(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007697
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】カートリッジ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 119
B41J2/175 169
B41J2/175 133
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108941
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長島 巧
(72)【発明者】
【氏名】小泉 義弘
(72)【発明者】
【氏名】水谷 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】大屋 瞬
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EA25
2C056KC02
2C056KC04
2C056KC05
(57)【要約】
【課題】カートリッジの不具合の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【解決手段】カートリッジは、液体を収容可能な液体収容体と、カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部を有し、液体を収容可能なアダプターであって、カートリッジ装着部へのカートリッジの挿入方向に沿った寸法が、液体収容体よりも小さいアダプターと、液体供給部と、を備え、アダプターは、カートリッジ装着部に装着された装着状態において、液体供給部と非連通状態となる、を保持する液体残留領域を有し、液体残留領域の液体は、回転装着方向とは反対方向にカートリッジを移動させて、液体供給部と前記液体導入部との接続を解除する接続解除動作の過程において、カートリッジの姿勢の変化により前記液体供給部に流入する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって、
前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、
前記カートリッジは、
液体を収容可能な液体収容体と、
前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部を有し、前記液体を収容可能なアダプターであって、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの前記挿入方向に沿った寸法が、前記液体収容体よりも小さいアダプターと、
前記挿入開口部に挿入された前記液体導入部に接続され、前記カートリッジに収容された前記液体を前記液体導入部に供給する液体供給部と、を備え、
前記アダプターは、前記カートリッジ装着部に装着された装着状態において、前記液体供給部と非連通状態となる、液体を保持する液体残留領域を有し、
前記液体残留領域の前記液体は、前記回転装着方向とは反対方向に前記カートリッジを移動させて、前記液体供給部と前記液体導入部との接続を解除する接続解除動作の過程において、前記カートリッジの姿勢の変化により前記液体供給部に流入する、カートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のカートリッジであって、
前記液体収容体と前記アダプターとは一体成形されている、カートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のカートリッジであって、
前記液体収容体と前記アダプターとはブロー成形によって一体成形されている、カートリッジ。
【請求項4】
印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジであって、
前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、
前記カートリッジは、
液体を収容するための液体収容部と、
前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部が形成された底面と、
前記液体収容部を挟んで前記底面とは反対側に位置する上面傾斜面であって、前記挿入方向側の第1端部よりも前記挿入方向とは反対方向の第2端部が前記底面に近い側に位置する上面傾斜面と、
前記挿入方向の手前側に位置する後面と、
前記カートリッジとは別体の容器を接続するための接続孔であって、前記液体収容部と連通する接続孔と、を備え、
前記接続孔は、前記上面傾斜面と前記後面との少なくともいずれか一方に形成されている、カートリッジ。
【請求項5】
請求項4に記載のカートリッジであって、さらに、
前記挿入完了の後に、前記カートリッジが前記回転装着方向に移動することで前記カートリッジ装着部の装置上壁との間に形成される空間領域であって、前記別体の容器の少なくとも一部を収容する空間領域を形成する上面を有し、
前記上面は、前記上面傾斜面を含む、カートリッジ。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のカートリッジであって、
前記接続孔は、前記上面傾斜面に形成されており、
前記上面傾斜面は、前記挿入完了の状態において、前記別体の容器を前記接続孔に接続するために前記挿入方向に移動させる接続動作により、前記重力方向の成分を有する外力を受ける、カートリッジ。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載のカートリッジであって、
