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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076971
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 3/04 20060101AFI20240530BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240530BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B60C3/04 B
B60C13/00 H
B60C11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023187979
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2022188412
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 茉由子
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC19
3D131CA03
3D131EA09X
3D131EA10V
3D131EA10X
3D131GA19
(57)【要約】
【課題】タイヤのウェット性能と低転がり抵抗性能とを両立できるタイヤを提供すること。
【解決手段】このタイヤ1では、タイヤ1を規定リムに装着して180[kPa]の内圧をした無負荷状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ外径OD[mm]およびタイヤ断面幅DW[mm]が、所定の範囲にあり、また、所定の関係を有する。また、所定の交点T7における角度X[deg]が、145≦X≦155の範囲にある。また、比OD/DWおよび角度X[deg]が、8.20≦(OD/DW)×(X×(π/180))≦8.90の関係を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカス層と、一対の交差ベルトを積層して成るベルト層と、トレッドゴムおよびサイドウォールゴムとを備えるタイヤであって、
タイヤを規定リムに装着して180[kPa]の内圧をした無負荷状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、
タイヤ断面幅DW[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]およびタイヤ呼び幅W[mm]に基づいて定義された所定のA値[mm]と、タイヤ偏平率H[%]に基づいて定義された所定のB値[無次元]とから成る数式(W+0.40×(A-(W×B)))を四捨五入して整数化した整数値K1に対してK1×0.96≦DW≦K1×0.99の関係を有し、
タイヤ外径OD[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]と、タイヤインチ数I[inch]に基づいて定義された所定のC値[mm]とから成る数式(W×H/100)を四捨五入して整数化した整数値K2ならびに整数値K2を1.03倍して四捨五入して整数化した整数値K3に対して2×K2+C≦OD≦2×K3+Cの関係を有し、
タイヤ断面幅DW[mm]、タイヤ呼び幅W[mm]、タイヤ外径OD[mm]、前記所定のA値[mm]、前記所定のB値[無次元]およびタイヤ偏平率H[%]が、-1.00<(K1-DW)/(2×K2+C)-OD≦-0.10の関係を有し、
タイヤプロファイルの最大径位置の点P1を定義し、前記タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1を定義し、点T1を通りタイヤ幅方向に平行な直線とタイヤ赤道面との交点T2を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の20[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T3を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の25[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T4を定義し、点T1から点T2までの距離の40[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T5を定義し、点T1から点T2までの距離の45[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T6を定義し、点T3、T4を通る第一直線と点T5、T6を通る第二直線との交点T7を定義し、且つ、
交点T7における前記第一および第二の直線のなす角度X[deg]が、145≦X≦155の範囲にあることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
タイヤ外径OD[mm]とタイヤ断面幅DW[mm]との比OD/DWが、2.50≦OD/DW≦3.50の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
比OD/DWおよび角度X[deg]が、8.20≦(OD/DW)×(X×(π/180))≦8.90の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にあり、且つ、
比OD/DWと比D5/D1とが、0.19≦(OD/DW)×(D5/D1)≦0.33の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にあり、且つ、
比D5/D1と角度X[deg]とが、0.15≦(D5/D1)×(X×(π/180))≦0.27の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有し、且つ、
比OD/DWが、比LT7/(DW/2)に対して4.30≦(OD/DW)/(LT7/(DW/2))≦6.46の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有し、且つ、
角度X[deg]が、比LT7/(DW/2)に対して3.60≦(X×(π/180))/(LT7/(DW/2))≦5.06の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
点P1から点T1までの径方向距離D1の125[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T8を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義するときに、
