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特開2024-76958手術支援システム、手術支援ロボット、手術支援システムの制御方法およびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076958
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】手術支援システム、手術支援ロボット、手術支援システムの制御方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240530BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170734
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022188287
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100172362
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼貴
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AB01
4C130AB02
4C130CA01
4C130CA14
4C130CA16
(57)【要約】
【課題】ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することが可能な手術支援システムを提供する。
【解決手段】手術支援システム100は、複数の関節部64と、複数の関節部64の各々に設けられ、駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダE1とを含み、手術器具4を移動させるアーム60と、制御部31と、タッチパネル331と、を備える。制御部31は、エンコーダE1の検出に基づく関節部64の現在の軸値と、ロボットを停止させた時点のエンコーダE1の検出に基づく関節部64の過去の軸値、または、ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、関節部64の現在の軸値と、関節部64の現在の軸値と比較可能な比較値とを、タッチパネル331に表示させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットと、
制御装置と、
第1表示部と、を備え、
前記制御装置は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、手術支援システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記駆動軸の過去の軸値、前記駆動軸の過去の軸値および現在の軸値の差分値、前記指令値、前記指令値および現在の軸値の差分値、および、前記所定の基準値のうち少なくとも1つに基づく値を、前記比較値として、前記第1表示部に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記ロボットのシャットダウンまたは駆動を中断させた第1時点における前記駆動軸の過去の軸値と、前記第1時点より後で前記ロボットを起動または駆動を再開した第2時点における前記駆動軸の現在の軸値と、の差が前記しきい値よりも大きい場合に、前記エラーを通知するとともに、前記第2時点における前記駆動軸の現在の軸値と、前記第1時点における前記駆動軸の過去の軸値、および、前記所定の基準値のうち少なくとも1つに基づく前記比較値とを、前記第1表示部に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1表示部に前記エラーを表示するとともに、前記エラーの解除操作を、前記第1表示部に対する操作により受け付ける、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1表示部に対する操作に基づいて、前記エラーの解除操作を行う解除モードに移行する制御を行う、請求項4に記載の手術支援システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1表示部に対する前記エラーの解除操作の後、前記第1表示部とは別個に設けられた解除ボタンの操作を受け付けて、前記エラーを解除する、請求項4に記載の手術支援システム。
【請求項7】
前記ロボットは、複数のロボットアームを含み、
前記制御装置は、前記複数のロボットアーム毎に、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の過去の軸値、または、前記指令値と、の差が前記しきい値より大きいか否かを判断するとともに、前記複数のロボットアーム毎に、前記エラーを通知する、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項8】
前記手術器具を移動させるための操作を受け付ける操作部と、第2表示部と、を含む、操作者装置を備え、
前記制御装置は、前記エラーを、前記第1表示部および前記第2表示部の両方に表示させるとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記比較値とを、前記第2表示部に表示させずに、前記第1表示部に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、請求項1に記載の手術支援システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、前記エンコーダの回転した数の情報である回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、請求項9に記載の手術支援システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、電力の低下により前記エンコーダの回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、請求項10に記載の手術支援システム。
【請求項12】
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボット本体と、
制御部と、
表示部と、を備え、
