(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076815
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】すり潰し砥石と、この砥石を備えるすり潰し装置
(51)【国際特許分類】
B02C 7/04 20060101AFI20240530BHJP
B24D 7/00 20060101ALI20240530BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20240530BHJP
B24D 7/18 20060101ALI20240530BHJP
B02C 7/12 20060101ALI20240530BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B02C7/04
B24D7/00 P
B24D3/06 D
B24D7/18 Z
B02C7/12
C09K3/14 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188598
(22)【出願日】2022-11-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年3月22日から、製品カタログの配布にて公開 2.令和4年5月1日から、自社ウェブサイトにて公開 3.令和4年6月7日から10日、FOOMA JAPAN 2022に出展し公開 4.令和4年7月14日から、証明書に記載の場所に納入 5.令和4年7月15日、株式会社フードジャーナル社が発行する月刊ソイフードジャーナル7月号にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】591060566
【氏名又は名称】丸井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】井伊 勝彦
【テーマコード(参考)】
3C063
4D063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA03
3C063BA04
3C063BA08
3C063BB02
3C063BB24
3C063BC02
3C063BG01
3C063BG07
3C063BH05
3C063BH27
3C063EE01
4D063DD06
4D063DD15
4D063GA04
4D063GB05
4D063GD04
4D063GD12
(57)【要約】
【課題】詰まりが生じ難く、しかも処理能力に優れたすり潰し砥石をより安価に提供する。
【解決手段】すり潰し砥石17のすり潰し面44に多数個の砥粒42を群状に配してなる砥粒固定領域51を形成する。この砥粒固定領域51は、当該すり潰し面44の外周縁に沿うリング状の第1領域52と、当該第1領域52に囲まれる内側領域53に部分的に配置された第2領域54とで構成する。内側領域53の第2領域54を除く部分に、砥粒42の無い非固定領域56を形成し、第2領域54を内側領域53に分散状に配置された複数個の単位固定部55で構成する。すり潰し面44の中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43を回転させた際の単位固定部55の回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されないように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
すり潰し装置の加工室(1)内に向い合せ状にセットされ、加工室(1)内に投入された原料のすり潰し加工を行う上下一対の砥石であって、
各砥石は、中央開口(45)を有し、該中央開口(45)を除く上下面のいずれか一方にすり潰し面(44)を有する金属円盤体からなるベース(43)と、ベース(43)のすり潰し面(44)に固定された多数個の砥粒(42)とからなり、
すり潰し面(44)に多数個の砥粒(42)を群状に配してなる砥粒固定領域(51)が、当該すり潰し面(44)の外周縁に沿うリング状の第1領域(52)と、当該第1領域(52)に囲まれる内側領域(53)に部分的に配置された第2領域(54)とで構成されており、
内側領域(53)の第2領域(54)を除く部分に、砥粒(42)の無い非固定領域(56)が形成されており、
第2領域(54)は、内側領域(53)に分散状に配置された複数個の単位固定部(55)で構成されており、
すり潰し面(44)の中心を通って径方向に走る仮想直線(L)と、ベース(43)を回転させた際の単位固定部(55)の回転軌跡(T)とを規定し、仮想直線(L)上に全ての単位固定部(55)の回転軌跡(T)を投影させたとき、
内側領域(53)における仮想直線(L)上に回転軌跡(T)が投影されない空白の領域が形成されないように構成されていることを特徴とするすり潰し砥石。
【請求項2】
砥粒固定領域(51)が、すり潰し面(44)の表面に形成された、ベース(43)を構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層(58)と、該溶着層(58)に保持された砥粒(42)とで構成されている、請求項1記載のすり潰し砥石。
【請求項3】
加工室(1)内にセットされる砥石は、回転しない固定砥石(18)と、駆動力を受けて回転する回転砥石(19)とからなり、
固定砥石(18)の第2領域(54A(54))が、すり潰し面(44A(44))の中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部(55A(55))により放射状に形成されており、
隣り合う単位固定部(55A(55))により区画される非固定領域(56A(56))が、外拡がりの扇状に形成されており、
各単位固定部(55A(55)には、すり潰し面(44A(44))の径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に砥粒の無いブランク部(57A(57))が形成されており、
隣り合う単位固定部(55A(55))におけるすり潰し面(44A(44))の中心からブランク部(57A(57))までの距離が互いに異なるものとされている請求項1又は2記載のすり潰し砥石。
【請求項4】
加工室(1)内にセットされる砥石は、回転しない固定砥石(18)と、駆動力を受けて回転する回転砥石(19)とからなり、
回転砥石(19)の第2領域(54B(54))が、すり潰し面(44B(44))の中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部(55B(55))により放射状に形成されており、
隣り合う単位固定部(55B(55))により区画される非固定領域(56B(56))が、外拡がりの扇状に形成されており、
単位固定部(55B(55))は、すり潰し面(44B(44))の径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に、砥粒の無いブランク部(57B(57))を有する第1の単位固定部(66)と、ブランク部(57B(57))を有しない第2の単位固定部(67)とで構成されており、
