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特開2024-76929推定装置、推定方法、推定プログラム、及びモデル生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076929
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、推定プログラム、及びモデル生成装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240530BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188776
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草田 慧
(72)【発明者】
【氏名】高尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 正典
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車両用シートに着座する乗員の挙動に対して当該乗員の挙動を招く車両の挙動を推定する。
【解決手段】推定装置(1)は、車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得する取得部(3)、各々乗員の頭部を含む乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて車両の挙動に応じて複数のパーツの各々が変動する人体挙動モデルであって、車両の挙動が前記予め定めた部位に対応する予め定めたパーツに異なる複数の各方向の挙動として伝達されるように相関関係を有し、かつ、予め定めたパーツの挙動を入力し、車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、取得部で取得される情報を入力し、入力される情報に対応する車両の挙動を示す情報を推定する推定部(5)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得する取得部と、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、前記取得部で取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する推定部と、
を備えた推定装置。
【請求項2】
前記複数のパーツは、前記乗員の頭部に対応する頭部パーツを含み、
前記関節部のうちの前記頭部パーツと他のパーツとに接続される関節部が、前記頭部パーツを前記他のパーツに対して回転可能に接続される
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記推定部では、
前記車両の挙動を示す情報として、異なる複数の各方向の各挙動を示す情報を含み、
前記人体挙動モデルとして、
前記車両の各挙動毎に、前記予め定めたパーツに異なる複数の各方向の挙動として伝達されるように相関関係を有する
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部では、
前記車両の挙動を示す情報として、前記車両のフロア振動特性を含み、
前記乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報として、前記乗員の頭部の振動特性を含み、
前記人体挙動モデルが、
前記予め定めたパーツの挙動を示す情報として前記乗員の頭部の振動特性の値を入力し、前記車両の挙動として前記車両のフロア振動特性の値を出力するように構築され、
前記人体挙動モデルに、前記取得部で取得される前記乗員の頭部の振動特性を入力し、入力される前記乗員の頭部の振動特性に対応する前記車両のフロア振動特性を推定する
請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記人体挙動モデルにおいて、
前記予め定めたパーツにおける異なる複数の方向は、前後、左右、上下、ロール、ピッチ、及びヨーの方向を含む、
請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
コンピュータが、
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得し、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、前記取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する、
ことを処理する推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得し、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、前記取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する、
ことを処理させる推定プログラム。
【請求項8】
車両の挙動を示す情報と、車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報と、を取得する取得部と、
前記取得部の取得結果に基づいて、各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を示す情報を出力する人体挙動モデルを生成するモデル生成部と、
を含むモデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定装置、推定方法、推定プログラム、及びモデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートに着座した乗員の挙動を同定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ダミー人形と車両のモデルを用いて、車両後面からの衝突時にダミー人形の頚部が受ける傷害を、精度良く算出する解析方法が開示されている。この技術では、車両のシートに着座したダミー人形の挙動を、胸部と頭部の力学モデルを含むダミー人形の力学モデルを用いて、車両の前後方向の運動のみに単純化し、胸部と頭部の2自由度で表現して解析することによって、頚部障害を算出する。
【0003】
また、特許文献2には、乗員の挙動として車両乗降時の乗員の乗降動作を対象とし、乗員の乗降動作を評価することで車両用ドア部周辺の設計諸元の値を決定する車両用設計支援システムが開示されている。この技術では、設計諸元の値、及び乗員の上半身に関する人体特性データを記憶しておき、設計諸元の値、及び人体特性データに応じて乗員の乗降時の動作軌跡を出力し、記憶された人体特性データと出力された動作軌跡とに基づいて、乗降動作時の乗員の上半身の関節トルクを算出し、算出された関節トルクに基づいて、乗降動作時の乗員の負担感を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-87945号公報
