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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076792
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】位置特定装置、及び位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240530BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188558
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】新 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】川端 馨
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG12
5H301GG16
(57)【要約】
【課題】被測位対象の位置の特定精度を向上させる。
【解決手段】位置特定装置1は、複数の測定点Pのそれぞれについて第1類似度を算出する第1類似度算出部21と、複数の測定点のそれぞれについて予め第1差分を算出する第1差分算出部31と、複数の測定点Pのそれぞれについて第2差分を算出する第2差分算出部32と、第1差分と第2差分との類似度である第2類似度を、複数の測定点Pのそれぞれについて算出する第2類似度算出部22と、第1類似度と第2類似度とに基づいて、被測位対象の位置を特定する特定部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、
前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出部と、
前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出部と、
前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出部と、
前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出部と、
前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える、位置特定装置。
【請求項2】
前記第2差分算出部は、前記第1磁気と前記第2磁気との差分を前記第2差分として算出する、請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記第1類似度と前記第2類似度とに対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する請求項2に記載の位置特定装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記複数の測定点についての前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも大きい場合に、前記第2類似度に対する重みづけを前記第1類似度に対する重みづけよりも大きくする、請求項3に記載の位置特定装置。
【請求項5】
前記特定部は、前記複数の測定点についての前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも小さい場合に、前記第2類似度に対する重みづけを前記第1類似度に対する重みづけよりも小さくする、請求項3に記載の位置特定装置。
【請求項6】
前記第1差分算出部は、
前記第3磁気として前記第2の高さよりも高い第3の高さで予め測定した磁気と、前記第2磁気との差分である第3差分、および、
前記第3磁気として前記第2の高さよりも低い第4の高さで予め測定した磁気と、前記第2磁気との差分である第4差分、
の2つの差分を前記第1差分として算出し、
前記第2差分算出部は、
前記第1磁気と、前記第3磁気として前記第3の高さで予め測定した磁気との差分である第5差分、および、
前記第1磁気と、前記第3磁気として前記第4の高さで予め測定した磁気との差分である第6差分
の2つの差分を前記第2差分として算出し、
前記第2類似度算出部は、
前記第3差分と前記第5差分との類似度である第3類似度、および、第4差分と前記第6差分との類似度である第4類似度を算出し、
前記第3類似度および前記第4類似度に対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値を前記第2類似度として算出する、請求項1に記載の位置特定装置。
【請求項7】
前記第2類似度算出部は、前記第3差分の絶対値が前記第4差分の絶対値よりも大きい場合に、前記第4類似度に対する重みづけを前記第3類似度に対する重みづけよりも大きくして前記第2類似度を算出する、請求項6に記載の位置特定装置。
【請求項8】
前記第2類似度算出部は、前記第3差分の絶対値が前記第4差分の絶対値よりも小さい場合に、前記第3類似度に対する重みづけを前記第4類似度に対する重みづけよりも大きくして前記第2類似度を算出する、請求項6に記載の位置特定装置。
【請求項9】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、
前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出部と、
前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出部と、
前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える、位置特定装置。
【請求項10】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、
前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出工程と、
前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出工程と、
前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出工程と、
前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出工程と、
前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む、位置特定方法。
【請求項11】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、
前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出工程と、
前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出工程と、
前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む、位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
作業者が現場で機器の点検などを行う場合に、不慮の事故を迅速に発見するためにリアルタイムに作業者(被測位対象)の位置を特定するシステムが求められている。
【0003】
人などの被測位対象の位置を特定する技術として、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)が知られている。しかし、これらのシステムは、屋内では電波が届きにくく屋内での位置特定に利用することが難しい。また、屋内における被測位対象の位置特定においては、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等電波を利用する方法が知られている。ただし、これらの技術は、位置特定に用いる電波発信設備であるWi-Fi(登録商標)基地局やBluetooth(登録商標)のビーコンを構造物内部または周囲に設置する必要がある。また、位置特定を行う構造物の広さや構造によっては、電波を受信しづらくなり、位置特定精度が低下することがある。そこで、屋内で使用可能であり、かつ、電波発信設備の設置が不要な位置特定方法が望まれている。
【0004】
