(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077003
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】プロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体
(51)【国際特許分類】
B64C 11/06 20060101AFI20240530BHJP
B64C 11/18 20060101ALI20240530BHJP
【FI】
B64C11/06
B64C11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198017
(22)【出願日】2023-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2022188789
(32)【優先日】2022-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520265871
【氏名又は名称】スカイリンクテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】森本 高広
(57)【要約】
【課題】プロペラ効率を一層高めたプロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体を提供することを課題とする。
【解決手段】飛翔体20に用いられるプロペラの羽根3であって、羽根3が、プロペラ軸2側の内羽根4およびその内羽根の外側に設けられる外羽根5からなり、内羽根および外羽根のプロペラの回転面22となす羽根角23がそれぞれ可変にされており、外羽根と内羽根の隣り合っている部位の付近に抑制機構6が設けられており、その抑制機構は、外羽根と内羽根の間を介し、外羽根の下面から上面へ回り込む気流30を抑制するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に用いられるプロペラの羽根であって、
内羽根とその内羽根の外側に設けられる外羽根とからなり、
前記内羽根および外羽根のプロペラの回転面となす羽根角がそれぞれ可変にされており、
前記外羽根と前記内羽根の隣り合っている部位の近辺に抑制機構が設けられており、
その抑制機構は、前記外羽根の内側端面付近を介して前記外羽根の下面から上面へ回り込む気流を抑制するものである、プロペラの羽根。
【請求項2】
前記抑制機構が、前記内羽根と前記外羽根との間に設けられ、且つ、前記内羽根および前記外羽根のそれぞれの羽根角の変更に応じて形状を変える変形部材であり、
その変形部材が、前記羽根角の変更に応じて、前記内羽根と前記外羽根のそれぞれの上下の面をほぼ連続させるように変形するものである、請求項1記載のプロペラの羽根。
【請求項3】
前記変形部材が、保持部材と、
その保持部材の周囲に配置され、且つ、前記内羽根および前記外羽根のそれぞれの羽根角の変更に応じて変形する筒状部材とからなる、請求項4記載のプロペラの羽根。
【請求項4】
請求項1、2あるいは3の何れかに記載のプロペラの羽根と、
前記羽根角を変更させるための角度変更機構を備えている、プロペラ機構。
【請求項5】
プロペラ軸に略垂直な方向に延びると共に、自身の軸周りに回動自在なシャフトと、
前記シャフトが内端から外端付近まで通されている羽根と、
前記羽根の羽根角を変更する角度変更機構とからなり、
前記シャフトの先端付近が前記羽根の外端付近の内部で固定されると共に、前記シャフトの基端は前記羽根の内端から内方に突出しており、
前記角度変更機構により前記シャフトを介して、前記羽根の内端付近と外端付近とを反対向きに捩じることにより、前記羽根角を変更する、プロペラ機構。
【請求項6】
請求項4または5記載のプロペラ機構と、そのプロペラ機構により飛翔する本体とを備えている飛翔体。
【請求項7】
前記抑制機構は、前記外羽根の少なくとも一方の面側に突出する板状部材であり、
その板状部材が、前記羽根の略幅方向に延びている、請求項1記載のプロペラの羽根。
【請求項8】
前記板状部材が、外羽根の上面側に突出しており、
前記板状部材の板面が、幅方向に対し、後側且つ内側に向けられている、請求項7記載のプロペラの羽根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体に関する。さらには詳しくは、羽根角が可変であるプロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラ翼の翼端には、そのプロペラ翼の上下面の圧力差に基づいて、上面への気流の回り込みを妨害すべくウイングレットが設けられている。
例えば特許文献1には、翼端を立てたヘリコプターのブレード本体(特許文献1の
図6参照)が開示されている。
【0003】
プロペラ機には、離陸時の速度が0に近い状態から、水平飛行時の高速域まで適切な羽根角を維持するため、速度に応じてプロペラの羽根全体の角度を変える可変ピッチプロペラが採用されている。
例えば特許文献2には、軽量飛行機に用いられる可変ピッチプロペラの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-184079号公報
【特許文献2】特開2007-50869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、垂直離陸機の需要が増えるに伴って、低速域から高速域まで幅広い速度域にわたって、高いプロペラ効率を維持できるプロペラが求められている。
例えば出願人は、プロペラの羽根を内羽根と外羽根に分割し、それぞれの羽根の羽根角を変化させるプロペラ機構を発明している。その内羽根と外羽根の分断部位には、下面から上面に向かう圧力差に基づく気流が生じる恐れがある。その気流は、羽根の揚力を減少させて、プロペラ効率を低下させる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、プロペラ効率を高めたプロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明のプロペラの羽根は、飛翔体に用いられるプロペラの羽根であって、内羽根とその内羽根の外側に設けられる外羽根とからなり、前記内羽根および外羽根のプロペラの回転面となす羽根角がそれぞれ可変にされており、前記外羽根と前記内羽根の隣り合っている部位の近辺に抑制機構が設けられており、その抑制機構は、前記外羽根の内側端面付近を介して前記外羽根の下面から上面へ回り込む気流を抑制するものである、ことを特徴としている。
