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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077007
(43)【公開日】2024-06-06
(54)【発明の名称】時計用連結装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 11/02 20060101AFI20240530BHJP
【FI】
G04B11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199007
(22)【出願日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】22209733.9
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラミジェ, ピエール-アラン
(72)【発明者】
【氏名】カーレン, オリヴィエ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アフターセールサービス作業を実施するにあたり操作が実用的である、単純かつ小型の連結装置を提供する。
【解決手段】第一パーツ41と、第一軸A1周りに第一パーツ41に対して可動な、第二パーツ42と、阻止要素43と、制御要素45と、を含む、連結装置40であって、始動第二構成において、一方向である、またはフリーホイールであり、阻止要素43、第一パーツ41、及び第二パーツ42は、障害によりまたは楔止めにより、第一及び第二パーツ41、42を接続するよう構成され及びまたは適合され、阻止要素43は、第一構成において、第一方向及び第一方向の反対の第二方向への回転中、第一及び第二パーツの自由相対運動を可能にし、第二構成において、パーツの一方または他方の第一方向への負荷の間、第一及び第二パーツの連結を可能にし、第二方向への回転中、パーツの自由相対運動を可能にする、よう適合される及びまたは構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一パーツ(41;41’;41”)と、
第一軸(A1;A1’;A1”)周りに前記第一パーツに対して回転可動な、第二パーツ(42;42’;42”)と、
少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)と、及び
停止第一構成(C1)と始動第二構成(C2)の間で動くよう、前記パーツの1つに可動に搭載される、制御要素(45;45’;45”)と、
を含む、時計(400)用連結装置(40;40’;40”)であって、
前記連結装置は、前記始動第二構成(C2)において、一方向である、またはフリーホイールであり、
前記少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)、前記第一パーツ(41;41’;41”)、及び第二パーツ(42;42’;42”)は、障害によりまたは楔止めにより、前記第一及び第二パーツを接続するよう構成され及びまたは適合され、
前記少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)は、
前記第一構成(C1)において、前記第一及び第二パーツの、第一方向及び前記第一方向の反対の第二方向への、自由相対運動を可能にし、
前記第二構成(C2)において、前記パーツの一方及びまたは他方が前記第一方向への相対運動へ促されると、前記第一及び第二パーツの連結を可能にし、前記第二方向において、前記第一及び第二パーツの自由相対運動を可能にする、
よう適合される及びまたは構成される、
連結装置(40;40’;40”)。
【請求項2】
前記制御要素(45;45’;45”)は、前記第一及び第二構成の間で、前記第一軸(A1;A1’;A1”)周りに回転可動である、
請求項1に記載の連結装置(40;40’;40”)。
【請求項3】
前記第一構成(C1)は、安定構成であり、前記第二構成(C2)は、安定構成である、
請求項1または2に記載の連結装置(40”)。
【請求項4】
前記第一構成(C1)は、不安定構成であり、前記第二構成(C2)は、安定構成である、
請求項1または2に記載の連結装置(40;40’)。
【請求項5】
前記連結装置(40;40’)は、前記制御要素(45;45’)を前記第二構成に向けて付勢する、戻し要素を含む、
請求項4に記載の連結装置(40;40’)。
【請求項6】
前記戻し要素は、
前記第一及び第二パーツ間の、前記第一方向への相対運動、または
前記第一及び第二パーツ間の、前記第二方向への相対運動、
のいずれかの影響を理由として、前記制御要素(45;45’)を前記第一構成から前記第二構成へ移動するよう構成される及びまたは適合される、
請求項5に記載の連結装置(40;40’)。
【請求項7】
前記戻し要素は、前記制御要素(45;45’)に摩擦により直接または間接的に作用する、前記阻止要素(43;43’)の摩擦表面を含む、
請求項6に記載の連結装置(40;40’)。
【請求項8】
前記戻し要素は、弾性戻し要素である、
請求項5から7のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)。
【請求項9】
前記制御要素(45;45’;45”)は、前記少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)が前記第一または第二パーツと協働しないよう、前記少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)に、特に接触を通じ、作用するよう適合された、部分(45a;45a’;45a”)を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)。
【請求項10】
