(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076972
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】積層構造物及びその製造方法、検査デバイス、並びにシート状構造物用熱接着シート及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240530BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188110
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022188117
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】文珠 卓也
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC09
2G058DA07
2G058GA01
(57)【要約】
【課題】流通性を十分に確保しつつ、簡便に貼合することができる積層構造物の提供。
【解決手段】
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物と、
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物と、
前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物との間に、前記第一のシート状構造物における前記多孔質構造と、前記第二のシート状構造物における前記多孔質構造とが互いに対向するようにして、かつ前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物とが離隔しないように、前記多孔質構造の表面の一部に接触して配置された接着層と、を有する積層構造物である。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物と、
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物と、
前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物との間に、前記第一のシート状構造物における前記多孔質構造と、前記第二のシート状構造物における前記多孔質構造とが互いに対向するようにして、かつ前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物とが離隔しないように、前記多孔質構造の表面の一部に接触して配置された接着層と、を有することを特徴とする積層構造物。
【請求項2】
前記接着層は、耐水性である、請求項1に記載の積層構造物。
【請求項3】
前記接着層は、平行線状である、請求項2に記載の積層構造物。
【請求項4】
前記接着層は、メッシュ状である、請求項3に記載の積層構造物。
【請求項5】
前記接着層における開口部1つあたりの開口面積に対する前記流路における接続面積の比が5以上である、請求項4に記載の積層構造物。
【請求項6】
前記接着層は、熱接着剤を含む、請求項1に記載の積層構造物。
【請求項7】
複数の開口部を有する基材と、前記基材上に前記熱接着剤がメッシュ状に配された前記接着層と、を有する熱接着シートを有する、請求項6に記載の積層構造物。
【請求項8】
前記基材は、メッシュ状である、請求項7に記載の積層構造物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の積層構造物からなることを特徴とする検査デバイス。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の積層構造物の製造方法であって、
剥離基材上に、熱接着剤が平行線状に配された前記接着層を形成する接着層形成工程と、
前記接着層を、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第一のシート状構造物に対して転写する転写工程と、
前記剥離基材を除去し、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第二のシート状構造物を貼合する貼合工程と、
を含むことを特徴とする積層構造物の製造方法。
【請求項11】
前記接着層形成工程において、前記熱接着剤がメッシュ状に配された前記接着層を形成する、請求項10に記載の積層構造物の製造方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の積層構造物の製造方法であって、
複数の開口部を有する基材と、前記基材上に熱接着剤が平行線状に配された前記接着層と、を有する熱接着シートを、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第一のシート状構造物に対して転写する転写工程と、
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第二のシート状構造物を貼合する貼合工程と、を含むことを特徴とする積層構造物の製造方法。
【請求項13】
前記熱接着シートは、前記基材と、前記基材上に熱接着剤がメッシュ状に配された前記接着層と、を有する、請求項12に記載の積層構造物の製造方法。
【請求項14】
流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物に使用するためのシート状構造物用熱接着シートであって、
前記シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材と、前記基材上に熱接着剤がメッシュ状に配された接着層と、を有することを特徴とするシート状構造物用熱接着シート。
【請求項15】
流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物に使用するためのシート状構造物用熱接着シートの使用方法であって、
前記シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材と、前記基材上に熱接着剤がメッシュ状に配された接着層と、を有することを特徴とするシート状構造物用熱接着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造物及びその製造方法、検査デバイス、並びにシート状構造物用熱接着シート及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活や臨床現場において、簡易的で迅速な診断を可能とする検査デバイスの開発が進んでいる。検査デバイスとしては、妊娠検査薬がその代表例として挙げられる。抗原等の対象物質を含有する被検査液が検査デバイスに導入されると、当該被検査液は当該検査デバイス内の流路に流通する。すると、予め流路内に仕込んでおいた抗体等の標識媒体と、当該被検査液内の対象物質とが反応して顕色(発色)し、対象物質の存在を確認することができる。
【0003】
検査デバイスの一例である検査チップは、「μ-PADs(microfluidicpaper-basedanalyticaldevices)」とも称されることがあり、(1)安価、(2)ポンプレス、(3)大がかりな装置が不要、(4)廃棄が容易などといった多くの利点を有するものであり、改良のための研究が世界的に進められている。
【0004】
検査チップとしては様々なものが既に報告されており、例えば、ワックスプリンター又はインクジェットプリンターを用いて、基材である紙上に流路や反応スポットを形成させたマイクロ流体デバイスなどが挙げられる(非特許文献1参照)。
また、多段階反応を展開する目的や、流路内の検体を整流する効果を付与する目的等から、3次元流路が形成された検査チップも提案されている。例えば、一枚のろ紙中に3次元流路を形成したもの(特許文献1参照)、流路を形成した複数枚のチップを両面テープで貼合したもの(非特許文献2参照)、及び流路を形成した複数枚のチップをホッチキスで貼合したもの(特許文献2参照)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-175970号公報
【特許文献2】特開2022-018036号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Whitesideら,AnalyticalChemistry,Vol.82,No.1,January1,2010
【非特許文献2】Quoc Trung Huaら,analytical sciences,Vol.35,April,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の非特許文献1に記載の技術を含む検査デバイスは、流路を平面方向にしか展開することができないため、構造を複雑化することが困難であり、多段階反応を目的とする検査デバイスとしては不向きであった。同様に、上述の特許文献1に記載の発明を含むデバイスは、一枚のろ紙中に形成できる3次元構造に限界があり、多段階反応を目的とする検査デバイスとしては複雑性に改良の余地があった。上述の非特許文献1に記載の技術を含む検査デバイスは、流路が形成された複数枚の基材を両面テープで貼合しているため、基材間において生じる両面テープの厚さ分のギャップを埋める必要があり、組み立て加工が煩雑であった。上述の特許文献2に記載の発明を含むデバイスは、流路が形成された複数枚の基材をホッチキスで貼合しているため、各基材の確実な貼合が難しく、安定した液体の流通性の確保に懸念点があった。
