特開 2024-76806 吸収性物品及び吸収性物品個包装体

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024076806

(43)【公開日】2024-06-06

(54)【発明の名称】吸収性物品及び吸収性物品個包装体

(51)【国際特許分類】

   A61F 13/56 20060101AFI20240530BHJP

   A61F 13/47 20060101ALI20240530BHJP

   A61F 13/471 20060101ALI20240530BHJP

   A61F 13/15 20060101ALI20240530BHJP

【ＦＩ】

A61F13/56 110

A61F13/47 100

A61F13/471

A61F13/15 200

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022188583

(22)【出願日】2022-11-25

(71)【出願人】

【識別番号】000183462

【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002871

【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所

(72)【発明者】

【氏名】筒井 咲葵

【テーマコード（参考）】

3B200

【Ｆターム（参考）】

3B200AA01

3B200AA14

3B200BA01

3B200BA08

3B200DE05

3B200DE11

3B200DF09

(57)【要約】

【課題】着用時の違和感を抑えることができ、着用者の肌のかぶれやムレを抑えることが可能な吸収性物品及び吸収性物品個包装体を提供する。
【解決手段】本開示は、液透過性の肌側のトップシート１１と、液不透過性の非肌側のバックシート１２と、トップシート１１とバックシート１２との間に配置される吸収体１３と、を備える吸収性物品１０であって、吸収性物品１０の肌側面の周縁部に、貼り付け対象に対して貼り付け可能な粘着剤（止着材）１４を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

液透過性の肌側のトップシートと、液不透過性の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の肌側面の周縁部に、貼り付け対象に対して貼り付け可能な止着材を備える
ことを特徴とする吸収性物品。

【請求項2】

前記止着材は、粘着剤であって、前記吸収性物品の肌側面の周縁部のうち、着用者に装着した際に着用者の左右方向となる第１方向の両側、又は前記第１方向と交叉する第２方向の両側に設けられる
ことを特徴とする請求項１に記載の吸収性物品。

【請求項3】

前記粘着剤を前記第１方向の両側に設ける場合には、前記粘着剤は、前記第２方向に長く塗布され、前記粘着剤を塗布する粘着剤塗布領域の延設長さは、２０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下であり、前記粘着剤塗布領域の幅は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下であり、
前記粘着剤を前記第２方向の両側に設ける場合には、前記粘着剤は、前記第１方向に長く塗布され、前記粘着剤塗布領域の延設長さは、２０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であり、前記粘着剤塗布領域の幅は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下である
ことを特徴とする請求項２に記載の吸収性物品。

【請求項4】

前記第１方向の寸法は、４０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であり、
前記第２方向の寸法は、４０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下である
ことを特徴とする請求項２に記載の吸収性物品。

【請求項5】

前記吸収性物品の非肌側面に配置されて指を掛けることが可能な指掛部を備える
ことを特徴とする請求項１から請求項４のいずれか１項に記載の吸収性物品。

【請求項6】

前記粘着剤に剥離可能に取り付けられる剥離シートを備える
ことを特徴とする請求項２から請求項４のいずれか１項に記載の吸収性物品。

【請求項7】

請求項６に記載の吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する個包装シートと、を含む吸収性物品個包装体であって、
前記個包装シートは、不織布シートである
ことを特徴とする吸収性物品個包装体。

【請求項8】

請求項２から請求項４のいずれか１項に記載の吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する個包装シートと、を含む吸収性物品個包装体であって、
前記個包装シートは、前記粘着剤に剥離可能に取り付けられるフィルムシートである
ことを特徴とする吸収性物品個包装体。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、吸収性物品及び吸収性物品個包装体に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、男性用の下着としてのパンツの前部の内面に対して着脱可能に取り付けて残尿を吸収するためのシートが開示されている。シート本体は、使用時に使用者の股部にあてがわれる透液性を有する表面シートと、表面シートの前面から進入した残尿を吸収するための吸液性を有する吸収シートと、吸収シートが吸収した残尿のパンツへの付着を防止するための不透液性を有する裏面シートとが順に積層される。裏面シートの裏面には、シート本体をパンツの前部の内面に貼付するための接着部が形成されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１３－１７２８４５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載のシート（吸収性物品）は、男性用の下着の前部の内面に貼付され、着用者の股部にあてがわれて使用される。しかし、男性は、女性とは異なり、吸収性物品を着用する機会が少ないことから、下着の内面に吸収性物品を着用することに違和感をより覚えやすく、吸収性物品を着用することに抵抗を感じ易い。

