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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076857
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20240530BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20240530BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240530BHJP
   B60T 13/18 20060101ALI20240530BHJP
   B60T 8/26 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
B60T13/68
B60T17/18
B60T13/18
B60T8/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188656
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊哉
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB41
3D048CC05
3D048HH15
3D048HH26
3D048HH31
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048RR13
3D049BB26
3D049CC02
3D049HH20
3D049HH25
3D049HH47
3D049HH48
3D049RR06
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA28
3D246HA40A
3D246JA12
3D246JB05
3D246JB33
3D246LA04Z
3D246LA33B
3D246LA33Z
3D246LA52B
3D246LA59B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極低温時に車両減速度の変化が抑制され得る制動制御装置を提供する。
【解決手段】制動制御装置は、電気モータによって駆動される流体ポンプの吐出部と吸入部とを接続する流体路に設けられる第1調圧弁と、流体路において、第1調圧弁と吸入部)との間に設けられる第2調圧弁と、第1、第2調圧弁を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、第1、第2調圧弁によって前輪、後輪ホイール圧を制御する2系統調圧、及び、第2調圧弁のみによって前輪、後輪ホイール圧を制御する1系統調圧のうちの何れか一方を選択する。そして、コントローラは、1系統調圧を選択する場合には、流体路の作動液の温度に基づいて、前輪ホイール圧を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータによって駆動される流体ポンプの吐出部と該流体ポンプの吸入部とを接続する流体路に設けられる第1調圧弁と、
前記流体路において、前記第1調圧弁と前記吸入部との間に設けられる第2調圧弁と、
前記第1、第2調圧弁を制御するコントローラと、
を備える車両の制動制御装置において、
前記コントローラは、
前記第1、第2調圧弁によって前輪、後輪ホイール圧を制御する2系統調圧、及び、前記第2調圧弁のみによって前記前輪、後輪ホイール圧を制御する1系統調圧のうちの何れか一方を選択し、
前記1系統調圧を選択する場合には、前記流体路の作動液の温度に基づいて、前記前輪ホイール圧を調整する、車両の制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載される車両の制動制御装置において、
前記コントローラは、
前記吐出部と前記第1調圧弁との間の第1液圧によって前記後輪ホイール圧を制御するとともに、前記第1調圧弁と前記第2調圧弁との間の第2液圧によって前記前輪ホイール圧を制御し、
前記温度が低い場合には、前記温度が高い場合に比較して、前記前輪ホイール圧を小さくする、車両の制動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載される車両の制動制御装置において、
前記コントローラは、
前記吐出部と前記第1調圧弁との間の第1液圧によって前記前輪ホイール圧を制御するとともに、前記第1調圧弁と前記第2調圧弁との間の第2液圧によって前記後輪ホイール圧を制御し、
前記温度が低い場合には、前記温度が高い場合に比較して、前記前輪ホイール圧を大きくする、車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される発明では、ブレーキシリンダ液圧の実際値が目標値に近づくように、リニアバルブへの制御指令値が作成される場合の制御ゲインが、作動液の温度が設定温度以下の場合には、大きい値とされる。これにより、作動液の温度が低く、その粘性が高くなることに起因する制御遅れを小さくすることができる。
【0003】
出願人は、特許文献2に記載されるような、前輪系統の制動液圧(「前輪ホイール圧」ともいう)と後輪系統の制動液圧(「後輪ホイール圧」ともいう)とが個別に制御できる制動制御装置を開発している。ところで、制動制御装置では、極低温時にホイール圧の過不足が生じ、車両の減速度が変化することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-199146号公報
【特許文献2】特開2019-137202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、制動制御装置において、極低温時に車両減速度の変化が抑制され得るものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)は、電気モータ(MA)によって駆動される流体ポンプ(QA)の吐出部(Qo)と該流体ポンプ(QA)の吸入部(Qi)とを接続する流体路(HK)に設けられる第1調圧弁(UA)と、前記流体路(HK)において、前記第1調圧弁(UA)と前記吸入部(Qi)との間に設けられる第2調圧弁(UB)と、前記第1、第2調圧弁(UA、UB)を制御するコントローラ(EA)と、を備える。前記コントローラ(EA)は、前記第1、第2調圧弁(UA、UB)によって前輪、後輪ホイール圧(Pwf、Pwr)を制御する2系統調圧、及び、前記第2調圧弁(UB)のみによって前記前輪、後輪ホイール圧(Pwf、Pwr)を制御する1系統調圧のうちの何れか一方を選択する。そして、前記コントローラ(EA)は、前記1系統調圧を選択する場合には、前記流体路(HK)の作動液(BF)の温度(Te)に基づいて、前記前輪ホイール圧(Pwf)を調整する。
【0007】
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記コントローラ(EA)は、前記吐出部(Qo)と前記第1調圧弁(UA)との間の第1液圧(Pa)によって前記後輪ホイール圧(Pwr)を制御するとともに、前記第1調圧弁(UA)と前記第2調圧弁(UA)との間の第2液圧(Pb)によって前記前輪ホイール圧(Pwf)を制御する。そして、前記コントローラ(EA)は、前記温度(Te)が低い場合には、前記温度(Te)が高い場合に比較して、前記前輪ホイール圧(Pwf)を小さくする。
【0008】
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記コントローラ(EA)は、前記吐出部(Qo)と前記第1調圧弁(UA)との間の第1液圧(Pa)によって前記前輪ホイール圧(Pwf)を制御するとともに、前記第1調圧弁(UA)と前記第2調圧弁(UA)との間の第2液圧(Pb)によって前記後輪ホイール圧(Pwr)を制御する。そして、前記コントローラ(EA)は、前記温度(Te)が低い場合には、前記温度(Te)が高い場合に比較して、前記前輪ホイール圧(Pwf)を大きくする。
【0009】
上記構成によれば、作動液の温度によって、ホイール圧が調整されるので、極低温時に車両減速度の変化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】制動制御装置SCの第1の実施形態を説明するための概略図である。
図2】調圧部CAを説明するための概略図である。
図3】調圧制御を説明するためのフロー図である。
図4】制動制御装置SCの第2の実施形態を説明するための概略図である。
図5】制動制御装置SCの変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。例えば、各車輪に設けられたホイールシリンダCWにおいて、「前輪ホイールシリンダCWf」、「後輪ホイールシリンダCWr」と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号はその総称を表す。例えば、「CW」は、車両の前後車輪に設けられたホイールシリンダの総称である。
【0012】
マスタシリンダCMからホイールシリンダCWに至るまでの流体路において、マスタシリンダCMに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(マスタシリンダCMから遠い側)が「下部」と称呼される。また、制動液BF(「作動液」ともいう)の循環流KNにおいて、流体ポンプQAの吐出部Qoに近い側(吸入部Qiから離れた側)が「上流側」と称呼され、流体ポンプQAの吸入部Qiに近い側(吐出部Qoから離れた側)が「下流側」と称呼される。
【0013】