【0008】
(2)このようなプロペラは、前記抑制機構が、前記内羽根と前記外羽根との間に設けられ、且つ、前記内羽根および前記外羽根のそれぞれの羽根角の変更に応じて形状を変える変形部材であり、その変形部材が、前記羽根角の変更に応じて、前記内羽根と前記外羽根のそれぞれの上下の面をほぼ連続させるように変形するものであるのが好ましい。
【0009】
(3)また前記変形部材が、保持部材と、その保持部材の周囲に配置され、且つ、前記内羽根および前記外羽根のそれぞれの羽根角の変更に応じて変形する筒状部材とからなるのが好ましい。
【0010】
(4)本発明のプロペラ機構は、上述のプロペラの羽根と、前記内羽根および外羽根のそれぞれの羽根角を変更させるための角度変更機構とを備えている、ことを特徴としている。
【0011】
(5)本発明のプロペラ機構の他の態様は、プロペラ軸に略垂直な方向に延びると共に、自身の軸周りに回動自在なシャフトと、前記シャフトが内端から外端付近まで通されている羽根と、前記羽根の羽根角を変更する角度変更機構とからなり、前記シャフトの先端付近が前記羽根の外端付近の内部で固定されると共に、前記シャフトの基端は前記羽根の内端から内方に突出しており、前記角度変更機構により前記シャフトを介して、前記羽根の内端付近と外端付近とを反対向きに捩じることにより、前記羽根角を変更する、ことを特徴としている。
【0012】
(6)本発明の飛翔体は、上述のプロペラ機構と、そのプロペラ機構により飛翔する本体とを備えている、ことを特徴にしている。
【0013】
(7)さらにプロペラの羽根は、前記抑制機構は、前記外羽根の少なくとも一方の面側に突出する板状部材であり、その板状部材が、前記羽根の略幅方向に延びているのが好ましい。
【0014】
(8)さらに前記板状部材が、外羽根の上面側に突出しており、前記板状部材の板面が、幅方向に対し、後側且つ内側に向けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプロペラの羽根、プロペラ機構および飛翔体は、プロペラの効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1aは本発明のプロペラの羽根の一例を示す概略図、
図1bは
図1aのプロペラ羽根が回転していない仮想的な状態を示す平面図である。
【
図2】
図2aは本発明の飛翔体の一例を示す概略図、
図2bは本発明のプロペラ機構の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3aは羽根の長手方向の特定の長さ位置における羽根の部位に加わるベクトル成分を示すベクトル図、
図3bはベクトルの方向の理解を容易にするための概略図である。
【
図4】
図4はホバリングなどの状態の内羽根および外羽根の様子と水平飛行状態の内羽根および外羽根の様子を示す概略図である。
【
図5】
図5aは抑制部材の一例を示す概略平面図、
図5bは
図5aの概略側面図である。
【
図6】
図6aは
図5aの抑制部材の変形例を示す概略図、
図6bは他の変形例を示す概略図、
図6cはさらに他の変形例を示す概略図である。
【
図8】
図8aは
図5aの抑制部材の他の変形例を示す概略図、
図8bは
図8aの羽根の後方から連通部付近の様子を表した概略図である。
【
図9】
図9aは羽根の他の実施形態の一例を示す概略図、
図9bは
図9aの抑制部材の変形例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、羽根の他の実施形態の一例を示す概略図である。
【
図13】
図13aはプロペラ機構1の他の実施形態の概略断面図、
図13bはロッドを分解した様子を示す断面図、
図13cはロッドを組み立てた様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.概略説明]
(飛翔体20)
まず
図2aを用いて本発明の飛翔体を説明する。図に示す飛翔体20は、本体20aと、その本体20aに設けられる本発明のプロペラ機構1(
図2b参照)とからなる。そのプロペラ機構1は、本発明のプロペラの羽根(以後羽根という。)3と、その羽根3の角度を変更する角度変更機構13とを備えている。
飛翔体20は、本体の前後に、左右一対のほぼ同形状の主翼21、21を備えている。各主翼21に、本発明のプロペラ機構1が2つ設けられている。全体では、4つのプロペラ機構1が設けられている。この飛翔体20は、離着陸時には、主翼21を立てて、ヘリコプター同様にプロペラの羽根3により下方へ空気を押し出す力の反作用で浮力を得る。一方で、離陸後の水平飛行時には、固定翼機同様に主翼21を回動させて、ほぼ水平にする。そして、その主翼21によって生み出される揚力を利用し高度を保つ。
図2aでは飛翔体20が水平飛行している様子を示している。
【0018】
なお、以後の説明において、前後・上下・左右の方向について、図中に記載された矢印で示している。なお、前後方向とは水平飛行している際の飛翔体20の飛行方向である。
【0019】
[2.羽根の角度]
(羽根角23、前進角17、迎え角18)
図3aは、羽根3の回転の中心(
図3bの符号O参照)から長手方向に長さr(
図3b参照)の位置の羽根の部位に生じるベクトル成分を示す概略図である。図に示すように、プロペラ軸2の回転数をnとすれば、羽根の部位3aはプロペラ軸2(
図2b参照)のまわりに2πrnの速度で回転し、且つ、回転面22と直角な飛行方向へ前進速度Vで進んでいる。図中の符号Vrは、前進速度ベクトルVと回転速度ベクトル2πrnの合成ベクトルを示している。合成ベクトルVrとプロペラの回転面22とのなす角は、前進角17と呼ばれる。羽根の部位3aは、前進角17から、さらに迎え角18だけ傾斜しており、それらを加算して羽根角23となる。すなわち、羽根角23=前進角17+迎え角18である。また、