前記接続孔に接続される前記別体の容器は、前記挿入方向の奥側よりも手前側に近い部分に液体を注入する液体注入口を有する、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カートリッジの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を収容するための液体収容体と、液体収容体に篏合により取り付けられるアダプターとを有するカートリッジが知られている(特許文献1)。従来のカートリッジは、印刷装置のカートリッジ装着部に対して、水平方向である挿入方向に挿入された後に、挿入方向の奥側を支点として重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、カートリッジのうち液体収容体のみに液体が収容されるため、カートリッジにより多くの液体を収容するためには、液体収容体の大型化が必要となる。また、カートリッジにより多くの量の液体を収容した場合であっても、印刷装置側に供給されることなく残留する液体の量が多くなる場合があった。本開示は、上記のカートリッジの不具合の少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジが提供される。このカートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、液体を収容可能な液体収容体と、前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部を有し、前記液体を収容可能なアダプターであって、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの前記挿入方向に沿った寸法が、前記液体収容体よりも小さいアダプターと、前記挿入開口部に挿入された前記液体導入部に接続され、前記カートリッジに収容された前記液体を前記液体導入部に供給する液体供給部と、を備え、前記アダプターは、前記カートリッジ装着部に装着された装着状態において、前記液体供給部と非連通状態となる、液体を保持する液体残留領域を有し、前記液体残留領域の前記液体は、前記回転装着方向とは反対方向に前記カートリッジを移動させて、前記液体供給部と前記液体導入部との接続を解除する接続解除動作の過程において、前記カートリッジの姿勢の変化により前記液体供給部に流入する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジが提供される。このカートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、液体を収容するための液体収容部と、前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部が形成された底面と、前記液体収容部を挟んで前記底面とは反対側に位置する上面傾斜面であって、前記挿入方向側の第1端部よりも前記挿入方向とは反対方向の第2端部が前記底面に近い側に位置する上面傾斜面と、前記挿入方向の手前側に位置する後面と、
前記カートリッジとは別体の容器を接続するための接続孔であって、前記液体収容部と連通する接続孔と、を備え、前記接続孔は、前記上面傾斜面と前記後面との少なくともいずれか一方に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態としての印刷システムの構成を示す斜視図。
【
図9】液体残留領域の液体の消費について説明するための図。
【
図11】別体の容器が接続された装着状態におけるカートリッジを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
A-1.印刷システムの構成:
図1は、本開示の第1実施形態としての印刷システム1の構成を示す斜視図である。
図1には、互いに直交する3つの空間軸であるXYZ軸が描かれている。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向は、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を示している。X軸,Y軸,Z軸に沿った正の方向を、それぞれ+X方向,+Y方向,+Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸の矢印が向いている方向と逆の方向が、それぞれX軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向である。X軸,Y軸,Z軸に沿った負の方向を、それぞれ-X方向,-Y方向,-Z方向とする。X軸,Y軸,Z軸に沿った方向で正負を問わないものを、それぞれX方向,Y方向,Z方向とよぶ。これ以降に示す図及び説明についても同様である。
【0009】
印刷システム1は、印刷装置10と、印刷装置10に液体であるインクを供給するカートリッジ4とを備える。
【0010】
本実施形態の印刷装置10は、液体としてのインクを吐出ヘッド22から吐出するインクジェットプリンターである。この印刷装置10は、ポスター等の大判の用紙に印刷を行う大型のプリンターである。印刷装置10は、カートリッジ装着部6と、制御部31と、キャリッジ20と、吐出ヘッド22と、駆動機構30とを備える。また、印刷装置10は、印刷装置10の動作をユーザーが操作するための操作ボタン15を備える。
【0011】
カートリッジ装着部6は、+Y方向側に位置する第1装置壁67を有する。第1装置壁67は、カートリッジ4の収容室61への出入口である挿抜開口部674を有する。この挿抜開口部674を介してカートリッジ4がカートリッジ装着部6の収容室61に収容されたり、収容室61からカートリッジ4が取り外されたりする。カートリッジ装着部6には、複数のカートリッジ4がそれぞれ着脱可能に装着される。本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のインクに対応して4種類のカートリッジ4が1つずつ、すなわち合計4つのカートリッジ4がカートリッジ装着部6に装着される。ブラックのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Kとも呼び、イエローのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Yとも呼び、マゼンタのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Mとも呼び、シアンのインクを収容するカートリッジ4をカートリッジ4Cとも呼ぶ。本実施形態において、カートリッジ4Kは、カートリッジ4C,4M,4Yよりも多くの液体を収容可能に構成されている。よって、カートリッジ4Kを第1種カートリッジ4Aとも呼び、カートリッジ4C,4M,4Yを第2種カートリッジ4Bとも呼ぶ。
【0012】
印刷装置10は、+Y方向側の前面に交換用カバー13を有する。交換用カバー13は開閉可能に構成されている。交換用カバー13を開くことで、カートリッジ装着部6の開口が現れて、カートリッジ4の着脱が可能となる。カートリッジ装着部6にカートリッジ4が装着されると、液体流通管としてのチューブ24を介してキャリッジ20に設けられた吐出ヘッド22にインクが供給可能となる。本実施形態では、水頭差を利用してカートリッジ4から吐出ヘッド22にインクが供給される。具体的には、カートリッジ装着部6内のインクの液面と吐出ヘッド22との水頭差によってインクが吐出ヘッド22に供給される。なお、他の実施形態では、印刷装置10の図示しないポンプ機構によって、カートリッジ4内のインクを吸引することで、インクが吐出ヘッド22に供給されてもよい。なお、チューブ24は、インクの種類毎に設けられている。
