイッチングノイズの大きさと継続時間とにある程度の相関を有していることに着目して、各制御軸に対応する所定パラメータの値を設定するものである。
【0013】
また、上述までのサーボシステムにおいて、前記PWM演算部は、前記モータの各相に対応する前記指令信号の値と、前記所定パラメータの値との大小を比較して抽出される、該指令信号の値と該所定パラメータの値の何れか一つに関連する所定値を、前記重畳信号
に含ませることで前記第1処理を実行してもよい。当該所定値は、上記大小の比較により抽出される値、すなわち指令信号の値と該所定パラメータの値の何れかの値自体でもよく、別法として、その抽出された値に対して更に何らかの処理を施した値であってもよい。このような構成を採用することで、所定パラメータとの比較処理を通して、指令信号が低電圧領域に属しているか否かに応じて、制御軸毎に重畳信号を好適に設定することができる。
【0014】
なお、より具体的に、PWM演算部の形態について言及する。第1の形態では、前記モータは三相交流モータであって、前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号の値と前記所定パラメータの値との中から最大値と最小値の少なくとも一方を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値としてもよい。
【0015】
第2の形態では、前記モータは三相交流モータであって、前記PWM演算部は、前記第2処理で、二相変調方式によって前記PWM制御信号を生成し、前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号における最大値及び最小値のそれぞれの絶対値の大小に基づいて、該モータの各相に対応する該指令信号の値と該所定パラメータの値との中から最大値又は最小値を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値としてもよい。更に、同じく、第3の形態では、前記PWM演算部は、前記第2処理で、二相変調方式によって前記PWM制御信号を生成する場合、前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号及び前記所定パラメータにおける最大値及び最小値のそれぞれの絶対値の大小に基づいて、該モータの各相に対応する該指令信号の値と該所定パラメータの値との中から最大値又は最小値を抽出し、その抽出された値に関連する値を前記所定値としてもよい。
【0016】
また、第4の形態では、前記モータは三相交流モータであって、前記重畳信号は、前記モータの各相に対応する前記指令信号の第3次高調波であって、前記PWM演算部は、前記第1処理で、前記モータの各相に対応する前記指令信号の振幅値と前記所定パラメータの値の中から最大値を抽出し、その抽出された値に関連する値を、前記第3次高調波に含まれる前記所定値としてもよい。
【0017】
なお、上述の4つの形態はあくまでも例示であり、PWM演算部をこれ以外の形態で実現しても構わない。
【0018】
ここで、上述までのサーボシステムにおいて、所定パラメータの値は、時間経過とともに変動しない固定値であってもよく、時間経過とともに変動する変動値であってもよい。すなわち、本サーボシステムにおいては、所定パラメータの設定は柔軟に行い得る。また、前記所定パラメータの値は、前記制御装置に接続されている前記複数のサーボドライバ及び前記複数のモータによる電気的な回路構成に基づいて自動的に決定されてもよい。所定パラメータが自動的に設定されることで、ノイズ抑制を効果的に図りながらユーザの利便性を大きく向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
制御装置と、複数のサーボドライバとを含むサーボシステムにおいて、スイッチングに起因するノイズの好適な抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願開示のサーボシステムの概略構成を示す図である。
図2図1に示すサーボシステムに含まれるドライバの電気的構成の概略を示す図である。