【特許文献2】特開2008-83742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用シートに着座する乗員の挙動は、車両の挙動に応じて変化するので、乗員の挙動を模したモデルを用いて或る程度推定可能である。よって、試行錯誤や実験を繰り返して車両の挙動に対する乗員の挙動を予測している。しかしながら、車両の挙動に応じた乗員の挙動を推定することは可能であるものの、車両用シートに着座する乗員の挙動に対して当該乗員の挙動を招く車両の挙動を予測したり評価したりすることは行われていない。乗員の挙動は様々な入出力関係を有するため、膨大な実験を行うことが要求され、実験で行うことは現実的ではない。例えば、乗員の快適性や乗り心地等予め定めた乗員の挙動に対する車両の挙動を推定することは困難である。従って、乗員に対する車両の挙動を推定するには改善の余地がある。
【0006】
本開示は、車両用シートに着座する乗員の挙動に対して当該乗員の挙動を招く車両の挙動を推定することができる推定装置、推定方法、推定プログラム、及びモデル生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得する取得部と、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、前記取得部で取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する推定部と、
を備えた推定装置である。
【0008】
本開示の第2態様は、第1態様に記載の推定装置において、
前記複数のパーツは、前記乗員の頭部に対応する頭部パーツを含み、
前記関節部のうちの前記頭部パーツと他のパーツとに接続される関節部が、前記頭部パーツを前記他のパーツに対して回転可能に接続される。
【0009】
本開示の第3態様は、第2態様に記載の推定装置において、
前記推定部では、
前記車両の挙動を示す情報として、異なる複数の各方向の各挙動を示す情報を含み、
前記人体挙動モデルとして、
前記車両の各挙動毎に、前記予め定めたパーツに異なる複数の各方向の挙動として伝達されるように相関関係を有する。
【0010】
本開示の第4態様は、第3態様に記載の推定装置において、
前記推定部では、
前記車両の挙動を示す情報として、前記車両のフロア振動特性を含み、
前記乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報として、前記乗員の頭部の振動特性を含み、
前記人体挙動モデルが、
前記予め定めたパーツの挙動を示す情報として前記乗員の頭部の振動特性の値を入力し、前記車両の挙動として前記車両のフロア振動特性の値を出力するように構築され、
前記人体挙動モデルに、前記取得部で取得される前記乗員の頭部の振動特性を入力し、入力される前記乗員の頭部の振動特性に対応する前記車両のフロア振動特性を推定する。
【0011】
本開示の第5態様は、第4態様に記載の推定装置において、
前記人体挙動モデルにおいて、
前記予め定めたパーツにおける異なる複数の方向は、前後、左右、上下、ロール、ピッチ、及びヨーの方向を含む。
【0012】
本開示の第6態様は、
コンピュータが、
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得し、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた人体挙動モデルを用いて、前記取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する、
ことを処理する推定方法である。
【0013】
本開示の第7態様は、
コンピュータに、
車両の車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報を取得し、
各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動する人体挙動モデルであって、前記車両の挙動が前記予め定めた部位に対応する予め定めたパーツに異なる複数の各方向の挙動として伝達されるように相関関係を有し、かつ、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を出力するように定められた前記人体挙動モデルを用いて、前記取得される情報を入力し、入力される情報に対応する前記車両の挙動を示す情報を推定する
ことを処理させる推定プログラムである。
【0014】
本開示の第8態様は、
車両の挙動を示す情報と、車両用シートに着座する乗員における予め定めた部位の挙動を示す情報と、を取得する取得部と、
前記取得部の取得結果に基づいて、各々数値計算モデルとして前記乗員の頭部を含む前記乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて前記車両の挙動に応じて前記複数のパーツの各々が変動するように伝達される相関関係を逆にした逆相関関係に基づいて、前記予め定めたパーツの挙動を入力し、前記車両の挙動を示す情報を出力する人体挙動モデルを生成するモデル生成部と、
を含むモデル生成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、車両用シートに着座する乗員の挙動に対して当該乗員の挙動を招く車両の挙動を推定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る推定装置の構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る推定装置の電気的構成の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る推定装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る車両と乗員との関係を示す概念図である。
図5】実施形態に係る乗員と人体挙動モデルの関係を示す概念図である。
図6】実施形態に係る推定装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る人体挙動モデルの生成処理の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る車両の挙動と乗員の挙動の関係の検証結果を示す図である。
図10】実施形態に係る人体挙動モデルの生成処理の一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る推定装置の検証結果を示す図である。
図13】実施形態に係る推定装置の検証結果を示す図である。
図14】実施形態に係るモデル処理部における機能の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。
なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。また、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。また、本開示では、主として非線形に変形する部材に対する物理量の推定を説明するが、線形に変形する部材に対する物理量の推定に適用可能であることは言うまでもない。
【0018】