前記制御部は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボット本体を停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボット本体を駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、手術支援ロボット。
【請求項13】
前記制御部は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、請求項12に記載の手術支援ロボット。
【請求項14】
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットにおいて、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知し、
前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示する、手術支援システムの制御方法。
【請求項15】
前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、請求項14に記載の手術支援システムの制御方法。
【請求項16】
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含む、ロボットと、
制御装置と、
表示部と、を備え、
前記制御装置は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、ロボットシステム。
【請求項17】
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、請求項16に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術支援システム、手術支援ロボット、手術支援システムの制御方法およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手術支援システムが知られている。たとえば、特許文献1には、複数の駆動軸を含み手術器具を移動させるロボットと、ロボットの駆動を制御する制御部とを備える手術支援システムが開示されている。この手術支援システムでは、制御部は、停止時の駆動部の回動位置と、停止後の再開時の駆動部の回動位置とを比較して、その差が許容差以内であれば、駆動を再開し、差が許容差よりも大きければ、駆動を再開させない制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-513551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手術支援システムでは、制御部は、停止時の駆動部の回動位置と、停止後の再開時の駆動部の回動位置とを比較して、その差が許容差以内であれば、駆動を再開し、差が許容差よりも大きければ、駆動を再開させない制御を行う。このため、停止時の駆動部の回動位置と、停止後の再開時の駆動部の回動位置とに許容差より大きい差がありエラーが発生している場合に、どの程度の差が生じているかを作業者が確認することができないため、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が判断することが困難である。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することが可能な手術支援システム、手術支援ロボットおよび手術支援システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の局面による手術支援システムは、複数の駆動軸と、複数の駆動軸の各々に設けられ、駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットと、制御装置と、第1表示部と、を備え、制御装置は、エンコーダの検出に基づく駆動軸の現在の軸値と、ロボットを停止させた時点のエンコーダの検出に基づく駆動軸の過去の軸値、または、ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、第1表示部に表示させる。
【0007】
本開示の第1の局面による手術支援システムでは、上記のように、制御装置は、エンコーダの検出に基づく駆動軸の駆動量を示す現在の軸値と、ロボットを停止させた時点のエンコーダの検出に基づく駆動軸の過去の軸値、または、ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、第1表示部に表示させる。これにより、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の過去の軸値または指令値との差がしきい値よりも大きくエラーが生じた場合に、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とが第1表示部に表示されるので、駆動軸の過去の軸値または指令値に対して、駆動軸の現在の軸値がどの程度の差があるのかを作業者が容易に確認することができる。その結果、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することができる。
【0008】
本開示の第2の局面による手術支援ロボットは、複数の駆動軸と、複数の駆動軸の各々に設けられ、駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボット本体と、制御部と、表示部と、を備え、制御部は、エンコーダの検出に基づく駆動軸の現在の軸値と、ロボット本体を停止させた時点のエンコーダの検出に基づく駆動軸の過去の軸値、または、ロボット本体を駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示させる。
【0009】
本開示の第2の局面による手術支援ロボットでは、上記のように、制御部は、エンコーダの検出に基づく駆動軸の駆動量を示す現在の軸値と、ロボット本体を停止させた時点のエンコーダの検出に基づく駆動軸の過去の軸値、または、ロボット本体を駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、第1表示部に表示させる。これにより、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の過去の軸値または指令値との差がしきい値よりも大きくエラーが生じた場合に、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とが第1表示部に表示されるので、駆動軸の過去の軸値または指令値に対して、駆動軸の現在の軸値がどの程度の差があるのかを作業者が容易に確認することができる。その結果、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することが可能な手術支援ロボットを提供することができる。
