(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077002
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240530BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240530BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/90
A47C7/74 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023197808
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】102022000024339
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル マーティン テイラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア モスカルディ
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JG03
3B087DE03
3B087DE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量化および小型化と併せて、高い快適性をもたらす、車両用シートを提供する。
【解決手段】車両(1)の床板に固定されるように構成され、弾性的に撓み、ネット状の構造を有する支持構造体(9)、および支持構造体(9)を覆う内装材(10)を備えるクッション(6)と、クッション(6)の支持構造体(9)の前壁に少なくとも部分的に係合し、クッション(6)の支持構造体(9)内に空調空気を導入するために、空調空気供給ダクト(14)に接続することができる、ディフューザ(13)と、クッション(6)の支持構造体(9)の下壁、および/または、側壁に沿って配置され、空気の流出を防止するために不透過性である、少なくとも1つの遮断要素(15)と、を有する、車両(1)用シート(5)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用のシート(5)であって、
前記車両(1)の床板に固定されるように構成され、弾性的に撓み、少なくとも部分的にネット状の構造を有する支持構造体(9)、および、前記支持構造体(9)を覆う内装材(10)を備える、クッション(6)と、
前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の、前壁または後壁に少なくとも部分的に係合し、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)内に空調空気を導入するために、空調空気供給ダクト(14)に接続することができる、ディフューザ(13)と、
前記シート(5)の一体部分であり、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の下壁、および/または、側壁に沿って配置され、空気の流出を防止するために不透過性であり、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)と気密結合を形成するように、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)に堅個に接合される、少なくとも1つの遮断要素(15)と、を備える、シート(5)。
【請求項2】
前記ディフューザ(13)が、前記供給ダクト(14)から受け取った前記空気を、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の前面または後面に導入するように構成されているため、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)内に、前記空気を拡散させることができる、請求項1に記載のシート(5)。
【請求項3】
前記クッション(6)の前記内装材(10)には貫通孔がなく、そのため、実質的に不透過性である、請求項1に記載のシート(5)。
【請求項4】
使用時に、前記シート(5)の乗員が着座する、前記シート(6)の前記内装材(10)の上壁のみに、空気の通過を可能にする複数の貫通孔がある、請求項1に記載のシート(5)。
【請求項5】
前記遮断要素(15)が、空気を流出させる貫通開口部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(5)。
【請求項6】
前記遮断要素(15)の前記貫通開口部が、前記ディフューザ(13)の反対側にある、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の前記後壁または前記前壁を貫通して配置され、そのため、前記クッション(6)を通って前方から後方へ、またはその逆に、前記空気を流すことができる、請求項5に記載のシート(5)。
【請求項7】
