(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076831
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240530BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188618
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
【テーマコード(参考)】
5H601
5H605
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601BB12
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD48
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB48
5H601JJ04
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB15
5H605BB19
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB16
(57)【要約】
【課題】モータの効率を向上させると共に、簡易な構成でありかつ組立性を向上させる。
【解決手段】モータ(1)は、シャフト(201)と、シャフト(201)を回転可能に支持する軸受(301)と、シャフト(201)を挿通可能な穴を有する筒状部(310)と、筒状部(310)の外周部を覆うステータ(130)と、ステータ(130)の外周部を囲うと共にシャフト(201)と結合されるロータ(120)と、を備え、ステータ(130)の内周面は、軸受(301)および筒状部(310)とそれぞれ接触する領域を有し、軸受(301)の軸方向における他方の端面(301gt)と、筒状部(310)の軸方向における一方の端面(311at)とは接触しており、軸受(301)の径方向の外周面と筒状部(310)の径方向の外周面とは面一である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記シャフトを挿通可能な穴を有する筒状部と、
前記筒状部の外周部を覆うステータと、
前記ステータの外周部を囲うと共に前記シャフトと結合されるロータと、
を備え、
前記ステータの内周面は、前記軸受および前記筒状部とそれぞれ接触する領域を有し、
前記軸受の軸方向における他方の端面と、前記筒状部の軸方向における一方の端面とは接触しており、
前記軸受の径方向の外周面と前記筒状部の径方向の外周面とは面一である、モータ。
【請求項2】
前記シャフトを回転可能に支持する他の軸受と、
を備え、
前記他の軸受は、前記筒状部の内側に収容されている、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ステータの内周面と前記軸受の外周面とが接触する領域の面積と、前記ステータの内周面と前記筒状部の外周面とが接触する領域の面積との比率が等しい、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記インシュレータは、前記ロータを回転駆動させるための電子部品が実装された基板の貫通孔に当該インシュレータの一部が嵌合されている、請求項1に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載向け等の信頼性を重視する分野において、性能向上よりも高速化が求められている昨今では、玉軸受(以下、「ボールベアリング」と呼ぶ。)が用いられていることが一般的であるが、スリーブ軸受に比べて軸受サイズを小型化することが難しい。
【0003】
一般的に、
図9に示すようにボールベアリングが用いられたアウターロータ型のファンモータ10としては、シャフト20の上部を支持する上側ベアリング31およびシャフト20の下部を支持する下側ベアリング32を有している。上側ベアリング31および下側ベアリング32は、円筒状のベアリングホルダ40によって保持されている。なお、
図9は、従来のファンモータの構成を示す断面図である。
【0004】
ベアリングホルダ40の外周面にはステータ50のステータコア51が一体に固定されており、ステータ50のステータコア51にはインシュレータ52を介してコイル(図示せず)が巻回されている。シャフト20はロータヨーク60と一体化されており、ロータヨーク60にはマグネット70、バックヨーク80、および、インペラ90が一体に取り付けられている。
【0005】
このようなファンモータ10においては、ステータコア51の外径はそのままの状態で内径を小さくできれば、ステータコア51のコイルの巻線スペースを拡大することができる。しかしながら、ステータコア51の内径はベアリングホルダ40の外径に依存するため、ステータコア51の内径を更に小さくすることはできない。このためファンモータ10において、ステータコア51のコイルの巻線スペースを拡大することはできなかった。