【0010】
本開示の第3の局面による手術支援システムの制御方法は、複数の駆動軸と、複数の駆動軸の各々に設けられ、駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットにおいて、エンコーダの検出に基づく駆動軸の現在の軸値と、ロボットを停止させた時点のエンコーダの検出に基づく駆動軸の過去の軸値、または、ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知し、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示する。
【0011】
本開示の第3の局面による手術支援システムの制御方法では、上記のように、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の駆動量を示す現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示する。これにより、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の過去の軸値または指令値との差がしきい値よりも大きくエラーが生じた場合に、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とが第1表示部に表示されるので、駆動軸の過去の軸値または指令値に対して、駆動軸の現在の軸値がどの程度の差があるのかを作業者が容易に確認することができる。その結果、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することが可能な手術支援システムの制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による手術支援システムの構成を示す図である。
図2】一実施形態による医療用マニピュレータの構成を示す図である。
図3】一実施形態による医療用マニピュレータのロボットアームの構成を示す図である。
図4】一実施形態による医療用マニピュレータの入力装置を示す図である。
図5】一実施形態による手術支援システムの制御的な構成を示すブロック図である。
図6】一実施形態によるタッチパネルのエラー発生を通知する画面の例を示す図である。
図7】一実施形態によるタッチパネルのメンテナンス時のパスワード入力の画面の例を示す図である。
図8】一実施形態によるタッチパネルのメンテナンス時の選択画面の例を示す図である。
図9】一実施形態によるタッチパネルのメンテナンス時のエラーからの復帰を促す画面の例を示す図である。
図10】一実施形態の変形例による手術支援システムの制御部のエラー通知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図9を参照して、本実施形態による手術支援システム100の構成について説明する。手術支援システム100は、患者側装置である医療用マニピュレータ1と、医療用マニピュレータ1を操作するための操作者側装置である遠隔操作装置2とを備えている。医療用マニピュレータ1は医療用台車3を備えており、移動可能に構成されている。遠隔操作装置2は、医療用マニピュレータ1から離間した位置に配置されており、医療用マニピュレータ1は、遠隔操作装置2により遠隔操作されるように構成されている。術者は、医療用マニピュレータ1に所望の動作を行わせるための指令を遠隔操作装置2に入力する。遠隔操作装置2は、入力された指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、受信した指令に基づいて動作する。また、医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。なお、医療用マニピュレータ1は、特許請求の範囲の「手術支援ロボット」の一例である。また、遠隔操作装置2は、特許請求の範囲の「操作者装置」の一例である。また、手術支援システム100は、特許請求の範囲の「ロボットシステム」の一例である。
【0016】
遠隔操作装置2は、たとえば、手術室の中または手術室の外に配置されている。遠隔操作装置2は、操作用マニピュレータアーム21と、操作ペダル22と、タッチパネル23と、モニタ24と、支持アーム25と、支持バー26とを含む。操作用マニピュレータアーム21は、術者が指令を入力するための操作用のハンドルを構成する。操作用マニピュレータアーム21は、手術器具4に対する操作量を受け付ける。モニタ24は、内視鏡6により撮影された画像を表示するスコープ型表示装置である。支持アーム25は、モニタ24の高さを術者の顔の高さに合わせるようにモニタ24を支持する。タッチパネル23は、支持バー26に配置されている。医療用マニピュレータ1は、モニタ24近傍に設けられた図示しないセンサにより術者の頭部を検知することにより、遠隔操作装置2による操作が可能になる。術者は、モニタ24により患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム21および操作ペダル22を操作する。操作用マニピュレータアーム21の操作により指令値が生成され、遠隔操作装置2に入力される。遠隔操作装置2に入力された指令値は、医療用マニピュレータ1に送信され、医療用マニピュレータ1は指令値に基づいて動作する。なお、操作用マニピュレータアーム21は、特許請求の範囲の「操作部」の一例である。また、タッチパネル23は、特許請求の範囲の「第2表示部」の一例である。
【0017】
医療用台車3には、医療用マニピュレータ1の動作を制御する制御部31と、医療用マニピュレータ1の動作を制御するためのプログラムなどが記憶される記憶部32とが設けられている。そして、遠隔操作装置2に入力された指令に基づいて、医療用台車3の制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作を制御する。図5に示すように、制御部31は、アーム制御部31aと、ポジショナ制御部31bとを含んでいる。なお、制御部31は、特許請求の範囲の「制御装置」の一例である。
【0018】