【0013】
吐出ヘッド22には、インクの種類毎にノズルが設けられている。吐出ヘッド22は、ノズルから印刷用紙2に向かってインクを吐出して文字や画像等のデータを印刷する。なお、本帆実施形態では、印刷装置10は、カートリッジ装着部6がキャリッジ20の動きとは連動しない、いわゆる「オフキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターである。キャリッジ20にカートリッジ装着部6が設けられ、キャリッジ20と共にカートリッジ装着部6が移動する、いわゆる「オンキャリッジタイプ」と呼ばれるプリンターにも本開示の技術は適用できる。
【0014】
制御部31は、印刷装置10の各部の制御や、カートリッジ4との信号の授受を行う。キャリッジ20は、吐出ヘッド22を印刷用紙2に対して相対的に移動させる。
【0015】
駆動機構30は、制御部31からの制御信号に基づいてキャリッジ20を往復動させる。駆動機構30は、タイミングベルト32と、駆動モーター34とを備える。タイミングベルト32を介して駆動モーター34の動力をキャリッジ20に伝達することによって、キャリッジ20がX方向に沿った方向である主走査方向に往復移動する。また、印刷装置10は、印刷用紙2を+Y方向である副走査方向に移動させるための搬送機構を備える。印刷が行なわれる際には、搬送機構によって印刷用紙2が副走査方向に移動し、前面カバー11上に印刷完了後の印刷用紙2が出力される。
【0016】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷を実行させるためのメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、吐出ヘッド22の底面側でノズルが形成されている面に押し付けられて、ノズルを取り囲むように閉空間を形成するキャップ部材8や、吐出ヘッド22のノズル面に押し付けるためにキャップ部材8を昇降させる図示しない昇降機構や、キャップ部材8が吐出ヘッド22のノズル面に押し付けられることで形成される閉空間に負圧を導入する図示しない吸引ポンプなどから構成されている。
【0017】
本実施形態では、印刷システム1の使用状態において、印刷用紙2を搬送する副走査方向に沿った軸をY軸とし、重力方向に沿った軸をZ軸とし、キャリッジ20の移動方向に沿った軸をX軸とする。ここで、「印刷システム1の使用状態」とは、水平な面に印刷システム1が設置された状態をいう。また、本実施形態では、副走査方向を+Y方向、その逆方向を-Y方向とし、重力方向を-Z方向、反重力方向を+Z方向とする。X方向とY方向は水平方向に沿った方向である。また、印刷システム1を前面側から見たときに、右側から左側に向かう方向を+X方向とし、その逆方向を-X方向とする。また本実施形態では、装着のためにカートリッジ装着部6にカートリッジ4が挿入される挿入方向D1が-Y方向であり、カートリッジ4がカートリッジ装着部6から取り外される取り外し方向D4が+Y方向である。よって、カートリッジ装着部6のうち、-Y方向側を奥側とも呼び、+Y方向側を手前側とも呼ぶ。また、本実施形態では、複数のカートリッジ4の配列方向がX方向となる。カートリッジ4の構成部材は、後述する液体収容体やアダプターである。
【0018】
A-2.カートリッジ装着部の詳細構成:
図2は、カートリッジ装着部6の第1斜視図である。
図3は、カートリッジ装着部6の第2斜視図である。
図2では、複数のカートリッジ4が挿入または装着されているカートリッジ装着部6を示している。
図3は、
図2の状態からカートリッジ4を省略した図である。
図2において、カートリッジ4K,4C,4Yはカートリッジ装着部6に対して装着された装着状態である。装着状態とは、カートリッジ4の後述するカートリッジ端子がカートリッジ装着部6の後述する装置端子に接触し、カートリッジ4の液体供給部にカートリッジ装着部6の後述する液体導入部が接続された状態である。挿入完了状態とは、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に水平方向である挿入方向D1に挿入された状態である。挿入完了状態では、カートリッジ4の後述するカートリッジ端子がカートリッジ装着部6の後述する装置端子に接触しているが、カートリッジ4の液体供給部がカートリッジ装着部6の液体導入部に接続していない。挿入完了状態から、カートリッジ4のうち挿入方向D1の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向D2に回転移動させることで装着状態となる。以上のように、カートリッジ4は、カートリッジ装着部6に水平方向である挿入方向D1に挿入完了の後に、挿入方向D1の手前側部分を回転装着方向D2に移動させることで、カートリッジ装着部6に装着される。
【0019】
カートリッジ装着部6について、X方向を幅方向、Y方向を奥行方向、Z方向を高さ方向とも呼ぶ。以下において、特に状態についての記載がない場合には、挿入完了状態のときのカートリッジ装着部6を前提に各要素について説明する。カートリッジ装着部6において、挿入完了状態は、カートリッジ4や、カートリッジ4のアダプターが装着されていない初期状態と同じ状態である。
【0020】
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、カートリッジ4が収容される収容室61を形成する。収容室61は、略直方体形状である。収容室61は、各カートリッジ4C,4M,4Y,4Kを収容するスロットを有する。各スロットは、概ね各カートリッジ4C,4M,4Y,4Kの外観形状に対応している。
【0021】
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、収容室61を形成する6つの装置壁62,63,64,65,66,67を有する。本開示において「壁」とは、単一の壁に加え、複数の壁によって構成された壁を含む概念である。第1装置壁67は、カートリッジ4を収容室61に挿入したり取り外したりする際に通過させる挿抜開口部674を形成する。第2装置壁62は、収容室61の-Y方向側の壁を形成する。第2装置壁62は、Y方向において第1装置壁67と対向する。第2装置壁62は、印刷装置10の使用状態において、概ね垂直な壁である。
【0022】