図3bに示すように、空気流は、合成ベクトルVrの方向で、且つ、合成ベクトルVrと反対向きから羽根の部位3aに流入する。
【0020】
図3aに戻って、羽根の部位3aは、迎え角18の分だけ、空気反力を受ける。迎え角18は、一般的な飛行機の主翼の場合と同様に、ある特定の値のときに推力が最大となる。すなわち、中心Oからの距離rの位置の羽根の部位3aにおいて、前進角18を演算し、その演算した前進角18に応じた羽根角23を設定できれば、推進の効率の高い羽根形状となる。
【0021】
[3.羽根に関する構成]
<羽根の第1実施形態>
(羽根3)
図2bに戻って羽根を説明する。
図2bに示す羽根3は、プロペラ軸2に略垂直な方向、すなわちプロペラの回転する回転面22(
図2aおよび
図3a参照)の半径方向に延びている。羽根3は、半径方向の内側に設けられる内羽根4と、その内羽根の外側に隣接する外羽根5と、それらの内羽根4および外羽根5の隣り合っている部位の近辺15(図の二点鎖線参照)に設けられる抑制機構6とからなる。また、内羽根4および外羽根5のそれぞれの羽根角23(
図3a参照)は、角度変更機構13により、可変にされている。
本実施形態において、羽根3は、その長さ方向の中間位置付近で、内羽根4と外羽根5とに分断されている。
なお、羽根3、内羽根4および外羽根5は、上に凸に湾曲した面を上面とし添え字aで示し、もう一方の比較的に平らな面を下面とし添え字bで示す。
【0022】
(内羽根4)
内羽根4には、その内羽根が延びている方向(長手方向)に貫通する貫通孔4cが形成されている。その貫通孔4cにシャフト7が通されている。そのシャフト4を介してプロペラ軸2の回転が内羽根4に伝達される。その内羽根4は、シャフト7に支持され、且つ、そのシャフト7周りに回動自在である。
【0023】
(外羽根5)
シャフト7の先端は、外羽根5の内側の端部に連結されている。そのシャフト7を介してプロペラ軸2の回転が外羽根5に伝達される。
【0024】
(羽根角の変更)
例えば、航空機のプロペラなどの回転翼(羽根)は、機体の前進速度と羽根が回転することによる速度とを合成した角度の風(
図3bの空気流を参照。)を受ける。同じ回転数で回っていても、半径によって羽根の回転速度は変わるため、羽根の根本側と先端側とでは流入する空気流の角度が異なる。
この角度の差を最適化するために、本発明の羽根3は、内羽根4と外羽根5とに分割されている。そして、それらの内羽根4、外羽根5の角度をそれぞれ変更することで、流入する空気流の角度をそれぞれ効果的なものにしている。
【0025】
(離陸/水平飛行状態の羽根3の様子)
図4には、飛翔体20(
図2a参照)が垂直に離陸・着陸またはホバリングする際の羽根3の状態(状態S1)と、その状態S1から水平飛行する際の羽根3の状態(状態S2)とを示している。
状態S1では、主翼21はほぼ垂直に立てられ、プロペラ軸2は鉛直方向にほぼ平行にされている(図示せず)。
状態S2では、飛翔体20の主翼21は進行方向にほぼ平行である。
図2aの主翼の状態と同じである。
【0026】
(回り込み気流30、30a)
図1bに示している羽根3は水平飛行するための状態(S2)である。
図1bでは、羽根3が回転していない仮想的な状態を示している。水平飛行における羽根3において、外羽根5は、前進方向に向けて立てるように、外羽根角β(
図4参照)とされ、内羽根4は内羽根角α(<β)とされている。このため内羽根4と外羽根5とで、それぞれの羽根角α、β(
図3参照)の差が大きい。その差により、内羽根4と外羽根5との間に連通部Sが生じる。この連通部Sにより、外羽根5の上面5aと下面5bとが通じる。
【0027】
ここで、揚力が生じている羽根3の上面は、下面に比べて低圧な状態になっている。これに対し、下面では大気圧かそれ以上の気圧が維持されており、上面5aに比べて高圧な状態になっている。そして外羽根5の内側の端面5c付近(連通部S)では、高圧の外羽根5の下面5bから低圧の上面5aに向かって気流が吸い上げられる流れ(回り込むであろう気流)30aが生じる(仮想線参照)。
【0028】
次いで、
図1aは羽根3が回転している状態を示している。現実の羽根3は高速で回転しているから、前述の回り込むであろう気流30aは、端面5c側が後方に引きずられている。このため外羽根5は、
図1aに示すような斜め右下に向かう方向の空気流(回り込み気流)30を受けている。
【0029】
(プロペラ効率の低下)
その回り込み気流30は、外羽根5の内側端部付近の下面5bの圧力を減少させるなどし、羽根3の揚力を低下させる恐れがある。
また外羽根5の後方に、翼端渦に似たような渦などを発生させる恐れがある。その渦は、羽根3の前進に対する抵抗となる誘導抵抗の起因となり得る。
このため、回り込み気流30は、プロペラの効率を低下させる恐れがある。そこで、回り込み気流30を抑制するために、内羽根4と外羽根5の隣合部15に抑制機構6が設けられている。
【0030】
(抑制機構6)
抑制機構6は、外羽根5の上面5aに突出するように設けられた板状部材である。
図5aは羽根3の隣合部15付近を示す平面図である。
図5aに示す隣合部15で、外羽根5の内側の端縁には、板状部材6が設けられている。その板状部材6は外羽根5の幅方向(前後方向)に延びている。その長さは、例えば、本実施形態では、外羽根5の幅方向の中間付近から後端までの長さである。その板状部材6により、回り込み気流30の外羽根5の上面5aへの流入が邪魔される。このため、プロペラの効率の低下を防止できる。
なお、板状部材6を外羽根5の前方に延長してもよい。さらには板状部材6を外羽根5の前端まで延長してもよい。
【0031】
板状部材6は、平面視において、平底翼の断面形状に近い形状にされている。すなわち、板状部材6の外側(図の左方)の湾曲面6aは、前側から中央にかけて外側に凸に湾曲しており、中央から後側では後方、且つ、内向き(図の斜め右下方向)に延びている。
図5bは
図5aの板状部材の概略側面図である。
図5bに示すように、板状部材6は、その前方から中央付近にかけて高く突出する前傾斜部6bと、その前傾斜部6bから後方にかけて低くなる後傾斜部6cとを有している。
