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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007689
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/01 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
E03D5/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108924
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】松中 仁志
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
(72)【発明者】
【氏名】中山 公博
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大知
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD01
2D039FC09
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明は、ボウル形状の汚物受け面13と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部14と、を備えたボウル部12と、このボウル部の下部に接続され汚物を排出する排水トラップ管路16と、ボウル部の下部に設けられ、貯水タンク8から供給される洗浄水を排水トラップ管路に向けて洗浄水を吐水するゼット吐水口28を備えたゼット吐水部26と、このゼット吐水口から吐水される洗浄水の流量と流速を制御する制御装置54と、を有し、制御装置は、第1モードと第2モードを備え、第2モードの流量と流速を、第1モードの流量よりも少なく且つ第1モードの流速よりも速くなるように制御することを特徴としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、
このボウル部の下部に接続され汚物を排出する排水トラップ管路と、
上記ボウル部の下部に設けられ、上記洗浄水源から供給される洗浄水を上記排水トラップ管路に向けて洗浄水を吐水するゼット吐水口を備えたゼット吐水部と、
このゼット吐水口から吐水される洗浄水の流量と流速を制御するゼット吐水制御部と、を有し、
上記ゼット吐水制御部は、第1モードと第2モードを備え、第2モードの流量と流速を、第1モードの流量よりも少なく且つ第1モードの流速よりも速くなるように制御することを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記ゼット吐水制御部は、第1モードにおける洗浄水の総流量よりも、第2モードにおける洗浄水の総流量の方が少なくなるように制御する、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
さらに、洗浄水に空気を混入する空気混入機構を有し、上記ゼット吐水制御部は、第2モードにおいて、ゼット吐水口から吐水される洗浄水に上記空気混入機構により空気を混入することにより流量を減少させ且つ流速が速くなるように制御する、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記洗浄水源は、洗浄水を貯水する貯水タンクであり、上記ゼット吐水制御部は、貯水タンクの水位が所定位置よりも低下したとき、上記空気混入機構により洗浄水に空気を混入する、請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
さらに、上記ゼット吐水口の開口面積を縮径又は拡径させる縮径拡径機構を有し、上記ゼット吐水制御部は、第2モードにおいて、ゼット吐水口の開口面積を縮径拡径機構により縮径させて流量を減少させ且つ流速を速くする、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記ゼット吐水制御部は、ゼット吐水口の開口面積を縮径してゼット吐水口から吐水される洗浄水の流速が増加させ、または、ゼット吐水口の開口面積を拡径して洗浄水の流速が低下させる、請求項1に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水により洗浄して汚物を排出する水洗大便器に係わり、特に、節水化を図った水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているような、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、リム部に設けられ洗浄水を吐水するリム吐水口と、ボウル部の下部に接続され汚物を排出するためのトラップ管路と、このトラップ管路に洗浄水を吐水してサイホン作用を発生させるゼット吐水口とを有する水洗大便器が知られている。
この水洗大便器では、リム吐水口から洗浄水を吐水してこの洗浄水を旋回させることにより便器本体を洗浄し、ゼット吐水口から吐水される洗浄水によりトラップ管路内にサイホン作用を発生させて、このサイホン作用により、汚物を外部に排出するようになっている。