前記遮断要素(15)の前記貫通開口部が、前記ディフューザ(13)の反対側にある、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の前記後壁または前記前壁に近接した、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の前記下壁を貫通して配置され、そのため、前記クッション(6)を通って前方から後方へ、またはその逆に、前記空気を流すことができる、請求項5に記載のシート(5)。
【請求項8】
前記クッション(6)に接続され、前記支持構造体(9)、および前記支持構造体(9)を覆う前記内装材(10)が設けられた、バックレスト(7)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(5)。
【請求項9】
前記クッション(6)の前記支持構造体(9)から、前記バックレスト(7)の前記支持構造体(9)に、空気を流すことができる、空圧接続部を備える、請求項8に記載のシート(5)。
【請求項10】
前記クッション(6)の前記支持構造体(9)から、前記バックレスト(7)の前記支持構造体(9)に、空気を流すことができる接続部を形成する、少なくとも1つの接続ダクトを備える、請求項8に記載のシート(5)。
【請求項11】
前記遮断要素(15)が、前記クッション(6)の前記支持構造体(9)の前記下壁、前記側壁、および前記後壁を完全に遮断する、請求項8に記載のシート(5)。
【請求項12】
前記バックレスト(7)の前記支持構造体(9)の後壁および/または側壁に沿って配置された、更なる遮断要素(15)を備える、請求項8に記載のシート(5)。
【請求項13】
前記支持構造体(9)が単層構造であり、単一のネット状の層からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(5)。
【請求項14】
前記支持構造体(9)が、互いに重なり合う、少なくとも1つのネット状の層(9a)、および、好ましくは固体発泡体で作製された、固体層(9b)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシート(5)。
【請求項15】
前記内装材(10)が、前記ネット状の層(9a)と直接接触している、請求項14に記載のシート(5)。
【請求項16】
前記層(9a、9b)が互いに接着される、請求項14に記載のシート(5)。
【請求項17】
前記支持構造体(9)が、より多数のネット状の層(9a)を有する第1の領域、ならびに、より少数のネット状の層(9a)を有する第2の領域を少なくとも伴う、差異化された組成を有する、請求項13に記載のシート(5)。
【請求項18】
前記第1の領域が、前記乗員の重量の影響をより受けやすく、前記第2の領域が、前記乗員の重量の影響を受けにくい、請求項17に記載のシート(5)。
【請求項19】
前記支持構造体(9)の前記第1の領域が、前記支持構造の(9)の前記第2の領域よりも多い、少なくとも1つのネット状の層(9a)を備える、請求項17に記載のシート(5)。
【請求項20】
道路車両(1)であって、
床によって底部を境界付けられた、車室(2)と、
前記車室(2)内に配置され、請求項1から4のいずれか一項に従って製造された、少なくとも1つのシート(5)と、
前記シート(5)の前記ディフューザ(13)において終了する、空調空気供給ダクト(14)が設けられた、空調システム(11)と、を備える、道路車両(1)。
【請求項21】
前記クッション(6)の前記支持構造体(9)が、前記床から離間しており、したがって、前記床から0以外の距離にある、請求項20に記載の道路車両(1)。
【請求項22】
前記遮断要素(15)が、前記シート(5)の一体部分であり、したがって、前記床から分離して離間している、請求項20に記載の道路車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本特許出願は、2022年11月25日に出願されたイタリア特許出願第102022000024339号の優先権を主張し、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0003】
車両のシートは、実質的に水平に配置されたシートクッション、および、実質的に垂直に配置されたバックレストからなる。
【0004】
構造的観点から、車両のシートは、車両の床板に固定された、(典型的には金属または複合材料で作製された)フレーム、フレームに取り付けられ、弾性的に撓む支持構造体、および、支持構造体を覆い、外部との審美的かつ触覚的な境界面を構成する、内装材を備える(内装材は、布または革で作製することができる)。
【0005】
近年、3Dプリンタを使用して(すなわち、積層造形で)構築したネット状構造によって、シートの支持構造体を製造することが、製造業者から提案されている。
【0006】
ドイツ特許出願第102008022772号では、シートの背後に配置された電池パックに到達して冷却するために、シートクッションを通って前方から後方に流れる空気流の通路が得られる、シートクッションを備えた車両用シートが開示されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、軽量化および小型化と併せて、高い快適性をもたらす、車両用シートを提供することである。