このような位置推定技術として、特許文献1には、予め生成した磁気マップと、携帯端末により収集された磁気データとを照合することにより、人(ユーザ)の位置を特定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-210866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来では、予め生成した磁気マップと、携帯端末により収集された磁気データとを照合する際に、磁気マップ上の各点と、携帯端末により収集された1つの磁気データとを照合する。そのため、携帯端末により収集された1つの磁気と同等の大きさの磁気を有する点が磁気マップに複数ある場合、人(ユーザ)の位置を正確に特定することができないという問題があった。
【0007】
本発明の一態様は、被測位対象の位置の特定精度を向上させることができる位置特定装置および位置特定方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る位置特定装置は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出部と、前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出部と、前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出部と、前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出部と、前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る位置特定装置は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出部と、前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出部と、前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る位置特定方法は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出工程と、前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出工程と、前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出工程と、前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出工程と、前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る位置特定方法は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出工程と、前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出工程と、前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、被測位対象の位置の特定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示に係る位置特定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】測位対象領域のフロアFの例を示す模式図である。
図3】本開示に係る測定用台車の模式図である。
図4】データ測定の一例を示す図である。
図5】本開示に係る第1類似度算出部が歩行データ(検証データ)を分割処理する方法を説明するための図である。
図6】走行データ(学習データ)に対して所定の長さに分割された歩行データ(検証データ)を時間軸方向にスライドさせる様子を説明するための図である。
図7】本開示に係る第1差分算出部が第1差分を算出する方法を説明するための図である。
図8】本開示に係る第2差分算出部が第2差分を算出する方法を説明するための図である。
図9】本開示の第1の実施形態に係る位置特定方法を説明するためのフロー図である。
図10】第2類似度算出部によって第2類似度を算出する方法を説明するための図である。
図11】本開示に係る位置特定装置の要部構成を示すブロック図である。
図12】本開示の第3の実施形態に係る位置特定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
以下、本開示の第1の実施形態について説明する。図1は、本開示に係る位置特定装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0015】
位置特定装置1は、例えばGPSなどに用いられる電波が届きにくい建物内部などの測位対象領域において、被測位対象としての作業者Wが存在している位置を特定する、すなわち、作業者Wが存在している位置を測位するための装置である。
【0016】
位置特定装置1は、作業者Wが存在している位置を測位するために、磁気を使用した位置推定手法を利用する。特に、位置特定装置1は、測定高さの違いに起因して測位精度が低下する可能性を考慮して、異なる高さで測定した磁気間の差分の類似度に基づいて測位対象領域における被測位対象の位置を特定する。なお、本明細書では、磁気の大きさ、すなわち、磁界強度を単に「磁気」と呼称して説明する。例えば、後述する「第1磁気」は、第1の高さで測定した磁気の大きさ(磁界強度)であるものとして説明する。
【0017】
位置特定装置1の説明に先立って、位置特定装置1による作業者Wの位置の特定のために必要となる情報について説明する。位置特定装置1による作業者Wの位置の特定には、少なくとも下記の台車データ及び歩行データが必要となる。
【0018】
(台車データ)
台車データは、測位対象領域における複数の測定点において予め測定された磁気、及び、各測定点の位置の情報を含む。図2は、測位対象領域のフロアFの例を示す模式図である。磁気は、図2に示す、測位対象領域において作業者Wが移動する可能性がある経路上にある複数の測定点Pにおいて測定される。ここで、「作業者Wが移動する可能性がある経路にある複数の測定点P」は、1つの直線状の経路にある測定点Pを意味するのではなく、作業者Wが移動する可能性があるすべての経路における複数の測定点Pを意味する。また、図2では、模式的に表現した測位対象領域から3つの経路を抽出して、それら3つの経路に破線枠を付している。しかしながら、測位対象領域から抽出できる経路数は、3つに限定されず、任意の数とすることができる。
【0019】
台車データは、磁気の水平成分及び鉛直成分のそれぞれの大きさを磁気の情報として含む。台車データに含まれる磁気の水平成分及び鉛直成分は、グローバル座標系における水平成分及び鉛直成分である。「グローバル座標系」とは、地表に平行な面をX軸及びY軸からなるX-Y平面、鉛直方向をZ軸とした座標系である。測定した磁気、及び、磁気を測定した複数の測定点Pの位置を含む台車データは、位置特定装置1の記憶部50(後述)に格納される。
【0020】
上記複数の測定点の間の距離は、一定の間隔であることが好ましい。これにより、類似度(後述)をより正確に算出することができる。台車データは、例えば、磁気測定装置を所持した測定者が一定の距離進むごとに磁気を測定することにより取得してもよい。また、台車データは、下記に説明する測定用台車100を用いて取得してもよい。
【0021】
図3は、本開示に係る測定用台車100の模式図である。図3に示すように、測定用台車100は、載置部110と、車輪120と、第1測定部130と、第2測定部140とを備えている。
【0022】
載置部110は、後述する、第1測定部130及び第2測定部140が載置される台である。載置部110の上面は、水平面に平行な平面となっている。載置部110の上面のフロア面からの高さは、例えば、測定用台車100を押す人の太腿の高さである。
【0023】
車輪120は、載置部110の下方において、測定用台車100の進行方向(図3における左方向)の前後にそれぞれ2つずつ設けられている。図3では、4つの車輪120のうち2つの車輪120のみを図示している。
【0024】