前記制御要素(45;45’;45”)は、時計士が、特に工具を用いて、前記制御要素を操作可能にするよう適合された、保持部分(45b;45b’;45b”)を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)。
【請求項11】
前記阻止要素(43;43”)は、ビーク(43a;43a”)で終わる、少なくとも1つの、好ましくは2つの、弾性レバー(46;46”)を含み、前記第一または第二パーツは、
前記ビークまたは複数のビークが作用する、切り込み(44b)、特に内部切り込みを含む、リング(44)、または
歯(44b”)、特に外歯、及びまたはかぎ歯、
を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の連結装置(40;40”)。
【請求項12】
香箱(20)、巻き上げ可動錘(60)、及び請求項1から11のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)を含む、自動巻き上げ連鎖(200)または自動巻き上げモジュール(250)。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)を含み、前記制御要素(45;45’;45”)は、前記少なくとも1つの阻止要素(43;43’;43”)のみを介して前記香箱に接続される、前記第一または第二パーツ上に搭載される、
請求項12に記載の自動巻き上げ連鎖(200)または自動巻き上げモジュール(250)。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)、及びまたは請求項12または13に記載の自動巻き上げ連鎖(200)、及びまたは請求項12または13に記載の自動巻き上げモジュール(250)を含む、時計ムーブメント(300)。
【請求項15】
手動巻き上げ連鎖(100)を含み、前記連結装置(40;40’;40”)は、
前記自動巻き上げ連鎖(200)の始動、または
前記巻上連鎖(100)の始動、
の結果、前記第一構成(C1)から前記第二構成(C2)へ移動するよう適合されるまたは構成される、
請求項14に記載の時計ムーブメント(300)。
【請求項16】
請求項14または15に記載のムーブメント(300)、及びまたは
請求項12または13に記載の自動巻き上げ連鎖、及びまたは
請求項12または13に記載の自動巻き上げモジュール、及びまたは
請求項1から11のいずれか一項に記載の連結装置(40;40’;40”)、
を含む、時計(400)。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用連結装置に関する。本発明はまた、同種の連結装置を含む、自動巻き上げ連鎖に関する。本発明はまた、同種の連結装置を含む、自動巻き上げモジュールに関する。本発明は更に、同種の連結装置または同種の自動巻き上げ連鎖または同種の自動巻き上げモジュールを含む、時計ムーブメントに関する。本発明は更に、同種の連結装置または同種の自動巻き上げ連鎖または同種の自動巻き上げモジュールまたは同種の時計ムーブメントを含む、時計に関する。本発明は最後に、同種の自動巻き上げ連鎖または同種の自動巻き上げモジュールまたは同種の時計ムーブメントまたは同種の時計の稼働方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、巻き上げ軸を用いて、2つの香箱を巻き上げるための、手動巻き上げ連鎖が知られている。巻き上げ連鎖は、各香箱用にフリーホイールを含む態様で設計される。2つのホリーホイールは、巻き上げ軸の第一回転方向において、第一香箱の巻き上げを可能にし、巻き上げ軸の第二回転方向において、第二香箱の巻き上げを可能にする。各フリーホイールは、香箱真に接続されるラチェットのかぎ歯と協働することが意図される、2つの一体鋳造弾性爪を含む。当該解決策の特定の特徴は、各爪が、ラチェット3の歯の圏外に爪を保持するため、時計士が補完的形状へ接続可能にする、フックを含むことである。当該構成において、フリーホイールは停止され、ラチェットによる香箱の解除を可能にする。爪が多数であるため、ホリーホイールの停止は、複雑で時間がかかるものとなる。更に、爪は、アクセス可能でなければならず、フックをかけるのは、時計士の多大な器用さを必要とする。例えば所定の香箱を巻き上げる際に、フリーホイールを自発的に再始動させることは不可能であることを注記する。
【0003】
特許文献2は、自動巻き上げ連鎖内に配置され、停止可能なフリーホイールを開示する。当該解決策のフリーホイールは、それぞれかぎ前歯を有する、2つの同軸中間歯車を含む。これら前歯の2つの組は、中間歯車に固定された摺動シャフト上のばね軸受のおかげで、互いに協働することが意図される。フリーホイールは、フリーホイールを停止し、ラチェットによる香箱ばねの解除を可能にするために、時計士が、摺動シャフトを押して2つの中間歯車の前歯を分断することを可能にする。当該解決策は、比較的厚いという欠点を有する。更に、フリーホイールの停止を維持するために、時計士が摺動シャフトに圧力を加え続ける必要がある。
【0004】
時計ムーブメントにおいて、自動巻き上げ装置(または自動巻き上げ連鎖)は、香箱ばねを整えるため、及び調速部材に蓄積されたエネルギーを伝達可能なようにばねを整え続けるための両方のために、設計される。これは、その固有の稼働により、ラチェット爪を必要とすることなく、香箱ばねの望まない解除を防止する、逆転システムまたは方向逆転機により保証される。
【0005】