点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]が、径方向距離D1[mm]に対して0.60≦D1/R1≦0.90の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義するときに、
点T1から点T9までの軸方向距離LT9[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.050≦LT9/(DW/2)≦0.150の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
点T1から点T7までの径方向距離D7の50[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T10を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の125[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T8を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義するときに、
点T1、点T7および点T10を通る円弧の曲率半径R2が、点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]に対して0.50≦R2/R1≦0.95の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にあり、
点P1から点T6までの径方向距離D6[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.02≦D6/D1≦0.15の範囲にあり、且つ、
点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ赤道面から前記一対の交差ベルトのうちの幅広な交差ベルトの端部までの軸方向距離Wb1’に対して0.80≦LT7/Wb1’≦1.20の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項13】
点T7からタイヤ内面までのゲージG7が、点P1からタイヤ内面までのゲージG1に対して0.80≦G7/G1≦1.20の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤのウェット性能と低転がり抵抗性能とを両立できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のタイヤは、タイヤ性能を向上するために、タイヤ接地面とタイヤバットレス部の壁面とのなす角度が適正化されている。かかる構成を採用する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-126103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤのウェット性能と低転がり抵抗性能とを両立できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、カーカス層と、一対の交差ベルトを積層して成るベルト層と、トレッドゴムおよびサイドウォールゴムとを備えるタイヤであって、タイヤを規定リムに装着して180[kPa]の内圧をした無負荷状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ断面幅DW[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]およびタイヤ呼び幅W[mm]に基づいて定義された所定のA値[mm]と、タイヤ偏平率H[%]に基づいて定義された所定のB値[無次元]とから成る数式(W+0.40×(A-(W×B)))を四捨五入して整数化した整数値K1に対してK1×0.96≦DW≦K1×0.99の関係を有し、タイヤ外径OD[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]と、タイヤインチ数I[inch]に基づいて定義された所定のC値[mm]とから成る数式(W×H/100)を四捨五入して整数化した整数値K2ならびに整数値K2を1.03倍して四捨五入して整数化した整数値K3に対して2×K2+C≦OD≦2×K3+Cの関係を有し、タイヤ断面幅DW[mm]、タイヤ呼び幅W[mm]、タイヤ外径OD[mm]、前記所定のA値[mm]、前記所定のB値[無次元]およびタイヤ偏平率H[%]が、-1.00<(K1-DW)/(2×K2+C)-OD≦-0.10の関係を有し、タイヤプロファイルの最大径位置の点P1を定義し、前記タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1を定義し、点T1を通りタイヤ幅方向に平行な直線とタイヤ赤道面との交点T2を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の20[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T3を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の25[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T4を定義し、点T1から点T2までの距離の40[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T5を定義し、点T1から点T2までの距離の45[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T6を定義し、点T3、T4を通る第一直線と点T5、T6を通る第二直線との交点T7を定義し、且つ、交点T7における前記第一および第二の直線のなす角度X[deg]が、145≦X≦155の範囲にある。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかるタイヤでは、タイヤ外径OD[mm]およびタイヤ断面幅DW[mm]が、所定の範囲にあり、また所定の関係を有する構成において、交点T7の角度Xが適正化されるので、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。具体的に、角度Xの上記下限により、ウェット性能が向上し、上記上限により、タイヤの低い転がり抵抗性能が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載したタイヤのタイヤプロファイルを示す説明図である。