第1の単位固定部(66)と第2の単位固定部(67)とが周方向に交互に配置されている、請求項1又は2記載のすり潰し砥石。
【請求項5】
第2領域(54B(54))が、第1の単位固定部(66)と第2の単位固定部(67)との間に形成されて、第1領域(52B(52))に接する外拡がりの扇状に形成された第3の単位固定部(68)を含む、請求項4記載のすり潰し砥石。
【請求項6】
加工室(1)内で向い合せ状にセットされる固定砥石(18)と回転砥石(19)とを備え、
固定砥石(18)及び回転砥石(19)が請求項1に記載のすり潰し砥石(17)で構成されているすり潰し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆や胡麻などの穀物のすり潰し加工に使用されるすり潰し砥石、及びこの砥石を備えるすり潰し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のすり潰し砥石には、砥粒と結合剤とを混ぜ合わせ、これを焼結して製作されるものがある。このような焼結により製作された砥石は、気孔が多数存在する多孔質体であるため、気孔内に水が溜まり、或いは砥石ですり潰された原料が侵入することが避けられない。このため、清掃に多大な労力を要する点と、気孔内に侵入した穀物が腐敗しやすい点に難がある。
【0003】
上記問題を解決するものとして、金属円盤に砥粒を固定したすり潰し砥石が知られている。例えば、特許文献1には、鉄等の金属盤の表面の全体にタングステンカーバイトからなる砥粒が固定された砥石(超硬摩砕砥石)が開示されている。金属盤の表面は、外周部が平坦面とされ、外周部の内側が截頭円錐台形状の中窪み面とされており、平坦面の全面に相対的に粒径の細かい砥粒が電着され、中窪み面の全面に相対的に粒径の荒い砥粒が電着されている。すり潰し装置には、砥粒が固定された面どうしが向かい合う状態で、上述の一対の砥石がセットされ、一方の砥石を固定し、他方の砥石を高速で回転させることで、これら砥石の間に投入された原料に対するすり潰し加工が行われる。かかるすり潰し加工では、これら砥石の間で原料が外方向へ移動され、両砥石の外周縁部分からすり潰された原料が排出される。以上のような金属円盤の表面に砥粒を固定してなるすり潰し砥石では、焼結により製作された砥石のような気孔は存在しないため、より簡単に清掃を行うことができる。気孔内に水が溜まることはなく、また気孔に侵入した穀物が腐敗することもなく、衛生的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のすり潰し砥石では、金属盤の表面の全体に砥粒が固定されているため、すり潰された原料が砥粒に引っ掛かる「詰まり」が生じやすい。つまり、すり潰された原料が両砥石間の外周縁間から適切に排出されなくなるおそれがある。加えて、特許文献1のすり潰し砥石では、金属盤の表面の全体に砥粒が固定されているため、砥石の製造コストが格段に高くなることも避けられない。つまり、砥粒の素材であるタングステンカーバイト、人工ダイアモンド、立方晶窒化ホウ素などは極めて高価であるため、砥粒の使用量に比例して砥石の製造コストが大幅に上昇することが避けられない。これら問題は、例えば金属盤の表面における砥粒の密度を低くする、或いは砥粒を分散配置することで解消できるが、その場合には、砥石の処理能力(すり潰し能力)が著しく低下するおそれがある。元より特許文献1のすり潰し砥石では、電着により砥粒を固定しているため、金属盤の表面に部分的に電気を印加することは不可能であり、また部分的に砥粒を固定させることも不可能である。
【0006】
本発明は、以上のような従来のすり潰し砥石の抱える問題を解決することを目的としてなされたものであり、詰まりが生じ難く、しかも処理能力に優れたすり潰し砥石をより安価に提供することを目的とする。本発明の他の目的は、上記のすり潰し砥石を備えたすり潰し装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、すり潰し装置の加工室1内に向い合せ状にセットされ、加工室1内に投入された原料のすり潰し加工を行う上下一対のすり潰し砥石を対象とする。各砥石は、中央開口45を有し、該中央開口45を除く上下面のいずれか一方にすり潰し面44を有する金属円盤体からなるベース43と、ベース43のすり潰し面44に固定された多数個の砥粒42とからなる。すり潰し面44に多数個の砥粒42を群状に配してなる砥粒固定領域51が、当該すり潰し面44の外周縁に沿うリング状の第1領域52と、当該第1領域52に囲まれる内側領域53に部分的に配置された第2領域54とで構成されている。内側領域53の第2領域54を除く部分に、砥粒42の無い非固定領域56が形成されており、第2領域54は、内側領域53に分散状に配置された複数個の単位固定部55で構成されている。そして、すり潰し面44の中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43を回転させた際の単位固定部55の回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されないように構成されていることを特徴とする。
【0008】
砥粒固定領域51は、すり潰し面44の表面に形成された、ベース43を構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層58と、該溶着層58に保持された砥粒42とで構成されている。
【0009】
加工室1内にセットされる砥石は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。固定砥石18の第2領域54A(54)は、すり潰し面44A(44)の中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55A(55)により放射状に形成されており、隣り合う単位固定部55A(55)により区画される非固定領域56A(56)は、外拡がりの扇状に形成されている。各単位固定部55A(55)には、すり潰し面44A(44)の径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に砥粒の無いブランク部57A(57)が形成されており、隣り合う単位固定部55A(55)におけるすり潰し面44A(44)の中心からブランク部57A(57)までの距離が互いに異なるものとされている。
【0010】
加工室1内にセットされる砥石は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。回転砥石19の第2領域54B(54)は、すり潰し面44B(44)の中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55B(55)により放射状に形成されており、隣り合う単位固定部55B(55)により区画される非固定領域56B(56)は、外拡がりの扇状に形成されている。単位固定部55B(55)は、すり潰し面44B(44)の径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に、砥粒の無いブランク部57B(57)を有する第1の単位固定部66と、ブランク部57B(57)を有しない第2の単位固定部67とで構成されており、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67とが周方向に交互に配置されている。