これは、ムーブメントのアフターサービスにおいて、特に香箱ばねの解除が必要なときに、問題となる。この種のムーブメントにおいて、香箱ばねの解除を可能にするため、自動巻き上げ連鎖を少なくとも部分的に分解することが必要である。取り外しに伴うストレスに加えて、高さまたは容量を増加しかねないムーブメントの構造に関して、特に自動巻き上げモジュールが設けられた構造に関して、妥協が必要になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3489761号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2226687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題を改善する連結装置を提供することであり、従来技術から既知の連結装置の改善を可能にすることである。特に、本発明は、時計士によるアフターセールサービス作業を実施するにあたり操作が実用的である、単純かつ小型の連結装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる連結装置は、請求項1で定義される。
【0009】
連結装置の実施形態は、請求項2から11で定義される。
【0010】
本発明にかかる自動巻き上げ連鎖は、請求項12で定義される。
【0011】
自動巻き上げ連鎖の実施形態は、請求項13で定義される。
【0012】
本発明にかかる時計ムーブメントは、請求項14で定義される。
【0013】
時計ムーブメントの実施形態は、請求項15で定義される。
【0014】
本発明にかかる時計は、請求項16で定義される。
【0015】
添付の図面は、本発明にかかる時計の3つの実施形態を、例として図示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明にかかる時計の第一実施形態の、模式図である。
図2図2は、第一実施形態の自動巻き上げ連鎖の、部分斜視図である。
図3図3は、第一実施形態の連結装置の、分解斜視図である。
図4図4は、始動構成にある第一実施形態の連結装置の、下からの斜視図である。
図5図5は、始動構成にある第一実施形態の連結装置の、上からの斜視図である。
図6図6は、停止構成にある第一実施形態の連結装置の、下からの斜視図である。
図7図7は、停止構成にある第一実施形態の連結装置の、上からの斜視図である。
図8図8は、始動構成にある第二実施形態の連結装置の、上からの図である。
図9図9は、停止構成にある第二実施形態の連結装置の、上からの斜視図である。
図10図10は、始動構成にある第三実施形態の連結装置の、上からの図である。
図11図11は、停止構成にある第三実施形態の連結装置の、上からの図である。
図12図12は、本発明にかかる時計の第一実施形態の、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
時計400の第一実施形態を、図1から7及び図12を参照して、以下に詳細に説明する。
【0018】
時計400は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計400は、自身を外部環境から保護するために時計ケース内に搭載されることが意図される、時計ムーブメント300を含む。
【0019】
時計ムーブメント300は、自動または電気機械式ムーブメントである。
【0020】
時計ムーブメント300は、香箱20の巻き上げを可能にする、即ち香箱ばね20の充填を可能にする、自動巻き上げ連鎖200を含む。当該自動巻き上げ連鎖は、時計ムーブメントの残部に搭載される自動巻き上げモジュール250の、特に
- 時計ムーブメント300のフレームのプレートまたは少なくとも1つの受に固定された、および
- 時計ムーブメント300の香箱20に機械的に接続された、
自動巻き上げモジュール250の一部であってもよい。
揺動錘60の運動により生成されるエネルギーの回復により、香箱ばね20が充填される、または香箱20が自動的に巻き上げられる。
【0021】
自動巻き上げ連鎖200は、連結装置40を含む。
【0022】
連結装置40は、
- 第一パーツ41、
- 第一軸A1周りに第一パーツに対して可動の第二パーツ42、
- 少なくとも1つの阻止要素43と、更に、
- 上記パーツの1つの上に、停止第一構成C1と始動第二構成C2との間で可動に搭載される、制御要素45
を含む。
【0023】
第一パーツ及びまたは第二パーツは、有利には、ムーブメントのフレームに対して、または自動巻き上げモジュール250のフレームに対して、第一軸A1周りに可動に構成される。このため、第一及び第二パーツは、好ましくは、同軸に配置される。
【0024】
第一パーツ41は、有利には、第一可動部41であり、歯41aを含む。第二パーツ42は、有利には、第二可動部42であり、歯42aを含む。
【0025】
連結装置は、一方向またはフリーホイールである、即ち少なくとも1つの状態または第二構成において、連結装置は、
- 第一パーツが、第二パーツに対して第二方向に回転する傾向にあると即座に、第一及び第二パーツの不動化または互いの固定、及び
- 第一方向と反対の第二方向への、第一パーツの第二パーツに対する自由回転、
を可能にする。
【0026】
少なくとも1つの阻止要素43、第一パーツ41及び第二パーツ42は、障害物の構成または楔止めにより、第一及び第二パーツを接続または互いに固定するよう構成される及びまたは適合される。
【0027】
少なくとも1つの阻止要素43は、
- 第一構成C1(停止されたまたは停止)では、第一方向への回転及び第一方向に反対の第二方向への回転中の、第一及び第二パーツの自由相対運動を可能にする、及び
- 第二構成C2(始動されたまたは始動)では、パーツの一方または他方が第一相対方向に負荷を掛けられると、第一及び第二パーツの接続を可能にし、第二相対方向への回転中の、両パーツ間の自由相対運動を可能にする、
よう構成される及びまたは適合される。
【0028】
第一構成C1において、第一及び第二パーツは、互いに対して自由に移動可能であり、第二構成C2において、連結装置は一方向である。
【0029】
上述のように、連結装置40は、好ましくは、香箱20の巻き上げ用の運動学的連鎖の、特に自動巻き上げ連鎖の一部である。連結装置40は、一方では、少なくとも1つの香箱20の巻き上げ中にトルクを伝達するように、他方では時計士により停止されると、有利にはばねの解除を可能にするように、瞬間的にもはやトルクを伝達不可能なように、形付けられている。