【0008】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載の、車両用シートが提供される。
【0009】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を説明し、説明の不可欠な部分を形成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明のいくつかの非限定的な実施形態を示す、以下の添付の図面を参照して、本発明の説明を行う。
【0011】
【
図1】本発明によるシートを備えた自動車の、概略図である。
【
図2】
図1のシートの、支持構造体の概略図である。
【
図3】
図2の支持構造体に対応する変形例の、概略図である。
【
図4】
図2の支持構造体に対応する変形例の、概略図である。
【
図5】本発明によるシートを備えた自動車の、別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、番号1は、全体として、2つの前部操舵従動輪、ならびに、パワートレインシステムからトルクを受ける2つの後部駆動輪を備える、道路車両(特に、自動車)を示す(あるいは、4つの車輪すべてが駆動輪であってもよく、または、前輪のみが駆動輪であってもよい)。
【0013】
道路車両1は、フロントガラス3の下に配置されたダッシュボードによって前部を境界付けられ、床によって底部を境界付けられた、車室2を備える。ステアリングホイール4の背後に配置された制御パネルによって、ダッシュボードが支持される。車室2には、対応する乗員を収容するようにそれぞれ設計された、いくつかのシート5がある。
【0014】
各シート5は、実質的に水平に配置されたシートクッション6、および、実質的に垂直に配置されたバックレスト7からなる。クッション6およびバックレスト7が連続して、シート1の「L」型形状がもたらされる。バックレスト7は、上部において、一般にバックレスト7に含まれるヘッドレスト8で終了する(すなわち、ヘッドレスト8は、バックレスト7と共に、1つの不可分の本体を形成する)。
【0015】
構造的観点から、各シート5は、車両1の床板に固定された(典型的には金属または複合材料で作製された)フレーム、フレームに取り付けられ、弾性的に撓む支持構造体9、および、支持構造体9を覆い、外部との審美的かつ触覚的な境界面を構成する、内装材10を備える(内装材10は、布または革で作製することができる)。
【0016】
図2に示す実施形態では、各シート5の支持構造体9は、マルチジェットフュージョン方式を用いて、熱可塑性ポリウレタン(ThermoPlastic Polyurethane:TPU)から完全に作製され、ネット状構造であり(すなわち、支持構造体9はネット状であり)、かつ、3Dプリンタを使用して(すなわち、積層造形によって)構築される。ネット状の支持構造体9は、主に角錐状の適切な幾何学的枠組みに従って、直立部を連結することによって構築される。言い換えれば、支持構造体9は、1枚のネット状の層で構成されており、単層構造である。
【0017】
図3に示す代替的な実施形態では、支持構造体9は、互いに重なり合う2つの層、9a、9b(のみ)からなる。層9aは(
図2に示す実施形態と同様に)ネット状の層であり、内装材10と直接接触し、TPU(「熱可塑性ポリウレタン」)で作製される。一方、層9bは固体であり、固体発泡体で作製される。言い換えれば、支持構造体9は多層構造であり、単一のネット状の層9a、および、単一の固体層9bを含む。
【0018】
図4に示す更なる実施形態では、支持構造体9は、(互いに独立した)2つのネット状の層9a、および、固体層9bからなり、それらが互いに重なり合う。したがって、
図4に示す支持構造体9では、より多数のネット状の層9aがあり、そのため、
図3に示す支持構造体9とは異なる(結果として、固体層9bのサイズが小さくなる)。本明細書に示されていない更なる実施形態によれば、支持構造体9は、(互いに独立した)3つまたは4つのネット状の層9aを備える。
【0019】
すべての実施形態において、内装材10は、常にネット状の層9aと直接接触しており、一般に、接触するネット状の層9aに接着される。
【0020】
可能な実施形態によれば、複数の層9a、および/または、層9aと層9bは、層9aおよび/または9bの間にいかなる接合手段も伴わず、単に互いの上に載置される。別の実施形態によれば、複数の層9aと9b、および/または、層9aと層9bは、接着によって互いに接合され、すなわち、互いに接着される。
【0021】
可能な実施形態によれば、クッション6および/またはバックレスト7において、支持構造体9は、その伸長部全体にわたって同一の組成を有する。代替的な実施形態によれば、クッション6および/またはバックレスト7において、支持構造体9は、ある領域(典型的には、乗員の重量の影響をより大きく受ける高負荷領域)では、より多くのネット状の層9aを伴い、他の領域(典型的には、乗員の重量の影響を受けにくい低負荷領域)では、より少ないネット状の層9aを伴う、差異化された組成を有する。例えば、支持構造体9には、2つのネット状の層9aがある、少なくとも1つの領域と、単一のネット状の層9aがある、少なくとも別の領域とを含めることができる。あるいは、支持構造体9には、3つのネット状の層9aがある、少なくとも1つの領域、ならびに、単一のネット状の層9a、または2つのネット状層9aがある、少なくとももう1つの領域を含めることができる。
