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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076968
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】時計の締結要素
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/32 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G04B17/32
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184144
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】22209690.1
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス、 イバン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に弾性締結要素と時計部品のアセンブリの支持要素との組立体の取付作業を容易化/簡素化するため、及び部品が平面内の適切な位置に保持されることを保証しかつ部品の耐用期間中にその角度位置を保証するのに十分な保持を確実にするために、高い保持トルクを有する弾性締結要素を提供する。
【解決手段】時計部品2を支持要素3上に保持するための弾性締結要素1a、1b、1cであって、開口部5を含み、開口部5の輪郭は開口部5に支持要素3を受け入れてクランプするための少なくとも4つの接触エリア13を含み、接触エリア13はそれぞれ締結要素1a、1b、1cの貫通孔4が設けられた変形可能部分7の内面14に含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計部品(2)を支持要素(3)上に保持するための弾性締結要素(1a、1b、1c)であって、開口部(5)を含み、前記開口部(5)の輪郭は前記開口部(5)に前記支持要素(3)を受け入れてクランプするための少なくとも4つの接触エリア(13)を含み、前記接触エリア(13)はそれぞれ前記締結要素(1a、1b、1c)の貫通孔(4)が設けられた変形可能部分(7)の内面(14)に含まれる、弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項2】
前記変形可能部分(7)は異なる領域(8a、8b、8c)から成り、前記異なる領域(8a、8b、8c)は、それらが前記支持要素(3)による拘束下に置かれると直ちに異なる方法で変形するように構成される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項3】
前記変形可能部分(7)は変形係数(Crr、Crl、Cre)を有する領域(8a、8b、8c)から成り、前記変形係数(Crr、Crl、Cre)の値は、その領域(8a、8b、8c)が前記変形可能部分(7)の内面(14)に含まれる接触エリア(13)から離れるにつれて減少する、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項4】
前記変形可能部分(7)は、共に前記変形可能部分(7)の貫通孔(4)の周縁の境界を定める、受け領域(8a)と、2つの接続領域(8b)と、外側領域(8c)とを含む、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項5】
前記要素(1a、1b、1c)の本体は、前記変形可能部分(7)を除いて、剛性又は本質的に剛性である、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項6】
各変形可能部分(7)は、前記要素(1a、1b、1c)の本体に、前記本体でそのすぐ近くに配置された他の変形可能部分(7)のそれぞれから等距離で配置される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項7】
各変形可能部分(7)は、この部分(7)が前記支持要素(3)による拘束下に置かれたときにその貫通孔(4)内に画定された容積を変化させるように構成される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項8】
各変形可能部分の貫通孔は、前記要素の本体の前記部分を構成する部分の20%から80%を占める、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項9】
それは前記時計部品(2)との取付点(11)を含む、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項10】
それはヒゲゼンマイなどの前記時計部品(2)をバランスシャフトなどの支持要素(3)に締結するためのコレットである、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項11】