【0032】
(抑制気流31)
羽根3の回転により、湾曲面6aに沿って気流31(以後、抑制気流という)が前後方向に対して角度6dで内向きに流される。
図1aに戻って、その抑制気流31は、上面5aに回り込む気流30aとほぼぶつかる。これにより、回り込み気流30を弱くし、プロペラの効率の低下を防止できる。
【0033】
[4.他の構成]
ここから羽根3の角度を回転駆動させる機構および羽根の角度を変更させる機構などを説明する。
【0034】
(プロペラ軸2)
図2bに戻って、プロペラ軸2は、回転駆動機構19(二点鎖線参照)により回転する。その回転駆動機構19としては、例えば、ターボシャフトエンジン、或いは、電動モータが挙げられる。
【0035】
(プロペラ軸2とその周辺の機構)
プロペラ軸2の周囲の構成について説明する。プロペラ軸2の先端付近には、ハブ1bが連結されている、そのハブ1bからは一枚以上の羽根3が外向きに延びている。ハブ1bには、シャフト7の基端がその軸周りに回動自在に連結されており、且つ、先端側はプロペラ軸2に垂直な方向に延びている。また、ハブ1bとその周囲の部分は、プロペラカバー1c(
図3b参照)で覆われている。これらハブ1bと羽根3は、プロペラ1aを構成している。
【0036】
(角度変更機構13)
角度変更機構13は、駆動力を発生する駆動機構13aと、その駆動力を角度変更のための力として伝達する伝達機構13bとからなる。
具体的には、角度変更機構13は、例えば、駆動機構13aとして、シリンダ機構8を備えている。そして伝達機構13bとして、シリンダ機構のシリンダロッド8aのストロークによって上下動する回転スライダ9と、その回転スライダ9の上下動を伝達する内ロッド10および外ロッド11とを備えている。
それらの内ロッド10および外ロッド11は、軸方向に押し引きする力を伝達可能な従来公知のプッシュプルロッドである。
なお、角度変更機構13としては、モータ等の回転動力を用いた機構が考えられる。この場合、内羽根4と外羽根5の連結部にギア機構を設け、一方の羽根を所定量だけ回動させたときに、他方の羽根が適切な回動量となるように、ギア比を設定することで、内羽根4と外羽根5の角度を最適に変更できるようしてもよい。なお、ギア機構の回転動力としては油圧、電動などが考えられる。
【0037】
(シリンダ機構8)
シリンダ機構8は、例えば、回転数をコントロールできるサーボモータ(図示せず)を備えている。そのサーボモータの駆動により、シリンダ機構8はシリンダロッド8aのストローク量を制御している。シリンダロッド8aの先端は回転スライダ9に連結されている。
なお、ボールジョイントなどを用いて、シリンダロッド8aの先端を回転スライダ9に回動自在に連結してもよい。
【0038】
(回転スライダ9)
回転スライダ9の中心に形成された中央孔9aには、プロペラ軸2が貫通している。回転スライダ9は、プロペラ軸2に沿って上下動する。
【0039】
内羽根4、外羽根5、角度変更機構13、シャフト7、シリンダ機構8および回転スライダ9は、プロペラ軸2と共に回転する。
【0040】
(内ロッド10、外ロッド11、リンク12)
内ロッド10、外ロッド11は、それぞれ内羽根4および外羽根5に、羽根角を変更させるための動力を伝達する。内ロッド10および外ロッド11の基端(図の下方の端部)は、それぞれ回転スライダ9に連結されている。それぞれのロッドの連結部は、シャフト7の延びている方向に平行な軸周りに回動自在である。
内ロッド10の先端(図の上方の端部)は、内羽根4の内端面に連結されている。その内ロッド10の連結部はシャフト7の延びている方向に平行な軸周りに回動自在である。
リンク12の一端は、内羽根4とプロペラ軸2の間で、シャフト7に連結され、一体にされている。
外ロッド11の先端(図の上方の端部)は、リンク12の他端に連結されている。その外ロッド11の連結部はシャフト7の延びている方向に平行な軸周りに回動自在である。このため、外ロッド11が上下運動すると、リンク12を介して、シャフト7が回動する。そのリンク12は、シャフト7に対し、内羽根4の薄肉な側(以後、後側という。)に取り付けられている。
【0041】
(内羽根4および外羽根5の回動量)
本実施形態では、1本のシリンダロッド8aの上下動で、内羽根4および外羽根5の2枚の羽根の回動量を変更している。
このため、内羽根4の回動量および外羽根5の回動量は、それぞれがほぼ理論的な演算値または演算値に近づくように調整されている。その調整は、具体的には、リンク12の長さ、シリンダロッド8aのストローク量および内羽根4の内ロッド10の連結部とシャフト7までの距離を変化させることにより行われている。
【0042】
(内羽根角α、外羽根角β)
本実施形態では、内羽根4および外羽根5のそれぞれの中間位置における回転速度2πrn(
図3a参照)および飛翔体20の前進速度Vからそれぞれの前進角17を演算している。そして、得られた前進角17に迎え角18を加算することにより、理論的な内羽根角および外羽根角を求めている。
内羽根角αおよび外羽根角βは、例えば、理論的な角度に近づけるようにリンク12(後述する)などで回動量が調整された近似的な値である。なお理論的な値であってもよい。
【0043】
[5.他の実施形態]
(変形例1)
図6aは、抑制機構6の変形例を示す概略平面図である。なお、これから説明する変形例、実施形態において、前述した第1実施形態と異なる部分のみ説明をし、同じ部分には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図6aに示す変形例1の抑制機構14aは、板状部材6のような外側に凸の湾曲面6aを有していない。抑制機構14aは、平板状の形状を呈している。その平板状の抑制機構14aは、その板面が、外羽根5の後方、且つ、内方に向けて、斜めに延びている(図の右下方向)。このため、その抑制機構14aに沿って後方、且つ、内向き(図の斜め右下方向)に流れる抑制気流31が生じる。その抑制気流31は、回り込み気流30が外羽根5の上面5aに流れ込むのを妨害する。
【0044】
(変形例2)
図6bは、抑制機構6の他の変形例を示す概略平面図である。