【0006】
近年、巻線スペースを拡大可能な構造のアウターロータ型のモータが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。このアウターロータ型のモータ1000(特許文献1の
図1およびその説明)においては、ステータコア1060の内周面に対して上側の軸受1023を直接支持しており、ケース1022の外径に依存しないので、コイルの巻線スペースを拡大しモータ効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら先行文献1のモータ1000では、ステータコア1060の内周面には上側の軸受1023の外周面と接触している面と、ケース1022の外周面と接触している面とが面一ではなく段差を有している。
【0009】
このため、ステータコア1060の内周面を段付き状態に形成する必要があり、ステータコア1060の構造が複雑になると共に、ステータコア1060、軸受1023、および、ケース1022のそれぞれの軸芯を一致させることが難しく、容易に組み立てられないおそれがある。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑み、モータの効率を向上させると共に、簡易な構成でありかつ組立性を向上させることを課題の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のモータは、シャフトと、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記シャフトを挿通可能な穴を有する筒状部と、前記筒状部の外周部を覆うステータと、前記ステータの外周部を囲うと共に前記シャフトと結合されるロータと、を備え、前記ステータの内周面は、前記軸受および前記筒状部とそれぞれ接触する領域を有し、前記軸受の軸方向における他方の端面と、前記筒状部の軸方向における一方の端面とは接触しており、前記軸受の径方向の外周面と前記筒状部の径方向の外周面とは面一である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの構成を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコア、インシュレータ、および、基板を示す斜視図である(ただし、コイルは省略されている)。
【
図4】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコア、インシュレータを示す斜視図である(ただし、基板は省略されている)。
【
図5】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのベアリングホルダの構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの基板の構成を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコアと従来のモータのステータコアとの取り付け位置の違いの説明に供する部分拡大図である。
【
図8】本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコアと従来のステータコアの大きさの違いの説明に供する平面図である。
【
図9】従来のファンモータの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態>
以下、本発明の一例である本実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの全体構成を示す斜視図である。
図2は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの構成を示す縦断面図である。
図3は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコア、インシュレータ、および、基板を示す斜視図である(ただし、コイルは省略されている)。
【0014】
図4は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコア、インシュレータを示す斜視図である(ただし、基板は省略されている)。
図5は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのベアリングホルダの構成を示す斜視図である。
図6は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータの基板の構成を示す斜視図である。
【0015】
図7は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコイルと従来のモータのステータコイルとの取り付け位置の違いの説明に供する部分拡大図である。
図8は、本発明の一例である本実施の形態にかかるファンモータのステータコアと従来のステータコアの大きさの違いの説明に供する平面図である。