本開示において「車両」とは、自動車等の移動体を含む概念である。また、「車両用シート」とは、一例としての車両の運転席、助手席、及び運転席より後部座席等の乗員が着座する座席を含む概念である。当該車両用シートは、乗員が着座する座面部としてのシートクッション、乗員の背中を支える背もたれ部としてのシートバック、乗員の頭部を支えるヘッドレスト、及び乗員の腕を乗せるアームレストを含む。「車両用シートに着座した乗員の挙動状態」とは、車両用シートに着座する乗員の状態であって、乗員の少なくとも一部の部位が変動する状態を含む概念である。乗員の少なくとも一部の部位の変動は、例えば、車両の挙動によって乗員の一部又は全部の部位の位置が変動することを含む。また、乗員の一部又は全部の部位が自律的に変動することを含む。
【0019】
本開示の推定装置は、車両用シートに着座する乗員の挙動状態を模擬する人体挙動モデルを用いて、乗員の挙動状態を推定する。人体挙動モデルは、人体挙動モデルに振動が与えられた際の時系列の振動特性と、乗員の挙動状態を示す時系列の振動特性とを人体挙動モデルの最適化用データとして用いて最適化される。
【0020】
実施形態では、乗員の挙動状態として、一部の部位に時系列の振動特性による力が与えられた際に変動する人体挙動モデルの一部又は全部の部位における振動特性を示す。実施形態では、当該人体挙動モデルに与えられる振動特性と、人体挙動モデルの一部又は全部の部位における振動特性とを人体挙動モデルの最適化用データとして用い、人体挙動モデルを最適化する。
【0021】
(推定装置)
図1に、本開示の推定装置としての推定装置1の構成の一例を示す。
【0022】
推定装置1は、車両用シートに着座する乗員の挙動を模した数値計算モデルである人体挙動モデル51を用いて、車両の挙動状態と車両用シートに着座した乗員の挙動状態との相関関係を同定し、車両用シートに着座している乗員に関する状態を推定する。推定装置1では、膨大な実験を行うことなく、また特殊な装置及び大型の装置を用いることなく、車両用シートに着座した乗員に関する状態を同定することが可能となる。
【0023】
実施形態に係る推定装置1は、人体挙動モデルを用いて、第1推定処理を行う第1推定装置と、第1推定処理の逆方向の第2推定処理を行う第2推定装置との機能を有する。
第1推定処理は、人体挙動モデルを用い、車両の挙動としての車両の振動特性から、乗員の挙動状態としての乗員の一部の部位(例えば頭部)の振動特性を推定する。第1推定処理に用いる人体挙動モデルは、振動が車両から乗員に向かって伝達されることを示し、車両の振動特性を入力とし、乗員の一部の部位(例えば頭部)の振動特性を出力するモデルである。当該第1推定処理に用いる人体挙動モデルを、以下、第1人体挙動モデルという。実施形態では、第1人体挙動モデルで対象とする乗員の挙動状態として、乗員の頭部の振動特性を適用する場合を説明する。
【0024】
第2推定処理は、第1推定処理の人体挙動モデルの逆モデルを用い、乗員の一部の部位(例えば頭部)が予め定めた振動特性となる車両の振動特性を推定する。すなわち、第2推定処理に用いる人体挙動モデルは、乗員の一部の部位から車両に向かって、乗員の一部の部位に伝達されるべき車両の振動特性を推定する。第2推定処理に用いる人体挙動モデルは、乗員の一部の部位における予め定めた振動特性を入力とし、車両の振動特性を出力するモデルである。当該第2推定処理に用いる人体挙動モデルを、以下、第2人体挙動モデルという。実施形態では、第2人体挙動モデルで対象とする乗員の挙動状態として、乗員の頭部の振動特性を適用する場合を説明する。
【0025】
人体挙動モデルは、車両の挙動状態に対応する車両用シートの状態を示す車両の振動特性、及び当該車両の振動特性に対する乗員の挙動状態を用いて、最適化される。
具体的には、人体挙動モデルに含まれる第1人体挙動モデルは、人体挙動モデルに振動が与えられた際の時系列の振動特性と、車両用シートに着座した乗員の挙動状態を示す時系列の振動特性とを人体挙動モデルの最適化用データとして用いる。そして、第1人体挙動モデルは、車両の挙動状態を示す時系列の振動特性を入力とし、その時系列の振動特性に対応する乗員の挙動状態を示す時系列の振動特性を出力するように最適化される。
第2人体挙動モデルは、第1人体挙動モデルの逆モデルを導出することで、乗員の頭部における予め定めた時系列の振動特性を入力とし、その時系列の振動特性に対応する車両の挙動状態を示す時系列の振動特性を出力するように最適化される。
これらの人体挙動モデルとしての第1人体挙動モデル、及び第2人体挙動モデルの最適化については後述する。
【0026】
本実施形態では、例えば、車両用シート2は、シートクッション21A、シートバック21B、及びヘッドレスト21Cを含んで構成される。以下では、シートクッション21A、シートバック21B、及びヘッドレスト21Cを一体とみなしてシート21と称する場合がある。
【0027】
図1に示すように、推定装置1は、入力部3、推定部5、及び出力部7を備えている。推定部5には、入力部3で入力される振動特性を示す入力データ4が入力される。出力部7には、推定部5で推定される振動特性を示す出力データ6が入力される。推定部5は、人体挙動モデル51を用いて、車両の挙動状態と車両用シートに着座した乗員の挙動状態との相関関係から、車両用シートに着座している乗員に関する挙動状態を示す振動特性を推定する。なお、推定部5は、最適化済みの人体挙動モデル51を含む。
【0028】
次に、図2を参照して、推定部5を含む推定装置1の電気的構成の一例を説明する。推定装置1は、汎用的なコンピュータ装置を適用可能である。
推定装置1は、コンピュータ本体100を備えており、コンピュータ本体100は、CPU102、RAM104、ROM106、及びI/O110を備え、これらはバス112を介して互いに接続されている。バス112には、補助記憶装置108が接続されている。また、I/O(入出力部)110には、図示しないネットワーク上の装置を含む外部装置と通信する通信部114、図示しないディスプレイを含む操作表示部116、及びユーザによりデータを入力するための入力部118が接続されている。なお、推定装置1は、ユーザによる操作が不要の場合、入力部118は必須構成ではなく、後述する推定結果を示す情報を通信により送信する場合、操作表示部116は必須構成ではない。
【0029】
補助記憶装置108には、推定装置1で利用される各種のデータ108Dが記憶される。また、補助記憶装置108には、人体挙動モデル51を含むモデル108M、及び推定プログラム108Pが記憶される。
【0030】
推定装置1は、推定プログラム108Pを補助記憶装置108から読み出してRAM106に展開して処理を実行する。推定プログラム108Pを実行した推定装置1は、本開示の推定装置として動作する。
【0031】
図3は、推定装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、推定装置1のCPU102は、推定プログラム108Pの実行によって本開示の推定装置として機能する。推定装置1は、本開示の取得部としての入力部1020、推定部1022、及び出力部1024の各々として機能する機能部を含む。
【0032】