【0005】

また、吸収性物品が直接肌に触れることにより、かぶれやムレを引き起こすおそれがある。

【0006】

そこで、本開示は、着用時の違和感を抑えることができ、着用者の肌のかぶれやムレを抑えることが可能な吸収性物品及び吸収性物品個包装体の提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記課題を解決するため、本発明の第１の態様は、液透過性の肌側のトップシートと、液不透過性の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置される吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記吸収性物品の肌側面の周縁部に、貼り付け対象に対して貼り付け可能な止着材を備える。

【0008】

本発明の第２の態様は、上記第１の態様の吸収性物品であって、前記止着材は、粘着剤であって、前記吸収性物品の肌側面の周縁部のうち、着用者に装着した際に着用者の左右方向となる第１方向の両側、又は前記第１方向と交叉する第２方向の両側に設けられる。

【0009】

本発明の第３の態様は、上記第２の態様の吸収性物品であって、前記粘着剤を前記第１方向の両側に設ける場合には、前記粘着剤は、前記第２方向に長く塗布され、前記粘着剤を塗布する粘着剤塗布領域の延設長さは、２０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下であり、前記粘着剤塗布領域の幅は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下であり、前記粘着剤を前記第２方向の両側に設ける場合には、前記粘着剤は、前記第１方向に長く塗布され、前記粘着剤塗布領域の延設長さは、２０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であり、前記粘着剤塗布領域の幅は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下である。

【0010】

本発明の第４の態様は、上記第２の態様の吸収性物品であって、前記第１方向の寸法は、４０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であり、前記第２方向の寸法は、４０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下である。

【0011】

本発明の第５の態様は、上記第１の態様から上記第４の態様のいずれかの吸収性物品であって、前記吸収性物品の非肌側面に配置されて指を掛けることが可能な指掛部を備える。

【0012】

本発明の第６の態様は、上記第２の態様から上記第４の態様のいずれかの吸収性物品であって、前記粘着剤に剥離可能に取り付けられる剥離シートを備える。

【0013】

本発明の第７の態様は、上記第６の態様の吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する個包装シートと、を含む吸収性物品個包装体であって、前記個包装シートは、不織布シートである。

【0014】

本発明の第８の態様は、上記第２の態様から上記第４の態様のいずれかの吸収性物品と、前記吸収性物品を包装する個包装シートと、を含む吸収性物品個包装体であって、前記個包装シートは、前記粘着剤に剥離可能に取り付けられるフィルムシートである。

【発明の効果】

【0015】

本開示によれば、着用時の違和感を抑えることができ、着用者の肌のかぶれやムレを抑えることができる。

【図面の簡単な説明】

【0016】

【図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。

【図2】図１の吸収性物品の非肌側からの平面図である。

【図3】図１のIII－III矢視断面図である。

【図4】粘着剤塗布領域の変形例を示す吸収性物品の肌側からの平面図であって、（ａ）は幅方向の両側に設けた状態を、（ｂ）は長手方向の両側に設けた状態をそれぞれ示す。

【図5】吸収性物品の非肌側からの平面図であって、（ａ）は１つの指掛部を設けた状態を、（ｂ）は２つの指掛部を設けた状態をそれぞれ示す。

【図6】吸収性物品を２つ折りに折り畳んだ状態の吸収性物品個包装体の説明図であって、（ａ）は広げた状態を、（ｂ）は一部を折り畳んだ状態を、（ｃ）は包装した状態をそれぞれ示す。