装置上壁63は、収容室61の+Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、Z方向において装置上壁63と対向し、収容室61の-Z方向側の壁を形成する。装置底壁64は、支持部材610によって形成されている。装置底壁64は複数の第1装置開口部614を有する。本実施形態では、第1装置開口部614は、装着されるアダプター402の数に応じて4つ形成されている。装置上壁63および装置底壁64は、第2装置壁62と第1装置壁67と交差する。本開示において、「交わる」や「交差する」とは、(i)2つの要素が相互に交差し実際に交わる状態、(ii)一方の要素を延ばした場合に他方の要素に交わる状態、及び、(iii)相互の要素をそれぞれ延ばした場合に互いの要素が交わる状態、のいずれかの状態であることを意味する。
【0023】
第1装置側壁65は、収容室61の+X方向側の壁を形成する。第2装置側壁66は、X方向において第1装置側壁65と対向し、収容室61の-X方向側の壁を形成する。第1装置側壁65および第2装置側壁66は、第2装置壁62と第1装置壁67と装置上壁63と装置底壁64と交差する。
【0024】
図3に示すように、カートリッジ装着部6は、さらに、装置側端子部70と、装置案内部602と、支持部材610と、液体導入部642と、装置側位置決め部644と、固定形成体677と、突出部材628とを有する。
【0025】
支持部材610は、装着されるカートリッジ4の数に応じて複数設けられている。本実施形態では、支持部材610は4つ設けられている。収容室61の重力方向側の装置底壁64を形成する。支持部材610は、カートリッジ4を重力方向側である-Z方向側から支持する。支持部材610は、Y方向に沿って延びる部材である。支持部材610は、凹形状である。支持部材610は、装置底壁64を形成する主壁613と、第1支持側壁611と、第2支持側壁612とを有する。支持部材610は、カートリッジ装着部6のうちで挿入方向D1の奥側かつ重力方向側に位置する回転支点698を支点として、重力方向の成分を有する回転装着方向D2と、反重力方向の成分を有する解除方向D3に回転移動できる。解除方向D3は、回転装着方向D2とは反対の方向である。
【0026】
主壁613は、重力方向側に位置する凹形状の底部を形成する。主壁613には、第1装置開口部614と第2装置開口部626とが形成されている。第1装置開口部614と第2装置開口部626とはそれぞれ、主壁613の厚み方向に主壁613を貫通する。
【0027】
図3に示すように、第1支持側壁611は、主壁613の+X方向側端部から反重力方向である+Z方向に立ち上がる。第2支持側壁612は、主壁613の-X軸方向側端部から+Z方向に立ち上がる。第1支持側壁611と第2支持側壁612とは、X方向に対向する。
【0028】
装置案内部602は、カートリッジ4またはカートリッジ4のアダプターを挿入方向D1および取り外し方向D4に案内する。装置案内部602は、支持部材610ごとに設けられている。装置案内部602は、第1支持側壁611と第2支持側壁612とのそれぞれに設けられている。装置案内部602は、第1支持側壁611と第2支持側壁612に設けられた突起である。この突起は、挿入方向D1に沿って間隔を開けて複数配置されている。
【0029】
図3に示すように、液体導入部642は、カートリッジ4の液体を受け入れる。液体導入部642は中心軸CA1を有する。本実施形態では、中心軸CA1は、Z方向に対して+Y方向に4°傾いている。挿入完了状態では、液体導入部642は、収容室61内に位置することなく、収容室61よりも-Z方向側に位置する。つまり、液体導入部642は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。液体導入部642の先端側は、回転支点698を中心に支持部材610を回転装着方向D2に回転させることで、第1装置開口部614が押し下がることで収容室61内に配置される。
【0030】
装置側位置決め部644は、カートリッジ4の後述するカートリッジ位置決め部に受け入れられることで、液体導入部642に対するカートリッジ4の後述するアダプターの動きを規制する。挿入完了状態では、装置側位置決め部644は、収容室61内に位置することなく、収容室61よりも-Z方向側に位置する。つまり、装置側位置決め部644は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。装置側位置決め部644の先端側は、回転支点698を中心に支持部材610を回転装着方向D2に回転させることで、第1装置開口部614が押し下がることで、収容室61内に配置される。
【0031】
装置側端子部70は、カートリッジ4のカートリッジ端子と接触する複数の装置端子721を有する。装置側端子部70は、支持部材610のうち挿入方向D1における奥側である-Y方向側に設けられている。
【0032】
固定形成体677は、支持部材610よりも+Y方向側に形成されている。また、固定形成体677は、挿抜開口部674よりも-Z方向側に位置する。固定形成体677には、収容室61の各スロットに対応して後述する装置固定部が4つ配置されている。装着固定部は、突起であり、カートリッジ4のアダプターと係合することでカートリッジ4の動きを固定して装着状態を維持する。
図3に示すように、固定形成体677は、各装着固定部に応じて、装着固定部を変位させてカートリッジ4のアダプターとの係合を解除する解除部666を有する。解除部666は、板状部材であり装置固定部と連結されている。解除部666が重力方向側に押し下げられることで、装置固定部が解除方向に変位する。
【0033】
突出部材628は、挿入方向D1に沿った方向について、液体導入部642と装置側端子部70との間に位置する。突出部材628は、装着状態における支持部材610に対して反重力方向側に外力を加える外力機構の構成部材である。挿入完了状態では、突出部材628は、収容室61内に位置することなく、収容室61よりも-Z方向側に位置する。つまり、突出部材628は、支持部材610に対して収容室61を挟んで反対側に位置する。突出部材628の+Z方向側部分は、回転支点698を中心に支持部材610を回転装着方向D2に回転させることで、第2装置開口部626が押し下がることで収容室61内に配置される。
【0034】
A-3.カートリッジの詳細構成:
図4は、第1種カートリッジ4Aの斜視図である。
図5は、第1種カートリッジ4Aの分解斜視図である。
図6は、第1種カートリッジ4Aの断面図である。
図4~
図6に示すXYZ軸は、カートリッジ4のカートリッジ装着部6への挿入完了状態を基準としている。第1種カートリッジ4Aと第2種カートリッジ4Bとの異なる点は、液体収容体401の幅である。第1種カートリッジ4Aの液体収容体401は、第2種カートリッジ4Bの液体収容体401よりも幅が大きい。これにより、第1種カートリッジ4Aの容積は、第2種カートリッジ4Bの容積よりも大きい。その他の構成については、第1種カートリッジ4Aと第2種カートリッジ4Bとで同様の構成であるため、以下では、第1種カートリッジ4Aを図示してカートリッジ4の構成を説明する。