それはシリコン又はシリコンベースの材料で作られる、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項12】
請求項1に記載の締結要素(1a、1b、1c)を含む、時計(100)の時計ムーブメント(110)用の弾性締結要素と時計部品のアセンブリ(120)。
【請求項13】
それは一部品で作られる、請求項12に記載のアセンブリ(120)。
【請求項14】
時計(100)の時計ムーブメント(110)用の組立体(130)であって、請求項12に記載の弾性締結要素と時計部品のアセンブリ(120)を含み、前記アセンブリ(120)は支持要素(3)に締結される、組立体(130)。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項14に記載の組立体(130)を含む時計ムーブメント(110)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント(110)を含む時計(100)。
【請求項17】
請求項14に記載の弾性締結要素と時計部品のアセンブリ(120)の支持要素(3)との組み立て(130)を行う方法であって、
・前記アセンブリ(120)の弾性締結要素(1a、1b、1c)の開口部(5)に前記支持要素(3)を挿入するステップ(20)であって、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の回転軸(A)に対する各変形可能部分(7)の半径方向の移動を引き起こす、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の変形可能部分(6)を変形させる段階(22)を備えた、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)を弾性変形させるサブステップ(21)を含むステップ(20)と、
・前記締結要素(1a、1b、1c)を前記支持要素(3)に締結するステップ(23)であって、前記支持要素(3)に対する前記締結要素(1a、1b、1c)の半径方向の弾性クランプを行うサブステップ(24)を含むステップ(23)と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用の弾性締結要素、より詳細には、支持要素の弾性クランプによって、時計部品をスタッフなどの固定された支持要素又は移動可能な支持要素上に保持するための要素に関する。
【背景技術】
【0002】
このような弾性締結要素は、従来技術において知られており、例えば、ヒゲゼンマイの内端を天真に締結するためのコレット、及びヒゲゼンマイの外端をヒゲ持ちに締結するためのクランプの形態であり得る。
【0003】
これらの弾性締結要素は、ヒゲゼンマイを天真及びヒゲ持ちに容易かつ高さ調整可能に取り付けることを可能にするという点で非常に有利である。
【0004】
本発明は、弾性締結要素がより大きなクランプ力を働かせること及び/又はさらに変形することができるようにすることにより、これらの弾性締結要素を更に改良することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に弾性締結要素と時計部品のアセンブリの支持要素との組立体の取付作業を容易化/簡素化するため、及び部品が平面内の適切な位置に保持されることを保証しかつ部品の耐用期間中にその角度位置を保証するのに十分な保持を確実にするために、高い保持トルクを有する弾性締結要素を提案することにより、上記欠点の全部又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このために、本発明は、時計部品を支持要素上に保持するための弾性締結要素であって、開口部を含み、開口部の輪郭は前記開口部に支持要素を受け入れてクランプするための少なくとも4つの接触エリアを含み、前記接触エリアはそれぞれ締結要素の貫通孔が設けられた変形可能部分の内面に含まれる、弾性締結要素に関する。
【0007】
他の実施形態において、
・変形可能部分は、支持要素による拘束下に置かれると直ちに異なる方法で変形するように構成される異なる領域から成る。
・変形可能部分は変形係数を有する領域から成り、変形係数の値はその領域が前記変形可能部分の内面に含まれる接触エリアから離れるにつれて減少する。
・変形可能部分は、共に変形可能部分の貫通孔の周縁の境界を定める、受け領域と、2つの接続領域と、外側領域とから成る。
・前記要素の本体は、変形可能部分を除いて剛性又は本質的に剛性である。
・各変形可能部分は、前記要素の本体に、そのすぐ近くに配置された他の変形可能部分のそれぞれから等距離で配置される。
・各変形可能部分は、この部分が支持要素による拘束下に置かれたときにその貫通孔内に画定された容積を変化させるように構成される。
・各変形可能部分の貫通孔は、要素の本体の前記変形可能部分を構成する部分の20%から80%を占める。
・弾性締結要素は、時計部品との取付点を含む。
・弾性締結要素は、ヒゲゼンマイなどの時計部品をバランスシャフトなどの支持要素に締結するためのコレットである。
・弾性締結要素は、シリコン又はシリコンベースの材料で作られる。
【0008】