入力部1020は、図1の入力部3で、入力データ4を入力する機能部である。出力部1024は、図1の出力部7で、推定部1022で推定された推定結果である出力データ6を出力する機能部である。推定部1022は、人体挙動モデル51を用いて、入力データ4に対する出力データ6を推定する機能部である。推定部1022では、補助記憶装置108に記憶されている人体挙動モデル51としても第1人体挙動モデル51A、又は第2人体挙動モデル51Bを用いて推定処理が行われる。
【0033】
(第1推定装置)
次に、人体挙動モデル51を用いて第1推定処理を行う第1推定装置として機能する推定装置1を、第1推定装置1Aとして説明する。
【0034】
(人体挙動モデル)
まず、人体挙動モデル51の生成について説明する。ここでは、第1推定処理を行う際に用いる第1人体挙動モデル51Aを生成する場合を説明する。
【0035】
人体挙動モデル51は、乗員の頭部を含む乗員を模した複数のパーツが、関節部を介して接続されて車両の挙動に応じて複数のパーツの各々が変動する数値計算モデルである。また、人体挙動モデル51は、車両の挙動と異なる複数の各方向の挙動として伝達される乗員の部位に対応するパーツとの間の相関関係を有するモデルである。
【0036】
具体的には、人体挙動モデル51は、人体振動の三次元計算を可能とする数値計算モデルである。ここでは、人体挙動モデル51は、車両の挙動を示す車両の振動特性に応じて変化する乗員の挙動、すなわち車両用シート2に着座した乗員の頭部の挙動を示す頭部の振動特性(出力データ6)を導出するために最適化を済ませた第1人体挙動モデル51Aを含む。
【0037】
乗員の挙動を数値計算上で再現するには、乗員の挙動を模擬する人体挙動モデルにおける関節の特性を同定することが要求される。実施形態では、数値計算モデルとして表現する人体挙動モデル51に最適化計算を適用し、関節特性を同定する。
【0038】
図4は、車両と乗員との関係を、人体挙動モデル51を含めて示す概念図である。
【0039】
図4に示すように、乗員OPの挙動を模擬する人体挙動モデル51を概念構造のモデルMDとして示している。なお、ここでは、説明を簡単にするため、車両の挙動状態を示す車両の振動特性として、車両のフロア振動の特性を適用する場合を一例として説明する。
【0040】
乗員OPには、車両の挙動が伝達される。具体的には、振動は、路面からタイヤを介して車両のばね下部に伝達特性G1で伝達され、ばね下部からフロア部に伝達特性G2で振動が伝達される。そして、フロア部から乗員OPに伝達特性H(s)で振動が伝達される。よって、伝達特性H(s)を同定できれば、フロア振動を検出する検出結果から、乗員の挙動、すなわち、乗員OPの頭部の挙動を推定可能である。
【0041】
ここで、乗員OPの挙動を数値計算により予測するためには、乗員OPの挙動を忠実に模擬するモデルを同定することが要求される。そこで、実施形態では、乗員の部位を分割し、分割した各部位を関節を介して接続して、数値計算用に人体挙動モデルとしてモデル化する。モデル化された人体挙動モデルを用いれば、乗員において伝達される各パーツの振動を推定可能である。
【0042】
図5は、乗員OPと人体挙動モデル51の関係を示す概念図である。
【0043】
人体挙動モデル51(MD)は、乗員OPの関節をモデル化した頸部関節部515、腰部関節部513、及び腿部関節部511を含む。頸部関節部515は、乗員の頭部516をモデル化した頭部パーツ516Mと胸部514をモデル化した胸部パーツ514Mとを接続する関節部である。腰部関節部513は、胸部パーツ514Mと腰部512をモデル化した腰部パーツ512Mとを接続する関節部である。腿部関節部511は、腰部パーツ512Mと腿部510をモデル化した腿部パーツ510Mとを接続する関節部である。これら頭部パーツ516M、胸部パーツ514M、腰部パーツ512M、及び腿部パーツ510Mの各々は、数値演算可能な剛体モデルである。なお、図5では、頭部パーツ516M、胸部パーツ514M、腰部パーツ512M、及び腿部パーツ510Mの各々の重心位置を各モデル上に黒色で一部を塗りつぶした円形図形で示している。
【0044】
また、図5に示すように、人体挙動モデル51は、頸部関節部515について回転ジョイント515Aに加え、前後方向及び上下方向等の移動可能な、すなわち並進移動が可能な並進ジョイント515B,515Cを適用する。よって、人体挙動モデル51の頭部516は、頸部関節部515で、回転ジョイント515Aによる回転、並進ジョイント515B,515Cによる並進移動が可能となる。
【0045】
従って、人体挙動モデル51は、フロア振動特性をFとし、乗員OPの頭部の振動特性をPとし、乗員の人体を伝達する伝達関数を示す伝達特性H(s)として、車両の挙動と乗員の挙動との関係を、次の式で表すことが可能となる。乗員の人体を伝達する伝達関数を示す伝達特性H(s)を人体伝達関数H(s)と称する。
P=H(s)・F
(頭部振動)=(人体伝達関数)・(フロア振動)
【0046】
具体的には、上述したように乗員をモデリングした人体挙動モデル51を、乗員OPの挙動を再現可能に最適化する。具体的には、人体挙動モデル51を生成するにあたり、人体挙動モデル51における制御パラメタを同定する。制御パラメタの同定では、人体挙動モデル51において何れの部位でどのような振動を再現するかを示す制御パラメタを同定する。最適化の処理では、車両の走行時における車両の挙動(ここではフロア振動)及び乗員の挙動(各部位の振動)を計測し、当該計測した実測値を用いて人体挙動モデル51の制御パラメタを同定し、人体挙動モデル51を最適化する。
【0047】
ここで、乗員OPには多数の関節が存在し、振動特性を同時に同定することは計算コスト上、困難である。そこで、実施形態では、上述したように乗員の部位を分割し、車両用シート2に着座している乗員について予め定めた部位(例えば腰)を起点に、他の部位(例えば、頭部)までの振動伝達経路を考慮して各関節の制御パラメタを同定する。
【0048】
各関節の制御パラメタの同定では、車両の走行時におけるフロア振動(車両の挙動)及び乗員の各部位の振動(乗員の挙動)を計測した実測値を用いる。乗員の各部位は、乗員の頭部516、胸部514、腰部512、及び腿部510を適用する。また、腰部512は、乗員の骨盤の挙動を計測することでデータ化する。挙動の計測は、加速度センサ、及び慣性センサ等のセンサを検出対象の箇所(車両及び乗員)に取り付けて計測したり、検出部にマークを取り付け、撮像したマークの位置変化で計測するモーションキャプチャにより計測したりすることで実現可能である。また、挙動の計測では、車両と乗員との間に作用する力の計測も行う。例えば、腿部510について、シートクッション21Aと乗員OPの腿部510の接触力(バネ力、減衰力、及び摩擦力)等の力を計測した実測値を用いる。
【0049】
また、実施形態では、振動特性を同時に同定する処理負荷を低減するため、上述したように乗員の部位を分割し、乗員の腰部512を起点として、胸部514、そして頭部516の順序で関節部における制御パラメタの同定を行う。
【0050】
一方、人体挙動モデル51について最適化計算を実施する際には、局所解への落ち込みを避けるため、適切な初期値を定めることが好ましい。このため、実施形態では、ラテン超方格法等の手法を用いて初期値を定め、その後、勾配法を用いて最適化計算を実施する。
【0051】