車輪120のうち、測定用台車100の進行方向の前側かつ左側の車輪120(以降では、他の車輪と区別するために車輪120Aと称する)の内側には、車輪120Aの円周方向に沿って等間隔に、N極磁石121及びS極磁石122がそれぞれ交互に4つずつ配置されている。なお、車輪120Aに配置されるN極磁石121及びS極磁石122の個数は、4つずつに限定されるものではなく、その他の個数であってもよい。
【0025】
車輪120Aの内側にはホールセンサ123が設けられている。ホールセンサ123は、N極磁石121及びS極磁石122がホールセンサ123に所定の距離よりも近づくとN極磁石121及びS極磁石122を検知する。ホールセンサ123は、N極磁石121を検知した場合には出力として「1」を、S極磁石122を検知した場合には出力として「0」を後述する第2測定部140に出力する。
【0026】
第1測定部130は、磁気を測定する磁気センサであってよい。第1測定部130は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末などの携帯端末であってもよい。第1測定部130は、所定の時間間隔で磁気を測定し、測定した磁気とともに、磁気を測定した時刻を記録する。第1測定部130は、測定した磁気及び磁気を測定した時刻を第2測定部140に出力する。
【0027】
第1測定部130は、第1測定部130と地表とのなす角度を用いて、測定した磁気のグローバル座標系における水平成分及び鉛直成分を算出し、第2測定部140に出力する。なお、第1測定部130と地表とのなす角度が0°の場合には、第1測定部130は、グローバル座標系における水平成分及び鉛直成分、ならびに、第1測定部130の上記加速度センサで取得した角度を用いた座標系における水平成分及び鉛直成分、のいずれの水平成分及び鉛直成分を第2測定部140に出力してもよい。
【0028】
第2測定部140は、演算装置(例えば、ラップトップPC)によって構成されている。ホールセンサ123の出力から測定用台車100の走行距離を算出する。ここで、車輪120Aの円周の長さは既知であるため、ホールセンサ123の出力が切り替わってから次に切り替わるまでの測定用台車100の走行距離は、車輪120Aの円周の1/8の長さになる。なお、ホールセンサ123の出力が切り替わってから次に切り替わるまでの測定用台車100の走行距離は、車輪120Aに配置されるN極磁石121及びS極磁石122の個数によって異なる。第2測定部140は、ホールセンサ123から出力された「0」と「1」の出力が切り替わった回数(すなわち、車輪120Aの回転量)に基づいて測定用台車100の走行距離を算出し、算出した走行距離を記録する。また、第2測定部140は、測定用台車100が走行した時刻を記憶部(不図示)に記録する。
【0029】
第2測定部140は、測定用台車100が走行を開始した位置を、目視によって、又は、既製品の屋内測位システム(例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping))などを用いて取得する。第2測定部140は、取得した測定用台車100の位置と当該位置を取得した時刻とを上記記憶部に記録する。
【0030】
さらに、第2測定部140は、第1測定部130から出力された磁気、及び、磁気を測定した時刻を上記記憶部に記録する。
【0031】
第2測定部140は、上記記憶部に記憶された、測定用台車100の走行距離、測定用台車100が走行を開始した位置、及び、磁気を、時刻で紐付けることにより、磁気、及び、磁気を測定した測定点Pの位置を含む台車データを生成する。そして、第2測定部140は、台車データを、後述する位置特定装置1に出力する。位置特定装置1は、取得した台車データを、後述する記憶部50に格納する。
【0032】
上記の測定用台車100を用いることにより、測位対象領域において作業者Wが移動する可能性がある経路上を、測定者が測定用台車100を移動させることにより、磁気及び磁気を測定した測定点Pの位置を自動的にかつ正確に測定することができる。
【0033】
本実施形態における測定用台車100では、車輪120のうち測定用台車100の進行方向の前側かつ左側の車輪120AにN極磁石121およびS極磁石122が配置されていたが、これに限られない。本開示の一態様の測定用台車100では、車輪120A以外の車輪120にN極磁石121およびS極磁石122を配置して、測定用台車100の走行距離を算出してもよい。
【0034】
本実施形態における測定用台車100では、第1測定部130により磁気を測定し、第2測定部140により測定用台車100の走行距離を測定する構成であったが、本開示の測定用台車100はこれに限られない。本開示の測定用台車100は、1つの測定部により、磁気及び測定用台車100の走行距離を測定してもよい。
【0035】
(歩行データ)
歩行データは、測位対象領域における複数の測定点Pにおいて測定された磁気、及び、各測定点Pの位置の情報を含む。基本的に、歩行データは、台車データと同じ経路において取得されるが、台車データと異なる経路において取得されてもよい。以下では、歩行データは、台車データと同じ経路において取得されるものとして説明する。
【0036】
歩行データは、例えば、歩行する人の目の前の高さで把持された、スマートフォン又はタブレット端末などの携帯端末200を用いて取得される。携帯端末200は、磁気を測定するときのフロア面からの測定高さが測定用台車100の第1測定部130と相違する。従って、歩行データに含まれる磁気と台車データに含まれる磁気を比較すると、これらの磁気は、同じ経路の、異なる高さで測定されたものと言える。
【0037】
歩行データに含まれる磁気の水平成分及び鉛直成分は、台車データと同様に、グローバル座標系における水平成分及び鉛直成分である。グローバル座標系における水平成分および鉛直成分は、携帯端末200が備える加速度センサ(不図示)およびジャイロセンサ(不図示)を用いて取得された、水平方向に対する携帯端末200の傾斜角に基づいて算出される。
【0038】
携帯端末200は、携帯端末200の移動距離、携帯端末200が移動を開始した位置、及び、磁気を、時刻で紐付けることにより、磁気、及び、磁気を測定した測定点Pの位置を含む歩行データを生成する。そして、携帯端末200は、歩行データを、位置特定装置1の記憶部50に記憶させる。携帯端末200が移動を開始した位置は、予め定められており当該位置が携帯端末200に記憶されていてもよいし、磁気の測定後に携帯端末200に入力されてもよい。
【0039】
携帯端末200を用いることにより、測位対象領域において作業者Wが移動する可能性がある経路上を、測定者が携帯端末200を把持しつつ移動することにより、磁気及び磁気を測定した測定点Pの位置を自動的にかつ正確に測定することができる。
【0040】
前記の説明では、携帯端末200は、歩行する人の目の前の高さで把持されるものと説明した。しかしながら、携帯端末200は、歩行する人の胸又は額等の他の位置(高さ)で把持されてもよく、これらの位置であれば、フロア面からの測定高さが測定用台車100の第1測定部130と相違する。
【0041】
(位置特定装置1)
次に、位置特定装置1の詳細について説明する。図1に示すように、位置特定装置1は、取得部10と、類似度算出部20と、差分算出部30と、特定部40と、記憶部50と、を備えている。
【0042】
(取得部)
取得部10は、有線通信又は無線通信により、測定用台車100から台車データを、携帯端末200から歩行データを取得する。取得部10は、取得した台車データ及び歩行データを記憶部50に記憶させる。取得部10は、取得した台車データ及び歩行データを、後述する類似度算出部20及び/又は差分算出部30に直接出力してもよい。
【0043】
(類似度算出部)
類似度算出部20は、第1類似度算出部21及び第2類似度算出部22を含む。最初に第1類似度算出部21について説明し、第2類似度算出部22については、説明の便宜上、差分算出部30の後に説明する。
【0044】
(第1類似度算出部)
第1類似度算出部21は、第1磁気と第2磁気との類似度である第1類似度を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。第1磁気は、測位対象領域における1つの位置において、被測位対象(作業者W)が第1の高さ(例:歩行者の目の高さ)において携帯端末200により測定された磁気である。第2磁気は、測位対象領域の複数の測定点において、予め第2の高さ(測定用台車100の載置部110の高さ)において第1測定部130により測定された磁気である。以下、第1類似度算出部21が第1類似度を算出する方法を図4図7を用いて説明する。