図3図3は、図1に記載したタイヤのタイヤプロファイルを示す説明図である。
図4図4は、所定のa値を示す図表である。
図5図5は、所定のA値を示す図表である。
図6図6は、所定のB値を示す図表である。
図7図7は、所定のC値を示す図表である。
図8図8は、図1に記載したタイヤのタイヤプロファイルを示す説明図である。
図9図9は、図1に記載したタイヤのタイヤプロファイルを示す説明図である。
図10図10は、図1に記載したタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
図11図11は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図12図12は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図13図13は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。この実施の形態では、タイヤの一例として、乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。
【0011】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0013】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、80[deg]以上100[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0014】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~143を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~143は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを含む。
【0015】
一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のコード角度を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。また、一対の交差ベルト141、142は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。ここでは、タイヤ径方向内側にある交差ベルト141を内側交差ベルトと定義し、タイヤ径方向外側にある交差ベルト142を外側交差ベルトと定義する。
【0016】
ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のコード角度を有する。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。また、ベルトカバー143が交差ベルト141、142の全域を覆って配置される。
【0017】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ1のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0018】
[タイヤプロファイル]
図2および図3は、図1に記載したタイヤ1のタイヤプロファイルを示す説明図である。これらの図において、図2は、タイヤ赤道面CLから最大幅位置T1までのタイヤプロファイルを示し、図3は、図2に記載したタイヤプロファイルの交点T7付近の拡大図を示している。図4図7は、所定のa値、A値、B値およびC値を示す図表である。ここでは、タイヤプロファイルがタイヤ赤道面CLを中心とする左右対称な構造を有するため、タイヤ赤道面CLを境界とする片側領域について詳細に説明する。
【0019】
図1および図2において、タイヤを規定リムに装着して180[kPa]の内圧をした無負荷状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤプロファイルの最大径位置の点P1および最大幅位置の点T1を定義する。
【0020】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「MEASURING RIM」をいう。また、後述する規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0021】
タイヤプロファイルの最大径位置の点P1は、タイヤ子午線方向の断面視におけるタイヤプロファイルとタイヤ赤道面CLとの交点として定義される。
【0022】
タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1は、タイヤ断面幅DWの端点として定義される。
【0023】
タイヤ断面幅DWは、タイヤを規定リムに装着して180[kPa]を付与すると共に無負荷状態としたときの、タイヤ側面の模様、文字などを除いたサイドウォール間の直線距離として測定される。図1の構成では、タイヤ断面幅DWが、タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1、T1を端点として測定される。
【0024】
このとき、タイヤ断面幅DW[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]およびタイヤ呼び幅W[mm]に基づいて定義された所定のA値[mm]と、タイヤ偏平率H[%]に基づいて定義された所定のB値[無次元]とから成る数式(W+0.40×(A-(W×B)))を四捨五入して整数化した整数値K1に対してK1×0.96≦DW≦K1×0.99の関係を有し、好ましくはK1×0.97≦DW≦K1×0.99の関係を有する。
【0025】
タイヤ呼び幅W[mm]は、タイヤ断面幅の標準値であり、タイヤサイズの表示に用いられた数値として定義される。
【0026】
タイヤ偏平率H[%]は、タイヤ断面高さとタイヤ断面幅との比率の標準値であり、タイヤサイズの表示に用いられた数値として定義される。
【0027】
所定のA値[mm]は、タイヤ偏平率Hおよびタイヤ呼び幅Wに基づいて次のように定義される。まず、所定のa値が、図4に示すタイヤ偏平率Hとの対応表に基づいて一義的に選択される。次に、選択されたa値とタイヤ呼び幅Wとの積(a×W)が算出される。そして、図5に示すA値の一覧から、積(a×W)に最も近い数値が一義的に選択されて、A値として設定される。
【0028】
所定のB値[無次元]は、タイヤ偏平率Hに基づいて次のように定義される。すなわち、図6に示すように、タイヤ偏平率Hが50[%]以上である場合にはB値が0.70に設定され、タイヤ偏平率Hが20[%]以上45[%]以下である場合にはB値が0.85に設定される。