【0035】
図4および
図5に示すように、カートリッジ4の外形は略直方体形状である。カートリッジ4において、カートリッジ装着部6への挿入方向D1である-Y方向に沿った方向が長手方向であり、X方向が幅方向としての短手方向であり、Z方向が重力方向に沿った方向、すなわち高さ方向である。カートリッジ4において、長手方向の寸法が最も大きく、短手方向の寸法が最も小さい。幅方向は、挿入姿勢において、挿入方向D1と重力方向である-Z方向に直交する方向である。
【0036】
図4~
図6に示すように、カートリッジ4は、液体を収容可能な液体収容体401と、液体収容体401よりも底面44側に形成され、液体を収容可能なアダプター402と、カートリッジ4に収容された液体を液体導入部642に供給する液体供給部442と、を備える。
【0037】
図6に示すように、アダプター402は、カートリッジ装着部6へのカートリッジ4の挿入方向D1に沿った寸法L402が、液体収容体401の挿入方向D1に沿った寸法L401よりも小さい。本実施形態のカートリッジ4では、液体収容体401とアダプター402とは一体成形されている。例えば、液体収容体401とアダプター402とはブロー成形により一体成形されている。液体収容体401とアダプター402とをブロー成形などによって一体成形することで、カートリッジ4を容易に形成できる。なお、他の実施形態では、液体収容体401とアダプター402とは別体に形成されて、嵌合などにより互いに取り付けられてもよい。
【0038】
図4に示すように、カートリッジ4は、前面42と、後面47と、上面43と、底面44と、第1側面45と、第2側面46と、コーナー部89とを有する。各面42,43,44,45,46,47は、各壁42,43,44,45,46,47とも呼ぶ。
【0039】
図4に示すように、前面42と後面47とは、挿入完了状態における姿勢において、挿入方向D1に沿ったY方向において対向する。前面42は、挿入姿勢において挿入方向D1の奥側、すなわち挿入方向D1の先端側である-Y方向側の先端面を形成する。後面47は、挿入姿勢において挿入方向D1の手前側、すなわちカートリッジ4をカートリッジ装着部6から取り外す取り外し方向D4である+Y方向側に位置する面を形成する。
【0040】
図6に示すように、上面43と底面44とは、液体供給部442の中心軸CA2の中心軸方向であるZ方向において対向する。底面44は、アダプター402を構成する面である。底面44には、カートリッジ装着部6の液体導入部642が挿入される挿入開口部446が形成されている。つまり、アダプター402は、挿入開口部446を有する。底面44は、カートリッジ装着部6のうち挿入方向D1の奥側を回転支点698とした回転装着方向D2における奥側、すなわち回転装着方向D2の先端側に位置する面である。
【0041】
図6に示すように、上面43は、中心軸方向であるZ方向において底面44と対向する。つまり、後述する上面傾斜面433を含む上面43は、液体収容部450を挟んで底面44とは反対側に位置する。上面43は、前面42と後面47とを繋ぐ。上面43は、主面432と、上面傾斜面433と、後面47に接続された接続面435とを有する。
【0042】
主面432は、3つの面432,433,435のうちで最も大きい面である。主面432は、前面42から挿入方向D1とは反対方向の取り外し方向D4に沿って延びる。主面432は、挿入方向D1に平行である。上面傾斜面433は、主面432から取り外し方向D4側に延びる。上面傾斜面433は、挿入方向D1側の第1端部433pよりも挿入方向D1とは反対方向の取り外し方向D4の第2端部433tが底面44に近い側に位置するように、挿入方向D1に対して傾斜する。接続面435は、上面傾斜面433と後面47とを繋ぐ。接続面435は、カートリッジ4を回転装着方向D2に回転移動させるために、利用者によって重力方向に向かって押される手前側部分として機能する。
【0043】
図4に示すように、第1側面45と第2側面46とは、幅方向であるX方向に対向する。第1側面45と第2側面46とはそれぞれ、挿入姿勢において、Y方向とZ方向に平行である。第1側面45は、-X方向側に位置する面である。第2側面46は、+X方向側に位置する面である。コーナー部89は、前面42と底面44とが交差するコーナー部分に設けられている。コーナー部89は、内方に凹んだ凹形状である。コーナー部89は、アダプター402に形成されている。コーナー部89には、複数のカートリッジ端子521を有する回路基板50が配置されている。
【0044】
図5に示すように、液体供給部442は、筒状の部材である。
図4に示すように、液体供給部442の先端開口部447は、カートリッジ4を底面44側から見た場合に、挿入開口部446と重なる位置に配置されている。液体供給部442は、挿入開口部446に挿入された液体導入部642が挿入されることで、液体導入部642に接続される。
図5に示すように、液体供給部442の側壁には、液体を内部流路に流入させる切り欠き部449が形成されている。
【0045】
図6に示すように、液体供給部442は、内部流路を開閉する供給部弁機構481を有する。供給部弁機構481は、シール部487と、弁体485と、付勢部材483とを備える。シール部487は、供給流路の内周面に配置された円環状の弾性部材である。シール部487は、弁体485が当接したり離間したりする弁座として機能する。弁体485は、シール部487を挟んで先端開口部447とは反対側に位置する。付勢部材483は、弁体485をシール部487に向けて付勢する。付勢部材483は、圧縮コイルバネである。液体供給部442内に液体導入部642が挿入されていない状態では、弁体485がシール部487に当接してシール部487の開口を塞ぐことで、内部流路は非連通状態となる。一方で、液体供給部442内に液体導入部642が挿入された場合、付勢部材483の付勢力に抗して液体導入部642によって弁体485がシール部487から離れる方向に押される。これにより、弁体485がシール部487から離間することで、内部流路が連通状態、すなわち供給部弁機構481が開弁状態となる。
【0046】
カートリッジ4は、
図5に示すように、さらに、供給部位置決め部448と凹部582とカートリッジ案内部462と、
図6に示すカートリッジ固定部497とを備える。供給部位置決め部448は、底面44に形成された凹部である。供給部位置決め部448は、底面44のうちで、挿入開口部446と隣り合う位置に形成されている。挿入開口部446はカートリッジ4の装着過程において、装置側位置決め部644を受け入れる。これにより、回転装着方向D2と交差する方向の供給部位置決め部448の動きが規制されることで、液体導入部642に対する液体供給部442の位置決めを行う。