制御パラメタは、関節の振動特性を示し、頸部関節部515に4つの制御パラメタ、腰部関節部513に5つの制御パラメタ、及び腿部関節部511に8つの制御パラメタを適用する。関節の振動特性は、主として、線形バネ及びダンパで表現可能なバネ特性及び減衰特性を含む。また、接触部分が存在する場合は摩擦特性を含むことができる。
【0052】
具体的には、頸部関節部515は、回転ジョイントのバネ特性と減衰特性の2つの制御パラメタと、乗員の頭部516が前後方向及び上下方向に並進移動可能な並進ジョイントの2つの制御パラメタとを含む4つの制御パラメタを適用する。
腰部関節部513は、回転ジョイントのバネ特性と減衰特性の2つの制御パラメタと、乗員OPの腰部512がシートバック21Bに押圧する際のバネ特性、減衰特性、及び摩擦特性の3つの制御パラメタとを含む5つの制御パラメタを適用する。
腿部関節部511は、回転ジョイントのバネ特性と減衰特性の2つの制御パラメタと、乗員の腿部510がシートバック21Bに押圧する際のバネ特性、減衰特性、及び摩擦特性の3つの制御パラメタと、腿部510がシートクッション21Aに押圧する際のバネ特性、減衰特性、及び摩擦特性の3つの制御パラメタと、を含む8つの制御パラメタを適用する。
【0053】
次に、上述した制御パラメタに対して初期値を定める。実施形態では、当該初期値を、ラテン超方格法等の実験計画法を用いて定める。具体的には、上述した制御パラメタに対して、無作為(ランダム)に定めた複数の制御パラメタの値を用い、乗員OPの挙動として得られた計測により得られた実測値近傍の制御パラメタの値を、関節特性の値として最適化計算の初期値に適用する。
【0054】
次に、上記初期値を用い、既知の最適化法を用いて人体挙動モデル51の最適化を実施する。既知の最適化法の一例には、勾配法、及び応答曲面法(GRSM)等の最適化法が挙げられる。また、最適化のためには、平均二乗誤差による手法等の誤差を最小にする評価関数を用いる。また、実施形態では、乗員OPの骨盤の部位のうち尾てい骨の位置を、乗員の腰部512の位置として、尾てい骨の振動特性を起点として、胸部514、そして頭部516の順序で関節部における制御パラメタを同定している。また、実施形態では、尾てい骨の振動特性が人体挙動モデル51における乗員の腰部512の振動特性に一致、又は所定の誤差範囲内に収まるように最適化している。
【0055】
ここで、車両におけるフロア振動は、前後方向、左右方向、及び上下方向等の複数の方向のうち少なくとも1つの方向に振動する。従って、フロア振動の実測値は、複数の方向に振動した場合の動特性を示す。
【0056】
従って、フロア振動が乗員OPの頭部516の振動として伝達される際の人体伝達関数H(s)は、上記複数の方向の振動による動特性が反映されるものであり、複数の各方向の振動がどのように乗員OPを伝達されるかについては不定であった。そこで、実施形態では、人体伝達関数H(s)として、フロア振動における各方向毎に入力を分解し、各方向毎に伝達関数を導出する。よって、人体伝達関数H(s)は、フロア振動における各方向毎に、乗員OPの頭部516の振動として伝達される伝達特性を導出できる。
【0057】
具体的には、フロア振動を複数の方向の振動特性に分解し、複数の方向の振動特性によるフロア振動が乗員OPの頭部516に伝達される伝達特性を導出する。フロア振動における複数の方向の振動特性は、車両の挙動について異なる複数の各方向の各挙動を示す情報に対応する。ここでは、フロア振動については、前後方向、左右方向、上下方向、ロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の6方向の単軸方向に分解する。頭部516に伝達される振動特性は、乗員OPの頭部516の前後方向、左右方向、上下方向、ロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の6方向の単軸方向の各々であり、フロア振動が頭部516における各単軸方向の振動に伝達される伝達特性を導出する。よって、6方向の単軸方向について各々の単軸振動による頭部516の挙動(振動)を導出可能となる。
【0058】
人体伝達関数H(s)は、次に示す行列式で表すことが可能である。
【数1】

【0059】
実施形態では、行列式は、6行6列の伝達行列で表される。第1列目の行列成分は前後方向のフロア振動に対する頭部516の挙動を示す伝達特性Hを適用する。伝達特性Hの第1番目の添え字は、フロア振動の方向を示し、第1列目の行列成分では、前後方向をx、左右方向をy、上下方向z、ロール方向Rx、ピッチ方向Ry、及びヨー方向をRzとして、6方向の単軸方向に分解されていることを示している。伝達特性Hの第2番目の添え字は、頭部516の方向を示し、第1列目の行列成分では、頭部516の前後方向をxとしている。同様に、第2番目の添え字は、第2列目の行列成分では左右方向をyとし、第3列目の行列成分では上下方向zとし、第4列目の行列成分ではロール方向Rxとし、第5列目の行列成分ではピッチ方向Ryとし、第6列目の行列成分ではヨー方向をRzとしている。
【0060】
上述のようにして生成された人体挙動モデル51である第1人体挙動モデル51Aを、補助記憶装置108のモデル108Mに格納する。
【0061】
(モデル生成)
【0062】
上述したように人体挙動モデル51は、車両の挙動としてのフロア振動特性(入力データ4)から、乗員OPの挙動として頭部516の振動特性(出力データ6)を導出するように最適化を済ませたモデルである。人体挙動モデル51は、上述した伝達行列として表現される。
【0063】
(第1人体挙動モデル)
まず、人体挙動モデル51である第1人体挙動モデル51Aの生成について説明する。
図6は、人体挙動モデル51である第1人体挙動モデル51Aを生成し記憶する際の推定装置1における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、推定装置1のCPU102は、モデル生成プログラム(図7参照)の実行によって本開示のモデル生成装置として機能する。推定装置1は、本開示の取得部としての入力部53、及びモデル生成部としてのモデル処理部52として機能する機能部を含む。
【0064】
人体挙動モデル51である第1人体挙動モデル51Aは、モデル処理部52(図6)における処理により生成される。モデル処理部52は、フロア振動特性、及び頭部516の振動特性を用いて上述した最適化処理を行う。
【0065】
図7は、モデル処理部52で実行される人体挙動モデルの生成処理の一例を示す図である。図7に示す処理ルーチンは、推定装置1におけるCPU102で実行される。
【0066】
モデル処理部52は、ステップS110で、計測済みのフロア振動特性、及び頭部516の振動特性を示すデータを、入力データ4、及び人体挙動モデルの出力目標としての出力データ6をデータセットとして取得する。次に、ステップS112で、制御パラメタを同定することで、人体挙動モデル51を生成する。次のステップS114では、生成した人体挙動モデル51を、第1人体挙動モデル51Aとして補助記憶装置108に記憶して、本処理ルーチンを終了する。
【0067】
(第1推定処理)
次に推定装置1で実行される第1推定処理について説明する。第1推定処理は、第1人体挙動モデル51Aを用い、車両のフロア振動から、乗員OPの頭部516の振動特性を推定する処理である。