【図7】吸収性物品を３つ折りに折り畳んだ状態の吸収性物品個包装体の説明図であって、（ａ）は広げた状態を、（ｂ）は一部を折り畳んだ状態を、（ｃ）は包装した状態をそれぞれ示す。

【図8】吸収性物品を着用した状態を示す説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る吸収性物品について説明する。

【0018】

本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前、吸収時、及び吸収後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態を意味する。また、吸収性物品の各構成部材の長手方向（第２方向）は、平面視における吸収性物品の長手の方向を意味し、図中の矢印Ｘに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の幅方向（第１方向）は、平面視における吸収性物品の長手方向と直交（交叉）する短手の方向を意味し、図中の矢印Ｙに沿った方向である。また、吸収性物品の各構成部材の厚み方向は、各構成部材を積層する方向をいい、図中の矢印Ｚに沿った方向を意味する。また、吸収性物品の各構成部材の「肌側」とは、厚み方向のうち吸収性物品を着用したときの着用者の身体に向かう方向を意味し、「非肌側」とは、厚み方向のうち肌側とは反対の方向を意味する。また、左右方向は、前方を向いた状態の着用者から視た左右方向を意味する。また、体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。

【0019】

図１は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。図２は、図１の吸収性物品の非肌側からの平面図である。図３は、図１のIII－III矢視断面図である。なお、図３は、吸収性物品の断面を概略的に示すものであり、吸収性物品の各構成部材の積層関係を図示している。

【0020】

＜吸収性物品＞
図１～図３に示すように、本実施形態に係る吸収性物品１０は、ベビー用、成人用及び高齢者用の種々の吸収性物品として使用でき、その中でも、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿取りパッド等のパッド製品に適用することが好ましい。本実施形態の吸収性物品１０は、第１方向よりも第２方向に長い俵状に形成される。吸収性物品１０を着用者に装着する際には、吸収性物品１０の第１方向（以下、「幅方向」という。）が着用者の左右方向となるように装着する。着用者に装着した状態では、吸収性物品１０の第２方向（以下、「長手方向」という。）は、着用者の上下方向或いは前後方向に沿うことになる。

【0021】

（吸収性物品の寸法）
吸収性物品１０は、吸収性物品１０の長手方向の寸法Ｌ１（図２参照）は、特に限定されるものではないが、４０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下であることが好ましい。また、吸収性物品１０の幅方向の寸法Ｌ２（図２参照）は、特に限定されるものではないが、４０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であることが好ましい。吸収性物品１０の寸法を上記範囲内に設定すると、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、尿取りパッド等のパッド製品に適した吸収性物品１０が得られる。

【0022】

吸収性物品１０は、着用時に肌側に位置する液透過性のトップシート１１と、トップシート１１に対向配置されて着用時に非肌側に位置する液不透過性のバックシート１２と、トップシート１１とバックシート１２との間に配置される吸収体１３と、着用者の下着等の貼り付け対象１（図８参照）に対して貼り付け可能な粘着剤（止着材）１４とを基本的構成として備える。なお、吸収性物品１０は、上記基本的構成に加えて、公知の様々な改変を施すことができる。例えば、吸収性物品１０は、上記基本的構成に加えて、立体ギャザーやサイドシートを備えてもよいし、トップシート１１と吸収体１３との間にセカンドシートやトランスファシートを備えてもよいし、吸収体１３の被覆するキャリアシートを備えてもよい。

【0023】

（トップシート）
トップシート１１は、吸収体１３を挟んで、バックシート１２に対向して配置される。トップシート１１は、液透過性のシート状部材であって、体液が吸収体１３へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されていればよい。基材の一例としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等の１種又は２種以上を含む、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも各不織布が好ましい。

【0024】

トップシート１１には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート１１には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、ｐＨ調整剤、抗菌剤、保湿剤等の１種又は２種以上を含有させてもよい。トップシート１１の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、１５ｇ／ｍ^２以上４０ｇ／ｍ^２以下の範囲であることが好ましい。トップシート１１の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体１３へと誘導するために必要とされる、吸収体１３の一部又は全部を覆う形状であればよい。