【0022】
道路車両1は、とりわけ、空調空気(すなわち、加熱または冷却された空気)を生成するように構成された、空気処理ユニット12が設けられた、空調システム11を備える。空調空気は、複数の通気口を介して、車室2内に放出される。
【0023】
シート5は、クッション6の支持構造体9の前壁に少なくとも部分的に係合し、空調空気をクッション6の支持構造体9に導入(拡散)するために、空調システム11の空気処理ユニット12からの空調空気供給ダクト14に接続された、ディフューザ13を備える。すなわち、ディフューザ13は、空調空気をクッション6の支持構造体9に流入させるための、供給ダクト14からの空調空気用の吸気ゲートである。好ましい実施形態によれば、ディフューザ13の幅は、クッション6の支持構造体9の幅と実質的に同じであり、クッション6の支持構造体9の高さと同じ高さ、またはそれよりも低い高さにすることができる。ディフューザ13は、供給ダクト14から受け取った空気をクッション6の支持構造体9の前面(すなわち、前壁)全体に導入するように構成されているため、クッション6の支持構造体9内に空気を拡散することができる。
【0024】
シート5は、クッション6の支持構造体9の下壁、および/または、側壁に沿って配置され、空気の流出を防止するために不透過性である、少なくとも1つの遮断要素15を備える。特に、遮断要素15は、シート5の一体部分であり(すなわち、シート5と一体であり)、クッション6の支持構造体9との気密結合を形成するように、クッション6の支持構造体9に堅個に接合される。
【0025】
遮断要素15は、前方でディフューザ13によって導入された空気が、クッション6の支持構造体9の後壁まで、クッション6の支持構造体9内に留まるように(したがって、クッション6の支持構造体9全体を前後に流れるように)、クッション6の支持構造体9の下壁および側壁を封止することを目的とする。
【0026】
好ましい実施形態によれば、遮断要素15には、空気を流出させることのできる貫通開口部があり、好ましくは、クッション6の支持構造体9の後部領域に配置される。貫通開口部は、クッション6の支持構造体9の後壁を貫通して、あるいは、クッション6の支持構造体9の後壁に近接した、クッション6の支持構造体9の下壁を貫通して、配置することができる。
【0027】
可能な実施形態によれば、クッション6の支持構造体9は、クッション6の支持構造体9を流れる空気の少なくとも一部がバックレスト7の支持構造体9にも流れるように、バックレスト7の支持構造体9に、空圧的に接続される。例えば、クッション6の支持構造体9を、バックレスト7の支持構造体9に、(隙間なく)直接かつ密接に接続することができる(すなわち、バックレスト7の支持構造体9と単一の不可分な本体を形成する)。あるいは、クッション6の支持構造体9からバックレスト7の支持構造体9への、空気流をもたらすことができる接続部を形成する、少なくとも1つの接続ダクトが存在し得る。
【0028】
可能な実施形態によれば、クッション6およびバックレスト7の内装材10には、貫通孔が全くないため、実質的にどこにも空気を通さない。別の実施形態によれば、使用時にシート5の乗員が着座する、クッション6の内装材10の上壁のみ、および、使用時にシート5の乗員がもたれる、バックレスト7の内装材10の前壁のみに、空気を通過させることのできる、複数の貫通微細孔がある。このようにして、支持構造体9の内部を流れる空気の一部が、内装材10から流出し、したがってシート5の乗員に直接的に到達する。
【0029】
図1に示す実施形態では、遮断要素15は、クッション6の支持構造体9の下壁および側壁を完全に遮断し、かつ、クッション6の支持構造体9の後壁を介した空気の流出をもたらすように、クッション6の支持構造体9の後壁を、部分的にのみ遮断する。代替的な実施形態によれば、遮断要素15は、クッション6の支持構造体9の後壁も完全に遮断し、その結果、クッション6の支持構造体9を流れるすべての空気が、バックレスト7の支持構造体9に流れることになる。
【0030】
クッション6の支持構造体9は、好ましくは、車室2の床部から離間しており、したがって、車室2の床から0以外の距離にある。同様に、遮断要素15は、シート5の一体部分であり、クッション6の支持構造体9と一体であり、したがって、車室2の床から分離して、離間している。
【0031】
図1に示す実施形態では、バックレスト7の支持構造体9の後壁および側壁に沿って配置された、更なる遮断要素16が設けられる。
【0032】
図1に示す実施形態では、空調システム11から供給ダクト14を通って到来する空気は、最初にクッション6の支持構造体9を通って流され、続いて、バックレスト7の支持構造体9を通って流される。本明細書に示されていない別の実施形態によれば、空調システム11から供給ダクト14を通って到来する空気は、クッション6の支持構造体9のみを通って流される。