【0016】
なお、本実施の形態の説明において、説明の便宜上、軸Xに沿った矢印a方向を上側または一方側とする。軸Xに沿った矢印b方向を下側または他方側とする。ここで、矢印ab方向を上下方向またはX軸方向と称する。ただし、上下方向は、鉛直方向とは必ずしも一致しない。また、矢印cd方向を径方向と称し、軸Xから離れる矢印c方向を外側または径方向一方側、軸Xに近づく矢印d方向を内側または径方向他方側と称する。
【0017】
<ファンモータ>
本実施の形態にかかるファンモータ1は、X軸方向に沿って空気を送る送風機である。ファンモータ1は、後述するモータ本体100(
図2)と、後述するシャフト201の一方側に配置されるインペラ210とを有する。
【0018】
インペラ210は、後述するハブ211および羽根212からなり、モータ本体100(
図2)により回転駆動される。
図1に示すように、ファンモータ1は、平面視略正方形の筒形状からなり、X軸方向上側(矢印a方向)から中空円筒形状の風洞部に空気を吸入するための吸気口100aを有している。
【0019】
ファンモータ1は、X軸方向一方側であるX軸方向上側(矢印a方向)の角部に4個の円筒状部101を一体に有している。4個の円筒状部101には、所定の機器や筐体に取り付けるためのボルト(図示せず)を挿通する貫通孔101hが設けられている。なお、
図1には図示していないが、X軸方向他方側であるX軸方向下側(矢印b方向)の角部に対しても4個の円筒状部を有し、その円筒状部に対しても貫通孔が設けられている。
【0020】
ファンモータ1は、インペラ210の周囲を径方向一方側である径方向外側(矢印c方向)から囲う4つの側壁103と、X軸方向下側(矢印b方向)の端部に形成されたモータベース部105(
図2)とを備えている。なお、側壁103とモータベース部105とは、棒状部分からなる複数のスポーク107によって結合されている。
【0021】
ファンモータ1の側壁103およびモータベース部105は、例えばガラス繊維により強化されたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂の射出成形により一体に形成されている。なお、ファンモータ1の側壁103およびモータベース部105は、その他の素材により別々に形成された後に結合されていてもよい。
【0022】
側壁103は、ファンモータ1の風洞部を形成する。側壁103は、軸Xを中心とする円筒形状の内周面103aを有する。内周面103aの直径は、インペラ210の羽根212の径方向外側(矢印c方向)の端部と接触しない大きさとなっている。すなわち、インペラ210の羽根212の径方向外側(矢印c方向)の端部と、側壁103の内周面103aとの間には、所定の隙間が形成されている。
【0023】
側壁103は、インペラ210を保護するガード部としても機能する。X軸方向において、側壁103の上側(矢印a方向)の角部には、4個の円筒状部101が、側壁103と一体に形成されている。X軸方向において、側壁103の下側(矢印b方向)の角部においても、4個の円筒状部(図示せず)が側壁103と一体に形成されている。
【0024】
図2に示すように、モータベース部105は、円盤形状または略円盤形状のベース部105aと、ベース部105aの径方向外側の端部からX軸方向上側(矢印a方向)へ所定の長さだけ延在する円筒形状の外周壁部105bと、ベース部105aの径方向他方側である径方向内側(矢印d方向)の端部からX軸方向上側(矢印a方向)へ所定の長さだけ突出する円筒形状のボス部105cとによって形成されている。
【0025】
モータベース部105において外周壁部105bの径方向外側の面には、スポーク107が一体に形成されている。モータベース部105の外周壁部105bは、スポーク107を介して、ファンモータ1の側壁103に支持されている。
【0026】
モータベース部105のベース部105aは、外周壁部105bとボス部105cとを繋ぐ部分である。ベース部105aは、後述する回路基板400と同じ外径を有している。但し、これに限るものではなく。ベース部105aは回路基板400よりも僅かに大きい、または、僅かに小さくてもよい。
【0027】
モータベース部105のボス部105cは、円筒形状を有し、その内周面において後述するベアリングホルダ310のX軸方向下側(矢印b方向)の大径円筒部311bを保持する部分であり、ベアリングホルダ310の大径円筒部311bよりも短く形成されている。
【0028】
また、ボス部105cは、X軸方向上側(矢印a方向)の端面(以下、これを「上端面」と呼ぶ。)105cu(
図7)を有し、その上端面105cuには回路基板400の内周側の端部が載置された状態で接着等により固定されている。
【0029】
また、ボス部105cの上端面105cuは、後述するインシュレータ132における柱状部133の突部133t(
図3および
図4)と上下方向(矢印ab方向)において対向するが、上端面105cuと突部133tとの間には僅かな隙間を有しており、両者は非接触である。
【0030】