【0025】

（バックシート）
バックシート１２は、吸収体１３が保持している体液の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えた基材を用いて形成されていればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布／メルトブロー不織布、スパンボンド不織布／メルトブロー不織布／スパンボンド不織布等の複数の同種及び／又は異種の不織布を積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。

【0026】

バックシート１２の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、１５ｇ／ｍ^２以上６０ｇ／ｍ^２以下の範囲であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート１２には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート１２に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート１２にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、樹脂とフィラーとを混練し、得られた混練物をフィルム状に成形し、得られたフィルムからフィラーを除去することにより、多孔性（通気性）樹脂フィルムを得ることができる。

【0027】

（吸収体）
吸収体１３は、体液吸収材料を含み、好ましくは、基材と、基材に保持された体液吸収材料と、を含む。体液吸収材料としては、体液を吸収及び保持するものであれば特に限定されないが、例えば、フラッフパルプや高吸収性樹脂（Ｓｕｐｅｒ Ａｂｓｏｒｂｅｎｔ Ｐｏｌｙｍｅｒ（ＳＡＰ））等が挙げられる。吸収体１３の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。

【0028】

ＳＡＰとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリアスパラギン酸塩系、（デンプン・アクリル酸）グラフト共重合体、（アクリル酸・ビニルアルコール）共重合体、（イソブチレン・無水マレイン酸）共重合体及びそのケン化物といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム系がより好ましい。

【0029】

吸収体１３は、基材とＳＡＰとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にＳＡＰ粒子を混合して形成したもの、基材間にＳＡＰ粒子を固着したＳＡＰシート等が挙げられる。また、ＳＡＰ粒子の脱落防止や、吸収体１３の形状安定化の観点から、吸収体１３をキャリアシートに包むことが好ましい。また、ＳＡＰを繊維状に成形し、基材に混合して用いてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。吸収体１３がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一でも異なってもよい。

【0030】

吸収体１３の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、Ｉ字状、長方形の４角が丸まった角丸長方形状、長円状、一方向に長い楕円形状、或いは、第１方向と第２方向の長さが略同じ正方形状、正方形の４角が丸まった角丸正方形状、円形状等が挙げられる。吸収体１３は、２層以上を重ねて用いてもよい。

【0031】

（粘着剤）
粘着剤１４は、吸収性物品１０の肌側面（本実施形態ではトップシート１１の肌側面１１ａ）の周縁部に塗布され、吸収性物品１０を着用者の下着等の貼り付け対象１（図８参照）に対して貼り付け可能な止着材として機能する。図１に示すように、本実施形態の粘着剤１４は、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部の全周域に亘って塗布される。トップシート１１の肌側面１１ａのうち、粘着剤１４を塗布する領域（以下、「粘着剤塗布領域」という。）１５よりも内側には、主に体液を吸収するための領域が設けられる。

【0032】

粘着剤１４としては特に限定されず、公知の接着剤を使用できるが、例えば、ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤としては、融点が１００℃以上１８０℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン－ブタジエン－スチレン系共重合体、スチレン－イソプレン－スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン－酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。

【0033】

なお、本実施形態では、粘着剤１４を、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部の全周域に亘って塗布したが、これに限定されるものではない。例えば、図４に示すように、粘着剤１４を、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部のうち、吸収性物品１０の長手方向の両側、又は吸収性物品１０の幅方向の両側に設けてもよい。