また、医療用台車3には、入力装置33が設けられている。入力装置33は、主に施術前に手術の準備を行うために、ポジショナ40、アームベース50、および、複数のアーム60の移動や姿勢の変更の操作を受け付けるように構成されている。
【0019】
図4に示すように、医療用台車3の入力装置33には、タッチパネル331が設けられており、タッチパネル331の近傍には、ポジショナ40の移動を操作するジョイスティック332が設けられている。タッチパネル331に表示される動作モードをタッチ操作により選択し、ジョイスティック332の操作によりポジショナ40を3次元的に操作できる。また、タッチパネル331の近傍には、エラーを解除するための解除ボタン333が設けられている。なお、タッチパネル331は、特許請求の範囲の「第1表示部」および「表示部」の一例である。
【0020】
図1および図2に示す医療用マニピュレータ1は、手術室内に配置されている。医療用マニピュレータ1は、医療用台車3と、ポジショナ40と、アームベース50と、複数のアーム60とを備えている。アームベース50は、ポジショナ40の先端に取り付けられている。アームベース50は、比較的長い尺形状を有する。また、複数のアーム60は、各々のアーム60の根元部が、アームベース50に取り付けられている。複数のアーム60は、折り畳まれた姿勢(収納姿勢)をとることが可能に構成されている。アームベース50と、複数のアーム60とは、滅菌ドレープにより覆われて使用される。なお、ポジショナ40およびアームベース50は、特許請求の範囲の「ロボット」および「ロボット本体」の一例である。また、アーム60は、特許請求の範囲の「ロボット」、「ロボットアーム」および「ロボット本体」の一例である。
【0021】
ポジショナ40は、たとえば、7軸多関節ロボットにより構成されている。また、ポジショナ40は、医療用台車3上に配置されている。ポジショナ40は、アームベース50を移動させる。具体的には、ポジショナ40は、アームベース50の位置を3次元に移動させるように構成されている。
【0022】
また、ポジショナ40は、ベース部41と、ベース部41に連結された複数のリンク部42とを含む。複数のリンク部42同士は、関節部43により連結されている。なお、関節部43は、特許請求の範囲の「駆動軸」の一例である。
【0023】
図1に示すように、複数のアーム60の各々の先端には、手術器具4が取り付けられている。手術器具4は、たとえば、取り換え可能なインストゥルメント、内視鏡6などを含む。
【0024】
次に、アーム60の構成について詳細に説明する。
【0025】
図3に示すように、アーム60は、アーム部61(ベース部62、リンク部63、関節部64)と、アーム部61の先端に設けられる並進移動機構部70とを含む。アーム60は、アーム60の根元側(アームベース50)に対して先端側を3次元に移動させるように構成されている。アーム60は8自由度を有している。なお、複数のアーム60は、互いに同様の構成を有する。なお、関節部64は、特許請求の範囲の「駆動軸」の一例である。
【0026】
並進移動機構部70は、アーム部61の先端側に設けられるとともに手術器具4が取り付けられている。また、並進移動機構部70は、手術器具4を患者Pに挿入する方向に並進移動させる。また、並進移動機構部70は、手術器具4をアーム部61に対して相対的に並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70には、手術器具4を保持するホルダ71が設けられている。ホルダ71には、サーボモータM2(図5参照)が収容されている。サーボモータM2は、手術器具4に設けられた回転体を回転させるように構成されている。手術器具4の回転体が回転されることにより、鉗子が動作される。
【0027】
アーム部61は、7軸多関節ロボットアームから構成されている。また、アーム部61は、アーム部61をアームベース50に取り付けるためのベース部62と、ベース部62に連結された複数のリンク部63とを含む。複数のリンク部63同士は、関節部64により連結されている。
【0028】
並進移動機構部70は、ホルダ71をY方向に沿って並進移動させることにより、ホルダ71に取り付けられた手術器具4をY方向(シャフト420が延びる方向)に沿って並進移動させるように構成されている。具体的には、並進移動機構部70は、アーム部61の先端に接続される基端側リンク部72と、先端側リンク部73と、基端側リンク部72と先端側リンク部73との間に設けられる連結リンク部74とを含む。また、ホルダ71は、先端側リンク部73に設けられている。
【0029】
そして、並進移動機構部70の連結リンク部74は、基端側リンク部72に対して、先端側リンク部73を、Y方向に沿って相対的に移動させる倍速機構として構成されている。また、基端側リンク部72に対して先端側リンク部73がY方向に沿って相対的に移動されることにより、ホルダ71に取り付けられた手術器具4が、Y方向に沿って並進移動するように構成されている。また、アーム部61の先端は、基端側リンク部72を、Y方向に直交するX方向を軸として回動させるように基端側リンク部72に接続されている。
【0030】
また、図1に示すように、複数のアーム60のうちの一つのアーム60(たとえば、アーム60b)には内視鏡6が取り付けられ、残りのアーム60(たとえば、アーム60a、60cおよび60d)には、内視鏡6以外の手術器具4が取り付けられる。具体的には、手術において、4つのアーム60のうちの1つのアーム60に内視鏡6が取り付けられ、3つのアーム60に内視鏡6以外の手術器具4(鉗子など)が取り付けられる。
【0031】
図3に示すように、手術器具4は、手術支援システム100のアーム60のホルダ71に着脱可能に接続される。具体的には、手術器具4は、アーム60にアダプタ(図示せず)を介して取り外し可能に接続される。アダプタは、アーム60を覆うための滅菌処理されたドレープ(図示せず)をホルダ71との間に挟み込むためのドレープアダプタである。
【0032】
図5に示すように、アーム60には、アーム部61の複数の関節部64に対応するように、複数のサーボモータM1と、エンコーダE1と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE1は、複数の関節部64の各々に設けられている。また、エンコーダE1は、関節部64の駆動量を示す軸値を検出するために設けられている。具体的には、エンコーダE1は、サーボモータM1の回転角を検出するように構成されている。エンコーダE1により検出されたサーボモータM1の回転角に基づいて、関節部64の軸値が取得される。減速機は、サーボモータM1の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0033】