【0003】
この特許文献1の水洗大便器では、ゼット吐水口の開口面積が一定であるので、ゼット吐水口から吐水される洗浄水の流量を速くすると、流量(瞬間流量)も大きくなり、一方、洗浄水の流速を遅くすると流量(瞬間流量)も小さくなる。そのため、節水化のために、流量を小さくすると洗浄水の流速も遅くなってしまい、汚物の排出に必要な運動エネルギーが確保できないという状況となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-3263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のゼット吐水口から洗浄水を吐水してサイホン作用を発生させるサイホンゼット式の水洗大便器においては、ゼット吐水口から吐水される洗浄水の量がリム吐水口から吐水される洗浄水の量よりも多いので、ゼット吐水口から吐水される洗浄水の量を少なくすることにより、水洗大便器で使用される洗浄水全体の節水化が期待できる。
しかしながら、ゼット吐水口から吐水される洗浄水の量を減らすと、サイホン作用の発生及びサイホン作用の維持が困難となるので、問題である。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、サイホン作用を維持しつつ少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリム部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下部に接続され汚物を排出する排水トラップ管路と、ボウル部の下部に設けられ、洗浄水源から供給される洗浄水を排水トラップ管路に向けて洗浄水を吐水するゼット吐水口を備えたゼット吐水部と、このゼット吐水口から吐水される洗浄水の流量と流速を制御するゼット吐水制御部と、を有し、ゼット吐水制御部は、第1モードと第2モードを備え、第2モードの流量と流速を、第1モードの流量よりも少なく且つ第1モードの流速よりも速くなるように制御することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水口から吐水される洗浄水の流量と流速を制御するゼット吐水制御部が、第1モードと第2モードを備え、第2モードの流量と流速を、第1モードの流量よりも少なく且つ第1モードの流速よりも速くなるように制御するので、流量が多く且つ流速が遅い第1モードにおいて、早期にサイホン作用を生じさせ、次に、流量が少なく且つ流速が速い第2モードにより、サイホン作用を維持した状態で浮遊系汚物を排出することができる。この結果、本発明によれば、第2モードでサイホン作用を維持しつつ少ない流量で流速を増加させているので、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、ゼット吐水制御部は、第1モードにおける洗浄水の総流量よりも、第2モードにおける洗浄水の総流量の方が少なくなるように制御する。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水制御部が、第1モードにおける洗浄水の総流量よりも、第2モードにおける洗浄水の総流量の方が少なくなるように制御するので、第2モードにより節水化が可能となる。
【0009】
本発明において、好ましくは、さらに、洗浄水に空気を混入する空気混入機構を有し、ゼット吐水制御部は、第2モードにおいて、ゼット吐水口から吐水される洗浄水に空気混入機構により空気を混入することにより流量を減少させ且つ流速が速くなるように制御する。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水制御部が、第2モードにおいて、ゼット吐水口から吐水される洗浄水に空気混入機構により空気を混入することにより流量を減少させるように制御するので、空気混入機構を用いることにより、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、洗浄水源は、洗浄水を貯水する貯水タンクであり、ゼット吐水制御部は、貯水タンクの水位が所定位置よりも低下したとき、空気混入機構により洗浄水に空気を混入する。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水制御部が、貯水タンクの水位が所定位置よりも低下したとき、空気混入機構により洗浄水に空気を混入することにより、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、ゼット吐水口の開口面積を縮径又は拡径させる縮径拡径機構を有し、ゼット吐水制御部は、第2モードにおいて、ゼット吐水口の開口面積を縮径拡径機構により縮径させて流量を減少させ且つ流速を速くする。
このように構成された本発明においては、ゼット吐水制御部が、第2モードにおいて、ゼット吐水口の開口面積を縮径拡径機構により縮径させて流量を減少させるので、それにより第2モードで流速が速くなるので、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ゼット吐水制御部は、ゼット吐水口の開口面積を縮径してゼット吐水口から吐水される洗浄水の流速が増加させ、または、ゼット吐水口の開口面積を拡径して洗浄水の流速が低下させる。
