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特開2024-76967時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材
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  • 特開-時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材 図1
  • 特開-時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材 図2
  • 特開-時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076967
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/34 20060101AFI20240530BHJP
   G04B 1/18 20060101ALI20240530BHJP
   G04B 31/00 20060101ALI20240530BHJP
   G04B 1/16 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G04B17/34
G04B1/18
G04B31/00 B
G04B1/16
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184043
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】22209691.9
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス、 イバン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、特に弾性保持部材と時計部品とから成るセットのアセンブリを支持要素に取り付ける作業を容易化/簡略化するため、及び部品の耐用期間を通じて平面内で適切な位置に保持することを保証しかつその角度位置を保証するのに十分な強度を確実にするために、高い保持トルクを有する弾性保持部材を提案することにより、前述の欠点の全部又は一部を克服することである。
【解決手段】剛性部分6とそれぞれに貫通孔4が設けられた変形可能部分7とが設けられた本体を含む弾性保持部材1であって、部材は時計部品を支持要素3に取り付けるためのものであり、開口部5を含み、開口部の輪郭は支持要素に当接するように意図された3つの接触ゾーン13を含み、接触ゾーンはそれぞれ各変形可能部分の受け領域8aの内面14に含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性部分(6)とそれぞれに貫通孔(4)が設けられた変形可能部分(7)とが設けられた本体を含む弾性保持部材(1)であって、前記部材(1)は時計部品(2)を支持要素(3)に取り付けるためのものであり、開口部(5)を含み、前記開口部(5)の輪郭は前記支持要素(3)に当接するように意図された3つの接触ゾーン(13)を含み、前記接触ゾーン(13)はそれぞれ各変形可能部分(7)の受け領域(8a)の内面(14)に含まれる、弾性保持部材(1)。
【請求項2】
前記部材(1)の本体は、それが含む前記変形可能部分(7)を除いて剛性である、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項3】
各変形可能部分(7)は、前記部材(1)の本体の内外周壁(9a、9b)間に延在する、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項4】
前記変形可能部分(7)は同一である、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項5】
各変形可能部分(7)は、前記部材(1)の本体に、前記本体でそのすぐ近くに配置された他の変形可能部分(7)のそれぞれから等距離で配置される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項6】
各変形可能部分(7)は、この部分(7)が前記支持要素(3)によって応力を受けたときにその貫通孔(4)内に画定された容積を変化させるように構成される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項7】
各変形可能部分(7)は異なる領域(8a、8b、8c)から成り、前記異なる領域(8a、8b、8c)は、それらが前記支持要素(3)によって応力を受けると直ちに異なる方法で変形するように構成される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項8】