インペラ210は、有底断面略逆U字状のカップ形状からなるハブ211と、ハブ211の外周面(径方向外側の面)に対し、周方向に沿って設けられた複数の羽根212とを備えている。インペラ210のハブ211および複数の羽根212は、例えばガラス繊維により強化されたポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂の射出成形により一体に形成されている。
【0031】
ハブ211は、後述するシャフト201のX軸方向上側(矢印a方向)に相当する部分を開放する円盤状の穴211hを有している。複数の羽根212は、全て同じ形状を有しており、ハブ211の周方向において当間隔で均等に5枚配置されている。なお、羽根212は、5枚に限るものではなく、4枚、6枚等のその他種々の枚数であってもよい。
【0032】
インペラ210のハブ211は、後述するロータ120のバックヨーク126の外周面(径方向外側の面)、および、ロータ120の蓋部122のX軸方向上側(矢印a方向)の上端面の一部に対して接着等により一体に固定されている。
【0033】
<モータ本体>
図2に示すように、モータ本体100は、アウターロータ型の三相のブラシレスDCモータであり、ロータ120と、ステータ130と、筒状部としての軸受装置300とを有する。なお、モータ本体100は、三相のブラシレスDCモータに限るものではなく、例えば単相ブラシレスDCモータ等、その他のモータであってもよい。
【0034】
<ロータ>
ロータ120は、シャフト201のX軸方向上側(矢印a方向)の端部に固定されている。シャフト201は、円柱形状を有する所定の長さの金属からなる棒状部材であり、そのX軸方向上側(矢印a方向)の端部がロータ120におけるロータヨーク124の内側円筒部123に固定されている。
【0035】
ロータ120は、シャフト201、ロータヨーク124、マグネット125、バックヨーク126、および、既に上述したインペラ210を有する。ロータヨーク124は、シャフト201と同軸上に配置された軟磁性材からなる外側の円筒部(以下、これを「外側円筒部」と呼ぶ。)121と、その外側円筒部121の上側の端部から径方向内側(矢印d方向)に向かって延び、外側円筒部121のX軸方向上側の開口を閉塞する円盤状または略円盤状の蓋部122と、蓋部122の径方向内側(矢印c方向)の端部からX軸方向下側(矢印b方向)へ所定の長さだけ突出する略円筒形状の内側の円筒部(以下、これを「内側円筒部」と呼ぶ。)123と、を有する。
【0036】
ロータヨーク124において、外側円筒部121のX軸方向下側(矢印b方向)の下端面には、環状のマグネット125が一体に固定されている。この場合、外側円筒部121とマグネット125とは同軸上に配置されており、かつ、同一の内径および外径を有している。つまり、外側円筒部121のX軸方向下側(矢印b方向)の延長線上にマグネット125が一体に固定されている。なお、外側円筒部121の外周面とマグネット125の外周面は面一である。
【0037】
ロータヨーク124の蓋部122は、ハブ211に円盤状の穴211hが設けられているため、その大部分が外部に露出しているが(
図1)、内部に異物が混入することを防止する蓋として機能する。なお、蓋部122の上端面とシャフト201の上端面とは面一である。但し、これに限るものではなく、シャフト201が蓋部122の上端面よりも僅かに突出していたり、蓋部122の上端面よりも僅かに凹んでいてもよい。
【0038】
ロータヨーク124の内側円筒部123は、シャフト201のX軸方向上側(矢印a方向)の端部(以下、これを「上端部」と呼ぶ。)を保持する部分であり、シャフト201が圧入された状態で一体に固定されている。なお、内側円筒部123は、外側円筒部121よりもX軸方向における長さが短い。
【0039】
ロータ120のマグネット125は、ロータヨーク124の外側円筒部121と同じ厚さを有する円筒状の永久磁石である。また、マグネット125は、外側円筒部121と一体に固定されたとき、ハブ211のX軸方向下側(矢印b方向)の下端部から飛び出ることのない高さに設定されている。すなわち、マグネット125は、ハブ211の内側空間に収容された状態で設けられている。
【0040】
ロータ120のバックヨーク126は、ロータヨーク124の外側円筒部121の外周面とマグネット125の外周面の双方に対して接着等により一体に固定された円筒状の鉄芯である。バックヨーク126は、マグネット125の磁界が外部へ漏れることを抑制する部分として機能する。
【0041】
ロータヨーク124の外周面とバックヨーク126の外周面には、インペラ210のハブ211が接着等により一体に固定されている。すなわち、ロータ120は、シャフト201、ロータヨーク124、マグネット125、バックヨーク126、および、インペラ210(ハブ211および羽根212)が一体となって回転する機構部である。
【0042】
<ステータ>
ステータ130は、ロータ120の内側に設けられており、後述する軸受装置300におけるベアリングホルダ310の外周面に固定されたステータコア131、インシュレータ132、および、コイル(図示せず)を有している。