【0034】

図４は、粘着剤塗布領域の変形例を示す吸収性物品の肌側からの平面図であって、（ａ）は幅方向の両側に設けた状態を、（ｂ）は長手方向の両側に設けた状態をそれぞれ示す。

【0035】

図４（ａ）に示すように、粘着剤１４を、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部のうち、吸収性物品１０の幅方向の両側に設けてもよい。この場合、粘着剤１４は、吸収性物品１０の長手方向に長く塗布されることが好ましい。図４（ａ）に示す変形例では、幅方向の両側の粘着剤塗布領域１５は、長手方向に直線状に延びている。粘着剤塗布領域１５の延設長さＬ３は、２０ｍｍ以上２５０ｍｍ以下であることが好ましい。粘着剤塗布領域１５の延設長さとは、その幅の中心を通る延設方向に沿った長さを意味し、図４（ａ）に示す変形例では、直線状に延びる粘着剤塗布領域１５の長手方向の長さとなる。また、粘着剤塗布領域１５の幅Ｌ４は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下であることが好ましい。粘着剤塗布領域１５の延設長さＬ３及び幅Ｌ４を上記範囲に設定することによって、粘着剤１４の塗布量を抑えつつ、吸収性物品１０を貼り付け対象１に対して安定的に貼り付けることができる。なお、粘着剤塗布領域１５の幅Ｌ４とは、その延設方向と交叉する方向の長さを意味し、図４（ａ）に示す変形例では、粘着剤塗布領域１５の幅方向の長さとなる。

【0036】

また、図４（ｂ）に示すように、粘着剤１４を、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部のうち、吸収性物品１０の長手方向の両側に設けてもよい。この場合、粘着剤１４は、吸収性物品１０の幅方向に長く塗布されることが好ましい。図４（ｂ）に示す変形例では、長手方向の両側の粘着剤塗布領域１５は、吸収性物品１０の幅方向の中央側が長手方向の外側（長手方向の中央から離間する方向）へ膨出するように円弧状に湾曲して延びている。粘着剤塗布領域１５の延設長さＬ５は、２０ｍｍ以上１００ｍｍ以下であることが好ましい。図４（ｂ）に示す変形例では、粘着剤塗布領域１５の延設長さＬ５は、湾曲している方向に沿った長さとなる。また、粘着剤塗布領域１５の幅Ｌ６は、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下であることが好ましい。粘着剤塗布領域１５の延設長さＬ５及び幅Ｌ６を上記範囲に設定することによって、粘着剤１４の塗布量を抑えつつ、吸収性物品１０を貼り付け対象１に対して安定的に貼り付けることができる。

【0037】

なお、本実施形態では、貼り付け対象１に対して貼り付け可能な止着材として粘着剤１４を使用したが、これに限定されるものではなく、例えば貼り付け対象１に対して貼り付け可能な両面テープやフックテープ等を止着材としてもよい。また、本実施形態では、止着材をトップシート１１の肌側面１１ａに設けたが、これに限定されるものではなく、吸収性物品１０の肌側面に設けていればよく、例えば、吸収性物品１０の肌側面にトップシート１１とは異なる他のシートを設けている場合には、当該他のシートの肌側面に止着材を設けてもよい。

【0038】

（指掛部）
図５に示すように、吸収性物品１０は、吸収性物品１０の非肌側面（本実施形態ではバックシート１２の非肌側面１２ａ）に配置されて指ｆを掛けることが可能な指掛部１６を備えてもよい。

【0039】

図５は、吸収性物品の非肌側からの平面図であって、（ａ）は１つの指掛部を設けた状態を、（ｂ）は２つの指掛部を設けた状態をそれぞれ示す。

【0040】

図５（ａ）に示すように、指掛部１６を長手方向のいずれか一方側に設けてもよい。指掛部１６は、例えば、バックシート１２の非肌側面１２ａに対向して配置される指掛シート１６ａによって形成されてもよい。指掛シート１６ａは、バックシート１２と同じ素材で形成されることが好ましい。指掛部１６は、バックシート１２の非肌側面１２ａとの間に指ｆを挿入可能なポケット状の指掛部１６であってもよい。この場合、ポケット状の指掛部１６の開口は、長手方向の他方側へ開口していることが好ましい。

【0041】

或いは、図５（ｂ）に示すように、ポケット状の指掛部１６を長手方向の両側に設けてもよい。この場合、長手方向の両側のポケット状の指掛部１６の開口は、互いに向き合うように、長手方向の内側へ開口していることが好ましい。