第1制動ユニットSAの第1アクチュエータYA、第2制動ユニットSBの第2アクチュエータYB、及び、ホイールシリンダCWは、流体路(連絡路HS)にて接続される。更に、第1、第2アクチュエータYA、YBでは、各種構成要素(UA、UB等)が流体路にて接続される。ここで、「流体路」は、制動液BFを移動するための経路であり、配管、アクチュエータ内の流路、ホース等が該当する。以下の説明で、連絡路HS、還流路HK、リザーバ路HR、入力路HN、サーボ路HV等は流体路である。
【0014】
<制動制御装置SCの第1実施形態>
図1の概略図を参照して、制動制御装置SCの第1の実施形態について説明する。制動制御装置SCを搭載した車両は、走行用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。
【0015】
車両には、回生装置KGが備えられる。回生装置KGは、エネルギ回生用のジェネレータGN(「電気モータ/ジェネレータ」、或いは、「回生ジェネレータ」ともいう)、回生装置KG用の制御ユニットEG(「回生コントローラ」ともいう)、及び、回生装置KG用の蓄電池BG(「回生蓄電池」ともいう)にて構成される。回生ジェネレータGNは、走行用の電気モータでもある。回生制動では、電気モータ/ジェネレータGNが発電機として作動し、発電された電力が、回生コントローラEGを介して、回生蓄電池BGに蓄えられる。このとき、車輪には回生制動力Fgが作用する。即ち、回生装置KGは、回生制動力Fgを発生することができる。例えば、回生装置KGは前輪に備えられ、前輪に回生制動力Fgが発生される。
【0016】
車両の前後車輪には、制動装置が備えられる。制動装置は、ブレーキキャリパ、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)、及び、回転部材(例えば、ブレーキディスク)にて構成される。ブレーキキャリパ(非図示)には、ホイールシリンダCWが設けられる。ホイールシリンダCW内の液圧Pw(「ホイール圧」という)によって、摩擦部材(非図示)が、各車輪に固定された回転部材(非図示)に押し付けられる。これにより、車輪には液圧制動力Fpが発生される。
【0017】
車両には、制動操作部材BP、及び、各種センサ(SP等)が備えられる。制動操作部材BP(例えば、ブレーキペダル)は、運転者が車両を減速するための操作部材である。車両には、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSPが設けられる。操作変位Spは、制動操作部材BPの操作量(制動操作量)を表示する状態量(状態変数)の1つであり、ブレーキバイワイヤ型の制動制御装置SCにおいては、運転者の制動意志を表す信号(即ち、制動指示)である。
【0018】
操作変位センサSPの他に、制動操作量を表す他の状態量として、ストロークシミュレータSSの液圧Ps(「シミュレータ圧」という)が採用される。シミュレータ圧Psは、シミュレータ圧センサPSによって検出される。シミュレータ圧Psは、制動操作部材BPの操作力に相当する状態量である。
【0019】
車両には、アンチロックブレーキ制御、横滑り防止制御等の各車輪のホイール圧Pwを個別に制御する制動制御(「各輪独立制御」ともいう)のために、各種センサが備えられる。具体的には、車輪には、その回転速度Vw(車輪速度)を検出する車輪速度センサVWが備えられる。また、操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)の操舵量Sa(例えば、操作角)を検出する操舵量センサ、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサ、車両の前後加速度Gx(「減速度」ともいう)を検出する前後加速度センサ、及び、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサが備えられる(以上、非図示)。
【0020】
車両には、制動制御装置SCが備えられる。制動制御装置SCでは、2系統の制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用される。制動制御装置SCによって、各ホイールシリンダCWの実際のホイール圧Pwが調整される。
【0021】
制動制御装置SCは、2つの制動ユニットSA、SBにて構成される。第1制動ユニットSAは、第1アクチュエータYA(流体ユニット)、及び、第1コントローラEA(制御ユニット)にて構成される。第1アクチュエータYAは、回生蓄電池BGとは別の蓄電池BTを電力源として、第1コントローラEAによって制御される。第2制動ユニットSBは、第2アクチュエータYB(流体ユニット)、及び、第2コントローラEB(制御ユニット)にて構成される。第2アクチュエータYBは、第1制動ユニットSAと同様に、蓄電池BTを電力源として、第2コントローラEBによって制御される。
【0022】
第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)、及び、第2制動ユニットSB(特に、第2コントローラEB)は、通信バスBSに接続される。また、通信バスBSには、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)が接続される。通信バスBSによって、複数のコントローラ(EA、EB、EG等)の間で信号伝達が行われる。つまり、複数のコントローラは、通信バスBSに信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を送信することができるとともに、通信バスBSから該信号を受信することができる。
【0023】
<第1制動ユニットSA>
制動制御装置SCの第1制動ユニットSAについて説明する。第1制動ユニットSAは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作に応じて、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(「前輪、後輪ホイール圧」という)を調整する。第1制動ユニットSAは、第1アクチュエータYA、及び、第1コントローラEAにて構成される。
【0024】
≪第1アクチュエータYA≫
第1アクチュエータYAは、アプライ部AP、調圧部CA、及び、入力部NRにて構成される。
【0025】
[アプライ部AP]
制動操作部材BPの操作に応じて、アプライ部APからマスタ圧Pmが出力される。アプライ部APは、シングル型のマスタシリンダCM、及び、マスタピストンNMにて構成される。
【0026】
シングル型マスタシリンダCMには、マスタピストンNMが挿入される。マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンNMによって、3つの液圧室Rm、Ru、Rsに区画される。マスタ室Rmは、マスタシリンダCMの一方側底部、及び、マスタピストンNMによって区画される。更に、マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンNMのつば部Tuによって、サーボ室Ruと反力室Rsとに仕切られる。つまり、マスタ室Rmとサーボ室Ruとは、つば部Tuを挟んで、相対するように配置される。ここで、マスタ室Rmの受圧面積rmとサーボ室Ruの受圧面積ruとは等しく設定される。
【0027】
非制動時には、マスタピストンNMは、最も後退した位置(即ち、マスタ室Rmの体積が最大になる位置)にある。該状態では、マスタシリンダCMのマスタ室Rmは、マスタリザーバRVに連通している。マスタリザーバRV(大気圧リザーバであり、単に「リザーバ」ともいう)の内部に制動液BFが貯蔵される。制動操作部材BPが操作されると、マスタピストンNMが前進方向Ha(マスタ室Rmの体積が減少する方向)に移動される。該移動により、マスタ室RmとリザーバRVとの連通は遮断される。そして、マスタピストンNMが、更に、前進方向Haに移動されると、マスタ圧Pm(マスタ室Rmの内圧)が「0(大気圧)」から増加される。これにより、マスタシリンダCMのマスタ室Rmから、マスタ圧Pmに加圧された制動液BFが出力(圧送)される。
【0028】
[調圧部CA]
調圧部CAは、後輪ホイールシリンダCWrに対して第1液圧Paを供給し、アプライ部APのサーボ室Ruに対して第2液圧Pbを供給する。調圧部CAは、電気モータMA、流体ポンプQA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBを含んで構成される。調圧部CAの詳細については後述する。
【0029】
[入力部NR]
入力部NRによって、回生協調制御が実現される。「回生協調制御」は、制動時に、車両が有する運動エネルギが効率良く電気エネルギに回収されるよう、液圧制動力Fp(ホイール圧Pwによる制動力)と回生制動力Fg(回生ジェネレータGNによる制動力)とを協働させるものである。回生協調制御では、制動操作部材BPは操作されるが、ホイール圧Pwが発生しない状態が生み出される。入力部NRは、入力シリンダCN、入力ピストンNN、導入弁VA、開放弁VB、ストロークシミュレータSS、及び、シミュレータ液圧センサPSにて構成される。
【0030】
入力シリンダCNは、マスタシリンダCMに固定される。入力シリンダCNには、入力ピストンNNが挿入される。入力ピストンNNは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の動きに連動するよう、クレビス(U字リンク)を介して、制動操作部材BPに機械的に接続される。入力ピストンNNの端面とマスタピストンNMの端面とは隙間Ks(「離間変位」ともいう)を有している。離間距離Ksが第2液圧Pbによって調節されることで、回生協調制御が実現される。