【0045】
図4は、データ測定の一例を示す図である。図4の参照番号400に示す図は、測定用台車100によって経路上を一定間隔(例えば、30cm)刻みで取得された走行データ(学習データ)の一例を示す。走行データでは、磁気の水平成分及び鉛直成分と測定用台車100の移動距離(m)とが互いに紐付けられている。
【0046】
図4の参照番号410に示す図は、測定用台車100と同じ経路において、携帯端末200によって経路上を一定間隔(例えば、30cm)刻みで取得された歩行データ(検証データ)の一例を示す。歩行データでは、磁気の水平成分及び鉛直成分と携帯端末200の移動距離(m)とが互いに紐付けられている。
【0047】
測定用台車100は、走行データ(学習データ)を位置特定装置1の取得部10に出力する。携帯端末200は、歩行データ(検証データ)を位置特定装置1の取得部10に出力する。取得部10は、走行データ及び歩行データを第1類似度算出部21又は記憶部50に出力する。第1類似度算出部21は、走行データ及び歩行データを記憶部50から取得してもよい。
【0048】
続いて、第1類似度算出部21が歩行データ(検証データ)を分割処理する方法について、図5を用いて説明する。図5は、第1類似度算出部21が歩行データ(検証データ)を分割処理する方法を説明するための図である。
【0049】
最初に、第1類似度算出部21は、ある長さの歩行距離に係る歩行データから、任意のスライド幅で、任意のデータ幅のデータを抜き出す。図5の例では、歩行データの歩行距離を8m、スライド幅を1m、抜き出すデータを幅6mとして説明している。この処理により、第1類似度算出部21は、(1)歩行距離0~6m、(2)歩行距離1~7m、(3)歩行距離2~8m、の3つのデータを抜き出すことができる。なお、歩行データの歩行距離、スライド幅、抜き出すデータ幅は、図5で説明した数字に限定されず、適宜に決められてよい。
【0050】
次に、第1類似度算出部21は、所定の長さに分割した歩行データ(検証データ)を走行データ(学習データ)に対して時間軸方向にスライドさせる。その方法を図6により説明する。図6は、走行データ(学習データ)に対して所定の長さに分割された歩行データ(検証データ)を時間軸方向にスライドさせる様子を説明するための図である。図6に示すように、第1類似度算出部21は、位置特定装置1が取得した全経路(全ルート)の走行データに対して所定の長さ(図5の例では6m)に分割した歩行データを時間軸方向にスライドさせる。スライドさせる長さは、例えば測定点ごとである。
【0051】
続いて、第1類似度算出部21は、歩行データをスライドさせるごとに第1類似度を算出する。第1類似度算出部21は、ユークリッド距離又はコサイン類似度等の手法を用いて第1類似度を算出してよい。一例として、歩行データをa=(a、a、・・・・、a)、走行データをb=(b、b、・・・・、b)とする、このとき、第1類似度算出部21は、下記の数1に示す式で表されるデータ間の距離dを算出し、下記の数2で表される式にデータ間の距離dを代入することによって類似度S1を算出する。
【0052】
【数1】
S1=1/(1+d) ・・・式(2)
なお、歩行データの要素数と、走行データの要素数が異なっている場合は、要素数が多い方のデータをダウンサンプリングすることにより、同じ要素数にすればよい。例えば、要素数が多い時系列データの要素を等間隔で間引くことにより、歩行データの要素数と、走行データの要素数とを同じにしてもよい。
【0053】
このようにして、第1類似度算出部21は、分割した歩行データをスライドさせる度に、つまり、複数の測定点のそれぞれについて、第1類似度(S1)を算出できる。
【0054】
続いて、説明の便宜上、第2類似度算出部22の説明に先立って、差分算出部30について説明する。
【0055】
(差分算出部)
図1に示すように、差分算出部30は、第1差分算出部31及び第2差分算出部32を含む。最初に第1差分算出部31について説明し、その次に第2差分算出部32について説明する。
【0056】
(第1差分算出部)
第1差分算出部31は、第2磁気と第1磁気との差分である第1差分を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。第2磁気は、第2の高さ(測定用台車100の載置部110の高さ)において第1測定部130により予め測定された磁気である。第1磁気は、測位対象領域の複数の測定点において第2の高さとは異なる第1の高さ(例:歩行者の目の高さ)で予め測定された磁気である。以下、第1差分算出部31が第1差分を算出する方法を図7により説明する。
【0057】
図7は、第1差分算出部31が第1差分を算出する方法を説明するための図である。図7の参照番号700に示す図を参照して、第1差分算出部31は、測位対象となる経路において測定用台車100により測定された磁気と携帯端末200により測定された磁気との差分を「第1差分」として算出する。第1差分算出部31は、第1差分を記憶部50に記憶させる。
【0058】
図7の参照番号710に示す図を参照して、第1差分算出部31は、さらに、取得した台車データ及び第1差分を「学習データ」として記憶部50に記憶させる。
【0059】
(第2差分算出部)
第2差分算出部32は、第1の高さ(例:歩行者の目の高さ)で測定した第1磁気と、予め第2の高さ(測定用台車100の載置部110の高さ)で測定した第2磁気との差分である第2差分を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。以下、第2差分算出部32が第2差分を算出する方法を図8により説明する。
【0060】
図8は、第2差分算出部32が第2差分を算出する方法を説明するための図である。図8の参照番号800に示す図を参照して、まず、携帯端末200により歩行データ(検証データ)が取得される。ここで取得されるデータは、図7を参照して説明した歩行データとは別のデータである。
【0061】
続いて、図8の参照番号810に示す図を参照して、第2差分算出部32は、記憶部50に記憶された台車データ(学習データ)と、参照番号800を参照して説明した歩行データ(検証データ)との磁気の差分を「第2差分」として算出する。そして、第2差分算出部32は、その第2差分を記憶部50に記憶させる。
【0062】
(第2類似度算出部)
第2類似度算出部22は、前述した第1差分と第2差分との類似度である第2類似度を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。第2類似度算出部22が第2類似度を算出する方法は、図4~6を参照して説明した、第1類似算出部が第1類似度を算出する方法と同じでよい。例えば、全経路の第1差分に対して所定の長さ(一例とし6m)に分割した第2差分を時間軸方向にスライドさせて第2類似度を算出する。
【0063】
前述の式(2)と同様にして、第2差分算出部32は、以下の式(3)に基づいて、複数の測定点のそれぞれについて、第2類似度(S2)を算出する。
【0064】
S2=1/(1+d) ・・・(3)
d:類似度
【0065】
(特定部)
次に、特定部40について説明する。特定部40は、第1類似度と第2類似度とに基づいて、被測位対象の位置を特定する。具体的には、特定部40は、第1類似度と第2類似度とに対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値に基づいて、被測位対象の位置を特定する。そのことを式(4)により説明する。
【0066】
特定部40は、以下の式(4)を用いて、第1類似度(S1)と第2類似度(S2)に対して所定の重みづけをして算出される2つの値の合計から総合類似度Sを算出する。そして、特定部40は、複数のSのうち、数値が最も高くなる箇所が被測位対象の位置(又は、歩行ルート)であると特定する。
【0067】
S=w1・S1+w2・S2 ・・・(4)
S:総合類似度
S1:第1類似度
S2:第2類似度
w1:第1類似度の重み係数
w2:第2類似度の重み係数
w1及びw2の値は、図7の参照番号700を参照して説明した、測位対象となる経路において測定用台車100と携帯端末200により測定された磁気の差分である「第1差分」の値に基づいて決定されてよい。
【0068】