本発明はまた、このような締結要素を含む時計の時計ムーブメント用の弾性締結要素と時計部品のアセンブリに関する。
【0009】
有利には、このアセンブリは一部品で作られる。
【0010】
本発明はまた、このような弾性締結要素と時計部品のアセンブリを含み、前記アセンブリは支持要素に締結される、時計の時計ムーブメント用の組立体に関する。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1つのこのような組立体を含む時計ムーブメントに関する。
【0012】
本発明はまた、このような時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0013】
本発明はまた、弾性締結要素と時計部品のアセンブリの支持要素とのこのような組み立てを行う方法であって、
・前記アセンブリの弾性締結要素の開口部に支持要素を挿入するステップであって、弾性締結要素の回転軸に対する各変形可能部分の半径方向の移動を引き起こす、弾性締結要素の変形可能部分を変形させる段階を備えた、弾性締結要素を弾性変形させるサブステップを含むステップと、
・締結要素を支持要素に締結するステップであって、前記支持要素に対する締結要素の半径方向の弾性クランプを行うサブステップを含むステップと
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
他の特定の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、例示的かつ非限定的な例として以下に示す説明から明確に明らかになるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態による、時計部品を支持要素に締結するための弾性締結要素の図であり、前記締結要素は、前記締結要素の開口部に支持要素を受け入れてクランプするための4つの接触エリアを含む。
図2】本発明の第2の実施形態による、時計部品を支持要素に締結するための弾性締結要素の図であり、前記締結要素は、前記締結要素の開口部に支持要素を受け入れてクランプするための5つの接触エリアを含む。
図3】本発明の第3の実施形態による、時計部品を支持要素に締結するための弾性締結要素の図であり、前記締結要素は、前記締結要素の開口部に支持要素を受け入れてクランプするための6つの接触エリアを含む。
図4】本発明の実施形態による、支持要素に締結された弾性締結要素と時計部品のアセンブリを含む少なくとも1つの組立体が設けられた時計ムーブメントを含む時計を示す。
図5】弾性締結要素と時計部品のアセンブリの支持要素とのこのような組み立てを行う方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図3は、時計部品2を支持要素3に締結するための弾性締結要素1a、1b、1cの3つの実施形態を示す。これらの様々な実施形態において、弾性締結要素1a、1b、1cは、前記締結要素1a、1b、1cの開口部5に支持要素を受け入れてクランプするための4つ、5つ又は6つの接触エリア13を含むことができる。一例として、弾性締結要素1a、1b、1cは、ヒゲゼンマイなどの時計部品2をバランスシャフトなどの支持要素3に締結するためのコレットであり得る。
【0016】
これらの実施形態において、この締結要素1a、1b、1cは、図4で見ることができかつ時計100の時計ムーブメント110に配置されるように設計された、弾性締結要素と時計部品のアセンブリ120に含まれ得る。このようなアセンブリ120は、いわゆる「壊れやすい」材料、好ましくは微細加工可能な材料で作られた単一部品であり得る。このような材料は、シリコン、石英、コランダム又はセラミックを含むことができる。
【0017】
本発明の状況において、この締結要素1a、1b、1cは50μmから150μmの厚さを有する。このような厚さは好ましくは100μm程度である。
【0018】
このアセンブリ120の変形例において、弾性締結要素1a、1b、1cのみをこのようないわゆる「壊れやすい」材料で作ることができ、時計部品2はその結果、別の材料で製造されることに留意されたい。
【0019】
このアセンブリ120は、例えば弾性クランプによって支持要素3に締結されることによって、時計ムーブメント110用の組立体130の一部を形成することができる。この組立体130は、時計製造分野での利用のために設計されたことに留意されたい。しかしながら、本発明は、航空機、宝飾品、又は自動車などの他の分野でも完全に実施することができる。
【0020】
このような締結要素1a、1b、1cは、支持要素3が挿入されるように意図された「中央開口部」とも呼ばれる開口部5を含む。この開口部5は、締結要素1a、1b、1c内に配置されるように設けられた支持要素3の端部の接続部分の体積よりも小さい容積を締結要素1a、1b、1c内に画定する。この接続部分は、円形の断面を有し、支持要素3の周壁に画定された接触部分の全部又は一部を含むことに留意されたい。
【0021】
このような要素1a、1b、1cはまた、図1、2及び3で見ることができる互いに平行な第1の平面P1及び第2の平面P2にそれぞれ含まれる、好ましくは平坦な上面及び下面12を含む。