図3】本願開示のドライバが有するフィードバック系の制御構造を示す図である。
図4】本願開示のドライバが有する電流制御に関する制御構造を示す図である。
図5】ドライバに含まれるインバータにおける相電圧と線間電圧の挙動を説明するための図である。
図6】ドライバで駆動されるモータへの指令信号が低電圧である場合と高電圧である場合とにおける、インバータでの相電圧の推移と、異なる2つの制御軸における中性点電圧の推移を示す第1の図である。
図7】ドライバで駆動されるモータへの指令信号が低電圧である場合と高電圧である場合とにおける、インバータにおける相電圧の推移と、異なる2つの制御軸における中性点電圧の推移を示す第2の図である。
図8図7に対応する指令信号が低電圧である場合において、異なる2つの制御軸におけるインバータでの各相のスイッチングの挙動を示す図である。
図9図7に対応する指令信号が高電圧である場合において、異なる2つの制御軸におけるインバータでの各相のスイッチングの挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係るサーボシステムの概略構成を示し、図2に、サーボシステムに含まれるドライバ10の電気的な概略構成を示す。
【0022】
<第1の実施形態>
図1に示してあるように、本実施形態に係るサーボシステムは、上位側の制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)5と複数のドライバ10を含む。各ドライバ10には、それぞれの制御対象であるモータ20が接続されており、一のドライバ10とそれに対応する一のモータ20によって、1つの制御軸が形成される。したがって、図1に示すサーボシステムでは、PLC5から各制御軸のドライバ10に対して対応する動作指令が提供され、当該動作指令に基づいて各ドライバ10が対応するモータ20を駆動するための駆動電圧を生成する。
【0023】
当該サーボシステムでは、直流電源装置30と複数のドライバ10との間を、電力供給路35にて接続している。直流電源装置30は、所定の直流電圧を出力する電源であり、三相交流電源50からの三相交流を直流電圧に変換するユニットであってもよく、又は、単相交流を直流電圧に変換するユニットであってもよい。また、直流電源装置30は、ダイオードを組み合わせた整流回路(例えば、全波整流回路)であっても、スイッチング素子が用いられたAC-DCコンバータ(例えば、電源回生コンバータ)であってもよい。また、図1に示す構成に代えて、各制御軸のドライバ10に対して、対応する一の直流電源装置30が接続される構成も採用できる。さらに、電力供給路35は、二次電池に接続されていてもよい。
【0024】
ここで、図2に示すように、ドライバ10は、インバータ11と制御部12とを備えている。インバータ11は、電力供給路35を介して入力される直流電源装置30からの直流電圧を三相交流に変換するための回路である。インバータ11は、プラス側の電力線とマイナス側の電力線との間に、U相用のレグ、V相用のレグ及びW相用のレグを並列接続した構成を有しており、ドライバ10には、インバータ11の各レグの出力電流を測定するための電流センサ28が設けられている。
【0025】
制御部12は、PLC5からの動作指令に従って、モータ20をサーボ制御するためにインバータ11をPWM(Pulse Width Modulation)制御するユニットである。制御部12は、プロセッサ(マイクロコントローラ、CPU等)とその周辺回路とから構成されており、制御部12は、各電流センサ28からの信号、モータ20に取り付けられたエンコーダ21(アブソリュートエンコーダやインクリメンタルエンコーダであり図3を参照)
からの信号等が入力されている。
【0026】
図1に示すように、電力供給路35は、直流電源装置30からの電力(電流)を、サーボシステム内の各ドライバ10に分配供給できるように複数の電力ケーブルを組み合わせた給電路である。電力供給路35の各ドライバ10との接続部分(各ドライバ10の電源端子間)には、通常、平滑コンデンサ18が設けられる。