具体的に、第1差分が大きい場合、つまり、複数の測定点Pについての第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも大きい場合に、第1差分の信頼性が高くないと判断し、第2類似度(S2)を第1類似度(S1)よりも優先する。そこで、w1<w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。
【0069】
これに対して、第1差分が小さい場合、第1差分の信頼性が高いと判断し、第1類似度(S1)を第2類似度(S2)よりも優先する。そこで、w1>w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。
【0070】
第1差分の大小は、予め決めた閾値に基づき判断されてよい。w1及びw2の値は、適宜に決められてよい。第1差分が閾値と同じ値となった場合には、w1=w2となるよう、w1及びw2の値を決定すればよい。
【0071】
また、式(4)は、以下の式(5)に代用されてもよい。
【0072】
S=α・S1+(1-α)・S2 ・・・(5)
S:総合類似度
S1:第1類似度
S2:第2類似度
α:係数(0≦α≦1)
式(3)に係る説明と同じように、第1差分が大きい場合、つまり、複数の測定点Pについての第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも大きい場合に、第1差分の信頼性が高くないと判断し、第2類似度(S2)を第1類似度(S1)よりも優先する。そこで、α<0.5となるよう、αの値を決定する。また、第1差分が小さい場合、第1差分の信頼性が高いと判断し、第1類似度(S1)を第2類似度(S2)よりも優先する。そこで、α>0.5となるよう、αの値を決定する。第1差分の大小は、予め決めた閾値に基づき判断されてよい。αの値は、適宜に決められてよい。第1差分が閾値と同じ値となった場合には、α=0.5となるようαの値を決定すればよい。
【0073】
(記憶部)
図1を参照して、位置特定装置1は、記憶部50を備える。記憶部50は、走行データ、歩行データ、第1差分、第2差分、第1類似度(S1)、第2類似度(S2)、及び総合類似度(S)等を記憶する。記憶部50は、位置特定装置1に内蔵されている必要はなく、位置特定装置1に外付けされていてもよい。
【0074】
以上、位置特定装置1の構成及び動作について説明した。次に、位置特定装置1により得られる効果を説明する。
【0075】
磁気を使用した位置特定手法として、FP(フィンガープリンティング)が知られている。Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)といった電波を用いる位置特定手法と比べ、フィンガープリンティングは、機器の設置コストが低い点、モータ又は発電機等に固有の磁気を活用することで高い精度で位置を特定できる点などが有利である。
【0076】
そのフィンガープリンティングであるが、被測位者が測定した一点の磁気に係る磁気情報に基づいて位置を特定する場合(「ワンショット測位」と称する)、同じ磁気強度を有する候補点が多く存在すると高い精度で位置特定できない。また、磁気の測定場所が僅かでもずれると磁気強度が変化するため、ワンショット測位は、精度の向上が求められる。
【0077】
そこで、複数点の測定点で測定した磁気に係る磁気情報に基づいて位置を特定する方法が考えられるが、この方法にも精度向上の余地がある。その理由として、本願発明者らは、学習データと検証データとで、磁気を測定する測定高さが異なることにより磁気強度が変動し、その結果、位置特定の精度が十分に高くならないことを鋭意検討の末に見出した。
【0078】
本開示に係る位置特定装置1は、特定部40が、第1類似度及び第2類似度という2つの類似度に基づいて被測位対象の位置を特定する。第1類似度は、測定用台車100及び携帯端末200が測定した磁気の類似度を示す。第2類似度は、第1差分と第2差分との類似度を示し、測定用台車100及び携帯端末200の測定高さの違いを加味している。これにより、位置特定装置1は、学習データと検証データにおける磁気の測定高さの違いを加味して被測位対象の位置を特定でき、その結果、被測位対象の位置の特定精度を高めることができる。位置特定装置1は、屋内(例えば、プラント等)における激しい磁気変化を逆手に取って位置特定する装置と言える。
【0079】
位置特定装置1は、さらに、以下の効果をユーザに提供できる。一例として、プラント内にいる作業員Wの位置を特定する精度が高まることで、位置特定装置1は、以下(1)~(3)等を実現でき、プラント運営において省人化と安全の両立を実現できる。
【0080】
(1)巡視点検など、一人でも遂行可能な業務を支援するための具体的手段になる。
【0081】
(2)墜落、転倒、又は不自然な静止(熱中症、又は行き倒れ等)等の緊急事態を検知する。
【0082】
(3)機械操作時に危険区域に作業員Wがいないかを確認でき、災害防止の一助となる。
【0083】
(応用例)
位置特定装置1は、前述した手法(「第1の位置特定手法」と称する。)とは異なる手法(「第2の位置特定手法」と称する。)により、測位対象領域における被測位対象の位置を特定することもできる。以下、第2の位置特定手法について説明する。なお、図1等を参照して説明した内容についてはその説明を省略する。
【0084】
第1類似度算出部21は、測位対象領域における1つの位置において作業者Wが第1の高さ(例:作業者Wの胸の位置)で測定した第1磁気と、測位対象領域の複数の測定点Pにおいて予め測定用台車100が第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、複数の測定点Pそれぞれで算出する。
【0085】
続いて、第1差分算出部31は、第2磁気と、複数の測定点Pにおいて第2の高さとは異なる高さ(例:作業者Wの頭の高さ)で予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、複数の測定点Pのそれぞれについて予め算出する。
【0086】
第2差分算出部32は、第1磁気と、第2磁気または第3磁気との差分である第2差分を、複数の測定点Pのそれぞれについて算出する。
【0087】
第2類似度算出部22は、第1差分と第2差分との類似度である第2類似度を、複数の測定点Pのそれぞれについて算出する。
【0088】
特定部40は、第1類似度と第2類似度とに基づいて、被測位対象の位置を特定する。
【0089】
第2の位置特定手法は、複数の測定点Pにおいて第2の高さ(例:作業者Wの胸の位置)とは異なる高さ(例:作業者Wの頭の高さ)で予め測定した第3磁気を用いて位置特定する点において、第1の位置特定手法と相違する。第1の位置特定手法では第1の高さと第3の高さを同じ高さに揃えているのに対して、第2の位置特定手法では第1の高さと第3の高さを異なる高さに設定している、と言い換えることもできる。
【0090】
位置特定装置1は、第2の位置特定手法においても、図1等を参照して説明したのと同様に類似度算出部20、差分算出部30、及び特定部40が動作することによって、作業者Wの位置を高い精度で特定できる。
【0091】
このように、第1の位置特定手法及び第2の位置特定手法の何れにおいても、位置特定装置1は、学習データと検証データにおける磁気の測定高さの違いを加味して被測位対象の位置を特定する。これにより、位置特定装置1は、被測位対象の位置を高い精度で特定できる。
【0092】
(位置特定方法)
第1の実施形態に係る位置特定方法を図9により説明する。図9は、第1の実施形態に係る位置特定方法を説明するためのフロー図である。
【0093】
最初に、S1にて、第1類似度算出部21が、複数の測定点のそれぞれについて第1類似度算出する。第1類似度は、測位対象領域における1つの位置において被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である。
【0094】
次に、S3にて、第1差分算出部31が、第2磁気と、測位対象領域の複数の測定点において第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、複数の測定点のそれぞれについて予め算出する。
【0095】
続いて、S5にて、第2差分算出部32が、第1磁気と、第2磁気または第3磁気との差分である第2差分を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。
【0096】