【0043】
<ステータコア>
ステータコア131は、軟磁性材からなる電磁鋼板を複数枚積層された積層体によって形成されている。ステータコア131は、環状部131aと、環状部131aから径方向外側(矢印c方向)へ向かって延びる複数のティース部(インシュレータ132によって全体が覆われているため図示せず)と、それぞれのティース部の外周端に設けられた磁極部131bと、を備える。
【0044】
ステータコア131の環状部131aの内周面(径方向内側の面)は、ベアリングホルダ310の上側円筒部311aの外周面(径方向外側の面)に固定されている。また、ステータコア131の磁極部131bの外周面(径方向外側の面)は、マグネット125と僅かなエアギャップを介して対向するように配置されている。
【0045】
<インシュレータ>
図2乃至
図4に示すように、インシュレータ132は、ステータコア131の環状部131a、ティース部、および磁極部131bを覆っており、ステータコア131とコイルとを電気的に絶縁している。ただし、インシュレータ132は、ステータコア131の磁極部131bについてのみ露出した状態で覆っている。なお、
図3および
図4に示すように、実際にはインシュレータ132は、上側部分と下側部分とに分かれた2分割構造であり、上下方向から挟み込むようにしてステータコア131を覆っている。
【0046】
インシュレータ132は、外周側(径方向外側)の端部にX軸方向上側(矢印a方向)へ突出した突起状の壁部(以下、これを「上側外周壁部」と呼ぶ。)132wa、および、外周側(径方向外側)の端部にX軸方向下側(矢印b方向)へ突出した突起状の壁部(以下、これを「下側外周壁部」と呼ぶ。)132wbを有している。
【0047】
図2に示すように、インシュレータ132の上側外周壁部132waは、ロータ120のロータヨーク124における蓋部122には到達しておらず非接触となっている。一方、インシュレータ132の下側外周壁部132wbは、回路基板400の上端面に接触した状態で載置されている。
【0048】
また、
図3および
図4に示すように、インシュレータ132は、内周側(径方向内側)の端部にX軸方向上側(矢印a方向)へ突出した円筒状の壁部(以下、これを「上側内周壁部」と呼ぶ。)132wcを有している。同様に、インシュレータ132は、内周側(径方向内側)の端部にX軸方向下側(矢印b方向)へ突出した円筒状の下側内周壁部132wdを有している。
【0049】
さらに、インシュレータ132は、上側外周壁部132waと上側内周壁部132wcとの間、および、下側外周壁部132wbと下側内周壁部132wdとの間で、ステータコア131のティース部を全範囲にわたって覆うカバー部132kを有している。
【0050】
インシュレータ132の上側外周壁部132waと上側内周壁部132wcとの間のカバー部132k、および、下側外周壁部132wbと下側内周壁部132wdとの間のカバー部132kは、コイル(図示せず)の巻線を巻回する巻線スペースであり、その径方向の長さはD1(
図4)となっている。
【0051】
また、インシュレータ132は、下側内周壁部132wdの外周面から径方向外側へ向かって僅かに突出した3個の断面矩形状からなる柱状部133を有している。これら3個の柱状部133は、下側内周壁部132wdの外周面に対して周方向に互いに120度間隔で下側内周壁部132wdと一体に形成されている。
【0052】
これらの柱状部133は、そのX軸方向下側(矢印b方向)の端部に柱状部133から更に径方向外側へ突出した突部133tを有している。柱状部133の突部133tは、下側内周壁部132wdの下端面から下方へ延びており、回路基板400に3個設けられた貫通孔400h(
図3および
図6)に嵌り込む部分である。
【0053】
なお、柱状部133の突部133tは、ベアリングホルダ310の大径円筒部311bの上側端部と径方向において対向する位置に設けられている。また、柱状部133の突部133tの背面側には、大径円筒部311bと接触しないために設けられた環状の凹部133to(
図7)を有している。但し、これに限らず、柱状部133の内周面とベアリングホルダ310の大径円筒部311bの外周面とが面一である場合、突部133tの背面側に凹部133toが設けられていなくてもよい。
【0054】
<回路基板>
図6に示すように、回路基板400は、薄板状の円盤状部材からなり、モータ本体100のロータ120を回転駆動させるモータ駆動制御回路(図示せず)を構成する電子部品が実装された単層又は複数の配線層を有する平面視環状に形成されたプリント配線基板である。
【0055】
回路基板400のモータ駆動制御回路は、モータ本体100(ロータ120)の回転を制御するための回路である。モータ駆動制御回路は、回路基板400に各種電子部品が実装され、モータ本体100と電気的に接続されることにより実現される。
【0056】