【0047】
凹部582は、挿入開口部446よりも挿入方向D1側に形成されている。凹部582は、カートリッジ4の装着状態において、カートリッジ装着部6の部材である
図3に示す突出部材628を受け入れる。
【0048】
図6に示すカートリッジ固定部497は、後面47のうちで、アダプター402によって形成された部分に設けられた凹部である。カートリッジ固定部497は、カートリッジ4をカートリッジ装着部6に着脱可能に固定して、装着状態を維持する。具体的には、カートリッジ4の装着状態では、カートリッジ固定部497に装置固定部が入り込んで係合することで、カートリッジ4がカートリッジ装着部6に固定される。
【0049】
図4に示す、カートリッジ案内部462は、第1側面45と第2側面46のそれぞれに形成されている。カートリッジ案内部462は、第1側面45や第2側面46のうちでアダプター402を形成する部分に設けられた段差である。カートリッジ案内部462は、挿入方向D1に沿って延びる。カートリッジ案内部462が、
図3に示す装置案内部602のうちで+Z方向側の面と接触しつつ、カートリッジ4がカートリッジ装着部6内を移動することで、アダプター402の水平方向である挿入方向D1や取り外し方向D4への移動を案内する。
【0050】
図6に示すように、カートリッジ4の内部には、液体を収容するための液体収容部450が形成されている。液体収容部450のうち、液体収容体401内の領域を第1液体収容部451とも呼び、アダプター402内の領域を第2液体収容部452とも呼ぶ。
【0051】
液体収容部450は、底面44側に位置し、液体収容部450の底面である収容部底面456を有する。収容部底面456は、アダプター402に形成されている。収容部底面456は、挿入方向D1に沿った方向について、液体供給部442と前面42との間に位置する第1底面457と、液体供給部442と後面47との間に位置する第2底面458とを有する。液体供給部442は、収容部底面456に挿通されており、収容部底面456の液体は、液体供給部442の
図5に示す切り欠き部449から内部流路に流入できる。
【0052】
図7は、装着状態のカートリッジ4を示す図である。
図8は、装着状態のカートリッジ4の液体供給部442近傍の液体収容部450を模式的に示す図である。カートリッジ4のカートリッジ装着部6への挿入が完了した挿入完了の後に、
図7に示すように、カートリッジ4が回転装着方向D2に移動することで、上面43は、装置上壁63との間で空間領域SPを形成する。
【0053】
図7に示すように、装着状態では、カートリッジ4の液体供給部442から液体導入部642に供給された液体は、カートリッジ装着部6の液体貯留部699に貯留される。液体貯留部699は、予め定めた圧力に維持されている。本実施形態では、予め定めた圧力は、負圧である。また本実施形態では、水頭差を利用してカートリッジ4から吐出ヘッド22にインクが供給される。具体的には、液体貯留部699内のインクの液面と吐出ヘッド22との水頭差によってインクが吐出ヘッド22に供給される。液体貯留部699の液面が低下するに伴って液体収容部450の液体が液体導入部642を介して補充される。これにより、液体貯留部699の液面は一定に維持される。
【0054】
液体導入部642内には、液体導入部642内の流路を開閉する導入部弁機構が配置されている。導入部弁機構は、液体導入部642と液体供給部442とが接続していない状態では閉弁状態となっている。液体供給部442内に液体導入部642が挿入されることで、液体供給部442の弁体485によって導入部弁機構の弁体が押し下げられることで、導入部弁機構の弁座から離間する。これにより、導入部弁機構が開弁状態となる。
【0055】
カートリッジ4の装着状態では、カートリッジ装着部6の装着部付勢部材629によって、
図3に示す支持部材610が反重力方向に付勢されることで、カートリッジ4は回転装着方向D2とは反対方向である解除方向D3に移動しようとする。一方で、
図7に示すように、カートリッジ4の装着状態では、カートリッジ固定部497と装置固定部697とが係合することで、カートリッジ4の解除方向D3への移動を規制して、装着状態が維持される。また、カートリッジ4の装着状態では、挿入姿勢よりもカートリッジ4の後面47側が押し下げられた姿勢となる。
【0056】
図8に示すように、第2底面458は、第1アダプター底面458aと、段差面458cと、第2アダプター底面458bとを有する。第1アダプター底面458aは、収容部底面456のうち液体供給部442が位置する部分から後面47側に延びる平面である。段差面458cは、第1アダプター底面458aのうちで液体供給部442が位置する側とは反対側の端部から反重力方向側、すなわち上面43側に延びる平面である。第2アダプター底面458bは、段差面458cの上端部から後面47側に延びる平面である。
【0057】
カートリッジ4の装着状態では、第1底面457と第1アダプター底面458aと第2アダプター底面458bとは、後面47側、すなわち取り外し方向D4側に向かうに従い重力方向側に位置するように水平方向に対して傾斜する。
【0058】
カートリッジ4の装着状態において、液体収容部450内の液体が消費されて液面が低下する。一方で、第1アダプター底面458aと第2アダプター底面458bとは、上記のごとく水平方向に対して傾斜している。よって、液体収容部450内の液面が低下した場合、
図8のシングルハッチングで液体を示すように、アダプター402には液体残留領域454が生じる。つまり、アダプター402は、液体残留領域454を有する。液体残留領域454は、液体収容部450の液面が低下した場合に、液体を保持する領域であり、液体供給部442との間に空気が存在し、液体で連続的に満たされないことで、液体供給部442と非連通状態となる領域である。つまり、液体残留領域454は、装着状態において、液体が消費されずに残留する領域である。液体残留領域454のうち、第1アダプター底面458a上の領域を第1液体残留領域454aとも呼び、第2アダプター底面458b上の領域を第2液体残留領域454bとも呼ぶ。
【0059】
図9は、液体残留領域454の液体の消費について説明するための図である。
