(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076935
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】飛行機
(51)【国際特許分類】
B64C 27/28 20060101AFI20240530BHJP
B64C 11/48 20060101ALI20240530BHJP
B64C 27/82 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B64C27/28
B64C11/48
B64C27/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188788
(22)【出願日】2022-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
(57)【要約】
【課題】機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできるチルトロータ又はチルトウィングの機構を備えた飛行機を提供することを課題とする。
【解決手段】飛行機1は、本体2と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼3と、左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在であり、且つ、左右の翼3にそれぞれ設けられるプロペラ機構4と、本体2に設けられると共に軸方向に延びるダクト部6bを通じて本体2の後側に空気を噴き出す噴出機構6とを備えており、噴出機構6に前記空気の噴出方向8を偏向する偏向機構7が設けられていることを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼と、
左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在であり、且つ、前記翼の左右にそれぞれ設けられるプロペラ機構と、
前記本体に設けられると共に前記本体の後側に空気を噴き出す噴出機構とを備えており、
前記噴出機構に前記空気の噴出方向を偏向する偏向機構が設けられている、飛行機。
【請求項2】
前記噴出機構が、前記本体の軸方向に延びるダクト部を備えており
前記ダクト部を通じて前記空気が後側に噴出されている、請求項1記載の飛行機。
【請求項3】
前記偏向機構に傾動自在な板状のパドル部が設けられており、
前記パドル部を傾動し、前記パドル部の板面に沿う方向に空気を案内することで、前記空気の噴出方向を偏向する、請求項2記載の飛行機。
【請求項4】
前記ダクト部の内部に前記パドル部が設けられており、
前記ダクト部が後方の噴出口に加えて、斜め上下後方及び/又は斜め左右後方の噴出口を有しており、
前記パドル部がそれらの噴出口に前記空気の噴出方向を偏向するものである、請求項3記載の飛行機。
【請求項5】
前記噴出機構が、前記本体の後端に設けられる第2プロペラ機構であり、
前記偏向機構が、前記第2プロペラ機構を前記左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在にするものである、請求項1記載の飛行機。
【請求項6】
前記偏向機構が、前記本体に対し、前記第2プロペラ機構を左側又は右側に傾動自在にすることにより、前記噴出方向をそれぞれ右側又は左側に偏向させるものである、請求項5記載の飛行機。
【請求項7】
前記第2プロペラ機構が二重反転プロペラである、請求項5又は6記載の飛行機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラ機構を用いた飛行機に関する。さらには詳しくは、プロペラ機構の回転軸を傾動することができる飛行機に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直(短距離)離着陸のための手法として、例えば、チルトウィングと呼ばれるタイプが知られている。チルトウィングは、主翼をプロペラ機構ごと機体に対して傾ける(チルトする)ものである。
【0003】
特許文献1には、チルトウィングタイプの飛行機、特許文献2にはチルトウィングタイプのドローンが開示されている。