【0022】
この要素1a、1b、1cはまた、上面及び下面12を互いに接続する内周壁9a及び外周壁9bを含む。外周壁9bは、締結要素1a、1b、1cの輪郭の境界を外面的に定める面を含む。この周壁9bは、この要素1a、1b、1cに、図1では八角形、図2では十角形、及び図3では十二角形のタイプの本質的に多角形の形状を与える。内周壁9aに関して、内周壁9aは、この締結要素1a、1b、1cの開口部5の輪郭の境界を定める面を含む。以下で分かるように、この内周壁9aは、支持要素3に当接するように意図された接触エリア13を含む。締結要素1a、1b、1cの回転軸Aに平行な外周壁9b又は内周壁9aの横方向の寸法は、本明細書ではこの要素1a、1b、1cの厚さに相当することに留意されたい。
【0023】
この締結要素1a、1b、1cは、「可撓部分」又は「弾性部分」とも呼ばれる少なくとも4つの変形可能部分7が設けられた本体を含む。各変形可能部分7は、変形した後にその元の形状に戻るように構成される。言い換えれば、これらの部分は可逆的に変形可能な部分6である。この要素1a、1b、1cの本体は、本体が含む変形可能部分7を除いて、剛性又は本質的に剛性である。言い換えれば、この本体は、変形可能部分7と剛性部分6とを含む。剛性部分6は、圧力又は変形に耐える部分6、すなわち変形不可能な部分を意味する。弾性締結要素1a、1b、1cにおいて、剛性部分6は、本質的に引張応力を受けるように構成される。この構成において、これらの剛性部分6は、圧力又は引張変形に耐える。
【0024】
したがって、この要素1の本体において、変形可能部分7は剛性部分6によって互いに分離されることが理解される。また、これらの変形可能部分7は、これらの剛性部分6によって互いに接続されると言うことができる。各変形可能部分7は、前記要素1a、1b、1cの本体に、前記本体でそのすぐ近く又は最も近くに配置された他の変形可能部分7から等距離で配置されることに留意されたい。
【0025】
この構成において、各変形可能部分7は、要素1a、1b、1cの本体の内周壁9aと外周壁9bとの間に延在する。このような変形可能部分7は互いに類似していることに留意されたい。この要素1において、これらの部分7は、要素1a、1b、1cの本体の内周壁9aに、締結要素1a、1b、1cの中心O方向に延びる突出部を形成する。
【0026】
各変形可能部分7は、受け領域8aと、2つの接続領域8bと、外側領域8cとを含む。これらの領域8a、8b、8cは共に、この部分7の貫通孔6の周縁の境界を定める。
【0027】
この構成において、受け領域18aは、この変形可能部分7の2つの接続領域8bに接続されることにより、要素1a、1b、1cの内周壁9aと貫通孔4の周縁の一部との間に含まれる。この受け領域8aには、各変形可能部分7の接触エリア13を含む内面14が設けられる。この内面14は、この部分7に含まれる内周壁9aの一部分によって形成される。言い換えれば、この内面8は、締結要素1の中心Oに面するこの変形可能部分7を形成する突出部の端部に含まれる。この構成において、接触エリア13は、
・内面14の2つの中空又は凹状の部分の間に配置されることによる丸みを帯びた又は凸状の面、又は
・平坦な又は本質的に平坦な面
を有することができる。
【0028】
この接触エリア13は、2つの軸受エリアが含まれる実質的に中空又は実質的に凹状の部分を含む。これらの2つの軸受エリアは、支持要素3の対応する凸状接触部分と協働することができる。このような軸受エリアは、取付部品1の厚さの実質的に全体又は一部にわたって延在することによって、この接触エリア13の面に画定される/含まれる。また、これらの軸受エリアは、それぞれが全体的に又は部分的に平坦な面を含むことによって平坦である。接触エリア13において、2つの軸受エリアは、共に鈍角を形成する異なる平面にそれぞれ含まれる。これらの2つの軸受エリアは、互いに間隔を置いて配置されることによって分離される。言い換えれば、接触エリア13は、2つの軸受エリアを接続するためのエリアを含む。この接続エリアは、好ましくは丸みを帯びた形状を有する。
【0029】
これらの軸受エリアは、特に、支持要素3の円筒形状を考慮した場合に平面凸型又は平面円筒型の接触形態に従って接触部分と協働するように設けられる。この構成において、各軸受エリアの平坦面は、支持要素3の対応する凸形状の接触部分と協働する。ここで、各接触部分のこの凸形状は、その向かい側にこの部分が配置される、対応する各軸受エリアの平坦面に対して割り当てられることが明記される。各軸受エリアのこの平坦面は、支持要素3の直径に接する平面を形成することに留意されたい。言い換えれば、平坦面は支持要素3の直径に対して垂直であり、したがって半径に対して垂直である。
【0030】
この構成において、取付部品1の各接触エリア13に2つの平坦な軸受エリアが存在することにより、軸受エリアと支持要素3との間の機械的結合を形成する際にこの取付部品1と支持要素3との間の接触圧力を実現することが可能になり、一方、この取付部品1と支持要素3との組み立て及び/又は締結の際にこれらの軸受エリア及び支持要素3の対応する接触部分における応力の強度が大幅に低減される。この応力は、割れ目/裂け目又は亀裂の出現によって取付部品1に損傷を与える可能性が高い。