そして、S7にて、第2類似度算出部22が、第1差分と第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する。
【0097】
最後に、S9にて、特定部40が、第1類似度と第2類似度とに基づいて、測位対象の位置を特定する。
【0098】
以上により、位置特定装置1は、測位対象の位置を高い精度で特定できる。
【0099】
[第2の実施形態]
以下、本開示の第2の実施形態について説明する。最初に概要を説明すると、第2の実施形態は、第2類似度算出部22が第2類似度をさらに高い精度で算出でき、その結果、より高い精度で被測位対象の位置を特定できる、というものである。
【0100】
以下、図1等を参照して説明した内容についてはその説明を省略し、主に、第2類似度算出部22が第2類似度を算出する方法を、図10を参照しつつ説明する。図10は、第2類似度算出部22によって第2類似度を算出する方法を説明するための図である。
【0101】
図10を参照して、測定用台車150は、第1測定部130a、第2測定部130b、及び第3測定部130cにより磁気を測定する。第1測定部130a、第2測定部130b、及び第3測定部130cは、その順に、互いに異なる、第2の高さ、第3の高さ、及び第4の高さに位置する。つまり、測定用台車150は、第2の高さ、第3の高さ、及び第4の高さという異なる3つの高さにおいて磁気を測定可能に構成されている。
【0102】
ここで、本開示の第2の実施形態の説明に先立って、理解を容易にするために、比較対象としての第1の実施形態での処理の流れを概説する。
【0103】
第1の実施形態においては、位置特定装置1は、以下の(S10)、(S20)、(S30)、(S40)、(S50)の順に測位対象領域における被測位対象の位置を特定する。
【0104】
(S10)第1類似度算出部21が、複数の測定点のそれぞれについて、第1磁気と第2磁気との類似度である第1類似度を算出する。ここで、第1磁気は、測位対象領域における1つの位置において被測位対象が第1の高さで携帯端末200により測定した磁気である。第2磁気は、測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定用台車100により測定した磁気である。
【0105】
(S20)第1差分算出部31が、第2磁気と、測位対象領域の複数の測定点において第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、複数の測定点のそれぞれについて予め算出する。
【0106】
(S30)第2差分算出部32が、第1磁気と、第2磁気または第3磁気との差分である第2差分を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。
【0107】
(S40)第2類似度算出部22が、第1差分と第2差分との類似度である第2類似度を、複数の測定点のそれぞれについて算出する。
【0108】
(S50)特定部40が、第1類似度と第2類似度とに基づいて、被測位対象の位置を特定する。
【0109】
これに対して、本開示の第2の実施形態では、(S10)、(S25)、(S35)、(S45)、(S50)によって測位対象領域における被測位対象の位置を特定する。以下、図11を参照しつつ説明する。
【0110】
(S10)第1類似度算出部21が、複数の測定点のそれぞれについて、第1磁気と第2磁気との類似度である第1類似度を算出する。ここで、第1磁気は、測位対象領域における1つの位置において被測位対象が第1の高さで携帯端末200により測定した磁気である。第2磁気は、測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定用台車100により測定した磁気である。
【0111】
(S25)図10を参照しつつ、第1差分算出部31が、測位対象領域の複数の測定点において第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気として第2の高さよりも高い第3の高さで予め測定した磁気と、第2磁気との差分である第3差分、および、第3磁気として第2の高さよりも低い第4の高さで予め測定した磁気と、第2磁気との差分である第4差分、の2つの差分を第1差分として算出する。
【0112】
(S35)第2差分算出部32が、第1磁気と、第3磁気として第3の高さで予め測定した磁気との差分である第5差分、および、第1磁気と、第3磁気として第4の高さで予め測定した磁気との差分である第6差分、の2つの差分を第2差分として算出する。
【0113】
(S45)第2類似度算出部22は、最初に、第3差分と第5差分との類似度である第3類似度、および、第4差分と第6差分との類似度である第4類似度を算出する。第3類似度及び第4類似度の算出方法は、図4図6を参照して説明した方法が採用されてよい。そのうえで、以下の式(6)によって、第3類似度および第4類似度に対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値を第2類似度として算出する。
【0114】
S2=α・S3+(1-α)・S4・・・(6)
S2:第2類似度
S3:第3類似度
S4:第4類似度
α:係数(0≦α≦1)
αの値は、第3差分>第4差分の場合にはα<0.5とし、第3差分≦第4差分の場合にはα≧0.5とすればよい。
【0115】
(S50)特定部40が、第1類似度と第2類似度とに基づいて、被測位対象の位置を特定する。特定部40が被測位対象の位置を特定する方法は、式(4)を用いて説明した方法が採用されてよい。
【0116】
ここで、第2の実施形態では、(S25)に示すように、第1差分算出部31は、第1差分として2つの差分(第3差分及び第4差分)を算出するところ、式(4)では、第1差分の値に基づいてw1及びw2の値を決定する。そこで、(S25)では、一例として、第3差分及び第4差分の一方が所定の閾値よりも大きい場合には、第1差分の信頼性が高くないと判断し、第1類似度(S1)を第2類似度(S2)よりも優先する。そこで、w1>w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。また、第3差分及び第4差分の一方が所定の閾値よりも小さい場合には、第1差分の信頼性が高いと判断し、第2類似度(S2)を第1類似度(S1)よりも優先する。そこで、w1<w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。このようにして、第2の実施形態においても式(4)を用いることができる。
【0117】
以上の構成によると、複数の高さ(第2の高さ、第3の高さ、及び第4の高さ)において複数の磁気を測定することによって、類似度及び差分のセットを複数準備できる。つまり、異なる測定高さに対応する、複数の、類似度及び差分のセットを準備できる。これにより、位置特定装置1は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定でき、例えばプラント運営において、省人化と安全の両立をさらに高いレベルで実現できる。
【0118】
第2の実施形態では、第2類似度算出部22は、第3差分の絶対値が第4差分の絶対値よりも大きい場合に、第4類似度(S4)の信頼性が第3類似度(S3)の信頼性よりも高いと判断し、第4類似度(S4)に対する重みづけを第3類似度(S3)に対する重みづけよりも大きくして第2類似度(S2)を算出してもよい。また、第2類似度算出部22は、第3差分の絶対値が第4差分の絶対値よりも小さい場合に、第3類似度(S3)の信頼性が第4類似度(S4)の信頼性よりも高いと判断し、第3類似度(S3)に対する重みづけを第4類似度(S4)に対する重みづけよりも大きくして第2類似度(S2)を算出してもよい。
【0119】
[第3の実施形態]
以下、本開示の第3の実施形態について説明する。図11は、本開示に係る位置特定装置2の要部構成を示すブロック図である。図示するように、位置特定装置2は、取得部10、差分算出部30、特定部40、及び記憶部50を備える。
【0120】
位置特定装置2は、位置特定装置1と同様に、例えばGPSなどに用いられる電波が届きにくい建物内部などの測位対象領域において、被測位対象としての作業者Wが存在している位置を特定するための装置である。
【0121】
位置特定装置2は、位置特定装置1と異なり、台車データを使用せず、作業者Wが携帯端末200を使って測定する歩行データのみを使用し、測位対象領域における作業者Wの位置を特定する。以下、位置特定装置2の各部について説明する。なお、図1等を参照して説明した内容についてはその説明を省略する。