【0068】
図8に、推定プログラム108Pに含まれる第1推定プログラムによる第1推定処理の流れの一例を示す。
図8に示す第1推定処理は、コンピュータ本体100に電源投入されると、CPU102により実行される場合を説明する。CPU102は、推定プログラム108Pに含まれる第1推定プログラムを補助記憶装置108から読み出し、RAM104に展開して処理を実行する。
【0069】
まず、CPU102は、ステップS200で、補助記憶装置108のモデル108Mから第1人体挙動モデル51Aを読み出して第1人体挙動モデル51Aを取得し、RAM104に展開する。具体的には、第1人体挙動モデル51Aとして表現された関節部の制御パラメタによる行列式を、RAM104に展開する。よって、関節部の制御パラメタによる伝達特性が実現された第1人体挙動モデル51Aが構築される。
【0070】
次に、CPU102は、ステップS202で、図示しないセンサ等で検出された車両のフロア振動特性を、入力データ4として取得する。
【0071】
次に、CPU102は、ステップS204で、ステップS200で取得した第1人体挙動モデル51Aを用いて、ステップS202において取得した入力データ4(振動特性)に対応する出力データ6、すなわち、乗員OPの挙動として乗員OPの頭部516の未知の振動特性を推定する。
【0072】
そして、次のステップS206で、推定結果の出力データ6(頭部516の未知の振動特性)を出力して本処理ルーチンを終了する。出力データ6の出力は、操作表示部116への情報表示でもよいし、通信部114を介して図示しない外部装置への送信でもよい。
【0073】
なお、図8に示す推定処理は、本開示の推定方法で実行される処理の一例である。
【0074】
(検証)
上述した人体挙動モデル51を用いて乗員OPの挙動状態を推定する推定結果の検証を行った。当該検証では、車両の走行中におけるフロア振動及び乗員OPの頭部の振動を計測した実測値と、推定装置1において、第1人体挙動モデル51Aを用いて推定した乗員OPの頭部の振動を示す推定値とで検証した。検証では、フロア振動特性及び乗員頭部の振動特性として、前後方向の振動特性を前後加速度(m/s)に適用し、上下方向の振動特性を上下加速度(m/s)に適用している。また、回転方向の振動特性を角速度としてピッチレート(rad/s)に適用している。また、検証では、比較のため、乗員OPの頭部について回転のみ可能な人体挙動モデルで推定した推定結果を比較例とし、実施形態に係る推定装置1における回転及び並進可能な第1人体挙動モデル51Aで推定した推定結果を計算例として示している。
【0075】
図9に、車両の挙動状態と乗員の挙動状態との関係を検証した検証結果を示す。図9では、実測値の特性曲線を実線で示し、推定値の特性曲線を点線で示している。図9に示すように、実施形態に係る第1人体挙動モデル51Aを用いて推定した推定結果は、実測値に一致、又は極めて近い特性を得ることができた。よって、実施形態に係る推定装置1により推定する乗員の挙動状態が、実測値に準じる挙動状態を示す値として推定できることが検証された。また、図9に示すように、計算例で示される第1人体挙動モデル51Aを用いて推定した推定結果は、比較例と比べて推定値と実測値との乖離を低減することが可能であることを理解できる。
【0076】
このように、乗員の挙動を模した人体挙動モデルの頸部関節に前後方向、及び上下方向の自由度を追加することで、乗員の頭部の挙動として複雑な挙動を表現できるようになり、実測値との乖離を低減可能となる。例えば、複数の関節が連携した頸部関節において発生する位相差を含めて乗員の頭部の挙動を表現可能となる。これにより、より正確な乗員の挙動を模した人体挙動モデルの生成が可能となる。
【0077】
すなわち、実施形態では、人体挙動モデル51(ここでは、第1人体挙動モデル51A)は、頸部関節部515について回転ジョイント515Aに加え、前後方向及び上下方向等の並進移動が可能な並進ジョイント515B,515Cを適用している。よって、人体挙動モデル51の頭部516は、頸部関節部515で、回転ジョイント515Aによる回転、並進ジョイント515B,515Cによる並進移動が可能となり、自由度が増加される。従って、車両の挙動に対しての乗員の挙動を示す自由度が向上し、乗員OPの頭部の挙動を忠実に表現することが可能となる。これによって、人体挙動モデル51を用いて推定した乗員OPの挙動を示す推定値と車両の走行状態で計測した実測値との乖離を低減することができる。すなわち、実施形態では、頸部関節部515について回転ジョイントに加え、前後方向及び上下方向等の並進移動が可能な並進ジョイントを追加する。よって、頸部関節部515に回転ジョイントのみを用いて頭部516の挙動を再現するのに比べ、車両用シートに着座する乗員の挙動を示す推定値と実測値との乖離を低減することが可能となる。
【0078】
(第2推定装置)
次に、人体挙動モデル51を用いて第2推定処理を行う第2推定装置として機能する推定装置1を、第2推定装置1Bとして説明する。
【0079】
(人体挙動モデル)
まず、人体挙動モデル51の生成について説明する。ここでは、第2推定処理を行う際に用いる第2人体挙動モデル51Bを生成する場合を説明する。
【0080】
上述したように第1人体挙動モデル51Aは、車両の挙動としてのフロア振動特性に応じて変化する乗員の挙動としての乗員の頭部の振動特性を導出するために最適化を済ませたモデルである。当該第1人体挙動モデル51Aによって車両の挙動(フロア振動)に対する乗員OPの挙動(頭部振動)を数値計算モデルで計算することが可能になる。
【0081】
また、第1人体挙動モデル51Aは、フロア振動が乗員OPの頭部516に伝達される伝達特性を表現した人体伝達関数H(s)と捉えることができる。上述したように、人体伝達関数H(s)は、フロア振動における各方向毎に入力を分解し、各方向毎に伝達関数を導出しているので、フロア振動における各方向毎に、乗員OPの頭部516の振動として伝達される伝達特性を導出できる。このため、人体伝達関数H(s)の逆関数を示す逆人体伝達関数H(s)-1は、乗員OPの頭部516の振動を入力とし、当該頭部516の振動として伝達されるべきフロア振動を出力するように振動を伝達する逆伝達関数となる。よって、逆人体伝達関数H(s)-1を用いて、例えば、乗員OPの頭部516における振動特性に、乗員OPが快適性を感じるような予め定めた振動を入力することで、乗員OPが快適性を感じるような理想的なフロア振動を推定可能になる。
【0082】
すなわち、第2人体挙動モデル51Bは、フロア振動特性をFとし、乗員OPの頭部516の振動特性をPとし、人体伝達関数H(s)の逆関数を逆人体伝達関数H(s)-1として、車両の挙動と乗員の挙動との関係を、次の式で表すことが可能となる。
F=H(s)-1・P
(フロア振動)=(逆人体伝達関数)・(頭部振動)
【0083】
そこで、実施形態では、第2推定装置1Bにおいて、上述した第1人体挙動モデル51Aの逆関数を示す逆人体伝達関数H(s)-1を導出し、導出した逆人体伝達関数H(s)-1を用いて頭部516の振動として伝達されるべきフロア振動を推定する。
【0084】
(第2人体挙動モデル)
次に、第2人体挙動モデル51Bの生成について説明する。