図8に示すカートリッジ4の装着状態から、回転装着方向D2とは反対方向である解除方向D3にカートリッジ4を移動させて、液体供給部442と液体導入部642との接続を解除する接続解除動作の過程において、残留した液体は以下のように液体供給部442に流入する。つまり、カートリッジ4の後面47側が反重力方向成分を含む方向に移動することで、第1アダプター底面458aおよび第2アダプター底面458bが、水平方向に対して傾斜した状態から水平方向と平行な状態にも戻るように、カートリッジ4の姿勢が変化する。このカートリッジ4の姿勢の変化に伴い生じる外力を受けて、接続解除動作の開始時点から、液体供給部442から液体導入部642が抜け出る接続解除動作の終了時点までの期間において、液体残留領域454の液体は矢印YRの向きで示すように液体供給部442に流入する。つまり、液体残留領域454の液体は、装着状態のカートリッジ4を解除方向D3に移動させて液体供給部442と液体導入部642との接続を解除する接続解除動作の過程にいて、カートリッジ4の姿勢の変化により液体供給部442に流入する。液体供給部442に流入した液体は、液体導入部642、カートリッジ装着部6の液体貯留部699の順に流入する。
【0060】
上記第1実施形態によれば、液体収容体401に加えアダプター402が液体を収容可能であるため、より多くの量の液体をカートリッジ4に収容できる。また、接続解除動作の過程において、液体残留領域454の液体が液体供給部442に流入することで、液体残留領域454の液体を液体供給部442を介して液体導入部642に導入できる。これにより、カートリッジ4に残留する液体の量を低減できる。
【0061】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態のカートリッジ4aの断面図である。第1実施形態のカートリッジ4との違いは、上面傾斜面433aに後述する別体の容器7を接続するための接続孔439を有している点である。その他の構成については、カートリッジ4aと、カートリッジ4とで同様であるので、同様の構成については第1実施形態と同様の符号を付すと共に説明を適宜省略する。
【0062】
接続孔439は、液体収容部450と連通する。接続孔439内には、液体収容部450内を気密に維持するための栓部材438が配置されている。栓部材438は、例えば、弾性部材であり、切れ目が形成されている。なお、他の実施形態では、接続孔439は後面47に形成されていてもよいし、後面47と上面傾斜面433の両方に形成されていてもよい。接続孔439が上面傾斜面433aと後面47との少なくともいずれか一方に形成されているので、カートリッジ装着部6にカートリッジ4aが挿入されたり装着されたりした状態においても、別体の容器7を容易に接続孔439に接続できる。
【0063】
図11は、別体の容器7が接続された装着状態におけるカートリッジ4aを示す図である。別体の容器7は、液体を収容するためのメイン室750と、メイン室750と連通する筒状の注入部72とを有する。注入部72の周囲は、上面傾斜面433に対応した傾斜を有する面である。注入部72は、接続孔439に挿入される。これにより、栓部材438の切れ目が押し広げられ、注入部72の先端開口が液体収容部450内に配置される。メイン室750の液体は、注入部72を経由して液体収容部450に供給される。
【0064】
空間領域SPは、別体の容器7の一部を収容する。これにより、空間領域SPを有効に利用して別体の容器7を配置できる。
【0065】
カートリッジ4aがカートリッジ装着部6に挿入された挿入完了の状態において、別体の容器7の注入部72をカートリッジ4aの接続孔439に接続するために、別体の容器7を挿入方向D1に移動させる。この接続動作により、上面傾斜面433は別体の容器7から重力方向の成分を有する外力を受ける。接続動作により生じる重力方向の成分を有する外力によって、カートリッジ4は回転装着方向D2に移動することで、装着状態となる。重力方向の成分を有する外力は、例えば、別体の容器7の接続動作が進むにつれて、別体の容器7が装置上壁63に当たることで、別体の容器7がカートリッジ4の上面傾斜面433を押し下げる力である。このように、別体の容器7の接続動作によって上面傾斜面433aが重力方向の成分を有する外力を受けることで、接続動作によってカートリッジ4aを回転装着方向D2へ移動させてカートリッジ装着部6への装着を完了できる。
【0066】
C.他の実施形態:
C-1.他の実施形態1:
図12は、他の実施形態1を説明するための図である。上記第2実施形態と異なる点は、別体の容器7aが、液体注入口738を有する点である。液体注入口738は、メイン室750に液体を注入できる。液体注入口738内に例えば、ゴム部材などの弾性部材が配置されている。液体注入口738に針部材を突き刺して、針部材の先端から液体をメイン室750に注入できる。液体注入口738は、挿入方向D1の奥側よりも手前側に位置か部分に形成されている。他の実施形態1では、液体注入口738は、別体の容器7aの上面752のうちで、カートリッジ装着部6の装置上壁63よりも取り外し方向D4側に露出した部分に形成されている。この他の実施形態1によれば、液体注入口738が挿入方向D1の奥側よりも手前側に近い部分に形成されているので、別体の容器7aに液体を容易に補充できるため、カートリッジ4aに十分な量の液体を補充できる。
【0067】
C-2.他の実施形態2:
上記第2実施形態では、カートリッジ4aは、第1実施形態のカートリッジ4と同様に、アダプター402にも液体を収容可能であったが、これに限定されるものではない。カートリッジ4aのアダプター402には液体が収容できない構成であってもよい。
【0068】
C-3.他の実施形態3:
上記各実施形態では、カートリッジ4,4aはインクを収容していたが、他の液体を収容していてもよい。例えば、液体としては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材や、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ (Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材などが挙げられる。
【0069】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態(aspect)によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0070】