【0122】
(取得部)
取得部10は、有線通信又は無線通信により、携帯端末200から歩行データを取得する。取得部10は、取得した歩行データを記憶部50に記憶させる。取得部10は、取得した歩行データを、後述する差分算出部30に直接出力してもよい。
【0123】
(差分算出部)
図11に示すように、差分算出部30は、第1差分算出部31及び第2差分算出部32を含む。
【0124】
(第1差分算出部)
第1差分算出部31は、測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を複数の測定点Pのそれぞれについて算出する。
【0125】
例えば、第1の高さは、作業者Wの腰の位置であってよく、作業者Wが腰に装着したベルトに携帯端末200が取り付けられている。一般に、歩行者の腰(ベルト)の位置は、歩行時に、上下の揺れが少なく、地面からの高さを安定させることができる。あるいは、第1の高さは、作業者Wの頭の位置であってよく、作業者Wが頭に装着したヘルメットに携帯端末200が取り付けられている。歩行者の頭(ヘルメット)の位置も、歩行時に、上下の揺れが少なく、地面からの高さを安定させることができる。
【0126】
第2の高さは、作業者Wの目の前の高さであってよい。一般に、携帯端末200を操作するとき、作業者Wは目の前で携帯端末200を把持する。
【0127】
第1差分算出部31は、図7の参照番号700に示す図を参照して説明した方法によって第1差分を算出してよい。第1差分算出部31は、第1差分を記憶部50に記憶させる。
【0128】
(第2差分算出部)
第2差分算出部32は、測位対象領域における1つの位置において、被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する。
【0129】
第3の高さを第1の高さ(作業者Wの腰又は頭等)と同じ高さに設定し、第4の高さを第2の高さと同じ高さ(作業者Wの目の前の高さ)に設定してよい。これにより、位置特定装置2は、測位対象領域における被測位対象の位置をより高い精度で特定できる。ただし、第3の高さを第1の高さと異なる高さに設定し、第4の高さを第2の高さと同じ高さに設定してもよい。この場合も、位置特定装置2は、磁気を測定する測定高さを加味して、測位対象領域における被測位対象の位置を高い精度で特定できる。
【0130】
第2差分算出部32は、図7の参照番号700に示す図を参照して説明した方法によって第2差分を算出してよい。第2差分算出部32は、第2差分を記憶部50に記憶させる。
【0131】
(特定部)
次に、特定部40について説明する。特定部40は、第1差分と第2差分とに基づいて、被測位対象の位置を特定する。特定部40は、位置特定装置1の特定部40と同じ方法により、式(4)を用いて被測位対象の位置を特定することができる。このとき、式(4)において、S1が第1差分、S2が第2差分となる。w1、w2については、第1差分が大きい場合、第1差分の信頼性が高くないと判断し、第1差分(S1)を第2差分(S2)よりも優先する。そこで、w1>w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。
【0132】
これに対して、第1差分が小さい場合、第1差分の信頼性が高いと判断し、第2差分(S2)を第1差分(S1)よりも優先する。そこで、w1<w2となるよう、w1及びw2の値を決定する。
【0133】
第1差分の大小は、予め決めた閾値に基づき判断されてよい。w1及びw2の値は、適宜に決められてよい。第1差分が閾値と同じ値となった場合には、w1=w2となるよう、w1及びw2の値を決定すればよい。
【0134】
(記憶部)
図11を参照して、位置特定装置1は、記憶部50を備える。記憶部50は、歩行データ、第1差分、第2差分等を記憶する。記憶部50は、位置特定装置2に内蔵されている必要はなく、位置特定装置2に外付けされていてもよい。
【0135】
以上、位置特定装置2の構成及び動作について説明した。次に、位置特定装置2により得られる効果を説明する。
【0136】
本実施形態では、位置特定装置2は、台車データを使用することなく、作業者Wの腰(又は頭など)、及び目の前の高さ等に位置付けた携帯端末200により予め取得された歩行データ(学習データ)を用いて、被測位対象の位置を特定する。この構成によっても、位置特定装置2は、測定高さが異なることによる磁気の変化を場所ごとに比較し、作業者Wの位置を特定できる。また、位置特定装置2、位置特定装置1における類似度算出部20の構成を備える必要が無く、装置の簡素化を図ることができる。
【0137】
さらに、第1の高さとして、人の身体の部位の中で歩行時の高さが比較定期安定している腰又は頭の高さを選択してよい。そのため、測定用台車100が通れない場所であって、人が歩行できる場所においても、位置特定装置2は、被測位対象の位置を特定できる。
【0138】
このように、位置特定装置2は、異なる高さで測定した磁気データを使用することにより作業者Wの位置を特定するため、位置の特定精度を高めることができる。
【0139】
(位置特定方法)
第3の実施形態に係る位置特定方法を図12により説明する。図12は、本実施形態に係る位置特定方法のフロー図である。
【0140】
最初に、S11にて、測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する(第1差分算出工程)。
【0141】
次に、S13にて、前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する(第2差分算出工程)。
【0142】
そして、S15にて、前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する(特定工程)。
【0143】
以上により、位置特定装置2は、測位対象の位置を高い精度で特定することができる。
【0144】
(まとめ)
本開示の態様1に係る位置特定装置は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出部と、前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出部と、前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出部と、前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出部と、前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える。
【0145】
前記の構成によれば、本開示の態様1に係る位置特定装置は、測定高さの違いを加味することにより、被測位対象の位置の特定精度を向上させることができる。
【0146】
本開示の態様2に係る位置特定装置は、前記の態様1において、前記第2差分算出部は、前記第1磁気と前記第2磁気との差分を前記第2差分として算出する。
【0147】
本開示の態様3に係る位置特定装置は、前記の態様2において、前記特定部は、前記第1類似度と前記第2類似度とに対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する。
【0148】
前記の構成によれば、本開示の態様3に係る位置特定装置は、前記所定の重み付けによって、前記第1類似度と前記第2類似度の何れを優先するかを決定できる。これにより、本開示の態様3に係る位置特定装置は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0149】
本開示の態様4に係る位置特定装置は、前記の態様3において、前記特定部は、前記複数の測定点についての前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも大きい場合に、前記第2類似度に対する重みづけを前記第1類似度に対する重みづけよりも大きくする。
【0150】
前記の構成によれば、本開示の態様4に係る位置特定装置では、前記特定部が、前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも大きい場合には、前記第1差分の信頼性が高くないと判断し、前記第2類似度に対する重みづけを前記第1類似度に対する重みづけよりも大きくする。これにより、本開示の態様4に係る位置特定装置は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0151】