【0029】
また、タイヤ外径OD[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]と、タイヤインチ数I[inch]に基づいて定義された所定のC値[mm]とから成る数式(W×H/100)を四捨五入して整数化した整数値K2ならびに整数値K2を1.03倍して四捨五入して整数化した整数値K3に対して2×K2+C≦OD≦2×K3+Cの関係を有する。また、好ましくはタイヤ外径OD[mm]が、整数値K3および整数値K3を1.01倍して四捨五入して整数化した整数値K4に対して2×K4+C≦OD≦2×K3+Cの関係を有する。
【0030】
タイヤインチ数I[inch]は、ホイールのリム径の標準値であり、タイヤサイズの表示に用いられた数値として定義される。
【0031】
C値[mm]は、図7に示すタイヤインチ数I[inch]との対応表に基づいて一義的に選択されて、設定される。
【0032】
また、タイヤ断面幅DW[mm]、タイヤ呼び幅W[mm]、タイヤ外径OD[mm]、前記所定のA値[mm]、前記所定のB値[無次元]およびタイヤ偏平率H[%]が、-1.00<(K1-DW)/(2×K2+C)-OD≦-0.10の関係を有し、好ましくは-1.00<(K1-DW)/(2×K2+C)-OD≦-0.30の関係を有する。
【0033】
また、タイヤ外径OD[mm]とタイヤ断面幅DW[mm]との比OD/DWが、2.50≦OD/DW≦3.50の範囲にあり、好ましくは2.80≦OD/DW≦3.40の範囲にある。これにより、比OD/DWが適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が両立する。特に、比OD/DWの上記下限により、カーカス層13の張力が確保されて、タイヤの剛性が確保される。また、タイヤ外径OD[mm]が550≦OD≦760の範囲、好ましくは560≦OD≦750の範囲にあり、タイヤ断面幅DW[mm]が150≦DW≦250の範囲、好ましくは160≦DW≦240の範囲にあるタイヤに適用されることが好ましい。
【0034】
具体的なタイヤサイズは、特に限定されるものではないが、一例として好ましい範囲を示す。
【0035】
タイヤ外径OD[mm]およびタイヤ断面幅DW[mm]が、タイヤサイズに応じて次の数値範囲に設定される。すなわち、タイヤサイズ185/65R14の場合は、596≦OD≦604および181≦DW≦187、タイヤサイズ165/55R15の場合は、563≦OD≦569および163≦DW≦168、タイヤサイズ195/65R15の場合は、635≦OD≦643および193≦DW≦199、タイヤサイズ195/65R16の場合は、660≦OD≦668および193≦DW≦199、タイヤサイズ205/60R16の場合は、652≦OD≦660および201≦DW≦206、タイヤサイズ195/60R17の場合は、666≦OD≦674および193≦DW≦199、タイヤサイズ215/50R17の場合は、648≦OD≦654および217≦DW≦224、タイヤサイズ215/60R17の場合は、690≦OD≦698および212≦DW≦219、タイヤサイズ215/65R17の場合は、712≦OD≦720および212≦DW≦219、タイヤサイズ225/60R17の場合は、702≦OD≦710および219≦DW≦226、タイヤサイズ235/60R18の場合は、739≦OD≦747および230≦DW≦238。
【0036】
また、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]が、規定リムの呼び径[mm]に対してに対して10[%]以上20[%]以下の範囲にある。これにより、カーカス張力が確保されて、タイヤサイド部の剛性が確保される。
【0037】
また、図2に示すように、点T1を通りタイヤ幅方向に平行な直線とタイヤ赤道面との交点T2を定義する。また、点P1から点T1までの径方向距離D1の20[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T3を定義する。また、点P1から点T1までの径方向距離D1の25[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T4を定義する。また、点T1から点T2までの距離の40[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T5を定義する。また、点T1から点T2までの距離の45[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T6を定義する。また、また、図2および図3に示すように、点T3、T4を通る第一直線(図中の符号省略)と点T5、T6を通る第二直線との交点T7を定義する。
【0038】
このとき、交点T7における第一および第二の直線のなす角度X[deg](図2および図3参照)が、145≦X≦155の範囲にあり、好ましくは148≦X≦153の範囲にある。これにより、タイヤ接地端付近におけるタイヤ接地面とバットレス部の壁面とのなす角度が適正化される。具体的に、上記下限により、トレッド部ショルダー領域の接地圧が低減されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が確保される。上記上限により、バットレス部のゴムボリュームが増大することに起因するタイヤ質量の増加が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。
【0039】
また、比OD/DWおよび角度X[deg]が、8.20≦(OD/DW)×(X×(π/180))≦8.90の関係を有し、好ましくは8.30≦(OD/DW)×(X×(π/180))≦8.80の関係を有する。
【0040】
図8は、図1に記載したタイヤ1のタイヤプロファイルを示す説明図である。同図において、比較例1、2は、後述する図11の比較例1、2のタイヤプロファイルを示する。また、実施例Xは、比較例1、2と比較して、大きなタイヤ外径OD、小さなタイヤ断面幅DWおよび大きな角度X(図2参照)を有する。このため、実施例Xは、比較例1、2と比較して、上記数式(OD/DW)×(X×(π/180))の数値が大きく設定される。
【0041】
かかる構成では、上記数式の上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、交点T7の角度Xが大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する。
【0042】