また、図5に示すように、並進移動機構部70には、手術器具4の被駆動ユニットに設けられた回転体を回転させるためのサーボモータM2と、手術器具4を並進移動させるためのサーボモータM3と、エンコーダE2およびエンコーダE3と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE2およびエンコーダE3は、それぞれ、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転角を検出するように構成されている。減速機は、サーボモータM2およびサーボモータM3の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。サーボモータM1、M2およびM3は、アーム制御部31aにより制御される。
【0034】
また、ポジショナ40には、ポジショナ40の複数の関節部43に対応するように、複数のサーボモータM4と、エンコーダE4と、減速機(図示せず)とが設けられている。エンコーダE4は、複数の関節部43の各々に設けられている。また、エンコーダE4は、関節部43の駆動量を示す軸値を検出するために設けられている。具体的には、エンコーダE4は、サーボモータM4の回転角を検出するように構成されている。エンコーダE4により検出されたサーボモータM4の回転角に基づいて、関節部43の軸値が取得される。減速機は、サーボモータM4の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。
【0035】
また、医療用台車3には、医療用台車3の複数の図示しない前輪の各々を駆動するサーボモータM5と、エンコーダE5と、図示しない減速機とブレーキが設けられている。減速機は、サーボモータM5の回転を減速させてトルクを増大させるように構成されている。また、医療用台車3の操作ハンドル34には、ポテンショメータが設けられており、操作ハンドル34のスロットルの捻りに応じてポテンショメータで検出した回転角に基づき、前輪のサーボモータM5は駆動される。また、医療用台車3の図示しない後輪は、双輪形式であり、操作ハンドル34の左右の回動に基づき、後輪は操舵される。サーボモータM4およびM5は、ポジショナ制御部31bにより制御される。
【0036】
ここで、本実施形態では、図6に示すように、制御部31は、シャットダウンからの起動時にエンコーダE1(E4)の検出に基づく関節部64(43)の現在の軸値と、シャットダウン時(過去)に医療用マニピュレータ1を停止させた時点のエンコーダE1(E4)の検出に基づく関節部64(43)の過去の軸値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の現在の軸値と比較可能な比較値とを、タッチパネル331に表示させる。
【0037】
また、制御部31は、医療用マニピュレータ1の動作中断からの動作再開時に、エンコーダE1(E4)の検出に基づく関節部64(43)の現在の軸値と、動作中断時(過去)の指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の現在の軸値と比較可能な比較値とを、タッチパネル331に表示させる。
【0038】
たとえば、図6に示す例のように、タッチパネル331に、アームA1の駆動量(軸値)にエラーが発生していることが通知される。また、タッチパネル331に、アームA1の各関節部64の現在の軸値と、その右の括弧内に比較値が表示される。また、エラーの通知とともに音によりアラートが通知される。タッチパネル331には、アラートを停止させるボタンが表示される。
【0039】
これにより、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の過去の軸値との差がしきい値よりも大きくエラーが生じた場合に、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の現在の軸値と比較可能な比較値とがタッチパネル331に表示されるので、関節部64(43)の過去の軸値に対して、関節部64(43)の現在の軸値がどの程度の差があるのかを作業者が容易に確認することができる。その結果、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することができる。
【0040】
関節部64(43)の現在の軸値とともに、タッチパネル331に表示される比較値は、たとえば、関節部64(43)の過去の軸値、関節部64(43)の過去の軸値および現在の軸値の差分値、過去の軸値に対する指令値、過去の軸値に対する指令値および現在の軸値の差分値、および、所定の基準値である。所定の基準値は、たとえば、限界の軸値、初期位置の軸値などである。
【0041】
つまり、制御部31は、関節部64(43)の過去の軸値、関節部64(43)の過去の軸値および現在の軸値の差分値、過去の軸値に対する指令値、過去の軸値に対する指令値および現在の軸値の差分値、および、所定の基準値のうち少なくとも1つに基づく値を、比較値として、タッチパネル331に表示させる。
【0042】
これにより、比較値として、関節部64(43)の過去の軸値、または、関節部64(43)の過去の軸値および現在の軸値の差分値を表示した場合、関節部64(43)の現在の軸値と関節部64(43)の過去の軸値と容易に比較することができる。また、比較値として、過去の軸値に対する指令値、または、過去の軸値に対する指令値および現在の軸値の差分値を表示した場合、関節部64(43)の現在の軸値と過去の軸値に対する指令値と容易に比較することができる。また、比較値として、所定の基準値を表示した場合、軸値の取り得ることが可能な限界値を表示すれば、現在の軸値が限界値に対してどの程度の値であるかを容易に確認することができる。その結果、エラーからの復帰の可否を作業者がより容易に判断することができる。
【0043】
関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の過去の軸値との差に基づいてエラーを検知する場合は、たとえば、医療用マニピュレータ1のシャットダウン時(過去)と、その後の医療用マニピュレータ1の起動時(現在)との軸値が比較される。また、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の過去の軸値を生成した指令値との差に基づいてエラーを検知する場合は、たとえば、医療用マニピュレータ1の動作中断時(過去)の指令値と、その後の医療用マニピュレータ1の動作再開時(現在)の軸値とが比較される。
