(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076863
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】着物の帯を使用した上着
(51)【国際特許分類】
A41D 31/00 20190101AFI20240530BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20240530BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240530BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240530BHJP
【FI】
A41D31/00 502Z
A41D1/00 Z
A41D1/02 F
A41D31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188664
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】522436019
【氏名又は名称】株式会社T&K
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】猪野 久恵
【テーマコード(参考)】
3B030
3B031
【Fターム(参考)】
3B030AA01
3B030AA04
3B031AA07
3B031AA08
3B031AB09
3B031AC01
3B031AC05
3B031AE01
(57)【要約】
【課題】和装のようなデザインを有し、かつ、比較的に高い強度の身生地からなる着物の帯を使用した上着の提供。
【解決手段】上着10は、上下方向Y及び横方向Xを有し、前身頃11と、後身頃12と、右袖部13と、左袖部14とを備える。前後身頃11,12及び左右袖部13,14の身生地20が、複数の帯30から切り出した複数の帯片から形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び横方向を有し、前身頃と、後身頃と、右袖部と、左袖部とを備える上着であって、前記前後身頃及び前記左右袖部の身生地が、複数の帯から切り出した複数の帯片から形成されることを特徴とする着物の帯を使用した上着。
【請求項2】
前記横方向の寸法を2等分する縦中心線をさらに有し、前記身生地は主柄領域を有し、同じデザインからなる前記主柄領域が前記縦中心線に関して対称に配置される請求項1に記載の着物の帯を使用した上着。
【請求項3】
前記柄は、外観上又は観念上において統一感がある請求項1又は2に記載の着物の帯を使用した上着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着物の帯を使用した上着(スタジアムジャンパー)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、着物とともに使用されている帯は、着物を着用する機会が少なくなるとともに、その使用頻度が減少している。日本国内のみならず、世界に向けて日本の伝統でもある着物や帯を広めることは、日本文化の発展にとって重要である。しかしながら、外国人が着物や帯による和装をすることは困難であり、比較的に大柄な外国人には日本人向けに制作された和装のサイズが合わず、また、和装による立ち振る舞いのルールを理解することも難しかった。
【0003】
しかしながら、和装のデザインを好む外国人は多く、また、日本国内においても複数の色や柄を有し、細やかな刺繍が施された高級感のある着物や帯の生地の活用を見直す動きもある。
【0004】
例えば、特許文献1においては、着物の帯を使用したブーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたブーツによれば、着物の帯を使用しているので、高級感のある和風テイストのデザインを有し、和装を好む日本人や外国人に好まれるといえる。また、着物の生地をリサイクルして使用した衣服が製造、販売されていることは出願人にも既知である。しかしながら、着物の生地は、染色した絹糸を織り上げて形成されているが比較的に強度が弱く、例えば、外国人用のスタジアムジャンパーに使用した場合には、着用者の動きによって一部が破損するおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、従来技術の改良であって、和装のようなデザインを有し、かつ、比較的に高い強度の身生地からなる上着を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、縦方向及び横方向を有し、前身頃と、後身頃と、右袖部と、左袖部とを備える上着に関する。
【0009】
本発明に係る上着では、前記前後身頃及び前記左右袖部の身生地が、複数の帯から切り出した複数の帯片から形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る上着は、以下の好ましい実施態様を有する。
(1)前記横方向の寸法を2等分する縦中心線をさらに有し、前記身生地は主柄領域を有し、同じデザインからなる前記主柄領域が前記縦中心線に関して対称に配置される。
(2)前記柄は、外観上又は観念上において統一感がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、身生地が、複数の帯から切り出した複数の帯片から形成されることによって、和装のようなデザインを有するとともに、比較的に強い強度を有することから、スタジアムジャンパーのような強い生地感を求められる上着にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、本開示に係る本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】本発明に係る上着(スタジアムジャンパー)の正面図。
【
図4】帯から身生地の一部を裁断する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~
図4を参照すると、本発明に係る上着10は、互いに交差する上下方向Yと、横方向Xと、前後方向Zとを有し、前身頃11と、後身頃12と、右袖部13と、左袖部14とを備える。
【0014】
上着10は、通常のスタジアムジャンパー(スタジャン)であって、その特長である、斜めに延びるポケット開口を有する一対のポケット部15と、リブ模様を有する襟首16、袖口17及び裾18と、ジッパーによって開閉可能な前開きとを有する。ただし、本発明の技術的効果を有する限りにおいて、上着10は、スタジアムジャンパー以外のジャンパー、ジャケット、ハーフコート、スポーツウエア等を含む。