また、図2において、点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にあり、好ましくは0.07≦D5/D1≦0.09の範囲にある。これにより、タイヤ接地端付近におけるタイヤ接地面の肩落ち量が適正化される。具体的に、上記下限により、タイヤ接地幅が増大することに起因するタイヤ質量の増加が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。上記上限により、タイヤ接地幅が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。
【0043】
また、比OD/DWと比D5/D1とが、0.19≦(OD/DW)×(D5/D1)≦0.33の関係を有し、好ましくは0.22≦(OD/DW)×(D5/D1)≦0.30の関係を有する。上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、比D5/D1が大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、接地幅が適切に確保されて、ウェット性能が向上する。
【0044】
また、比D5/D1と角度X[deg]とが、0.15≦(D5/D1)×(X×(π/180))≦0.27の関係を有し、好ましくは0.17≦(D5/D1)×(X×(π/180))≦0.25の関係を有する。上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する。特に、比D5/D1が大きく、且つ、交点T7の角度Xが大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、接地幅が適切に確保されて、ウェット性能が向上する。
【0045】
また、点P1から点T6までの径方向距離D6[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.02≦D6/D1≦0.15の範囲にあり、好ましくは0.04≦D6/D1≦0.10の範囲にある。これにより、比D6/D1が適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が確保される。
【0046】
また、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有し、好ましくは0.60≦LT7/(DW/2)≦0.73の関係を有する。これにより、点T7、すなわちタイヤ接地面とバットレス部の壁面との交差位置が適正化される。具体的に、上記下限により、タイヤ接地幅が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。上記上限により、タイヤ接地幅が増大することに起因するタイヤ質量の増加が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。
【0047】
また、比OD/DWが、比LT7/(DW/2)に対して4.30≦(OD/DW)/(LT7/(DW/2))≦6.46の範囲にあり、好ましくは4.60≦(OD/DW)/(LT7/(DW/2))≦6.00の範囲にある。上記下限により、接地幅が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、比LT7/(DW/2)が小さく設定されることで、上記した転がり抵抗の低減作用がが顕著に得られる。上記上限により、接地長が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される。
【0048】
また、角度X[deg]が、比LT7/(DW/2)に対して3.60≦(X×(π/180))/(LT7/(DW/2))≦5.06の関係を有し、好ましくは3.75≦(X×(π/180))/(LT7/(DW/2))≦4.10の関係を有する。上記下限により、接地幅が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される。特に、交点T7の角度Xが大きく、且つ、比LT7/(DW/2)が小さく設定されることで、上記した転がり抵抗の低減作用が顕著に得られる。上記上限により、接地長が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される。
【0049】
図9は、図1に記載したタイヤ1のタイヤプロファイルを示す説明図である。同図は、タイヤ赤道面を境界とする片側領域のタイヤプロファイルを示している。
【0050】
図9において、点P1から点T1までの径方向距離D1の125[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T8を定義する。また、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義する。また、点T1から点T7までの径方向距離D7の50[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T10を定義する。
【0051】
このとき、点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]が、径方向距離D1[mm]に対して0.60≦D1/R1≦0.90の範囲にあり、好ましくは0.65≦D1/R1≦0.80の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される。具体的に、上記下限により、タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1における応力集中が緩和されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。上記上限により、ビードフィラー12付近における応力集中が緩和されて、タイヤのビード故障が抑制される。
【0052】
また、点T1から点T9までの軸方向距離LT9[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm](図1参照)に対して0.050≦LT9/(DW/2)≦0.150の範囲にあり、好ましくは0.050≦LT9/(DW/2)≦0.100の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される。具体的に、上記下限により、カーカス張力が確保されて、タイヤサイド部の剛性が確保される。上記上限により、タイヤ径方向内側領域のゴムボリュームの増加に起因するタイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0053】