【0030】
連結装置は、有利には、瞬間的にトルクをもはや伝達不可能なように、時計士により停止され(または第一構成C1に切り替えられ)てもよい。
【0031】
連結装置40は、方向逆転機または逆転システム50の一部でも、それらと組み合わされてもよい。連結装置40は、好ましくは、香箱20の手動巻き上げ中に逆転システム50を手動巻き上げ連鎖100から解放するよう、香箱20のラチェット21と、逆転システム50との間に配置される。例えば、手動巻き上げは、手動巻き上げ連鎖100によりラチェット21に接続された、巻き上げ軸10により達成される。
【0032】
上述した当該構造は、有利には、特に手動巻き上げにより発生する重負荷により生じるあらゆる時期尚早な摩耗から、逆転システム50を保護することを可能にする。
【0033】
連結装置は、好ましくは、少なくとも1つの第二阻止要素44と協働するよう適合された、少なくとも1つの第一阻止要素43を含む。
【0034】
第一及び第二パーツ41、42の間の第一相対回転方向への負荷の間、少なくとも1つの第一阻止要素43は、第一及び第二パーツ41、42を相互係合させ、両者を共に回転させるよう、少なくとも1つの第二阻止要素44と協働する。2つのパーツ41、42は、その後、トルクの伝達の可能性を有して、同一速度で回転する。当該第一相対回転方向は、「係合」方向と呼ばれる。
【0035】
第一及び第二パーツ41、42の間の第二相対回転方向への負荷の間、少なくとも1つの第一阻止要素43は、2つのパーツ41、42がもはや共に回転しなくても良いよう、少なくとも1つの第二阻止要素44から解放される。2つのパーツ41、42は、その後、同一速度では回転せず、連結装置40はもはやトルクを伝達不可能である。当該第二相対回転方向は、「自由」または「解放」方向と呼ばれる。
【0036】
第一及び第二パーツ41、42の協働または相互係合は、
- ボール、ローラまたはカムといった転がり要素を、特に傾斜平面の形状を取る係合部分に対して楔止めする、または
- 特に対称または非対称歯の形状を取る係合部分と協働する、爪、歯の組、または板ばねに対する障害物を構成する、
ことで機能する阻止要素43を用いることで達成されてもよい。
【0037】
「楔止めにより作用する」とは、係合機能が、ボールやローラやランナといった転がり要素またはカムやシェイプローラといった摺動要素の摩擦により生じる、楔止めまたは妨害により達成されることを意味する。
【0038】
「障害物により作用する」とは、係合機能が、(両要素間の摩擦がない場合にも)互いに対する障害物を構成する要素により生成されることを意味する。
【0039】
制御要素45は、有利には、連結装置を停止するために、即ち連結装置を第二構成C2から第一構成C1へ行くようにするために、時計士によって作動されるよう適合される、停止手段である。
【0040】
制御要素45は、第二阻止要素44に対して、1回転の自由度を有してもよい。制御要素45は、第二阻止要素44に対して、所定の振幅の相対運動または移動を有してもよい。このため、制御要素45は、時計士に対して、連結装置40を、制御要素45と第二阻止要素44の相対位置に応じて、2つの別個の構成に構成することを可能にする。
【0041】
いわゆる停止または解放第一構成C1において、制御要素45は、阻止要素43がもはや第二阻止要素44と協働不可能なように、位置決めされる。その後、連結装置40は、第一及び第二パーツ41、42が第一及び第二相対回転方向に共に回転しなくてもよいよう、停止される。
【0042】
いわゆる始動または係合第二構成C2において、制御要素45は、第一阻止要素43の圏外にある。当該構成において、連結装置40は、フリーホイールのように作用し、より一般的には、従来の一方向連結器のように作用する。
【0043】
制御要素45は、有利には、第一パーツ41または第二パーツ42上に搭載されるよう設計され、連結装置40の回転軸A1に垂直または実質的に垂直な平面内で作動されるまたは移動される。制御要素45はまた、有利には、第一パーツ41内のハウジングまたは第二パーツ42内のハウジング内に搭載されるよう設計される。このため、制御要素45は、従来のフリーホイールに対して、連結器40の高さまたは容量に影響を及ぼさないよう形作られる。換言すれば、制御要素45は、有利には、連結装置40の構成がどうであれ、第一パーツ41または第二パーツ42の全体寸法内に内接される。
【0044】
制御要素45及び第二阻止要素44はまた、好ましくは、フリーホイールが第一または停止構成C1にあり、香箱ばねが解除されると、回転不能なパーツ41または42上に搭載される。これは、連結装置を停止させるために制御要素を保持しなければならない際に、時計士の作業を簡単にすることを可能にする。自身では、第二阻止要素44は、第二パーツの一部である。第二阻止要素は、第二パーツ42の残余に搭載され、固定される。
【0045】
連結装置40は、有利には、2つのパーツ41または42の一方の、係合方向への相対回転中に、始動第二構成C2に自発的に再構成されるよう適合される。換言すれば、連結装置40は、有利には、一構成変形例にある第一パーツ41または第二パーツ42の係合方向への相対回転が、外部の介在なくして、特に時計士の介在なくして、フリーホイールを始動第二構成C2に自動的に再構成するよう、構成される。これは、例えば時計士がアフターサービス実施後の連結装置の再始動を忘れたことなどによる、あらゆる誤作動を軽減することを可能にする。このため、第二阻止要素44と制御要素45との間に、例えば制御要素45を第二阻止要素44に接続する弾性戻し手段など、戻し手段が配置されてもよい。時計士が停止手段45をもはや作動しなくなるや否や、停止手段45は、自発的に阻止要素43の圏外に位置される。
【0046】