【0031】
入力部NRの入力室Rnは、入力路HN(流体路)を介して、アプライ部APの反力室Rsに接続される。入力路HNには、常閉型の導入弁VAが設けられる。入力路HNは、導入弁VAと反力室Rsとの間にて、リザーバ路HR(流体路)を介して、マスタリザーバRVに接続される。リザーバ路HRには、常開型の開放弁VBが設けられる。導入弁VA、及び、開放弁VBには、オン・オフ型の電磁弁が採用される。導入弁VAと反力室Rsとの間で、入力路HNにストロークシミュレータSS(単に、「シミュレータ」ともいう)が接続される。
【0032】
導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給(給電)が行われない場合には、導入弁VAは閉弁され、開放弁VBは開弁される。導入弁VAの閉弁により、入力室Rnは封止され、流体ロックされる。これにより、マスタピストンNMは、制動操作部材BPと一体で変位する。また、開放弁VBの開弁により、シミュレータSS、及び、反力室Rsは、マスタリザーバRVに連通される。
【0033】
導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給(給電)が行われる場合には、導入弁VAは開弁され、開放弁VBは閉弁される。これにより、マスタピストンNMは、制動操作部材BPとは別体で変位することが可能になる。このとき、入力室RnはストロークシミュレータSSに接続されるので、制動操作部材BPの操作力FpはシミュレータSSによって発生される。シミュレータSS内の液圧Ps(シミュレータ圧)を検出するよう、入力路HNには、導入弁VAと反力室Rsとの間に、シミュレータ圧センサPSが設けられる。
【0034】
≪第1コントローラEA≫
第1コントローラEAによって、第1アクチュエータYAが制御される。第1コントローラEAは、マイクロプロセッサMP、及び、駆動回路DRにて構成される。第1コントローラEAは、各種コントローラ(EB、EG等)との間で信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を共有できるよう、通信バスBSに接続される。
【0035】
第1コントローラEAには、操作変位Sp、シミュレータ圧Ps、第1、第2液圧Pa、Pb、第1、第2温度Ta、Tb等の各種信号が直接入力される。更に、第1コントローラEAには、マスタ圧Pm、限界回生制動力Fx、マスタ温度Tm、実行フラグFA等の各種信号が、通信バスBSから入力される。また、第1コントローラEAからは、目標回生制動力Fh(回生制動力Fgの目標値)が、通信バスBSに出力される。なお、回生コントローラEGでは、通信バスBSから取得される目標回生制動力Fh(目標値)に基づいて、回生制動力Fg(実際値)が制御される。
【0036】
第1コントローラEA(特に、マイクロプロセッサMP)には、調圧制御のアルゴリズムがプログラムされている。「調圧制御」は、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrを調節するための制御であり、回生協調制御を含んでいる。調圧制御は、上記の各種信号(Sp、Ps等)に基づいて実行される。
【0037】
調圧制御のアルゴリズムに基づいて、駆動回路DRによって、電気モータMA、及び、各種電磁弁(UA、UB等)が駆動される。駆動回路DRには、電気モータMAを駆動するよう、スイッチング素子(例えば、MOS-FET)にてHブリッジ回路が構成される。また、駆動回路DRには、各種電磁弁(UA、UB等)を駆動するよう、スイッチング素子が備えられる。加えて、駆動回路DRには、電気モータMAへの供給電流Im(実際値であり、「モータ電流」という)を検出するモータ電流センサ(非図示)、及び、第1、第2調圧弁UA、UBへの供給電流Ia、Ib(実際値であり、「第1、第2供給電流」という)を検出する第1、第2供給電流センサ(非図示)が含まれる。電気モータMAには、その回転数Na(実際値)を検出する回転数センサ(非図示)が設けられる。例えば、電気モータMAに回転角Ka(実際値)を検出する回転角センサ(非図示)が設けられ、モータ回転角Kaに基づいて、モータ回転数Naが演算されてもよい。また、モータ回転数Naは、モータ電流Imに基づいて推定され得る。
【0038】
第1コントローラEAでは、操作変位Sp(制動操作部材BPの操作量)に基づいて、第1、第2調圧弁電流Ia、Ibに対応する第1、第2目標電流Ita、Itb(目標値)が演算される。そして、第1、第2供給電流Ia、Ibが、第1、第2目標電流Ita、Itbに近付き、一致するように制御される(所謂、電流フィードバック制御)。また、第1コントローラEAでは、操作変位Spに基づいて、モータ回転数Na(実際値)に対応する目標回転数Nta(目標値)が演算される。そして、モータ回転数Naが、目標回転数Ntaに近付き、一致するように、モータ電流Imが制御される(所謂、回転数フィードバック制御)。これらの制御アルゴリズムに基づいて、電気モータMAを制御するための駆動信号Ma、及び、各種電磁弁UA、UB、VA、VBを制御するための駆動信号Ua、Ub、Va、Vbが演算される。そして、駆動信号(Ma等)に応じて、駆動回路DRのスイッチング素子が駆動され、電気モータMA、及び、電磁弁UA、UB、VA、VBが制御される。
【0039】
<第2制動ユニットSB>
第1制動ユニットSAとホイールシリンダCWとの間に、第2制動ユニットSBが設けられる。第2制動ユニットSBによって、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、横滑り防止制御等の各輪独立制御が実行される。
【0040】
前輪に係る制動系統(即ち、前輪連絡路HSf)では、マスタ圧Pmが、マスタシリンダCMから第2制動ユニットSBに供給される。一方、後輪に係る制動系統(即ち、後輪連絡路HSr)では、第1液圧Paが、調圧部CAから第2制動ユニットSBに直接供給される。第2制動ユニットSBにて、マスタ圧Pm、及び、第1液圧Paが調整(増減)され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(前輪、後輪ホイール圧)として出力される。第2制動ユニットSBは、第2アクチュエータYB、及び、第2コントローラEBにて構成される。
【0041】
第2アクチュエータYBは、連絡路HSにおいて、第1アクチュエータYAとホイールシリンダCWとの間に配置される。第2アクチュエータYBには、電気モータ、流体ポンプ、電磁弁、マスタ圧センサPM、及び、マスタ温度センサTMが含まれる。マスタ圧センサPMによって、マスタ圧Pmが検出され、マスタ温度センサTMによって、マスタ温度Tm(第2アクチュエータYBにおける制動液BFの温度)が検出される。マスタ圧Pm、及び、マスタ温度Tmは、第2コントローラEBに入力される。第2アクチュエータYBの構成は公知であるため、その説明は省略する。
【0042】
第2コントローラEBによって、第2アクチュエータYBが制御される。第2コントローラEBは、通信バスBSに接続される。従って、第1コントローラEAと第2コントローラEBとは、通信バスBSを介して信号を共有することができる。
【0043】
第2コントローラEBには、車輪速度Vw、操舵角Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyの各種信号が入力される。第2コントローラEBにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。第2コントローラEBでは、各種信号(Vw、Yr等)に基づいて、車輪ロックを抑制するアンチロックブレーキ制御、駆動車輪の空転を抑制するトラクション制御、及び、アンダステア・オーバステアを抑制して車両の方向安定性を向上する横滑り防止制御(所謂、ESC)等が実行される。これらの制御が実行されていることは、制御フラグ等により、通信バスBSを介して、第2制動ユニットSB(特に、第2コントローラEB)から第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)に伝達される。
【0044】
通常、回生協調制御が実行される場合には、第2アクチュエータYB(電気モータ、流体ポンプ、電磁弁等)の作動は停止されている。従って、第2制動ユニットSBからは、マスタ圧Pmが前輪ホイール圧Pwfとして、第1液圧Paが後輪ホイール圧Pwrとして、夫々出力される。
【0045】
<調圧部CA>
図2の概略図を参照して、前輪に回生ジェネレータGNを備えた車両に適用される調圧部CAについて説明する。図2には、調圧部CAの他に、マスタシリンダCM、ホイールシリンダCW等が模式的に表示され、液圧の伝達経路が示されている。調圧部CAから第1、第2液圧Pa、Pbが出力され、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが制御される。調圧部CAは、流体ポンプQA、電気モータMA、第1、第2調圧弁UA、UB、及び、第1、第2液圧センサPA、PBにて構成される。
【0046】
流体ポンプQAは、電気モータMAによって駆動される。即ち、電気モータMAと流体ポンプQAとの組み合わせで、電動ポンプが形成される。流体ポンプQAにおいて、制動液BFを吸い込む吸入部Qiと、制動液BFを吐出する吐出部Qoとは、還流路HK(流体路)によって接続される。また、流体ポンプQAの吸入部Qiは、リザーバ路HRを介して、マスタリザーバRVに接続される。流体ポンプQAの吐出部Qoには、逆止弁GA(「チェック弁」ともいう)が設けられる。
【0047】