このように構成された本発明によれば、ゼット吐水制御部が、ゼット吐水口の開口面積を縮径してゼット吐水口から吐水される洗浄水の流速が増加させ、または、ゼット吐水口の開口面積を拡径して洗浄水の流速が低下させるので、ゼット吐水口の開口面積を縮径又は拡径するという簡易な手段により、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、サイホン作用を維持しつつ少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄動作を示すタイムチャートである。
図3】ジェットポンプ機構の動作原理を説明するための概念図である。
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンク及びジェットポンプ用小タンク装置を示す概念図である。
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェットポンプ用小タンク装置内の洗浄水の流れの様子を示す概念図である。
図6】本発明の第1実施形態による水洗段便器の第1モード及び第2モードにおける流量(L/min)と時間の関係を示す線図である。
図7】本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す部分構成図である。
図8】本発明の第2実施形態による水洗大便器のゼット吐水部に設けられた縮径拡大径機構を示す概念図である。
図9】本発明の実施形態による水洗大便器の変形例の便器洗浄スイッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器について説明する。先ず、図1により、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。図1は本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2へ洗浄水を供給するバルブユニット4と、洗浄水を貯水する貯水タンク8と、この貯水タンク8の下流側に設けられ洗浄水を貯水する小タンク3及びジェットポンプ機構5を内蔵するジェットポンプ用小タンク装置6と、貯水タンク8に貯水された洗浄水を加圧してジェットポンプ用小タンク装置6に供給する加圧ポンプ10とを備えている。
【0017】
便器本体2は、ボウル部12を有し、このボウル部12は、ボウル形状の汚物受け面13と、この汚物受け面13の上縁に形成され内周面を持つリム部14を備えている。便器本体2は、さらに、ボウル部12の底部に接続され汚物を排出する排水トラップ管路16を有する。リム部14の内部には、リム導水路18が形成され、このリム導水路18の下流端であるリム吐水部20には、リム吐水を行うリム吐水口22が形成されている。リム吐水口22は、水洗大便器1を前方から見て、ボウル部12の右側前方領域に形成されており、洗浄水を後方に向けて吐水してリム部14の内周面に沿って旋回流を形成するようになっている。
【0018】
便器本体2の下方には、ゼット導水路24が形成され、このゼット導水路24の下流端であるゼット吐水部26には、ゼット吐水を行うゼット吐水口28が形成されている。ゼット吐水口28は、ボウル部12の底部に位置し、排水トラップ管路16の入口部16aに指向してほぼ水平に配置され、排水トラップ管路16の入口部16aに向かって洗浄水を吐水するようになっている。
【0019】
排水トラップ管路16は、入口部16aと、この入口部16aから上昇するトラップ上昇管16bと、このトラップ上昇管16bから下降するトラップ下降管16cとからなり、トラップ上昇管16bとトラップ下降管16cとの間が頂部14dとなっている。ここで、排水トラップ管路16のトラップ下降管16cの下端には、排水ソケット30が接続されている。
【0020】
水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道管32に直結されており、水道の給水圧力により洗浄水がリム吐水口22から吐水されるようになっている。また、貯水タンク8に貯水された洗浄水が加圧ポンプ10より加圧され、ジェットポンプ用小タンク装置6を経由して、ゼット吐水部26に供給され、節水化された流量の洗浄水がゼット吐水口28から吐水されるようになっている。
【0021】
次に、水洗大便器1のバルブユニット4について説明する。図1に示すように、給水源である水道管32から洗浄水が供給される主給水路34が設けられ、この主給水路34には、上流側から、止水栓36、ストレーナ38、分岐金具40、定流量弁42、ダイヤフラム式の電磁開閉弁44、給水路切替弁46がそれぞれ設けられている。これらの定流量弁42、電磁開閉弁44、及び、給水路切替弁46は、バルブユニット4として、一体的に組立てたものとなっている。また、主給水路34は、便器外で水道管32と接続する給水ホース及びその下流に接続される樹脂製の管から構成されている。
【0022】
また、給水路切替弁46の下流側には、リム吐水口22に洗浄水を供給するためのリム側給水路48、及び、貯水タンク8に洗浄水を供給するためのタンク側給水路50が接続されている。リム側給水路48の下流端にはリム導水路18が接続され、洗浄水がリム吐水口22から吐水されるようになっている。
【0023】