【0027】
ここで、図2に従って、本願におけるドライバ10又はモータ20における相電圧、線間電圧、中性点電圧を次のように定義する。ここで、中性点は、三相巻線を有するモータ20における各相(U相、V相、W相)が結線される連結点である。そして、相電圧は、中性点を基準とした各相の電圧であり、U相、V相、W相の相電圧はVu、Vv、Vwで表される。線間電圧は、2つの相において他の相を基準とした当該2つの相間の電圧であり、U相とV相間、V相とW相間、W相とU相間の線間電圧はVuv、Vvw、Vwuで表される。中性点電圧は、接地されているマイナス側を基準とした中性点の電圧であり、VNNで表される。更に、電力供給路35におけるプラス側とマイナス側との間の電圧をPN間電圧Vpnで表すものとする。
【0028】
ここで、図3に基づいて、ドライバ10の制御部12が有するフィードバック系の制御構造について説明する。制御部12のフィードバック系は、位置制御器41、速度制御器42、電流制御器43を備えている。当該フィードバック系が、本願開示のサーボ信号生成部に相当する。位置制御器41は、例えば、比例制御(P制御)を行う。具体的には、PLC5からの位置指令P_refとモータ20の位置現在値P_actとの偏差である位置偏差に、所定の位置比例ゲインを乗ずることにより速度指令V_refを算出する。なお、位置現在値P_actは、エンコーダ21の出力が位置検出器45に入力されて得られる、モータ20の現在位置を意味するパラメータである。
【0029】
速度制御器42は、例えば、比例積分制御(PI制御)を行う。具体的には、位置制御器41により算出された速度指令V_refとモータ20の速度現在値V_actとの偏差である速度偏差の積分量に所定の速度積分ゲインを乗じ、その算出結果と当該速度偏差の和に所定の速度比例ゲインを乗ずることにより、トルク指令τ_refを算出する。また、速度制御器42はPI制御に代えてP制御を行ってもよい。なお、速度現在値V_actは、位置検出器45の出力が速度検出器46に入力されて得られる、モータ20の現在速度を意味するパラメータである。
【0030】
電流制御器43は、速度制御器42により算出されたトルク指令τ_refと、モータ20の位置現在値P_act及び速度現在値V_actと、インバータ11からモータ20に供給されている駆動電流とに基づいて電流指令を生成し、当該電流指令に基づいて三相交流モータの各相に対応する電圧指令(PWM制御信号)をインバータ11に出力する。当該電圧指令を受けたインバータ11は、PWM制御によってモータ20の各相(U相、V相、W相)に駆動電圧を印加しモータ20を駆動制御する。なお、モータ20に供給されている駆動電流は、電流センサ28により検出される。図3においては、モータ20の各相に対応する構成は簡略化されて記載されているが、実際には電流センサ28は、モータ20の各相の巻線に流れる電流を検出し、その各相の電流の値を電流制御器43に返している。電流制御器43は、トルク指令に関するフィルタ(1次のローパスフィルタ)や一又は複数のノッチフィルタを含んでもよい。
【0031】
次に、図4に基づいて、電流制御器43を含む、電流制御に関する制御構造について説明する。電流制御器43においてはベクトル制御が行われている。そこで、電流制御器43に入力されたトルク指令τ_refは、先ず電流指令演算器51に入力される。電流指令演算器51には、更にモータ20の速度現在値V_actが入力され、d軸電流指令I
d_refとq軸電流指令Iq_refが生成される。そして、d軸電流指令Id_refと、モータ20に現在流れているd軸電流Idとの偏差がd軸電流制御器52に入力され、q軸電流指令Iq_refと、モータ20に現在流れているq軸電流Iqとの偏差がq軸電流制御器53に入力される。なお、モータ20に現在流れているd軸電流Idとq軸電流Iqは、電流センサ28によって検出されたモータ20のU相、V相、W相を流れる電流Iu、Iv、Iwが電流座標変換器56に入力され、そこでdq変換処理を施すことで算出される。
【0032】