【0011】
第2領域54B(54)は、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67との間に形成されて、第1領域52B(52)に接する外拡がりの扇状に形成された第3の単位固定部68を含んで構成されている。
【0012】
本発明のすり潰し装置は、加工室1内で向い合せ状にセットされる固定砥石18と回転砥石19とを備え、固定砥石18及び回転砥石19が上記のすり潰し砥石17で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のすり潰し砥石17においては、すり潰し面44に多数個の砥粒42を群状に配してなる砥粒固定領域51を、当該すり潰し面44の外周縁に沿うリング状の第1領域52と、当該第1領域52に囲まれる内側領域53に部分的に配置された第2領域54とで構成し、内側領域53の第2領域54を除く部分に、砥粒42の無い非固定領域56を形成した。このようにすり潰し面44に砥粒42の無い非固定領域56が形成されたすり潰し砥石17によれば、金属盤の一方の面の全体に砥粒を固定した従来の砥石に比べて、非固定領域56を設けた分だけ固定する砥粒42の総量を減量することができる。
【0014】
例えば、
図13の参考例のすり潰し砥石100のように、内側領域101にリング状の単位固定部102とリング状の非固定領域103とを内外方向に交互に形成した場合には、仮想直線L上に全ての単位固定部102の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域101における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されることとなる。このようにリング状の非固定領域103が形成され、空白の領域が形成されていると、当該空白の領域では、原料はすり潰されず、すり潰し砥石の処理能力が低下することが避けられない。加えて、当該空白の領域において原料が留まり、原料がスムーズに外方向へ移動せず、この点でも処理能力が低下することが避けられない。これに対して、本願発明のように、第2領域54を、内側領域53に分散状に配置された複数個の単位固定部55で構成し、すり潰し面44の中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43を回転させた際の単位固定部55の回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されないように構成されていると、上記のように空白の領域に起因して原料がすり潰されない問題は生じず、内側領域53に存する原料を確実に砥粒42と接触させることができるので、すり潰し砥石の処理能力の向上を図ることができる。加えて、すり潰し面44に砥粒42の無い非固定領域56が形成されていると、当該非固定領域56を介して原料をスムーズに外方向へ移動させることができるので、すり潰された原料が砥粒42に引っ掛かる「詰まり」が生じることを抑えることができ、この点でもすり潰し砥石の処理能力の向上を図ることができる。以上より、本発明によれば、内側領域53に存する原料を、砥粒42と確実に接触させながら、且つスムーズに外方向へ移動させることができるので、処理能力に優れたすり潰し砥石を得ることができる。
【0015】
砥粒固定領域51が、すり潰し面44の表面に形成された、ベース43を構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層58と、該溶着層58に保持された砥粒42とで構成されていると、ベース43の第1領域52及び第2領域54の単位固定部55に対応する部分に、金属片と砥粒42とを載置し、これを加熱炉で加熱して金属片のみを溶融したのち冷却することにより、溶融し固化した金属片からなる溶着層58で砥粒42を保持固定することができる。したがって、すり潰し面44の所望の部位に砥粒42を確実に固定することができる。因みに、電着により砥粒を固定する形態では、すり潰し面の全面に砥粒を形成することしかできないが、本発明によれば、すり潰し面44の所望の部位に部分的に砥粒42を固定することができる。
【0016】
加工室1内にセットされる砥石17は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。固定砥石18の第2領域54Aは、すり潰し面44Aの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55Aにより放射状に形成され、隣り合う単位固定部55Aにより区画される非固定領域56Aが、外拡がりの扇状に形成されている構成を採ることができる。これによれば、単位固定部55Aと非固定領域56Aとを内側領域53Aの周方向において均等に分散配置して、内側領域53Aの全体で均一に原料を砥粒42Aと接触させてすり潰すことができる。また、内側領域53Aの全体で均一に原料を外方向へ移動させることができる。
【0017】
各単位固定部55Aに、すり潰し面44Aの径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に砥粒の無いブランク部57Aが形成されていると、原料はブランク部57Aを介して単位固定部55Aを間に挟んで隣り合う非固定領域56A・56A間を移動することができる。これにより、原料を内側領域53Aの外方向に加えて周方向にも移動させることができるので、両砥石18・19間における原料の動きを複雑化して、原料と砥粒42Aとの接触機会を増やすことができる。また、隣り合う単位固定部55Aにおけるすり潰し面44Aの中心からブランク部57Aまでの距離が互いに異なるように構成すると、ブランク部57Aを介して隣の非固定領域56Aへ移動した原料が、ブランク部57Aを介してさらに隣の非固定領域56Aへ連続して移動することを防ぐことができるので、ブランク部57Aを移動したのちの原料と砥粒42Aとの接触機会が損なわれることを防いで、より確実にすり潰し処理を進めることができる。
【0018】
加工室1内にセットされる砥石17は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。回転砥石19の第2領域54Bが、すり潰し面44Bの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55Bにより放射状に形成され、隣り合う単位固定部55により区画される非固定領域56Bが、外拡がりの扇状に形成されている構成を採ることができる。これによれば、上記と同様に単位固定部55Bと非固定領域56Bとを内側領域53Bの周方向において均等に分散配置して、内側領域53Bの全体で均一に原料と砥粒42Bと接触させてすり潰し、また、内側領域53Bの全体で均一に原料を外方向へ移動させることができる。また、すり潰し面44Bの周方向に均等に砥粒42Bを分散配置することにより、回転砥石19の重心とベース43Bを形成する金属円盤体の中心軸とを合致させるとともに、回転砥石19の周方向の重量バランスを均一化できるので、回転砥石19の重心及びバランスが偏ることに起因して、すり潰し装置が振動することを防ぐことができる。