特許文献3には、チルトウィングタイプで、且つ、本体の四方から4つの上向きのプロペラを設けた飛行機が開示されている。このものは、垂直離着陸時にはプロペラ機構ごと翼を立て、水平飛行時には翼を寝かせる。四方に設けたプロペラは、水平飛行時には、空気抵抗を減少させるため、折り畳まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-254264号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第2571762号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第105173075号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホバリングの際に、回転翼を用いて、機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールするのに、サイクリック機構が用いられることが多い。しかしチルトロータ機構又はチルトウィングの機構を備えた垂直離着陸する飛行機に、さらにサイクリック機構を設けると、機体の構造が複雑になる。
【0006】
そこで本発明は、機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできるチルトロータ又はチルトウィングの機構を備えた飛行機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の飛行機は、本体と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼と、左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在であり、且つ、前記翼の左右にそれぞれ設けられるプロペラ機構と、前記本体に設けられると共に前記本体の後側に空気を噴き出す噴出機構とを備えており、前記噴出機構に前記空気の噴出方向を偏向する偏向機構が設けられていることを特徴としている。
【0008】
(2)このような飛行機は、前記噴出機構が、前記本体の軸方向に延びるダクト部を備えており、前記ダクト部を通じて前記空気が後側に噴出されているのが好ましい。
【0009】
(3)また前記偏向機構に傾動自在な板状のパドル部が設けられており、前記パドル部を傾動し、前記パドル部の板面に沿う方向に空気を案内することで、前記空気の噴出方向を偏向するのが好ましい。
【0010】
(4)また前記ダクト部の内部に前記パドル部が設けられており、前記ダクト部が後方の噴出口に加えて、斜め上下後方及び/又は斜め左右後方の噴出口を有しており、前記パドル部がそれらの噴出口に前記空気の噴出方向を偏向するものであるのが好ましい。
【0011】
(5)また前記噴出機構が、前記本体の後端に設けられる第2プロペラ機構であり、前記偏向機構が、前記第2プロペラ機構を前記左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在にするものであるのが好ましい。
【0012】
(6)また前記偏向機構が、前記本体に対し、前記第2プロペラ機構を左側又は右側に傾動自在にすることにより、前記噴出方向をそれぞれ右側又は左側に偏向させるものが好ましい。
【0013】
(7)また前記第2プロペラ機構が二重反転プロペラであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飛行機は、簡易な構成で機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の飛行機の一実施形態を示す概略斜視図である。
【
図2】飛行機の水平飛行・垂直離着陸又はホバリング時の様子を示す概略図である。
【
図3】水平飛行時の飛行機の内部の構成を示す概略平面図である。
【
図4】垂直離着陸又はホバリング時の飛行機の概略正面図である。
【
図6】飛行機のさらに他の実施形態を示す概略図である。
【
図7】飛行機のさらに他の実施形態を示す概略図である。
【
図8】
図8aは偏向機構の他の実施形態を示す概略図、
図8bは偏向機構のさらに他の実施形態を示す概略図である。
【
図9】飛行機のさらに他の実施形態を示す概略平面図である。
【
図10】
図10aは
図9の飛行機の垂直離着陸又はホバリング時の翼及びプロペラ機構を側方から見た概略図、
図10bは
図10aの翼及びプロペラ機構から上方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.概略説明]
<第1実施形態>
(飛行機1)