回路基板400とモータ駆動制御回路とは、回路基板400の後述する貫通孔400hにX軸方向上側(矢印a方向)からモータ本体100(ロータ120)のコイル線を通し、回路基板400におけるX軸方向下側(矢印b方向)の電子部品実装面のランドに対して半田付けすることにより電気的に接続されている。ただし、これに限らず、回路基板400においては、コイル(図示せず)の巻線がインシュレータ132の下側外周壁部132wbに植設された端子ピン(図示せず)に絡げて接続され、インシュレータ132の下側外周壁部132wbの端子ピンと回路基板400の配線パターン(図示せず)とが電気的に接続されるようにしてもよい。
【0057】
回路基板400は、その中央部分にベアリングホルダ310の大径円筒部311bを挿通可能な内径を有する貫通穴400sを有している。また、回路基板400は、貫通孔400sを中心として外周側へ放射状に延びる3個の貫通孔400hを有している。
【0058】
この3個の貫通孔400hは、貫通穴400sの周囲に120度間隔で設けられており、貫通穴400sと連通している。3個の貫通孔400hは、上述した柱状部133の突部133tがそれぞれ入り込んで嵌合する空間である。
【0059】
インシュレータ132においては、下側外周壁部132wbが回路基板400の上端面に接触した状態で載置されているため、下側内周壁部132wdにおける柱状部133の突部133tが回路基板400の貫通孔400hに入り込むことになる。これにより、インシュレータ132は、回路基板400に対してX軸方向における上下の位置が決まると共に、周方向に回転することが規制される。
【0060】
<軸受装置>
軸受装置300は、シャフト201の上側部分を回転可能に支持する軸受としての上側ベアリング301と、シャフト201の下側端部を回転可能に支持する他の軸受としての下側ベアリング302と、上側ベアリング301および下側ベアリング302を保持するベアリングホルダ310とを有している。
【0061】
<ベアリング>
上側ベアリング301および下側ベアリング302は、いわゆる玉軸受である。なお、上側ベアリング301および下側ベアリング302は、玉軸受に限られず、例えば、ころ軸受等、その他種々の軸受であってもよい。なお、上側ベアリングホルダ310の内輪と、ロータヨーク124の蓋部122との間には、上側ベアリング310に予圧を付与するためのコイルバネ320が介装されている。
【0062】
<ベアリングホルダ>
図5に示すように、ベアリングホルダ310は、金属製(例えば真鍮)からなる中空円筒形状の部材であり、シャフト201を挿入可能な円筒形状の内部空間を形成する穴を有している。
【0063】
ベアリングホルダ310は、X軸方向上側(矢印a方向)の小径円筒部311a、および、X軸方向下側(矢印b方向)の大径円筒部311bが一体となって形成されている。なお、小径円筒部311aは、大径円筒部311bよりもX軸方向に長く形成されている。
【0064】
ベアリングホルダ310の小径円筒部311aは、ステータコア131の内周面に固定されている。また、ベアリングホルダ310の小径円筒部311aにおいては、その内周面311aiにより上側ベアリング301を保持していない。
【0065】
この場合、小径円筒部311aのX軸方向上側(矢印a方向)の上端面311atに対して上側ベアリング301の外輪のX軸方向下側(矢印b方向)の下端面301gt(
図7)が載置されて接触した状態で、上側ベアリング301の外輪がステータコア131の内周面に固定されている。
【0066】
なお、小径円筒部311aの外径と上側ベアリング301の外輪の外径は同じである。すなわち、小径円筒部311aの外周面と上側ベアリング301の外輪の外周面とは面一または略面一である。
【0067】
この場合、ステータコア131の上側半分で上側ベアリング301を保持すると共に、ステータコア131の下側半分でベアリングホルダ310の小径円筒部311aの上側半分を保持している。
【0068】
つまり、ステータコア131の内周面と上側ベアリング301の外輪の外周面とが接触する領域の面積と、ステータコア131の内周面とベアリングホルダ310の小径円筒部311aの上側半分の外周面とが接触する領域の面積との比率が1:1の同一または略同一である。
【0069】
これによりステータコア131と上側ベアリング301およびベアリングホルダ310の小径円筒部311aとの保持バランスが優れた状態を形成することができる。但し、これに限るものではなく、十分な保持強度が保てれば、ステータコア131の内周面と小径円筒部311aとが接触する領域の面積の方が、ステータコア131の内周面と上側ベアリング301の外輪とが接触する領域の面積よりも大きくてもよく、または、その逆であってもよい。
【0070】
ベアリングホルダ310の大径円筒部311bは、モータベース部105のボス部105cの内周面に対して圧入及び又は接着等によって一体に固定されている。大径円筒部311bは、小径円筒部311aよりも大きな外径を有しているが、その内径は小径円筒部311aの外径と同じである。すなわち大径円筒部311bの内径は、小径円筒部311aの外径および上側ベアリング301の外輪の外径と同じである。したがって、大径円筒部311bの内周面311biと小径円筒部311aの外周面とは面一または略面一となっている。