【0042】

なお、本実施形態では、指掛シート１６ａを、バックシート１２の非肌側面１２ａに対向して配置し、これにより指掛シート１６ａとバックシート１２の非肌側面１２ａとの間に指を挿入可能としたが、これに限定されるものではなく、例えば、予めポケット状に形成された部材を吸収性物品１０の非肌側面に固定し、当該部材を指掛部１６として機能させてもよい。また、指掛部１６は、ポケット状の指掛部１６に限定されるものではなく、例えば、図５（ａ）及び図５（ｂ）に二点鎖線で示すように、吸収性物品１０の幅方向に延びる帯状の指掛シート１６ａａの幅方向の両端部を吸収性物品１０に固定することによって形成される、長手方向の両側から指ｆを掛けることが可能な帯状の指掛部１６であってもよい。

【0043】

＜吸収性物品個包装体＞
次に、本発明の一実施形態に係る吸収性物品個包装体３０について説明する。

【0044】

図６は、吸収性物品を２つ折りに折り畳んだ状態の吸収性物品個包装体の説明図であって、（ａ）は広げた状態を、（ｂ）は一部を折り畳んだ状態を、（ｃ）は包装した状態をそれぞれ示す。図７は、吸収性物品を３つ折りに折り畳んだ状態の吸収性物品個包装体の説明図であって、（ａ）は広げた状態を、（ｂ）は一部を折り畳んだ状態を、（ｃ）は包装した状態をそれぞれ示す。

【0045】

図６及び図７に示すように、吸収性物品個包装体３０は、吸収性物品１０と、吸収性物品１０を包装する個包装シート２０とを含む。

【0046】

（個包装シート）
図６（ａ）及び図７（ａ）に示すように、個包装シート２０は、吸収性物品１０を個包装するためのシート状の部材であって、本実施形態では平面視において矩形状に形成される。個包装シート２０の長手方向及び幅方向の長さは、吸収性物品１０よりも長い。なお、個包装シート２０の形状は矩形状に限定されるものではなく、吸収性物品１０を包装可能な形状であればよく、例えば、長円状、楕円形状、４角が丸まった角丸矩形状等であってもよい。

【0047】

個包装シート２０の材質としては特に限定されず、不織布、樹脂フィルム、少なくとも表面に撥水性を付与した紙製シート等、種々のものを使用できる。不織布としては、バックシート１２に用いられる不織布が好ましく、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布を含む複合不織布等がより好ましい。スパンボンド不織布を含む複合不織布としては、例えば、スパンボンド不織布／メルトブロー不織布／スパンボンド不織布等が挙げられる。

【0048】

個包装シート２０としてフィルムシート（樹脂フィルムのシート）を使用する場合には、個包装シート２０を、吸収性物品１０の肌側面（トップシート１１側の粘着剤１４が設けられている面）に対向させて、吸収性物品１０の粘着剤１４に剥離可能に取り付ける。これにより、個包装シート２０を、吸収性物品１０を包装するシートとして機能させるとともに、吸収性物品１０の粘着剤１４を保護するシートとして機能させることができる。

【0049】

一方、個包装シート２０として不織布シート（不織布のシート）を使用する場合には、図１及び図４に二点鎖線で示すように、吸収性物品１０の粘着剤１４を覆うことによって粘着剤１４を保護する剥離シート２１を粘着剤１４に取り付けることが好ましい。剥離シート２１は、吸収性物品１０の肌側面（トップシート１１側の粘着剤１４が設けられている面）に対向させて、吸収性物品１０の粘着剤１４に剥離可能に取り付けられる。すなわち、吸収性物品個包装体３０は、個包装シート２０が不織布シートである場合には、吸収性物品１０の粘着剤１４に剥離可能に取り付けられる剥離シート２１を備えることが好ましい。剥離シート２１のうち吸収性物品１０の粘着剤１４に対向する面とは反対側の面は、個包装シート２０に固定されていてもよい。剥離シート２１の材質としては、例えば、フィルムシート、不織布シート、紙等が挙げられる。フィルムシートや不織布シートなどには、例えば、高齢者が取り扱い易いように、エンボス加工や伸縮加工を施してもよい。