【0031】
この要素1において、各変形可能部分7の内面8にこの接触エリア13が存在することにより、要素1a、1b、1cと支持要素3との間に機械的結合を形成する際にこの要素1a、1b、1cと支持要素3との間に接触圧力を実現することが可能になり、一方、この要素1a、1b、1cと支持要素3との組み立て及び/又は締結の際にこの接触エリア13及び支持要素3の対応する接触領域における応力の強度が大幅に低減される。この応力は、割れ目/裂け目又は亀裂の出現によって前記要素1a、1b、1cに損傷を与える可能性が高い。
【0032】
したがって、すでに見てきたように、これらの変形可能部分7はただ要素1a、1b、1cの支持要素3との接触エリア13だけを含み、接触エリア13はこれらの部分7の内面8の全部又は一部に画定することができる。図1、2及び3を参照すると、これらの接触エリア13は、数が少なくとも4つであり、時計ムーブメント110において時計部品2、例えばヒゲゼンマイの正確なセンタリングを行うことに関与することができる。
【0033】
各変形可能部分7において、外側領域8cは、2つの接続領域8bにも接続されることによって、要素1a、1b、1cの外周壁9bと貫通孔4の周縁の一部との間に含まれる。これらの2つの接続領域8bは、剛性部分6の端部と外周壁9bの一部と貫通孔の周縁の一部との間に含まれる。これらの2つの接続領域は、受け領域8aと外側領域8cとを互いに接続することに留意されたい。
【0034】
要素1において、変形可能部分7は、この要素1a、1b、1cの厚みで画定される、凹部とも呼ばれる貫通孔4を含む。この貫通孔4は、要素1a、1b、1cの上面と下面10の両方に開口している。また、この貫通孔4は、変形可能部分7の上面にある一端と、この部分7の下面10にある他端とに開口しているとも言える。この孔4は、回転軸Aとこの軸方向に、上面から下面10へ、又はその逆方向に延びる。言い換えれば、この孔4は、これらの2つの面10を互いに接続する。この貫通孔4は、空隙容積すなわち材料の空隙容積又は材料のない空隙容積を画定する。したがって、この容積は、可変容積又は設定可能な容積に相当することが理解される。この容積は、この孔4の周壁によって境界を定められた開いたエンクロージャを含む。このような貫通孔4は、変形可能部分7の本体の約20%から80%を占める。好ましくは、この貫通孔4はこの本体の30%を占める。
【0035】
これらの条件において、各変形可能部分7は、この部分7が支持要素3による拘束下に置かれたときにこの貫通孔4によって画定される容積を変化させるように構成されることに留意されたい。
【0036】
この要素1a、1b、1cにおいて、剛性部分6は、要素1a、1b、1cの本体の内周壁9aと外周壁9bとの間に延在する。これらの剛性部分6は、好ましくは細長い形状を有する。実際には、各剛性部分は、それが接続される2つの変形可能部分7の間で長手方向に延在する。したがって、各剛性部分6は、2つの変形可能部分7の反対側の端部のそれぞれで直接接続されると理解される。また、変形可能部分7と剛性部分6が締結要素1a、1b、1cに連続して交互に配置されることに留意されたい。各剛性部分6は、2つの異なる変形可能部分7に接続され、変形可能部分7は、要素1a、1b、1cの他の剛性部分6に「直接」接続される。本明細書における剛性部分6は、変形不可能又はほぼ変形不可能であり、締結要素1a、1b、1cを補強する要素として機能することに留意されたい。
【0037】
また、各変形可能部分7において、受け領域8a、2つの接続領域8b及び外側領域8cは貫通孔4を示し/貫通孔4を取り囲み/貫通孔4の境界を定める。より正確には、これらの領域8a~8cは、要素1a、1b、1cの開口部5への支持要素3の挿入によってそれらが拘束されると直ちに異なる方法で変形するように構成される。実際には、各変形可能部分7について、これらの領域8a~8cのそれぞれが変形係数Crr、Crl、Creを有し、その領域8a、8b、8cが受け領域8aの接触エリア13から離れるにつれて変形係数Crr、Crl、Creの値が減少する。言い換えれば、受け領域8aの平均変形係数Crrとも呼ばれる変形係数Crrは、高い値すなわち2つの接続領域8bの係数Crlの値及び外側領域8cの係数Creの値よりも高い値を有する。また、2つの接続領域8bの係数Crlは、外側領域8cの係数Creよりも高い類似の値又は実質的に類似の値を有する。言い換えれば、これらの領域8a、8b、8cの平均変形係数Crr、Crl及びCreの関係は、次の数式に従って定義することができる。
rr>Crl>Cre
【0038】
これらの領域8a、8b、8cの変形は、それぞれの領域の回転軸Aに対する半径方向の移動を生じることに留意されたい。これらの半径方向の移動の有意性/強度は、当然ながらこれらの領域8a、8b、8cの平均変形係数Crr、Crl、Creの関数である。
【0039】
この締結要素1において、これらの剛性部分6及び変形可能部分7は本質的に、この締結要素1a、1b、1cに形成され、この締結要素1a、1b、1cの内周壁9aによって画定される開口部5に支持要素3の弾性的なクランプ式の締結を行うこと可能にする。
