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特開2024-76934電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076934
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20240530BHJP
   H01Q 1/27 20060101ALI20240530BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240530BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20240530BHJP
【FI】
G01R29/08 D
H01Q1/27
B64U10/13
B64U20/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188787
(22)【出願日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】522075483
【氏名又は名称】アルティメイトテクノロジィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175064
【弁理士】
【氏名又は名称】相澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石田 真彦
(72)【発明者】
【氏名】大坂 英樹
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046KA05
(57)【要約】
【課題】電子機器が発するノイズによるスループット低下を抑制可能な電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器2は、前後方向で利得差がある指向性アンテナ215を備える。指向性アンテナ215の前方と後方との利得差は3dB以上であって、指向性アンテナ215の後方が、電子機器2が有するノイズ源に向けて設置されており、指向性アンテナ215の前方に存在する高感度領域の水平方向の幅は60度以上270度以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向で利得差がある指向性アンテナを備えた電子機器であって、
前記指向性アンテナの前方と後方との利得差は3dB以上であって、前記指向性アンテナの後方が、前記電子機器が有するノイズ源に向けて設置されており、
前記指向性アンテナの前方に存在する高感度領域の水平方向の幅は60度以上270度以下である
電子機器。
【請求項2】
複数の前記指向性アンテナを備え、
複数の前記指向性アンテナの後方が、いずれも前記電子機器が有するノイズ源に向けられており、
複数の前記指向性アンテナの高感度領域の中心は、それぞれ異なる方向に向けられている
請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は移動体であり、
前記指向性アンテナは板状であって、前記電子機器の運動に伴って生じる気流と略同じ方向に延伸するよう設置される
請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記指向性アンテナは、アンテナエレメントの向きが基地局の偏波方向と略合致するよう設置される
請求項1記載の電子機器。
【請求項5】
前記指向性アンテナは、感度方向を水平面より下方にチルトさせて設置される
請求項1記載の電子機器。
【請求項6】
前記指向性アンテナの前方と後方との利得差が6dB以上であり、
前記高感度領域の水平方向の幅は180度以上である
請求項1記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器に設置される指向性アンテナであって、
前記指向性アンテナの前方と後方との利得差は3dB以上であって、前記指向性アンテナの後方が、前記電子機器が有するノイズ源に向けて設置されており、
前記指向性アンテナの前方に存在する高感度領域の水平方向の幅は60度以上270度以下である
指向性アンテナ。
【請求項8】
移動体における複数の指向性アンテナの配置を決定するためのシステムであって、
デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、前記指向性アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記指向性アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力部と、
前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定部と、
前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいて、複数の前記指向性アンテナのアンテナ感度分布をそれぞれ計算するアンテナ感度推定部と、
前記ノイズ強度分布と、複数の前記指向性アンテナの前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化部とを含む
アンテナ配置決定システム。
【請求項9】
コンピュータが移動体における複数の指向性アンテナの配置を決定する方法であって、
デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、前記指向性アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記指向性アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力ステップと、
前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定ステップと、
前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいて、複数の前記指向性アンテナのアンテナ感度分布をそれぞれ計算するアンテナ感度推定ステップと、
前記ノイズ強度分布と、複数の前記指向性アンテナの前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化ステップとを含む
アンテナ配置決定方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムに関し、特に電子機器が発するノイズによるスループット低下を抑制可能なアンテナ配置技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を有する電子機器においては、電磁ノイズが通信モジュールに混入すると通信性能が著しく低下する。典型的には、アンテナに入力する信号強度と製品自体の動作ノイズ強度との差が小さい状況下では、信号とノイズとの分離が困難となりスループットが低下する。
【0003】
それで、製品の設計に際してはノイズの影響を受けにくいようなアンテナ配置を検討する必要がある。特にドローン、ロボット及び車両をはじめとする移動体は、軽量化の要請や、機械的及び空力的な制約等があることから、アンテナを配置できる位置が制限されやすい。
【0004】
関連する従来技術として特許文献1乃至3がある。特許文献1及び2には、無指向性アンテナとノイズ源との間に遮蔽板を設けた移動体が開示されている。
【0005】
特許文献3には、他の基地局からの干渉波によるスループット低下を抑制するため、複数の指向性アンテナをそれぞれ異なる向きに搭載しておき、最も干渉波の影響が小さいアンテナを使用して所望の基地局とセルラー通信を行う無人航空機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-061473号公報
【特許文献2】特開2020-102706号公報