【0044】
つまり、制御部31は、医療用マニピュレータ1のシャットダウンさせた第1時点における関節部64(43)の過去の軸値と、第1時点より後で医療用マニピュレータ1を起動した第2時点における関節部64(43)の現在の軸値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、第2時点における関節部64(43)の現在の軸値と、比較値とを、タッチパネル331に表示させる。
【0045】
これにより、医療用マニピュレータ1をシャットダウンしてから、起動するまでに、外力によりロボットが移動した場合に、第2時点における関節部64(43)の現在の軸値と、比較値とが表示されるので、エラーから復帰させて医療用マニピュレータ1を起動または駆動を再開することが可能か否かを作業者が容易に判断することができる。
【0046】
関節部64(43)の現在の軸値と、アーム60を駆動させるための指令値との差に基づいてエラーを検知する場合は、操作用マニピュレータアーム21による術者からの指令の入力に基づいて生成される指令値と、エンコーダE1の検知に基づく関節部64の現在の軸値とが比較される。つまり、リアルタイムにアーム60を駆動させている場合における、操作に基づく指令値と、その指令値に基づいて駆動するアーム60の実際の駆動量(軸値)とが比較される。
【0047】
また、制御部31は、タッチパネル331にエラーを表示するとともに、エラーの解除操作を、タッチパネル331に対する操作により受け付ける。これにより、タッチパネル331に表示された関節部64(43)の現在の軸値と比較値とを確認した後、エラーからの復帰が可能であると作業者が判断したあと、同じ第1表示部に対してエラーを解除するための操作を行うことができる。
【0048】
また、制御部31は、タッチパネル331に対する操作に基づいて、エラーの解除操作を行う解除モードに移行する制御を行う。これにより、作業者はタッチパネル331の表示を確認した後、タッチパネル331から操作を行い、エラーを解除する解除モードにより作業を行うことができる。
【0049】
たとえば、図6に示すように、タッチパネル331において、エラーが通知されている場合に、タッチパネル331の角部331a、331b、331cおよび331dを所定の順番によりタッチ操作することにより、エラーを解除する解除モードに移行する。
【0050】
エラーを解除する解除モードでは、まず、図7に示すように、タッチパネル331にパスワードの入力画面が表示される。この画面において、作業者がパスワードを入力すると、図8に示すように、タッチパネル331にシステムメンテナンスを選択する画面が表示される。なお、作業者の認証は、パスワードの入力に限られず、作業者のIDの入力を行ってもよい。
【0051】
システムメンテナンスを選択する画面では、図8に示すように、たとえば、「タッチ操作検知確認」「ドット抜け確認」「出荷姿勢選択」「エンコーダ異常解除」および「初期化(工場出荷用)」が選択可能である。この場合、駆動量のエラーを復帰させる操作を行うので、「エンコーダ異常解除」が選択される。
【0052】
タッチパネル331のシステムメンテナンスを選択する画面において、「エンコーダ異常解除」が選択されると、図9に示すように、エラーを復帰させることを促す画面が表示される。作業者は、この画面に従って、タッチパネル331の近傍に配置された解除ボタン333(図4参照)を押下することにより、エラーを解除する。
【0053】
つまり、制御部31は、タッチパネル331に対するエラーの解除操作の後、タッチパネル331とは別個に設けられた解除ボタン333の操作を受け付けて、エラーを解除する。これにより、タッチパネル331とは別個に設けられた解除ボタン333によりエラーの解除を操作することができるので、意図せずにタッチパネル331を操作することにより、エラーの解除が行われるのを抑制することができる。
【0054】
また、1つのアーム60についてエラーが解除された場合において、他のアーム60についても駆動量のエラーが発生している場合には、再び、図6に示すエラー通知画面が表示される。
【0055】
つまり、制御部31は、複数のアーム60毎に、関節部64の現在の軸値と、関節部64の過去の軸値、または、過去の軸値に対する指令値と、の差がしきい値より大きいか否かを判断するとともに、複数のアーム60毎に、エラーを通知する。これにより、複数のアーム60について個別にエラーが発生していることを作業者が確認することができるので、複数のアーム60毎にエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することができる。
【0056】
また、制御部31は、エラーを、医療用マニピュレータ1のタッチパネル331および遠隔操作装置2のタッチパネル23の両方に表示させるとともに、関節部64(43)の現在の軸値と、比較値とを、遠隔操作装置2のタッチパネル23に表示させずに、医療用マニピュレータ1のタッチパネル331に表示させる。これにより、ロボットに対して離れて配置されている遠隔操作装置2のタッチパネル23には、エラーの発生のみを表示して、ロボットに対して近い位置に配置されている医療用マニピュレータ1のタッチパネル331にエラーの発生と、関節部64(43)の現在の軸値および比較値との両方を表示するので、ロボットに近い位置において、作業者が関節部64(43)の現在の軸値および比較値を確認しながら、ロボットのエラーからの復帰の可否を判断することができる。
【0057】
また、エラーを解除するボタンは、医療用マニピュレータ1の解除ボタン333のみならず、遠隔操作装置2にも設けられていてもよい。
【0058】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、関節部64(43)の駆動量を示す現在の軸値と、関節部64(43)の現在の軸値と比較可能な比較値とを、タッチパネル331に表示する。これにより、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の過去の軸値または指令値との差がしきい値よりも大きくエラーが生じた場合に、関節部64(43)の現在の軸値と、関節部64(43)の現在の軸値と比較可能な比較値とがタッチパネル331に表示されるので、関節部64(43)の過去の軸値または指令値に対して、関節部64(43)の現在の軸値がどの程度の差があるのかを作業者が容易に確認することができる。その結果、ロボットの駆動量にエラーが発生している場合に、ロボットのエラーからの復帰の可否を作業者が容易に判断することができる。