【0050】

図６に示すように、吸収性物品個包装体３０は、吸収性物品１０を２つ折りに折り畳んだ状態に個包装してもよい。個包装する前の状態では、図６（ａ）に示すように、吸収性物品１０は、肌側面（トップシート１１側）を個包装シート２０に対向させた状態で個包装シート２０の一面上に配置される。この状態では、吸収性物品１０の長手方向の中央が、個包装シート２０の長手方向の中央よりも長手方向の一側に偏った状態となっていてもよい。吸収性物品１０を個包装する場合、先ず、図６（ｂ）に白抜き矢印で示すように、吸収性物品１０を長手方向の略中央（図６（ａ）に一点鎖線ａ１で示す位置）で２つ折りに折り畳むように、個包装シート２０の一端側を他端側へ吸収性物品１０と共に折り畳む。この状態では、吸収性物品１０のバックシート１２の長手方向の両側が互いに対向している。次に、図６（ｃ）に白抜き矢印で示すように、個包装シート２０の一端に沿った位置（図６（ｂ）に一点鎖線ａ２で示す位置）で個包装シート２０の他端側を一端側に重ねるように折り畳む。ここで、個包装シート２０の他端側を一端側に対して封止テープ（図示省略）によって固定してもよい。これにより、吸収性物品１０を２つ折りに折り畳んだ状態に個包装することができる。

【0051】

また、図７に示すように、吸収性物品個包装体３０は、吸収性物品１０を３つ折りに折り畳んだ状態に個包装してもよい。個包装する前の状態では、吸収性物品１０は、肌側面（トップシート１１側）を個包装シート２０に対向させた状態で個包装シート２０の一面上に配置される。この状態では、吸収性物品１０の長手方向の中央と、個包装シート２０の長手方向の中央とが一致していてもよい。吸収性物品１０を個包装する場合、先ず、図７（ｂ）に白抜き矢印で示すように、吸収性物品１０の長手方向の一端側から長手方向の長さの三分の一を超えない位置（図７（ａ）に一点鎖線ａ１で示す位置）で、個包装シート２０の一端側を他側へ吸収性物品１０と共に折り畳む。次に、図７（ｃ）に白抜き矢印で示すように、吸収性物品１０の長手方向の他端側から長手方向の長さの三分の一を超えない位置（図７（ａ）に一点鎖線ａ２で示す位置）で、前工程で折り畳んだ個包装シート２０上に個包装シート２０の他端側を重ねるように吸収性物品１０と共に折り畳む。ここで、個包装シート２０の他端側を前工程で折り畳んだ個包装シート２０に対して封止テープ（図示省略）によって固定してもよい。これにより、吸収性物品１０を３つ折りに折り畳んだ状態に個包装することができる。

【0052】

なお、本実施形態では、吸収性物品１０を２つ折りに折り畳んだ吸収性物品個包装体３０、及び吸収性物品１０を３つ折りに折り畳んだ吸収性物品個包装体３０について説明したが、吸収性物品１０の折り畳み態様はこれらに限定されるものではなく、２つ折りや３つ折りとは異なる他の態様で折り畳んだ吸収性物品個包装体であってもよい。

【0053】

次に、吸収性物品１０の使用方法の一例について説明する。

【0054】

図８は、吸収性物品を着用した状態を示す説明図である。なお、図８では、着用者の身体Ｂを概略的に図示しており、身体Ｂの下側の曲線部分は股下部であり、着用者の脚の図示を省略している。また、図８では、着用者が下着等のインナー（貼り付け対象１）及び衣服等のアウター２を着用している状態を図示している。

【0055】

先ず、吸収性物品１０を使用する場合、吸収性物品個包装体３０を開封し、吸収性物品１０を個包装シート２０から取り外す。このとき、吸収性物品１０に剥離シート２１が付着している場合には、吸収性物品１０から剥離シート２１を取り外す。そして、図８に示すように、吸収性物品１０の肌側面（本実施形態ではトップシート１１の肌側面１１ａ）を、貼り付け対象１である下着の外側面（非肌側面）に対向させた状態で、吸収性物品１０を下着（貼り付け対象１）の所望の位置に対して、粘着剤１４によって貼り付ける。貼り付け対象１の外側面に貼り付けられた吸収性物品１０は、貼り付け対象１を透過した体液（例えば微量の尿等）を吸収し、保持することによって、衣服等のアウター２への体液の染み出しを防止する。