定流量弁42は、止水栓36、ストレーナ38、分岐金具40を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。また、定流量弁42を通過した洗浄水は、電磁開閉弁44に流入し、電磁開閉弁44を通過した洗浄水は、給水路切替弁46により、リム側であるリム側給水路48からリム吐水口22へ、又は、タンク側であるタンク側給水路50から貯水タンク8へ供給されるようになっている。
【0024】
給水路切替弁46は、リム側給水路48とタンク側給水路50の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量及び流量の割合を任意に変更できる切替弁である。
【0025】
貯水タンク8の下部には、ゼット側給水路52が接続されており、このゼット側給水路52には、加圧ポンプ10及びジェットポンプ用タンク6が設けられており、このゼット吐水ポンプ10によりジェットポンプ用タンク6に供給される洗浄水の流量が制御され、詳細は後述するように、ジェットポンプ用タンク6によりゼット吐水口28から吐水される洗浄水の流量及び流速が制御されるようになっている。
【0026】
貯水タンク8の内部には、上端フロートスイッチ56及び下端フロートスイッチ58が配置されている。上端フロートスイッチ26は、貯水タンク8内の水位が通常使用時の最高水位L3より少しだけ低い所定位置L2に達するとオン状態に切り替わり、電磁開閉弁44を閉鎖するようになっている。下端フロートスイッチ58は、貯水タンク8内の水位が通常使用時の最低水位L1まで低下するとオン状態に切り替わり、加圧ポンプ10及びジェットポンプ機構5を停止させるようになっている。
【0027】
さらに、使用者が操作する便器洗浄スイッチ60及び制御装置62が設けられている。この制御装置62は、ゼット吐水制御部であり、電磁開閉弁44の開閉操作、給水路切替弁46の切替操作、加圧ポンプ10の回転数や作動時間、ジェットポンプ用小タンク装置6内のジェットポンプ機構5の作動時間等を制御するためのものでる。
【0028】
制御装置62は、使用者により便器洗浄スイッチ60が押されると、電磁開閉弁44、給水路切替弁46、加圧ポンプ10及びジェットポンプ機構5を順次作動させ、リム吐水口22から吐水し、リム吐水を継続させながら、次にジェット吐水口28からの吐水を開始させて、サイホン作用を発生させ、これにより、ボウル部12を洗浄させ、汚物を排出するようになっている。
【0029】
また、制御装置62は、水位がL2に達して上端フロートスイッチ56がオン状態となると、電磁開閉弁44を閉鎖して、貯水タンク8への洗浄水の供給を停止させ、水位がL1まで低下すると、下端フロートスイッチ58がオン状態となり、加圧ポンプ10を停止させ、ゼット吐水を終了する。
また、制御装置62は、洗浄終了後、電磁開閉弁44を開放し、給水路切替弁46を貯水タンク8側に切り替えて貯水タンク8に洗浄水を補給させるようになっている。
【0030】
次に、図2により、水洗大便器1によるリム洗浄及びゼット洗浄の洗浄動作を説明する。図2は本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄動作を示すタイムチャートである。
図2に示すように、バルブユニット4から供給された洗浄水がリム吐水口22からボウル部12に吐水され、さらに、加圧ポンプ10及びジェットポンプ機構5により供給された洗浄水が、ゼット吐水口28から排水トラップ管路16の入口部16aに向けて吐水される。
【0031】
リム洗浄では、時刻t1に開始され、時刻t1から時刻t5の時間に前リム洗浄を行い、その後、時刻t5から時刻t6までの時間に後リム洗浄を行うようになっている。この前リム洗浄及び後リム洗浄の際には、バルブユニット4から水道水圧で且つ定流量の洗浄水がリム吐水部20に供給されるようになっている。
【0032】
ゼット洗浄では、時刻t2において、加圧ポンプ10がONとなり、その後、時刻t3において、貯水タンク8に貯水された洗浄水のゼット吐水口28への供給が開始される。さらに、ゼット洗浄では、時刻t4において、加圧ポンプ10の回転数を低下させて、洗浄水の流量(瞬間流量)を減らし、その後、時刻t5において、加圧ポンプ10をOFFとすることにより、ゼット洗浄を終了する。
【0033】
上述した例では、ゼット洗浄において、時刻t4において、加圧ポンプ10の回転数を低下させて、洗浄水の流量(瞬間流量)を減らしたが、時刻t4において、加圧ポンプ10の回転数を低下させず、その後、時刻t5において、加圧ポン10をOFFとすることにより、ゼット洗浄を終了するようにしてもよい。
【0034】
次に、図3により、上述したジェットポンプ小タンク装置6が具備するジェットポンプ機構5の動作原理を説明する。図3はジェットポンプ機構の動作原理を説明するための概念図である。
【0035】
図3(a)に示すように、ジェットポンプ用小タンク装置6は、洗浄水を貯留する小タンク3とジェットポンプ機構5を備えている。ジェットポンプ機構5は、小タンク3内の下部に配置されたジェットノズル70と、このジェットノズル70の上方に配置されたスロート管72を備えている。このスロート管72の下端(上流端)には吸引口72aが形成され、上端(下流端)はゼット側給水路52(図1参照)の下流側に接続されている。
【0036】