【0019】
単位固定部55Bが、すり潰し面44Bの径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に、砥粒の無いブランク部57Bを有する第1の単位固定部66と、ブランク部57Bを有しない第2の単位固定部67とで構成されていると、原料をブランク部57Bを介して第1の単位固定部66を間に挟んで隣り合う非固定領域56B・56B間で移動させることができる。これにより、内側領域53Bの外方向に加えて周方向にも原料を移動させることができるので、両砥石18・19間における原料の動きを複雑化して、原料と砥粒42Bとの接触機会を増やすことができる。また、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67とが周方向に交互に配置されていると、ブランク部57Bを介して隣の非固定領域56Bへ移動した原料が、ブランク部57Bを介してさらに隣の非固定領域56Bへ連続して移動することを防ぐことができるので、ブランク部57Bを移動したのちの原料と砥粒42Bとの接触機会が損なわれることを防いで、より確実にすり潰し処理を進めることができる。
【0020】
第2領域54Bが、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67との間に形成されて、第1領域52Bに接する外拡がりの扇状に形成された第3の単位固定部68を含んで構成されていると、第1領域52Bに至る直前の原料に対して、第3の単位固定部68に固定された砥粒42Bを接触させることができる。これにより、原料と砥粒42Bとの接触機会を増やして、原料をより的確にすり潰すことができる。
【0021】
加工室1内で向い合せ状に配される固定砥石18と回転砥石19とを備え、固定砥石18及び回転砥石19が上記のすり潰し砥石17で構成されているすり潰し装置によれば、砥石18・19の詰まりが生じ難く、しかも処理能力に優れたすり潰し装置を得ることができる。また、固定砥石18及び回転砥石19の製造コストを抑えることができるので、すり潰し装置の全体コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るすり潰し砥石の要部を示す図であり、(a)は固定砥石の部分底面図であり、(b)は回転砥石の部分平面図である。
【
図2】本発明に係るすり潰し砥石が適用されたすり潰し装置の縦断正面図である。
【
図3】同すり潰し装置の要部を示す縦断正面図である。
【
図4】本発明に係るすり潰し砥石で構成される固定砥石及び回転砥石の斜視図である。
【
図9】すり潰し装置から固定砥石及び回転砥石を分離した状態を示す縦断正面図である。
【
図10】固定砥石の正面図、平面図、底面図、及びX-X線断面図である。
【
図11】回転砥石の正面図、平面図、底面図、及びY-Y線断面図である。
【
図12】本発明に係るすり潰し砥石の別の実施形態を示す底面図及び部分拡大図である。
【
図13】すり潰し砥石の参考例を示す底面図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態)
図1から
図11に、本発明に係るすり潰し砥石を大豆や胡麻などの穀物(原料)のすり潰し加工に使用されるすり潰し装置に適用した実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
図2においてすり潰し装置は、原料のすり潰し加工を行う加工室1を画成する中空のハウジング2を基体とする。ハウジング2の下方には制御装置や駆動装置が設置される機械室3が設けられ、ハウジング2の上方には原料を加工室1に供給する漏斗状のホッパー4が設けられている。
【0024】
ハウジング2は、有底筒状のハウジング本体7と、該ハウジング本体7の上方開口を開閉する円盤状のハウジング蓋8と、ハウジング本体7に対してハウジング蓋8を回動可能に支持するヒンジ体9などを備える。ハウジング本体7は、円筒状の周壁10と、該周壁10の下側開口部分に設けられる底壁11とを備えている。ヒンジ体9は、周壁10の右側面とハウジング蓋8の上面とに連結されており、ハウジング蓋8は、ヒンジ体9のヒンジ軸まわりに、ハウジング本体7の上方開口を塞ぐ閉じ位置(
図2参照)と、ハウジング本体7の上方開口を開放する開放位置(
図9参照)との間で回動できる。ハウジング本体7とハウジング蓋8との間には、一対のヘルールとクランプバンドなどで構成されるヘルール継手からなるロック構造12が設けられている。閉じ位置におけるハウジング蓋8は、ロック構造12のヘルール継手を構築することでハウジング本体7に固定され、ロック構造12のヘルール継手を解除することでハウジング本体7に対してハウジング蓋8は回動できる。
【0025】
ハウジング本体7には、周壁10の左下部にすり潰された原料を排出するL字管からなる排出管15が設けられている。ハウジング本体7の内部には、排出管15に向かって下り傾斜する仕切壁16が設けられており、この仕切壁16でハウジング2は上下に仕切られ、仕切壁16よりも上側の領域が加工室1として区画される。この仕切壁16は、すり潰された原料を排出管15に向かって流下案内する案内板を兼ねている。加工室1には、一対のすり潰し砥石17・17が上下向かい合わせ状に配置される。具体的には、固定砥石18を構成するすり潰し砥石17がハウジング蓋8の下面に固定され、回転砥石19を構成するすり潰し砥石17が固定砥石18の下側に配置される。回転砥石19は、後述する駆動構造20を構成する駆動軸32に固定支持されており、回転駆動される。
【0026】
図3に示すように、ハウジング蓋8の盤面中央には、上側が小径で下側が大径の段付き孔が上下貫通状に形成されており、上側の小径孔部が原料の供給口22とされ、下側の大径孔部が固定砥石18を装着するための装着凹部23とされている。固定砥石18は、ハウジング蓋8に形成された挿通孔24を介してねじ込まれる固定ボルト25でハウジング蓋8に固定される。供給口22はホッパー4に連通されており、ホッパー4に投入された原料は、供給口22を介して加工室1内へ供給される。
【0027】
ホッパー4とハウジング蓋8とは、一対のヘルールとクランプバンドなどで構成されるヘルール継手からなる連結構造26により連結されている。ホッパー4は、連結構造26のヘルール継手を構築することでハウジング蓋8に連結され、連結構造26のヘルール継手を解除することでハウジング蓋8から分離できる。
図3において符号27は固定砥石18と装着凹部23との隙間をシールするパッキンである。
【0028】