d軸電流制御器52は、モータ20の物性パラメータを考慮して、入力されたd軸電流の偏差から、d軸に関する電圧指令Vdを算出し、同じように、q軸電流制御器53は、モータ20の物性パラメータを考慮して、入力されたq軸電流の偏差から、q軸に関する電圧指令Vqを算出する。算出された電圧指令Vd、Vqは電圧座標変換器54に入力される。電圧座標変換器54は、入力されたd軸に関する電圧指令とq軸に関する電圧指令に対して、dq軸から三相への変換処理を施し、モータ20の各相への印加電圧の電圧指令Vu、Vv、Vwを生成する。これらの電圧指令はPWM演算部55に引き渡される。PWM演算部55は、当該電圧指令に従ってインバータ11への指令である、パルス変調されたPWM制御信号を生成し、インバータ11に送る。
【0033】
PWM演算部55は、モータ20の駆動効率を上げるためにPN間電圧Vpnを有効利用すべく中性点電圧を変動させる方式で定義し直し、当該再定義された中性点電圧VNNを含む重畳信号を生成する第1処理を行う。更に、第1処理によって生成された重畳信号を、上記電圧指令に加算して、インバータ11における所定のキャリア信号と比較することでインバータ11の各相のレグを作動させるためのPWM制御信号を生成する第2処理を行う。
【0034】
第1処理において、再定義された中性点電圧VNNは、以下の式1で表される。
【数1】
・・・(式1)
なお、式1における関数maxは、複数の引数のうち最大値を抽出する関数であり、関数minは、複数の引数のうち最小値を抽出する関数である。これらの関数を用いて再定義することで、中性点電圧VNNが変動することになる。また、上記各相電圧Vu、Vv、Vwは、電流制御器43で算出された各相に対応する電圧指令の信号値である(図4を参照)。以降においては、単に「指令信号」又は「電圧指令」と称する場合もある。
そして、式1で表される中性点電圧VNNとPN間電圧Vpnを組み合わせて重畳信号とし、更に、各相の電圧指令Vu、Vv、Vwに当該重畳信号を加算し、各相の新たな電圧指令VsuN、VsvN、VswNとする。具体的には、各相の電圧指令から再定義された中性点電圧VNNを減算し、且つPN間電圧Vpnの中央値を加算して、新たな電圧指令を生成する。当該新たな電圧指令は、以下の式2で表される。
【数2】
・・・(式2)
【0035】
ここで、図5に基づいて、第1処理における重畳信号の生成に関し、インバータ11における相電圧と線間電圧の挙動について説明する。図5における上段の相電圧と線間電圧の推移は、中性点電圧を定義し直す前の状態、すなわち中性点電圧が固定された状態に対応する。この状態では、各相の相電圧の振幅W1は、PN間電圧Vpnの振幅分の電圧指令となってはいるものの、線間電圧の振幅W10については、PN間電圧Vpnの振幅分に対応した振幅W11とはなっていない。
【0036】
次に、上記式2で示すように新たに生成された電圧指令に対応する相電圧と線間電圧の推移が、図5の中段に示されている。この場合、各相の相電圧の振幅W2は、上記の振幅W1より小さくなっているものの、線間電圧の振幅は上段の振幅W10と同じであり、したがって上段と同じようにPN間電圧Vpnの振幅分に対応した振幅W11とはなっていない。そこで、各相の相電圧の振幅W2がW1になるように所定倍(具体的には2/sqrt(3)倍)、振幅を増幅すると、図5の下段に示されるように、各相の相電圧の振幅はPN
間電圧Vpnの振幅分に相当するW1になるとともに、線間電圧はPN間電圧Vpnの振幅分に対応した振幅W11となる。この結果、図5の下段に示す状態では、PN間電圧を有効に利用して、インバータ11によってモータ20を駆動するための駆動電圧の生成が実現されていることになる。
【0037】
