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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024076982
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】電波吸収装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 17/00 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
H01Q17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193785
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022188521
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上ヶ迫 誠
(72)【発明者】
【氏名】境 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】川口 和司
(72)【発明者】
【氏名】青木 一浩
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020EA00
5J020EA07
5J020EA09
(57)【要約】
【課題】不要な反射波を低減できる電波吸収装置を提供する。
【解決手段】本開示の1つの局面の電波吸収装置は、第1誘電体基板41と、第2誘電体基板42と、第1導体層53と、無給電素子31と、第2導体層54と、を備える。第1誘電体基板は、第1外面41aと第1内面41bとを有する。第2誘電体基板は、第2外面42aと第2内面42bとを有する。第1導体層は、スリット58A,58Bが設けられ、第1内面と第2内面に接するように配置される。無給電素子は、第1外面上に配置される。第2導体層は、第2外面上に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外面(41a)と第1内面(41b)とを有する第1誘電体基板(41)と、
第2外面(42a)と第2内面(42b)とを有する第2誘電体基板(42)と、
スリット(58A,58B)が設けられ、前記第1内面と前記第2内面に接するように配置された第1導体層(53)と、
前記第1外面上に配置された無給電素子(31)と、
前記第2外面上に配置された第2導体層(54)と、を備える、
電波吸収装置。
【請求項2】
金属製の導波管(80)であって、無給電素子として作用する第1スロット(71)が設けられた壁面(82)を有する導波管を備える、
電波吸収装置。
【請求項3】
前記第1外面(41a)上に配置され、給電を受けて電波を放射する、又は、電波を受信するように構成されたアンテナ素子(21)を更に備える、
請求項1に記載の電波吸収装置。
【請求項4】
前記壁面(82)に、給電を受けて電波を放射する、又は、電波を受信するように構成された第2スロット(61)が更に設けられている、
請求項2に記載の電波吸収装置。
【請求項5】
前記第1誘電体基板(41)は、第1材料又は第1構造を有し、
前記第2誘電体基板(42)は、第1材料よりも電波のエネルギー損失が大きい第2材料、又は第1構造よりも電波の損失が大きい第2構造を有する、
請求項1又は3に記載の電波吸収装置。
【請求項6】
前記第1導体層(53)に接する第1端部と、前記第2導体層(54)に接する第2端部とを有し、且つ、前記第2誘電体基板を貫通する、金属壁(55)を更に備え、
前記第1端部は、前記スリットを囲んでいる、
請求項1に記載の電波吸収装置。
【請求項7】
前記第1誘電体基板(41)と前記第2誘電体基板(42)の積層方向において、前記無給電素子(31)は、前記スリット(58A,58B)と重なるように配置されている、
請求項1に記載の電波吸収装置。
【請求項8】
前記導波管(80)は、空間減衰よりも電波のエネルギー損失が大きい構造を有する、
請求項2又は4に記載の電波吸収装置。
【請求項9】
前記導波管(80)は、前記壁面(82)に対向する対向壁(83)を有し、
前記壁面に接する第1端部と、前記対向壁に接する第2端部とを有し、且つ、前記導波管の内部を仕切る金属壁(75,81)を更に備え、
前記第1端部は、前記第1スロット(71)を囲んでいる、
請求項2に記載の電波吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のアンテナ装置は、放射波がセカンドサーフィスで反射され且つアンテナ装置で再反射されて生じた反射波の偏波を、アンテナ部からの放射波の偏波と変えている。これにより、上記アンテナ装置は、不要な反射波が放射波に干渉することを抑制し、アンテナの指向が乱れることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6705784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記アンテナ装置は、反射波の偏波を変えることで、放射波との干渉を抑制しているが、反射波を低減していない。そのため、反射波が、放射波以外の何かに影響を与える可能性がある。
【0005】