図1を用いて本発明の飛行機の概略を説明する。図に示している飛行機1は、大まかには、本体2と、その本体に左右一対で設けられる翼3と、翼3の左右にそれぞれ設けられるプロペラ機構4、4と、本体2に設けられると共に、本体2の後側に空気を噴き出す噴出機構6とを備えている。そして噴出機構6には空気の噴出方向を偏向する偏向機構7(
図2参照)が設けられている。
本実施形態では、本体2の後端には水平尾翼5aが左右に延びている。水平尾翼の両端には垂直尾翼5bが設けられている。
【0017】
以後の説明において、本体2の延びている方向を前後方向(長手方向の軸が延びている方向)とし、翼3の延びている方向を左右方向とし、垂直尾翼5bの延びている方向を上下方向とする。そして本体2の翼3のある側が前方で、翼3のうち図の手前側が左方で、垂直尾翼の符号5bが指している先端側が上方である。なお、それらの前後・左右・上下は、図中に矢印で示している。
【0018】
(水平飛行:S1)
翼3は、プロペラ機構4と共に、左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動又は回動自在である。本実施形態では、翼3はシャフト9c(
図3参照)周りに回動自在である。図は飛行機1の水平飛行時の翼3の状態を模式的に示している。水平飛行時には、翼3をその面が本体2の長手方向の軸にほぼ平行になるようにしている。飛行機1は、翼3によって生み出される揚力を利用し、高度を保つ。本実施系形態では、噴出機構6は後方に空気を噴出して、水平飛行時の推力を補っている(
図2のS1参照)。なお符号8は噴出機構6により噴出される空気の流れを示している。
【0019】
(垂直離着陸又はホバリング:S2)
一方で、
図2のS2に示すように、垂直離着陸又はホバリングの際には、飛行機1は、翼3を立てた状態にして、プロペラ機構4により空気を下方へ押し出す。飛行機1は空気を下方に押し出す力の反作用で浮力を得る。本実施形態では、噴出機構6の偏向機構7により噴出空気の方向を偏向して、機体をピッチ方向及びヨー方向にコントロールしている。図では空気を斜め上方(符号8参照)に噴出している。
【0020】
(翼3を斜めにした状態:S1-S2)
離陸後の加速時や、着陸前の減速時に翼3を前後方向の軸に対して斜めに傾けてもよい(S1とS2の間の状態)。
【0021】
[2.各構成]
(本体2)
次に、
図3を用いて各構成を説明する。本体2には、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局や管制から遠隔操縦される無人の飛行機であってもよい。本体2には人の座席が設けられていたり、荷物などを収納するためのスペースが形成されていたりする。なお符号Oは、本体2の前後方向に延びる中心線を指している。
【0022】
(翼3)
翼3は、本体2の内部で、左右の翼を連結している図示しない連結部を備えている。例えば、連結部を介して翼3を回動/傾動する。また図示していないが、翼3には、飛行機1の姿勢を制御するためのエルロン(補助翼)や、主に揚力を増大または減少させるためのフラップなどが適宜設けられている。
【0023】
(プロペラ機構4、プロペラ軸4a、羽根4b)
プロペラ機構4は、プロペラ軸4によって回転する羽根4bを備えている。その羽根4bはプロペラ軸4aに略垂直な方向、すなわちプロペラの回転する回転面の半径方向に延びている。プロペラ機構1は、羽根4bのプロペラの回転面となす羽根角を変更する角度変更機構(図示せず)を備えている。本実施系形態では、サイクリック機構を設けていないので、プロペラ機構4の構造が簡易である。
【0024】
(水平尾翼5a、垂直尾翼5b)
本実施形態では、本体2の後端付近には水平尾翼5aが左右に延びている。水平尾翼の両端には垂直尾翼5bが設けられている。なお水平尾翼5aには昇降舵を、垂直尾翼5bには方向舵をそれぞれ設けてもよい。
【0025】
(噴出機構6)
噴出機構6は本体2の後部に一体的に設けられている。本実施形態では本体2の上方に、軸方向に延びている中心線Oに沿うように設けられている。噴出機構6は、空気を拭きだすファン6aと、拭き出された空気を後方に案内するダクト部6bとを備えている。ファン6aは、エンジン9から駆動力を得て、回転駆動する。
【0026】
図2に戻って、ダクト部6bは、大まかには、本体2の前後方向に延びている。本実施形態では、本体2の翼3の付近から後端付近まで延びている。ダクト部6bの前端付近には空気の取入口6cが形成されている。またダクト部6bは、ファン6aが収納している部位は外向きに拡大されており、膨大部6gを形成している。