各変形可能部分の貫通孔は、前記部材の本体の前記部分を構成する部分の20%から80%を占める、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項9】
それは前記時計部品(2)との取付点(11)を含む、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項10】
それはヒゲゼンマイなどの前記時計部品(2)をバランスシャフトなどの支持要素(3)に取り付けるためのコレットである、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項11】
それはシリコンから作られた材料又はシリコンをベースとする材料から製造される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項12】
請求項1に記載の保持部材(1)を含む、時計(100)の時計ムーブメント(110)用の弾性保持部材と時計部品とから成るセット(120)。
【請求項13】
それは単一部品である、請求項12に記載のセット(120)。
【請求項14】
12に記載の弾性保持部材と時計部品とから成るセット(120)を含み、前記セット(120)が支持要素(3)に固定される、時計(100)の時計ムーブメント(110)用のアセンブリ(130)。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項14に記載のアセンブリ(130)を含む時計ムーブメント(110)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント(110)を含む時計(100)。
【請求項17】
請求項14に記載の、弾性保持部材と時計部品とから成るセット(120)の支持要素(3)とのアセンブリ(130)を製造する方法であって、
・前記セット(120)の弾性保持部材(1)の開口部(5)に前記支持要素(3)を挿入するステップ(20)であって、前記弾性保持部材(1)の回転軸(A)に対する各変形可能部分(7)の半径方向の移動を引き起こす、前記弾性保持部材(1)の変形可能部分(6)の変形の段階(22)を備えた、前記弾性保持部材(1)の弾性変形のサブステップ(21)を含むステップ(20)と、
・前記保持部材(1)を前記支持要素(3)に取り付けるステップ(23)であって、前記支持要素(3)に対する前記保持部材(1)の半径方向の弾性クランプを行うサブステップ(24)を含むステップ(23)と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、時計部品を取り付けるためのコレットなどの弾性保持部材に関する。この部材は、時計部品の支持要素への取り付けに関与するように構成される。
【背景技術】
【0002】
従来の技術において、時計ムーブメント内でヒゲゼンマイをバランスシャフトに組み付けるのに関与する、弾性クランプによる時計コレットなどの弾性保持部材が知られている。
【0003】
しかしながら、このような弾性保持部材は、これらの部材が弱く制限されたバランスシャフトへの保持トルクを有するため、このようなアセンブリの製造という状況において、複雑で、長時間にわたる、費用のかかる組み立て作業を必要とするという大きな欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、特に弾性保持部材と時計部品とから成るセットのアセンブリを支持要素に取り付ける作業を容易化/簡略化するため、及び部品の耐用期間を通じて平面内で適切な位置に保持することを保証しかつその角度位置を保証するのに十分な強度を確実にするために、高い保持トルクを有する弾性保持部材を提案することにより、前述の欠点の全部又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、剛性部分とそれぞれに貫通孔が設けられた変形可能部分とが設けられた本体を含む弾性保持部材であって、前記部材は時計部品を支持要素に取り付けるためのものであり、開口部を含み、開口部の輪郭は前記支持要素に当接するように意図された3つの接触ゾーンを含み、前記接触ゾーンはそれぞれ各変形可能部分の受け領域の内面に含まれる、弾性保持部材に関する。
【0006】
他の実施形態において、
・前記弾性保持部材の本体は、それが含む変形可能部分を除いて剛性である。
・各変形可能部分は、弾性保持部材の本体の内周壁と外周壁との間に延在する。
・変形可能部分は同一である。