【0008】
本発明は、従来における上記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、流通性を十分に確保しつつ、簡便に貼合することができる積層構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1>
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物と、
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物と、
前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物との間に、前記第一のシート状構造物における前記多孔質構造と、前記第二のシート状構造物における前記多孔質構造とが互いに対向するようにして、かつ前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物とが離隔離設しないように、前記多孔質構造の表面の一部に接触して配置された接着層と、を有することを特徴とする積層構造物である。
<2>
前記接着層は、耐水性である、前記<1>に記載の積層構造物である。
<3>
前記接着層は、平行線状である、前記<1>又は<2>に記載の積層構造物である。
<4>
前記接着層は、メッシュ状である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の積層構造物である。
<5>
前記接着層における開口部1つあたりの開口面積に対する前記流路における接続面積の比が5以上である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の積層構造物である。
<6>
前記接着層は、熱接着剤を含む、前記<1>から前記<5>のいずれかに記載の積層構造物である。
<7>
複数の開口部を有する基材上に、前記熱接着剤がメッシュ状に配された前記接着層を有する熱接着シートを有する、前記<6>に記載の積層構造物である。
<8>
前記基材は、メッシュ状である、前記<7>に記載の積層構造物である。
<9>
前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の積層構造物からなることを特徴とする検査デバイスである。
<10>
前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の積層構造物の製造方法であって、
剥離基材上に、熱接着剤が平行線状に配された前記接着層を形成する接着層形成工程と、
前記接着層を、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第一のシート状構造物に対して転写する転写工程と、
前記剥離基材を除去し、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第二のシート状構造物を貼合する貼合工程と、
を含むことを特徴とする積層構造物の製造方法である。
<11>
前記接着層形成工程において、前記熱接着剤がメッシュ状に配された前記接着層を形成する、前記<10>に記載の積層構造物の製造方法である。
<12>
前記<1>から前記<8>のいずれかに記載の積層構造物の製造方法であって、
複数の開口部を有する基材上に、熱接着剤が平行線状に配された前記接着層を有する熱接着シートを、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第一のシート状構造物に対して転写する転写工程と、
流路となる多孔質構造を表面に露出して有する前記第二のシート状構造物を貼合する貼合工程と、を含むことを特徴とする積層構造物の製造方法である。
<13>
前記熱接着シートは、メッシュ状に配された前記熱接着剤を含む前記接着層を有する、前記<12>に記載の積層構造物の製造方法である。
<14>
流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物用熱接着シートであって、
前記シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材上に、熱接着剤がメッシュ状に配された接着層を有することを特徴とするシート状構造物用熱接着シートである。
<15>
流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物用熱接着シートの使用方法であって、
前記シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材上に、熱接着剤がメッシュ状に配された接着層を有することを特徴とするシート状構造物用熱接着シートの使用方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流通性を十分に確保しつつ、簡便に貼合することができる積層構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、積層構造物の一例を示す概略断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1態様の積層構造物における概略断面図である。
【
図2B】
図2Bは、第1態様の積層構造物における各層の概略斜視図である
【
図3A】
図3Aは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略斜視図である。
【
図3C】
図3Cは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図3D】
図3Dは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図4】
図4は、
図3Cの第一のシート状構造物をa-a´線で切断した際の概略断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1態様の積層構造物における接着層を、α方向から見たときの一例を示す概略平面図である。
【
図5B】
図5Bは、第1態様の積層構造物における接着層を、α方向から見たときの他の例を示す概略平面図である。
【
図6A】
図6Aは、第1態様の積層構造物における接着層の分布の一例を説明するための概略斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、第1態様の積層構造物における接着層の分布の他の例を説明するための概略斜視図である。
【
図7】
図7は、熱接着シートの一例を示す画像である。
【
図8】
図8は、第2態様の積層構造物における概略断面図である。
【
図9A】
図9Aは、
図8の積層構造物における第2態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図9B】
図9Bは、
図8の積層構造物における第2態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図10】
図10は、
図9Aの第一のシート状構造物をb-b´線で切断した際の概略断面図である。
【
図11】
図11は、第3態様の積層構造物における概略断面図である。
【
図12A】
図12Aは、
図11の積層構造物における第3態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図12B】
図12Bは、
図11の積層構造物における第3態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図14A】
図14Aは、第4態様における積層構造物の第4態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図14B】
図14Bは、第4態様における積層構造物の第4態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図15A】
図15Aは、第5態様における積層構造物の第5態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図15B】
図15Bは、第5態様における積層構造物の第5態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図16A】
図16Aは、第6態様における積層構造物の第6態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図
【
図16B】
図16Bは、第6態様における積層構造物の第6態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図
【
図17A】
図17Aは、第7態様における積層構造物の第7態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図17B】
図17Bは、第7態様における積層構造物の第7態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図18A】