しかし、このように新たな電圧指令を生成した場合、各相の電圧指令がほぼ同一視できるような、電圧指令が小さい場合(例えば、モータ20の出力軸がサーボ制御によって停止した状態とされるサーボロック状態等)、インバータ11の各相のレグにおけるスイッチングのタイミングが重なるか、又は極めて近くなる。更には、図1に示すサーボシステムに含まれる制御軸間で同期制御が行われている場合には、その制御軸間においてもそれぞれのインバータ11の各相のレグにおけるスイッチングのタイミングが重なるか、又は極めて近くなることになる。図6に、当初の電圧指令が低い低電圧駆動時の場合における、各相の相電圧の推移と、同期制御を行っている2つの制御軸での中性点電圧VNNを上段(a)に並べて示し、当初の電圧指令が高い高電圧駆動時の場合における、各相の相電圧の推移と、同期制御を行っている2つの制御軸での中性点電圧VNNを下段(b)に並べて示した。これらを見て理解できるように、同期制御を行う2つの制御軸のそれぞれにおいて、中性点電圧の挙動が概ね一致し、以て、式2に従えば、新たに生成された電圧指令の挙動も概ね一致することになる。その結果、それぞれのスイッチングによって生じるノイズ同士が重なり合い、その影響が増大することになり好ましくない。
【0038】
そこで、本願開示においては、当初の電圧指令に重畳する重畳信号の生成について更なる工夫を行った。当該工夫に当たっては、上述したスイッチングの重なりは、電圧指令が相対的に小さい場合に生じやすい点に着目した。すなわち、低電圧駆動時においては、同期制御を行う各制御軸で中性点電圧VNNの挙動が異なり、高電圧駆動時においては、その各制御軸で中性点電圧VNNの挙動が概ね一致するように、重畳信号の生成に関する工夫を行った。以下に、その詳細について説明する。
【0039】
本実施形態では、PWM演算部55によるPWM制御信号の生成は、公知の三相変調方式に従って実施されるものとする。そして、更なる工夫においては、中性点電圧VNNの再定義を、上記の式1に代えて、以下の式3に従って表すこととする。
【数3】
・・・(式3)
式3で表される中性点電圧VNNの、式1で表される中性点電圧との相違点は、ドライバ10及びモータ20による電気的な回路構成、すなわちドライバ10内のインバータ11でのスイッチングによるノイズの要因となる電気的要素が反映される回路構成に強く関
連する所定パラメータC+(C-)が式内に含まれている点である。C+は関数maxで設定される所定パラメータを意味し、C-は関数minで設定される所定パラメータを意味する。両所定パラメータは、技術的には上記の通りスイッチングによるノイズを考慮して設定されるものであり、具体的には、インバータ11でのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定される。後述するように、所定パラメータC+(C-)の値によって中性点電圧VNNの挙動が電圧指令の大きさによって変化するものであり、想定されるスイッチングノイズが制御軸間で重なることを可及的に回避するために適切に設定されるのが好ましい。なお、所定パラメータC+とC-は、技術的には同質の意義を有するものであるが、両関数の性質に応じて一般的には異なる値を有する。更には、制御軸間においても、所定パラメータC+とC-は、互いに異なるのが好ましい。
【0040】
ここで、式3を詳細に検討すると、関数maxについては、電圧指令Vu、Vv、Vw、C+の4つの要素の中から最大値を示すものを抽出することになり、関数minについては、当該4つの要素の中から最小値を示すものを抽出することになる。そして、電圧指令が相対的に低電圧領域に属する場合(すなわち、上述の低電圧駆動時の場合)、電圧指令に関連するVu、Vv、Vwの振幅値は相対的に小さいため、プラス側では、相対的に所定パラメータC+が他の要素Vu、Vv、Vwよりも大きくなり、更には、マイナス側では、相対的に所定パラメータC-が他の要素Vu、Vv、Vwよりも小さくなる。したがって、関数maxは所定パラメータC+を抽出し、関数minは所定パラメータC-を抽出する。一方で、電圧指令が相対的に高電圧領域に属する場合(すなわち、上述の高電圧駆動時の場合)、電圧指令に関連するVu、Vv、Vwの振幅値は相対的に大きいため、プラス側では、相対的に所定パラメータC+よりも大きくなり、更には、マイナス側では、相対的に所定パラメータC-よりも小さくなる。したがって、関数minはVu、Vv、Vwのいずれかのプラス側の振幅値を抽出し、関数minはVu、Vv、Vwのいずれかのマイナス側の振幅値を抽出する。
【0041】