【0060】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、医療用マニピュレータ1の動作中断からの動作再開時に、エンコーダによる検出に基づく関節部の現在の軸値と、動作中断時(過去)の指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知する例を示したが、これに限られない。動作中断時(過去)の指令値に代えて動作中断時(過去)のエンコーダによる検出に基づく関節部の軸値を使用しても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、アームが4つ設けられている例を示したが、これに限られない。アームの数は、少なくとも1つ以上設けられていれば他の任意の数であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、アームおよびポジショナが7軸多関節ロボットから構成されている例を示したが、これに限られない。たとえば、アームおよびポジショナが7軸多関節ロボット以外の軸構成(例えば、6軸や8軸)の多関節ロボットなどから構成されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、医療用マニピュレータが、医療用台車と、ポジショナと、アームベースと、アームとを備えている例を示したが、これに限らない。たとえば、医療用台車と、ポジショナと、アームベースは必ずしも必要なく、医療用マニピュレータがアームだけで構成されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ロボットとして医療用マニピュレータを備える手術支援システムの例を示したが、これに限らない。ロボットは、手術支援用以外のロボットでもよい。たとえば、ロボットは、産業用、商業用などのロボットでもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、エンコーダによる検出に基づく関節部の現在の軸値と、過去の指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知する例を示したが、これに限られない。制御装置は、駆動軸の現在のエンコーダの検出値と、駆動軸の過去のエンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示させてもよい。これにより、駆動軸の過去のエンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、作業者が、表示された駆動軸の現在の軸値と比較値とを確認することができるので、作業者が復帰作業を容易に行うことができる。
【0067】
この場合、制御装置は、駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、駆動軸の過去のエンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、エンコーダの回転した数の情報である回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示させてもよい。具体的には、制御装置は、駆動軸の現在のエンコーダの検出値と、駆動軸の過去のエンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、電力の低下によりエンコーダの回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示させてもよい。
【0068】
たとえば、制御装置は、図10に示すエラー通知処理のような制御を行ってもよい。
【0069】
制御装置は、図10のステップS1において、駆動軸の現在のエンコーダの検出値を取得する。ステップS2において、制御装置は、駆動軸の過去のエンコーダの検出値を取得する。
【0070】
ステップS3において、制御装置は、駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、駆動軸の過去のエンコーダの検出値との差が1回転以上であるか否かを判断する。検出値の差が1回転以上であれば、ステップS4に進み、検出値の差が1回転未満であれば、エラー通知処理が終了される。ステップS4において、制御装置は、エンコーダのエラーの発生を確認する。具体的には、制御装置は、電力の低下によりエンコーダの回転データがメモリから損失するエラーの発生を確認する。なお、メモリは、エンコーダに設けられ、電力により回転データの記憶を維持している。つまり、電力が低下すると、メモリから回転データが損失する。
【0071】
ステップS5において、制御装置は、エンコーダの回転データがメモリから損失したか否かを判断する。回転データが損失していれば、ステップS6に進み、回転データが損失していなければ、エラー通知処理が終了される。ステップS6において、制御装置は、エラーを通知するとともに、駆動軸の現在の軸値と、駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示させる。
【0072】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0073】
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0074】
(項目1)
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットと、
制御装置と、
第1表示部と、を備え、
前記制御装置は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、手術支援システム。
【0075】
(項目2)
前記制御装置は、前記駆動軸の過去の軸値、前記駆動軸の過去の軸値および現在の軸値の差分値、前記指令値、前記指令値および現在の軸値の差分値、および、前記所定の基準値のうち少なくとも1つに基づく値を、前記比較値として、前記第1表示部に表示させる、項目1に記載の手術支援システム。
【0076】
(項目3)
前記制御装置は、前記ロボットのシャットダウンまたは駆動を中断させた第1時点における前記駆動軸の過去の軸値と、前記第1時点より後で前記ロボットを起動または駆動を再開した第2時点における前記駆動軸の現在の軸値と、の差が前記しきい値よりも大きい場合に、前記エラーを通知するとともに、前記第2時点における前記駆動軸の現在の軸値と、前記第1時点における前記駆動軸の過去の軸値、および、前記所定の基準値のうち少なくとも1つに基づく前記比較値とを、前記第1表示部に表示させる、項目1または2に記載の手術支援システム。