【特許文献3】特開2018-117268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2記載の技術では遮蔽板を追加する必要があるため、製品構造の複雑化、製品重量の増加、アンテナ特性の変化といった副次的な問題が発生しやすい。
【0008】
また特許文献3記載の技術では、他の基地局からの干渉波への対策はなされているものの、自機由来のノイズへの対策がなされていない。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、電子機器が発するノイズによるスループット低下を抑制可能な電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態によれば、電子機器は、前後方向で利得差がある指向性アンテナを備えた電子機器であって、前記指向性アンテナの前方と後方との利得差は3dB以上であって、前記指向性アンテナの後方が、前記電子機器が有するノイズ源に向けて設置されており、前記指向性アンテナの前方に存在する高感度領域の水平方向の幅は60度以上270度以下である。
一実施の形態によれば、電子機器は、複数の前記指向性アンテナを備え、複数の前記指向性アンテナの後方が、いずれも前記電子機器が有するノイズ源に向けられており、複数の前記指向性アンテナの高感度領域の中心は、それぞれ異なる方向に向けられている。
一実施の形態によれば、前記電子機器は移動体であり、前記指向性アンテナは板状であって、前記電子機器の運動に伴って生じる気流と略同じ方向に延伸するよう設置される。
一実施の形態によれば、前記指向性アンテナは、アンテナエレメントの向きが基地局の偏波方向と略合致するよう設置される。
一実施の形態によれば、前記指向性アンテナは、感度方向を水平面より下方にチルトさせて設置される。
一実施の形態によれば、前記指向性アンテナの前方と後方との利得差が6dB以上であり、前記高感度領域の水平方向の幅は180度以上である。
一実施の形態によれば、指向性アンテナは、電子機器に設置される指向性アンテナであって、前記指向性アンテナの前方と後方との利得差は3dB以上であって、前記指向性アンテナの後方が、前記電子機器が有するノイズ源に向けて設置されており、前記指向性アンテナの前方に存在する高感度領域の水平方向の幅は60度以上270度以下である。
一実施の形態によれば、アンテナ配置決定システムは、移動体における複数の指向性アンテナの配置を決定するためのシステムであって、デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、前記指向性アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記指向性アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力部と、前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定部と、前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいて、複数の前記指向性アンテナのアンテナ感度分布をそれぞれ計算するアンテナ感度推定部と、前記ノイズ強度分布と、複数の前記指向性アンテナの前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化部とを含む。
一実施の形態によれば、アンテナ配置決定方法は、コンピュータが移動体における複数の指向性アンテナの配置を決定する方法であって、デジタル回路の特性に関する回路情報、前記デジタル回路の構造に関する構造情報、前記指向性アンテナの特性に関するアンテナ情報、前記デジタル回路の配置に関する回路モジュール配置情報、及び前記指向性アンテナの配置に関するアンテナ位置情報を設計情報として入力する設計情報入力ステップと、前記回路情報、前記構造情報及び前記回路モジュール配置情報に基づいてノイズ強度分布を計算するノイズ分布推定ステップと、前記アンテナ情報及び前記アンテナ位置情報に基づいて、複数の前記指向性アンテナのアンテナ感度分布をそれぞれ計算するアンテナ感度推定ステップと、前記ノイズ強度分布と、複数の前記指向性アンテナの前記アンテナ感度分布との重なりを評価し、前記重なりの評価結果が所定の基準を満たさない場合、前記設計情報を変更する最適化ステップとを含む。
一実施の形態によれば、プログラムは、上記方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、電子機器が発するノイズによるスループット低下を抑制可能な電子機器、移動体、アンテナ、アンテナ配置決定システム、アンテナ配置決定方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】移動体2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】アンテナ配置決定システム1のハードウェア構成を説明するブロック図である。
図3】アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。
図4】ノイズ強度分布及びアンテナ感度分布の推定処理の一例を示す図である。
図5A】ノイズ強度分布の推定処理の一例を示す図である。
図5B】アンテナ感度分布の推定処理の一例を示す図である。
図5C】ノイズ強度分布及びアンテナ感度分布の重なりの評価処理の一例を示す図である。
図6】アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。
図7】アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。
図8】アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。
図9】アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。
図10】アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。
図11】アンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。
図12A】アンテナ215の構造の一例を示す図である。
図12B】アンテナ215の構造の一例を示す図である。
図12C】アンテナ215の構造の一例を示す図である。
図12D】アンテナ215の構造の一例を示す図である。
図12E】アンテナ215の構造の一例を示す図である。
図13】アンテナ215の感度分布を示す図である。
図14】従来の無指向性アンテナを採用した移動体2の一例を示す図である。
図15】指向性を有するアンテナ215を採用した移動体2の一例である。
図16】指向性を有するアンテナ215を採用した移動体2の一例である。
図17】指向性を有するアンテナ215を採用した移動体2の一例である。
図18】指向性を有するアンテナ215の電子機器2への設置例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態として、電子機器の一例としての移動体2、移動体2に設置されるアンテナ215、アンテナ215の配置を決定するためのアンテナ配置決定システム1について説明を行う。
【0014】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかる移動体2のハードウェア構成の一例を示す図である。この例では、移動体2としてドローン(無人航空機)を想定している。移動体2は、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25、電源部27を有する。
【0015】
通信・センサ部21は、典型的には位置センサ211、通信モジュール213、アンテナ215、6軸センサ217、イメージセンサ219を含む。
【0016】
位置センサ211は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して移動体2の位置情報を計算及び出力する。
【0017】