図18Aは、第8態様における積層構造物の第8態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図18B】
図18Bは、第8態様における積層構造物の第8態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図19A】
図19Aは、第9態様における積層構造物の第9態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
【
図19B】
図19Bは、第9態様における積層構造物の第9態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【
図20A】
図20Aは、実施例における特定の流路形状を説明するための説明図である。
【
図20B】
図20Bは、実施例における特定の流路形状を説明するための説明図である。
【
図20C】
図20Cは、実施例における欠落した流路形状を説明するための説明図である。
【
図20D】
図20Dは、実施例における欠落した流路形状を説明するための説明図である。
【
図21A】
図21Aは、実施例における片面又は両面印刷流路を説明するための説明図である。
【
図22】
図22は、実施例におけるドーナツ状の流路形状を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(積層構造物)
本発明の積層造形物は、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物と、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物と、前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物との間に、前記第一のシート状構造物における前記多孔質構造と、前記第二のシート状構造物における前記多孔質構造とが互いに対向するようにして、かつ前記第一のシート状構造物と前記第二のシート状構造物とが離隔しないように、前記多孔質構造の表面の一部に接触して配置された接着層とを有することを特徴とする。
【0013】
以下、本発明について、いくつかの実施形態に基づき詳細に説明するが、以下記載により何ら限定されるものではない。
【0014】
図1は、積層構造物の一例を示す概略断面図である。
積層構造物100は、流路X1及び非流路Y1を有する第一のシート状構造物1と、流路X2及び非流路Y2を有する第二のシート状構造物2と、接着層3とを有している。なお、詳細は後述するが、接着層3は、第一のシート状構造物と第二のシート状構造物との間に、第一のシート状構造物における流路(多孔質構造)と、第二のシート状構造物における流路(多孔質構造)とが互いに対向するようにして、かつ第一のシート状構造物と第二のシート状構造物とが離隔しないように、流路となる多孔質構造の表面の一部に接触するように配置されている。
積層構造物100は、このような構成を有することで、従来技術における煩雑な組み立て加工をすることなく、十分な流通性を確保することができる。
【0015】
第一のシート状構造物と第二のシート状構造物とには、同じ流路を有するシート状構造物を用いてもよいし、それぞれ異なる流路を有するシート状構造物を用いてもよい。
第二のシート状構造物は、第一のシート状構造物と同様の構成とすることができるため、これ以降、第一のシート状構造物の構造のみについて説明し、第二のシート状構造物に関する説明を省略することがある。なお、本明細書において「第一のシート状構造物(又は第二のシート状構造物)」は、単に「シート状構造物」と称することがある。
【0016】
<第1態様>
本発明の積層構造物は、
図1に示す態様以外にも複数の態様を有する。本明細書では、説明の簡便さから、
図2A~
図2Bに示す第1態様に基づき以下詳細に説明する。
図2Aは、第1態様の積層構造物における概略断面図である。
図2Bは、第1態様における積層構造物の各層の概略斜視図である。なお、本発明の積層構造物は各層が隣接し積層されたものであるが、
図2B、及び後述する
図6A~
図6Bにおいてのみ、説明の便宜上、各層を離して示している。
【0017】
積層構造物101は、流路X1及び非流路Y1を有する第一のシート状構造物11と、流路X2及び非流路Y2を有する第二のシート状構造物21と、接着層31とを有している。なお、詳細は後述するが、接着層31は、第一のシート状構造物と第二のシート状構造物との間に、第一のシート状構造物における流路(多孔質構造)と、第二のシート状構造物における流路(多孔質構造)とが互いに対向するようにして、かつ第一のシート状構造物と第二のシート状構造物とが離隔しないように、流路となる多孔質構造の表面の一部に接触するように配置されている。
【0018】
―シート状構造物―
図3Aは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略斜視図である。
図3Bは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略斜視図である。
図3Cは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図3Dは、
図2Aの積層構造物における第1態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
【0019】
第一のシート状構造物11は、複雑な流路を形成することができる観点から、流路の形状がそれぞれ異なる第1層10及び第2層20を備えていてもよい。第一のシート状構造物における第1層10及び第2層20は、間に介在するものが存在せず、互いに隣接している。なお、
図2Bにおいて、当該第1層10側から疎水性材料を含浸させた際の先端領域を仮想線として点線で描いた。同様に、当該第2層20側から疎水性材料を含浸させた際の先端領域を仮想線として点線で描いた。当該仮想線は他の図面においても同様に記載する。
【0020】
第一のシート状構造物における第1層10には、流路A、流路B、並びに当該流路A及び当該流路B以外の領域に非流路Y1が設けられている。当該流路A及び当該流路Bは、第一のシート状構造物における第1層10中で離隔している。
第一のシート状構造物における第2層20には、流路C、流路D、流路E、並びに当該流路C、当該流路D、及び当該流路E以外の領域に非流路Y1が設けられている。当該流路Eは、当該流路C及び当該流路Dのいずれにも接続されており、流路C、流路E、流路Dの順、又は流路D、流路E、流路Cの順で液体が流通可能である。
第一のシート状構造物11においては、第1層10の流路Aと第2層20の流路Cとが隣接しており、また第1層10の流路Bと第2層20の流路Dとが隣接している。即ち、第1態様のシート状構造物11では、流路A、流路C、流路E、流路D、流路Bの順、又は流路B、流路D、流路E、流路C、流路Aの順で隣接し、接続されている。
【0021】
流路A~Eは、毛細管現象等によって液体が流通可能である多孔質構造からなり、第一のシート状構造物11の両表面(即ち、第1層10及び第2層20)に露出するように形成されている。ここで「多孔質構造」とは、連通する複数の空孔を有する構造体のことであり、一般的には共連続構造又はモノリス構造とも称されることがある。当該多孔質構造においては、連続的に繋がった空孔が三次元的に広がっており、液体が染み込む(即ち、毛細管現象)ことができる。
【0022】
多孔質構造における空孔の断面形状は、液体の粘度等の物性を考慮して適宜設定することができ、例えば、略円形状、略楕円形状、略多角形状などが挙げられる。多孔質構造における空孔の大きさは、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。当該空孔の断面形状及び大きさは、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)等で撮影した断面写真から求めることができる。
【0023】
多孔質構造における空隙率としては、液体の粘度等の物性を考慮して適宜設定することができる。当該空隙率を測定する方法としては特に制限されないが、例えば、多孔質構造体に不飽和脂肪酸(市販のバター)を充填し、オスミウム染色を施した後で、FIBで内部の断面構造を切り出し、SEMを用いて空隙率を測定する方法などが挙げられる。
【0024】
多孔質構造における空孔の分布としては、液体が流通可能であれば、液体の粘度等の物性を考慮して適宜設定することができるが、流路領域内に均一に分布していることが好ましい。
【0025】
流路A~Eの平面視での形状(即ち、α方向又はβ方向から見た形状)としては、液体が流通可能であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することでき、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形などが挙げられる。
流路A~Dの径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することでき、例えば、φ3mm以上φ10mm以下とすることができる。流路Eの流路幅としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することでき、例えば、1mm以上5mm以下とすることができる。