戻し手段は、阻止要素43上に形成されてもよい。例えば、戻し手段は、阻止要素43と制御要素45との間に摩擦を生成するよう設計された、阻止要素43の弾性アーム46であってもよい。当該摩擦は、第一パーツ41または代替的に第二パーツ42の係合方向への回転に続き、連結装置40を第二構成C2に再構成するよう、阻止要素43が制御要素45を駆動し位置決めすることを可能にする。もちろん、戻し手段46が生成する摩擦トルクは、第二阻止要素44に対向する制御要素45を回転させるのに必要なトルクより大きくなければならない。
【0047】
代替的に、戻し手段は、第二阻止要素44に対して、制御要素45の移動の端部の一方への回転を促すばねからなってもよい。
【0048】
図1から7に図示する実施形態において、連結装置40は、例えば、自動巻き上げ連鎖200の逆転システム50と直接係合する。第二可動部42は、より具体的には、その歯42aを介して、逆転システム50を構成する2つの爪フリーホイール51と直接係合される。ここで、連結装置40は、手動巻き上げ中に逆転システム50を解放するよう設計される。
【0049】
第二構成において、連結装置40は、第二パーツ42に対して同軸で旋回するよう適合された第一パーツ41を含む弾性爪を有する、フリーホイールの形状を取る。
【0050】
特に図2及び3で図示するように、第一パーツ41は、第一阻止要素43に固定された、ピニオン41aを含む。第一阻止要素43はまた、少なくとも1つの弾性アーム46に、特に弾性アーム46の一端に、少なくとも1つのビーク43aを有する、弾性爪43である。
【0051】
自身の歯42aにより、第二パーツ42は、第二可動部を構成する。第二パーツは更に、第二阻止要素44を含む。当該第二阻止要素44は、非対称形状内部鋸歯輪郭44bを有する、内部切り込みを含む。当該輪郭は、少なくとも1つのビーク43aと協働することが意図される。実際、少なくとも1つのビークは、上述の歯の先端により形成された凹部に収納されるよう設計される。その後爪43は、第一及び第二パーツの相対回転の第一方向(係合方向)において、ビーク43aが障害物を構成する内部輪郭44bの凹部44aに収容され固定されるよう、第二阻止要素44と協働し、これにより第一及び第二パーツ41、42を係合する。
【0052】
第一及び第二パーツの相対回転の第二方向(自由方向)において、爪43の弾性と、内部歯44bとビーク43aのそれぞれの形状のおかげで、後者は、内部歯44bの凹部44aから脱し、2つのパーツ41、42を解放する。
【0053】
連結装置40の制御要素45は、好ましくは、軸A1に平行な方向に、歯42aと第二阻止要素44との間に、パーツ41、42と同軸に、より具体的には第二パーツ42のハウジング内に、配置される。当該制御要素は、第二阻止要素44の内部輪郭44bと同様の形状を有する、切り込みまたは内部輪郭45dを含む。
【0054】
第二パーツ42内で、制御要素45は、有利には、連結装置40を第一または第二構成C1、C2に構成するため、第二阻止要素44に対して軸A1周りに少なくとも2つの別個の角度位置を採用してもよい。
【0055】
構成の変更は、当該実施形態では、実質的に円筒部分の形状を取る、制御要素45の、特に制御要素45内の停止部分45aのおかげで、特に可能である。停止部分45aは、内部輪郭45dの2つの凹部歯間に配置される。以下でより詳細に説明されるように、当該部分は、連結装置40を停止するため、即ち第一構成に切り替えるため、係合部分44aからビーク43aを解放するよう適合される。このため、停止部分45aは、第一構成において少なくとも1つの阻止要素が第一または第二パーツと協働しないように、少なくとも1つの阻止要素43と、特に接触を介して、作用するよう適合される。
【0056】
制御要素45は、好ましくは、工具を用いて、時計士が制御要素を少なくとも第一構成C1に、または追加で第二構成C2に構成可能にする、少なくとも1つの作動部分45bを含む。ここで、作動部分は、制御要素45に機械加工された穴または切欠きまたは開口45bの形状を取る。これら穴または切欠き45bは、時計士により、例えば第二パーツ42の開口を介して、好ましくは時計ムーブメントの部分的取り外しの必要なくして、アクセス可能である。
【0057】
第一構成から第二構成への、またはその逆への、制御要素45の、特に第二パーツ42に対する角度的相対運動は、好ましくは、第二パーツ42に機械加工された当接部47と協働するよう適合された、部分または舌45cにより制限される。
【0058】
自動巻き上げ中、連結装置40は、図4及び5に示すように、揺動錘60の運動により香箱20のばねの充填を可能にするよう、始動第二構成C2にある。当該構成において、充填トルクは、爪のビーク43aの、第二阻止要素44の内部輪郭44aとの協働を介して、歯42aからピニオン41bへ伝達される。
【0059】
始動第二構成C2において、内部輪郭45dは、第二阻止要素44がビーク43aに対向する少なくとも1つの係合部分44aを有するように、第二阻止要素44の内部輪郭44b上に実質的に重ね合わされる。このため、制御要素45の停止部分45aは、ビーク43aの範囲外にある。ここで、連結装置40は、従来の一方向連結器のように機能する。
【0060】
手動巻き上げ中、第一パーツ41は、自由方向(図5の反時計回り方向)に駆動され、第二阻止要素44から、またはより具体的には第二阻止要素44の非対称内部輪郭から、脱するまたは解放される、爪43により第二パーツ42から解放される。
【0061】
香箱20のばねを解除可能にするため、第一パーツ41を第一係合方向(図5で時計回り方向)に回転可能にすることが必要である。しかしながら、第二パーツ42の当該方向への回転は、逆転システム50の固有作用により係止され、このため香箱20の解除を防止する。
【0062】
連結装置40を停止第一構成C1に構成することにより、連結装置40は、有利には、停止され、相対回転方向がどちらであれ、2つのパーツ41、42間のトルクをもはや伝達不可能である。
【0063】
連結装置40は、有利には、停止第一構成C1にいるときに、単体で十分である。換言すれば、時計士が、連結装置40を停止第一構成C1に保持し続ける必要はない。