通信モジュール213は、イメージセンサ219が取得した画像データを、アンテナ215を介して外部のサーバ装置等に無線送信する。また、外部のコントローラ(プロポ)から無線送信された操作信号をアンテナ215を介して受信し、コントローラ231に通知する。典型的には、通信モジュール213は地上に設置された基地局との間でセルラー方式によるデータ通信を行う。すなわち、移動体2はセルラー回線を使用して遠隔操作される。
【0018】
アンテナ215は、指向性アンテナである。図12Aは、アンテナ215の構造の一例を示す三面図(側面図、正面図、平面図)である。アンテナ215全体の形状は略方形の板状である。略方形の基板2151(白色で示す)上に、アンテナ本体(アンテナエレメント)2152及びリフレクタ2153として機能する導電体パターン(灰色で示す)が形成されている。側面図においてアンテナ本体2152から見てリフレクタ2153が存在する方向、すなわち-Y方向をアンテナ215の「後方」と称する。また、Y方向を「前方」と称する。
【0019】
図12B及び図12Cは、アンテナ215の他の例を示す図である。アンテナ215全体の形状は略三角形(図12B)又は台形(図12C)の板状である。略三角形又は台形の基板2151(白色で示す)上に、アンテナ本体2152及びリフレクタ2153として機能する導電体パターン(灰色で示す)が形成されている。また、軽量化のため基盤2151に穿孔部(黒色で示す)を設けている。側面図においてアンテナ本体2152の位置をから見てリフレクタ2153が存在する方向、すなわち-Y方向をアンテナ215の「後方」と称する。また、Y方向を「前方」と称する。
【0020】
図12Dは、リフレクタ2153を立体化した外部リフレクタを採用した例である。図12A乃至Cの例では基板2151上のパターンとして形成されていたリフレクタ2153の能力を強化するため、金属板で作成したリフレクタ2153を基板2151に略直交するように取り付けた。これを外部リフレクタという。ここで、図12Eに示すように外部リフレクタ(リフレクタ2153)の高さを抑制するならば、気流の影響を受けにくくなる。
【0021】
図13はアンテナ215の感度分布の測定結果を示す図である。受信感度の測定にあたっては、回転テーブルの中心にアンテナ215を設置し、回転テーブルを360度回転させながら、回転テーブルの外側の固定された送信アンテナからアンテナ215に向けて一定の電力を送信し、アンテナ215でこれを受信した。各角度で得られたゲインをプロットしたものが図13である。すなわち図13は、アンテナ215を上(Z方向)から観察した場合の、水平面(XY平面)におけるアンテナ215の感度分布を示している。図13によれば、アンテナ215は前後方向で利得差があり、前方に比べ、リフレクタの存在する後方の感度が低いという特性を持つ。出願人の知見によれば、前方と後方との利得差(F/B比)が3dB以上であれば移動体2が発するノイズによるスループット低下の抑制が認められるが、F/B比が6dB以上であると、移動体2が発するノイズによるスループット低下を顕著に抑制できるためより好ましい。
【0022】
アンテナ215の前方には、一定の角度幅(ビーム幅)をもって高感度領域が分布する。ここでビーム幅とは、アンテナ215前方に生じる利得最大値に対して所定の割合の利得が得られる2点間の角度である。この割合は、典型的には1/2すなわち-3dBである。この場合、このビーム幅の内側においては少なくとも最大利得の半分の利得が得られることになる。なお、上記割合は1/2に限定されるものではなく、基地局との通信を支障なく行えるだけの利得が得られるよう任意に設定されて良い。
【0023】
高感度領域すなわちビーム幅が広ければ、少ないアンテナ215で移動体2の全周をカバーできる。例えばアンテナ215の水平方向のビーム幅が180度であれば、アンテナ215を背中合わせに2個設置することで、水平方向の360度をカバーすることが可能である。移動体2に設置すべきアンテナ215の数が増えると、設置位置の決定の難易度が増すほか、空力特性の低下、重量の増加、コストの増加といったデメリットが生じやすい。出願人の知見によれば、高感度領域の幅が水平面内60度以上であれば、最低3個のアンテナ215があれば水平面の全周をカバーできることとなり、設計が容易である。
【0024】
一方、高感度領域の幅が大きすぎると、移動体2のノイズ源と高感度領域とが重複しやすくなり、アンテナ215の設置位置の自由度が低下するというデメリットが生じる。出願人の知見によれば、高感度領域の幅が水平面内270度以下であれば、ノイズ源を回避しやすい。
【0025】
6軸センサ217は、典型的には6軸方向の加速度の変化を検出し、移動体2の傾きや移動速度を計算及び出力する。
【0026】
イメージセンサ219は、移動体2外部の画像を撮影及び出力する。
【0027】
制御部23は、コントローラ231を含む。
【0028】
コントローラ231は、典型的にはマイクロコンピュータであって、プログラムに従って通信・センサ部21、駆動部25、電源部27を制御する。例えばコントローラ231は、操作通信モジュール215から通知された操作信号に応じて、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号を生成し、ESC251に入力する。
【0029】
駆動部25は、典型的にはESC(Electric Speed Controller)251、モータ253、プロペラ255を含む。
【0030】
ESC251は、コントローラ231から入力されたPWM制御信号に応じてモータ253の回転速度を制御する。
【0031】
モータ253は、ESC251の制御に応じて所定の速度で回転し、プロペラ255を駆動する。
【0032】
プロペラ255は、モータ253の駆動によって回転し、移動体2を浮上及び移動させる。
【0033】
電源部27は、典型的にはバッテリ271、DCDCコンバータ273を含む。
【0034】
バッテリ271は直流電源である。
【0035】
DCDCコンバータ273は、バッテリ271からの出力を所定の電圧に変換し、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25に対し供給する。
【0036】
EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁環境両立性)の観点では、上記構成要素のうち制御部23及び電源部27、特にコントローラ231及びDCDCコンバータ273が主要なノイズ発生源となりうる。ここで発生するノイズがアンテナ215を介して通信モジュール213に入ると、例えば通信範囲の減少、通信速度(スループット)の低下等の悪影響を及ぼす場合がある。特に、受信できる基地局からの信号の強度が比較的弱く、信号強度とノイズ強度との差が小さい状況下で問題が生じやすい。同じ周波数帯に信号とノイズが存在する場合、信号強度のほうが圧倒的に強ければノイズをフィルタリングできるが、両者の強度に大きな差がない場合、ノイズのみを排除して信号を取り出すことは困難である。
【0037】
そこで本実施の形態では、アンテナ215の低感度側をノイズ発生源に向けて搭載する。例えば、制御部23及び電源部27を機体中央に配置した場合、アンテナ215の低感度側が機体中央を向き、高感度側が機体外側を向くように配置する。図18は、移動体2であるドローンへのアンテナ215の搭載例を示す図である。高感度領域を擁するアンテナ前方(Y方向)が機体の外側を向き、低感度なアンテナ後方(-Y方向)が機体中央に面するよう配置されている。
【0038】
比較のため、図14に従来の無指向性アンテナを採用した移動体2の一例を示す。この上面図において実線及び破線で描かれた閉曲線は無指向性アンテナの感度が等しい地点を結んだもので、感度分布を示している。無指向性アンテナの場合、全方向に等しく感度分布を有するため、機体中心部に搭載された制御部23が発生するノイズを受信しやすい。
【0039】
一方、図15は指向性を有するアンテナ215を採用した移動体2の一例である。この上面図において実線で描かれた閉曲線はアンテナ215の感度が等しい地点を結んだもので、感度分布を示している。この例では、ノイズ発生源である制御部23及び電源部27を機体中央に配置している。この場合、アンテナ215は低感度側が機体中央を向き、高感度側が機体外側を向くよう配置することで、アンテナ215はノイズを受信しにくくなる。