図6bに示す変形例2の抑制機構14bは、平板状の形状を呈している。その平板状の抑制機構14bは、その前端から中間を超える付近までは前後方向に真っ直ぐに延びている。そして、抑制機構14bは、後側では内向きに湾曲し、後方、且つ、右方に延びている(図の斜め右下方向)。このため、抑制機構14bの板面に沿って後方、且つ、内向き(図の斜め右下方向)に流れる抑制気流31が生じる。その抑制気流31は、回り込み気流30が外羽根5の上面5aに流れ込むのを妨害する。
【0045】
(変形例3)
図6cは、抑制機構6のさらに他の変形例を示す概略平面図である。
図6cに示す変形例3の抑制機構14cは、板状を呈しており、前後方向にほぼ真っ直ぐに延びている。その板状部材は、回り込み気流30(
図1a参照)が外羽根5の上面5aへ流れ込むのを妨害する壁のように作用する。
【0046】
(変形例4)
図7は、抑制機構6のさらに他の変形例を示す概略平面図である。
図7に示す変形例4の抑制機構14dは、外羽根5の上面5aから突出する部位の下方にブラケット28が延びている。そのブラケット29は、内羽根4外羽根5の間に設けられ、外羽根5の端面5c(
図1b参照)に固定される。なお、本実施形態ではシャフト7はブラケット29を貫通している。
【0047】
(変形例5)
図8aは抑制機構6のさらに他の変形例を示す概略平面図である。
図8aに示す変形例5の抑制機構14eでは、板状部材14eを外羽根5の下面側に突出させている。
図8bは羽根3の後方からの連通部S付近の様子を模式的に示した図である。
図8bに示す変形例5の抑制機構14eは内羽根4と外羽根5とで、連通部Sを閉じるような配置になる。このため、外羽根5の端面5c付近の上面5aへの回り込み気流30の流入が邪魔され、且つ、内羽根4の下面4bから上面4aに回り込む気流32を抑制することが期待される。
【0048】
板状部材14eは、その外側(図の左方)に湾曲面6a(
図8aでは隠れている)が設けられている。そして、湾曲面6aの後側では後方、且つ、内向き(図の斜め右下方向)に延びている。このため、湾曲面6aに沿って、内向きの抑制気流31が生じる。その抑制気流31は、回り込み気流30が外羽根5の上面5aに流れ込むのを妨害する。
【0049】
(その他)
図示していないが、変形例4のブラケット28を他の変形例、実施形態に用いてもよい。
また、第1実施形態、変形例1~5について、各板状部材を外羽根5の上面および下面の両面から突出させてもよい。上下の面に用いることで、それぞれの面に用いて得られていた効果を奏することが期待される。その際に、上下の面で異なる種類の板状部材を用いてもよい。
【0050】
<第2実施形態>
以下に、本発明の羽根3の他の実施形態を説明する。この実施形態は、前述した第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図9aは羽根3の他の実施形態の概略平面図を示している。
図9aに示す羽根24は、前述した第1実施形態の羽根3と抑制機構6において異なる。図に示すように、抑制機構25は、内羽根4と外羽根5との間に介在されると共に、それられの上下の面を連続させている。内羽根4と外羽根5の間に隙間はない。
その上で、抑制機構25は内羽根4および外羽根5の羽根角の角度変更に応じて変形することができる。次いで、内羽根4および外羽根5の羽根角が元に戻ると、変形した形状から元の形状に戻ることができる部材(以後、変形部材という。)である。このような変形部材25は、例えば、ゴムや弾性を有する合成樹脂などの弾性材料により構成することができる。変形部材25はシャフト7に対し回動自在に設けられている。
本実施形態の変形部材25によれば、内羽根4および外羽根5の羽根角の変化に伴って形成される連通部S(
図1a参照)が塞がれる。このため、連通部Sを介した気流、例えば、外羽根5の下面から上面に向かう回り込み気流30(
図1a参照)が抑制される。このためプロペラ効率が向上する。
【0051】
(変形例6)
図9bは、変形部材25の変形例を示す概略平面図である。
図9bに示す変形例6の変形部材26は、内羽根4と外羽根5との間に複数枚の板材26aを重ねるようにして配置している。なお、図中の一点鎖線は、複数枚の板材26aを省略して記載したものである。その変形部材26を備えた羽根を羽根24aとする。
それらの板材26aはそれぞれシャフト7に対し回動自在である。そして、それらの回動量は、内羽根4および外羽根5の羽根角の変更に伴い、内羽根4から外羽根5に向かって、所定量で増加する。これにより複数枚の板材26aは、全体として、内羽根4と外羽根5の間でほぼ連続したような上下の面を形成する。
このような回動のための機構としては、リンク機構、ギア機構などの従来公知のものが用いられる。
例えばリンク機構であれば、内羽根4側の板材26aの所定の回動量に対して、隣接する外羽根5側の板材26aの回動量が、所定量だけ増加するように構成される。
さらに例えばギア機構であれば、内羽根4側の板材26aのギアが隣接する外羽根5側の板材26aのギアに噛み合っている。その際に、内羽根4側の板材26aの所定の回動量に対して、隣接する外羽根5側の板材26aの回動量が、所定量だけ増加するように構成される。
【0052】
(変形例7)
図10は、変形部材25の他の変形例を示す概略平面図である。
図10に示す変形例7の変形部材27は、シャフト7に固定された保持部材27aと、その保持部材27aに被せられると共に、内羽根4と外羽根5とを連結する筒状部材27bとからなる。その変形部材27を備えた羽根を羽根24bとする。
本実施形態では、保持部材27aは板状の部材である。保持部材27aは筒状部材27bに収納されており、筒状部材27bの形態を内部から保持している。本実施形では、6枚の保持部材27aが所定の間隔を空けて並列に配置されている。なお、保持部材27aは1枚以上であればよい。
筒状部材27bは、内羽根4および外羽根5の羽根角の角度変更に応じて変形することができる。このとき保持部材27aが筒内に設けられているから、筒状部材27bが途中で折れ曲がったり、ねじれたりするのが防止される。また、内羽根4および外羽根5の羽根角が元に戻ると、筒状部材27bも元の形状に戻ることができる。筒状部材27bは、例えば、ゴムや弾性を有する合成樹脂などの弾性材料により構成することができる。