推定装置1のCPU102は、モデル処理部52(図6)で、第2人体挙動モデル51Bのモデル生成プログラム(図10参照)の実行によって第2人体挙動モデル51Bのモデル生成装置として機能する。
【0085】
第2人体挙動モデル51Bは、上述したモデル処理部52(図6)における処理により生成される。モデル処理部52は、フロア振動特性、及び頭部516の振動特性を用いて上述した最適化処理を行う。
【0086】
図10は、モデル処理部52で実行される第2人体挙動モデル51Bの生成処理の一例を示す図である。図10に示す処理ルーチンは、推定装置1におけるCPU102で実行される。
【0087】
モデル処理部52は、上述した図7に示す処理と同様に、ステップS110で、計測済みのフロア振動特性、及び頭部516の振動特性を示すデータを取得する。次に、ステップS112で、制御パラメタを同定することで、人体挙動モデル51を生成し、次のステップS114で、第1人体挙動モデル51Aとして補助記憶装置108に記憶する。なお、既に第1人体挙動モデル51Aを補助記憶装置108に記憶済みの場合は、ステップS110からステップS114を省略することが可能である。
【0088】
次に、モデル処理部52は、ステップS116で、第1人体挙動モデル51Aを取得し、当該第1人体挙動モデル51Aの逆モデルを第2人体挙動モデル51Bとして導出する。すなわち、上述した人体伝達関数H(s)の逆関数を示す逆人体伝達関数H(s)-1を導出する。次のステップS118では、導出した第2人体挙動モデル51Bを補助記憶装置108に記憶して本処理ルーチンを終了する。
【0089】
(第2推定処理)
次に、推定装置1で実行される第2推定処理について説明する。第2推定処理は、第2人体挙動モデル51Bを用い、乗員OPの頭部516について予め定めた振動特性となる車両のフロア振動の振動特性を推定する処理である。
【0090】
図11に、推定プログラム108Pに含まれる第2推定プログラムによる第2推定処理の流れの一例を示す。
図11に示す第1推定処理は、コンピュータ本体100に電源投入されると、CPU102により実行される。CPU102は、第2推定プログラムを補助記憶装置108から読み出し、RAM104に展開して処理を実行する。
【0091】
まず、CPU102は、ステップS210で、補助記憶装置108のモデル108Mから第2人体挙動モデル51Bを読み出して第2人体挙動モデル51Bを取得し、RAM104に展開する。具体的には、第2人体挙動モデル51Bとして表現された第1人体挙動モデル51Aの逆モデルを示す上述した関節部の制御パラメタによる逆行列式(逆人体伝達関数H(s)-1)を、RAM104に展開する。よって、第1人体挙動モデル51Aの逆伝達特性が実現された第2人体挙動モデル51Bが構築される。
【0092】
次に、CPU102は、ステップS212で、予め定めた乗員の頭部の振動特性を、入力データ4として取得する。ステップS212で取得する予め定めた乗員の頭部の振動特性は、走行中に乗員が好ましい振動として感じることが予測される実験等により得られる予め定めた振動特性を適用することが可能である。
【0093】
次に、CPU102は、ステップS214で、ステップS210で取得した第2人体挙動モデル51Bを用いて、ステップS212において取得した入力データ4(振動特性)に対応する出力データ6、すなわち、車両の挙動として未知のフロア振動特性を推定する。
【0094】
そして、次のステップS216で、推定結果の出力データ6(フロア振動特性)を出力して本処理ルーチンを終了する。出力データ6の出力は、操作表示部116への情報表示でもよいし、通信部114を介して図示しない外部装置への送信でもよい。
【0095】
上述した推定結果の出力データ6(フロア振動特性)に基づいて、車両の挙動を制御することで、走行中に乗員が好ましい頭部の振動として感じることが予測される車両の挙動に制御することが可能となる。
【0096】
なお、図11に示す推定処理は、本開示の推定方法で実行される処理の一例である。
【0097】
(検証)
上述した人体挙動モデル51である第2人体挙動モデル51Bを用いて乗員OPの挙動状態に対する車両の挙動状態を推定する推定結果の検証を行った。当該検証では、車両の走行中におけるフロア振動及び乗員OPの頭部の振動を計測した実測値と、推定装置1において、第2人体挙動モデル51Bを用いて乗員OPに好ましい頭部の振動に対する車両のフロア振動を示す推定値とで検証した。検証では、時系列に変化するフロア振動特性及び乗員頭部の振動特性として、前後方向の振動特性、及び上下方向の振動特性を適用している。
【0098】
図12に、車両の挙動状態と乗員の挙動状態との関係を、乗員の頭部の上下方向の振動について検証した検証結果を示す。図中、実測値の特性曲線を実線で示し、乗員OPに好ましい頭部振動として要求する要求値の特性曲線として点線で示している。当該要求値の特性曲線は、頭部振動の実測値の50%に低減することを要求値として適用している。
【0099】
図12に示す推定結果から、フロア振動として上下方向の振動特性を、車両の挙動状態である実測値の最大値に対してゲインg1で上下方向の振動特性を低減すればよいことが情報として得られる。また、最小値に対してはゲインg2で上下方向の振動特性を低減すればよいことが情報として得られる。従って、推定結果の出力データ6により示されるゲインg1、g2に基づいて、車両の挙動を制御することで、走行中における乗員OPの上下方向の頭部振動を実測値に対して50%に低減することが可能となる。
【0100】
図13に、車両の挙動状態と乗員の挙動状態との関係を、乗員の頭部の前後方向の振動について検証した検証結果を示す。図中、実測値の特性曲線を実線で示し、乗員OPに好ましい頭部振動として要求する要求値の特性曲線として点線で示している。当該要求値の特性曲線は、頭部振動の実測値の50%に低減することを要求値として適用している。なお、図13では、第2人体挙動モデル51Bを用いて推定した推定結果として、前後方向のフロア振動特性と、上下方向のフロア振動特性とを示す。
【0101】
図13に示す推定結果から、フロア振動の前後方向の振動特性及び上下方向の振動特性を、実測値の最大値及び最小値に対してゲインを制御すると共に、同じタイミング(位相)で制御することが情報として得られる。これは、乗員OPの前後方向の振動は、前後方向のフロア振動のみならず、上下方向のフロア振動も依存すると予測されるためである。従って、推定結果の出力データ6により示される前後方向の振動特性及び上下方向の振動特性のゲイン及びタイミングに基づいて、車両の挙動を制御することで、走行中における乗員OPの前後方向の頭部振動を実測値に対して50%に低減することが可能となる。
【0102】
このように、実施形態では、人体挙動モデル51(ここでは、第2人体挙動モデル51B)は、車両におけるフロア振動の方向毎に頭部への伝達関数を定め、その逆関数を用いて、例えば予め定めた乗員に好ましい振動特性に対するフロア振動特性を推定する。よって、快適性や乗り心地等の車両用シートに着座する乗員が受ける心象に応じた様々な挙動状態を得ることが可能な車両の挙動を推定することが可能となる。従って、人体挙動モデルを用いて伝達関数の逆伝達関数を導出することで、予め定めた乗員にとっての理想の挙動を実現する車両の挙動、すなわちフロア振動を予測することができ。当該乗員にとって理想のフロア振動を推定可能になることで、理想のフロア振動を実現するように車両をセッティングするも不可能ではなく、乗員にとって理想の車両の挙動状態を実現することができる。