【0026】
流路A~Eの材料Mとしては、液体が流通可能である多孔質構造を有していれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することでき、例えば、ろ紙等の紙、不織布、ニトロセルロース、ポリプロピレンなどが挙げられる。これらの中でも、より簡便で、かつ低コストである観点から、ろ紙がより好ましい。
【0027】
非流路Y1は、第一のシート状構造物における流路A~E以外の領域、即ち、液体の流通が発現されない領域のことである。非流路Y1は、材料Mに対して、疎水性材料を含浸させて得られる材料M´から形成されていてもよい。
疎水性材料としては、製造容易性の観点から、融点が90℃以下であるものが好ましい。当該材料M´としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワックス又はそれを含有する組成物などが挙げられる。当該疎水性材料には、粘度調整成分(例えば、樹脂等)、分散助剤、フィラー等を適宜配合することができる。
【0028】
材料Mに対して疎水性材料を含浸させる場合、当該疎水性材料は、加熱して溶融させておくことが好ましい。加熱温度は、疎水性材料や粘度調整成分の融点を考慮して、適宜設定することができる。
疎水性材料の溶融時の粘度は、シート状構造物の厚みや目付量(密度)等を考慮し、所望通りにシート状構造物に含浸させることができるよう、適宜設定することができる。
【0029】
材料Mに対して疎水性材料を含浸させる場合、材料Mに対する疎水性材料の含浸率が、14%以上32%以下の範囲内であることが好ましい。
上記含浸率が14%以上となるようにシート状構造物を製造することで、液体の流路壁面(材料Mと材料M´との界面)が十分に均一となり、例えば、流路から流路までの液の流通をよりスムーズなものとすることができる。また、上記含浸率が32%以下となるようにシート状構造物を製造することで、材料Mに疎水性材料を含浸させる際の閉塞などの不具合を十分に回避し、所望の流路構造を有するシート状構造物をより確実に得ることができる。
ここで「含浸率」とは、シート状構造物のうち、厚み方向全体に亘って材料M´でできている領域における当該材料M´に関する含浸率を指すものとする。また、上記含浸率は、十分に低粘度となるように加熱した(例えば、120℃に加熱した)疎水性材料に材料Mを浸漬させ、温度を保持して十分な時間(例えば、3分間)放置して得られる材料M´については、100%と見なすことができる。上記含浸率の調整は、例えば、含浸させる疎水性材料の量(疎水性膜の厚みなど)の調節により行うことができる。
【0030】
含浸率の測定方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することでき、例えば、以下の方法が挙げられる。
[含浸率の測定方法]
ろ紙を適当なサイズに切り取り、120℃で3分間乾燥した後、乾燥質量M0(g)を測定する。次いで、当該ろ紙を疎水性材料に浸漬させ、120℃で3分間放置する。浸漬後のろ紙を、同種のろ紙及びスライドガラスで挟持し、100gfの荷重下、120℃で1分間放置して過剰な疎水性材料を除去する。その後、ろ紙の質量M1(g)を測定し、以下の式より、単位面積当たりの最大含浸量Pmax(g/m2)を算出する。
式・・・Pmax(g/m2)=(M1-M0)×1000
【0031】
疎水性材料の粘度としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、材料Mに対して含浸させる際の閉塞などの不具合を十分に回避する観点から、140℃、せん断速度3000s-1における粘度が、100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることがさらに好ましい。当該粘度は、特に制限されないが、例えば、レオメーター(例えば、商品名:AR-G2レオメーター、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
【0032】
材料M´は、液体の流通を容易に視認できるようにするため、着色されていることが好ましいが、白色又は透明であってもよく、或いは着色されていなくてもよい。材料M´の着色は、例えば、疎水性材料に加えて着色剤を材料Mに含浸させることで達成することができる。かかる着色剤としては、例えば、カーボンブラック(黒色顔料)をはじめとする顔料などが挙げられ、疎水性であることが好ましい。また、当該着色剤としては、検査等に用いる試薬に悪影響を及ぼさないものを選択することが好ましい。
【0033】
シート状構造物11の平面視での形状は、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、
図3A~
図3Dに示すように矩形であってもよく、略円形、略楕円形、略矩形などであってもよい。
【0034】
図4は、
図3Cの第一のシート状構造物をa-a´線で切断した際の概略断面図である。
図4に示すように、第1態様のシート状構造物11では、流路A、流路C、流路E、流路D、流路Bの順、又は流路B、流路D、流路E、流路C、流路Aの順で隣接し、接続されている。換言すると、第1態様のシート状構造物11では、例えば、液体を流路Aに滴下したときに、当該液体が毛細管現象等により、流路A、流路C、流路E、流路Dをこの順で経由して、最終的に流路Bに流通するように構成されている。
【0035】
第一のシート状構造物11において、第1層10の平均厚み(t1)に対する第2層20(t2)の平均厚みの比(t2/t1)が、0.56以上2.2以下であることが好ましい。当該平均厚みの比(t2/t1)が0.56以上2.2以下となるようにシート状構造物を製造することで、材料Mに疎水性材料を含浸させる際の閉塞などの不具合を十分に回避し、例えば、流路から流路までの液の流通速度及び/又は速度安定性を効果的に高めることができる。同様の観点から当該平均厚みの比(t2/t1)は1.0超である、即ち、第2層20の平均厚み(t2)が第1層10の平均厚み(t1)よりも大きいことがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましく、1.8以上であることが特に好ましい。また当該平均厚みの比(t2/t1)は、特に限定されず、3.0以下とすることができる。
【0036】
第一のシート状構造物11の平均厚みは、特に制限されず目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100μm以上300μm以下とすることができる。当該第一のシート状構造物11の平均厚みは、例えば、商品名で、id-c112bs(ミツトヨ製)等の厚み計を用いて測定することができる。
第一のシート状構造物11の大きさとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することできる。
【0037】
―接着層―
接着層31は、
図2Aにも示す通り、第一のシート状構造物11と第二のシート状構造物21との間に、第一のシート状構造物における流路X1(多孔質構造)と、第二のシート状構造物における流路X2(多孔質構造)とが互いに対向するようにして、かつ第一のシート状構造物11と第二のシート状構造物21とが離隔しないように、流路となる多孔質構造の表面の一部に接触するように配置される。
なお、本明細書において、接着層を構成する成分を、総じて「接着成分」と称することがある。
【0038】
接着層31は、流路外への液漏れを防ぐ観点から、耐水性であることが好ましい。ここで「耐水性」とは、液体がしみ通らない性質、及び液体による変質や破損がない性質のことを示す。
接着層31の耐水性の評価方法は、特に制限はないが、例えば、JIS K 7114によって評価することができる。
【0039】
接着層31は、接着成分として熱接着剤を含むことが好ましい。ここで「熱接着剤」とは、常温では固体であるが、加熱すると溶融し液体となる性質を有する接着剤を示す。当該熱接着剤の一例としては、加熱し溶融した熱接着剤を接着対象に付与し、当該熱接着剤を介して被接着対象と当該接着対象とを接触させた後に冷却する(又は室温に戻す)ことで、接着対象と被接着対象とを接着させることができる接着剤が挙げられる。
接着層31に接着成分として含まれる熱接着剤は、融点が80℃以上120℃以下であるホットメルト樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
図5Aは、第1態様の積層構造物における接着層を、α方向から見たときの一例を示す概略平面図である。
図5Bは、第1態様の積層構造物における接着層を、α方向から見たときの他の例を示す概略平面図である。なお、煩雑な記載を避ける観点から、
図5A及び
図5Bにおいては、第二のシート状構造物における流路X2(多孔質構造)のみが記載されており、その他は省略されている。
【0041】
接着層31は、シート状構造物における流路X2(多孔質構造)の全表面に配されるものではなく、流路X2(多孔質構造)の表面の一部に接触するように配置されている。
ここで、接着層31の形状としては、
図5Aに示すように、流路X2(多孔質構造)上に接着成分Z1が平行線状に配される形状であることが好ましい。当該「平行線状」には、見かけ上平行である略平行線状も含まれる。また、接着層の形状としては、