・各変形可能部分は、前記弾性保持部材の本体に、前記本体でそのすぐ近くに配置された他の変形可能部分のそれぞれから等距離で配置される。
・各変形可能部分は、この部分が支持要素によって応力を受けたときにその貫通孔内に画定された容積を変化させるように構成される。
・各変形可能部分は異なる領域から成り、異なる領域は、異なる領域が支持要素によって応力を受けると直ちに異なる方法で変形するように構成される。
・各変形可能部分の貫通孔は、弾性保持部材の本体の前記変形可能部分を構成する部分の20%から80%を占める。
・弾性保持部材は、時計部品との取付点を含む。
・弾性保持部材は、ヒゲゼンマイなどの時計部品をバランスシャフトなどの支持要素に取り付けるためのコレットである。
・弾性保持部材は、シリコンから作られた材料又はシリコンをベースとする材料から製造される。
【0007】
本発明はまた、時計の時計ムーブメント用の弾性保持部材と時計部品とから成るセットであって、前記保持部材を含むセットに関する。
【0008】
有利には、このセットは単一部品である。
【0009】
本発明はまた、弾性保持部材と時計部品とから成る前記セットを含み、前記セットが支持要素に取り付けられる、時計の時計ムーブメント用のアセンブリに関する。
【0010】
本発明はまた、前記少なくとも1つのアセンブリを含む時計ムーブメントに関する。
【0011】
本発明はまた、このような時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0012】
本発明はまた、弾性保持部材と時計部品とから成るセットの、支持要素とのこのようなアセンブリを製造する方法であって、
・前記セットの弾性保持部材の開口部に支持要素を挿入するステップであって、弾性保持部材の回転軸に対する各変形可能部分の半径方向の移動を引き起こす、弾性保持部材の変形可能部分の変形の段階を備えた、前記弾性保持部材の弾性変形のサブステップを含むステップと、
・保持部材を支持要素に取り付けるステップであって、支持要素に対する保持部材の半径方向の弾性クランプを行うサブステップを含むステップと
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の特殊性及び利点は、添付の図面を参照して、例示としての、決して限定するものではない以下の説明から明らかになるであろう。
図1】本発明の一実施形態による、時計部品を支持要素に取り付けるための弾性保持部材の図である。
図2】本発明の一実施形態による、弾性保持部材と支持要素に取り付けられた時計部品とから成るセットを含む少なくとも1つのアセンブリが設けられた時計ムーブメントを含む時計を示す。
図3】弾性保持部材と時計部品から成るセットの支持要素とのこのようなアセンブリの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、時計部品2を支持要素3に取り付けるための弾性保持部材1の実施形態を示す。例として、弾性保持部材1は、ヒゲゼンマイなどの時計部品2をバランスシャフトなどの支持要素3に取り付けるためのコレットであり得る。
【0015】
本実施形態において、この保持部材1は、図2に見られかつ時計100の時計ムーブメント110に配置されるように設計された、弾性保持部材と時計部品とから成るセット120に含まれ得る。このようなアセンブリ120は、いわゆる「壊れやすい」材料、好ましくは微細加工可能な材料から製造される単一部品であり得る。このような材料は、シリコン、石英、コランダム又はセラミックを含むことができる。
【0016】
本発明の状況において、この保持部材1は50μmから150μmの厚さを有する。このような厚さは好ましくは100μm程度である。
【0017】
このセット120の変形例において、弾性保持部材1のみをこのようないわゆる「壊れやすい」材料から製造することができ、時計部品2はその結果、別の材料から製造されることに留意すべきである。
【0018】
このセット120は、例えば弾性クランプによって支持要素3に取り付けられながら、時計ムーブメント110用のアセンブリ130の一部を形成することができる。このアセンブリ130は時計分野での利用が想定されていることに留意すべきである。しかしながら、本発明は、航空機、宝飾品又は自動車などの他の分野でも完全に使用することができる。
【0019】
このような保持部材1は、支持要素3が挿入されるように意図された「中央開口部」とも呼ばれる開口部5を含む。この開口部5は、保持部材1内に配置されるように設計された支持要素3の端部の接続部の体積よりも小さい容積を保持部材1内に画定する。この接続部は、円形の断面を有し、支持要素3の周壁に画定された接触部分を全体的に又は部分的に含むことに留意すべきである。
【0020】