【0027】
図4は飛行機1の正面図である。図では翼3を立てた状態を示している。取入口6cの形状は、への字状である。
【0028】
図2に戻って、ダクト部6bの後端には噴出口6dが形成されている。また本実施形態では、ダクト部6bの前端付近の上方には複数の孔が形成されており、第2取入口6eを構成している。第2取入口6eは、パンチングフィルタ、網状の部材などにより構成してもよい。第2取入口6eは、翼3を立てた状態のプロペラ機構4による下方へ押し出される空気の取入口となる。なお第2取入口6eは必ずしも設けなくてもよい。
また噴出口6dと飛行機1の重心(
図2の符号G参照)の距離Lが長いほど、大きなモーメントを発生させるので、飛行機1をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールする効率が高い。
【0029】
(偏向機構7、噴出方向8)
噴出機構6には空気の噴出方8偏向する偏向機構7が設けられている。偏向機構7は空気の噴出方向8を偏向する機構である。本実施形態の偏向機構7は、筒状の噴出部を偏向して噴出方向8を偏向している。
後述するが(
図8参照)、ダクト部6bの噴出口6d付近に傾動自在な板状のパドル部10を設けてもよい。パドル部10を傾動し、パドル部10の板面に沿う方向に空気を案内することで、空気の噴出方向8を偏向する。
【0030】
(エンジン9、エンジン出力軸9a)
エンジン9は、ダクト部6bを間に挟んで左右に、本体2とダクト部6bの間の空間にそれぞれ設けられている。エンジン9からは前方に向けてエンジン出力軸9aが延びている。エンジン9として、例えば、ガソリンエンジン、ガスタービンなどの従来公知のエンジンを用いることができる。
【0031】
(ギアボックス9b、シャフト9c、ファン出力軸9d、ヘベルギア機構9e)
ギアボックス9bは、翼3と連結されている付近の本体2の内部に設けられている。ギアボックス9bには左右のエンジン出力軸9a、9aから回転駆動力が伝達される。ギアボックス9bは、シャフト9c及びファン出力軸9dに回転駆動力を伝達する。
シャフト9cは、左右の翼3、3の内部にそれぞれ設けられている。シャフト9cの回転駆動力は、先端に設けられた伝達機構を介してプロペラ軸4aに伝達される。本実施形態では伝達機構としてヘベルギア機構9eを用いている。
またファン出力軸9dはダクト部6b内に延びている。
【0032】
[3.他の実施形態]
これから説明する実施形態において、前述した第1実施形態と異なる部分のみ説明をし、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0033】
(第2実施形態)
図5は、飛行機1の第2実施形態示す概略図である。なお図では翼3の先端付近及び本体2の後端付近の記載を省略している。図に示す飛行機1aは、1つのエンジン9と2つのファン6aとを備えている。エンジン9は本体2の中心線Oに沿って配置されている。エンジン9及びエンジン出力軸9aはダクト部6b内で隔壁6fに覆われて配置されている。ギアボックス9bからはファン出力軸9d、9dが延びている。ファン出力軸9d、9dは隔壁6fを挟んで左右にダクト部6b内に配置されている。
【0034】
(第2実施形態)
図6は、飛行機1の第2実施形態示す概略図である。なお図では翼3の先端付近の記載を省略している。図に示す飛行機1bは、エンジン9とファン6aをそれぞれ1つ備えている。本実施形態のダクト部6bは、中心線Oに対し片側(図では左方の翼3側)に幅広にした膨大部6gを備えている。膨大部6gは後方に向かうにつれて、次第に中心線Oに向かうようにされている。ファン出力軸9dはギアボックス9bから膨大部6g内に延びている。ファン出力軸9aにファン6aが設けられている。一方で、エンジン出力軸9a及びエンジン9は、中心線Oに対しファン6aとは反対側(図では右方の翼3側)に設けられている。エンジン出力軸9a及びエンジン9は本体2の側壁とダクト部6bとの間に設けられている。
【0035】
(第4実施形態)
図7は、飛行機1の第4実施形態を示す概略図である。なお図では翼3の先端付近の及び本体2の後端付近の記載を省略している。