【0040】
また図16の例では、複数のアンテナ215の高感度領域を互いにずらして重複しないよう配置し、かつ、いずれのアンテナ215も低感度側がノイズ発生源である機体中央を向くように配置している。これにより、ノイズの影響を抑制しつつ、基地局との通信における死角も減らすことができる。なお、この例では2本のアンテナ215を配置しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、3本以上のアンテナ215を配置することも可能である。
【0041】
加えて、アンテナ215は基地局の方向にアンテナの感度方向を合わせて設置することが好ましい。図17に示すように、移動体2が基地局よりも上方に位置する場合、移動体2からみた基地局の方向は-n(水平面から下方にn)度となる。この場合、アンテナ215の垂直面の感度方向を-n度チルトすることにより、特に弱電界域での基地局信号/機体ノイズ比(S/N比)を高めることができる。図18の取付例においても、移動体2であるドローンの飛行時に想定される基地局方向に合わせ、感度方向(Y軸の向き)が水平面から若干チルトしている。
【0042】
また、セルラー通信の代表的規格であるLTEや5Gの電波は偏波方向が地面に垂直であるため、アンテナ本体(アンテナエレメント)2152が偏波方向に合わせ地面に略垂直になるよう設置しても良い。図18の取付例においても、アンテナ本体2152の向き(Z軸方向)が偏波方向に合わせて略垂直になるよう設置されている。
【0043】
加えて、アンテナ215を移動体2に搭載する際には、移動体2を運動させるプロペラ255が発生する気流を妨げない向きに取り付けることが好ましい。すなわち、基板2151の板面が、プロペラ255が発生する下方気流と略同じ方向に延伸するように取り付ける。これにより、移動体2の運動性能を妨げることなく、アンテナ215へのノイズ入力を抑制することができる。なお、移動体2が車両又は固定翼航空機等である場合は、基板2151の板面が、移動体2の推進によって生じる気流と略同じ方向に延伸するように取り付けることができる。図18の取付例においても、プロペラ255による気流は主に下方(-Z方向)に生じるので、基盤2151の板面(ZY平面)は気流に平行する向きに設定されている。
<実施の形態2>
図2は、本発明の実施の形態2にかかるアンテナ配置決定システム1のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0044】
アンテナ配置決定システム1は、移動体2の設計を支援するコンピュータシステムであって、典型的にはプロセッサ11、メモリ13、入力部15、出力部17を有する。
【0045】
プロセッサ11は、メモリ13に格納されたプログラム及びデータを読み出して所定の処理を実行することにより、後述の処理部を論理的に実現する。
【0046】
入力部15は、処理に必要なデータや指示を入力するための装置であって、典型的にはキーボード等の文字入力装置、マウス等の指示装置、外部記憶装置や通信回線から情報を受信する通信装置等が含まれる。
【0047】
出力部17は、処理結果や各種通知等を出力するための装置であって、典型的にはディスプレイ等の表示装置、外部記憶装置や通信回線に情報を送信する通信装置等が含まれる。
【0048】
図3は、アンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、その機能を実現するための論理的な処理部として、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107を有する。
【0049】
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。設計情報には、典型的には回路情報、構造情報、アンテナ情報、回路モジュール配置情報、アンテナ位置情報が含まれる。これらの設計情報を使用することで、移動体2におけるノイズ分布及びアンテナ感度を推定することが可能となる。
【0050】
例えば、ノイズ分布の計算では通信帯域でのノイズ電流分布とノイズ電圧分布から計算できる。ここでノイズ電流とは回路と回路間を接続する配線を流れる電流であり、ノイズ電圧とは回路が動作することによる生成される各部の電位(ポテンシャル)差であり、このノイズ電流とノイズ電圧がわかれば、そこを微小区間に区分けすることで各区間が励振源として扱うことで解析空間での電磁ノイズが計算できることになる。ここでノイズ電流は半導体と金属などの導電体を流れ、ノイズ電圧は導電体表面に生成されるので、具体的にはプリント配線基板、配線のみを計算の対象にすればよい。すなわち回路情報とその位置情報である構造情報によりノイズ電流とノイズ電圧が計算できる。ここで構造情報が必要な理由は励振源の位置情報を与えるためである。なお、実際には回路基板と配線の導体間の相互インダクタンスと相互キャパシタンスが寄生成分として回路上に現れるがこれを回路情報に織り込むことでノイズ分布の計算精度を向上することもできる。
【0051】
回路情報は、通信・センサ部21、制御部23、駆動部25、電源部27を構成するデジタル回路に関する基本的な情報を定義したデータである。例えば、デジタル回路のクロック周波数、電流、電圧等の情報が回路情報に含まれる。また回路情報には基板配線の特性インピーダンスや配線ケーブルのインピーダンス、半導体回路の駆動点インピーダンス、入力インピーダンスなど電圧と電流を規定する情報を持っている。通信帯域のノイズはこのクロックの高調波成分であり、クロックがたとえ10MHz程度であってもGHz帯域の通信帯域にノイズとして現れる。更に電源部においては直流電圧変換回路(DCDCコンバータ)が電圧変換効率の観点で多く用いられるが、回路内部では矩形波の交流に一度変換しており、この交流がノイズ源となる。近年のパワーデバイスの進化により切替速度が高速化し、この高調波が容易に通信帯域に影響する。
【0052】
構造情報は、デジタル回路の構造に関する基本的な情報を定義したデータである。例えば、回路を搭載する回路モジュールのサイズ、搭載位置、搭載の向き、配線ならばその長さや経路(パス)、ケーブルがバラ線か同軸線かの配線形態等の情報が構造情報に含まれる。
【0053】
アンテナ情報は、通信・センサ部21に含まれるアンテナ215の特性に関する情報を定義したデータである。例えば、対象無線帯域での入力インピーダンス、アンテナパターン、放射感度等の情報がアンテナ情報に含まれる。本実施の形態では、アンテナ215は指向性アンテナであり、図13に示すように前後方向に感度差のある感度分布を有している。
【0054】
なお通信・センサ部21は、用途、特性、周波数帯等の異なる複数の種類のアンテナ215を含みうる(例えばLTE、5G等)。複数のアンテナが存在する場合、アンテナ情報もアンテナ毎に存在する。
【0055】
回路モジュール配置情報は、デジタル回路を構成するモジュールを移動体2のどの位置に実装するかを定義したデータである。回路モジュール配置情報は、ノイズ対策部品等の構造及び位置を含んでも良い。ノイズ対策部品には、例えば金属のシールド等が含まれる。
【0056】
アンテナ位置情報は、通信・センサ部21に含まれるアンテナ215を移動体2のどの位置に実装するかを定義したデータである。例えば、アンテナモジュールの位置、ノイズフィルタの位置等の情報がアンテナ位置情報に含まれる。複数のアンテナ215が存在する場合、アンテナ位置情報もアンテナ毎に存在する。
【0057】