本開示の1つの局面は、不要な反射波を低減できる電波吸収装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面の電波吸収装置は、第1誘電体基板(41)と、第2誘電体基板(42)と、第1導体層(53)と、無給電素子(31)と、第2導体層(54)と、を備える。第1誘電体基板は、第1外面(41a)と第1内面(41b)とを有する。第2誘電体基板は、第2外面(42a)と第2内面(42b)とを有する。第1導体層は、スリット(58A,58B)が設けられ、第1内面と第2内面に接するように配置される。無給電素子は、第1外面上に配置される。第2導体層は、第2外面上に配置される。
【0007】
本開示の1つの局面の電波吸収装置は、第1誘電体基板上の無給電素子が受信した入射波が、スリットを介して第2誘電体基板へ進入して、第2誘電体基板内で熱消費される。したがって、上記電波吸収装置は、入射波が電波吸収装置で反射されて生じる不要な反射波を低減することができる。
【0008】
本開示の別の1つの局面の電波吸収装置は、金属製の導波管(80)である。導波管は、無給電素子として作用する第1スロット(71)が設けられた壁面(82)を有する。
本開示の別の1つの電波吸収装置は、第1スロットが受信した入射波が、第1スロットを介して導波管内へ進入して、導波管内で熱消費される。したがって、上記電波吸収装置は、入射波が電波吸収装置で反射されて生じる不要な反射波を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るアンテナ装置の上面を示す模式図である。
図2】第1実施形態の第1実施例に係る、図1のII-II´線で切断した鉛直断面において、基板内に入射した入射波の熱消費を示す模式図である。
図3A】第1実施形態の第1実施例に係る、図1のII-II´線で切断した鉛直断面において、基板内の金属壁で入射波が反射して生じた第2反射波を示す模式図である。
図3B】第1実施形態の第1実施例に係る、金属壁からスリットまでの距離を示す模式図である。
図4】参考例に係るアンテナ装置から放射された放射波と、放射波がセカンドサーフィスで反射し且つアンテナ装置で再反射して生じた反射波とを示す図である。
図5】セカンドサーフィスがない場合における参考例に係るアンテナ装置の指向性利得と、セカンドサーフィスがある場合における参考例に係るアンテナ装置の指向性利得を示す図である。
図6】第1実施形態の第1実施例に係るスリット及び金属壁の水平断面を示す模式図である。
図7】第1実施形態の第2実施例に係る無給電素子の水平断面を示す模式図である。
図8】第1実施形態の第3実施例以係るスリット及び金属壁の水平断面を示す模式図である。
図9】第1実施形態の第4実施例に係るスリット及び金属壁の水平断面を示す模式図である。
図10】第1実施形態の第5実施例に係るスリット及び金属壁の水平断面を示す模式図である。
図11】第1実施形態の第6実施例に係るスリットの水平断面を示す模式図である。
図12】第1実施形態の第7実施例に係るスリット及び金属壁の水平断面を示す模式図である。
図13】第1実施形態の第8実施例に係るスリットの水平断面を示す模式図である。
図14】第2実施形態に係るアンテナ装置の上面を示す模式図である。
図15】第2実施形態の第1実施例に係る、図14のXV-XV´線で切断した鉛直断面を示す模式図である。
図16】第2実施形態の第2実施例に係る、図14のXV-XV´線で切断した鉛直断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
<1-1.第1実施例>
図1~3Bを参照して、第1実施形態の第1実施例に係るアンテナ装置10Aについて説明する。
【0011】
アンテナ装置10Aは、第1誘電体基板41と、第2誘電体基板42と、第1導体層53と、第2導体層54と、基板パターン層51と、金属壁55と、ビア56と、を備える多層基板である。アンテナ装置10Aは、x軸方向に延伸した長辺と、y軸方向に延伸した短辺とを有する複数の基板が、z軸方向に積層されて構成されている。アンテナ装置10Aは、例えば、ミリ波帯の車載用の平面アレーアンテナであり、車両の前方又は後方バンパの内部に搭載される。なお、アンテナ装置10Aは、本開示の電波吸収装置に相当する。
【0012】
第1誘電体基板41は、第1外面41aと第1内面41bとを有する。第1誘電体基板41は、第1材料で構成されている又は第1構造を有する。第2誘電体基板42は、第2外面42aと第2内面42bとを有する。第2誘電体基板42は、第2材料で構成されている又は第2構造を有する。第2材料は、第1材料よりも電波のエネルギー損失が大きい。また、第2構造は、第1構造よりも電波のエネルギー損失が大きい。すなわち、第2誘電体基板42の誘電正接は、第1誘電体基板41の誘電正接よりも大きく、第2誘電体基板42内では、第1誘電体基板41内よりも、電波が熱消費される量が大きい。
【0013】
第1導体層53は、第1内面41bと第2内面42bに接するように、第1誘電体基板41と第2誘電体基板42の間に配置されている。第2導体層54は、第2外面42aに接するように配置されている。第1導体層53及び第2導体層54は、金属(例えば、銅)のパターンである。第1導体層53には、スリット58Aが形成されている。第2導体層54は、グランド層に相当する。
【0014】