還流路HKには、2つの調圧弁UA、UBが直列に設けられる。具体的には、還流路HKには、常開型の第2調圧弁UBが設けられる。そして、第2調圧弁UBと流体ポンプQAの吐出部Qoとの間に、常開型の第1調圧弁UAが設けられる。従って、制動液BFの循環流KN(破線矢印で表示)において、第1調圧弁UAは、第2調圧弁UBに対して上流側(流体ポンプQAの吐出部Qoに近い側)に配置される。第1、第2調圧弁UA、UBは、通電状態(例えば、供給電流Ia、Ib)に応じて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁である。第1、第2調圧弁UA、UBは、それらの上流側と下流側との液圧差(差圧)を調整するので、「差圧弁」とも称呼される。
【0048】
電気モータMAによって、流体ポンプQAが駆動されると、還流路HKには、流体ポンプQA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBを含む制動液BFの循環流KN(還流路HK内で循環する制動液BFの流れ)が発生される。第1調圧弁UAと第2調圧弁UBとの間の液圧Pb(第2液圧)が、第2調圧弁UBによって制御される。第1調圧弁UAと流体ポンプQAの吐出部Qoとの間の液圧Pa(第1液圧)が、第1調圧弁UAによって制御される。
【0049】
第2調圧弁UBが全開状態にある場合(第2調圧弁UBは常開型であるため、非通電時)には、第2液圧Pbは、「0(大気圧)」である。第2調圧弁UBへの供給電流Ib(第2供給電流)が増加されると、第2調圧弁UBによって還流路HKの流路が狭められる。これにより、第2調圧弁UBに対して、下流側の液圧(大気圧「0」)と上流側の液圧Pb(第2液圧)との間に差圧ΔPub(「第2差圧」という)が発生される。従って、第2液圧Pbは第2差圧ΔPubに等しい(即ち、「Pb=ΔPub」)。ここで、第2差圧ΔPubは、第2供給電流Ibによって調節される。
【0050】
同様に、第1調圧弁UAが全開状態にある場合(第1調圧弁UAは常開型であるため、非通電時)には、第1液圧Paは、第2液圧Pbに等しい。第1調圧弁UAへの供給電流Ia(第1供給電流)が増加されると、第1調圧弁UAによって循環流KNが絞られる。これにより、第1調圧弁UAに対して、下流側の液圧Pb(第2液圧)と上流側の液圧Pa(第1液圧)との間に差圧ΔPua(「第1差圧」という)が発生される。従って、第1液圧Paは、第2液圧Pbと第1差圧ΔPuaとの和に等しい(即ち、「Pa=Pb+ΔPua=ΔPua+ΔPub」)。ここで、第1差圧ΔPuaは、第1供給電流Iaによって調節される。なお、第1液圧Paと第2液圧Pbとの大小関係では、常に、第1液圧Paは、第2液圧Pb以上である(即ち、「Pa≧Pb」)。
【0051】
制動制御装置SCでは、前輪にて回生制動力Fgが発生されるので、第2液圧Pbによって、前輪ホイール圧Pwfが調整される。前輪に係る制動系統では、還流路HKは、第1調圧弁UAと第2調圧弁UBとの間で、サーボ路HV(流体路)を介して、マスタシリンダCMのサーボ室Ruに接続される。従って、第2液圧Pbは、サーボ室Ruに導入(供給)される。第2液圧Pbの増加によって、マスタピストンNMが前進方向Haに押圧され、マスタ室Rm内の液圧Pm(マスタ圧)が増加される。マスタ室Rmには、前輪連絡路HSfが接続される。前輪連絡路HSfは、第2制動ユニットSBを経由して、前輪ホイールシリンダCWfに接続される。従って、前輪制動系統では、第2液圧Pbが、マスタシリンダCMを介して、マスタ圧Pmとして、前輪ホイールシリンダCWfに供給される。つまり、前輪制動系統では、調圧部CAで発生された第2液圧Pbは、「Pb→Pm→Pwf」の順で、前輪ホイールシリンダCWfに伝達される。ここで、「ru=rm」であるため、「Pb=Pm=Pwf」である。
【0052】
制動制御装置SCでは、第1液圧Paによって、後輪ホイール圧Pwrが調整される。後輪に係る制動系統では、還流路HKは、流体ポンプQAの吐出部Qoと第1調圧弁UAとの間で、後輪連絡路HSr(流体路)に接続される。後輪連絡路HSrは、第2制動ユニットSBを経由して、後輪ホイールシリンダCWrに接続される。従って、後輪制動系統では、第1液圧Paが、後輪ホイールシリンダCWrに直接供給される。つまり、後輪制動系統では、調圧部CAで発生された第1液圧Paは、「Pa→Pwr」の順で、後輪ホイールシリンダCWrに伝達される。ここで、「Pa=Pwr」である。
【0053】
調圧部CAには、第1、第2液圧Pa、Pbを検出するよう、第1、第2液圧センサPA、PBが設けられる。検出された第1、第2液圧Pa、Pbは、第1コントローラEAに入力される。また、第2アクチュエータYBのマスタ圧センサPMによって検出されたマスタ圧Pmが、通信バスBSを通して、第1コントローラEAに入力される。
【0054】
調圧部CA(特に、還流路HK)には、制動液BF(作動液)の第1、第2温度Ta、Tbを検出するよう、第1、第2温度センサTA、TBが設けられる。検出された第1、第2温度Ta、Tbは、第1コントローラEAに入力される。また、第2アクチュエータYBのマスタ温度センサTMによって検出されたマスタ温度Tmが、通信バスBSを通して、第1コントローラEAに入力される。例えば、第1、第2温度センサTA、TB、マスタ温度センサTMは、第1、第2液圧センサPA、PB、マスタ圧センサPMに内蔵される。そして、検出温度(Ta等)は、液圧センサ(PA等)の温度補償に利用される。
【0055】
第1コントローラEAでは、第1、第2温度Ta、Tbのうちの少なくとも1つが、還流路HKにおける制動液BF(作動液)の温度Teとして決定される。或いは、マスタ温度Tmに基づいて、還流路HKにおける制動液BF(作動液)の温度Teが推定されてもよい。つまり、制動液BFの温度Teは、第1、第2温度Ta、Tb、及び、マスタ温度Tmのうちの少なくとも1つに基づいて決定される。
【0056】
≪第1差圧ΔPuaの温度依存性≫
制動制御装置SCでは、「第1、第2調圧弁UA、UBによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが個別に制御される2系統調圧」と「第2調圧弁UBのみによって前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが同程度に制御される1系統調圧」とが選択的に切り替えられる。1系統調圧では、第1調圧弁UAには給電が行われず、第1調圧弁UAは全開状態にされる。第1調圧弁UAが全開状態であっても、弁体と弁座との隙間の大きさ(即ち、開弁量)は限られる。このため、循環流KNに対して該隙間が抵抗となり、第1調圧弁UAでの差圧ΔPuaが僅かに生じる。還流路HKにおいて、制動液BF(作動液)の温度Teが通常である場合(例えば、常温であり、20℃)には、第1差圧ΔPuaは無視できる程度である。しかしながら、温度Teの低下に伴い、制動液BFの粘性が増大するため、第1差圧ΔPuaは徐々に大きくなる。極低温(例えば、-10数℃以下)になると、第1差圧ΔPuaの大きさは、車両の減速度Gxに影響を及ぼす程度に増加する。
【0057】
1系統調圧では、前輪ホイール圧Pwfに対応する前輪目標圧Ptfに基づいて、第2調圧弁UBによって、第2液圧Pbが調整される。このとき、第1調圧弁UAは全開にされている。通常の温度(常温時)では、「ΔPau≒0」であるため、第1液圧Paは第2液圧Pbに略等しい。しかし、低温時には、第1差圧ΔPauが大きくなるため、第1液圧Paは、第2液圧Pbよりも増加している。このため、制動液BFの温度低下に起因して、車両の減速度Gxが一定に定まらない状況(例えば、過剰になる状況)が生じ得る。制動制御装置SCでは、このことが考慮されて、第2液圧Pb(結果、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwr)が調整される。
【0058】
<調圧制御の処理>
図3のフロー図を参照して、調圧制御の処理について説明する。調圧制御では、第1制動ユニットSAによって、2系統調圧、及び、1系統調圧の何れか一方が選択され、実行される。「2系統調圧」では、第1、第2調圧弁UA、UBによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが、独立且つ個別に調節される。これに対して、「1系統調圧」では、第2調圧弁UBのみによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが調節される。例えば、1系統調圧は、第2制動ユニットSBにてアンチロックブレーキ制御が実行される場合、回生装置KGにて十分な回生作動が実行できない場合等に選択される。1系統調圧が選択されない場合には、2系統調圧が選択される。
【0059】
調圧制御では、先ず、導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給が行われ、常閉型の導入弁VAが開弁され、常開型の開放弁VBが閉弁される。これにより、マスタピストンNMと制動操作部材BPとが別体で変位することができ、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrは、制動操作部材BPの操作とは独立で調整される。このとき、制動操作部材BPの操作力Fpは、ストロークシミュレータSSによって発生される。
【0060】
ステップS110にて、各種信号が読み込まれる。第1コントローラEAにより、操作変位センサSP、第1、第2液圧センサPA、PB、第1、第2温度センサTA、TBから、操作変位Sp、第1、第2液圧Pa、Pb、第1、第2温度Ta、Tbが取得される。また、第1コントローラEAにより、通信バスBSから、マスタ圧Pm、マスタ温度Tm、実行フラグFA、限界回生制動力Fxが取得される。
【0061】