また、点T1、点T7および点T10を通る円弧の曲率半径R2が、点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]に対して0.50≦R2/R1≦0.95の範囲にあり、好ましくは0.60≦R2/R1≦0.90の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される。具体的に、上記下限により、タイヤ径方向内側領域のゴムボリュームの増加に起因するタイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。上記上限により、カーカス張力が確保されて、タイヤサイド部の剛性が確保される。
【0054】
図10は、図1に記載したタイヤ1のトレッド部を示す拡大図である。同図は、タイヤ赤道面CLを境界とする片側領域のトレッド部を示している。
【0055】
図1の構成では、タイヤ1が、複数の周方向主溝2c、2Sをトレッド面の接地領域に備える。ここでは、これらの周方向主溝2c、2Sのうちのタイヤ赤道面CLに最も近い周方向主溝2cをセンター主溝として定義し、タイヤ幅方向の最外側にある周方向主溝をショルダー主溝として定義する。
【0056】
また、図1に示すように、センター主溝2cがタイヤ赤道面CL上にある。しかし、これに限らず、センター主溝2cがタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0057】
また、図1の構成では、タイヤ1が、単一のセンター主溝2cおよび一対のショルダー主溝2S、2Sから成る3本の周方向主溝を備えている。しかし、これに限らず、タイヤ1が4本以上の周方向主溝を備えても良い(図示省略)。例えば、一対のセンター主溝2c、2cがタイヤ赤道面CLの左右に配置されても良いし、センター主溝2cとショルダー主溝2Sとの間にミドル主溝が配置されても良い(図示省略)。
【0058】
また、図10において、タイヤ赤道面CLからショルダー主溝2Sまでの距離Dsが、タイヤ断面幅DWに対して0.03≦Ds/DW≦0.20の範囲にあり、好ましくは0.10≦Ds/DW≦0.20の範囲にある。これにより、ショルダー主溝2Sの位置が適正化される。具体的に、上記下限により、トレッド部センター領域の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。上記上限により、ショルダー主溝2Sによる排水作用が確保されて、タイヤのウェット性能が確保される。
【0059】
ショルダー主溝2Sまでの距離Dsは、タイヤを規定リムに装着して180[kPa]を付与すると共に無負荷状態としたときの、ショルダー主溝2Sの溝中心線を端点として測定される。
【0060】
ショルダー主溝2Sの溝中心線は、溝幅の端点の中点を接続した仮想線として定義される。溝中心線がジグザグ形状あるいは波状形状を有する構成では、溝中心線の仮想線が、振幅の中心線を通りタイヤ赤道面に平行な直線として定義される。
【0061】
また、図1において、一対の交差ベルト141、142のうちの幅広な交差ベルト(図1では、内径側交差ベルト141)のベルト幅Wb1が、タイヤ断面幅DWに対して0.60≦Wb1/DW≦0.90の範囲にあり、好ましくは0.70≦Wb1/DW≦0.85の範囲にある。これにより、ベルト幅Wb1が適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する。
【0062】
ベルトプライの幅Wb1は、ベルトプライの左右の端部(より詳細には、タイヤ幅方向の最も外側にあるベルトコード)のタイヤ幅方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して180[kPa]を付与すると共に無負荷状態にて測定される。
【0063】
また、図10において、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ赤道面CLから一対の交差ベルト141、142のうちの幅広な交差ベルト(図1では内径側交差ベルト141)の端部までの軸方向距離Wb1’に対して0.80≦LT7/Wb1’≦1.20の範囲にあり、好ましくは0.90≦LT7/Wb1’≦1.10の範囲にある。これにより、幅広な交差ベルト141の端部に対する点T7の軸方向位置が適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する。
【0064】
例えば、図1の構成では、ベルト層14の内径側交差ベルト141および外径側交差ベルト142がタイヤ赤道面CLを中心とする左右対称な構造を有している。また、内径側交差ベルト141が外径側交差ベルト142よりも幅広である。また、図10に示すように、内径側交差ベルト141のエッジ部が点T7よりもタイヤ幅方向外側(1.00<LT7/Wb1’)にあることが好ましい。また、タイヤ赤道面CLから幅広な交差ベルト141の端部までの軸方向距離Wb1’が、ベルト幅Wb1の半幅(Wb1/2)に等しい。
【0065】
また、図10において、点T7からタイヤ内面までのゲージG7が、点P1からタイヤ内面までのゲージG1に対して0.80≦G7/G1≦1.20の範囲にあり、好ましくは0.90≦G7/G1≦1.10の範囲にある。これにより、トレッド部ショルダー領域のトレッドゲージが適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する。
【0066】
タイヤ内面までのゲージG1、G7は、点P1および点T7のそれぞれからタイヤ内面に下した垂線の長さとして測定される。
【0067】
[効果]
以上説明したように、[1]このタイヤ1は、カーカス層13と、一対の交差ベルト141、142を積層して成るベルト層14と、トレッドゴム15およびサイドウォールゴム16とを備える(図1参照)。また、タイヤ1を規定リムに装着して180[kPa]の内圧をした無負荷状態におけるタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ断面幅DW[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]およびタイヤ呼び幅W[mm]に基づいて定義された所定のA値[mm]と、タイヤ偏平率H[%]に基づいて定義された所定のB値[無次元]とから成る数式(W+0.40×(A-(W×B)))を四捨五入して整数化した整数値K1に対してK1×0.96≦DW≦K1×0.99の関係を有し、タイヤ外径OD[mm]が、タイヤ呼び幅W[mm]と、タイヤ偏平率H[%]と、タイヤインチ数I[inch]に基づいて定義された所定のC値[mm]とから成る数式(W×H/100)を四捨五入して整数化した整数値K2ならびに整数値K2を1.03倍して四捨五入して整数化した整数値K3に対して2×K2+C≦OD≦2×K3+Cの関係を有し、タイヤ断面幅DW[mm]、タイヤ呼び幅W[mm]、タイヤ外径OD[mm]、前記所定のA値[mm]、前記所定のB値[無次元]およびタイヤ偏平率H[%]が、-1.00<(K1-DW)/(2×K2+C)-OD≦-0.10の関係を有する。