図7に示す飛行機1cは、2つのエンジン9、9と、2つのファン6a、6aとを備えている。本実施形態のダクト部6bは中心線Oを挟んで左右方向に幅広(膨大部6g)にされている。膨大部6g、6g内にファン6a、6aがそれぞれ設けられている。エンジン9、9は膨大部6a、6gの後方で、ダクト部6bの外側に設けられている、エンジン9、9はダクト部6bを挟んで左右に配置されている。エンジン出力軸9a、9aは膨大部6g、6gを貫通してダクト部6b内に延びており、ギアボックス9bに連結されている。膨大部6g、6g内のエンジン出力軸9a、9aにファン6a、6aがそれぞれ設けられている。第4実施形態ではファン出力軸9dを備えていない。
【0036】
(第5実施形態)
図8aは、飛行機1の第5実施形態を示す概略図である。図では噴出機構6の一部と、偏向機構7を示している。本実施形態では、前述の飛行機1に対して変更機構7が異なる。本実施形態の変更機構7は、噴出方向8を変更するパドル部10を備えている。パドル部10は板状の部材である。パドル部10はダクト部6bの噴出口6d付近に傾動自在に設けられている。パドル部10の基端付近の軸10aを回動軸として先端側を傾動させることで、パドル部10の板面に沿う方向に空気を案内する。これにより空気の噴出方向8を偏向する。図では2枚のパドル部10が記載されているが、3枚以上のパドル部10をダクト部6bの噴出口6d付近に等間隔で配置することで、空気の噴出方向8を上下左右に制御することができる。例えば、パドル部10が4枚であると、向かい合うパドル部10同士を同じ方向に傾動することで、上下左右に噴出方向8を一層確実に制御することができる。
【0037】
(第6実施形態)
図8bは、飛行機1の第6実施形態を示す概略図である。図では噴出機構6の一部と、偏向機構7を示している。本実施形態では、前述の飛行機1と変更機構7が異なる。本実施形態の変更機構7は、ダクト部6bの内部にパドル部11が設けられている。ダクト部6bは後方の噴出口6dに加えて、斜め上後方・斜め下後方及び/又は斜め左後方・斜め右後方に向いている噴出口12を有している。図では左右・後方に向いた2つの噴出口12、12を設けている。パドル部11が傾動することにより、所定の噴出口12に空気の噴出方向8を偏向する。
【0038】
(第7実施形態)
図示していないが、前述の第6実施形態のパドル11で斜め上後方・斜め下後方又は斜め左後方・斜め右後方のうちの一方の方向の噴出方向8を制御し、第1実施形態の偏向機構7の筒状の噴出部若しくは前述の第5実施形態のパドル10により他の方向の噴出方向8を制御するようにしてもよい。
【0039】
(第8実施形態)
図9は、飛行機1の第8実施形態を示す概略図である。
図9に示している飛行機1dは、前述の実施形態のようなダクト部6bを備えていない。飛行機1dは垂直尾翼5bの上端付近に第2プロペラ機構13を備えている。第2プロペラ機構13は傾動中心(符号13a参照)を通る左右方向の軸周りに傾動自在であり、チルトロータと呼ばれる機構に近いものである。また本実施形態では第2プロペラ機構13として二重反転ロータが採用されている。
【0040】
「水平飛行」
図では、水平飛行時の第2プロペラ機構13の状態を示している。水平飛行時には、第2プロペラ機構13は後方に空気を噴出して、水平飛行の推力を補っている。なお符号14は噴出機構6により噴出される空気の流れを示している。
【0041】
「垂直離着陸又はホバリング」
(ピッチ方向のコントロール)
一方で、垂直離着陸又はホバリングの際には、前述した
図2のS2(さらには
図11a参照)に示すように、翼3を立てた状態にして、プロペラ機構4により空気を下方へ押し出す。
図9に戻って、第2プロペラ機構13は、傾動中心13aを軸として、図の右方(符号R参照)に傾動する。
図9では傾動した後、垂直離着陸又はホバリング状態の第2プロペラ機構13を二点鎖線で示している。二点鎖線で示している第2プロペラ機構13の回転数を弱くしたり強くしたり、または、プロペラのピッチ角度を増減させることにより、本体2の機首をそれぞれ上げたり下げたり(ピッチ方向)コントロールすることができる。
ここで、第2プロペラ機構13は、噴出機構6に相当する。また第2プロペラ機構13を軸13a周りに傾動自在にしている機構は、偏向機構7に相当する。
【0042】
(ヨー方向のコントロール)
図10a及び10bは、垂直離着陸又はホバリングの際に、飛行機1dをヨー方向にコントロールする様子を示す概略図である。
図10aは翼3を立てた状態のプロペラ機構4の側面を概略的に示している。翼3の下方にはエルロン15が設けられている。図ではエルロン15は、上方の部分を傾動の中心として、下方の部位を外向(図の右方)に傾動している。プロペラ機構4により下方へ押し出された空気(符号16参照)は、エルロン15により外向き(図の右方)に案内されている。