「実行フラグFA」は、第2制動ユニットSBでのアンチロックブレーキ制御の実行の有無を表す制御フラグである。実行フラグFAは、第2コントローラEBから通信バスBSに送信される。例えば、アンチロックブレーキ制御が実行されていない場合には「FA=0」が送信され、アンチロックブレーキ制御が実行されている場合には「FA=1」が送信される。第1コントローラEAは、実行フラグFAに基づいて、アンチロックブレーキ制御の実行状況を識別することができる。
【0062】
「限界回生制動力Fx」は、回生装置KGが発生し得る回生制動力Fgの上限値(限界値)である。つまり、回生装置KGは、「0」から限界回生制動力Fxまでの範囲で、回生制動力Fgを発生することができる。回生装置KGでの回生量(結果、回生制動力Fg)は、回生コントローラEGのパワートランジスタ(IGBT等)の定格、及び、回生蓄電池BGの充電受入性によって制限される。例えば、回生装置KGによる回生制動力Fgは、所定の電力(単位時間当りの電気エネルギ)に制御される。電力(仕事率)が一定であるため、回生制動力Fgは、回生ジェネレータGNの回転速度Ng(即ち、車輪の回転速度Vwであり、車体速度Vxに相当)に反比例する。また、回生ジェネレータGNの回転速度Ngが低下すると、回生制動力Fgは減少する。更に、限界回生制動力Fxには、最大回生制動力fx(「最大回生力」ともいう)の制限が設けられる。限界回生制動力Fxは、回生コントローラEGから通信バスBSに送信される。第1コントローラEAは、限界回生制動力Fxに基づいて、回生装置KGの作動状況を把握することができる。
【0063】
ステップS120にて、操作変位Sp、及び、演算マップZfvに基づいて、目標総制動力Fvが演算される。「目標総制動力Fv」は、車両全体に作用する制動力の目標値である。目標総制動力Fvは、目標総制動力演算ブロックFVに示すように、演算マップZfvに従って、操作変位Spが所定変位so未満の場合には「0」に演算される。そして、操作変位Spが所定変位so以上の場合には、操作変位Spが「0」から増加するに伴い、目標総制動力Fvが「0」から増加するように演算される。ここで、「所定変位so」は、制動操作部材BPの遊びを表す、予め設定された所定値(定数)である。
【0064】
ステップS130にて、「1系統調圧を選択するか、否か」が判定される。ステップS130の処理が、「選択判定」と称呼される。選択判定では、初期設定として、2系統調圧が選択されている。選択判定は、第2制動ユニットSBの作動状態、及び、回生装置KGの作動状態のうちの少なくとも1つに基づいて実行される。例えば、以下の場合に、選択判定は肯定され、2系統調圧から1系統調圧に切り替えられる。
【0065】
(A)第2制動ユニットSBにて、アンチロックブレーキ制御が実行される場合
アンチロックブレーキ制御の実行中は、調圧制御が、1系統調圧に切り替えられる。ここで、アンチロックブレーキ制御の実行状況は、実行フラグFAに基づいて判別される。
【0066】
(B)回生装置KGにて回生制動力Fgが発生できない場合(又は、回生制動力Fgの発生に制約が生じた場合)
回生装置KGの不調、或いは、回生蓄電池BGの充電状態によって、回生装置KGが適切な回生作動を実行できない場合には、1系統調圧が用いられる。例えば、該状況は、限界回生制動力Fxに基づいて判別される。
【0067】
ステップS130の選択判定が否定される場合には、2系統調圧が選択され、処理はステップS140に進められる。一方、選択判定が肯定される場合には、1系統調圧が選択され、処理はステップS160に進められる。
【0068】
≪2系統調圧の処理≫
ステップS140にて、目標総制動力Fv、及び、限界回生制動力Fxに基づいて、目標回生制動力Fh、及び、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnrが演算される。具体的には、以下の場合分けに基づいて、目標値Fh、Fnf、Fnrが決定される。
【0069】
場合(1):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fx以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされ、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnrは「0」にされる。即ち、「Fv≦Fx」の場合には、「Fh=Fv、Fnf=Fnr=0」が決定される。
【0070】
場合(2):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fxよりも大きく、且つ、限界回生制動力Fxを前輪比率hfで除した値(Fx/hf)以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされる。そして、前輪目標液圧制動力Fnfは「0」に、後輪目標液圧制動力Fnrは、目標総制動力Fvから目標回生制動力Fh(=Fx)を減じた値に、夫々決定される。即ち、「Fx<Fv≦(Fx/hf)」の場合には「Fh=Fx、Fnf=0、Fnr=Fv-Fh=Fv-Fx」が決定される。なお、「前輪比率hf」は、目標総制動力Fvに対する前輪目標制動力(即ち、目標回生制動力Fhと前輪目標液圧制動力Fnfとの和)の比率であり、制動装置の諸元に基づいて予め設定された所定値(定数)である。
【0071】
場合(3):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fxを前輪比率hfで除した値(Fx/hf)よりも大きい場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされる。そして、前輪目標液圧制動力Fnfは、目標総制動力Fvに前輪比率hfを乗じた値(hf・Fv)から目標回生制動力Fhが減算されて算出される。また、後輪目標液圧制動力Fnrは、「1」から前輪比率hfを減じた値に目標総制動力Fvが乗算されて算出される。即ち、「Fv>(Fx/hf)」の場合には「Fh=Fx、Fnf=hf・Fv-Fh、Fnr=(1-hf)・Fv」が決定される。
【0072】
最終的には、ステップS140では、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnr(=Fn)に基づいて、前輪、後輪目標圧Ptf、Ptr(=Pt)が演算される。「前輪、後輪目標圧Ptf、Ptr」は、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrの目標値である。前輪、後輪目標圧Ptf、Ptrは、制動装置等の諸元に基づいて、目標液圧制動力Fnf、Fnrが、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrの次元に換算されることで決定される。ここで、上記諸元は、ホイールシリンダCWの受圧面積、回転部材(ブレーキディスク)の有効制動半径、摩擦材(ブレーキバッド)の摩擦係数、車輪(タイヤ)の有効半径等である。
【0073】
ステップS150にて、前輪、後輪目標圧Ptf、Ptr(目標値)に基づいて、調圧部CAによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwr(実際値)が調整される。具体的には、第1コントローラEAによって、電気モータMA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBが駆動され、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが、前輪、後輪目標圧Ptf、Ptrに近付き、一致するように制御される。即ち、2系統調圧では、第1、第2調圧弁UA、UBに給電が行われる。
【0074】
ステップS150では、電気モータMAが駆動され、流体ポンプQA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBを含む循環流KNが発生される。前輪調圧では、前輪目標圧Ptf、及び、マスタ圧Pmに基づいて、マスタ圧Pm(=Pwf)が、前輪目標圧Ptfに一致するように、第2調圧弁UBが制御される。つまり、マスタ圧Pmと前輪目標圧Ptfとの偏差hPfが「0」になるように、第2調圧弁UBへの供給電流Ibが、フィードバック制御により調節される。ここで、サーボ室Ruの受圧面積ruとマスタ室Rmの受圧面積rmとは等しいので、マスタ圧Pmに代えて、第2液圧Pbを用いて液圧制御を行ってもよい。
【0075】
後輪目標圧Ptr、及び、第1液圧Paに基づいて、第1液圧Pa(=Pwr)が、後輪目標圧Ptrに一致するように、第1調圧弁UAが制御される。つまり、第1液圧Paと後輪目標圧Ptrとの偏差hPrが「0」になるように、第1調圧弁UAへの供給電流Iaが、フィードバック制御により調節される。
【0076】
≪1系統調圧の処理≫
ステップS130の選択判定が肯定されると、第1調圧弁UAへの電力供給が停止され、第1調圧弁UAが開弁される。第1調圧弁UAは、常開型電磁弁であるため、給電停止により全開状態にされる。これにより、2系統調圧から1系統調圧への切り替えが行われる。
【0077】
ステップS160にて、目標総制動力Fv、及び、限界回生制動力Fxに基づいて、目標回生制動力Fh、及び、目標液圧制動力Fnの総和Fnt(「目標総和」ともいう)が演算される。ここで、「目標総和Fnt」は、前輪目標液圧制動力Fnfと後輪目標液圧制動力Fnrとの和である(即ち、「Fnt=Fnf+Fnr」)。ステップS160では、目標総制動力Fvが限界回生制動力Fx以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされ、目標液圧制動力Fnの総和Fntは「0」にされる(即ち、「Fv≦Fx」の場合には「Fh=Fv、Fnt=0」)。一方、目標総制動力Fvが限界回生制動力Fxよりも大きい場合には、目標回生制動力Fhは限界回生制動力Fxに等しくされ、目標総和Fntは「目標総制動力Fvから目標回生制動力Fh(=Fx)が減算された値」にされる(即ち、「Fv>Fx」の場合には「Fh=Fx、Fnt=Fv-Fh=Fv-Fx」)。