このような部材1はまた、図1に見られる互いに平行な第1の平面P1及び第2の平面P2にそれぞれ含まれる、好ましくは共に平面状の上面及び下面12を含む。
【0021】
この部材1はまた、上面及び下面12を互いに接続する内周壁9a及び外周壁9bを含む。外周壁9bは、保持部材1の輪郭の境界を外面的に定める面を含む。この外周壁9bは、この部材1に本質的に六角形の形状を与える。内周壁9aに関して、これは、この保持部材1の開口部5の輪郭の境界を定める面を含む。以下で分かるように、この内周壁9aは、支持要素3に当接するように意図された接触ゾーン13を含む。保持部材1の回転軸Aに平行な外周壁9b又は内周壁9aの横方向の寸法は、本明細書ではこの部材1の厚さに相当することに留意すべきである。
【0022】
この保持部材1は、「可撓部分」又は「弾性部分」とも呼ばれる3つの変形可能部分7が設けられた本体を含む。各変形可能部分7は、変形した後にその元の形状を取り戻すように構成される。言い換えれば、これらの部分は可逆的に変形可能な部分6である。この部材1の本体は、本体が含む変形可能部分7を除いて剛性、すなわち主に剛性である。言い換えれば、この本体は、変形可能部分7と剛性部分6とを含む。剛性部分6は、圧力又は変形に耐える部分6、すなわち変形不可能な部分を意味すると理解すべきである。保持部材1において、剛性部分6は、本質的に牽引下で作用されるように構成される。この構成において、剛性部分6は、牽引下での圧力又は変形に耐える。
【0023】
したがって、この部材1の本体において、変形可能部分7は剛性部分6によって互いに分離されることが理解されるであろう。また、これらの変形可能部分7はこれらの剛性部分6によって互いに接続されると言うことができる。各変形可能部分7は、前記部材1の本体に、前記本体でそのすぐ近くに又は最も近くに配置された他の変形可能部分7のそれぞれから等距離で配置されることに留意されたい。
【0024】
この構成において、各変形可能部分7は、部材1の本体の内周壁9aと外周壁9bとの間に延在する。このような変形可能部分7は互いに類似していることに留意すべきである。この部材1において、これらの部分7は、部材1の本体の内周壁9aにおいて保持部材1の中心Oの方向に延びる突出部を形成する。
【0025】
各変形可能部分7は、受け領域8aと、2つの接続領域8bと、1つの外側領域8cとを含む。これらの領域8a、8b、8cは共に、この部分7の貫通孔4の周縁の境界を定める。
【0026】
この構成において、受け領域8aは、この変形可能部分7の2つの接続領域8bに接続された状態で、部材1の内周壁9aと貫通孔4の周縁の一部との間に位置する。この受け領域8aには、各変形可能部分7の接触ゾーン13を構成する内面14が設けられる。この内面14は、この部分7に含まれる内周壁9aの一部によって形成される。言い換えれば、この内面14は、この変形可能部分7を形成する突出部の、保持部材1の中心Oの向かい側の端部に含まれる。この構成において、接触ゾーン13は、
・内面14の2つの中空又は凹状の部分の間に配置された丸みを帯びた又は凸状の面、又は
・平面状又は本質的に平面状の面
を有することができる。
【0027】
この接触ゾーン13は、2つの軸受ゾーンが含まれる実質的に中空又は実質的に凹状の部分を含む。これらの2つの軸受ゾーンは、支持要素3の対応する凸状接触部分と協働することができる。このような軸受ゾーンは、保持部材1の厚さの実質的に全体又は一部にわたって延在しながら、この接触ゾーン13の面に画定される/含まれる。また、これらの軸受ゾーンは平坦であり、それぞれが全体的に又は部分的に平面状の面を含む。接触ゾーン13において、2つの軸受ゾーンは、共に鈍角を形成する異なる平面にそれぞれ含まれる。これらの2つの軸受ゾーンは別々であり、互いに間隔を置いて配置される。言い換えれば、接触ゾーン13は、2つの軸受ゾーンを接続するゾーンを含む。この接続ゾーンは、好ましくは丸みを帯びた形状を有する。
【0028】
これらの軸受ゾーンは特に、支持要素3の円筒形状を考慮した場合に平面凸型又は平面円筒型の接触形態で接触部分と協働するように設計される。この構成において、各軸受ゾーンの平面状の面は、支持要素3の対応する凸形状の接触部分と協働する。本明細書で述べておくべきは、各接触部分のこの凸形状は、その向かい側にこの部分が配置される、対応する各軸受ゾーンの平面状の面に対して割り当てられることである。各軸受ゾーンのこの平面状の面は、支持要素3の直径に接する平面を形成することに留意すべきである。言い換えれば、平面状の面は支持要素3の直径に対して垂直であり、したがって半径に対して垂直である。
【0029】