タイヤプロファイルの最大径位置の点P1を定義し、前記タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1を定義し、点T1を通りタイヤ幅方向に平行な直線とタイヤ赤道面との交点T2を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の20[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T3を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の25[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T4を定義し、点T1から点T2までの距離の40[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T5を定義し、点T1から点T2までの距離の45[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T6を定義し、点T3、T4を通る第一直線と点T5、T6を通る第二直線との交点T7を定義する(図2参照)。このとき、交点T7における前記第一および第二の直線のなす角度X[deg]が、145≦X≦155の範囲にある。
【0068】
かかる構成では、タイヤ外径OD[mm]およびタイヤ断面幅DW[mm]が、所定の範囲にあり、また所定の関係を有する構成において、交点T7の角度Xが適正化されるので、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。具体的に、角度Xの上記下限により、ウェット性能が向上し、上記上限により、タイヤの体転がり抵抗性能が確保される。
【0069】
また、[2]このタイヤ1では、上記[1]に記載のタイヤ1において、タイヤ外径OD[mm]とタイヤ断面幅DW[mm]との比OD/DWが、2.50≦OD/DW≦3.50の範囲にある。これにより、タイヤ外径OD[mm]およびタイヤ断面幅DW[mm]の関係が適正化される利点がある。
【0070】
また、[3]このタイヤ1では、上記[1]または[2]に記載のタイヤ1において、比OD/DWおよび角度X[deg]が、8.20≦(OD/DW)×(X×(π/180))≦8.90の関係を有する。かかる構成では、上記数式(OD/DW)×(X×(π/180))の上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、交点T7の角度Xが大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。
【0071】
また、[4]このタイヤ1では、上記[1]~[3]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にある(図2参照)。また、比OD/DWと比D5/D1とが、0.19≦(OD/DW)×(D5/D1)≦0.33の関係を有する。上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、比D5/D1が大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、接地幅が適切に確保されて、ウェット性能が向上する利点がある。
【0072】
また、[5]このタイヤ1では、上記[1]~[4]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にある(図2参照)。また、比D5/D1と角度X[deg]とが、0.15≦(D5/D1)×(X×(π/180))≦0.27の関係を有する。上記下限により、ショルダー部の接地圧が適切に確保されて、低転がり抵抗性能とウェット性能とが両立する利点がある。特に、比D5/D1が大きく、且つ、交点T7の角度Xが大きく設定されることで、上記した低転がり抵抗性能とウェット性能との両立作用が顕著に得られる。上記上限により、接地幅が適切に確保されて、ウェット性能が向上する利点がある。
【0073】
また、[6]このタイヤ1では、上記[1]~[5]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有する(図2参照)。また、比OD/DWが、比LT7/(DW/2)に対して4.30≦(OD/DW)/(LT7/(DW/2))≦6.46の範囲にある。上記下限により、接地幅が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される利点がある。特に、タイヤ外径ODが大きく、タイヤ断面幅DWが小さく、且つ、比LT7/(DW/2)が小さく設定されることで、上記した転がり抵抗の低減作用がが顕著に得られる。上記上限により、接地長が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される利点がある。
【0074】
また、[7]このタイヤ1では、上記[1]~[6]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有する(図2参照)。また、角度X[deg]が、比LT7/(DW/2)に対して3.60≦(X×(π/180))/(LT7/(DW/2))≦5.06の関係を有する。上記下限により、接地幅が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される利点がある。特に、交点T7の角度Xが大きく、且つ、比LT7/(DW/2)が小さく設定されることで、上記した転がり抵抗の低減作用が顕著に得られる。上記上限により、接地長が適切に確保されて、転がり抵抗の低減作用が確保される利点がある。
【0075】
また、[8]このタイヤ1では、上記[1]~[7]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T1までの径方向距離D1の125[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T8を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義する(図2参照)。このとき、点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]が、径方向距離D1[mm]に対して0.60≦D1/R1≦0.90の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される利点がある。具体的に、上記下限により、タイヤプロファイルの最大幅位置の点T1における応力集中が緩和されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。上記上限により、ビードフィラー12付近における応力集中が緩和されて、タイヤのビード故障が抑制される。