基板パターン層51は、第1外面41a上に配置された導体パターンである。図1に示すように、基板パターン層51は、M個のアンテナアレイ20と、N個の無給電アレイ30と、を備える。M,Nは、自然数である。本実施形態では、基板パターン層51は、4個のアンテナアレイ20と、7個の無給電アレイ30と、を備える。M個のアンテナアレイ20及びN個の無給電アレイ30は、アレイの延伸方向がy軸方向に沿うように、x軸方向に等間隔で並べられている。詳しくは、各アンテナアレイ20は、2つの無給電アレイ30に挟まれている。すなわち、x軸方向において、アンテナアレイ20は、無給電アレイ30と交互に配置されている。無給電アレイ30は、ビア56を介して、第1導体層53に接続されている。
【0015】
各アンテナアレイ20は、L個のアンテナ素子21を有する。各アンテナ素子21は、方形状の導体パッチである。Lは、自然数である。L個のアンテナ素子21は、y軸方向に沿って等間隔で並べられ、伝送線路21aで互いに接続されている。本実施形態では、各アンテナアレイ20は、5個のアンテナ素子21を有する。各アンテナ素子21は、放射アンテナ素子であり、例えば、多層基板の背面から高周波信号の給電を受けて電波を放射する。
【0016】
各無給電アレイ30は、L個の無給電素子31を有する。各無給電素子31は、方形状の導体パッチである。L個の無給電素子31は、y軸方向に沿って等間隔に並べられ、伝送線路31aで互いに接続されている。本実施形態では、各無給電アレイ30は、5個の無給電素子31を有する。無給電アレイ30は、アンテナ装置10Aに到来した到来波W0の一部を受信する。
【0017】
図4に、参考例に係るアンテナ装置100と、アンテナ装置100の前方に配置されたセカンドサーフィス110とを示す。セカンドサーフィス110は、例えば、バンパである。アンテナ装置100から放射された放射波の一部が、セカンドサーフィス110で反射して反射波が生じる。反射波は、アンテナ装置100へ到来し、アンテナ装置100で再反射する。反射波が再反射することで再反射波が生じ、再反射波は、アンテナ装置100の前方へ放射され、アンテナ装置100から直接放射された放射波に干渉する。その結果、図5に示すように、アンテナ装置100の前方において、アンテナ装置100の指向性利得が低下する。
【0018】
本実施形態では、アンテナ装置10Aは、アンテナ素子21の周辺に、無給電素子31を備えている。そのため、図2及び3Aに示すように、アンテナ装置10Aへ到来した波長λの反射波(以下、到来波)W0の一部は、無給電素子31で受信され、アンテナ装置10Aでの再反射が抑制される。到来波W0の別の一部は、無給電素子31で受信されずに、第1外面41a及び/又は第1導体層53で反射されて、波長λの第1反射波W1になる。上記到来波W0の別の一部は、第1外面41a上の無給電素子31が配置されていない領域(すなわち、無給電素子31の周辺)及び無給電素子31及び第1導体層53の少なくとも一つで反射される。
【0019】
なお、M個のアンテナアレイ20及びN個の無給電アレイ30は、必ずしもx軸方向に等間隔で並べられていなくてもよく、x軸方向に不等間隔で並べられていてもよい。M個のアンテナアレイ20がx軸方向に不等間隔で並べられていても、所定の方向へ電波を送信することができる。また、N個の無給電アレイ30がx軸方向に不等間隔で並べられていても、N個の無給電アレイ30は到来波W0の一部を受信することができる。
【0020】
また、無給電アレイ30は、第1外面41a上において、アンテナアレイ20の隣以外、又は、アンテナアレイ20の隣に追加して他の場所にも配置されていてもよい。また、無給電アレイ30を、第1外面41a以外の面上、又は、第1外面41a上に追加して他の面上にも配置されていてもよい。
【0021】
セカンドサーフィス110が第1外面41aに対して平行である場合(詳しくは、アンテナアレイ20からの電波の放射方向に対してセカンドサーフィス110が垂直である場合)、到来波W0は、第1外面41aに戻ってくる。しかしながら、セカンドサーフィス110が第1外面41aに対して傾いている場合(詳しくは、電波の放射方向に対してセカンドサーフィス110が、垂直でない場合)、到来波W0は、第1外面41aとは異なる場所に戻ってくる。したがって、第1外面41aに対するセカンドサーフィス110の傾きに基づいて、到来波W0が戻ってくる方向にアンテナ装置10Aとは別の基板が配置され、その基板の面上に、無給電アレイ30が配置されていてもよい。このように無給電アレイ30が配置されていれば、第1外面41aに対してセカンドサーフィス110が傾いている場合でも、到来波W0の一部が無給電素子31で受信され、不要な反射波が低減される。
【0022】
また、アンテナ素子21及び無給電素子31は、方形状の導体パッチに限らず、円形状や楕円形状の導体パッチでもよい。また、第1外面41aには、M個のアンテナアレイ20の代わりに、M×L個のパッチアンテナが設けられており、M×L個のパッチアンテナが給電を受けて電波を放射してもよい。また、第1外面41aには、N個の無給電アレイ30の代わりに、N×L個のパッチアンテナが設けられており、N×L個のパッチアンテナが、到来波W0の一部を受信してもよい。
【0023】
無給電素子31で受信された到来波W0の一部は、アンテナ装置10Aの多層基板内部へ入射する波長λの入射波W2になる。ここで、入射波W2が基板内部で反射して反射波が生じ、反射波がアンテナ装置10Aから放射されることが起こり得る。本実施形態では、このような反射波の放射を抑制するため、入射波W2を多層基板内で熱消費させる。
【0024】