【0015】
襟首16、袖口17及び裾18のリブは、開口縁部に沿って伸縮可能な伸縮部材から形成されていて、適度なフィット性を付与するための凹凸形状が採用されている。また、これらのリブは、前後に重なり合う生地の間に介在された状態で安定的に縫着される。
【0016】
上着10の外面全体を形成する身生地20は、着物の帯30を裁断してなる帯片を組み合わせたものであって、身生地20の裏面側には裏地40が取り付けられている。身生地20の材料として、好ましくは保湿性や通気性に優れた絹が用いられ、そのほかに、木綿、麻、毛、ポリエステルやナイロン等の化学繊維を用いることができる。裏地40には主として絹糸が使用されていて、身生地に合わせた色を有していることが好ましい。また、裏地40にも様々な色、柄、模様を採用することで、身生地20との組み合わせ次第で、上着10全体のデザインのバリエーションを際限なく生み出すことができる。
【0017】
図3を参照すると、身生地20として使用される着物の帯30は、幅W20~40cm、長さが3.0~5.0mであって、染色した絹糸を織り上げて形成されている。帯30は、全体として着色された柄模様を有しており、地模様となる領域50と、主たる柄を形成する主柄領域51とを有する。
【0018】
なお、本発明に係る帯30のデザインには、伝統的な正倉院文様、流水、月、田園風景、山の風景をモチーフとした自然・風景の文様のほかに、建造物やキャラクターをモチーフとした現代風の文様を含む。
【0019】
近年、着物の帯が有する日本文化独特のデザイン、例えば、四季を意識した美しい色合いや絵柄、さらには職人の高い織物技術による高級感あふれる生地感が多くの外国人を魅了している。このような外国人のニーズに対応するように、着物の生地を使用した衣服が製造販売されているが、着物の生地は正絹製であり、比較的に強度が弱いことから、例えば、所要の強度が求められる、スタジアムジャンパーに使用することはできなかった。
【0020】
スタジアムジャンパーには、所要の強度を持たせるために皮革製の生地が使用されているが、動物愛護の観点から使用を制限する動きがある。
【0021】
本発明に係る上着10は、着物の生地に比べて強度の強い帯30の生地を身生地20として使用していることから、皮革製でなくても所要の強度を有することができ、また、着物と同じ又はそれ以上の和風デザインが施されていることから、外観においても外国人を魅了することができる。
【0022】
図4を参照すると、帯(帯片)30を鋏等の切断器具で裁断する際には、裁断する部分の裏面32側(主柄領域51が位置してない側)に粘着性テープ60を止着することが好ましい。粘着性テープ60は、裁断ライン61の両側に2~5mm程度はみ出る程度の幅寸法を有する。
【0023】
既述のとおり、帯30は、柄を形成するためにその裏面32側に数千単位の糸が張り巡らされていて、そのまま裁断した場合には、無数の糸が切断されて解れを生じ、帯30の表面31側に位置する柄の形状が崩れてしまうおそれがある。
【0024】
本発明においては、裁断時に、帯30の裏面31側における裁断部分に粘着性テープ60を止着して、粘着性テープ60とともに帯30を切断することで、切断面において糸が解れて表面31側に位置する柄の形状が崩れるのを抑制することができる。なお、粘着性テープ60は、帯30の表面31側の切断部分を被覆するように配置していてもよい。また、図示していないが、裁断した部分には、ほつれ止めの為の糊を塗布することが好ましい。
【0025】
図5,6を参照すると、上着10の身生地20は、複数の生地が互いに縫着して形成されていて、それぞれ縦断中心線Pに関して横方向Xへ対象に位置する、右前身頃部Aと左前身頃部B、右前上袖部Cと左前上袖部D,右下袖部Eと左下袖部F、右脇下部Gと左脇下部H,右後身頃部Jと左後身頃部K、右後袖部Mと左後袖部Lを有する。
【0026】
これらの左右対称に位置する部分どうしは、左右対称となる位置に同じデザインの主柄領域51が位置していることが好ましい。具体的には、上着10の柄全体として50~70%程度のシンメトリー効果のあるデザインを採用することによって、帯30から切り出した複数の帯片をつなぎ合わせたツギハギのような外観を呈することはなく、全体として1つの身生地20から形成された統一感のあるような印象を与えることができる。
【0027】
このように、上着10の柄が縦中心線Pに関して対称となるように、身生地20の同じデザインの主柄領域51が配置されていることによって、統一感のある印象を与えることができデザイン性に優れる。上着10の柄が全体的にバランス良く配置されていることで、比較的に柄模様の少ないボトムやインナーともコーディネートし易いといえる。また、各生地に左右対称となるように、主柄領域を配置するためには、複数の帯30を使用することが好ましい。
【0028】
本実施形態においては、3本の帯30を用いて、身生地を形成している。通常、帯30は、着物と使用するときに着用者の正面に位置する部分に最も特徴的なデザインを有する主柄領域51を有するものであり、複数の帯30を使用することによって、複数のかかる特徴的な主柄領域51を上着10の身生地として使用することができ、上着10を総合的により意匠性に富んだ外観とすることができる。
【0029】
例えば、通常は一緒に使用されることのない、伝統的な正倉院文様と流水、月、田園風景、山の風景をモチーフとした自然・風景の文様とを有することによって、従来の和装において実現しなかったような独自性(オリジナルティ)のある斬新なデザイン、すなわち、世界で唯一のデザインを採用することができる。
【0030】
図示していないが、身生地20を複数の帯30の帯片から形成することによって、上着10の柄を外観的に統一感のあるものにするほかに、例えば、上着10の柄を背面に1つの大きな桜の花が形成されるような外観上の関連性(統一感)があるものにしたり、葉や花の色を上方から下方へ向かって次第に変化させることで四季の移り変わりを表現する等して、観念上の関連性(統一感)のあるものとしてもよい。
【0031】
さらに、上着10を着物の上から羽織ったときに、上着10の柄が上着10の下方に露出されている着物の柄と外観上又は観念上において関連性のあるようなデザインを有していてもよい。
【0032】
これらの複数の生地A~Lは、それに対応した型紙を制作したうえで、その形状に合わせて帯30を裁断することで形成することができる。帯30は平面状なので、立体裁断によって人体に合わせて着用しやすい形状に型紙を形成する。
【符号の説明】
【0033】
10 上着(スタジアムジャンパー)
11 前身頃
12 後身頃
13 右袖部
14 左袖部
20 身生地
30 帯
P 縦中心線
X 横方向
Y 上下方向