本開示の態様5に係る位置特定装置は、前記の態様3において、前記特定部は、前記複数の測定点についての前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも小さい場合に、前記第2類似度に対する重みづけを前記第1類似度に対する重みづけよりも小さくする。
【0152】
前記の構成によれば、本開示の態様5に係る位置特定装置では、前記特定部が、前記第1差分の絶対値の総和が所定の値よりも小さい場合には、前記第1差分の信頼性が高いと判断し、前記第1類似度に対する重みづけを前記第2類似度に対する重みづけよりも大きくする。これにより、本開示の態様5に係る位置特定装置は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0153】
本開示の態様6に係る位置特定装置は、前記の態様1から5の何れかにおいて、前記第1差分算出部は、前記第3磁気として前記第2の高さよりも高い第3の高さで予め測定した磁気と、前記第2磁気との差分である第3差分、および、前記第3磁気として前記第2の高さよりも低い第4の高さで予め測定した磁気と、前記第2磁気との差分である第4差分、の2つの差分を前記第1差分として算出し、前記第2差分算出部は、前記第1磁気と、前記第3磁気として前記第3の高さで予め測定した磁気との差分である第5差分、および、前記第1磁気と、前記第3磁気として前記第4の高さで予め測定した磁気との差分である第6差分の2つの差分を前記第2差分として算出し、前記第2類似度算出部は、前記第3差分と前記第5差分との類似度である第3類似度、および、第4差分と前記第6差分との類似度である第4類似度を算出し、前記第3類似度および前記第4類似度に対して所定の重みづけをして算出された2つの値の合計値を前記第2類似度として算出する。
【0154】
前記の構成によれば、本開示の態様6に係る位置特定装置は、複数の高さ(第2の高さ、第3の高さ、及び第4の高さ)において複数の磁気を測定することによって、類似度及び差分のセットを複数準備できる。つまり、本開示の態様6に係る位置特定装置は、異なる測定高さに対応する、複数の、類似度及び差分のセットを準備でき、これにより、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0155】
本開示の態様7に係る位置特定装置は、前記の態様6において、前記第2類似度算出部は、前記第3差分の絶対値が前記第4差分の絶対値よりも大きい場合に、前記第4類似度に対する重みづけを前記第3類似度に対する重みづけよりも大きくして前記第2類似度を算出する。
【0156】
前記の構成によれば、本開示の態様7に係る位置特定装置では、前記第2類似度算出部が、前記第3差分の絶対値の総和が前記第4差分の絶対値よりも大きい場合には、前記第3差分の信頼性が高くないと判断し、前記第4類似度に対する重みづけを前記第3類似度に対する重みづけよりも大きくする。これにより、本開示の態様7に係る位置特定装置は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0157】
本開示の態様8に係る位置特定装置は、前記の態様6において、前記第2類似度算出部は、前記第3差分の絶対値が前記第4差分の絶対値よりも小さい場合に、前記第3類似度に対する重みづけを前記第4類似度に対する重みづけよりも大きくして前記第2類似度を算出する。
【0158】
前記の構成によれば、本開示の態様8に係る位置特定装置では、前記第2類似度算出部が、前記第3差分の絶対値の総和が前記第4差分の絶対値よりも小さい場合には、前記第3差分の信頼性が高いと判断し、前記第3類似度に対する重みづけを前記第4類似度に対する重みづけよりも大きくする。これにより、本開示の態様8に係る位置特定装置は、さらに高い精度で被測位対象の位置を特定できる。
【0159】
本開示の態様9に係る位置特定装置は、測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定装置であって、前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出部と、前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出部と、前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定部と、を備える。
【0160】
前記の構成によれば、本開示の態様9に係る位置特定装置は、異なる高さで測定した磁気データを使用することにより作業者Wの位置を特定するため、位置の特定精度を高めることができる。また、本開示の態様9に係る位置特定装置は、本開示の態様1に係る位置特定装置1における類似度算出部の構成を備える必要が無く、装置の簡素化を図ることができる。
【0161】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、前記測位対象領域における1つの位置において前記被測位対象が第1の高さで測定した第1磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において予め第2の高さで測定した第2磁気との類似度である第1類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1類似度算出工程と、前記第2磁気と、前記測位対象領域の複数の測定点において前記第2の高さとは異なる高さで予め測定した第3磁気との差分である第1差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて予め算出する第1差分算出工程と、前記第1磁気と、前記第2磁気または前記第3磁気との差分である第2差分を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2差分算出工程と、前記第1差分と前記第2差分との類似度である第2類似度を、前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第2類似度算出工程と、前記第1類似度と前記第2類似度とに基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む。
【0162】
前記の構成によれば、本開示の態様10に係る位置特定方法は、本開示の態様1に係る位置特定装置と同様の効果を奏することができる。
【0163】
測位対象領域における被測位対象の位置を特定する位置特定方法であって、前記測位対象領域の複数の測定点において、第1の高さで予め測定された第1磁気と、第2の高さで予め測定された第2磁気との差分である第1差分を前記複数の測定点のそれぞれについて算出する第1差分算出工程と、前記測位対象領域における1つの位置において、前記被測位対象が第3の高さで測定した第3磁気と、前記被測位対象が第4の高さで測定した第4磁気との差分である第2差分を算出する第2差分算出工程と、前記第1差分と前記第2差分との類似度に基づいて、前記被測位対象の位置を特定する特定工程と、を含む。
【0164】
前記の構成によれば、本開示の態様11に係る位置特定方法は、本開示の態様9に係る位置特定装置と同様の効果を奏することができる。
【0165】
本開示に係る各実施形態では、作業者Wが存在している位置を特定する形態について説明したが本発明はこれに限られない。本発明の一態様では、人以外の物体(例えば、自律走行ロボットなど)を被測位対象としてもよい。
【0166】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
1、2 位置特定装置
10 取得部
20 類似度算出部
21 第1類似度算出部
22 第2類似度算出部
30 差分算出部
31 第1差分算出部
32 第2差分算出部
40 特定部
50 記憶部
100、150 測定用台車
110 載置部
120、120A 車輪
121 N極磁石
122 S極磁石
123 ホールセンサ
130、130a 第1測定部
130b、140 第2測定部
130c 第3測定部
200 携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12