この構成において、保持部材1の各接触ゾーン13に2つの平坦な軸受ゾーンが存在することにより、軸受ゾーンと支持要素3との機械的結合を形成する際にこの保持部材1と支持要素3との間の接触圧力を実現することが可能になり、一方、この保持部材1と支持要素3との組み立て及び/又は取り付けの際にこれらの軸受ゾーン及び支持要素3の対応する接触部分における応力の強度が大幅に低減される。前記応力は、割れ目/裂け目又は亀裂の出現によって保持部材1に損傷を与える恐れがある。
【0030】
この部材1において、各変形可能部分7の内面8にこの接触ゾーン13が存在することにより、保持部材1と支持要素3との機械的結合を形成する際にこの保持部材1と支持要素3との間の接触圧力を実現することが可能になり、一方、この保持部材1と支持要素3との組み立て及び/又は取り付けの際にこの接触ゾーン13及び支持要素3の対応する接触部分における応力の強度が大幅に低減される。前記応力は、割れ目/裂け目又は亀裂の出現によって保持部材1に損傷を与える恐れがある。
【0031】
したがって、これまで見てきたように、これらの変形可能部分7はただ部材1の支持要素3との接触ゾーン13だけを含み、接触ゾーン13はこれらの部分7の内面8の全部又は一部に画定することができる。図1を参照すると、これらの接触ゾーン13は、数が3つであり、時計ムーブメント110における時計部品2、例えばヒゲゼンマイの正確なセンタリングの実現に関与することができる。
【0032】
各変形可能部分7において、外側領域8cは、2つの接続領域8bにも接続された状態で、部材1の外周壁9bと貫通孔4の周縁の一部との間に位置する。これらの2つの接続領域8bは、剛性部分6の端部と外周壁9bの一部と貫通孔の周縁の一部との間に位置する。これらの2つの接続領域はまた、受け領域8aと外側領域8cとを互いに接続することに留意すべきである。
【0033】
部材1において、変形可能部分7は、部材1の厚みで画定される、凹部とも呼ばれる貫通孔4を含む。この貫通孔4は、部材1の上面と下面10の両方に現れる。また、この貫通孔4は、一端が変形可能部分7の上面に現れ、他端がこの部分7の下面10に現れると言うことができる。この孔4は、回転軸A方向に、上面から下面10に向かって、又はその逆方向に延びる。言い換えれば、この孔4は、これらの2つの面10を互いに接続する。この貫通孔4は、空隙容積すなわち材料が空である容積又は材料が存在しない容積を画定する。したがって、この容積は、可変容積又は設定可能な容積に相当することが理解されるであろう。この容積は、この孔4の周壁によって境界を定められた開放チャンバを含む。このような貫通孔4は、変形可能部分7の本体の約20%から80%を占める。好ましくは、この貫通孔4はこの本体の30%を占める。
【0034】
これらの条件下では、各変形可能部分7は、この部分7が支持要素3によって応力を受けたときにこの貫通孔4によって画定された容積を変化させるように構成されることに留意されたい。
【0035】
この部材において、剛性部分6は、部材1の本体の内周壁9aと外周壁9bとの間に延在する。これらの剛性部分6は、好ましくは細長い形状を有する。これは、各剛性部分が接続される2つの変形可能部分7の間で各剛性部分が長手方向に延在するからである。したがって、各剛性部分6は、その2つの反対側の端部のそれぞれで2つの変形可能部分7に直接接続されることが理解されるであろう。また、したがって変形可能部分7と剛性部分6が保持部材1に連続して交互に配置されることに留意されたい。各剛性部分6は、2つの異なる変形可能部分7に接続され、前記変形可能部分7は、部材1の他の剛性部分6に「直接」接続される。剛性部分6は、本明細書では変形不可能又はほぼ変形不可能であり、保持部材1の補強要素の役割を果たすことに留意すべきである。
【0036】
また、各変形可能部分7において、受け領域8a、2つの接続領域8b及び外側領域8cは、貫通孔4の境をなし/貫通孔4を取り囲み/貫通孔4の境界を定める。より正確には、これらの領域8a~8cは、部材1の開口部5への支持要素3の挿入によってそれらが応力を受けると直ちに異なる方法で変形するように構成される。これは、各変形可能部分7について、これらの領域8a~8cのそれぞれが変形係数Crr、Crl、Creを有し、その領域8a、8b、8cが受け領域8aの接触ゾーン13から離れるにつれて変形係数Crr、Crl、Creの値が小さくなるからである。言い換えれば、受け領域8aの平均変形係数Crrとも呼ばれる変形係数Crrは、2つの接続領域8bの係数Crlの値及び外側領域8cの係数Creの値よりも大きい又は高い値を有する。また、2つの接続領域8bの係数Crlは、外側領域8cの係数Creの値よりも高い類似の値又は実質的に類似の値を有する。言い換えれば、これらの領域8a、8b、8cの平均変形係数Crr、Crl、Creの関係は、次の数式に従って定義することができる。