ただし、アンテナアレイ20に給電された高周波信号は、第1誘電体基板41内を伝送する。そのため、第1誘電体基板41を電波の熱消費量が大きい材料又は構造で構成すると、アンテナ装置10Aから放射される放射波が減衰する。そこで、本実施形態に係るアンテナ装置10Aでは、第2誘電体基板42における電波のエネルギー損失を、第1誘電体基板41における電波のエネルギー損失よりも大きくし、入射波W2を第2誘電体基板42内で熱消費させる。
【0025】
具体的には、第1導体層53は、スリット58Aを有する。スリット58Aは、z軸方向において、無給電素子31に重なる位置に配置されている。1つの無給電素子31に対して1つのスリット58Aが配置されている。すなわち、本実施形態では、第1導体層53にN×L個のスリット58Aが形成されている。スリット58Aは、無給電アレイ30の延伸方向に垂直な方向(すなわち、x軸方向)に延伸している。スリット58Aは、z軸方向において、無給電素子31と完全に重なっていてもよいし、一部分が重なっていてもよい。
【0026】
図2に示すように、z軸方向において、スリット58Aが無給電素子31と重なる位置に配置されていることにより、無給電素子31から入射した入射波W2は、スリット58Aを介して第2誘電体基板42へ入射する。また、z軸方向において、スリット58Aが無給電素子31と重なる位置に配置されていることにより、伝送線路21aに給電された高周波信号が、スリット58Aを介して第2誘電体基板42へ伝搬することを抑制できる。
【0027】
第2誘電体基板42には、金属壁55が配置されている。金属壁55は、第1導体層53に接する第1端部と、第2導体層54に接する第2端部とを有し、第2誘電体基板42を貫通する。金属壁55の第1端部は、第1導体層53に形成されたスリット58Aの全周囲を囲んでいる。
【0028】
金属壁55は、複数の金属ビア55aで構成されていてもよい。すなわち、金属壁55は、xy平面上において、スリット58Aを囲むように方形状、円形状、楕円形状などに、所定の間隔で並べられた複数の金属ビア55aから構成されてもよい。所定の間隔は、入射波W2の波長λに応じて、金属壁55から入射波W2が漏れない距離にするとよい。
【0029】
図6は、第1実施形態の第1実施例に係るアンテナ装置10Aの第2誘電体基板42の水平断面を模式的に示す。図6に示すように、金属壁55は、N個のスリット58Aの全体を囲んでいる。なお、金属壁55は、N個のスリット58Aを個別に囲んでもよい。すなわち、x第1導体層53において、x軸方向における隣り合う2つのスリット58Aの間に、金属壁55の第1端部が接していてもよい。また、N個のスリット58Aを2つ以上のグループに分け、金属壁55がグループの各々を囲ってもよい。
【0030】
あるいは、金属壁55は、金属製の板状の部材で構成されていてもよい。すなわち、金属壁55は、xy断面形状が方形状、円形状、楕円形状などになるように、金属製の板状の部材が曲げられて構成されてもよい。
【0031】
金属壁55がスリット58Aを囲んでいることにより、入射波W2は、スリット58Aを介して金属壁55の内部へ進入する。入射波W2は、金属壁55の内部で乱反射を繰り返し、熱消費される。これにより、アンテナ装置10Aから放射される不要な反射波を抑制することができる。
【0032】
しかしながら、図3Aに示すように、入射波W2が金属壁55で反射して生じた第2反射波W3が、スリット58A及び第1誘電体基板41を介して、無給電素子31から放射されることがあり得る。そこで、本実施形態に係るアンテナ装置10Aでは、更に、不要な反射波を抑制するため、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれるように、距離LL1の長さが形成されている。距離LL1は、第1誘電体基板41に沿った方向における、スリット58Aと金属壁55との間の長さである。詳しくは、距離LL1は、y軸方向において対向する金属壁55の2つの壁のうちの一方からスリット58Aまでの長さである。距離LL2は、y軸方向において対向する金属壁55の2つの壁のうちの他方からスリット58Aまでの長さであり、距離LL2<距離LL1である。なお、距離LL2=距離LL1であってもよい。
【0033】
第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれると、第2反射波W3が第1反射波W1と打ち消し合い、不要な反射波が更に抑制される。第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相から180度ずれている場合に、第2反射波W3が第1反射波W1と打ち消し合うエネルギー量が最大になる。よって、本実施形態では、距離LL1は、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と逆位相になる長さに形成されている。
【0034】