図5Bに示すように、流路X2(多孔質構造)上に接着成分Z1が互いに交差するように配される形状(メッシュ状)であることがより好ましい。
なお、本明細書においては、流路上に接着成分が平行線状に配される形状である接着層を「平行線状の接着層」と称し、流路上に接着成分が互いに交差するように配される形状である接着層を「メッシュ状の接着層」と称することがある。
接着層において、接着成分は一定の間隔で配されていてもよいし、不定の間隔で配されていてもよい。
【0042】
接着層がメッシュ状である場合、接着層を介して接続される流路において、第一のシート状構造物における多孔質構造と、第二のシート状構造物における多孔質構造とが接触する領域を「開口部」と称する。即ち「開口部」は、第一のシート状構造物における多孔質構造体から第二のシート状構造物における多孔質構造体へ(又は第二のシート状構造物における多孔質構造から第一のシート状構造物における多孔質構造へ)、毛細管現象等により液体が流通可能である部分を示す。各「開口部」が有する面積を「開口面積」と称する。
接着層がメッシュ状である場合、接着層を介して接続される流路において、接着層が、第一のシート状構造物における多孔質構造、及び第二のシート状構造物における多孔質構造のいずれとも接触する領域を「連結部」と称し、当該「連結部」が有する面積を「連結面積」と称する。
ここで、本明細書において、複数の「開口部」及び当該「連結部」を併せて「接続部」と表現するとともに、当該「接続部」が有する面積を「接続面積」と表現する。
【0043】
接着層における開口部の形状としては、特に制限はなく液体の粘度等の物性に応じて適宜設定することができ、四角形(正方形、長方形、菱形等)、円形(真円、楕円形等)、多角形などが挙げられる。
【0044】
接着層における開口部1つあたりの開口面積(mm2)の平均値としては、特に制限はなく液体の粘度等の物性に応じて適宜設定することができるが、0.2mm2が好ましい。特に、当該接着層における開口部1つあたりの開口面積(mm2)の平均値としては、優れた流通性が得られるという観点から、接続面積(mm2)の平均値に対して、1/5以下であることが好ましい。
接着層における開口部1つあたりの開口面積(mm2)の測定方法としては、例えば、積層構造物を水等の液体に浸けることにより膨潤させて各層を剥離し、マイクロスコープ(キーエンス製)を用いて測定する方法などが挙げられる。接着層における開口部1つあたりの開口面積(mm2)の平均値は、例えば、隣接する開口部10箇所の開口面積を測定し、その数値の平均値とすることができる。
【0045】
接着層の平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50μm以上200μm以下であることが好ましい。当該平均厚みの測定方法としては、特に制限はないが、例えば、商品名で、id-c112bs(ミツトヨ製)等の厚み計を用いて測定することができる。
【0046】
図6Aは、第1態様の積層構造物における接着層の分布の一例を説明するための概略斜視図である。
図6Bは、第1態様の積層構造物における接着層の分布の他の例を説明するための概略斜視図である。
上述したとおり、接着層は、第一のシート状構造物と第二のシート状構造物との間に、当該第一のシート状構造物における多孔質構造と、当該第二のシート状構造物における多孔質構造とが互いに対向するようにして、かつ当該第一のシート状構造物と当該第二のシート状構造物とが離隔しないように、多孔質構造の表面の一部に接触して配置されていれば、どのように配置されていてもよい。例えば、
図2Bに示すようにシート状構造物の片表面全体が覆われるように配置されてもよく、
図6Aに示すようにシート状構造物の片表面に露出する流路をすべて覆うように配置されてもよく、
図6Bに示すようにシート状構造物の片表面に露出する一部の流路のみを覆うように配置されてもよい。なお、
図6Bに示すように第一のシート状構造物と第二のシート状構造物とが、一部で離隔しないように接着層の配置を適宜調整することが好ましい。
【0047】
接着層に代えて、基材上に接着層が配された熱接着シートを使用してもよい。当該熱接着シートとしては、複数の開口部を有する基材上に、前記熱接着剤(接着成分)が平行線状又はメッシュ状に配された接着層を有するものが好ましい。また当該熱接着層としては、複数の開口部を有する基材Z2上に、前記熱接着剤(接着成分Z1)がメッシュ状に配された接着層を有するものがより好ましい。
熱接着シートの一例として、
図7に示す熱接着シートが挙げられる。
図7は、本発明の熱接着シートの一例を示す画像である。
図7における画像において、上下方向及び左右方向に格子を有している、メッシュ状の開口部を有する基材Z2上に、接着成分Z1が、当該基材における各開口部に対して対角線状に配されている。
なお、当該熱接着シートにおける基材の開口部は、上述の接着層における開口部とは異なるものである。
接着層として、基材を有する熱接着シートを用いることで、積層構造物自体の物理的強度を向上させることができ好適である。
【0048】
熱接着シートにおける基材の材質としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルなどが挙げられる。ここで、当該熱接着シートがメッシュ状である場合、当該基材の材質としては、ポリエステル、ナイロン、コットンなどが挙げられる。
熱接着シートにおける基材の開口部の大きさ及びその数としては、シート状構造物同士を接着可能な構成であれば、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができるが、例えば、30メッシュ(850μm)~120メッシュ(200μm)とすることができる。
熱接着シートにおける基材の開口部の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜設定することができ、例えば、略円形、略楕円形、略矩形などが挙げられる。
熱接着シートの平均厚みとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、接着不良や液体の流通性の劣化といった不具合を防げる観点から、50μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0049】
熱接着シートは、例えば、基材及び接着層のいずれもが開口部を有していない接着シートに対して、細かなパンチング(抜き加工)を行うことで得られる微細多孔状の接着シートであってもよい。当該微細多孔状の接着シートにおける開口部の大きさ及びその数としては、上述した熱接着シートにおける基材の開口部と同じであってもよい。
パンチング(抜き加工)は、例えば、ロータリーダイカッターを用いて行うことができる。例えば、剥離紙上に接着層を形成した後にパンチングを行い、構成材の片側に貼合した後に、当該剥離紙を剥がして、もう一方と貼合させることができる。
【0050】
<第2態様>
図8は、第2態様の積層構造物における各層を示す概略断面図である。
図8に示される積層構造物102は、シート状構造物の流路構造が、第1態様のシート状構造物の流路構造と異なること以外は、第1態様の積層構造物101と同一である。
【0051】
図9Aは、
図8の積層構造物における第2態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図9Bは、
図8の積層構造物における第2態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図9Aに示すように、第2態様の第一のシート状構造物12は、第1層10に、流路A、流路B、流路Aに接続された流路F、及び流路F以外の部位として非流路Y1が設けられている。当該流路A及び当該流路Bは、第一のシート状構造物における第1層10中で離隔している。
図9Bに示すように、第2態様の第一のシート状構造物12は、第2層20に流路D、流路E、流路E及び流路D以外の部位として非流路Y1が設けられており、流路Eは、流路Dに接続されている。
第2態様の第一のシート状構造物12は、第1層10の流路Bと第2層20の流路Dとが隣接しており、第1層10の流路Fと第2層20の流路Eとが接続されている。すなわち、第2態様の第一のシート状構造物12は、流路A、流路F、流路E、流路D、流路Bの順で、又は流路B、流路D、流路E、流路F、流路Aの順で隣接し、接続されている。
そして、流路A、流路B、流路D、流路E、流路F、及び非流路Y1は、上述の<第1態様>の項目に記載された材料M又は材料M´で形成されている。
【0052】
図10は、
図9Aの第一のシート状構造物をb-b´線で切断した際の概略断面図である。
図10に示すように、第2態様の第一のシート状構造物12においては、例えば、液体を流路Aに滴下したときに、当該液体が毛細管現象等により、流路A、流路F、流路E、流路Dをこの順で経由して、最終的に流路Bに流通するように構成されている。
上記以外で、第1態様と共通する事項については、説明を省略する。
【0053】
<第3態様>
図11は、第3態様の積層構造物における概略断面図である。
図11に示される積層構造物103は、シート状構造物の流路構造が、第1態様のシート状構造物の流路構造と異なること以外は、第1態様の積層構造物101と同一である。
【0054】
図12Aは、