ノイズ分布推定部103は、入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。ここでの周波数は、後述のアンテナの周波数と同一である。アンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、ノイズ分布推定部103は複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについてノイズ強度分布を計算する。回路が動作することで発生するノイズは回路解析で電流と電圧に分けて計算できる。回路解析と構造情報によりノイズ電流とノイズ電圧を微小区間のノイズ励振源として解析空間にどの程度ノイズ強度が分布するのか推定手法としては、例えば有限要素法、境界要素法、FDTD(Finite-difference time-domain)法、モーメント法等がある。これらの推定手法は公知であるため詳細な説明は省略する。
【0058】
図5Aに、ノイズ強度分布の推定結果の一例を示す。図5Aは、高さZの位置に設定した平面(図4参照)におけるノイズ強度分布の推定結果を示す図である。閉曲線はノイズ強度が等しい地点を結んだものであり、内側から順にノイズ強度がX1(dBm),X2(dBm),X3(dBm)である地点を示している(X1>X2>X3)。
【0059】
なお、ノイズ分布推定部103は、実際には3次元空間におけるノイズ強度分布を推定する。例えば、図4に示すように、高さZの位置に厚みdの薄板状の空間を設定し、この3次元空間を多数の計算格子(図示しない)に分割し、各計算格子におけるノイズ強度分布をそれぞれ計算する。図5Aは、この薄板状の空間におけるノイズ強度分布を平面に投影したものと理解できる。ノイズ分布推定部103は、高さZ+d,Z+2d,...の位置においても同様に厚みdの薄板状の空間を設定し、ノイズ強度分布を計算する。これを適宜繰り返すことで、移動体2をとりまく空間におけるノイズ強度分布をくまなく調べることができる。
【0060】
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナ215が使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。アンテナ感度分布の推定手法は公知であるため詳細な説明は省略する。アンテナ215が複数存在し、それらのアンテナが異なる周波数を使用する場合、アンテナ感度推定部105は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
【0061】
図5Bに、アンテナ感度分布の推定結果の一例を示す。図5Bは、高さZの平面(図4参照)におけるアンテナ感度分布の推定結果を示す図である。破線の閉曲線はアンテナ感度が等しい地点を結んだものであり、内側から順にアンテナ感度がY1(dBm),Y2(dBm),Y3(dBm)である地点を示している(Y1>Y2>Y3)。
【0062】
なお、アンテナ感度推定部105は、実際には3次元空間におけるアンテナ感度分布を推定する。例えば、図4に示すように、高さZの位置に厚みdの薄板状の空間を設定し、この3次元空間を多数の計算格子(図示しない)に分割し、各計算格子におけるアンテナ感度分布をそれぞれ計算する。図5Bは、この薄板状の空間におけるアンテナ感度分布を平面に投影したものと理解できる。アンテナ感度推定部105は、高さZ+d,Z+2d,...の位置においても同様に厚みdの薄板状の空間を設定し、アンテナ感度分布を計算する。これを適宜繰り返すことで、移動体2をとりまく空間におけるアンテナ感度分布をくまなく調べることができる。
【0063】
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なり(スカラー積)を評価指標Dとして評価する。そして、評価指標Dに基づいてアンテナ215の配置を決定する。
【0064】
図5Cは、ある空間におけるノイズ強度分布とアンテナ感度分布との推定結果を重畳した様子を示している。ここで、例えばノイズ強度が一定以上(例えばX3以上)である計算格子と、アンテナ感度が一定以上(例えばY3以上)である計算格子と、が重畳している場合、その重畳領域の数を計算し、これを評価指標Dとすることができる。以上は比較的単純な例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、重畳が生じた計算格子のノイズ強度及びアンテナ感度の強さが大きいほど、評価指標Dが大きくなるような重み付けがなされても良い。
【0065】
以上はノイズ分布をスカラーとして扱い、評価指標Dを算出する例である。なお、電磁波の伝搬はエネルギーの流れとして表現できるので、ベクトル量(ポインティングベクトルと称する)を評価指標Dとしても良い。例えばアンテナを励振源とするポインティングベクトルと、移動体2本体を励振源とするポインティングベクトルと、の積を評価指標Dにとっても良い。この場合、図5Cに示すようなスカラー量の重なりだけでなく、方向の重なりも加味することができるので、更に設計の精度を向上させることができる。このため評価指標Dである分布の重なりはスカラー量であっても良いしベクトル量であってもよい。
【0066】
あるいは、評価指標D及び閾値は次のように設定されても良い。通信モジュール215のアンテナ出力端において推定される、当該アンテナが使用する通信帯域におけるノイズ電力のパワー(以下、出力ノイズチャネルパワーと称する)が大きくなると、通信性能に重大な影響が及ぶ。例えば、無線通信性能の指標であるブロックエラーレート等は、出力ノイズチャネルパワーが所定の量を超えると急激に悪化し、許容できない限度に達する。それで、評価指標Dを出力ノイズチャネルパワー、閾値を上記「所定の量」を下回る任意の値(以下、許容ノイズチャネルパワーと称する)に設定する。すなわち、通信モジュール215固有の許容ノイズチャネルパワーを、ノイズ印可時の出力ノイズチャネルパワーが下回ればよい。これにより、ノイズによる通信性能の低下が許容限度内に収まっているかどうかを検証することができる。
【0067】
なお、出力ノイズチャネルパワーは、アンテナ入力端において推定される、当該アンテナが使用する通信帯域におけるノイズ電力のパワー(以下、入力ノイズチャネルパワーと称する)に換算することも可能である。アンテナは、それぞれ異なるアンテナファクター(効率)を有しており、入力ノイズチャネルパワーにアンテナファクターを乗じることにより出力ノイズパワーが得られる。すなわち、アンテナ入力端に同じノイズチャネルパワーが入力されても、アンテナファクターに応じて、アンテナから出力されるノイズチャネルパワーは異なるということになる。したがって、アンテナファクターが既知であれば、入力ノイズチャネルパワーを評価指標Dとして採用しても良い。また、入力ノイズチャネルパワーは、アンテナに入力される電磁ノイズ強度(以下、受信ノイズ強度と称する)に換算することも可能である。したがって、受信ノイズ強度を評価指標Dとして採用することもできる。
【0068】
このため、評価指標Dとしてはノイズとアンテナパターンのスカラー量、ベクトル量の重なり(空間積分)のほか、ノイズ印可時の出力ノイズチャネルパワーを用いてもよい。
【0069】
評価指標Dが所定の閾値以下である場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容値以下であると判断する。この場合、最適化部107は、現在のアンテナ位置情報を最適化処理の結果として出力する。
【0070】
一方、評価指標Dが所定の閾値を超える場合、最適化部107は、アンテナに対するノイズの影響は許容できないものと判断する。この場合、最適化部107は、アンテナ位置情報(例えばアンテナモジュールの位置、ノイズフィルタの位置の少なくとも一方)を変更することによりアンテナを再配置する。そして再度、ノイズ分布推定部103がノイズ強度分布を推定し、アンテナ感度推定部105がアンテナ感度分布を推定する。その後、最適化部107が再度ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価する。これらの一連の処理は、評価指標Dが所定の閾値以下となるまで繰り返し実行される。
【0071】
最適化部107は、アンテナの再配置すなわちアンテナ位置情報の変更の際、例えば最急降下法、遺伝的アルゴリズム等の公知の手法を採用することができる。
【0072】