(1)本開示の第1の形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジが提供される。このカートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、液体を収容可能な液体収容体と、前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部を有し、前記液体を収容可能なアダプターであって、前記カートリッジ装着部への前記カートリッジの前記挿入方向に沿った寸法が、前記液体収容体よりも小さいアダプターと、前記挿入開口部に挿入された前記液体導入部に接続され、前記カートリッジに収容された前記液体を前記液体導入部に供給する液体供給部と、を備え、前記アダプターは、前記カートリッジ装着部に装着された装着状態において、前記液体供給部と非連通状態となる、液体を保持する液体残留領域を有し、前記液体残留領域の前記液体は、前記回転装着方向とは反対方向に前記カートリッジを移動させて、前記液体供給部と前記液体導入部との接続を解除する接続解除動作の過程において、前記カートリッジの姿勢の変化により前記液体供給部に流入する。この形態によれば、液体収容体に加えアダプターが液体を収容可能であるため、より多くの量の液体をカートリッジに収容できる。また、接続解除動作の過程において、液体残留領域の液体が液体供給部に流入することで、液体残留領域の液体を液体供給部を介して液体導入部に導入できる。これにより、カートリッジに残留する液体の量を低減できる。
【0071】
(2)上記形態において、前記液体収容体と前記アダプターとは一体成形されていてもよい。この形態によれば、液体収容体とアダプターを有するカートリッジを容易に形成できる。
【0072】
(3)上記形態において、前記液体収容体と前記アダプターとはブロー成形によって一体成形されていてもよい。この形態によれば、液体収容体とアダプターとを有するカートリッジをブロー成型によって容易に一体成形できる。
【0073】
(4)本開示の第2の形態によれば、印刷装置のカートリッジ装着部に着脱可能に装着されるカートリッジが提供される。このカートリッジは、前記カートリッジは、前記カートリッジ装着部に水平方向である挿入方向に挿入された挿入完了の後に、前記挿入方向の奥側を回転支点として、前記カートリッジのうち前記挿入方向の手前側部分を、重力方向成分を有する回転装着方向に移動させることで前記カートリッジ装着部に装着され、前記カートリッジは、液体を収容するための液体収容部と、前記カートリッジ装着部の液体導入部が挿入される挿入開口部が形成された底面と、前記液体収容部を挟んで前記底面とは反対側に位置する上面傾斜面であって、前記挿入方向側の第1端部よりも前記挿入方向とは反対方向の第2端部が前記底面に近い側に位置する上面傾斜面と、前記挿入方向の手前側に位置する後面と、前記カートリッジとは別体の容器を接続するための接続孔であって、前記液体収容部と連通する接続孔と、を備え、前記接続孔は、前記上面傾斜面と前記後面との少なくともいずれか一方に形成されている。この形態によれば、接続孔が上面傾斜面と前面との少なくともいずれか一方に形成されているので、カートリッジ装着部にカートリッジが挿入されたり装着されたりした状態においても、別体の容器を容易に接続孔に接続できる。
【0074】
(5)上記形態において、前記挿入完了の後に、前記カートリッジが前記回転装着方向に移動することで前記カートリッジ装着部の装置上壁との間に形成される空間領域であって、前記別体の容器の少なくとも一部を収容する空間領域を形成する上面を有し、前記上面は、前記上面傾斜面を含んでいてもよい。この形態によれば、回転装着方向への移動によってカートリッジの上面とカートリッジ装着部の上壁との間に形成された空間領域を有効に利用して別体の容器を配置できる。
【0075】
(6)上記形態において、前記接続孔は、前記上面傾斜面に形成されており、
前記上面傾斜面は、前記挿入完了の状態において、前記別体の容器を前記接続孔に接続するために前記挿入方向に移動させる接続動作により、前記重力方向の成分を有する外力を受けてもよい。この形態によれば、別体の容器の接続動作によって上面傾斜面が重力方向の成分を有する外力を受けることで、接続動作によってカートリッジを回転装着方向へ移動させてカートリッジ装着部への装着を完了できる。
【0076】
(7)上記形態において、前記接続孔に接続される前記別体の容器は、前記挿入方向の奥側よりも手前側に近い部分に液体を注入する液体注入口を有していてもよい。この形態によれば、液体注入口が挿入方向の奥側よりも手前側に近い部分に形成されているので、別体の容器に液体を容易に補充できるため、カートリッジに十分な量の液体を補充できる。
【0077】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、本開示は、カートリッジの製造方法などの形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…印刷システム、2…印刷用紙、4,4C,4M,4Y,4K,4a…カートリッジ、4A…第1種カートリッジ、4B…第2種カートリッジ、6…カートリッジ装着部、7,7a…容器、8…キャップ部材、10…印刷装置、13…交換用カバー、15…操作ボタン、20…キャリッジ、22…吐出ヘッド、24…チューブ、30…駆動機構、31…制御部、32…タイミングベルト、34…駆動モーター、42…前面、43…上面、44…底面、45…第1側面、46…第2側面、47…後面、50…回路基板、61…収容室、62…第2装置壁、63…装置上壁、64…装置底壁、65…第1装置側壁、66…第2装置側壁、67…第1装置壁、70…装置側端子部、72…注入部、89…コーナー部、401…液体収容体、402…アダプター、432…主面、433,433a…上面傾斜面、433p…第1端部、433t…第2端部、435…接続面、438…栓部材、439…接続孔、442…液体供給部、446…挿入開口部、447…先端開口部、448…供給部位置決め部、449…切り欠き部、450…液体収容部、451…第1液体収容部、452…第2液体収容部、454…液体残留領域、454a…第1液体残留領域、454b…第2液体残留領域、456…収容部底面、457…第1底面、458…第2底面、458a…第1アダプター底面、458b…第2アダプター底面、458c…段差面、462…カートリッジ案内部、481…供給部弁機構、483…付勢部材、485…弁体、487…シール部、497…カートリッジ固定部、521…カートリッジ端子、582…凹部、602…装置案内部、610…支持部材、611…第1支持側壁、612…第2支持側壁、613…主壁、614…第1装置開口部、626…第2装置開口部、628…突出部材、629…装着部付勢部材、642…液体導入部、644…装置側位置決め部、666…解除部、674…挿抜開口部、677…固定形成体、697…装置固定部、698…回転支点、699…液体貯留部、721…装置端子、738…液体注入口、750…メイン室、752…上面、CA1,CA2…中心軸、D1…挿入方向、D2…回転装着方向、D3…解除方向、D4…取り外し方向、L401…寸法、L402…寸法、SP…空間領域