図2に示すように駆動構造20は、底壁11に吊り下げ支持されて機械室3に配置される減速機付きの電動モーター30と、電動モーター30の出力軸にカップリング31を介して連結される駆動軸32と、内蔵されたベアリングで駆動軸32を垂直軸まわりに軸支する円筒状の軸受体33などを備える。軸受体33は、ブッシュ35で上下方向に摺動可能に支持されており、ブッシュ35は、底壁11の中央に上向きに立設される筒壁34の上半部に固定されている。筒壁34は、仕切壁16を上下に貫通する状態で設けられており、その上端部が加工室1に臨んでいる。駆動軸32と軸受体33との間、軸受体33とブッシュ35との間、及びブッシュ35と筒壁34との間は、それぞれ任意のシール構造でシールされる。
【0029】
図3に示すように駆動軸32の上端には、回転砥石19を下方から受け止めるフランジ状の受座36と、受座36の中央から上向きに立設される連結軸37とが一体的に設けられている。連結軸37は先端側過半部に雄ねじが形成された丸軸からなり、受座36に受け止め支持された回転砥石19は、連結軸37にねじ込まれる六角ナットからなる締結ナット38と袋ナットからなるロックナット39とで駆動軸32に固定される。
【0030】
図4から
図6に示すように、固定砥石18は、ステンレス鋼の円盤体からなるベース43A(43)と、ベース43Aの下面で構成されるすり潰し面44A(44)に固定される、人工ダイアモンドからなる砥粒42A(42)とを備える。ベース43Aの盤面中央には、両砥石18・19間に原料を投入するための供給口45A(中央開口45)が上下貫通状に設けられている。供給口45Aの直径は供給口22の直径よりも僅かに大きく形成されている。ベース43Aの下面は、外周縁部にリング状に設けられる水平状の水平面48と、該水平面48で囲まれるように上向きに凹み形成され、上方に行くにしたがって窄まる偏平な円錐台周面状の凹面49とで構成されている。すり潰し面44Aは、これら水平面48と凹面49とで形成される。
【0031】
砥粒42Aは、すり潰し面44Aの所定箇所に群状に配されている。このように砥粒42Aが配された領域を砥粒固定領域51A(51)と規定したとき、当該砥粒固定領域51Aは、水平面48であって、すり潰し面44Aの外周縁に沿うリング状の第1領域52A(52)と、第1領域52Aに囲まれる内側領域53A(53)に部分的に配置された第2領域54A(54)とで構成される。つまり、砥粒42Aは、すり潰し面44Aの水平面48と、凹面49の所定箇所に配される。第2領域54Aは、すり潰し面44Aの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された8本の単位固定部55A(55)により放射状に形成されている。各単位固定部55Aの幅寸法は一定とされており、単位固定部55Aは、これを区画する辺が外方向に真っすぐに走る直線帯状に形成されている。これら単位固定部55Aの間には、砥粒42Aが固定されていない非固定領域56A(56)が外拡がりの扇状に形成されている。
【0032】
各単位固定部55Aの径方向の中途部には、砥粒42Aの無いブランク部57A(57)が形成されている。ここでは、隣り合う単位固定部55Aにおける、ベース43Aの中心からブランク部57Aまでの距離は異なるものとされている。例えば、
図5において、12時の位置にある単位固定部55Aにおけるベース43Aの中心からブランク部57Aまでの距離は、1時半の位置にある単位固定部55Aにおけるそれ(ベース43Aの中心からブランク部57Aまでの距離)よりも短く設定されている。また、1時半の位置にある単位固定部55Aにおけるベース43Aの中心からブランク部57Aまでの距離は、3時の位置にある単位固定部55Aにおけるそれ(ベース43Aの中心からブランク部57Aまでの距離)よりも長く設定されている。本実施形態では、前記距離の長短が交互になるようブランク部57Aは形成されている。以上より、この固定砥石18では、
図1(a)に示すように、すり潰し面44Aの中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43Aを回転させた際の単位固定部55Aの回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55Aの回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53Aにおける仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されることを防ぐことができる。
【0033】
砥粒固定領域51Aは、ベース43Aを構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層58Aと、この溶着層58Aに保持された砥粒42Aとで構成される。より具体的には、砥粒固定領域51Aの砥粒42Aは、ベース43Aを構成するステンレス鋼よりも融点の低いニッケルからなる金属片を溶融してなる溶着層58Aにより、ベース43Aに固定されている。第2領域54Aに固定される砥粒42Aの粒径は、第1領域52Aに固定される砥粒42Aの粒径よりも大きく(荒く)設定されている。
【0034】
溶着層58Aによる砥粒42Aの固定は、すり潰し面44Aを上向きにしたベース43Aの砥粒42Aの固定部位にニッケルからなる箔を載置し、さらにニッケル箔の表面に砥粒42Aを載置して、これを加熱炉で加熱してニッケル箔(金属片)のみを溶融させたのち全体を冷却する。これにてニッケル箔が溶融固化されて溶着層58Aとなり、溶着層58Aで砥粒42Aを保持することができる。ニッケル箔及び砥粒42Aを載置する際、ろう付けに用いられるフラックスなどをベース43A及びニッケル箔の表面に塗布することで、ベース43Aに対してニッケル箔を、ニッケル箔に対して砥粒42Aを仮固定することができる。
【0035】
固定砥石18の内側領域53Aは凹面49で構成されているため、加熱炉での加熱時に凹面49の下り方向に溶融したニッケルが流下して、内側領域53Aの内方端側に配された砥粒42Aが溶着層58に埋没するおそれがある。本実施形態の単位固定部55は、径方向の中途部にブランク部57Aが設けられているので、単位固定部55は、ブランク部57Aを間にして内外の二つ(複数)の部位に分割され、これに伴い、溶着層58Aを構成するニッケル箔も二つ(複数)に分割される。これにより、砥粒42Aが固定される内外の各部位に使用されるニッケル箔の量は、ブランク部57Aを備えない単位固定部55に比べて少量となる。したがって、溶融したニッケルが流下した場合でも内側領域53Aの内方端側の砥粒42Aが溶着層58に埋没することを抑制することができる。
【0036】
ベース43Aの上面には、先の固定ボルト25がねじ込まれる4個のねじ孔60が凹み形成されており、各ねじ孔60は、ベース43Aの中心に対して周方向等間隔に設けられている。また、ベース43Aの上面及び周側面には、パッキン27を装着するための周回状の溝61が凹み形成されている。水平面48の内側縁部は、凹面49の外側縁部よりも下側に位置しており、第1領域52Aと内側領域53Aとの間には、僅かに段差が形成されている。
【0037】
図4、
図7及び