図11の積層構造物における第3態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図12Bは、
図11の積層構造物における第3態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図12Aに示すように、第3態様の第一のシート状構造物13は、第1層10に流路Aと、流路Dと、流路Eと、流路A、流路E、及び流路D以外の部位として非流路Y1とが設けられている。当該流路Eは、当該流路D及び当該流路Aのいずれにも接続されている。
図12Bに示すように、第3態様の第一のシート状構造物13は、第2層20に流路B、及び流路B以外の部位として非流路Y1が設けられており、流路Aは設けられていない。
第3態様の第一のシート状構造物13は、第1層10の流路Dと第2層20の流路Bとが隣接している。即ち、第3態様の第一のシート状構造物13においては、流路A、流路E、流路D、流路Bの順、又は流路B、流路D、流路E、流路Aの順で隣接し、接続されている。
そして、流路A、流路B、流路D、流路E、非流路Y1は、上述の<第1態様>の項目に記載された材料M又は材料M´で形成されている。
【0055】
図13は、
図12Aの第一のシート状構造物をc-c´線で切断した際の概略断面図である。
図13に示すように、第3態様の第一のシート状構造物13においては、液体を流路Aに滴下したときに、当該液体が毛細管現象等により、流路A、流路E、流路Dをこの順で経由して、最終的に流路Bに流通するように構成されている。
上記以外で、第1態様と共通する事項については、説明を省略する。
【0056】
図14Aは、第4態様における積層構造物の第4態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図14Bは、第4態様における積層構造物の第4態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図14A及び
図14Bに示すように、第3態様の第一のシート状構造物14は、第2層20に設けられた流路Dが環状構造であり、その内側に非流路Y1が形成されているという構造を有する点以外は、
図3C及び
図3Dと同様である。
環状構造である流路Dは、円形、楕円形、矩形等の任意の輪郭形状を有することができるが、シート状構造物の平面視で流路Bと実質的に一致する輪郭形状を有することが好ましい。また、当該流路Dの内側に形成される非流路Y1は、シート状構造物の平面視で流路Dの輪郭形状を縮尺した形状を有することが好ましい。
【0057】
図15Aは、第5態様における積層構造物の第5態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図15Bは、第5態様における積層構造物の第5態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図15A及び
図15Bに示すように、第5態様の第一のシート状構造物15においては、第2層20が流路Eを複数本(
図15BではE1及びE2の2本)有するという構造を有する点以外は、
図3C及び
図3Dと同様である。上記の構造に関し、第2態様の第一のシート状構造物12の場合には、流路Eの数だけ流路Fを複数本設け、第1層10の複数本の流路Fと第2層20の複数本の流路Eとをそれぞれ接続させることができる。
【0058】
図16Aは、第6態様の積層構造物における第6態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図16Bは、第6態様の積層構造物における第6態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図16A及び
図16Bに示すように、第6態様の第一のシート状構造物16においては、
図14A、
図14B、
図15A、及び
図15Bで示される構造を組み合わせたものである。
【0059】
図17Aは、第7態様の積層構造物における第7態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図17Bは、第7態様の積層構造物における第7態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図17A及び
図17Bに示すように、第7態様の第一のシート状構造物17おいては、第2層20が流路Eを3本(E1及びE2に加え、E3)有するという構造を有する点以外は、
図16Bと概ね同様である。その際、
図17Bに示すシート状構造物17においては、3本の流路Eを、互いに対向するように流路Dに接続させている。
【0060】
図18Aは、第8態様の積層構造物における第8態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図18Bは、第8態様の積層構造物における第8態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図18A及び
図18Bに示すように、第8態様の第一のシート状構造物18においては、流路E3が2本(E31及びE32)に分岐して、流路Dに接続されているという構造を有する点以外は、
図17Bと概ね同様である。
【0061】
図19Aは、第9態様の積層構造物における第9態様の第一のシート状構造物を、α方向から見たときの概略平面図である。
図19Bは、第9態様の積層構造物における第9態様の第一のシート状構造物を、β方向から見たときの概略平面図である。
図19A及び
図19Bに示すように、第9態様の第一のシート状構造物19においては、流路E1及び流路E2に加えて、流路Eを2本(E3及びE4)有するという構造を有する点以外は、
図17Bと概ね同様である。その際、
図19Bに示すシート状構造物19においては、4本の流路Eを、互いに対向するように流路Dに接続させている。
【0062】
図14A~
図19Bに示すようなシート状構造物において、流路E(及び流路F)の本数は、液量が増大することを抑制する観点から、4本以下であることが好ましく、3本以下であることがより好ましく、2本であることがさらに好ましい。また、流路Dへの流路Eの接続箇所の数は、4つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つであることがさらに好ましい。
複数本の流路Eのうちの少なくとも2本が、互いに対向するように前記流路Dに接続されていることが好ましい。また、複数本の流路Eのうちの少なくとも2本が、略同一の形状を有することが好ましい。
【0063】
上述したシート状構造物は、例えば、シート状素材に所定の部位(流路Bなど)を形成して第1層10を作製するとともに、別のシート状素材に所定の部位(流路Dなど)を形成して第2層20を作製し、これら2枚のシート状素材を積層することで製造することができる。或いは、上述したシート状構造物1は、1枚のシート状素材の一部に所定の部位を形成して第1層10を作製するとともに、当該1枚のシート状素材の別の一部に所定の部位を形成して第2層20を作製し、当該1枚のシート状素材を、第1層及び第2層の位置調整をしつつ折り畳むことで製造することもできる。
本発明におけるシート状構造物は、1枚のシート状素材の一方の面側に第1層を形成し、他方の面側に第2層を形成して作製することが好ましい。このような、1枚のシート状素材の両面に第1層及び第2層がそれぞれ形成されてなるシート状構造物は、(1)積層(又は折り畳み)の手間及びコストを回避できる、(2)第1層及び第2層の間で、毛細管現象による液体の流通が確実になされる、(3)シート状素材の積層(又は折り畳み)を保持するための治具等が不要であるため、廃棄が容易である等の様々な利点を有する。
【0064】
シート状構造物の具体的な製造方法としては、例えば、以下のような方法によって製造することができる。
[シート状構造物の製造方法の一例]
まず、疎水性材料、着色剤、及び樹脂を配合し、例えば、100℃以上140℃以下で溶融混合することによって、WAXインクを調製する。当該WAXインクを、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材上に塗布し、インクリボンを作製する。次に、熱転写プリンタ―(例えば、商品名:レスプリR412v-ex、サトーホールディングス株式会社製)を用いて、上質紙上に特定の流路形状を印刷することによって、インクリボンにおける印刷部に欠落した流路パターンを形成する。当該欠落した流路パターンが形成されたインクリボンを、ろ紙の表裏に固定した後、所定の温度及びライン速度に設定した熱ラミネーター(例えば、商品名:GL535ML、GBG社製)を通すことにより、WAXインクをろ紙へ転写・浸透させて3次元形状の流路を形成し、シート状構造物を作製することができる。
ここで、「所定の温度及びライン速度」とは、ろ紙に対して、WAXインクの浸透・転写が可能である条件であれば、特に制限はないが、転写においては、85℃にてライン速度10mm/sec、浸透においては、85℃にてライン速度5mm/secとすることができる。
【0065】
(検査デバイス)
本発明の積層構造物は、検査デバイスとして好適に使用することができる。当該検査デバイスとしては、例えば、妊娠検査薬、イムノクロマト法と呼ばれる、サンドイッチELISA法の原理とクロマトグラフィーの原理を組み合わせた測定方法を利用した検査デバイスなどが挙げられる。
【0066】