【0103】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、車両の挙動状態としてフロア振動を適用した場合を説明したが、本開示の技術は、これに限定されない。車両の挙動状態は、車両の挙動を表現されていればよく、車両上の他の部分の振動を適用してもよい。また、挙動状態として振動を適用した場合を説明したが、周期的な振動に限定されるものではなく、突発的な圧力変動でもよい。また、振動は速度、加速度、角速度、及び角加速度等の物理量で表現してもよいことは勿論である。
【0104】
また、上述した実施形態では、乗員の挙動状態として頭部の振動を適用した場合を説明したが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、乗員の他の部位に本開示の技術は適用可能である。
【0105】
さらに、上述した実施形態では、人体挙動モデル51を最適化手法により最適化した一例を説明したが、人体挙動モデル51は車両の挙動と乗員の挙動との間で相関関係を有するように振動等の物理量を伝達することが可能なモデルを適用してもよい。例えば、人体挙動モデル51は、車両の挙動及び乗員の挙動の一方の物理量(入力データ4)から、他方の物理量(出力データ6)を導出する学習を済ませたニューラルネットワークモデルを適用してもよい。ニューラルネットワークモデルは、例えば、学習済みのニューラルネットワークを規定するモデルであり、ニューラルネットワークを構成するノード(ニューロン)同士の間の結合の重み(強度)の情報の集合として表現される。
【0106】
図14は、人体挙動モデル51として、ニューラルネットワークモデルを生成することを実行するモデル処理部52における機能を示す図である。
【0107】
モデル処理部52は、生成器54及び演算器56の機能部を含む。生成器54は、入力である時系列に取得された振動特性を考慮して出力を生成する機能を有する。モデル処理部52は、上述した実測値を学習データとして多数保持する。
【0108】
生成器54は、入力層540、中間層542、及び出力層544を含んで、公知のニューラルネットワーク(NN:Neural Network)を構成する。ニューラルネットワーク自体は公知の技術であるため詳細な説明は省略するが、中間層542は、ノード間結合、及びフィードバック結合を有するノード群(ニューロン群)を多数含む。その中間層542には、入力層540からのデータが入力され、中間層542の演算結果のデータは、出力層544へ出力される。生成器54は、入力された入力データ4(振動特性)から、出力の振動特性を示す生成出力データ6Aを生成するニューラルネットワークである。生成出力データ6Aは、入力データ4(振動特性)から出力データ(振動特性)を推定したデータである。生成器54は、時系列に入力された入力データ4から、実測値に近い生成出力データを生成する。生成器54は、多数の入力データ4を用いて学習することで、例えば、車両の挙動状態(フロア振動)が与えられた際の乗員の挙動状態(頭部振動)に近い生成出力データ6Aを生成できるようになる。
【0109】
演算器56は、生成出力データ6Aと、実測値の学習データである出力データ6とを比較し、その比較結果の誤差を演算する演算器である。モデル処理部52は、生成出力データ6A、及び出力データ6を演算器56に入力する。これに応じて、演算器56は、生成出力データ6Aと、学習データの出力データ6との誤差を演算し、その演算結果を示す信号を出力する。
【0110】
モデル処理部52は、演算器56で演算された誤差に基づいて、ノード間の結合の重みパラメタをチューニングする、生成器54の学習を行う。具体的には、生成器54における入力層540と中間層542とのノード間の結合の重みパラメタ、中間層542内のノード間の結合の重みパラメタ、及び中間層542と出力層544とのノード間の結合の重みパラメタの各々を例えば勾配降下法や誤差逆伝搬法等の手法を用いて、生成器54にフィードバックする。すなわち、学習データの出力データ6を目標として、生成出力データ6Aと学習データの出力データ6との誤差を最小化するように全てのノード間の結合を最適化する。
【0111】
以上のようにして、人体挙動モデル51を、モデル処理部52の学習処理により生成することが可能である。人体挙動モデル51は、モデル処理部52による学習結果のノード間の結合の重みパラメタ(重み、又は強度)の情報の集合として表現することが可能である。
【0112】
以上、本開示の技術を実施形態を用いて説明したが、本開示の技術の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更、又は改良を加えることができ、当該変更、又は改良を加えた形態も開示の技術の技術的範囲に含まれる。
【0113】
また、上記実施の形態では、補助記憶装置に記憶したプログラムを実行することにより行われる処理を説明したが、少なくとも一部のプログラムの処理をハードウェアで実現してもよい。また、上述した実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0114】
さらに、上述した実施形態における処理をコンピュータにより実行させるために、上述した処理をコンピュータで処理可能なコードで記述したプログラムを光ディスク等の記憶媒体等に記憶して流通するようにしてもよい。
【0115】
上述した実施形態では、汎用的なプロセッサの一例としてCPUを用いて説明したが、上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU: Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0116】
また、上述した実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、複数のプロセッサが連携して成すものであってもよく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。
【0117】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0118】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本開示の一実施形態は「No.9_産業と技術革新の基盤をつくろう」等に貢献する技術となり得ると考えられる。
【0119】
また、推定装置の一部、例えば学習モデル等のニューラルネットワークを、ハードウェア回路として構成してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 推定装置
2 車両用シート
3 入力部
4 入力データ
5 推定部
6 出力データ
7 出力部
51 人体挙動モデル
52 モデル処理部
100 コンピュータ本体
108 補助記憶装置
108D データ
108M モデル
108P 推定プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14