スロート管72と中間位置には、洗浄水と空気をスロート管72内に導入するための水空気導入管(空気混入管)74が接続され、この水空気導入管74の上端には開口74aが形成され、この開口74aは、小タンク3内の水位L4の位置に設けられている。
【0037】
図3に示すように、ジェットポンプ機構5においては、ジェットノズル70からスロート管72の吸引口72aに向けて高速の洗浄水を噴射し、このとき、ジェットノズル70に近いスロート管72内の吸引口72a近傍の空間が負圧となり、この負圧によりジェットポンプ作用(エジェクタ効果)を誘発させる。このジェットポンプ作用により、小タンク3内の近傍の洗浄水を吸引し、この吸引された洗浄水とジェットノズル70から噴出される洗浄水とが一緒になり、スロート管72内を流れ、ゼット側給水路52の下流側に供給されるようになっている。
【0038】
さらに、小タンク3内の水位が水位L4より上方にあるときには、水空気導入管74からスロート管72内に洗浄水が流入し(図3(a)参照)、次に、小タンク3内の水位が水位L4より下がったときには、水空気導入管74からスロート管72内に空気が混入される(図3(b)参照)ようになっている。
【0039】
ジェットノズル70の噴射が開始されてから小タンク3内の水位がL4まで下がる間は、スロート管72内を流れる洗浄水の流量は多くなり、その分、流速は遅くなる。一方、小タンク3内の水位がL4より下がったときには、スロート管72内を流れる洗浄水の流量は、多くならないが、スロート管72内に空気が混入され、スロート管72の断面が空気により狭められるので、その分、洗浄水の流速は速くなる。
【0040】
次に、図4乃至図6により、ジェットポンプ用小タンク装置6の動作を説明する。図4は本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンク及びジェットポンプ用小タンク装置を示す概念図であり、図5はジェットポンプ用小タンク装置内の洗浄水の流れの様子を示す概念図であり、図6は本発明の第1実施形態による水洗段便器の第1モード及び第2モードにおける流量(L/min)と時間の関係を示す線図である。
【0041】
先ず、図4に示すように、貯水タンク8に貯留された洗浄水は加圧ポンプ10により、ジェットポンプ用小タンク装置6に供給される。このとき、図4及び図5に示すように、ジェットポンプ用小タンク装置6において、小タンク3の水位が低下するにつれて、最初は水空気導入管74からスロート管72内に洗浄水が導入され、その後、水空気導入管74からスロート管72内に空気が導入される。
【0042】
なお、上述したスロート管72は、図3図4及び図5に示したように斜め上方や水平方向など任意の方向に向けて配置することができる。
【0043】
本実施形態においては、この水空気導入管74からスロート管72内に洗浄水が導入されるときの洗浄動作を第1モードと呼び、水空気導入管74からスロート管72内に空気が導入されるときの洗浄動作を第2モードと呼んでいる。
図6に示すように、時刻t10から時刻t11までは、第1モードによる洗浄動作時の洗浄水の流量Q1(L/min)を示し、時刻t11から時刻t12までは、第2モードによる先導動作時の洗浄水の流量Q2(L/min)を示している。一例として、図5に示すように、Q1=70L/minであり、Q2=35L/minである。
【0044】
上述したように、第1モード(時刻t10から時刻t11)の流量Q1は大であるが、流速は遅くなる。一方、第2モード(時刻t11から時刻t12)の流量Q2は小であるが、流速は速くなる。
さらに、図6に示すように、第1モードにおける総流量Q1total(L)は、第2モードにおける総流量Q2total(L)よりも多くなるように設定されている。
【0045】
次に、図7及び図8により、本発明の第2実施形態による水洗大便器を説明する。図7は本発明の第2実施形態による水洗大便器を示す部分構成図であり、図8は本発明の第2実施形態による水洗大便器のゼット吐水部に設けられた縮径拡大径機構を示す概念図である。
【0046】
本発明の第2実施形態による水洗大便器80は、先ず、上述した第1実施形態の水洗大便器1に設けられたジェットポンプ用小タンク用装置を設けることなく(図7参照)、その代わりに、縮径拡径機構82を設けている。
この縮径拡径機構82は、ゼッド導水部26に設けられ、リム吐水口28の開口面積を拡径して、大流量で流速の遅い洗浄水を吐水し、リム吐水口28の開口面積を縮径して、小流量で流速の速い洗浄水を吐水するための機構である。
この第2実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、大流量で流速の遅い洗浄水を吐水する洗浄動作を第1モードと呼び、小流量で流速の速い洗浄水を吐水する洗浄動作を第2モードと呼ぶ。
【0047】
図8に示すように、縮径拡径機構82は、円錐形状のバルブ84と、このバルブ84に接続されたボールスクリュー86と、このボールスクリュー86を回転させるためのモーター86を備えている。
この縮径拡径機構82によれば、モーター88によりボールスクリュー86を回転させると、バルブ84が前後方向に移動する。バルブ84が前方に移動すると、バルブ84とゼット吐水口26との間の開口面積が小さくなり、ゼット吐水口26の開口面積が縮径されて小さくなる。バルブ84が後方に移動すると、バルブ84とゼット吐水口26との間の開口面積が大きくなり、ゼット吐水口26の開口面積が拡径されて大きくなる。