(積層造形物の製造方法、及び積層造形物の製造装置)
<第1態様>
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様としては、接着層形成工程と、転写工程と、貼合工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様に関する積層造形物の製造装置としては、接着層形成手段と、転写手段と、貼合手段とを有し、必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
前記積層造形物の製造方法は、前記積層造形物の製造装置によって好適に行われる。
【0067】
-接着層形成工程、及び接着層形成手段-
接着層形成工程は、剥離基材上に、熱接着剤が平行線状に配された接着層を形成する工程である。換言すると、接着層形成工程は、剥離基材上に、平行線状の接着層を形成する工程である。
接着層形成手段は、剥離基材上に、熱接着剤が平行線状に配された接着層を形成する手段である。換言すると、接着層形成手段は、剥離基材上に、平行線状の接着層を形成する手段である。
前記接着層形成工程は、前記接着層形成手段によって好適に行われる。
【0068】
接着層形成工程、及び接着層形成手段においては、剥離基材上に、熱接着剤がメッシュ状に配された接着層を形成することが好ましい。換言すると、接着層形成工程、及び接着層形成手段においては、剥離基材上に、メッシュ状の接着層が形成されることが好ましい。
熱接着剤、及び接着層は、上述の(積層造形物)の項目で記載したものと同様であるため、記載を省略する。
【0069】
剥離基材の材質としては、後の工程で当該剥離基材上に形成された接着層を剥離することができれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、剥離紙や、スチレンフィルムなどが挙げられる。
前記剥離基材の大きさ、形状、及び構造としては、後の工程で当該剥離基材上に形成された接着層を剥離することができれば、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0070】
熱接着剤を剥離基材上に付与する方法としては、例えば、Tダイを用いてコーティングする方法などが挙げられる。
【0071】
-転写工程、及び転写手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様における転写工程は、接着層を、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物に対して転写する工程である。
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様における転写手段は、接着層を、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物に対して転写する手段である。
転写工程は、転写手段によって好適に行われる。
なお、転写工程における第一のシート状構造物は、第二のシート状構造物であってもよい。
【0072】
接着層を第一のシート状構造物に対して転写する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネーター(GL535ML、GBC社製)を用いて、120℃、5mm/secの条件で行うことができる。
【0073】
-貼合工程、及び貼合手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様における貼合工程は、剥離基材を除去し、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物を貼合する工程である。
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様における貼合工程は、剥離基材を除去し、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物を貼合する手段である。
貼合工程は、貼合手段によって好適に行われる。
なお、転写工程における第二のシート状構造物は、第一のシート状構造物であってもよい。
【0074】
第二のシート状構造物を貼合する際には、第一のシート状構造物における前記多孔質構造と、第二のシート状構造物における前記多孔質構造とが互いに対向するようにして貼合する。このときの温度やライン速度は、使用する熱接着剤の融点に応じて適宜調整することができ、例えば、80℃以上150℃以下、5mm/secの条件でラミネートすることができる。ラミネートは、例えば、ラミネーター(GL535ML、GBC社製)などを用いることができる。
【0075】
-その他の工程、及びその他の手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様におけるその他の工程としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理工程などが挙げられる。
本発明の積層造形物の製造方法の第1態様におけるその他の手段としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理手段などが挙げられる。
その他の工程は、その他の手段によって好適に行われる。
【0076】
前処理工程は、界面活性剤を用いて、接着層をコーティングする工程である。前処理手段は、界面活性剤を用いて、接着層をコーティングする手段である。
前処理工程及び前処理手段を行うことで、表面張力が高い液体は接着層を流通することができないといった問題を解消することができ好適である。
【0077】
界面活性剤としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Tweeen20(Polyoxyethylenesorbitan monolaurate)などが挙げられる。
【0078】
前処理方法、即ち、界面活性剤を接着層へコーティングする方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、積層構造物又はシート状構造物を界面活性剤の水溶液に浸漬し、乾燥させる方法などが挙げられる。
前記前処理工程は、シート状構造物を貼合して積層構造物を作製した後に行ってもよいし、シート状構造物を貼合する前に行ってもよい。なお、積層構造物を作製した後に前記前処理工程を行う場合は、検査デバイスの作製前(即ち、試薬等を添加する前)に前記前処理工程を行うことが好ましい。
【0079】
<第2態様>
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様としては、転写工程と、貼合工程とを含み、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様に関する積層造形物の製造装置としては、転写手段と、貼合手段とを有し、必要に応じて、その他の手段を有していてもよい。
積層造形物の製造方法は、積層造形物の製造装置によって好適に行われる。
【0080】
-転写工程、及び転写手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様における転写工程としては、複数の開口部を有する基材と、基材上に熱接着剤が平行線状に配された接着層と、を有する熱接着シートを、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物に対して転写する工程である。
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様における転写手段としては、複数の開口部を有する基材と、基材上に熱接着剤が平行線状に配された接着層と、を有する熱接着シートを、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第一のシート状構造物に対して転写する手段である。
転写工程は、転写手段によって好適に行われる。
なお、転写工程における第一のシート状構造物は、第二のシート状構造物であってもよい。
【0081】
転写工程における第一のシート状構造物、及び熱接着シートは、上述の(積層構造物)の項目に記載のものと同様であるので、説明を省略する。
熱接着シートを第一のシート状構造物に対して転写する方法は、上述の<第1態様>の項目に記載の転写方法と同様であるので、説明を省略する。
【0082】
-貼合工程、及び貼合手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様における貼合工程としては、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物を貼合する工程である。
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様における貼合手段としては、流路となる多孔質構造を表面に露出して有する第二のシート状構造物を貼合する手段である。
貼合工程は、貼合手段によって好適に行われる。
【0083】
貼合工程における第二のシート状構造物、上述の(積層構造物)の項目に記載のものと同様であるので、説明を省略する。
第二のシート状構造物に対して貼合する方法は、基材を除去しないこと以外は、上述の<第1態様>の項目に記載の貼合方法と同様であるので、説明を省略する。