【0078】
ステップS160にて、目標総和Fntに基づいて、前輪目標圧Ptfが演算される。具体的には、前輪目標圧Ptfと後輪目標圧Ptfとが等しくされ、目標総和Fntが満足されるように、制動装置の諸元に基づいて、前輪目標圧Ptfが決定される。つまり、「Fv≦Fx」の場合には、前輪目標圧Ptf(=Ptr)は「0」に決定される。一方、「Fv>Fx」の場合には、「Ptf=Ptr」が満足され、且つ、目標液圧制動力Fnの合計Fnt(目標総和)が値「Fv-Fh」に等しくなるように、前輪目標圧Ptfが決定される。上記同様、制動装置の諸元には、ホイールシリンダCWの受圧面積、回転部材の有効制動半径、摩擦材の摩擦係数、車輪の有効半径が用いられる。
【0079】
1系統制御が選択される場合には、ステップS160にて、目標回生制動力Fhが「0」に決定され、回生装置KGの作動が停止されてもよい。例えば、アンチロックブレーキ制御が開始される時点で、回生装置KGに「Fh=0」が送信され、回生装置KGが停止される。「Fh=0」の場合でも、上記同様に、前輪目標圧Ptfは、制動装置の諸元に基づいて、「Ptf=Ptr、Fnf+Fnr=Fv」が満足されるように演算される。
【0080】
ステップS170にて、前輪目標圧Ptf、及び、還流路HKにおける制動液BF(作動液)の温度Teに基づいて、補正目標圧Psfが演算される。「補正目標圧Psf」は、温度Teに応じて、前輪目標圧Ptfを補正した目標値(即ち、修正後の目標圧)である。ステップS170では、先ず、還流路HKにおける制動液BFの温度Teが、第1、第2温度Ta、Tb、及び、マスタ温度Tmのうちの少なくとも1つに基づいて決定される。ここで、第1、第2温度Ta、Tb、及び、マスタ温度Tmは、第1、第2温度センサTA、TB、及び、マスタ温度センサTMによって検出される。
【0081】
次に、ステップS170では、温度Teに基づいて、修正圧ePは、前輪目標圧Ptfを補正するための液圧である。具体的には、修正圧演算ブロックEPに示す演算マップZepに従って、温度Teが所定温度te以上である場合には、修正圧ePは「0」に決定される。そして、温度Teが所定温度te未満である場合には、温度Teが低下(減少)するほど、修正圧ePは大きくなるように演算される。また、修正圧ePには、上限圧epが設定される。ここで、所定温度te(「第1所定温度」ともいう)、及び、上限圧epは、予め設定された所定値(定数)である。なお、所定温度teは、氷点(0℃)よりも低い温度である。最後に、ステップS170では、前輪目標圧Ptf、及び、修正圧ePに基づいて、補正目標圧Psfが演算される。具体的には、前輪目標圧Ptfから修正圧ePが減算されて、補正目標圧Psfが決定される(即ち、「Psf=Ptf-eP」)。
【0082】
ステップS180にて、補正目標圧Psf(目標値)に基づいて、調圧部CAによって、前輪ホイール圧Pwf(実際値)が調整される。ステップS180では、電気モータMA、及び、第2調圧弁UBが駆動され、前輪ホイール圧Pwf(=Pm)が、補正目標圧Psfに近付き、一致するように制御される。ここで、後輪ホイール圧Pwr(実際値)は、前輪ホイール圧Pwfの成り行きによって定まる。即ち、1系統調圧では、第2調圧弁UBのみに給電が行われる。
【0083】
ステップS180では、ステップS150と同様に、電気モータMAが駆動され、流体ポンプQA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBを含む循環流KNが発生される。このとき、第1調圧弁UAには電力供給が行われないので、それは全開状態である。1系統調圧では、補正目標圧Psf、及び、マスタ圧Pmに基づいて、マスタ圧Pm(=Pwf)が、補正目標圧Psfに一致するように、第2調圧弁UBのみが制御される。なお、2系統調圧と同様に、1系統調圧でも、マスタ圧Pmに代えて、第2液圧Pbが採用され得る。
【0084】
1系統調圧では、第1調圧弁UAが全開にされ、第2調圧弁UBによって、第2液圧Pb(結果、前輪ホイール圧Pwf)が調整される。このとき、第1液圧Pa(結果、後輪ホイール圧Pwr)は、第2液圧Pbを調節した結果として、成り行きで決まる。上述するように、第1調圧弁UAが全開状態であっても、弁体と弁座との隙間が存在する。このため、第1調圧弁UAの該隙間は、循環流KNに対する抵抗となり、第1差圧ΔPuaが発生する。温度Teが然程低くない場合には、第1差圧ΔPuaは、車両の減速度Gxに対して無視し得る大きさである。しかしながら、温度Teが極めて低くなると、第1差圧ΔPuaが車両減速度Gxに及ぼす影響が無視できなくなる。詳細には、同一の操作変位Spに対して、極低温時には、常温時に比較して、第1差圧ΔPuaに相当する分の車両減速度Gxが大きくなる。
【0085】
そこで、制動制御装置SCでは、1系統調圧において、温度Teに基づいて、第2液圧Pbが微調整される。先ず、第1、第2温度Ta、Tb、及び、マスタ温度Tmのうちの少なくとも1つに基づいて、温度Teが決定される。次に、循環流KNの温度Teから算出される修正圧ePに基づいて、前輪目標圧Ptfが補正されて、補正目標圧Psfが決定される。そして、補正目標圧Psfに基づいて、マスタ圧Pm(又は、第2液圧Pb)が補正目標圧Psfに一致するように、第2調圧弁UBが制御される。第2調圧弁UBによる第2液圧Pbの調整において、作動液BFの温度Teが考慮されるため、第1差圧ΔPuaの影響が補償される。このため、温度Teが低下した場合であっても、温度Teに依らず、同一の操作変位Spに対して、同一の車両減速度Gxが確保され得る。即ち、車両の減速特性が、外気温度で変化することなく、常に一定に維持される。
【0086】
なお、2系統調圧では、第1、第2液圧Pa、Pbは個別に調整されるため、第1差圧ΔPuaの影響は、車両減速度Gxには及ばない。これは、第1差圧ΔPuaが増大しても、この影響は、後輪目標圧Ptr、及び、第1液圧Paに基づくフィードバック制御によって補償されるからである。
【0087】
<制動制御装置SCの第2の実施形態>
図4の概略図を参照して、制動制御装置SCの第2の実施形態について説明する。第1の実施形態は、前輪に回生ジェネレータGNを備えた車両に適用されたが、第2の実施形態は、後輪に回生ジェネレータGNを備えた車両に適用される。第2の実施形態に係るアプライ部AP、入力部NR、第1コントローラEA、及び、第2制動ユニットSBは、第1の実施形態と同様であるため、相違点を主に説明する。
【0088】
第1の実施形態と同様に、第2の実施形態に係る調圧部CAも、流体ポンプQA、電気モータMA、及び、第1、第2調圧弁UA、UBにて構成される。電気モータMA、及び、流体ポンプQAによって発生される循環流KNが、第1調圧弁UA、及び、第2調圧弁UBによって調圧されて、第1液圧Pa、及び、第2液圧Pbが制御される。しかしながら、第2の実施形態では、第1液圧Paがサーボ室Ruに供給され、第2液圧Pbが後輪ホイールシリンダCWrに供給される。加えて、極低温時には、第1の実施形態では、後輪ホイール圧Pwrが過剰となるが、第2の実施形態では、後輪ホイール圧Pwrの不足が発生する。以下、該現象について説明する。
【0089】
第2の実施形態の1系統調圧では、第1調圧弁UAへの給電が停止され、第2調圧弁UBのみに給電が行われる。そして、第2調圧弁UBのみにより第1液圧Paが調整され、第1液圧Paにより前輪ホイール圧Pwfが発生される。具体的には、マスタ圧Pm(=Pa)が、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように、第2調圧弁UBへの供給電流Ibが調整される。このとき、第2液圧Pb(=Pwr)は、第1液圧Pa(=Pm=Pwf)の調整結果として、成り行きで決まる。上述するように、常温時には第1差圧ΔPuaは問題にならないが、極低温時には、制動液BFの粘度低下に起因して、第1差圧ΔPuaが大きくなる。
【0090】
第1の実施形態では、マスタ圧Pmが前輪目標圧Ptfに一致するように第2液圧Pb(結果、前輪ホイール圧Pwf)が制御されると、成り行きで定まる第1液圧Pa(結果、後輪ホイール圧Pwr)は、第2液圧Pbに対して第1差圧ΔPuaだけ大きくなる。このため、極低温時には、常温時(即ち、「ΔPau≒0」の場合)に比べ、第1差圧ΔPuaに相当する分の車両減速度Gxが過剰になる。これに対して、第2の実施形態では、マスタ圧Pmが前輪目標圧Ptfに一致するように、第1液圧Pa(結果、前輪ホイール圧Pwf)が制御されると、成り行きで決まる第2液圧Pb(結果、後輪ホイール圧Pwr)は、第1差圧ΔPuaだけ小さくなる。従って、極低温時には、常温時に比較して、第1差圧ΔPuaに相当する分の車両減速度Gxが不足する。このことを解消するため、第2の実施形態でも、作動液BFの温度Teに応じて、補正目標圧Psfが決定される。
【0091】
第2の実施形態でも、制動制御装置SCでは、調圧制御として、2系統調圧、及び、1系統調圧が選択的に実行される。2系統調圧では、第1、第2調圧弁UA、UBによって、「Pwf≧Pwr」の範囲で、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが個別に制御される。1系統調圧では、第2調圧弁UBのみによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが制御される。
【0092】