なお、保持部材27aをシャフト7に回動自在としてもよい。
【0053】
(変形例8)
図11は、羽根24(
図9a参照)の変形例を示す概略平面図である。
図11に示す変形例8の羽根24cは変形部材が異なる。羽根24cの変形部材32は、変形部材25に比べて、シャフト7の延びている方向に延設されている。変形部材32は羽根3の全長の半分以上の長さにされている。
本実施形態では、変形部材32は内羽根4と外羽根5とを連結する弾性部材である。シャフト7は変形部材32に形成された貫通穴32aに通されている。変形部材32はシャフト7に対し回動自在に設けられている。なお変形部材24が筒状の場合は、貫通穴32aは不要である。シャフト7の先端付近7aは外羽根5の内部で固定されている。シャフト7は内羽根4と変形部材28を枢支している。内羽根4の符号12はリンク12である。リンク12の中央をシャフト7が貫通している。
本実施形態では、1本のシリンダロッド8aの上下動で、内羽根4および外羽根5の2枚の羽根の回動量を変更している。その回動により変形部材32が弾性変形する。変形部材32を含む羽根3の全体の形状は、機体の前進速度又は離陸/水平飛行状態に応じて、プロペラ効率の高い形状に近づくようにされる。
【0054】
また内羽根4、外羽根5及び変形部材32を1つの部材としてもよい。前記1つの部材は一体成形により形成してもよい。内羽根4、外羽根5及び変形部材32を同じ材質で形成してもよい。
変形部材32としては、先端側と基端側とに反対向きに力を加えると捻じることができ、力を抜くと元の形状に戻ろうとするものが好ましい。変形部材32は、例えば、内部のコア材とコア材の外周を覆う外皮とからなるようにしてもよい。例えば、コア材としては、発泡体、ハニカム状のもの、さらには木材などである。外皮の材質としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、アルミなどの金属、ゴム、合成樹脂などである。
【0055】
<第3実施形態>
以下に、本発明の羽根3、24の他の実施形態を説明する。この実施形態は、前述した第1、2実施形態、変形例とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図12は羽根24の他の実施形態の概略平面図を示している。
図12に示す羽根33は、前述した第2実施形態の羽根24および変形例9の羽根24cに比べて変形部材34が異なる。変形部材34は、変形部材32に比べて、さらにシャフト7の延びている方向に延設されている。変形部材34はシャフト7に対し回動自在に設けられている。なお変形部材34が筒状の場合は、貫通穴32aは不要である。
変形部材34は羽根3の全長の約9割又はそれ以上の長さにされている。内羽根(内側部位)4及び外羽根(外側部位)5は変形部材34を弾性変形させるための基端となる部材として作用している。なお内羽根4及び外羽根5は、羽根としての揚力を生じる効果をいくらか奏してもよい。
さらに羽根としての揚力を生じる効果をほぼ奏しない場合、内羽根4、外羽根5というより、それぞれ羽根3の内側の部位(内側部位)、外側の部位(外側部位)としてもよい。内側部位4はリンク12を固定する板状の部材である。羽根の内側の端部を支持する部位となる。外側部位5はシャフトの先端付近7aを固定する部位である。
シャフト7は羽根3の内端から外端付近まで通されている。シャフト7の先端付近7aが羽根3の外端付近4の内部で固定されると共に、シャフト7の基端は羽根3の内端から内方に突出している。
本実施形態では、外羽根5は中実とされ、シャフト7の先端付近7aを固定している。なお外羽根5を筒状としてもよい。筒状の場合は、先端付近7aを外羽根5の内部に設けた図示しないブラケットで固定する。
【0056】
また内羽根4、外羽根5及び変形部材34を1つの部材としてもよい。前記1つの部材は一体成形により形成してもよい。内羽根4、外羽根5及び変形部材32を同じ材質で形成してもよい。
変形部材34としては、先端側と基端側とに反対向きに力を加えると捻じることができ、力を抜くと元の形状に戻ろうとするものが好ましい。変形部材34は、例えば、内部のコア材とコア材の外周を覆う外皮とからなるようにしてもよい。例えば、コア材としては、発泡体、ハニカム状のもの、さらには木材などである。外皮の材質としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、アルミなどの金属、ゴム、合成樹脂などである。
【0057】
(プロペラ機構の他の実施形態)
以下に、プロペラ機構1の他の実施形態を説明する。この実施形態は、前述した第1実施形態と重複する部分があるので、異なる部分のみ説明し、重複する部分の説明は省略する。
【0058】
図13aはプロペラ機構1の他の実施形態の概略断面図を示している。
図13aに示すプロペラ機構41の角度変更機構35はシリンダ機構36を備えている。シリンダ機構36はハブ1aに設けられている。ハブ1aには、シリンダ機構36のシリンダケース37が形成されている。シリンダケース37にはピストン38が設けられ、内部を移動(図の上下方向)する。ピストン38にはプロペラ軸(ロッド)39がシリンダケース37の外(図の下方)へ延びている。ロッド39の中ほどには膨大部39aが設けられている。膨大部39aはピストン38と共に上下動する。膨大部39aはリンク12に連結されている。リンク12は膨大部39aの上下動により回動するように構成されている。
【0059】
図13bにはロッド39の概略断面図を示している。
図13bに示すようにロッド39は軸部材42と、筒部材43とからなる。
軸部材42は大径の基部42aと、基部42aから段部を経て上方に延びる軸部42bと、軸部42bの先端から段部42dを経て上方に突出する突出部42cとからなる。
筒部材43は、筒部43aと、筒部43aの上端の大径部(ピストン)38とからなる。大径部38の中心には開口43bが形成されている。
【0060】