具体的には、図3Bに示すように、本実施形態では、距離LL1は、(2K-1)×λ/4の長さ、すなわち、波長λの4分の1の奇数倍に形成されている。Kは自然数である。第1導体層53で反射して生じた第1反射波W1は、第1導体層53での反射によって位相が反転する。すなわち、第1反射波W1の位相は、入射波W2の位相と比べて、λ/2分ずれる。一方、第2反射波W3の位相は、入射波W2の位相と比べて、金属壁55での反射によってλ/2分ずれるとともに、距離LL1の往復分ずれる。したがって、基準面において、第2反射波W3の位相は、第1反射波W1の位相と比べて、距離LL1の往復分ずれる。基準面は、基板パターン層51の上部に配置された仮想の面であり、基板パターン層51に平行な面である。距離LL1が、波長λの4分の1の奇数倍に形成されていると、距離LL1の往復分の位相のずれは、波長λの2分の1の奇数倍になる。したがって、距離LL1が、波長λの4分の1の奇数倍に形成されていると、第2反射波W3の位相は、第1反射波W1の位相の逆位相になる。なお、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と逆位相ではなくずれているだけでも、第2反射波W3は、第1反射波W1といくらか打ち消し合い、不要な反射波が抑制される。したがって、距離LL1は、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と同位相にならない長さであれば、必ずしも逆位相になる長さでなくてもよい。
【0035】
以上説明した第1実施形態の第1実施例によれば、以下の効果を奏する。
(1)無給電素子31が受信した入射波W2が、スリット58Aを介して第2誘電体基板42内へ進入して、第2誘電体基板42内で熱消費される。したがって、入射波W2がアンテナ装置10Aで反射されて生じる不要な反射波を低減することができる。
【0036】
(2)第2誘電体基板42は、第1誘電体基板41よりも電波のエネルギー損失が大きい材料又は構造で構成されている。したがって、第1誘電体基板41の第1外面41a上にアンテナ素子21を配置した場合、第1誘電体基板41内を伝送させて電波を放射させつつ、第2誘電体基板42内で入射波W2を熱消費させることができる。
【0037】
(3)第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれるように、距離LL1が形成されているため、第2反射波W3が第1反射波W1と打ち消し合う。したがって、不要な反射波を低減することができる。
【0038】
(4)第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と逆位相になるように、距離LL1が形成されている場合には、不要な反射波を最大限低減することができる。距離LL1を波長λの4分の1の長さに形成することにより、第2反射波W3の位相を、第1反射波W1の位相と逆位相にすることができる。
【0039】
(5)第2誘電体基板42に金属壁55が配置されていることにより、入射波W2が、スリット58Aから金属壁55で囲まれた第2誘電体基板42内へ進入する。入射波W2は、金属壁55で乱反射するため、金属壁55で囲まない場合よりも入射波W2の熱消費量が増加して、入射波W2をより低減することができる。また、入射波W2が乱反射するため、入射波W2が乱反射して生じた第2反射波W3がスリット58Aに戻りにくくなり、第2反射波W3が再放射されることを抑制することができる。ひいては、不要な反射波をより低減することができる。
【0040】
(6)積層方向において、無給電素子31がスリット58Aと重なっていることにより、無給電素子31が受信した入射波W2が、スリット58Aを介して第2誘電体基板42内へ進入させやすい。また、アンテナ素子21に給電された高周波信号が、第2誘電体基板42内へ伝搬することを抑制できる。
【0041】
<1-2.第2実施例>
第1実施形態の第2実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0042】
図7に示すように、第2実施例に係るアンテナ装置10Aは、レジスト32を更に備える。レジスト32は、N個の無給電アレイ30の終端部の上に配置され、終端部を覆っている。これにより、入射波W2の熱損失量をより大きくすることができる。
【0043】
<1-3.第3実施例>
第1実施形態の第3実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0044】
図8に示すように、第3実施例に係るアンテナ装置10Aは、複数の内側ビア55bを備える。複数の内側ビア55bは、金属壁55の内部に配置されている。複数の内側ビア55bは、第2誘電体基板42を貫通し、第1導体層53及び第2導体層54に接触している。
【0045】
複数の内側ビア55bを設けたことにより、入射波W2が、金属壁55(すなわち、金属ビア55a)に向かう途中で、内側ビア55bで反射して第2反射波W3が生じ、第2反射波W3は、様々な方向へ伝搬する。これにより、金属壁55の内部で第2反射波W3が伝搬する経路が長くなり、第2反射波W3が熱消費される量が増加する。また、第2反射波W3が様々な方向に伝搬するため、第2反射波W3がスリット58Aへ戻りにくくなる。ひいては、アンテナ装置10Aからの第2反射波W3の放射をより抑制することができる。
【0046】
<1-4.第4実施例>
第1実施形態の第4実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0047】
図9に示すように、第4実施例に係るアンテナ装置10Aの第1導体層53には、N×L個のスリット58Aの代わりに、N×L個のスリット58Bが形成されている。スリット58Aはx軸方向に対して平行に延伸するように形成されていたが、スリット58Bはx軸方向に対して所定角度傾いて延伸するように形成されている。所定角度は、例えば45度である。