【0040】
すでに見てきたように、これらの変形可能部分7はただ締結要素1a、1b、1cの支持要素3との接触エリア13だけを含み、接触エリア13はこれらの変形可能部分7の内面14の全部又は一部に画定することができる。各変形可能部分7の接触エリア13は、支持要素3の接続部分の周壁10、特に支持要素3のこの周壁10に画定される対応する接触領域と協働するように設けられる。これに関連して、締結要素1a、1b、1cはその結果、時計ムーブメント110における時計部品2、例えばヒゲゼンマイの正確なセンタリングの実現に関与する少なくとも4つの接触エリア13を含む。
【0041】
この構成において、要素1の弾性又は可撓性は、この要素1a、1b、1cの接触エリア13に関連して、より具体的にはこれらの接触エリア13に力が加えられる間の変形可能部分7の変形の強度に関連して定められる。
【0042】
また、この締結要素1a、1b、1cにおいて、剛性部分6及び変形可能部分7は、締結要素1a、1b、1cが従来の締結要素に比べて同じクランプに対してより多くの弾性エネルギーを蓄えることを可能にする。この大きなエネルギーの蓄積は、貫通孔4及び引張応力を受ける剛性部分6が設けられたこの締結要素1a、1b、1cを構成する材料の体積に特に関係していることに留意されたい。このような締結要素1a、1b、1cに蓄積された弾性エネルギーはその結果、締結要素と時計部品のアセンブリ120とこの支持要素3との組立体130において、支持要素3に対する締結要素のより高い保持トルクを得ることを可能にする。また、このような締結要素1a、1b、1cの構成は、従来技術の締結要素の弾性エネルギー比の6倍から8倍の弾性エネルギー比を蓄えることを可能にすることに留意されたい。
【0043】
締結要素1a、1b、1cにおける剛性部分6、7及び変形可能部分7の配置は、クランプによる挿入中に各変形可能部分7を変形させることを可能にし、締結要素1a、1b、1c全体の変形を締結要素1a、1b、1cが組み付けられる支持要素3の接続部の幾何学的形状に適応させることを可能にすることに留意されたい。
【0044】
また、締結要素1a、1b、1cの貫通孔4は、剛性部分6と組み合わせた変形可能部分7が要素1a、1b、1cの支持要素3への駆動中に最大の弾性エネルギーを蓄え、ひいてはこの要素1a、1b、1cのこの要素3への保持を高めることができるように、変形可能部分7の移動の抑制に寄与するべく、特にこの移動を低減するべく構成されることに留意されたい。
【0045】
弾性締結要素1a、1b、1cは、少なくとも4つの接触エリア13が設けられることにより、支持要素3の周壁10に大幅に低減された接触圧力を加え、したがってこの要素1a、1b、1cの割れ及び欠けに対する傷つきやすさの低減に寄与することに留意されたい。
【0046】
図5を参照すると、本発明はまた、弾性締結要素と時計部品のアセンブリ120の支持要素3との組み立て130を行う方法に関する。この方法は、支持要素3を締結要素1a、1b、1cの開口部5に挿入するステップ20を含む。このステップ20中、支持要素の端部は、支持要素3の接続部分をこの開口部5に画定された容積に挿入することを見越して、締結要素1a、1b、1cの下面12に画定された開口部5の入口に提示される。このステップ20は、支持要素3の接続部分の周壁10の接触部分が変形可能部分7の接触エリア13に接触力Fを加えることによって生じる、締結要素1a、1b、1c、特に前記開口部5を含む締結要素1a、1b、1cの中央エリアを弾性変形させるサブステップ21を含む。したがって、中央エリアのこの弾性変形は、接触エリア13を含む各変形可能部分7の様々な領域8a、8b、8cの変形を生じる。
【0047】
この方法の変形のサブステップ21は、変形可能部分7に加えられる接触力Fの作用下で変形可能部分7を移動させる段階22を含む。変形可能部分7のこのような移動は、支持要素3及び締結要素1に共通の回転軸Aに対して半径方向Rに行われる。接触力Fは、好ましくは前記接触エリア13に対して垂直又は実質的に垂直である。この段階23の過程中、剛性部分6は変形しない。
【0048】
この方法は続いて、締結要素1a、1b、1cを支持要素3に締結するステップ23を含む。特に半径方向の弾性クランプによるこのような締結ステップ23は、支持要素3に対する締結要素1a、1b、1cの半径方向の弾性クランプを行うサブステップ24を含む。したがって、このような拘束状態において、締結要素1a、1b、1cは、特に弾性クランプによる最適なねじれを可能にする相当な保持トルクを締結要素1a、1b、1cに与えることに寄与する、大量の弾性エネルギーを蓄えることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計部品(2)を支持要素(3)上に保持するための弾性締結要素(1a、1b、1c)であって、開口部(5)を含み、前記開口部(5)の輪郭は前記開口部(5)に前記支持要素(3)を受け入れてクランプするための少なくとも4つの接触エリア(13)を含み、前記接触エリア(13)はそれぞれ前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の貫通孔(4)が設けられた変形可能部分(7)の内面(14)に含まれる、弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項2】