【0064】
図6及び7に図示する当該構成に到達するため、時計士は、第二阻止部材44に対して移動させるため、部分45bを介して制御要素45を作動する。当該作用により、停止部分45aは、ビークに対向する実質的に円筒状内部輪郭を生成するよう、ビーク43aに対向する係合部分44aと一致して位置される。このため、ビーク43aは、係合部分44aの範囲外に保持される。換言すれば、当該第一構成C1において、制御要素45の第二阻止要素44との重ね合わせの結果は、係合部分の無い内部輪郭、この場合は実質的に円筒状内部輪郭である。連結装置40は、もはや始動されず、第一パーツ41は、第二パーツ42に対して両回転方向に完全に自由に回転可能である。
【0065】
連結装置40が再度始動されるために、時計士は単に、制御要素45を第一構成C1を達成可能にするのと反対の方向に作動することで、連結装置40を第二構成C2に再構成すればよい。
【0066】
当該実施形態において、連結装置40は、有利には、手動巻き上げ中に、自発的に始動第二構成C2に再構成されるようにも設計される。これを達成するために、爪43のアーム46の弾性は、連結装置40が第一構成C1にあるときに、ビーク43aと停止部分45aとの間に摩擦を生成するよう利用される。実際、第一構成C1での手動巻き上げ中、第一パーツ41は、自由第二方向(図7において反時計回り方向)に回転する。その結果、当該摩擦のおかげで、ビーク43aは、連結装置40を始動第二構成C2に構成するため、制御要素45を(第二パーツ42に対して)駆動する傾向にある。従って、時計ムーブメントをケースへ戻す際に、時計士が連結装置40を停止第一構成C1のままにしても、巻き上げ軸10に作用することにより、連結装置40を始動第二構成C2に再構成することが可能である。
【0067】
停止第一構成C1での香箱ばねの解除中、第一パーツ41は、係合第一方向(図7で時計回り方向)に回転する。停止部分45aに対する摩擦を通じ、ビーク43aは、有利には、連結装置40を停止第一構成C1に維持するよう、制御要素45を当接係合にする、または維持するよう、駆動する傾向にある。
【0068】
連結装置40が始動第二構成C2にあるとき、停止部分45aは、ビーク43aの範囲外にあることを記憶に留める必要がある。このため、ビーク43aは、制御要素45に作動不可能であり、連結装置40が自発的に停止第一構成C1に構成されることは不可能である。
【0069】
時計の第二実施形態を、図8及び9を参照して以下に詳細に説明する。
【0070】
時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、自身を外部環境から保護するために時計ケース内に搭載されることが意図される、時計ムーブメントを含む。
【0071】
時計ムーブメントは、自動または電気機械式ムーブメントである。
【0072】
時計ムーブメントは、香箱の巻き上げのための、即ち香箱ばねの充填のための、自動巻き上げ連鎖を含む。当該自動巻き上げ連鎖は、時計ムーブメントの残部に搭載される自動巻き上げモジュールの、特に
- 時計ムーブメントのフレームのプレートまたは少なくとも1つの受に固定された、および
- 時計ムーブメントの香箱に機械的に接続された、
自動巻き上げモジュールに含まれてもよい。
自動巻き上げまたは香箱の充填は、揺動錘の運動により提供されるエネルギーの回復の結果である。
【0073】
自動巻き上げ連鎖は、連結装置40’を含む。
【0074】
当該第二実施形態において、第一実施形態の要素と同一または類似の構成及びまたは機能を有する要素の符号は、ダッシュ記号(’)を付与することで、第一実施形態の要素の符号から推定できる。
【0075】
当該第二実施形態は、好ましくは、第一実施形態から、
- 第一阻止要素43’が、第一及び第二パーツ41’、42’の接触面に配置されたローラ43’である、及び
- 第二阻止要素44’が、第二パーツ42’に機械加工されたハウジング44b’を含み、ハウジング44b’は、傾斜平面44a’(すなわち、軸A1’に平行であるが、非ゼロ角度の、例えば軸A1’に直角放射状の方向に数度の角度の、平面)の形状を取る、係合部分44a’を含む、
ことのみにより異なる。
【0076】
ローラ43’は、より具体的には、ハウジング44b’内に位置する。傾斜平面44a’は、係合第一方向(図8で第一パーツ41’の時計回り回転の方向)において、ローラ43’を第一パーツ41’の円筒部分に対して楔止めする(図8参照)ことを可能にする。
【0077】
当該自由第二方向(図8で第一パーツ41’の反時計回り回転の方向)において、ローラ43’は、傾斜平面44a’から解放されるよう、ハウジング44b’内で移動し、これにより(図9に図示するように)2つのパーツ41’、42’を解放する。
【0078】
当該第二実施形態において、制御要素45’は、第二阻止要素44’上に搭載され、軸A1’周りに第二阻止要素44’と同軸に旋回可能である。制御要素45’は、第二阻止要素44’に対して軸A1’周りに、少なくとも2つの位置を取ることが意図される。第一実施形態同様、当該制御要素は、ローラ43’に作用するよう適合された停止部分45a’のおかげで、連結装置40’を第一及び第二構成C1、C2に構成することを可能にする。
【0079】
停止部分45a’は、より具体的には、停止第一構成C1において、ローラ43’を押し、ローラ43’を第一パーツ41’の円筒部分に対して楔止めするよう設計された傾斜平面44a’の部分の範囲外に、ローラ43’を保持することが意図される。
【0080】
始動第二構成C2において、停止部分45a’は、ローラ43’の範囲外にあるように、第二阻止要素44’内に位置される。その後、連結装置40’は、従来の一方向連結器のように、特にローラタイプフリーホイールのように、機能する。
【0081】
制御要素45’の角度的相対運動は、好ましくは、第二阻止要素44’に機械加工され、始動第二構成C2において当該制御要素45’の当接部分45c’と協働することが意図される、当接部47’により制限される。