【0033】
図1に示す実施形態では、空気処理ユニット12は前方位置に配置され、ディフューザ13はクッション6の支持構造体9の前壁に、少なくとも部分的に係合し、遮断要素15は、クッション6の支持構造体9の後壁を部分的にのみ遮断する(または、全く遮断しない)。このようにして、空気処理ユニット12から供給ダクト14を通って到来する空気は、前方でシート5のクッション6に流入し、後方でシート5のクッション6から流出する(すなわち、シート5のクッション6は、処理ユニット12から到来する空気をシート5の前部からシート5の後部に運ぶ、「流路」としての役割も果たす)。
図5に示す代替的な実施形態では、空気処理ユニット12は後方位置に配置され、ディフューザ13は、クッション6の支持構造体9の後壁に少なくとも部分的に係合し、遮断要素15は、クッション6の支持構造体9の前壁を部分的にのみ遮断する(または、全く遮断しない)。このようにして、空気処理ユニット12から供給ダクト14を通って到来する空気は、後方でシート5のクッション6に流入し、前方でシート5のクッション6から流出する(すなわち、シート5のクッション6は、処理ユニット12から到来する空気をシート5の後方からシート5の前方に運ぶ、「流路」としての役割も果たす)。
【0034】
言い換えれば、
図5に示す実施形態では、シート5のクッション6を通って空気が流れる方向は、
図1に示される実施形態と比較して、逆になっている。
図5に示す実施形態では、空気は、シートを通って後方から前方へと流れ(すなわち、後方で流入し、前方で流出し)、一方、
図1に示す実施形態では、空気は、シートを通って前方から後方へと流れる(すなわち、前方で流入し、後方で流出する)。両方の実施形態において、シートのクッション6に流入する空気の一部を、シートのバックレスト7に向かって偏向させることができ、あるいは、シートのバックレスト7に向かって偏向させなくてもよい。
【0035】
クッション6は、基本的に、処理ユニット12から到来する空気を、シート5の後部からシート5の前部へ、またはその逆に運ぶための「流路」としてのみ使用することができることを、指摘しておくべきである。この変形例では、クッション6およびバックレスト7の内装材10には、貫通孔が全くないため、あらゆる場所に対して実質的に空気を通さない。
【0036】
本明細書に記載の実施形態は、互いに組み合わせることができ、そのために本発明の保護範囲を超えることはない。
【0037】
上述したシート5は、あらゆるタイプの道路車両(例えば、自動車またはオートバイ)、かつ、あらゆるタイプの非道路車両にも、有利に使用することができる。
【0038】
上述したシート5には、多くの利点がある。
【0039】
先ず、上述したシート5では、クッション6の支持構造体9、および、(必要に応じて)バックレスト7の支持構造体9を介した、空調空気の流路があるため、効果的な空調が提供される。このようにして、実際には、シート5の乗員の身体を効果的に加熱または冷却するために、シート1の支持構造体9を加熱または冷却することができる。
【0040】
更に、上述したシート5では、支持構造体9に伝達された冷気または熱によって、シート5の乗員の身体が直接的に冷却または加熱されるため、効果的な空調が提供される。このようにして、シート5の乗員は、車室2内に存在する空気のみによる空調と比較して、より少ないエネルギー量を用いて、もてなし感を受けることになる(車室2内に存在する空気のみによる空調は、極めて大量なものになり得るが、運転者しか存在しない場合には、もっぱら未使用のままである)。
【0041】
上述したシート5では、専用の空気ダクトを設けることなく、(
図1に示す実施形態のように)処理ユニット12から到来する空気を、前方から後方に移動させることができ、または、(
図5に示す実施形態のように)処理ユニット12から到来する空気を、後方から前方に移動させることができる。
【0042】
最後に、上述したシート5では、支持構造体9がもとよりネット状のものであり、供給ダクト14、ディフューザ13、ならびに、遮断要素15および16を追加するだけで良いため、比較的製造コストが小さいことを特徴とする。それらの細部は、手頃なコストで、実質的に重量およびサイズに影響しない、プラスチック材料で作製されるためである。実際に、シート5は、ネット状の支持構造体9が内部で実質的に空であるということを、有効活用するものである(すなわち、ネット状支持構造体9の内部容積の大部分は、基本的に、固体空間ではなく空き空間からなる)。したがって、ネット状の支持構造体9を、シート5全体に空調空気を拡散するための、大きな空調空気「ダクト」とすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 道路車両
2 車室
3 フロントガラス
4 ステアリングホイール
5 シート
6 クッション
7 バックレスト
8 ヘッドレスト
9 支持構造体
10 内装材
11 空調システム
12 空気処理ユニット
13 ディフューザ
14 供給ダクト
15 遮断要素
16 遮断要素
【外国語明細書】