ここで、サーボシステムにおいて同期制御が行われている2つの制御軸について、式3で表される中性点電圧VNNの算出が行われた場合の、電圧指令及び中性点電圧VNNの推移を図7に示す。図7の上段(a)には、当初の電圧指令が低い低電圧駆動時の場合における、各相の相電圧の推移と、同期制御を行っている2つの制御軸での中性点電圧VNNを並べて示し、下段(b)には、当初の電圧指令が高い高電圧駆動時の場合における、各相の相電圧の推移と、同期制御を行っている2つの制御軸での中性点電圧VNNを並べて示した。また、一方の制御軸における所定パラメータC+、C-の値は、それぞれ2、-1であり、他方の制御軸における所定パラメータC+、C-の値は、それぞれ1、-2である。これらを見て理解できるように、低電圧駆動時の場合は、同期制御を行う2つの制御軸のそれぞれにおいて、中性点電圧の挙動が異なり、一方で、高電圧駆動時の場合は、同期制御を行う2つの制御軸のそれぞれにおいて、中性点電圧の挙動が概ね一致している。
【0042】
この結果、低電圧駆動時においては、中性点電圧VNNが制御軸毎に異なることによって当初の電圧指令に重畳される重畳信号の推移も制御軸間で異なり、以て、式2で表される、新たな電圧指令が制御軸間で異なることになる。この結果得られる、2つの制御軸におけるインバータ11のPWM制御信号の各相の電圧推移を図8に示す。低電圧駆動時、例えばサーボロック時は、各制御軸における各相でのスイッチングのタイミングは重なっている。しかし、制御軸間においては、図7の上段(a)に示すように中性点電圧VNNが制御軸毎に異なるため、制御軸間でのスイッチングのタイミングをΔT1だけずらすことができる。このΔT1は、各軸で生じるノイズが軸間で重なることによる影響を好適に回避し得る時間であり、上述したように所定パラメータC+、C-の設定によって得られるものである。
【0043】
なお、高電圧駆動時においては、中性点電圧VNNは制御軸毎に異なることはなく概ね一致しているため、式2で表される、新たな電圧指令も制御軸間で概ね一致することになる。この結果得られる、2つの制御軸におけるインバータ11のPWM制御信号の各相の電圧推移を図9に示す。高電圧駆動時は、モータがある程度の速度をもって回転していることになり、各制御軸における各相でのスイッチングのタイミングは図9に示すようにΔT2だけずれている。したがって、制御軸間で新たな電圧指令が概ね一致したとしても、サーボシステムにおけるインバータ11のスイッチングのタイミングはある程度分散されているため、スイッチングノイズが重なることによる影響は回避し得る。
【0044】
このように式3に従って中性点電圧VNNを再定義することで、電圧指令に基づいた電圧領域の判定、すなわちスイッチングノイズの重なりによる影響が出やすい低電圧駆動であるか否かの判定を行うことなく、駆動電圧の高低に応じた重畳信号の生成、及び当該重畳信号が加算された新たな指令信号の生成を行い、サーボシステムにおいては、複数のインバータ11によるスイッチングノイズを好適に抑制したモータ20の同期制御を実現することができる。なお、図5に従って説明したように、PN間電圧Vpnを有効に利用したモータ20への電圧印加も実現される。
【0045】
ここで、上述した各制御軸での所定パラメータC+、C-は、時間経過とともに変動しない固定値であってもよく、別法として、時間経過とともに変動する変動値であってもよい。最も好ましくは、スイッチングノイズ抑制の観点から、制御軸間で所定パラメータC+、C-が全く一致しないか、一致する期間が可及的に短くなるように各パラメータが設定される。また、各制御軸での所定パラメータC+、C-は、サーボシステムにおける複数のドライバ10及び複数のモータ20による電気的な回路構成に基づいて、例えば、PLC5によって自動的に算出され、各ドライバ10の制御部12に送信されるように構成してもよい。このような構成であればサーボシステム自体の構築が容易となり、ユーザの利便性が高まる。
【0046】
<第2の実施形態>