【0048】
第2実施形態による水洗大便器80においては、第1モードにおいては、縮径拡径機構82により、ゼット吐水口26の開口面積を拡径して、大流量で且つ流速が遅い洗浄水をゼット吐水口26から吐水し、第2モードにおいては、縮径拡径機構82により、ゼット吐水口26の開口面積を縮径して、小流量で且つ流速が速い洗浄水をゼット吐水口26から吐水するようになっている。
【0049】
次に、図9により、本発明の実施形態による水洗大便器の変形例を説明する。図9は本発明の実施形態による水洗大便器の変形例の便器洗浄スイッチを示す図である。
図9に示すように、便器洗浄スイッチ60には、大便用スイッチとして、軟便用スイッチ90aと硬便用スイッチ90bが設けられている。
【0050】
この変形例においては、軟便用スイッチ90aが押されると、上述した第1モードと同様に大流量且つ低流速の洗浄水が長い時間、ゼット吐水口26から吐水され、ボウル部12に付着した軟便を洗浄することができるようになっている。
硬便用スイッチ90bが押されると、上述した第2モードと同様に小流量且つ高流速の洗浄水が短い時間、ゼット吐水口26から吐水され、ボウル部12に付着した硬便を洗浄することができるようになっている。
【0051】
次に、上述した本発明の実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)による作用効果を説明する。
先ず、本実施形態による水洗大便器1、80によれば、ゼット吐水口28から吐水される洗浄水の流量と流速を制御する制御装置54が、第1モードと第2モードを備え、第2モードの流量Q1(L/min)と流速を、第1モードの流量Q2(L/min)よりも少なく且つ第1モードの流速よりも速くなるように制御するので、流量が多く且つ流速が遅い第1モードにおいて、早期にサイホン作用を生じさせ、次に、流量が少なく且つ流速が速い第2モードにより、サイホン作用を維持した状態で浮遊系汚物を排出することができる。この結果、本実施形態による水洗大便器1、80発明によれば、第2モードでサイホン作用を維持しつつ少ない流量で流速を増加させているので、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0052】
次に、本実施形態による水洗大便器1、80においては、制御装置54が、第1モードにおける洗浄水の総流量Q1totalよりも、第2モードにおける洗浄水の総流量Q2totalの方が少なくなるように制御するので、第2モードにより節水化が可能となる。
【0053】
次に、第1実施形態による水洗大便器1は、さらに、洗浄水に空気を混入する水空気導入管74を有し、制御装置54が、第2モードにおいて、ゼット吐水口28から吐水される洗浄水に水空気導入管74により空気を混入することにより流量を減少させ且つ流速が速くなるように制御するので、水空気導入管74を用いることにより、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0054】
次に、第1実施形態による水洗大便器1においては、制御装置54が、貯水タンク8の水位が所定位置L4よりも低下したとき、水空気導入管74により洗浄水に空気を混入することにより、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0055】
次に、第2実施形態による水洗大便器80は、ゼット吐水口28の開口面積を縮径又は拡径させる縮径拡径機構82を有し、制御装置54が、第2モードにおいて、ゼット吐水口28の開口面積を縮径拡径機構82により縮径させて流量を減少させるので、それにより第2モードで流速が速くなるので、第2モードで少ない流量で流速を増加させて、汚物排出に必要な運動エネルギーを確保し、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【0056】
次に、第2実施形態による水洗大便器80において、制御装置54が、ゼット吐水口28の開口面積を縮径してゼット吐水口から吐水される洗浄水の流速が増加させ、または、ゼット吐水口28の開口面積を拡径して洗浄水の流速が低下させるので、ゼット吐水口の開口面積を縮径又は拡径するという簡易な手段により、節水化と洗浄性能を両立させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、80 水洗大便器
2 便器本体
3 小タンク
4 バルブユニット
5 ジェットポンプ機構
6 ジェットポンプ用小タンク装置
8 貯水タンク
10 加圧ポンプ
12 ボウル部
13 汚物受け面
14 リム部
16 排水トラップ管路
20 リム吐水部
22 リム吐水口
24 ゼット導水部
26 ゼット吐水部
28 ゼット吐水口
46 給水路切替弁
48 リム側給水路
50 タンク側給水路
52 ゼット側給水路
54 制御装置(ゼット吐水制御部)
60 便器洗浄スイッチ
70 ジェットノズル
72 スロート管
74 水空気導入管
74a 開口
82 縮径拡径機構
90a 軟便スイッチ
90b 硬便スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9