図10bは左右の翼3、3及び左右のプロペラ機構4、4を上方から見た概略図である。
図10bに示しているように、左右のエルロン15、15は互いに反対向きに傾動している。例えば図の上方のエルロン16は図の右方(翼3の上面側)で、図の下方のエルロン16は図の左方(翼3の下面側)に傾動している。このため空気16、16は互いに反対向きに流れるように案内されている。すなわち飛行機1dは押し出された空気の反力により、矢印17a方向に回動する。
また飛行機1dを反対向き(符号17b参照)に回動したい場合は、エルロン16の傾動の向きを反対向きにして(二点鎖線のエルロン13参照)、押し出される空気が案内される方向を逆にすればよい。
ここで、プロペラ機構4は、噴出機構6に相当する。またエルロン16は偏向機構7に相当する。
【0043】
(変形例)
図11a及び
図11bは、それぞれ飛行機1dの変形例を示す概略平面図及び概略背面図である。図では飛行機1dが垂直離着陸又はホバリングする状態を示している。
図11bに示すように、飛行機1dの第2プロペラ機構13は、前後方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在である。軸13b周りに傾動自在にしている機構は、偏向機構7に相当する。図では傾動した状態の第2プロペラ機構13を二点鎖線で示している。図に示すように、第2プロペラ機構13は、傾動中心13bを軸として、図の矢印(符号18b参照)の方向に傾動している。第2プロペラ機構13を矢印18a又は矢印18bの方向に傾動することで、斜め下方に風を噴出することができる。斜め下方に噴出した空気の左右方向の成分の反力により、飛行機1dは機首をヨー方向(
図11aの符号19a又は19b参照)に振ることができる。
ここで、第2プロペラ機構13は、噴出機構6に相当する。また第2プロペラ機構13を軸13b周りに傾動自在にしている機構は、偏向機構7に相当する。
また前述した第8実施形態で述べたエルロン15の傾動に対応するように、第2プロペラ機構13を矢印18a又は矢印18bに傾動することで、本体2をヨー方向に効率的にコントローすることができる。
また変形例では、第2プロペラ機構13のプロペラ軸4aを上下方向の軸に略平行にした状態であるが、水平飛行状態(
図9参照)と、第2プロペラ機構13のプロペラ軸4aを上下方向に向けた状態との間の状態(
図9の二点鎖線)において、第2プロペラ機構13を矢印18a又は矢印18bの方向に傾動するようにしてもよい。すなわち偏向機構7が、本体2に対し、第2プロペラ機構13を左側又は右側に傾動自在にすることにより、噴出方向をそれぞれ右側又は左側に偏向させるので、機体を効率的にヨー方向にコントロールできる。
【0044】
[4.その他]
(1)上述した実施形態は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
(2)本実施形態において、飛行機1は、垂直離着陸機(VTOL機)または離陸時に短距離を滑走し、着陸時に垂直着陸する短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)として用いられる。翼3を水平に対して斜めに傾けて、斜め前方に前進しながら離陸してもよい。
(3)本実施形態では、プロペラ機構4の羽根4bは三枚であるが、二枚以下または四枚以上でもよい。
(4)プロペラ機構4は、チルトウィングと呼ばれる翼3ごと回動/傾動する機構を主に用いているが、翼3に対してプロペラ機構4を傾動させるチルトロータと呼ばれる機構を用いてもよい。
(5)飛行機1は、人や荷物を運ぶばかりでなく、観測、監視などのために利用するなど、多種の用途に用いることができる。
(6)本実施形態では、噴出機構6を本体2の上方に設けたが、本体2の下方、側方に設けてもよい。
(7)ダクト部6bの吸引口6cは、本体2の前方に開口しているが、下方又は側方に向いていいてもよい。さらにダクト部6bの吸引口6cは、本体2の上方に配置されているが、下方又は側方に配置してもよい。
(8)エンジン9の代わりに電動モータを用いてもよい。電動モータは、バッテリまたは発電機から電線を介して電気が送電される。
(9)電動モータには、インバータを用いてもよい。インバータにより電動モータの回転数を変更することができる。なおインバータは従来公知のものである。