中性点電圧VNNの再定義に関する第2の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態では、PWM演算部55によるPWM制御信号の生成は、公知の二相変調方式(特に、上下方式)に従って実施されるものとする。二相変調方式を採用することで、インバータ11におけるスイッチング回数を抑制し、スイッチング損失を低減することができる。そして、第2の実施形態においては、中性点電圧VNNの再定義を、上記の式1に代えて、以下の式4に従って表すこととする。
【数4】
・・・(式4)
式4で表される中性点電圧VNNにも、式3の場合と同じように、ドライバ10及びモータ20による電気的な回路構成、すなわちドライバ10内のインバータ11でのスイッチングによるノイズの要因となる電気的要素が反映される回路構成に強く関連する所定パラメータCが式内に含まれている。当該所定パラメータCもインバータ11でのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定される。なお、本実施形態では所定パラメータは正の値を有する(C>0)とともに、制御軸間で異なった値とする。
【0047】
ここで、式4に従えば、各相の電圧指令の最大値の絶対値と、各相の電圧指令の最小値の絶対値とを比較し、前者が大きいか両者が等しい場合には、PN間電圧Vpnのプラス側の振幅値(式4の場合は「1」)から、max関数により抽出される、電圧指令Vu、Vv、Vw、Cの4つの要素の中から最大値を減算した値が中性点電圧VNNとされる。一方で、上記比較において後者が大きい場合には、PN間電圧Vpnのマイナス側の振幅値(式4の場合は「-1」)から、min関数により抽出される、電圧指令Vu、Vv、Vw、-Cの4つの要素の中から最小値を減算した値が中性点電圧VNNとされる。このような中性点電圧VNNの再定義を行っても、式3に従った場合と同じように、低電圧駆動時では、中性点電圧VNNが制御軸毎に異なることで当初の電圧指令に重畳される重畳信号の推移も制御軸間で異なり、以て、式2で表される、新たな電圧指令が制御軸間で異なることになる。また、高電圧駆動時では、式3に従った場合と同じように、制御軸間で新たな電圧指令を概ね一致させることができ、以て二相変調方式によるモータ駆動の当初のメリットを享受することができる。
【0048】
<第3の実施形態>
中性点電圧VNNの再定義に関する第3の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態でも、PWM演算部55によるPWM制御信号の生成は、公知の二相変調方式(特に、上下方式)に従って実施されるものとする。そして、第3の実施形態においては、中性点電圧VNNの再定義を、上記の式1に代えて、以下の式5に従って表すこととする。
【数5】
・・・(式5)
式5で表される中性点電圧VNNにも、式3の場合と同じように、ドライバ10及びモータ20による電気的な回路構成、すなわちドライバ10内のインバータ11でのスイッチングによるノイズの要因となる電気的要素が反映される回路構成に強く関連する所定パラメータCが式内に含まれている。当該所定パラメータCもインバータ11でのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定される。なお、本実施形態では所定パラメータは正の値を有する(C>0)とともに、制御軸間で異なった値とする。
【0049】
ここで、式5に従えば、各相の電圧指令と所定パラメータCの最大値の絶対値と、各相の電圧指令と所定パラメータCの最小値の絶対値とを比較し、前者が大きいか両者が等しい場合には、PN間電圧Vpnのプラス側の振幅値(式5の場合は「1」)から、max関数により抽出される、電圧指令Vu、Vv、Vw、Cの4つの要素の中から最大値を減算した値が中性点電圧VNNとされる。一方で、上記比較において後者が大きい場合には、PN間電圧Vpnのマイナス側の振幅値(式5の場合は「-1」)から、min関数により抽出される、電圧指令Vu、Vv、Vw、Cの4つの要素の中から最小値を減算した値が中性点電圧VNNとされる。このような中性点電圧VNNの再定義を行っても、式3に従った場合と同じように、低電圧駆動時では、中性点電圧VNNが制御軸毎に異なることで当初の電圧指令に重畳される重畳信号の推移も制御軸間で異なり、以て、式2で表される、新たな電圧指令が制御軸間で異なることになる。また、高電圧駆動時では、式3に従った場合と同じように、制御軸間で新たな電圧指令を概ね一致させることができ、以て二相変調方式によるモータ駆動の当初のメリットを享受することができる。