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、評価指標Dが所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、評価指標Dの算出及びアンテナの再配置を所定回数連続して試行し、そのうち評価指標Dが最小となった試行におけるアンテナ位置情報を最適化処理の結果として出力しても良い。
【0073】
図15は、本実施の形態にかかる最適化処理により配置されたアンテナ215の一例を示している。この上面図において実線で描かれた閉曲線はアンテナ215の感度が等しい地点を結んだもので、感度分布を示している。この例のようにノイズ発生源である制御部23及び電源部27が機体中央に配置された場合、アンテナ215は低感度側が機体中央を向き、高感度側が機体外側を向くよう配置される。これにより、アンテナ215は機体が発するノイズを受信しにくくなり、ノイズによる通信性能劣化は抑制される。
【0074】
なお、移動体2が複数のアンテナ215を含む場合、最適化部107は、ノイズ強度分布と、複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりを評価指標Dとして評価しても良い。すなわち、アンテナ215の高感度領域がノイズの高強度領域と重ならないだけでなく、他のアンテナ215の高感度領域とも重ならないようにアンテナ215の配置を決定する。これにより、ノイズによる通信性能劣化を抑制しつつ、移動体2の位置や姿勢が変化しても基地局との通信を高性能で維持することができる。
【0075】
図16は、本実施の形態にかかる最適化処理により配置されたアンテナ215の一例を示している。この例のようにアンテナ215が複数存在する場合、複数のアンテナ215は高感度領域が互いに重複しないよう配置され、かつ、いずれのアンテナ215も低感度側がノイズ発生源である機体中央を向くように配置される。なお、この例では2本のアンテナ215を配置しているが、本発明はこれに限定されるものでなく、3本以上のアンテナ215を配置することも可能である。
【0076】
このように、実施の形態2において、最適化部107は、ノイズ強度分布と1又は複数のアンテナ215のアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の閾値以下又は最小となるようにアンテナ位置情報のパラメータを調整する。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、最適化部107は複数のアンテナが使用する周波数それぞれについて最適化処理を実行する。
【0077】
図6は、実施の形態2におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
【0078】
S101:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
【0079】
S102:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S101で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
【0080】
S103:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナ215が使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。複数のアンテナ215が存在し、それらが同じ周波数帯を使用する場合には、それらのアンテナ215それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
【0081】
S104:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、ステップS103でアンテナ感度推定部105が推定した1又は複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
【0082】
S105:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS106に遷移する。
【0083】
S106:アンテナ位置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報を変更することによりアンテナを再配置する。S102に遷移する。
【0084】
実施の形態2によれば、アンテナ配置決定システム1は、所与の設計情報に基づいてノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の基準を満たす又は最小となるようなアンテナ位置を出力する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
【0085】
<実施の形態3>
実施の形態2では、最適化部107は、評価指標Dが所定の基準を満たす又は最小となるようなアンテナ位置を出力した。すなわち、通信・センサ部21に対するノイズの影響を抑制すべく、アンテナの位置を移動させた。
【0086】
これに対し実施の形態3では、最適化部107は、回路モジュールの位置を移動させることにより、通信・センサ部21へのノイズの影響を抑制する。なお、本実施の形態における回路モジュール配置情報には、ノイズ源となるモジュール(典型的にはコントローラ231、DCDCコンバータ273、コントローラ231及びDCDCコンバータ273からモータ253への経路等)の位置のほか、ノイズ対策部品等の構造及び位置も含んで良い。ノイズ対策部品には、例えば金属のシールド等が含まれる。
【0087】
実施の形態3におけるアンテナ配置決定システム1のハードウェア構成及び機能構成は実施の形態2と同様である。以下、最適化部107の動作を中心に、実施の形態3特有の処理について説明する。
【0088】
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、アンテナ感度推定部105が推定したアンテナ感度分布と、の重なりを評価する。例えば、ノイズ強度がX3以上である格子と、アンテナ感度がY3以上である格子と、が重畳している場合、その重畳領域の数を計算し、これを評価指標とする。
【0089】
評価指標Dが所定の閾値以下である場合、最適化部107は、アンテナ215に対するノイズの影響は許容値以下であると判断する。この場合、最適化部107は、現在の回路モジュール配置情報を最適化処理の結果として出力する。
【0090】
一方、評価指標Dが所定の閾値を超える場合、最適化部107は、アンテナ215に対するノイズの影響は許容できないものと判断する。この場合、最適化部107は、回路モジュール配置情報(例えばノイズ源となるモジュールの位置、ノイズ対策部品の少なくとも一方)を変更することにより回路モジュールを再配置する。そして再度、ノイズ分布推定部103がノイズ強度分布を推定し、アンテナ感度推定部105がアンテナ感度分布を推定する。その後、最適化部107が再度ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価する。これらの一連の処理は、評価指標Dが所定の閾値以下となるまで繰り返し実行される。
【0091】
最適化部107は、回路モジュールの再配置の際、例えば最急降下法、遺伝的アルゴリズム等の公知の手法を採用することができる。
【0092】
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、評価指標Dが所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、評価指標Dの算出及び回路モジュールの再配置を所定回数連続して試行し、そのうち評価指標Dが最小となった試行における回路モジュール配置情報を最適化処理の結果として出力しても良い。
【0093】
なお、移動体2が複数のアンテナ215を含む場合、最適化部107は、ノイズ強度分布と、複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりを評価指標Dとして評価しても良い。
【0094】