【0056】

上記のように構成された吸収性物品１０及び吸収性物品個包装体３０では、吸収性物品１０は、貼り付け対象１（本実施形態では下着）に対して貼り付け可能な止着材（本実施形態では粘着剤１４）を、肌側面の周縁部に備える。このため、吸収性物品１０の肌側面を貼り付け対象１の外側面（非肌側面）に対向させた状態で、吸収性物品１０を貼り付け対象１に対して貼り付けることができる。このように、吸収性物品１０は、着用時に着用者の肌に直接触れないので、着用時の違和感を抑えることができる。これにより、特に、女性よりも吸収性物品１０を着用する機会が少ない男性であっても、吸収性物品１０を着用することへの抵抗を和らげることができる。

【0057】

また、吸収性物品１０は、着用時に着用者の肌に直接触れないので、吸収性物品１０に起因する着用者の肌のかぶれやムレを抑えることができる。

【0058】

したがって、本実施形態によれば、着用時の違和感を抑えることができ、着用者の肌のかぶれやムレを抑えることができる。

【0059】

また、粘着剤１４を、トップシート１１の肌側面１１ａの周縁部のうち、吸収性物品１０の長手方向の両側、又は吸収性物品１０の幅方向の両側に設けることによって、粘着剤１４の塗布量を抑えつつ、吸収性物品１０を貼り付け対象１に対して安定的に貼り付けることができる。

【0060】

また、指ｆを掛けることが可能な指掛部１６を吸収性物品１０の非肌側面に設けることによって、吸収性物品１０の着脱時（貼り付け対象１への貼り付け時、及び貼り付け対象１からの取り外し時）に、吸収性物品１０の非肌側面側（バックシート１２側）の指掛部１６に指ｆを掛けて着脱作業をすることができる。このため、吸収性物品１０の肌側面側（トップシート１１側）に触れることなく、清潔かつ容易に吸収性物品１０の着脱作業を行うことができる。

【0061】

また、吸収性物品１０を個包装シート２０で包装した吸収性物品個包装体３０にすることによって、吸収性物品１０を衛生的に持ち運びやすくなる。

【0062】

また、粘着剤１４に剥離可能に取り付けられる剥離シート２１を設けることによって、使用前の吸収性物品１０の粘着剤１４を剥離シート２１で保護することができ、使用時には剥離シート２１を剥がして吸収性物品１０を使用することができる。また、個包装シート２０が不織布シートである場合には、剥離シート２１を設けることによって、個包装シート２０への粘着剤１４の接着を防止することができる。

【0063】

また、個包装シート２０を、粘着剤１４に剥離可能に取り付けられるフィルムシートにすることによって、剥離シート２１等を用いることなく使用前の吸収性物品１０の粘着剤１４を個包装シート２０で保護することができ、使用時には個包装シート２０から吸収性物品１０を剥がして使用することができる。すなわち、個包装シート２０を、吸収性物品１０を包装するシートとして機能させるとともに、吸収性物品１０の粘着剤１４を保護するシートとして機能させることができる。

【0064】

なお、本実施形態では、吸収性物品１０を所定方向（図中の矢印Ｘに沿った方向）に長い俵状に形成したが、吸収性物品１０の形状は、特に限定されるものではない。例えば、吸収性物品１０の形状は、所定方向に長い矩形状であってもよいし、或いは、正方形状や円形状であってもよい。

【0065】

以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。

【符号の説明】

【0066】

１：貼り付け対象
２：アウター
１０：吸収性物品
１１：トップシート
１２：バックシート
１３：吸収体
１４：粘着剤（止着材）
１５：粘着剤塗布領域
１６：指掛部
２０：個包装シート
２１：剥離シート
３０：吸収性物品個包装体

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】