≪2系統調圧の処理≫
第2の実施形態に係る2系統調圧では、目標総制動力Fv、及び、限界回生制動力Fxに基づいて、目標回生制動力Fh、及び、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnrが、以下の3つの場合に分けられて決定される。そして、制動装置等の諸元に基づいて、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnr(=Fn)が、前輪、後輪目標圧Ptf、Ptrに変換される。
【0093】
場合(4):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fx以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされ、前輪、後輪目標液圧制動力Fnf、Fnrは「0」にされる。即ち、「Fv≦Fx」の場合には、「Fh=Fv、Fnf=Fnr=0」が決定される。
【0094】
場合(5):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fxよりも大きく、且つ、限界回生制動力Fxを後輪比率hrで除した値(Fx/hr)以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされる。そして、前輪目標液圧制動力Fnfは、目標総制動力Fvから目標回生制動力Fh(=Fx)を減じた値に、後輪目標液圧制動力Fnrは「0」に、夫々決定される。即ち、「Fx<Fv≦(Fx/hr)」の場合には「Fh=Fx、Fnf=Fv-Fh=Fv-Fx、Fnr=0」が決定される。なお、「後輪比率hr」は、目標総制動力Fvに対する後輪目標制動力(即ち、目標回生制動力Fhと後輪目標液圧制動力Fnrとの和)の比率であり、制動装置の諸元に基づいて予め設定された所定値(定数)である。
【0095】
場合(6):目標総制動力Fvが、限界回生制動力Fxを後輪比率hrで除した値(Fx/hr)よりも大きい場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされる。そして、前輪目標液圧制動力Fnfは、「1」から後輪比率hrを減じた値に目標総制動力Fvが乗算されて算出される。また、後輪目標液圧制動力Fnrは、目標総制動力Fvに後輪比率hrを乗じた値(hr・Fv)から目標回生制動力Fhが減算されて算出される。即ち、「Fv>(Fx/hr)」の場合には「Fh=Fx、Fnf=(1-hr)・Fv、Fnr=hr・Fv-Fh」が決定される。
【0096】
≪1系統調圧の処理≫
第2の実施形態に係る1系統調圧の処理では、目標総制動力Fv、及び、限界回生制動力Fxに基づいて、目標回生制動力Fh、及び、目標液圧制動力Fnの総和Fnt(目標総和)が演算される。目標総制動力Fvが限界回生制動力Fx以下である場合には、目標回生制動力Fhは目標総制動力Fvに等しくされ、目標液圧制動力Fnの総和Fntは「0」にされる(即ち、「Fv≦Fx」の場合には「Fh=Fv、Fnt=0」)。一方、目標総制動力Fvが限界回生制動力Fxよりも大きい場合には、目標回生制動力Fhは限界回生制動力Fxに等しくされ、目標総和Fntは「目標総制動力Fvから目標回生制動力Fh(=Fx)が減算された値」にされる(即ち、「Fv>Fx」の場合には「Fh=Fx、Fnt=Fv-Fh=Fv-Fx」)。
【0097】
目標総和Fnt、及び、「Ptf=Ptr」が、共に満足されるように、制動装置の諸元に基づいて、前輪目標圧Ptfが決定される。従って、「Fv≦Fx」の場合には、前輪目標圧Ptf(=Ptr)は「0」に決定される。「Fv>Fx」の場合には、「Ptf=Ptr」の条件で、目標総和Fntが値「Fv-Fh」に等しくなるように、前輪目標圧Ptfが決定される。
【0098】
温度Te、及び、演算マップZepに基づいて、修正圧ePが演算される(図3の修正圧演算ブロックEPを参照)。そして、前輪目標圧Ptfに修正圧ePが加算されて、補正目標圧Psfが決定される(即ち、「Psf=Ptf+eP」)。第1の実施形態では、修正圧ePによって、前輪目標圧Ptfが減少するように、補正目標圧Psfが決定された。これとは逆に、第2の実施形態では、修正圧ePによって、前輪目標圧Ptfが増加するように補正されて補正目標圧Psfが決定される。極低温時に、第1差圧ΔPuaに相当する分の車両減速度Gxが不足するが、第2調圧弁UBによる第1液圧Paの調整において、温度Teに応じた前輪目標圧Ptfの増加補正により、車両減速度Gxの不足が抑制される。これにより、車両の減速特性が、外気温度で変化することなく、常に一定に維持される。
【0099】
<変形例>
図5の概略図を参照して、制動制御装置SCの変形例について説明する。第1、第2の実施形態では、第1制動ユニットSAにおいて、マスタ圧PmがマスタシリンダCMを介して出力された。即ち、液圧伝達経路において、アプライ部APと調圧部CAとが直列に配置され、調圧部CAから供給された第1液圧Pa、又は、第2液圧Pbが、マスタピストンNMを介して、マスタシリンダCMからマスタ圧Pmとして出力された。該構成が「直列構成」と称呼される。直列構成に代えて、アプライ部APと調圧部CAとが並列に配置されてもよい。該構成が「並列構成」と称呼される。
【0100】
並列構成では、アプライ部AP(特に、マスタシリンダCM)、及び、調圧部CAの夫々は、ホイールシリンダCWに直に接続される。具体的には、マスタシリンダCMと前輪ホイールシリンダCWfとは、前輪連絡路HSfによって接続される。前輪連絡路HSfには、常開型のオン・オフ電磁弁である遮断弁VMが設けられる。遮断弁VMの下部にて、前輪連絡路HSfは、連通路HC(流体路)を介して、調圧部CAに接続される。連通路HCには、常閉型のオン・オフ電磁弁である連通弁VCが設けられる。調圧部CAは、後輪ホイールシリンダCWrに直に接続される。
【0101】
調圧制御の実行時には、遮断弁VM、及び、連通弁VCに給電が行われる。これにより、遮断弁VMは閉弁され、連通弁VCは開弁される。前輪に回生ジェネレータGNを備える車両では、第2液圧Pbが前輪ホイールシリンダCWfに、第1液圧Paが後輪ホイールシリンダCWrに、夫々供給される(第1の実施形態を参照)。該構成に係る1系統調圧では、制動液BFの温度Teに基づいて、前輪目標圧Ptfが減少するように修正される。また、後輪に回生ジェネレータGNを備える車両では、第1液圧Paが前輪ホイールシリンダCWfに、第2液圧Pbが後輪ホイールシリンダCWrに、夫々供給される(第2の実施形態を参照)。該構成に係る1系統調圧では、制動液BFの温度Teに基づいて、前輪目標圧Ptfが増加するように修正される。これらの修正により、変形例でも、極低温時の第1差圧ΔPuaに起因する車両減速度Gxの変化が抑制され得る。
【0102】
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(極低温時における車両減速度Gxの変化抑制)を奏する。
【0103】
上述の実施形態では、温度Teから算出される修正圧ePに基づいて、補正目標圧Psfが決定され、マスタ圧Pmが補正目標圧Psfに一致するように第2液圧Pb、又は、第1液圧Paが制御された。即ち、目標値Ptf(目標値)が修正されることにより、第1差圧ΔPuaの影響が補償された。これに代えて、マスタ圧Pm(実際値)が修正されることによって、該影響が補償されてもよい。具体的には、第1の実施形態(前輪に回生ジェネレータGNを備える車両に対応した構成)では、マスタ圧Pmに修正圧ePが加算された値が、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。これにより、ホイール圧Pwは小さくなるように補正(修正)される。また、第2の実施形態(後輪に回生ジェネレータGNを備える車両に対応した構成)では、マスタ圧Pmから修正圧ePが減算された値が、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。これにより、ホイール圧Pwは大きくなるように補正(修正)される。
【0104】
上述の実施形態では、修正圧ePが、温度Teに応じた変数として算出された。これに代えて、修正圧ePは、温度Teが所定温度tg以上である場合には「0」に決定され、温度Teが所定温度tg未満である場合には所定圧epに決定されてもよい(図3の修正圧演算ブロックEPに破線で示す特性を参照)。ここで、所定温度tg(「第2所定温度」ともいう)、及び、所定圧epは、予め設定された所定値(定数)である。なお、第2所定温度tgは、第1所定温度teと同様に、0℃未満の温度である。
【0105】
また、修正圧ePを決定せず、フィードバック制御の対象を切り替えるようにしてもよい。具体的には、第1の実施形態(前輪に回生ジェネレータGNを備える車両に対応した構成)では、温度Teが所定温度tg以上である場合には、マスタ圧Pm(又は、第2液圧Pb)が、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。一方、温度Teが所定温度tg未満である場合には、第1液圧Paが、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。同様に、第2の実施形態(後輪に回生ジェネレータGNを備える車両に対応した構成)では、温度Teが所定温度tg以上である場合には、マスタ圧Pm(又は、第1液圧Pa)が、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。一方、温度Teが所定温度tg未満である場合には、第2液圧Pbが、前輪目標圧Ptfに近付き、一致するように制御される。
【0106】