【0048】
スリット58Bがx軸方向に対して傾いていることにより、スリット58Bから金属壁55の内部へ進入した入射波W2が金属壁55の内部で伝搬する経路が長くなる。よって、入射波W2が熱消費される量を増加させて、アンテナ装置10Aからの第2反射波W3の放射を抑制することができる。
【0049】
<1-5.第5実施例>
第1実施形態の第5実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0050】
図10に示すように、第5実施例に係るアンテナ装置10Aの金属壁55は、y軸に平行な二辺と、x軸に平行な一辺と、x軸に非平行な一辺を有する。x軸に非平行な一辺は、複数の金属ビア55aが、2つの凸状に配置されている。金属壁55がx軸に非平行な一辺を有していることにより、入射波W2が、非平行な一辺で反射して生じた第2反射波W3が、様々な方向へ伝搬する。そのため、第2反射波W3がスリット58Aへ戻りにくくなる。ひいては、アンテナ装置10Aからの第2反射波W3の放射を抑制することができる。なお、x軸に非平行な一辺は、1つの凸状を有していてもよいし、3つ以上の凸状を有していてもよい。
【0051】
<1-6.第6実施例>
第1実施形態の第6実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0052】
図11に示すように、第6実施例に係るアンテナ装置10Aは、金属壁55を備えていなし。このようなアンテナ装置10Aでも、入射波W2を、第2誘電体基板42全体で熱消費させて、不要な反射波を抑制することができる。
【0053】
<1-7.第7実施例>
第1実施形態の第7実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0054】
図12に示すように、第7実施例に係るアンテナ装置10Aは、スリット58Aごとに金属壁55でスリット58Aの周囲を囲い、スリット58Aごとに、距離LL1の長さが異なる。例えば、距離LL1=(2K-1)×λ/4とした場合に、スリット58Aの並びに沿って、Kの値を順に増加させる。これにより、無給電アレイ30ごとに、第2反射波W3の位相を制御し、第2反射波W3の反射方向を制御することができる。
【0055】
<1-8.第8実施例>
第1実施形態の第8実施例は、基本的な構成は第1実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0056】
図13に示すように、第8実施例に係るアンテナ装置10Aは、距離LL1だけでなく、距離LL2も用いて、第2反射波W3の位相を制御する。すなわち、第8実施例では、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれるように(例えば、逆位相になるように)、距離LL2が形成される。これにより、不要な反射波をより抑制することができる。
【0057】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0058】
前述した第1実施形態に係るアンテナ装置10Aは平面アレイアンテナであった。これに対し、第2実施形態に係るアンテナ装置10Bは導波管スロットアレイアンテナである点で、第1実施形態と相違する。
【0059】
<2-2.第1実施例>
図14及び15を参照して、第2実施形態の第2実施例に係るアンテナ装置10Bについて説明する。アンテナ装置10Bは、本開示の電波吸収装置に相当する。
【0060】
アンテナ装置10Bは、導波管80を備える。導波管80は、xz断面が方形状の方形の中空導波管である。導波管80は、x軸及びy軸方向に沿った上壁82を備える。導波管80は、上壁82の面上に、M個の給電スロットアレイ60と、N個の無給電スロットアレイ70と、が形成されている。本実施形態では、上壁82の面上に、4個の給電スロットアレイ60と、7個の無給電スロットアレイ70と、が形成されている。M個の給電スロットアレイ60及びN個の無給電スロットアレイ70は、アレイの延伸方向がy軸方向に沿うように、x軸方向に等間隔で並べられている。詳しくは、各給電スロットアレイ60は、2つの無給電スロットアレイ70に挟まれている。すなわち、x軸方向において、給電スロットアレイ60は、無給電スロットアレイ70と交互に配置されている。
【0061】
導波管80は、複数の仕切り壁81を備える。各仕切り壁81は、第1端と第2端とを有し、第1端は上壁82に接続され、第2端は底壁83に接続されている。各仕切り壁81は、y軸方向に延伸している。複数の仕切り壁81は、給電スロットアレイ60と無給電スロットアレイ70の間と、無給電スロットアレイ70と無給電スロットアレイ70との間と、x軸方向の端に配置された2つの無給電スロットアレイ70の端部に配置されている。
【0062】
各給電スロットアレイ60は、L個の給電スロット61を有する。各給電スロット61は、x軸方向に平行に延伸するように形成されている。L個の給電スロット61は、x軸方向における位置が一致しておらず、x軸方向に沿って位置が少しずつずれている。本実施形態では、各給電スロットアレイ60は、5個の給電スロット61を有する。各給電スロット61は、放射アンテナ素子であり、例えば、導波管80の背面から高周波信号の給電を受けて電波を放射する。
【0063】