【0084】
第2態様における転写工程と、第2態様における貼合工程とは、一括で行ってもよい。その場合は、第一のシート状構造物、熱接着シート、及び第二のシート状構造物をこの順で重ね合わせ、例えば、120℃で5mm/secの条件でラミネートする。ラミネートは、例えば、ラミネーター(GL535ML、GBC社製)などを用いることができる。
【0085】
-その他の工程、及びその他の手段-
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様におけるその他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理工程などが挙げられる。
本発明の積層造形物の製造方法の第2態様におけるその他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理手段などが挙げられる。
その他の工程は、その他の手段によって好適に行われる。
なお、その他の工程、及びその他の手段は、上述の<第1態様>の項目に記載のものと同様であるので、説明を省略する。
【0086】
(シート状構造物用熱接着シート、及びその使用方法)
本発明における熱接着シートは、流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物用の熱接着シートとして好適に用いることができる。換言すると、本発明のシート状構造物用熱接着シートは、流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物に使用するためのシート状構造物用熱接着シートであって、当該シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材と、基材上に熱接着剤がメッシュ状に配された接着層と、を有することを特徴とする。
また、本発明のシート状構造物用熱接着シートの使用方法は、流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物に使用するためのシート状構造物用熱接着シートの使用方法であって、当該シート状構造物用熱接着シートは、複数の開口部を有する基材と、基材上に熱接着剤がメッシュ状に配された接着層と、を有することを特徴とする。
流路となる多孔質構造を表面に露出して有するシート状構造物(第一のシート状構造物乃至第二のシート状構造物)に対して転写、貼合することができる。
当該シート状構造物用熱接着シートは、上述(積層構造物)の項目に記載のものと同様であるので、説明を省略する。
【実施例0087】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0088】
<積層構造物の作製>
-インクリボンの作製-
以下材料を配合し、100℃で溶融混合することによりWAXインクを調製した。
・疎水性材料としてのパラフィンワックス(商品名:ParaffinWax-135、日本精鑞株式会社製)72.0質量部
・疎水性材料としての合成ワックス(商品名:ダイヤカルナ(登録商標)30、三菱ケミカル株式会社製)18.0質量部
・着色剤としてのカーボンブラック(商品名:MA-100、三菱ケミカル株式会社製)1.8質量部
・樹脂(商品名:ウルトラセン(登録商標)722、東ソー株式会社製)11.25質量部
得られたWAXインクの粘度は、140℃、せん断速度3000s-1の条件下で、23mPa・sであった。なお、当該粘度は、レオメーターAR-G2(ティー・エイ・インスツルメント社製)によって測定した。
【0089】
得られたWAXインクを、平均厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー(登録商標)♯6C F531、東レ株式会社製)上に、平均厚み10μmとなるように塗布することによって、インクリボンを製造した。
熱転写プリンタ―(商品名:レスプリR412v-ex、サトーホールディングス株式会社製)を用いて、上質紙上に
図20A及び
図20Bに示した流路形状を印刷することによって、インクリボンにおける印刷部に欠落した流路パターンを形成した(
図20C及び
図20D参照)。
【0090】
―流路形成の確認―
まず、適切に流路が形成されるかを確認した。
プリンタ(商品名:Xerox ColorQube8570、XEROX社製)を用いて、
図21Aに示した流路パターンとなるように、ろ紙(商品名:Whatman #41)の片面にWAXインクを印刷した。その後、オーブン内で、120℃、2分間の条件で熱し、WAXインクをろ紙へ浸透させて片面印刷流路を形成した。当該片面印刷流路に対して蛍光インク(蛍光サインペン、アスクル株式会社製)水溶液を浸漬させた後、
図21Aにおけるd-d´線に対応する位置で切断し、マイクロスコープ(キーエンス製)を用いて、流路断面写真を撮影した。その結果を
図21Bに示す。
同様に、
図21Aに示した流路パターンを、ろ紙(商品名:Whatman #41)の両面に印刷したこと以外は、同条件にて浸透を行い、ろ紙内に両面印刷流路を形成した。当該両面印刷流路に対して蛍光インク(蛍光サインペン、アスクル株式会社製)水溶液を浸漬させた後、
図21Aにおけるd-d´線に対応する位置で切断し、マイクロスコープ(キーエンス製)を用いて、流路断面写真を撮影した。その結果を
図21Cに示す。
図21B~
図21Cにおける点線囲み部のみに蛍光インクが確認され、その他の領域には当該蛍光インクの漏れが観察できなかった。このことから、流路が適切に形成されていることを確認することができた。
図21Bは片面印刷、即ち、ろ紙の片側からWAXインクを浸透させたため、形成される流路は、WAXインクを浸透させる面から反対側の面に向かって広がった形状、即ち、テーパー状となる。
図21Cは両面印刷、即ち、ろ紙の両面からWAXインクを浸透させたため、形成される流路は対称となり、ダイヤ型となる。
【0091】
-シート状構造物の作製-
図20C及び
図20Dに示される、欠落した流路パターンが形成されたインクリボンのそれぞれを、ろ紙の表裏に固定した後、所定の温度に設定した熱ラミネーター(商品名:GL535ML、GBG社製)に通すことにより、WAXインクをろ紙へ転写・浸透させ、ろ紙内に3次元形状の流路を形成し、シート状構造物を作製した。ここで「所定の温度」とは、転写においては、85℃にてライン速度10mm/sec、浸透においては、85℃にてライン速度5mm/secとした。
得られたシート状構造物は、
図4に示した構造を有していた。
【0092】
-積層構造物の作製-
熱接着シート(商品名:SP7600HF、デクセリアルズ株式会社製)を、得られたシート状構造物2枚で挟むように重ね合わせ、熱ラミネーター(商品名:GL535ML、GBG社製)を用いて、120℃、5mm/secでラミネートすることで積層構造物を作製した。このとき、
図1に示すように、2枚のシート状構造物におけるそれぞれの多孔質構造が互いに対向するようにラミネートした。
なお、熱接着シート(商品名:SP7600HF、デクセリアルズ株式会社製)は、メッシュ状の基材(材質:ポリエステル)上に、メッシュ状の接着層を有しているものを使用した。
得られた積層構造物は、
図1に示した構造を有していた。
【0093】
<流路の流通性の評価>
得られた積層構造物における一方の流路末端部より、蛍光インク(蛍光サインペン、アスクル株式会社製)水溶液を12μL添加し、反対側の流路末端部への当該溶液が到達しているかを確認した。当該積層構造物においては、流路全域に水性蛍光インクが展開していることが確認できた。また、UVランプ(商品名:BL-LED3435-UV、株式会社コンテック製)を用いて、流路外への蛍光インク水溶液の漏れを確認したが、漏液は確認できなかった。
【0094】
<接着層における通液性の評価>
シート状構造物が有する流路の構造を、
図22に示すようなドーナツ状に変更すること以外は、上述の-シート状構造物の作製-と同様の方法で、内径φが1~4mm、及び幅が3mmの流路を有するシート状構造物を作製した。得られたシート状構造物、熱接着シート(商品名:SP7600HF、メッシュ状、デクセリアルズ株式会社製)、透明ポリエステルフィルム(商品名:ルミラーS10-188μ、東レ社製)の順に重ね合わせ、120℃で5mm/secでラミネートすることにより、評価サンプル1~4を作製した。
得られた評価サンプル1~4のそれぞれの中央部(内径部)に、水性蛍光インクを蒸留水に溶かした溶液を5μL添加し、5分間静置した。静置後、透明ポリエステルフィルム側から目視で観察し、ポリエステルフィルム界面への通液の有無と、流路外への漏液の有無とを確認した。結果を表1に示した。
【0095】
【0096】
上記表1における開口部1つあたりの開口面積に対する接続面積の比(開口面積比)は、以下式より算出した。
式・・・開口面積比=接続面積(mm2)/開口面積(mm2)
なお、熱接着シート(商品名:SP7600HF、メッシュ状、デクセリアルズ株式会社製)の各開口部はおおよそ450μm×450μmであり、隣接する開口部10箇所の開口面積を測定した平均値より、開口面積は、0.2mm2として計算した。
【0097】
いずれの評価サンプルであっても、熱接着シートを介して溶液がPETフィルム界面に通液するとともに、流路外への漏液がないことが確認することができた。また、開口面積比が5以上であると、通液性に優れることも併せて確認することができた。