このように、実施の形態3において、最適化部107は、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の閾値以下又は最小となるように回路モジュール配置情報のパラメータを調整する。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、最適化部107は複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについて最適化処理を実行する。
【0095】
図7は、実施の形態3におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
【0096】
S201:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
【0097】
S202:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S201で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
【0098】
S203:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。複数のアンテナ215が存在し、それらが同じ周波数帯を使用する場合には、それらのアンテナ215それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
【0099】
S204:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、ステップS203でアンテナ感度推定部105が推定した1又は複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
【0100】
S205:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS206に遷移する。
【0101】
S206:回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、回路モジュール配置情報を変更することにより回路モジュールを再配置する。S202に遷移する。
【0102】
実施の形態2によれば、アンテナ配置決定システム1は、所与の設計情報に基づいてノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なりを評価し、この評価指標が所定の基準を満たす又は最小となるような回路モジュール配置を出力する。これにより、移動体2を設計する際に、最適な回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
【0103】
<実施の形態4>
実施の形態2又は3では、通信感度特性の観点から、アンテナ215又は回路モジュールの配置を最適化した。ところで、特に移動体2がドローン等の飛行体である場合、アンテナ215又は回路モジュールの配置を決定するにあたっては、空力特性及び重心特性の観点でも所定の基準を満たすことが望ましい。このため、実施の形態4では、通信感度特性計算に加え、空力特性(揚抗比)計算及び重心計算を実施し、アンテナ215又は回路モジュールの配置を決定する。
【0104】
図8は、実施の形態4にかかるアンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107、空力特性計算部109、重心特性計算部111を有する。
【0105】
設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105の動作については、実施の形態1及び2と同様であるため説明を省略する。
【0106】
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力を計算する。揚力及び抗力は、特に機体の進行方向と、アンテナ215の位置及び向きと、の関係に影響されうる。なお揚力及び抗力の計算手法は公知であるため詳細な説明は省略する。空力特性計算部109は、揚力及び抗力の計算結果として、評価指標Eを出力する。
【0107】
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスを計算する。重心バランスは、特に機体に設置されるアンテナ215の位置及び向きに影響されうる。なお重心バランスの計算手法は公知であるため(例えば特表2018-507814を参照)詳細な説明は省略する。重心特性計算部111は、重心バランスの計算結果として、評価指標Fを出力する。
【0108】
最適化部107は、実施の形態1及び2において示した手法により、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標Dを計算する。
【0109】
また、最適化部107は、揚力及び抗力の評価指標E、重心バランスの評価指標F、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標Dが、それぞれ所定の基準を満足しているか否かを順に判定する。すべての評価指標が基準を満たしている場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化結果として出力する。一方、少なくともいずれかの評価指標が基準を満たしていない場合、最適化部107は、アンテナ配置又は回路モジュール配置を変更し、再度、すべての評価指標の計算を行う。アンテナ配置の変更、及び回路モジュール配置の変更については実施の形態1及び2で述べたため説明を省略する。最適化部107は、すべての評価指標が基準を満たすまで、これらの一連の処理を繰り返し実行する。
【0110】
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、各評価指標が所定の基準を満足しているか否かの判定をシリアルに実行し、すべての評価指標が所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、3つの目的関数すなわち多目的関数の最適化問題としてアンテナ配置又は回路モジュール配置を決定する手法(パレート分析)を用いてもよい。なお多目的関数の最適化問題の解法は公知であるため(例えば小木曽 望、モーフィング翼における最適設計法の活用、日本航空宇宙学会誌 第64巻 第6号 第180-185頁、2016年6月を参照)詳細な説明は省略する。
【0111】
図9は、実施の形態4におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
【0112】
S301:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
【0113】
S302:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S301で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
【0114】
S303:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。複数のアンテナ215が存在し、それらが同じ周波数帯を使用する場合には、それらのアンテナ215それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
【0115】
S304:空力特性計算
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力の評価指標Eを計算する。
【0116】
S305:評価指標が許容値以下か?
評価指標Eが許容値以下である場合、S306に遷移する。それ以外の場合はS310に遷移する。
【0117】
S306:重心特性計算
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスの評価指標Fを計算する。
【0118】
S307:評価指標が許容値以下か?