図8に示すように回転砥石19は、ステンレス鋼の円盤体からなるベース43B(43)と、ベース43Bの上面で構成されるすり潰し面44B(44)に固定される、人工ダイアモンドからなる砥粒42B(42)とを備える。ベース43Bの盤面中央には、駆動構造20の連結軸37が挿通される固定孔45B(中央開口45)が上下貫通状に設けられている。固定孔45Bの内径は、連結軸37の外形と略同一に形成されている。ベース43Bの上面は、外周縁部にリング状に設けられる水平状の外側水平面63と、固定孔45Bの縁部にリング状に設けられる水平状の内側水平面64と、両水平面63・64の間に設けられる中央水平面65とで構成される。すり潰し面44Bは、このうちの外側水平面63と中央水平面65とで形成されており、外側水平面63がリング状の第1領域52B(52)を構成し、中央水平面65が内側領域53B(53)を構成する。また、内側水平面64は、連結軸37にねじ込まれる締結ナット38の座面を構成する。
【0038】
砥粒42Bは、すり潰し面44Bの所定箇所に群状に配されている。このように砥粒42Bが配された領域を砥粒固定領域51B(51)と規定したとき、当該砥粒固定領域51Bは、外側水平面63であって、すり潰し面44Bの外周縁に沿うリング状の第1領域52Bと、第1領域52Bに囲まれる内側領域53Bに部分的に配置された第2領域54B(54)とで構成される。つまり、砥粒42Bは、すり潰し面44Bの外側水平面63と中央水平面65の所定箇所に配される。第2領域54Bは、すり潰し面44Bの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された8本の帯状の単位固定部55Bにより放射状に形成されている。各単位固定部55Bの幅寸法は一定とされており、単位固定部55Bは、これを区画する辺が外方向に真っすぐに走る直線帯状に形成されている。これら単位固定部55Bの間には、砥粒42Bが固定されていない非固定領域56Bが外拡がりの扇状に形成されている。
【0039】
単位固定部55Bは、すり潰し面44Bの径方向の内端部に砥粒42Bの無いブランク部57Bを有する第1の単位固定部66と、ブランク部57Bを有しない第2の単位固定部67と、これら第1の単位固定部66と第2の単位固定部67の間に形成された第3の単位固定部68とで構成される。第1の単位固定部66と第2の単位固定部67とは周方向に交互に配置されている。第3の単位固定部68は、外拡がりの扇状に形成されており、第1領域52Bに接するように配されている。以上より、この回転砥石19では、
図1(b)に示すように、すり潰し面44Bの中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43Bを回転させた際の単位固定部55Bの回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55Bの回転軌跡を投影させたとき、内側領域53Bにおける仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されることを防ぐことができる。
【0040】
砥粒固定領域51Bは、ベース43Bを構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層58Bと、この溶着層58Bに保持された砥粒42Bとで構成される。より具体的には、砥粒固定領域51Bの砥粒42Bは、ベース43Bを構成するステンレス鋼よりも融点の低いニッケルからなる金属片を溶融してなる溶着層58Bにより、ベース43Bに固定されている。第2領域54Bに固定される砥粒42B(第1及び第2の単位固定部66・67)の粒径は同一であり、第1領域52Bに固定される砥粒42Bの粒径よりも大きく(荒く)設定されている。
【0041】
溶着層58Bによる砥粒42Bの固定は、すり潰し面44Bを上向きにしたベース43Bの砥粒42Bの固定部位にニッケルからなる箔を載置し、さらにニッケル箔の表面に砥粒42Bを載置して、これを加熱炉で加熱してニッケル箔(金属片)のみを溶融させたのち全体を冷却する。これにてニッケル箔が溶融固化されて溶着層58Bとなり、溶着層58Bで砥粒42Bを保持することができる。ニッケル箔及び砥粒42Bを載置する際、ろう付けに用いられるフラックスなどをベース43B及びニッケル箔の表面に塗布することで、ベース43Bに対してニッケル箔を、ニッケル箔に対して砥粒42Bを仮固定することができる。
【0042】
外側水平面63の内側縁部は、中央水平面65の外側縁部よりも上側に位置しており、第1領域52Bと内側領域53Bとの間には、僅かに段差が形成されている。また、内側水平面64の外側縁部は、中央水平面65の内側縁部よりも上側に位置しており、締結ナット38の座面と内側領域53Bとの間には、僅かに段差が形成されている。ベース43Bの下面は、駆動構造20の受座36で受け止められる部分が上向きに凹み形成されている。
【0043】
図3に示すように、固定砥石18のベース43Aの直径と、回転砥石19のベース43Bの直径とは同一に設定されており、両砥石18・19は、ベース43Aとベース43Bのそれぞれの中心軸が一致するように加工室1に配置される。また、固定砥石18の第1領域52Aと、回転砥石19の第1領域52Bとは同一形状に形成されて、第1領域52A・52Bどうしはその全域が正対している。加工室1内に向い合せ状にセットされた両砥石18・19の間には、内側領域53A・53Bが正対する部分には、上下に偏平な円錐台状の空間が形成される。以上より、原料のすり潰し加工において、原料は両砥石18・19間の内側領域53A・53Bの部分において荒すりされ、第1領域52A・52Bの部分において仕上げすりされる。
【0044】
すり潰し装置は、向かい合わせ状に配置される固定砥石18と回転砥石19との上下方向のクリアランスC、具体的には、固定砥石18のすり潰し面44Aの第1領域52Aと、回転砥石19のすり潰し面44Bの第1領域52Bとの対向間隔を調整するための隙間調整構造70を備えている。
図2に示すように隙間調整構造70は、水平軸まわりに回転操作可能な操作軸71と、操作軸71で垂直軸まわりに回転操作される原動ギヤ72と、軸受体33の下端に一体に設けられ、原動ギヤ72と噛み合う従動ギヤ73と、軸受体33と筒壁34との間に設けられる雌雄のねじ部74・75からなるねじ機構などで構成される。
【0045】
操作軸71は、ヒンジ体9の下方において周壁10を内外に貫通しており、その先端部がハウジング2の外部に突出し、基端部がハウジング2の内部に位置する。操作軸71の基端部は変換機構76に連結されており、操作軸71の回転は、変換機構76で減速されつつ垂直軸まわりの回転に変換され原動ギヤ72に伝動される。ねじ機構は右ねじからなり、雌ねじ部74は筒壁34の内面の下半部に形成され、雄ねじ部75は軸受体33の外面の下半部に形成されている。変換機構76は仕切壁16で仕切られるハウジング2の下側の領域に配置され、原動ギヤ72及び従動ギヤ73は機械室3に配置される。
【0046】