【0077】
(項目4)
前記制御装置は、前記第1表示部に前記エラーを表示するとともに、前記エラーの解除操作を、前記第1表示部に対する操作により受け付ける、項目1~3のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0078】
(項目5)
前記制御装置は、前記第1表示部に対する操作に基づいて、前記エラーの解除操作を行う解除モードに移行する制御を行う、項目4に記載の手術支援システム。
【0079】
(項目6)
前記制御装置は、前記第1表示部に対する前記エラーの解除操作の後、前記第1表示部とは別個に設けられた解除ボタンの操作を受け付けて、前記エラーを解除する、項目4または5に記載の手術支援システム。
【0080】
(項目7)
前記ロボットは、複数のロボットアームを含み、
前記制御装置は、前記複数のロボットアーム毎に、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の過去の軸値、または、前記指令値と、の差が前記しきい値より大きいか否かを判断するとともに、前記複数のロボットアーム毎に、前記エラーを通知する、項目1~6のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0081】
(項目8)
前記手術器具を移動させるための操作を受け付ける操作部と、第2表示部と、を含む、操作者装置を備え、
前記制御装置は、前記エラーを、前記第1表示部および前記第2表示部の両方に表示させるとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記比較値とを、前記第2表示部に表示させずに、前記第1表示部に表示させる、項目1~7のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0082】
(項目9)
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、項目1~8のいずれか1項に記載の手術支援システム。
【0083】
(項目10)
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、前記エンコーダの回転した数の情報である回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、項目9に記載の手術支援システム。
【0084】
(項目11)
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が1回転以上の所定の値以上で、かつ、電力の低下により前記エンコーダの回転データがメモリから失われる不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記第1表示部に表示させる、項目10に記載の手術支援システム。
【0085】
(項目12)
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボット本体と、
制御部と、
表示部と、を備え、
前記制御部は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボット本体を停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボット本体を駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、手術支援ロボット。
【0086】
(項目13)
前記制御部は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、項目12に記載の手術支援ロボット。
【0087】
(項目14)
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含み、手術器具を移動させるロボットにおいて、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知し、
前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、表示部に表示する、手術支援システムの制御方法。
【0088】
(項目15)
前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、項目14に記載の手術支援システムの制御方法。
【0089】
(項目16)
複数の駆動軸と、前記複数の駆動軸の各々に設けられ、前記駆動軸の駆動量を示す軸値を検出するためのエンコーダとを含む、ロボットと、
制御装置と、
表示部と、を備え、
前記制御装置は、前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の現在の軸値と、前記ロボットを停止させた時点の前記エンコーダの検出に基づく前記駆動軸の過去の軸値、または、前記ロボットを駆動させるための指令値と、の差がしきい値よりも大きい場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、ロボットシステム。
【0090】
(項目17)
前記制御装置は、前記駆動軸の現在の前記エンコーダの検出値と、前記駆動軸の過去の前記エンコーダの検出値との差が所定の値以上で、かつ、前記エンコーダに特定の不具合が発生している場合に、エラーを通知するとともに、前記駆動軸の現在の軸値と、前記駆動軸の現在の軸値と比較可能な比較値とを、前記表示部に表示させる、項目16に記載のロボットシステム。
【符号の説明】
【0091】
1 医療用マニピュレータ(手術支援ロボット)
2 遠隔操作装置(操作者装置)
4 手術器具
21 操作用マニピュレータアーム(操作部)
23 タッチパネル(第2表示部)
31 制御部(制御装置)
40 ポジショナ(ロボット、ロボット本体)
43 関節部(駆動軸)
50 アームベース(ロボット、ロボット本体)
60 アーム(ロボット、ロボットアーム、ロボット本体)
64 関節部(駆動軸)
100 手術支援システム(ロボットシステム)
331 タッチパネル(第1表示部、表示部)
333 解除ボタン
E1、E2、E3、E4 エンコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10