各無給電スロットアレイ70は、L個の無給電スロット71を有する。各無給電スロット71は、x軸方向に平行に延伸するように形成されている。L個の無給電スロット71は、L個の給電スロット61と同様に、x軸方向に沿って少しずつ位置がずれている。無給電スロットアレイ70は、アンテナ装置10Bに到来した到来波W0の一部を受信する。
【0064】
導波管80は、空間減衰よりも電波のエネルギー損失が大きい構造を有する。したがって、無給電スロットアレイ70を介して導波管80内へ入射した入射波W2は、導波管80内で熱消費される。
【0065】
さらに、図15に示すように、導波管80は、金属壁75を備える。金属壁75は、無給電スロット71毎に設置されている。金属壁75は、第1端と第2端とを有し、第1端は上壁82に接続されており、第2端は底壁83に接続されている。金属壁75は、x軸方向に平行な壁であり、隣接する2つの仕切り壁81に接続されている。そして、2つの金属壁75の第1端と2つの仕切り壁81の第1端とが、無給電スロット71を囲んでいる。
【0066】
2つの金属壁75及び2つの仕切り壁81が、無給電スロット71を囲んでいることにより、入射波W2は、無給電スロット71を介して2つの金属壁75及び2つの仕切り壁81で囲まれた内部へ進入し、乱反射を繰り返して熱消費される。これにより、アンテナ装置10Bから放射される不要な反射波を抑制することができる。
【0067】
さらに、距離LL3の長さが、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれるように、形成されている。距離LL3は、y軸方向における、2つの金属壁75のうちの少なくとも一方から無給電スロット71までの長さである。
【0068】
本実施形態では、距離LL3は、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と逆位相になる長さに形成されている。なお、距離LL3は、第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と同位相にならない距離であれば、必ずしも逆位相になる距離でなくてもよい。
【0069】
以上説明した第1実施形態の第2実施例によれば、以下の効果を奏する。
(7)無給電スロット71が受信した入射波W2が、導波管80内へ進入して、導波管80内で熱消費される。したがって、入射波W2がアンテナ装置10Bで反射されて生じる不要な反射波を低減することができる。
【0070】
(8)導波管80内は、空間減衰よりも電波のエネルギー損失が大きい。したがって、上壁82上に給電スロット61を形成した場合、給電スロット61から電波を放射させつつ、導波管80内で入射波W2を熱消費させることができる。
【0071】
(9)第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相からずれるように、距離LL3が形成されているため、第2反射波W3が第1反射波W1と打ち消し合う。したがって、不要な反射波を低減することができる。
【0072】
(10)第2反射波W3の位相が、第1反射波W1の位相と逆位相になるように、距離LL3が形成されている場合には、不要な反射波を最大限低減することができる。
(11)導波管80内に金属壁75及び仕切り壁81が配置されていることにより、入射波W2が、無給電スロット71から2つの金属壁75及び2つの仕切り壁81で囲まれた導波管80内へ進入する。入射波W2は、金属壁75及び仕切り壁81で乱反射するため、金属壁75で囲まない場合よりも入射波W2の熱消費量が増加して、入射波W2をより低減することができる。また、入射波W2が乱反射するため、入射波W2が乱反射して生じた第2反射波W3が無給電スロット71に戻りにくくなり、第2反射波W3が再放射されることを抑制することができる。ひいては、不要な反射波をより低減することができる。
【0073】
<2-3.第2実施例>
第2実施形態の第2実施例は、基本的な構成は第2実施形態の第1実施例と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第2実施形態の第1実施例と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0074】
図16に示すように、第2実施例に係るアンテナ装置10Bは、導波管80の内面に、凹凸76を更に備える。これにより、入射波W2の熱消費量を増加させることができる。ひいては、アンテナ装置10Bから放射される不要な反射波をより抑制することができる。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0076】
(a)上記第1実施形態では、各アンテナ素子21は、放射アンテナ素子であったが、受信アンテナ素子であってもよい。すなわち、各アンテナ素子21は、物標で電波が反射して生じた反射波を受信してもよい。また、上記第2実施形態では、各給電スロット61は、放射アンテナ素子であったが、受信アンテナ素子であってもよい。すなわち、各給電スロット61は、物標で電波が反射して生じた反射波を受信してもよい。
【0077】
(b)上記第1実施形態では、アンテナ装置10Aが、M個のアンテナアレイ20を備えていたが、アンテナアレイ20を備えていなくてもよい。すなわち、アンテナ装置10Aは、N個の無給電アレイ30のみを備えていてもよい。このようにしても、アンテナ装置10Aを、不要な電波を吸収する装置として利用できる。
【0078】