(10)エンジン9の近傍には発電機または/およびバッテリを設けてもよい。エンジン9の駆動により発電機が発電し、発電した電気でファン6aを駆動させてもよい。
(11)発電した電気はバッテリに蓄電してもよい。その蓄電された電力は電動モータで用いてもよい。なお発電機を備えずに、予め充電されたバッテリを搭載してもよい。
(12)第8実施形態及び変形例について、二重反転ロータを用いているが、一方向に回転するロータを1つ用いてもよい。
(13)第8実施形態の変形例において、ヨー方向のコントロールにエルロン15を用いなくてもよい。
(14)第8実施形態の第2プロペラ機構13を駆動させるにエンジン9の回転駆動力を前後方向に延びるシャフト(図示せず)を介して伝達してもよい。さらに電動モータを用いて第2プロペラ機構13を回転駆動してもよい。
(15)第8実施形態の第2プロペラ機構13について、水平飛行時は矢印18a又は矢印18bの方向に傾動しないようにロックする機構を設けてもよい。
(16)第8実施形態の第2プロペラ機構13について、水平飛行時は第2プロペラ機構13を左右のどちらか一方に垂直尾翼5bと略平行になるまで傾動し、水平飛行時の空気抵抗を減らすようにしてもよい。この場合、第2プロペラ機構13は水平飛行時の推進力を補助していない。
【0045】
[5.まとめ]
(1)飛行機1は、本体2と、その本体に左右一対で、且つ、1組以上設けられる翼3と、左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在であり、且つ、左右の翼3にそれぞれ設けられるプロペラ機構4と、本体2に設けられると共に本体2の後側に空気を噴き出す噴出機構6とを備えており、噴出機構6に空気の噴出方向8を偏向する偏向機構7が設けられていることを特徴としている。
このため垂直離着陸又はホバリング時において、偏向機構7を用いて、飛行機1をピッチ方向及び/又はヨー方向にコントロールできる。
【0046】
(2)このような飛行機は、前記噴出機構が、前記本体の軸方向に延びるダクト部を備えており、前記ダクト部を通じて前記空気が後側に噴出されているので、簡易にピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできる。
【0047】
(3)また偏向機構7に傾動自在な板状のパドル部10が設けられており、パドル部10を傾動し、パドル部10の板面に沿う方向に空気を案内することで、前記空気の噴出方向8を偏向するので、簡易な構成で機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできる。
【0048】
(4)またダクト部6bの内部にパドル部11が設けられており、ダクト部6bが後方の噴出口6dに加えて、斜め上下後方及び/又は斜め左右後方の噴出口12を有しており、パドル部11がそれらの噴出口12に前記空気の噴出方向8を偏向するものであるので、簡易な構成で機体をピッチ方向及ぶヨー方向にコントロールできる。
【0049】
(5)また噴出機構6が、本体2の後端に設けられる第2プロペラ機構13であり、偏向機構7が、第2プロペラ機構13を前記左右方向の軸に略平行な軸周りに傾動自在にするもので、機体を簡易にピッチ方向にコントロールできる。
【0050】
(6)また偏向機構7が、本体2に対し、第2プロペラ機構13を左側又は右側に傾動自在にすることにより、噴出方向をそれぞれ右側又は左側に偏向させるので、機体を効率的にヨー方向にコントロールできる。
【0051】
(7)また第2プロペラ機構13が二重反転プロペラであるので、回転による反力が相殺される。
【符号の説明】
【0052】
1 飛行機
1a 飛行機
1b 飛行機
1c 飛行機
1d 飛行機
2 本体
3 翼
4 プロペラ機構
4a プロペラ軸
4b 羽根
5a 水平尾翼
5b 垂直尾翼
6 噴出機構
6a ファン
6b ダクト部
6c 取入口
6d 噴出口
6e 第2取入口
6f 隔壁
6g 膨大部
7 偏向機構
8 噴出方向
9 エンジン
9a エンジン出力軸
9b ギアボックス
9c シャフト
9d ファン出力軸
9e ヘベルギア機構
10 パドル部
10a 軸
11 パドル部
12 噴出口
13 第2プロペラ機構
13a 傾動中心(ピッチ方向)
13b 傾動中心(ヨー方向)
14 噴出方向
15 エルロン
16 噴出方向
17a、17b 傾動方向
18a、18b 傾動方向
19a、19b ヨー方向(機首振り)
G 重心