軸部材42には軸方向に沿ってシリンダ機構36を駆動させるための流体の供給路44が形成されている。軸部材42の上下端には供給路44に連通する油孔44a、44bがそれぞれ形成されている。シリンダケース37とピストン38との間に形成される空間(
図13a参照)は、油圧室45である。油孔44aは油圧室45に連通している。油孔44a、44b付近の矢印は油圧室45へ向かう油の流れる方向を例示している。矢印と反対向きの方向は、油圧室45から油を排出す方向にある。
【0061】
軸部材42は筒部材43に収容され、一体にされる(
図13c参照)。軸部材42の基部42aの側周面は筒部材43の筒部43aの内周面にほぼ当接している。軸部材42の突出部42bは大径部38の開口43bに通される。突出部42bの外周面は開口43bの内面にほぼ当接している。軸部材42の段部42dは筒部43aの天井面に当接している。ほぼ当接しているとは、シリンダ機構36の作動中に油が漏れない程度に当接していることである。軸部材42と筒部材43とで形成される空間は第2供給路46である。筒部材43の筒部43aの側壁の上下には第2供給路46に連通する油孔46a、46bがそれぞれ形成されている。上方の油孔46aはシリンダケース37に連通している。一方で下方の油孔46bはシリンダケース37の外に形成されている。ピストン38と第2ピストン40との間に形成される空間(
図13a参照)は、第2油圧室47である。油孔46aは第2油圧室47に連通している。油孔46a、46b付近の矢印は第2油圧室47へ向かう油の流れる方向を例示している。矢印と反対向きの方向は、油圧室45から油を排出す方向になる。
【0062】
ロッド39には第2ピストン40が摺動自在に設けられている。ロッド39は第2ピストン40を貫通している。第2ピストン40はロッド39により枢支されている。第2ピストン40はシリンダケース37内を上下動する。第2ピストン40の下方には筒状部40a設けられている。ロッド39は筒状部40aを貫通している。筒状部40aはシリンダケース37の外(図の下方)へ延びている。筒状部40aの下端には膨大部40bが設けられている。膨大部40bはシャフト7に連結されている。シャフト7は膨大部40bの上下動により回動するように構成されている。シャフト7の回動方向はリンク12の回動方向と反対向きである。
なおシリンダ機構36は角度変更機構35の駆動機構13aである。またリンク12、膨大部39a及び膨大部40bは角度変更機構35の伝達機構13bを構成する。
【0063】
供給路44を介して油圧室45に油圧をかけると、ピストン38が下降し、リンク12を介して内羽根4がL方向に回動する。
一方で、第2供給路46を介して第2油圧室47に油圧をかけると、第2ピストン40を下降する方向に力が働き、シャフト7を介して、外羽根(外側部位)5をR方向に回動する方向に力が働く。なお第2ピストン40は、いくらか下降するようにしてもよい。下降により、シャフト7を介して、外羽根(外側部位)5はR方向に回動することができる。
結果として、羽根3に内端付近及び外端付近から力を加えて捩じることができる。捩じりの量は、ピストン38の下降する量に基づく。
【0064】
ピストン38を下降させる際に、第2油圧室47から油圧が抜けるようにされている。ピストン38が所定量を下降すると、第2油圧室47に油圧をかける。これによりピストン38が所定の下降量で維持され、その下降量に基づく捩じり量で羽根3が捩じられる。
【0065】
なおシャフト7の基端またはリンク12を機体側の部材に固定するようにし、他方を油圧により回動させるようにしてもよい。
さらになおシャフト7をロッド39の膨大部39aに連結し、リンク12を第2ピストン40の膨大部40aに連結してもよい。
【0066】
[6.その他]
上述した実施形態、変形例は、それぞれを適宜に組み合わせて用いることができる。
飛翔体20を、飛行するものでなく、例えば、車、ホバークラフトのように、プロペラ機構1により地上を推進する機体20としてもよい。
飛翔体20は、操縦者が乗っていてもよいし、地上コントロール局や管制から遠隔操縦されていてもよい。
飛翔体20としては、飛行機、ヘリコプターあるいはドローンなどである。また主翼21を傾けないで、プロペラ軸2を傾けるようにしてもよい。例えば、主翼21の先端にプロペラ機構1を設けて、プロペラ軸2を傾けてもよい。
さらにまた、例えばドローンの場合、主翼21、プロペラ軸2を傾けないで、飛翔体全体を傾けてもよい。
例えば、本実施形態において、飛翔体20は、垂直離着陸機(VTOL機)または離陸時に短距離を滑走し、着陸時に垂直着陸する短距離離陸垂直着陸機(STOVL機)として用いられる。
【0067】
本実施形態では、羽根3は二枚であるが、三枚以上でもよい。その際には、新たな羽根のための内ロッド10および外ロッド11、さらには角度変更機構13、35を設けてもよい。
本実施形態では、一枚の羽根3において内羽根4は一枚であったが、複数枚設けてもよい。
本実施形態では、羽根3の長さ方向の中間位置で、内羽根4と外羽根5に分断しているが、その他の位置で羽根3を分断してもよい。
内羽根4、外羽根5および変形部材25、26、27、32を含む羽根3、24(24a、24b、24c)、さらには羽根33の全体形状として、すなわち回動させない状態において、長手方向の距離に応じた所定の羽根角を呈する形状を予め設けていてもよい。例えば、予め垂直離陸に適した羽根角を呈する羽根形状にしておき、水平飛行時にプロペラ軸2の回転数に応じて内羽根(内側部位)4および外羽根(外側部位)5を回動させてもよい。
【0068】
角度変更機構13、35として、ヘリコプターや飛行機のプロペラの羽根角を変更する従来公知の技術を用いてもよい。
内ロッド4に別個のリンク12を連結してもよい。
シリンダ機構8として、油圧などで駆動するものを用いてもよい。
プッシュプルロッド10、11の代わりに、プッシュプルケーブルおよび導管からなるコントロールケーブルを用いてもよい。
【0069】
本実施形態では、羽根3の長さ方向の中間位置で、内羽根4と外羽根5に分断しているが、その他の位置で羽根3を分断してもよい。
【0070】
[7.まとめ]