(c)上記第1実施形態では、第2誘電体基板42の電波のエネルギー損失が、第1誘電体基板41の電波のエネルギー損失よりも大きいが、同じであってもよい。このようにしても、距離LL1を調整して、第2反射波W3の位相を第1反射波W1の位相からずらすことにより、不要な反射波を抑制することができる。
【0079】
(d)上記第1実施形態では、第2反射波W3の位相が第1反射波W1の位相からずれるように、距離LL1が調整されていたが、距離LL1をどのような長さにしてもよい。このようにしても、第2誘電体基板42の電波のエネルギー損失を、第1誘電体基板41の電波のエネルギー損失よりも大きくすることにより、入射波W2を第2誘電体基板42内で熱消費させて、不要な反射波を抑制することができる。
【0080】
(e)上記第2実施形態では、アンテナ装置10Bが、M個の給電スロットアレイ60を備えていたが、給電スロットアレイ60を備えていなくてもよい。すなわち、アンテナ装置10Bは、N個の無給電スロットアレイ70のみを備えていてもよい。このようにしても、アンテナ装置10Bを、不要な電波を吸収する装置として利用できる。
【0081】
(f)上記第2実施形態では、導波管80内の電波のエネルギー損失が、空間減衰よりも大きいが、空間減衰と同じであってもよい。このようにしても、距離LL3を調整して、第2反射波W3の位相を第1反射波W1の位相からずらすことにより、不要な反射波を抑制することができる。
【0082】
(g)上記第2実施形態では、第2反射波W3の位相が第1反射波W1の位相からずれるように、距離LL3が調整されていたが、距離LL3をどのような長さにしてもよい。このようにしても、導波管80内の電波のエネルギー損失を、空間減衰よりも大きくすることにより、入射波W2を導波管80内で熱消費させて、不要な反射波を抑制することができる。
【0083】
(h)上記第2実施形態では、アンテナ装置10Bは、金属壁75を備えていたが、金属壁75を備えていなくてもよい。アンテナ装置10Bが金属壁75を備えていなくても、仕切り壁81で区切られた空間で、入射波W2を熱消費させることができる。
【0084】
(i)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0085】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
第1外面(41a)と第1内面(41b)とを有する第1誘電体基板(41)と、
第2外面(42a)と第2内面(42b)とを有する第2誘電体基板(42)と、
スリット(58A,58B)が設けられ、前記第1内面と前記第2内面に接するように配置された第1導体層(53)と、
前記第1外面上に配置された無給電素子(31)と、
前記第2外面上に配置された第2導体層(54)と、を備える、
電波吸収装置。
[項目2]
金属製の導波管(80)であって、無給電素子として作用する第1スロット(71)が設けられた壁面(82)を有する導波管を備える、
電波吸収装置。
[項目3]
前記第1外面(41a)上に配置され、給電を受けて電波を放射する、又は、電波を受信するように構成されたアンテナ素子(21)を更に備える、
項目1に記載の電波吸収装置。
[項目4]
前記壁面(82)に、給電を受けて電波を放射する、又は、電波を受信するように構成された第2スロット(61)が更に設けられている、
項目2に記載の電波吸収装置。
[項目5]
前記第1誘電体基板(41)は、第1材料又は第1構造を有し、
前記第2誘電体基板(42)は、第1材料よりも電波のエネルギー損失が大きい第2材料、又は第1構造よりも電波の損失が大きい第2構造を有する、
項目1又は3に記載の電波吸収装置。
[項目6]
前記第1導体層(53)に接する第1端部と、前記第2導体層(54)に接する第2端部とを有し、且つ、前記第2誘電体基板を貫通する、金属壁(55)を更に備え、
前記第1端部は、前記スリットを囲んでいる、
項目1、3、5の何れか1項目に記載の電波吸収装置。
[項目7]
前記第1誘電体基板(41)と前記第2誘電体基板(42)の積層方向において、前記無給電素子(31)は、前記スリット(58A,58B)と重なるように配置されている、
項目1、3、5、6のいずれか1項目に記載の電波吸収装置。
[項目8]
前記導波管(80)は、空間減衰よりも電波のエネルギー損失が大きい構造を有する、
項目2又は4に記載の電波吸収装置。
[項目9]
前記導波管(80)は、前記壁面(82)に対向する対向壁(83)を有し、
前記壁面に接する第1端部と、前記対向壁に接する第2端部とを有し、且つ、前記導波管の内部を仕切る金属壁(75,81)を更に備え、
前記第1端部は、前記第1スロット(71)を囲んでいる、
項目2、4、8のいずれか1項目に記載の電波吸収装置。
【符号の説明】
【0086】
10A,10B…アンテナ装置、20…アンテナアレイ、21…アンテナ素子、30…無給電アレイ、31…無給電素子、41…第1誘電体基板、41a…第1外面、41b…第1内面、42…第2誘電体基板、42a…第2外面、42b…第2内面、51…基板パターン層、53…第1導体層、54…第2導体層、55,75…金属壁、58A,58B…スリット、60…給電スロットアレイ、61…給電スロット、70…無給電スロットアレイ、71…無給電スロット、80…導波管、81…仕切り壁、82…上壁、83…底壁。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16