【0082】
制御要素45’は、作動部分45b’により、特に切欠き45b’により、時計士によって作動されてもよい。
【0083】
当該第二実施形態において、香箱20のばねを解除可能にするため、時計士は、連結装置40’を停止第一構成C1に構成するよう、制御要素45’を作動し、保持する。その後、第一パーツ41’は、第二パーツ42’を駆動することなく、係合第一方向(図9で時計回り方向)に回転可能になる。
【0084】
当該実施形態において、連結装置40’は、自動巻き上げ中に、始動第二構成C2に自発的に再構成される。実際、歯42a’が係合第一方向に駆動されると、ローラ43’は、傾斜平面44a’と第一パーツ41’の円筒部分との間に楔止めされる傾向にあり、連結装置40’の停止を不可能にする位置に向かって、制御要素45’を牽引する。
【0085】
ローラ43’と第一パーツ41’の間の摩擦は、連結装置40’の始動第二構成C2への自発的な再構成を容易にする。摩擦は、第二阻止要素44’との相対運動を支持するよう、ローラ43’を軸方向に押圧する(図示しない)弾性手段により発生されてもよい。より一般的には、当該摩擦は、第二阻止要素44’を含まず、ローラ43’と2つのパーツ41’、42’のうちの一つの間で発生されてもよい。
【0086】
(図示しない)弾性戻し手段は、停止制御要素45’を、始動第二構成C2に向けて弾性的に付勢するよう構成され、また停止制御要素と第二阻止要素44’との間に配置されることもできる。
【0087】
時計の第三実施形態を、図10及び11を参照して以下に詳細に説明する。
【0088】
時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、自身を外部環境から保護するために時計ケース内に搭載されることが意図される、時計ムーブメントを含む。
【0089】
時計ムーブメントは、自動または電気機械式ムーブメントである。
【0090】
時計ムーブメントは、香箱の巻き上げるための、即ち香箱ばねの充填のための、自動巻き上げ連鎖を含む。当該自動巻き上げ連鎖は、時計ムーブメントの残部に搭載される自動巻き上げモジュールの、特に
- 時計ムーブメントのフレームのプレートまたは少なくとも1つの受に固定された、および
- 時計ムーブメントの香箱20に機械的に接続された、
自動巻き上げモジュールに含まれてもよい。
自動巻き上げまたは香箱の充填は、揺動錘の運動により提供されるエネルギーの回復の結果である。
【0091】
自動巻き上げ連鎖は、連結装置40”を含む。
【0092】
当該第三実施形態において、第一実施形態の要素と同一または類似の構成及びまたは機能を有する要素の符号は、ダブルクオート記号(”)を付与することで、第一実施形態の要素の符号から推定される。
【0093】
当該第三実施形態は、好ましくは、第一実施形態から、
- 第二阻止要素44”は、かぎ歯44b”の組であり、歯は、例えば、第一パーツ41”上に固定される、
- 第一阻止要素43”は、かぎ歯44b”と協働することが意図されるビーク43a”で終わる柔軟ブレードを含む爪であり、爪は、例えば、第二パーツ42”上に固定される、
ことのみにより異なる。
【0094】
このため、制御要素45”は、例えば、
- 軸A1”周りに第二パーツ42”に対して制御要素を旋回するための案内、
- 第二パーツ42”に対する制御要素45”の2つの安定位置を定義するための2つの切欠き45c”、及び
- 爪43”を停止するため、爪43”の屈曲作用を発揮するための支持部またはビーク45a”
を特徴とするリングである。
【0095】
第二パーツ42”は、ばね46”を、特に第二パーツ42”に対する制御要素45”の2つの安定位置を定義するために切欠き45c”と協働するビークまたはニップル47”を有する板ばねを含む。
【0096】
第二阻止要素44”は、より具体的には、係合第一方向(図10で第一パーツ41”の時計回り方向の回転方向)において、第一阻止要素43”と協働する。
【0097】
自由第二方向(図10で第一パーツ41”の反時計回り方向の回転方向)において、かぎ歯の傾斜平面は、ビーク43a”に対して、爪のブレードを屈曲させることにより後退させるよう作用する。2つのパーツ41”、42”は、このため解放される。
【0098】
上述のように、当該第三実施形態において、制御要素45”は、第二パーツ42”上に搭載され、軸A1”周りに、第二パーツと同軸に旋回可能である。制御要素45”は、第一阻止要素43”に対して軸A1”周りに、少なくとも2つの角度位置を取ることが意図される。第一実施形態同様、当該制御要素は、爪43”に作用するよう適合された停止部分45a”のおかげで、連結装置40”を第一及び第二構成C1、C2に構成することを可能にする。
【0099】
停止第一構成C1において、停止部分45a”は、より具体的には、図11に示すように、爪43”に作用する。
【0100】
図10に示すように、始動第二構成C2において、停止部分45a”は、爪43”に作用しない。
【0101】
制御要素45”の角度的相対運動は、好ましくは、切欠き45c”により制限される。
【0102】
制御要素45”は、作動部分45b”により、特に切欠き45b”により、時計士によって作動されてもよい。
【0103】
当該第三実施形態において、香箱ばねを解除可能にするため、時計士は、連結装置40”を停止第一構成C1に構成するよう、制御要素”を作動する。当該構成は、ニップル47”が所定の切欠き45”内に位置するため、安定である。第一パーツ41”は、第二パーツ42”を駆動することなく、係合第一方向に回転可能になる。
【0104】
当該実施形態において、連結装置40”は、自動巻き上げ中に、始動第二構成C2に自発的に再構成されない。このため、時計士は、連結装置40”を始動第一構成C2に構成するため、制御要素45”を作動する。当該構成は、安定である。その後、第一パーツ41”は、係合第一方向に回転し、第二パーツ42”を駆動する。
【0105】