rr>Crl>Cre
【0037】
これらの領域8a、8b、8cの変形は、それぞれの領域の回転軸Aに対する半径方向の移動を引き起こすことに留意すべきである。これらの半径方向の移動の大きさ/強度は、当然ながらこれらの領域8a、8b、8cの平均変形係数Crr、Crl、Creによって決まる。
【0038】
この保持部材1において、これらの剛性部分6及び変形可能部分7は本質的に、この保持部材1に設けられ、この保持部材1の内周壁9aによって画定される開口部5に支持要素3の弾性クランプ式の取り付けを実施することを可能にする。
【0039】
これまで見てきたように、これらの変形可能部分7はただ保持部材1の支持要素3との接触ゾーン13だけを含み、接触ゾーン13はこれらの変形可能部分7の内面14の全部又は一部に画定することができる。各変形可能部分7の接触ゾーン13は、支持要素3の接続部の周壁10、特にこの支持要素3の周壁10に画定される対応する接触領域と協働するように設計される。これに関連して、保持部材1はその結果、時計ムーブメント110における時計部品2、例えばヒゲゼンマイの正確なセンタリングの実現に関与する3つの接触ゾーン13を含む。
【0040】
この構成において、部材1の弾性又は可撓性は、この部材1の接触ゾーン13に対して、より正確にはこれらの接触ゾーン13に力が加えられたときの変形可能部分7の変形の強度に対して定められる。
【0041】
また、この保持部材1において、剛性部分6及び変形可能部分7は、保持部材1が従来の保持部材に比べて同じクランプに対してより多くの弾性エネルギーを蓄えることを可能にする。この大きなエネルギーの蓄積は、貫通孔4及び牽引下で作用する剛性部分6が設けられた保持部材1を形成する材料の体積に特に関係していることに留意すべきである。保持部材1に蓄えられたこのような量の弾性エネルギーはその結果、保持部材と時計部品とから成るセット120のこの支持要素3とのアセンブリ130において、支持要素3に対する保持部材のより大きな保持トルクを得ることを可能にする。また、このような保持部材1の構成は、従来技術の保持部材の弾性エネルギー比よりも6倍から8倍大きい弾性エネルギー比を蓄えることを可能にすることに留意すべきである。
【0042】
保持部材1における剛性部分6及び変形可能部分7の配置は、クランプによる挿入中に各変形可能部分7の変形を可能にし、保持部材1の全体の変形を保持部材1が組み付けられる支持要素3の接続部の幾何学的形状に適応させることを可能にすることに留意すべきである。
【0043】
また、保持部材1の貫通孔4は、剛性部分6と組み合わせた変形可能部分7が部材1の支持要素3への駆動中に最大量の弾性エネルギーを蓄え、ひいてはこの部材1のこの要素3に対する保持を高めることができるように、変形可能部分7の移動を抑制するのを助けるべく、特にこの移動を低減するべく構成されることに留意すべきである。
【0044】
図3を参照すると、本発明はまた、弾性保持部材と時計部品とから成るセット120の支持要素3とのアセンブリ130を製造する方法に関する。この方法は、支持要素3を保持部材1の開口部5に挿入するステップ20を含む。このステップ20中、支持要素の端部は、この支持要素3の接続部をこの開口部5に画定された容積に挿入することに備えて、保持部材1の下面12に画定された開口部5の入口に提供される。このステップ20は、支持要素3の接続部の周壁10の接触部分が変形可能部分7の接触ゾーン13に接触力Fを加えることによって生じる、保持部材1の、特に前記開口部5を含むこの保持部材1の中央ゾーンの弾性変形のサブステップ21を含む。中央ゾーンのこの弾性変形は、実際には、接触ゾーン13を含む各変形可能部分7の様々な領域8a、8b、8cの変形を引き起こす。
【0045】
この方法の変形のサブステップ21は、変形可能部分7に加えられる接触力Fの作用下で変形可能部分7を移動させる段階22を含む。これらの変形可能部分7のこのような移動は、支持要素3と保持部材1とに共通の回転軸Aに対して半径方向Rに行われる。接触力Fは、好ましくは前記接触ゾーン13に対して垂直又は実質的に垂直である。この段階23が行われるとき、剛性部分6は変形しない。
【0046】