(1)本発明の羽根3は、飛翔体20に用いられる羽根3であり、内羽根4とその内羽根4の外側に設けられる外羽根5とからなり、内羽根4および外羽根5のプロペラの回転面22となす羽根角23がそれぞれ可変にされており、外羽根5と内羽根4の隣り合っている部位の付近に抑制機構6が設けられており、その抑制機構6は、外羽根5の内側の端面5c付近を介して外羽根5の下面5bから上面5aへ回り込む気流30を抑制することを特徴としている。
回り込む気流30は、外羽根5の内側の端部付近の下面5bの気圧を低下させる傾向にある。さらに、羽根3の後方に渦を発生させる起因となる傾向にある。その渦は、飛翔体20の前進に対する抵抗となる誘導抵抗の起因となる恐れがある。
すなわち、回り込み気流30を抑制することにより、外羽根5の下面5bの圧力の減少を抑え、さらに飛翔体20の前進に対する抵抗を減少させることができる。このため、プロペラ軸2を回転させる回転駆動機構19の仕事に対するプロペラ1aの仕事の割合を高くすることができる。すなわちプロペラの効率が高いので、無駄が少なく、省エネである。
【0071】
(2)さらに抑制機構6が、内羽根4と外羽根5との間に設けられ、且つ、内羽根4および外羽根5のそれぞれの羽根角の変更に応じて形状を変える変形部材25であり、その変形部材6が、羽根角の変更に応じて、内羽根4と外羽根5のそれぞれの上下の面をほぼ連続させるように変形するものである場合は、回り込む気流30の発生を抑制することができる。このため、プロペラ効率を向上させることができる。
【0072】
(3)さらに変形部材25が、保持部材27aと、その保持部材27aの周囲に配置され、且つ、内羽根4および外羽根5のそれぞれの羽根角の変更に応じて変形する筒状部材27bとからな場合は、簡易な構成で、内羽根4と外羽根5の羽根角の変更に対応でき、その上で、簡易な構成で羽根3全体の形状を保持できる。
【0073】
(4)(6)本発明のプロペラ機構1は、上述のプロペラの羽根3と、内羽根4および外羽根5のそれぞれの羽根角を変更させるための角度変更機構13とを備えている。そして、本発明の飛翔体20は、上述のプロペラ機構1と、そのプロペラ機構1により飛翔する本体20aとを備えている。
プロペラ機構1により、内羽根4と外羽根5とで別個に内羽根角α、外羽根角βを変更することができるから、羽根3を推進する機体の速度(あるいは対気速度)やプロペラ軸2の回転数に適した形状に近づけることができる。例えば、垂直離陸時の低速状態、水平飛行時の高速状態あるいはプロペラ軸2を斜めに傾けた状態のそれぞれの状態における適切なプロペラ形状に近づけることができる。このためプロペラ軸2を回転させる回転駆動機構19の仕事に対するプロペラ1aの仕事の割合が高い。すなわちプロペラの効率が高い。
その上で、抑制機構6により、内羽根4と外羽根5の間を介し、羽根3の下面から上面へ回り込む気流30を抑制することができる。
このためプロペラの効率を一層高くすることができ、無駄が少なく、省エネである。
【0074】
(5)本発明のプロペラ機構の他の態様41は、プロペラ軸39に略垂直な方向に延びると共に、自身の軸周りに回動自在なシャフト7と、シャフトが内端から外端付近まで通されている羽根3と、羽根の羽根角を変更する角度変更機構36とからなり、シャフト7の先端付近が羽根3の外端付近の内部で固定されると共に、シャフト7の基端は羽根3の内端から内方に突出しており、角度変更機構36によりシャフト7を介して、羽根3の内端付近4と外端付近5とを反対向きに捩じることにより、羽根角を変更する、ことを特徴としている。
このためプロペラの効率を一層高くすることができ、無駄が少なく、省エネである。
【0075】
(7)このような羽根3は、抑制機構6は、外羽根5の少なくとも一方の面側に突出する板状部材であり、その板状部材が、羽根3の略幅方向に延びているので、上面に回り込む気流を妨害することができる。このため、飛翔体20に対する誘導抵抗を減少でき、プロペラ効率を向上させることができる。
【0076】
(8)また板状部材6が、外羽根5の上面5a側に突出しており、板状部材6の板面が、幅方向に対し、後側、且つ、内側に向けられている場合は、板面に沿って案内された抑制気流C31は、回り込む気流30とほぼぶつかるので、回り込む気流30を弱め、プロペラ効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 プロペラ機構
1a プロペラ
1b ハブ
1c プロペラカバー
2 プロペラ軸
3 羽根
3a 上面
3b 下面
3c 羽根の部位
4 内羽根
4a 上面
4b 下面
4c 貫通孔
5 外羽根
5a 上面
5b 下面
5c 端面
6 抑制機構
6a 湾曲面
6b 前傾斜部
6c 後傾斜部
6d 角度
6e 高さ
7 シャフト
8 シリンダ機構
8a シリンダロッド
9 回転スライダ
9a 中央孔
10 内ロッド
11 外ロッド
12 リンク
13 角度変更機構
13a 駆動機構
13b 伝達機構
14a 抑制機構(変形例1)
14b 抑制機構(変形例2)
14c 抑制機構(変形例3)
14d 抑制機構(変形例4)
14e 抑制機構(変形例5)
15 隣合部
16 隙間
17 前進角
18 迎え角
19 駆動機構
20 飛翔体
20a 本体
21 主翼
22 回転面
23 羽根角
24 羽根(第2実施形態)
24a 羽根(変形例6)
24b 羽根(変形例7)
25 抑制機構(変形部材)
26 変形部材(変形例6)
26a 板材
27 変形部材(変形例7)
27a 保持部材
27b 筒状部材
28a 角度(変形例1)
28b 角度(変形例2)
28c 角度(変形例3)
29 ブラケット
30 回り込み気流
30a回り込むであろう気流
31 抑制気流
32 変形部材(変形例8)
32a 貫通穴
33 羽根(第3実施形態)
34 変形部材(変形例9)
35 角度変更機構
36 シリンダ機構
37 シリンダケース
38 ピストン
39 ロッド
39a 膨大部
40 第2ピストン
40a 筒状部
40b 膨大部
41 プロペラ機構
42 軸部材
42a 基部
42b 軸部
42c 突出部
42d 段部
43 筒部材
43a 筒部
43b 開口
44 供給路
44a 油孔
44b 油孔
45 油圧室
46 第2供給路
46a 油孔
46b 油孔
47 第2油圧室
α 内羽根角
β 外羽根角