評価指標Fが許容値以下である場合、S308に遷移する。それ以外の場合はS310に遷移する。
【0119】
S308:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、ステップS303でアンテナ感度推定部105が推定した1又は複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
【0120】
S309:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS310に遷移する。
【0121】
S310:アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報を変更することにより、アンテナ又は回路モジュールを再配置する。S302に遷移する。
【0122】
実施の形態4によれば、アンテナ配置決定システム1は、通信感度特性計算に加え、空力特性(揚抗比)計算及び重心計算を実施し、アンテナ215又は回路モジュールの配置を決定する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置又は回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
【0123】
<実施の形態5>
実施の形態5では、実施の形態1乃至3のいずれかの手法によりアンテナ配置及び回路モジュール配置を決定した後、通信局や衛星等からの電波(平面波)を確実に受信できることの確認を実施する。
【0124】
図10は、実施の形態5にかかるアンテナ配置決定システム1の機能構成を説明するブロック図である。アンテナ配置決定システム1は、設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、最適化部107、受信感度試験部113を有する。空力特性計算部109、重心特性計算部111を有していても良い。
【0125】
設計情報入力部101、ノイズ分布推定部103、アンテナ感度推定部105、空力特性計算部109、重心特性計算部111の動作については、実施の形態1、2又は3と同様であるため説明を省略する。
【0126】
受信感度試験部113は、通信局や衛星等からの電波を模した平面波を模擬的に生成し、入力された設計情報に基づいて、電波受信感度を計算する。受信感度の計算方法については公知であるため説明を省略する。受信感度試験部113は、受信感度の計算結果として、評価指標Gを出力する。
【0127】
また、最適化部107は、(空力特性計算部109が存在するならば)揚力及び抗力の評価指標E、(重心特性計算部111が存在するならば)重心バランスの評価指標F、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりの評価指標D、受信感度の評価指標Gが、それぞれ所定の基準を満足しているか否かを順に判定する。すべての評価指標が基準を満たしている場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化結果として出力する。一方、少なくともいずれかの評価指標が基準を満たしていない場合、最適化部107は、アンテナ配置又は回路モジュール配置を変更し、再度、すべての評価指標の計算を行う。アンテナ配置の変更、及び回路モジュール配置の変更については実施の形態1及び2で述べたため説明を省略する。最適化部107は、すべての評価指標が基準を満たすまで、これらの一連の処理を繰り返し実行する。
【0128】
なお上述の実施の形態において、最適化部107は、各評価指標が所定の基準を満足しているか否かの判定をシリアルに実行し、すべての評価指標が所定の閾値以下となった場合に処理を終了した。しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば最適化部107は、2乃至4つの目的関数すなわち多目的関数の最適化問題としてアンテナ配置又は回路モジュール配置を決定する手法(パレート分析)を用いてもよい。
【0129】
図11は、実施の形態5におけるアンテナ配置決定システム1の動作例を示すフローチャートである。なおアンテナ215が複数存在し、それらのアンテナ215が異なる周波数を使用する場合、複数のアンテナ215が使用する周波数それぞれについて以下の一連の処理が実行される。
【0130】
S401:設計情報の入力
設計情報入力部101は、移動体2の設計情報の入力を受け付ける。
【0131】
S402:ノイズ強度分布の推定
ノイズ分布推定部103は、S401で入力された設計情報に基づいて、デジタル回路により発生する所定の周波数におけるノイズ強度分布(電磁界分布)を計算する。
【0132】
S403:アンテナ感度分布の推定
アンテナ感度推定部105は、入力された設計情報に基づいて、アンテナが使用する周波数におけるアンテナ感度分布を計算する。複数のアンテナ215が存在し、それらが同じ周波数帯を使用する場合には、それらのアンテナ215それぞれについてアンテナ感度分布を計算する。
【0133】
S404:空力特性計算
空力特性計算部109は、入力された設計情報に基づいて、移動体2の機体に発生する揚力及び抗力の評価指標Eを計算する。
【0134】
S405:評価指標が許容値以下か?
評価指標Eが許容値以下である場合、S406に遷移する。それ以外の場合はS412に遷移する。
【0135】
S406:重心特性計算
重心特性計算部111は、入力された設計情報に基づいて、機体の重心バランスの評価指標Fを計算する。
【0136】
S407:評価指標が許容値以下か?
評価指標Fが許容値以下である場合、S408に遷移する。それ以外の場合はS412に遷移する。
【0137】
S408:ノイズ強度分布とアンテナ感度分布との重なりを評価
最適化部107は、ノイズ分布推定部103が推定したノイズ強度分布と、ステップS403でアンテナ感度推定部105が推定した1又は複数のアンテナ215のアンテナ感度分布と、の重なりの評価指標Dを計算する。
【0138】
S409:評価指標が許容値以下か?
評価指標Dが許容値以下である場合、S410に遷移する。それ以外の場合はS412に遷移する。
【0139】
S410:受信感度計算
受信感度試験部113は、通信局や衛星等からの電波を模した平面波を模擬的に生成し、入力された設計情報に基づいて、電波受信感度の評価指標Gを出力する。
【0140】
S411:評価指標が許容値以下か?
評価指標Gが許容値以下である場合、最適化部107は、現在の設計情報を最適化処理の結果として出力し、処理を終了する。それ以外の場合はS412に遷移する。
【0141】
S412:アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報の変更
最適化部107は、アンテナ位置情報又は回路モジュール配置情報を変更することにより、アンテナ215又は回路モジュールを再配置する。S402に遷移する。
【0142】
実施の形態5によれば、アンテナ配置決定システム1は、通信感度特性計算に加え、受信感度の試験を実施し、アンテナ215又は回路モジュールの配置を決定する。これにより、移動体2を設計する際に、最適なアンテナ配置又は回路モジュール配置を高精度かつ簡便に決定することができる。
【0143】
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では電子機器として主に移動体2に言及したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば固定設置され又は自ら移動するための構成を有しない情報処理装置や通信機器等に適用することも可能である。また、上述の実施の形態では移動体2として主にドローンを想定したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば車両、船舶、ロボット等の自ら移動することが可能なものは移動体2に含まれる。
【0144】
また、実施の形態4及び5においては、空力特性、重心特性、ノイズ強度分布とアンテナ感度分布の重なり、受信感度を順に評価したが、この評価順は任意に入れ替えても差し支えない。
【0145】
また、上述の実施の形態で説明した情報処理は、主にハードウェアによって実行されても良く、任意の処理をCPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0146】
1 アンテナ配置決定システム
11 プロセッサ
13 メモリ
15 入力部
17 出力部
101 設計情報入力部
103 ノイズ分布推定部
105 アンテナ感度推定部
107 最適化部
109 空力特性計算部
111 重心特性計算部
113 受信感度試験部
21 通信・センサ部
211 位置センサ
213 通信モジュール
215 アンテナ
2151 基板
2152 アンテナ本体(アンテナエレメント)
2153 リフレクタ
217 6軸センサ
219 イメージセンサ
23 制御部
231 コントローラ
25 駆動部
251 ESC
253 モータ
255 プロペラ
27 電源部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
図15
図16
図17
図18