前記変形可能部分(7)は異なる領域(8a、8b、8c)から成り、前記異なる領域(8a、8b、8c)は、前記異なる領域(8a、8b、8c)が前記支持要素(3)による拘束下に置かれると直ちに異なる方法で変形するように構成される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項3】
前記変形可能部分(7)は変形係数(Crr、Crl、Cre)を有する複数の領域(8a、8b、8c)から成り、前記変形係数(Crr、Crl、Cre)の値は、その領域(8a、8b、8c)が前記変形可能部分(7)の内面(14)に含まれる接触エリア(13)から離れるにつれて減少する、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項4】
前記変形可能部分(7)は、共に前記変形可能部分(7)の貫通孔(4)の周縁の境界を定める、受け領域(8a)と、2つの接続領域(8b)と、外側領域(8c)とを含む、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項5】
前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の本体は、前記変形可能部分(7)を除いて、剛性又は本質的に剛性である、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項6】
各変形可能部分(7)は、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の本体に、前記本体で前記変形可能部分(7)のすぐ近くに配置された他の変形可能部分(7)のそれぞれから等距離で配置される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項7】
各変形可能部分(7)は、この変形可能部分(7)が前記支持要素(3)による拘束下に置かれたときに前記変形可能部分(7)の貫通孔(4)内に画定された容積を変化させるように構成される、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項8】
各変形可能部分の貫通孔は、前記弾性締結要素の本体の前記変形可能部分を構成する部分の20%から80%を占める、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項9】
前記弾性締結要素(1a、1b、1c)は前記時計部品(2)との取付点(11)を含む、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項10】
前記弾性締結要素(1a、1b、1c)は前記時計部品(2)を支持要素(3)に締結するためのコレットである、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項11】
前記弾性締結要素(1a、1b、1c)はシリコン又はシリコンベースの材料で作られる、請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)。
【請求項12】
請求項1に記載の弾性締結要素(1a、1b、1c)を含む、時計(100)の時計ムーブメント(110)用の弾性締結要素と時計部品のアセンブリ(120)。
【請求項13】
前記アセンブリ(120)は一部品で作られる、請求項12に記載のアセンブリ(120)。
【請求項14】
時計(100)の時計ムーブメント(110)用の組立体(130)であって、請求項12に記載の弾性締結要素と時計部品のアセンブリ(120)を含み、前記アセンブリ(120)は支持要素(3)に締結される、組立体(130)。
【請求項15】
少なくとも1つの請求項14に記載の組立体(130)を含む時計ムーブメント(110)。
【請求項16】
請求項15に記載の時計ムーブメント(110)を含む時計(100)。
【請求項17】
請求項14に記載の組立体(130)を製造する方法であって、
・前記アセンブリ(120)の弾性締結要素(1a、1b、1c)の開口部(5)に前記支持要素(3)を挿入するステップ(20)であって、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の回転軸(A)に対する各変形可能部分(7)の半径方向の移動を引き起こす、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の変形可能部分()を変形させる段階(22)を備えた、前記弾性締結要素(1a、1b、1c)を弾性変形させるサブステップ(21)を含むステップ(20)と、
・前記弾性締結要素(1a、1b、1c)を前記支持要素(3)に締結するステップ(23)であって、前記支持要素(3)に対する前記弾性締結要素(1a、1b、1c)の半径方向の弾性クランプを行うサブステップ(24)を含むステップ(23)と
を含む方法。
【外国語明細書】