操作軸71をその軸芯に対して時計まわり方向に回転させると、変換機構によって原動ギヤ72は平面視で時計まわり方向に回転される。この原動ギヤ72の回転を受けて従動ギヤ73は反時計まわり方向に回転し、従動ギヤ73とともに軸受体33も反時計まわり方向に回転する。軸受体33が反時計まわり方向に回転すると、右ねじからなるねじ機構により軸受体33は上方に移動するので、駆動軸32の全体が上方に変位し、固定砥石18と回転砥石19とのクリアランスCは小さく(狭く)なる。逆に、操作軸71をその軸芯に対して反時計まわり方向に回転させると、原動ギヤ72及び従動ギヤ73は上記とは逆方向に回転され、ねじ機構により軸受体33は下方に移動するので、駆動軸32の全体が下方に変位し、固定砥石18と回転砥石19とのクリアランスCは大きく(広く)なる。駆動軸32の上下方向の変位は、カップリング31で吸収され、電動モーター30の回転動力は、問題なく駆動軸32に伝動される。
【0047】
両砥石18・19の着脱は、
図9に示すハウジング蓋8を開放位置へと切換えた状態で行うことができる。すり潰し装置から分離されている固定砥石18は、2箇所の溝61・61にそれぞれパッキン27・27を取り付けたのち固定砥石18を装着凹部23に嵌め込み、この状態でハウジング蓋8の外面側から挿通孔24を介して固定ボルト25をねじ孔60にねじ込むことにより、ハウジング蓋8に取り付けることができる。また、すり潰し装置から分離されている回転砥石19は、固定孔45Bに連結軸37が挿通される状態で回転砥石19を受座36で受け止め支持し、この状態で連結軸37に締結ナット38とロックナット39とを順にねじ込むことにより、駆動構造20に取り付けることができる。
【0048】
逆に、ハウジング蓋8に取り付けられている固定砥石18は、固定ボルト25を緩め操作して固定ボルト25を取り外し、装着凹部23から抜き出すことにより分離することができる。また、駆動構造20に取り付けられている回転砥石19は、ロックナット39及び締結ナット38を緩め操作して連結軸37から取り外し、上方に持ち上げることにより分離することができる。
【0049】
電動モーター30を起動すると、回転砥石19は回転駆動され、すり潰し加工が可能な状態となる。ホッパー4に例えば水に浸漬して水分を含ませた大豆(原料)を投入すると、ホッパー4の下端から供給口22及び供給口45Aを介して、加工室1内の両砥石18・19間に大豆が供給される。このとき、回転砥石19の連結軸37にねじ込まれたロックナット39の頂部がガイドとなり、大豆はロックナット39の周囲(回転砥石19の回転中心の周囲)に分散供給される。両砥石18・19間に供給された大豆は、両砥石18・19の中心側から外周側に向かって両すり潰し面44A・44Bの間を移動しつつ、両内側領域53A・53Bに固定された砥粒42A・42Bで荒すりされる。荒すり時においては、主として固定砥石18の単位固定部55Aと、回転する回転砥石19の単位固定部55Bとが正対する状態のとき、両単位固定部55A・55Bの間に介在する大豆が、両砥粒42A・42Bですり潰される。
【0050】
荒すり時において、両内側領域53A・53Bに設けられた非固定領域56A・56Bでは、大豆は砥粒42A・42Bに引っ掛かることがなく、すり潰された大豆は両砥石18・19の外周側へ向かってスムーズに移動することができる。また、ブランク部57A・57Bによって、非固定領域56A・56Bにある大豆は、隣接する非固定領域56A・56Bへも移動できるので、原料の動きが複雑化して原料と砥粒42A・42Bは十分に接触する。このとき、単位固定部55A・55Bのブランク部57A・57Bを通過して隣接する非固定領域56A・56Bに移動した大豆は、移動下流側の単位固定部55A・55Bで砥粒42A・42Bに接触するので、ブランク部57A・57Bを設けたことによって砥粒42A・42Bと大豆との接触機会が損なわれることはなく、大豆は適切に荒すりされる。
【0051】
荒すりされ、内側領域53A・53Bの外周近傍まで至った大豆は、両第1領域52A・52Bの間で仕上げすりされ、両すり潰し面44A・44Bの外周縁間から両砥石18・19の外部へ排出される。排出され加工室1の内面で受け止められたすり潰された大豆は、周壁10及び仕切壁16を流下し、排出管15からハウジング2の外部へと排出される。すり潰された大豆の状態から、より細かくすり潰したいときには、隙間調整構造70の操作軸71を時計まわり方向に回転させ両砥石18・19のクリアランスCを小さくし、荒くすり潰したいときには、隙間調整構造70の操作軸71を反時計まわり方向に回転させ両砥石18・19のクリアランスCを大きくする。
【0052】
以上のように、本実施形態の固定砥石18及び回転砥石19を構成するすり潰し砥石17においては、すり潰し面44に多数個の砥粒42を群状に配してなる砥粒固定領域51を、当該すり潰し面44の外周縁に沿うリング状の第1領域52と、当該第1領域52に囲まれる内側領域53に部分的に配置された第2領域54とで構成し、内側領域53の第2領域54を除く部分に、砥粒42の無い非固定領域56を形成した。このようにすり潰し面44に砥粒42の無い非固定領域56が形成されたすり潰し砥石17によれば、金属盤の一方の面の全体に砥粒を固定した従来の砥石に比べて、非固定領域56を設けた分だけ固定する砥粒42の総量を減量することができる。
【0053】
例えば、
図13の参考例のすり潰し砥石100のように、内側領域101にリング状の単位固定部102とリング状の非固定領域103とを内外方向に交互に形成した場合には、仮想直線L上に全ての単位固定部102の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域101における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されることとなる。このようにリング状の非固定領域103が形成され、空白の領域が形成されていると、当該空白の領域では、原料はすり潰されず、すり潰し砥石の処理能力が低下することが避けられない。加えて、当該空白の領域において原料が留まり、原料がスムーズに外方向へ移動せず、この点でも処理能力が低下することが避けられない。これに対して、本実施形態のように、第2領域54を、内側領域53に分散状に配置された複数個の単位固定部55で構成し、すり潰し面44の中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43を回転させた際の単位固定部55の回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されないように構成されていると、上記のように空白の領域に起因して原料がすり潰されない問題は生じず、内側領域53に存する原料を確実に砥粒42と接触させることができるので、すり潰し砥石の処理能力の向上を図ることができる。加えて、すり潰し面44に砥粒42の無い非固定領域56が形成されていると、当該非固定領域56を介して原料をスムーズに外方向へ移動させることができるので、すり潰された原料が砥粒42に引っ掛かる「詰まり」が生じることを抑えることができ、この点でもすり潰し砥石の処理能力の向上を図ることができる。以上より、本実施形態によれば、内側領域53に存する原料を、砥粒42と確実に接触させながら、且つスムーズに外方向へ移動させることができるので、処理能力に優れたすり潰し砥石を得ることができる。
【0054】