【0071】
大径円筒部311bは、下側ベアリング302を保持している。この場合、大径円筒部311bの内周面に対して下側ベアリング302の外輪が圧入及び又は接着等によって一体に固定されている。なお、大径円筒部311bは、ボス部105cにインサートした状態でモータベース部105と一体に形成されてもよい。
【0072】
また、大径円筒部311bは、下側ベアリング302のX軸方向の高さよりも長く形成されており、大径円筒部311bが下側ベアリング302を外部に露出することなく収容した状態で保持することが可能である。
【0073】
かくして上側ベアリング301の外輪は、ステータコア131に直接保持されると共に、下側ベアリング302の外輪は、ベアリングホルダ310の大径円筒部311bに保持される。
【0074】
また、上側ベアリング301の内輪はシャフト201のX軸方向上側(矢印a方向)の部分に固定されると共に、下側ベアリング302の内輪はシャフト201のX軸方向下側(矢印b方向)の下端部に固定される。これにより、シャフト201は、上側ベアリング301および下側ベアリング302によって、ベアリングホルダ310に対し相対回転可能な状態で支持される。
【0075】
シャフト201におけるX軸方向上側(矢印a方向)の上端部は、ロータヨーク124の内側円筒部123の内周面(径方向内側の面)に圧入されることにより一体に固定されている。ロータヨーク124は、インペラ210のハブ211に覆われた状態で、接着剤等により一体に固定されている。
【0076】
ファンモータ1が作動し、ロータ120とステータ130との電磁気的作用によりロータ120がシャフト201と共に回転すると、ロータ120に固定されたインペラ210が回転し、複数の羽根212の作用によりX軸方向下側(矢印b方向)に向かって空気が送られる。したがって、ファンモータ1は、送風機として機能する。
【0077】
<組み立て方法>
このような構成のファンモータ1の軸受装置300においては、上側ベアリング301がステータコア131に直接固定され、下側ベアリング302がベアリングホルダ310の大径円筒部311bに固定されているように、上側ベアリング301および下側ベアリング302がそれぞれ別部材に固定されている。このため、上側ベアリング301および下側ベアリング302の同軸精度が重要となり、その組み立て方法について以下に説明する。
【0078】
最初に、ベアリングホルダ310の大径円筒部311bに下側ベアリング302を圧入及び又は接着により固定する。これにより下側ベアリング302の軸心が決まる。その後、ベアリングホルダ310に対して所定の治具を用い、ステータコア131に対する小径円筒部311aのX軸方向における高さ位置を決めた状態でステータコア131と小径円筒部311aとを接着により固定する。このとき、ステータコア131の内周面における下側半分の領域にベアリングホルダ310の小径円筒部311aの上側半分が固定される。
【0079】
ここで、ステータコア131に対してベアリングホルダ310の小径円筒部311aを接着により固定する理由を以下に述べる。ステータコア131は、電磁鋼板の積層体であるため、個々の電磁鋼板の内径に交差のばらつきがある。
【0080】
したがって、ステータコア131の内周面に対してベアリングホルダ310の小径円筒部311aを圧入により固定した場合、ステータコア131の軸心と下側ベアリング302の軸心とが一致しない可能性がある。
【0081】
そこで、ステータコア131に対してベアリングホルダ310の小径円筒部311aを固定する際に、圧入ではなく、ステータコア131の軸心と下側ベアリング302の軸心を予め一致させた状態で接着すれば、両者の軸心を一致させることができる。
【0082】
続いて、ロータヨーク124およびインペラ210と予め一体化されたシャフト201を上側ベアリング301に対し圧入により固定する。そのうえで、ステータコア131の内周面における上側半分の領域に接着剤を予め塗布しておく。
【0083】
最後に、シャフト201の下端部を下側ベアリング302の内輪に対して嵌合させると同時に、上側ベアリング301をステータコア131の内周面における上側半分の接着剤が塗布された領域に差し込み、上側ベアリング301の軸心と下側ベアリング302の軸心とを一致させた状態で接着固定する。
【0084】
これにより、上側ベアリング301の軸心と下側ベアリング302の軸心とが一致することになる。同時に、ステータコア131の内周面と上側ベアリング301の外輪とが接触する領域の面積と、ステータコア131の内周面とベアリングホルダ310の小径円筒部311aの上側半分とが接触する領域の面積との比率が1:1の同一または略同一となる。
【0085】
以上の構成において、ファンモータ1は、ステータコア131の内周面に対して上側ベアリング301の外輪を直接固定するようにしたことにより、従来のように上側ベアリング301の外輪の外側にベアリングホルダ310の小径円筒部311aを配置する必要がなくなる。