【0076】
また、[9]このタイヤ1では、上記[1]~[8]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義する(図2参照)。このとき、点T1から点T9までの軸方向距離LT9[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.050≦LT9/(DW/2)≦0.150の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される利点がある。具体的に、上記下限により、カーカス張力が確保されて、タイヤサイド部の剛性が確保される。上記上限により、タイヤ径方向内側領域のゴムボリュームの増加に起因するタイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0077】
また、[10]このタイヤ1では、上記[1]~[9]のいずれか一つのタイヤ1において、点T1から点T7までの径方向距離D7の50[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T10を定義し、点P1から点T1までの径方向距離D1の125[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T8を定義する(図2参照)。このとき、点P1から点T1までの径方向距離D1の150[%]の位置におけるタイヤプロファイル上の点T9を定義するときに、点T1、点T7および点T10を通る円弧の曲率半径R2が、点T1、点T8および点T9を通る円弧の曲率半径R1[mm]に対して0.50≦R2/R1≦0.95の範囲にある。これにより、タイヤ径方向内側領域におけるタイヤサイド部のプロファイルが適正化される利点がある。具体的に、上記下限により、タイヤ径方向内側領域のゴムボリュームの増加に起因するタイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。上記上限により、カーカス張力が確保されて、タイヤサイド部の剛性が確保される。
【0078】
また、[11]このタイヤ1では、上記[1]~[10]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T5までの径方向距離D5[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.06≦D5/D1≦0.10の範囲にある(図2参照)。また、点P1から点T6までの径方向距離D6[mm]が、点P1から点T1までの径方向距離D1[mm]に対して0.02≦D6/D1≦0.15の範囲にある。また、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ断面幅DW[mm]に対して0.50≦LT7/(DW/2)≦0.75の関係を有する。かかる構成では、点T5、T6およびT7の位置が適正化されて、タイヤ接地端付近におけるタイヤプロファイルが適正化される。これにより、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する利点がある。
【0079】
また、[12]このタイヤ1では、上記[1]~[11]のいずれか一つのタイヤ1において、点P1から点T7までの軸方向距離LT7[mm]が、タイヤ赤道面CLから一対の交差ベルト141、142のうちの幅広な交差ベルト(図1では内径側交差ベルト141)の端部までの軸方向距離Wb1’に対して0.80≦LT7/Wb1’≦1.20の範囲にある(図10参照)。これにより、幅広な交差ベルト141の端部に対する点T7の軸方向位置が適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する利点がある。
【0080】
また、[13]このタイヤ1では、上記[1]~[12]のいずれか一つのタイヤ1において、点T7からタイヤ内面までのゲージG7が、点P1からタイヤ内面までのゲージG1に対して0.80≦G7/G1≦1.20の範囲にある(図10参照)。これにより、トレッド部ショルダー領域のトレッドゲージが適正化されて、タイヤの低転がり抵抗性能およびウェット性能が向上する利点がある。
【実施例0081】
図11図13は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0082】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)低転がり抵抗性能および(2)ウェット性能に関する評価が行われた。
【0083】
(1)低転がり抵抗性能に関する評価では、ドラム径1707[mm]のドラム試験機が用いられ、ISO28580に準拠して速度80[km/h]の条件にて試験タイヤの転がり抵抗係数の逆数が算出されて評価が行われる。この評価は、比較例1を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0084】
(2)ウェット性能に関する評価では、試験タイヤを装着した試験車両が水深1[mm]で散水したアスファルト路を走行し、初速度40[km/h]からの制動距離が測定される。そして、測定結果に基づいて比較例1を基準(100)とした指数評価が行われる。評価は、その数値が大きいほど好ましい。
【0085】
実施例および比較例の試験タイヤは、図1および図2の構成を備える。また、実施例1~27および比較例1では、タイヤサイズ195/65R15の試験タイヤがリムサイズ15×6Jのリムに組み付けられる。比較例2では、タイヤサイズ225/65R17の試験タイヤがリムサイズ17×6.5Jのリムに組み付けられる。実施例28~30では、タイヤサイズ235/60R18の試験タイヤがリムサイズ18×7Jのリムに組み付けられる。また、上記(1)低転がり抵抗性能に関する評価では、試験タイヤに210[kPa]の内圧およびJATMAの最大負荷能力の80[%]の荷重が付与され、上記(2)のウェット性能に関する評価では、試験タイヤに180[kPa]の内圧およびJATMAの最大負荷能力の75[%]の荷重が付与される。
【0086】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの低転がり抵抗性能とウェット性能とを両立がすることが分かる。
【符号の説明】
【0087】
1 タイヤ;2c、2S 主溝;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;143 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13