以上、他の実施形態で例示したように、回生装置KG(特に、回生ジェネレータGN)を前輪に備える車両に適用される制動制御装置SCでは、制動液BFの温度Te(液温)が低い場合には、それが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pm)が小さくなるように調整(減少補正)される。また、回生装置KG(特に、回生ジェネレータGN)を後輪に備える車両に適用される制動制御装置SCでは、制動液BFの温度Te(液温)が低い場合には、それが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pm)が大きくなるように調整(増加補正)される。制動液BFの温度Teに応じて前輪ホイール圧Pwfの発生が適正化されることにより、低温時における車両減速度Gxの変化が抑制される。
【0107】
上述の実施形態では、各種制動力の目標値(Fv、Fx、Fh、Fn等)が車両に作用する前後力の次元で演算された。これに代えて、車両の減速度Gxの次元、或いは、車輪トルクの次元で演算されてもよい。これは、前後力から車両減速度Gxに至る状態量(「力に係る状態量」という)は、等価であることに基づく。従って、目標圧Ptf、Ptrは、車両に作用する前後力から車両の減速度Gxに至るまでの力に係る状態量に基づいて演算される。
【0108】
上述の実施形態では、アプライ部APにおいて、マスタ室Rmの受圧面積rm(マスタ面積)とサーボ室Ruの受圧面積ru(サーボ面積)とが等しく設定された。マスタ面積rmとサーボ面積ruとは等しくなくてもよい。マスタ面積rmとサーボ面積ruとが異なる構成では、サーボ面積ruとマスタ面積rmとの比率に基づいて、マスタ圧Pmと第2液圧Pb(又は、第1液圧Pa)との変換演算が可能である(即ち、「Pm・rm=Pb・ru(又は、Pa・ru)」に基づく換算)。
【0109】
<実施形態のまとめ>
制動制御装置SCの実施形態についてまとめる。制動制御装置SCには、第1、第2調圧弁UA、UBと、第1、第2調圧弁UA、UBを制御するコントローラEAと、が備えられる。
【0110】
第1調圧弁UAは、電気モータMAによって駆動される流体ポンプQAの吐出部Qoと該流体ポンプQAの吸入部Qiとを接続する流体路HKに設けられる。第2調圧弁UBは、流体路HKにおいて、第1調圧弁UAと吸入部Qiとの間に設けられる。従って、第1、第2調圧弁UA、UBは、制動液BFの循環流KNの上流側から、第1調圧弁UA、第2調圧弁UBの順で配置されている。
【0111】
コントローラEAは、「第1、第2調圧弁UA、UBを駆動することによって前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrを制御する2系統調圧」、及び、「第2調圧弁UBのみを駆動することによって前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrを制御する1系統調圧」のうちの何れか一方を選択する。そして、コントローラEAは、1系統調圧を選択する場合には、流体路HKの作動液BFの温度Teに基づいて、前輪ホイール圧Pwfを調整する。
【0112】
制動制御装置SCの2系統調圧では、第1、第2調圧弁UA、UBに電力供給が行われ、それらが共に駆動される。そして、第1、第2調圧弁UA、UBによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが個別に制御される。これに対して、制動制御装置SCの1系統調圧では、第2調圧弁UBには電力供給が行われるが、第1調圧弁UAには電力供給が行われない。つまり、1系統調圧では、第1調圧弁UAは駆動されず、第2調圧弁UBのみが駆動される。そして、第2調圧弁UBのみによって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが制御される。ここで、後輪ホイール圧Pwrは、前輪ホイール圧Pwfの結果として制御される。
【0113】
1系統調圧が行われる場合、第2調圧弁UBの上流側に配置される第1調圧弁UAは全開状態である。しかしながら、第1調圧弁UAが全開であっても、その開弁量には限りがあるため、第1調圧弁UAの上流側と下流側との間には、第1差圧ΔPua(液圧差)が生じる。更に、第1差圧ΔPuaは制動液BFの粘性(粘度)に依存するため、制動液BFの温度Teが低いほど、第1差圧ΔPuaは大きくなる。
【0114】
1系統調圧では、前輪ホイール圧Pwfは、前輪目標圧Ptfに基づいて調整されるが、後輪ホイール圧Pwrは、前輪ホイール圧Pwfの結果として成り行きで調整される。第1差圧ΔPuaにより、後輪ホイール圧Pwrの過不足が生じるため、制動液BFの温度Teが極めて低い場合には、車両全体としての減速度Gxに変化が生じる。制動制御装置SCでは、液温Teに基づいて、前輪ホイール圧Pwfが微調整(増加又は減少)されるので、極低温時における車両減速度Gxの変化が抑制される。
【0115】
例えば、第1実施形態で示すように、コントローラEAは、流体ポンプQAの吐出部Qoと第1調圧弁UAとの間の第1液圧Paによって後輪ホイール圧Pwrを制御するとともに、第1調圧弁UAと第2調圧弁UAとの間の第2液圧Pbによって前輪ホイール圧Pwfを制御する。そして、コントローラEAは、温度Teが低い場合には、温度Teが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pb=Pm)を小さくする。
【0116】
回生装置KGを前輪に備えた車両に適用される制動制御装置SC(第1実施形態)では、第1液圧Paによって後輪ホイール圧Pwrが制御され、第2液圧Pbによって前輪ホイール圧Pwfが制御される。1系統調圧では、前輪ホイール圧Pwf(=Pm)が前輪目標圧Ptfに一致するように、第2調圧弁UBによって、第2液圧Pbが制御される。このとき、後輪ホイール圧Pwr(=Pa)は、第2液圧Pbよりも第1差圧ΔPuaの分だけ大きくなる(即ち、「Pa=Pb+ΔPua」)。このため、極低温時には、常温時に比べ、車両減速度Gxが相対的に大きくなる。つまり、操作変位Spから算出される目標減速度に対して、実際に発生する車両減速度Gxが過剰になる。該構成に係る制動制御装置SCでは、液温Teが低い場合には、液温Teが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pb=Pm)が減少するように修正される。これにより、車両の減速度Gxの特性は、温度Teに係らず、制動操作部材の操作変位Spに対して一定の関係に維持される。即ち、極低温時の車両減速度Gxの変化(上昇)が抑制される。
【0117】
また、第2実施形態で示すように、コントローラEAは、吐出部Qoと第1調圧弁UAとの間の第1液圧Paによって前輪ホイール圧Pwfを制御するとともに、第1調圧弁UAと第2調圧弁UAとの間の第2液圧Pbによって後輪ホイール圧Pwrを制御する。そして、コントローラEAは、温度Teが低い場合には、温度Teが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pa=Pm)を大きくする。
【0118】
第1実施形態とは逆に、回生装置KGを後輪に備えた車両に適用される制動制御装置SC(第2実施形態)では、第1液圧Paによって前輪ホイール圧Pwfが制御され、第2液圧Pbによって後輪ホイール圧Pwrが制御される。1系統調圧では、前輪ホイール圧Pwf(=Pm)が前輪目標圧Ptfに一致するように、第2調圧弁UBによって、第1液圧Paが制御される。このとき、後輪ホイール圧Pwr(=Pb)は、第1液圧Paよりも第1差圧ΔPuaの分だけ小さくなる(即ち、「Pb=Pa-ΔPua」)。このため、極低温時には、常温時に比べ、車両減速度Gxが相対的に小さくなる。つまり、操作変位Spから算出される目標減速度に対して、実際に発生する車両減速度Gxが不足する。該構成に係る制動制御装置SCでは、液温Teが低い場合には、液温Teが高い場合に比較して、前輪ホイール圧Pwf(=Pa=Pm)が増加するように修正される。これにより、車両の減速度Gxの特性は、温度Teに係らず、制動操作部材の操作変位Spに対して一定の関係に維持される。即ち、極低温時の車両減速度Gxの変化(低下)が抑制される。
【符号の説明】
【0119】
SC…制動制御装置、KG…回生装置、BP…制動操作部材(ブレーキペダル)、BF…制動液(作動液)、SA、SB…第1、第2制動ユニット、YA、YB…第1、第2アクチュエータ、EA、EB…第1、第2コントローラ、BS…通信バス、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、AP…アプライ部、NR…入力部、CA…調圧部、HK…還流路(QoとQiとを接続する流体路)、UA、UB…第1、第2調圧弁、MA…電気モータ、QA…流体ポンプ、Qo…QAの吐出部、Qi…QAの吸入部、VA…導入弁、VB…開放弁、SP…操作変位センサ、PA、PB…第1、第2液圧センサ、PM…マスタ圧センサ、TA、TB…第1、第2温度センサ、TM…マスタ温度センサ、Sp…操作変位、Pa、Pb…第1、第2液圧(PA、PBの検出値)、Pm…マスタ圧(PMの検出値)、ΔPua、ΔPub…第1、第2差圧(UA、UBにおける上流側と下流側との液圧差)、Ta、Tb…第1、第2温度(TA、TBの検出値)、Tm…マスタ温度(TMの検出値)、Te…BFの温度、Pwf、Pwr…前輪、後輪ホイール圧、Ptf、Ptr…前輪、後輪目標圧(Pwf、Pwrに対応する目標値)、eP…修正圧、Psf…補正目標圧(修正後のPtf)、Fg…回生制動力、Fx…限界回生制動力(KGが発生可能なFgの限界値)、Fp…液圧制動力、FA…実行フラグ(アンチロックブレーキ制御の実行状況を表す制御フラグ)。


図1
図2
図3
図4
図5