【0086】
これにより、
図7に示すように、従来のように上側ベアリング301の外輪の外側にベアリングホルダ310が配置された場合のステータコア131の内周面に相当する仮想線L1と、上側ベアリング301の外輪に対して直接固定されたステータコア131の内周面に相当する仮想線L2との距離d1の分だけステータコア131の内周面をシャフト201側にシフトすることができる。
【0087】
そうすると、
図7に示したように、ステータコア131の内周面をシャフト201側にシフトする距離d1の分だけ上側外周壁部132waと上側内周壁部132wcとの間の距離D1(
図4)を従来よりも長くすることができる。
【0088】
すなわち、
図8(A)および(B)に示すように、ステータコア131(
図8(A))は、従来のステータコア531(
図8(B))の内径531iに比べて環状部131aの内径131iを距離d1(
図7)の分だけ小さくできるので、コイルの巻線スペースを径方向に距離Dの長さに拡大することができる。
【0089】
ファンモータ1では、ステータコア131に対するコイルの巻線スペースを拡大できれば、従来よりも多くの巻線を巻回することができるのでモータとしての出力を増大してモータ効率を向上させることが可能となる。また、ファンモータ1では、コイルの巻線を多くするのではなく、巻線の径を太くする場合、巻線抵抗を低減することができるので、この場合でもモータ効率を向上することができる。
【0090】
また、ファンモータ1では、コイルの巻線スペースを径方向に拡大することなく、エアギャップをそのままでステータコア131全体をシャフト201側へシフトして小径化した場合、マグネット125の厚さを従来よりも増大することができる。この場合もファンモータ1では、モータ効率を向上することができる。
【0091】
さらに、ファンモータ1では、コイルの巻線スペースを径方向に拡大するのではなく、エアギャップをそのままでステータコア131全体をシャフト201側へシフトして小径化し、かつ、マグネット125の厚さをそのままとした場合、バックヨーク126の厚さを増大することができる。この場合もマグネット125の磁束が外部へ逃げる量を従来に比して一段と低減することができるので、モータ効率を向上することができる。
【0092】
一方、ファンモータ1では、ステータコア131の内周面をシャフト201側にシフトして小径化するものの、コイルの巻線スペースを径方向に拡大しない場合、その分だけバックヨーク126の外径を小さくすることができるので、モータ効率を向上させる代わりにモータ全体を従来に比して径方向に小型化することができる。
【0093】
さらに、ファンモータ1では、上側ベアリング301の外周面とベアリングホルダ310の小径円筒部311aの外周面とを面一にしたことにより、ステータコア131の内周面に段差を形成する必要がなくなり、ステータコア131を容易に製造することができるようになる。
【0094】
また、この場合、ステータコア131の内周面に段差が存在しないため、上側ベアリング301の軸心とベアリングホルダ310の小径円筒部311aの軸心とを合わせることが容易になる。
【0095】
さらに、ファンモータ1では、ステータコア131の内周面に段差が存在しないため、ステータコア131の内周面に対して上側ベアリング301とベアリングホルダ310の小径円筒部311aとを固定する際の面積の比率についても容易に変更することが可能となる。
【0096】
<他の実施の形態>
以上、本発明のモータについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。上述の実施の形態では、小径円筒部311aの外周面と上側ベアリング301の外輪の外周面とを面一または略面一とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限るものではなく、小径円筒部311aの外径よりも上側ベアリング301の外輪の外径を僅かに小さくしてもよい。これは、上側ベアリング301および下側ベアリング302を組み立てる際、下側ベアリング302の軸心に対して後から上側ベアリング301の軸心を合わせて接着すればよいからである。
【0097】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変し、また各種構成の組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1…ファンモータ、100…モータ本体、201…シャフト、105…モータベース部、120…ロータ、124…ロータヨーク、125…マグネット、126…バックヨーク、130…ステータ、131…ステータコア、132…インシュレータ、210…インペラ、211…ハブ、212…羽根、300…軸受装置、301…上側ベアリング、302…下側ベアリング、310…ベアリングホルダ、311a…小径円筒部、311b…大径円筒部、320…コイルバネ、400…回路基板。