この方法は次に、保持部材1を支持要素3に取り付けるステップ23を含む。特に半径方向の弾性クランプによるこのような取り付けるステップ23は、支持要素3に対する保持部材1の半径方向の弾性クランプを行うサブステップ24を含む。したがって、このような応力状態において、保持部材1は、特に弾性クランプによる最適な固定を可能にする大きな保持トルクを保持部材1に与えるのに役立つ、大量の弾性エネルギーを蓄えることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の剛性部分(6)とそれぞれに貫通孔(4)が設けられた複数の変形可能部分(7)とが設けられた本体を含む弾性保持部材(1)であって、前記弾性保持部材(1)は時計部品(2)を支持要素(3)に取り付けるためのものであり、開口部(5)を含み、前記開口部(5)の輪郭は前記支持要素(3)に当接するように意図された3つの接触ゾーン(13)を含み、前記接触ゾーン(13)はそれぞれ各変形可能部分(7)の受け領域(8a)の内面(14)に含まれる、弾性保持部材(1)。
【請求項2】
前記弾性保持部材(1)の本体は、前記本体が含む前記変形可能部分(7)を除いて剛性である、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項3】
各変形可能部分(7)は、前記弾性保持部材(1)の本体の内周壁(9a)と外周壁(9b)との間に延在する、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項4】
前記変形可能部分(7)は同一である、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項5】
各変形可能部分(7)は、前記弾性保持部材(1)の本体に、前記本体で各変形可能部分(7)のすぐ近くに配置された他の変形可能部分(7)のそれぞれから等距離で配置される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項6】
各変形可能部分(7)は、この変形可能部分(7)が前記支持要素(3)によって応力を受けたときに前記変形可能部分の貫通孔(4)内に画定された容積を変化させるように構成される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項7】
各変形可能部分(7)は異なる領域(8a、8b、8c)から成り、前記異なる領域(8a、8b、8c)は、前記異なる領域(8a、8b、8c)が前記支持要素(3)によって応力を受けると直ちに異なる方法で変形するように構成される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項8】
各変形可能部分の貫通孔は、前記弾性保持部材の本体の前記変形可能部分を構成する部分の20%から80%を占める、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項9】
前記弾性保持部材(1)は前記時計部品(2)との取付点(11)を含む、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項10】
前記弾性保持部材(1)は前記時計部品(2)を支持要素(3)に取り付けるためのコレットである、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項11】
前記弾性保持部材(1)はシリコンから作られた材料又はシリコンをベースとする材料から製造される、請求項1に記載の弾性保持部材(1)。
【請求項12】
請求項1に記載の弾性保持部材(1)を含む、時計(100)の時計ムーブメント(110)用の弾性保持部材と時計部品とから成るセット(120)。
【請求項13】
前記セットは単一部品である、請求項12に記載のセット(120)。
【請求項14】
請求項12に記載の弾性保持部材と時計部品とから成るセット(120)を含み、前記セット(120)が支持要素(3)に固定される、時計(100)の時計ムーブメント(110)用のアセンブリ(130)。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項14に記載のアセンブリ(130)を含む時計ムーブメント(110)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント(110)を含む時計(100)。
【請求項17】
請求項14に記載のアセンブリ(130)を製造する方法であって、
・前記セット(120)の弾性保持部材(1)の開口部(5)に前記支持要素(3)を挿入するステップ(20)であって、前記弾性保持部材(1)の回転軸(A)に対する各変形可能部分(7)の半径方向の移動を引き起こす、前記弾性保持部材(1)の変形可能部分()の変形の段階(22)を備えた、前記弾性保持部材(1)の弾性変形のサブステップ(21)を含むステップ(20)と、
・前記弾性保持部材(1)を前記支持要素(3)に取り付けるステップ(23)であって、前記支持要素(3)に対する前記弾性保持部材(1)の半径方向の弾性クランプを行うサブステップ(24)を含むステップ(23)と
を含む方法。
【外国語明細書】