【0050】
<第4の実施形態>
中性点電圧VNNの再定義に関する第4の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態でも、PWM演算部55によるPWM制御信号の生成は、公知の三相変調方式に従って実施されるものとする。そして、第4の実施形態においては、中性点電圧VNNの再定義を、上記の式1に代えて、以下の式6に従って表すこととする。
【数6】
・・・(式6)
式6において、ωは電圧指令Vu、Vv、Vwの各周波数であり、kは当該電圧指令の振幅である。
式6で表される中性点電圧VNNは、電圧指令Vu、Vv、Vwの第3次高調波を変形させたものである。このように第3次高調波に関連する中性点電圧VNNを当初の電圧指令に重畳させることで、PN間電圧Vpnを有効に利用した電圧印加が可能となる。当該中性点電圧VNNにも、式3の場合と同じように、ドライバ10及びモータ20による電気的な回路構成、すなわちドライバ10内のインバータ11でのスイッチングによるノイズの要因となる電気的要素が反映される回路構成に強く関連する所定パラメータCが式内に含まれている。当該所定パラメータCもインバータ11でのスイッチングノイズの大きさと継続時間に従って設定される。なお、本実施形態では所定パラメータは正の値を有する(C>0)とともに、制御軸間で異なった値とする。
【0051】
ここで、式6に従えば、重畳される重畳信号の振幅が、関数maxの抽出結果に影響されることになる。式6の関数maxは、電圧指令の振幅kと所定パラメータCのうち最大値を有する方を抽出する関数である。したがって、式6に従った場合でも、式3に従った場合と同じように、低電圧駆動時では、中性点電圧VNNが制御軸毎に異なることで当初の電圧指令に重畳される重畳信号の推移も制御軸間で異なり、以て、式2で表される、新たな電圧指令が制御軸間で異なることになる。また、高電圧駆動時では、式3に従った場合と同じように、制御軸間で新たな電圧指令を概ね一致させることができ、以て第3次高調波重畳によるモータ駆動の当初のメリットを享受することができる。
【0052】
<付記1>
制御装置(5)と、複数のサーボドライバ(10)とを含み、該複数のサーボドライバ(10)のそれぞれは、該制御装置(5)からの動作指令に従って複数のモータ(20)を同期制御可能に構成された、サーボシステムであって、
前記複数のサーボドライバ(10)のそれぞれは、
前記動作指令に基づいて、対応する前記モータ(20)のための指令信号を生成するサーボ信号生成部と、
前記サーボ信号生成部によって生成された前記指令信号に基づいて、パルス変調されたPWM制御信号を生成するPWM演算部(55)と、
前記PWM演算部(55)によって生成された前記PWM制御信号に基づいてスイッチング素子をスイッチングすることで前記モータを駆動する駆動電圧を生成するインバータ(11)と、
を備え、
前記PWM演算部(55)は、
前記サーボドライバ(10)及び前記モータ(20)による回路構成に関連して設定される所定パラメータ(C+、C-、C)を用いて、前記指令信号が低電圧領域に属する場合に前記複数のモータに対応する制御軸毎に異なる、前記指令信号に重畳させる重畳信号を生成する第1処理と、
前記重畳信号を前記指令信号に加算して所定のキャリア信号と比較することで、前記P
WM制御信号を生成する第2処理と、
を実行するように構成される、
サーボシステム。
【符号の説明】
【0053】
5 PLC
10 ドライバ
11 インバータ
12 制御部
20 モータ
28 電流センサ
41 位置制御器
42 速度制御器
43 電流制御器
55 PWM演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9