砥粒固定領域51が、すり潰し面44の表面に形成された、ベース43を構成する金属よりも融点の低い金属からなる金属片を溶融してなる溶着層58と、該溶着層58に保持された砥粒42とで構成されていると、ベース43の第1領域52及び第2領域54の単位固定部55に対応する部分に、金属片と砥粒42とを載置し、これを加熱炉で加熱して金属片のみを溶融したのち冷却することにより、溶融し固化した金属片からなる溶着層58で砥粒42を保持固定することができる。したがって、すり潰し面44の所望の部位に砥粒42を確実に固定することができる。因みに、電着により砥粒を固定する形態では、すり潰し面の全面に砥粒を形成することしかできないが、本実施形態によれば、すり潰し面44の所望の部位に部分的に砥粒42を固定することができる。
【0055】
加工室1内にセットされる砥石17は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。固定砥石18の第2領域54Aは、すり潰し面44Aの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55Aにより放射状に形成され、隣り合う単位固定部55Aにより区画される非固定領域56Aが、外拡がりの扇状に形成されている構成を採ることができる。これによれば、単位固定部55Aと非固定領域56Aとを内側領域53Aの周方向において均等に分散配置して、内側領域53Aの全体で均一に原料を砥粒42Aと接触させてすり潰すことができる。また、内側領域53Aの全体で均一に原料を外方向へ移動させることができる。
【0056】
各単位固定部55Aに、すり潰し面44Aの径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に砥粒の無いブランク部57Aが形成されていると、原料はブランク部57Aを介して単位固定部55Aを間に挟んで隣り合う非固定領域56A・56A間を移動することができる。これにより、原料を内側領域53Aの外方向に加えて周方向にも移動させることができるので、両砥石18・19間における原料の動きを複雑化して、原料と砥粒42Aとの接触機会を増やすことができる。また、隣り合う単位固定部55Aにおけるすり潰し面44Aの中心からブランク部57Aまでの距離が互いに異なるように構成すると、ブランク部57Aを介して隣の非固定領域56Aへ移動した原料が、ブランク部57Aを介してさらに隣の非固定領域56Aへ連続して移動することを防ぐことができるので、ブランク部57Aを移動したのちの原料と砥粒42Aとの接触機会が損なわれることを防いで、より確実にすり潰し処理を進めることができる。
【0057】
加工室1内にセットされる砥石17は、回転しない固定砥石18と、駆動力を受けて回転する回転砥石19とからなる。回転砥石19の第2領域54Bが、すり潰し面44Bの中心側から径方向に伸びるとともに、周方向の等角度位置に配された複数個の帯状の単位固定部55Bにより放射状に形成され、隣り合う単位固定部55により区画される非固定領域56Bが、外拡がりの扇状に形成されている構成を採ることができる。これによれば、上記と同様に単位固定部55Bと非固定領域56Bとを内側領域53Bの周方向において均等に分散配置して、内側領域53Bの全体で均一に原料と砥粒42Bと接触させてすり潰し、また、内側領域53Bの全体で均一に原料を外方向へ移動させることができる。また、すり潰し面44Bの周方向に均等に砥粒42Bを分散配置することにより、回転砥石19の重心とベース43Bを形成する金属円盤体の中心軸とを合致させるとともに、回転砥石19の周方向の重量バランスを均一化できるので、回転砥石19の重心及びバランスが偏ることに起因して、すり潰し装置が振動することを防ぐことができる。
【0058】
単位固定部55Bが、すり潰し面44Bの径方向の中途部、或いは径方向の内外端部に、砥粒の無いブランク部57Bを有する第1の単位固定部66と、ブランク部57Bを有しない第2の単位固定部67とで構成されていると、原料をブランク部57Bを介して第1の単位固定部66を間に挟んで隣り合う非固定領域56B・56B間で移動させることができる。これにより、内側領域53Bの外方向に加えて周方向にも原料を移動させることができるので、両砥石18・19間における原料の動きを複雑化して、原料と砥粒42Bとの接触機会を増やすことができる。また、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67とが周方向に交互に配置されていると、ブランク部57Bを介して隣の非固定領域56Bへ移動した原料が、ブランク部57Bを介してさらに隣の非固定領域56Bへ連続して移動することを防ぐことができるので、ブランク部57Bを移動したのちの原料と砥粒42Bとの接触機会が損なわれることを防いで、より確実にすり潰し処理を進めることができる。
【0059】
第2領域54Bが、第1の単位固定部66と第2の単位固定部67との間に形成されて、第1領域52Bに接する外拡がりの扇状に形成された第3の単位固定部68を含んで構成されていると、第1領域52Bに至る直前の原料に対して、第3の単位固定部68に固定された砥粒42Bを接触させることができる。これにより、原料と砥粒42Bとの接触機会を増やして、原料をより的確にすり潰すことができる。
【0060】
加工室1内で向い合せ状に配される固定砥石18と回転砥石19とを備え、固定砥石18及び回転砥石19が上記のすり潰し砥石17で構成されているすり潰し装置によれば、砥石18・19の詰まりが生じ難く、しかも処理能力に優れたすり潰し装置を得ることができる。また、固定砥石18及び回転砥石19の製造コストを抑えることができるので、すり潰し装置の全体コストを抑えることができる。
【0061】
図12に本発明に係るすり潰し砥石の別の実施形態を示す。この実施形態の第2領域54は、断続的に形成される4個の外向きに広がる扇状の単位固定部55が、内側領域53の内周部、外周部、及び内外の周部の中央部において形成されている。内外及び中央部に形成された単位固定部55の回転軌跡Tは、内外に隣り合う単位固定部55において僅かに重畳する状態で形成されている。このすり潰し砥石17においても、すり潰し面44の中心を通って径方向に走る仮想直線Lと、ベース43を回転させた際の単位固定部55の回転軌跡Tとを規定し、仮想直線L上に全ての単位固定部55の回転軌跡Tを投影させたとき、内側領域53における仮想直線L上に回転軌跡Tが投影されない空白の領域が形成されないように構成されている。
【0062】
砥粒42、ベース43、及び溶着層58の素材、ブランク部57の位置、単位固定部55の形態は、上記実施形態のものに限られない。
【符号の説明】
【0063】
1 加工室
17 すり潰し砥石
18 固定砥石
19 回転砥石
42 砥粒
43 ベース
44 すり潰し面
45 中央開口
51 砥粒固定領域
52 第1領域
53 内側領域
54 第2領域
55 単位固定部
56 非固定領域
57 ブランク部
58 溶着層
66 第1の単位固定部
67 第2の単位固定部
68 第3の単位固定部
L すり潰し面の中心を通って径方向に走る仮想直線
T ベースを回転させた際の単位固定部の回転軌跡