上述の解決策は、自動巻き上げ連鎖に関する。しかしながら、当該解決策は、より一般的には、有利には停止可能でトルクの伝達をもはや可能にしない連結器を必要とする傾向にある、あらゆる時計機構に適用可能である。
【0106】
上述の実施形態の代替として、連結装置は、例えば、逆転システムの、方向逆転機の、一部を形成してもよく、または巻上軸と少なくとも1つの香箱の間の手動巻き上げ連鎖に配置されてもよい。
【0107】
上述の各種解決策において、始動構成において、連結装置は、一方向伝達を提供する。代替として、当該始動構成において、連結装置は、双方向伝達を提供してもよい、即ち両回転方向でトルクの伝達を可能にしてもよい。
【0108】
上述の第一及び第二実施形態において、第一構成C1は不安定構成であり、第二構成C2は安定構成であった。しかしながら、戻し要素を修正することで、第一及び第二実施形態において、安定第一構成C1を得ることも可能である。
【0109】
上述の第三実施形態において、第一構成C1は安定構成であり、第二構成C2は安定構成であった。しかしながら、戻し要素を修正することで、第三実施形態において、不安定第一構成C1を得ることも可能である。
【0110】
「不安定構成」とは、連結装置が、
- その後の(揺動錘による、または巻上軸による)香箱の巻き上げ中に、及びまたは
- 時計士が、連結装置を不安定構成に維持するために、制御要素に連続して発揮していた作用を停止したときに、
当該不安定構成を抜けることを意味する。
【0111】
このため、「不安定構成」は、連結装置を不安定構成に維持するために、時計士が制御要素に連続して作用を発揮しなければならないことを必ずしも意味しない。実際、不安定構成は、好ましくは、制御要素への時計士による連続作用なくしても維持される。
【0112】
「安定構成」とは、永続的であり、時計士による制御要素への作用によってのみ変更可能な、連結装置の構成を意味する。
【0113】
上述の第一及び第二実施形態において、連結装置40;40’は、制御要素45;45’を第二構成に向けて付勢する戻し要素を含む。戻し要素は、好ましくは、制御要素45;45’を、
- 第一及び第二パーツの間の、第一方向への相対運動、または
- 第一及び第二パーツの間の、第二方向への相対運動、
のいずれかの影響を理由として、第一構成から第二構成に移動させるよう構成される及びまたは適合される。
戻し要素は、制御要素45;45’上に摩擦により直接または間接的に作用する、阻止要素43;43’の摩擦表面を含んでもよい。これに加えてまたはこれに代えて、戻し要素は、弾性戻し要素であってもよく、弾性戻し要素を含んでもよい。
【0114】
上述した様々な実施形態において、
- 第一パーツ41;41’;41”は、歯を含む第一可動部の、特にピニオン41a;41a’;41a”の一部であってもよい、及びまたは
- 第二パーツ42;42’;42”は、歯を含む第二可動部の、特に歯車42a;42a’;42a”の一部であってもよい。
【0115】
第一可動部または第二可動部は、好ましくは、制御要素45;45’;45”を含む。
【0116】
上述の様々な実施形態において、保持部分45b;45b’;45”は、時計士が制御要素を、特に工具を用いて、操作可能にするために設けられた。説明した部分は、穴、切欠き、または開口である。しかしながらあらゆる他の構造も予想される。
【0117】
上述の様々な実施形態において、制御要素45;45’;45”は、少なくとも1つの阻止要素43;43’;43”によってのみ香箱に接続された、第一または第二パーツ上に搭載される。
【0118】
上述の解決策の結果として、上述の連結装置40を含む、自動巻き上げ連鎖200または自動巻き上げモジュール250の稼働方法の一実施形態を、以下に説明する。
【0119】
稼働方法は、以下のステップを含む。
- 連結装置40が第一構成C1にあるとき、自動巻き上げ連鎖200の始動、及び
- 当該始動の結果、または当該始動に続き、第一構成C1から第二構成C2への変化。
【0120】
上述の解決策の結果として、上述の連結装置40;40’を含む、時計ムーブメント300または時計ムーブメント400の稼働方法の一実施形態を、以下に説明する。
【0121】
稼働方法は、以下のステップを含む。
- 連結装置40;40’が第一構成C1にあるとき、自動巻き上げ連鎖200の始動、及び
- 当該始動の結果、または当該始動に続き、第一構成C1から第二構成C2への変化。
【0122】
代替としてまたは追加として、稼働方法は以下のステップを含む。
- 連結装置40;40’が第一構成C1にあるとき、巻き上げ連鎖100の始動、及び
- 当該始動の結果、第一構成C1から第二構成C2への変化。
【0123】
上述の解決策は、有利には、自動巻き上げ連鎖の部分的取り外しすらなくして、香箱ばねの解除を可能にする。このため、提案した解決策は、自動巻き上げ連鎖のモジュール構造を省くことを可能にするのと同時に、香箱を解除する操作の単純化を提供する。
【0124】
提案した解決策は、有利には、もはや機能しないよう、時計士により停止可能な連結装置を含む、巻き上げ連鎖に関する。代替的に、連結装置は、(ムーブメント内に配置された)他の補助装置により停止されてもよい。連結装置は、このため、ムーブメントを分解することなく、もはや巻き上げ連鎖にトルクを伝達不可能であり、香箱ばねの解除を可能にする。
【0125】
有利には、上述のように、そして好ましくは、連結装置は、停止後、外部の介在なくして、後続の巻き上げ中に始動または機能構成に自発的にリセットされるよう適合される。
【0126】
上述の連結装置解決策は、有利には、第一構成と第二構成において、同一の全体寸法を、特に同一の直径及びまたは同一の厚さを有する。上述の連結装置解決策は、好ましくは、第一及び第二構成の間の全ての中間構成において、同一の全体寸法を、特に同一の直径及びまたは同一の厚さを有する。
【0127】
本明細書中、「モジュール」は、自律的組立体、即ち自身で十分な組立体であり、
- 自身がその中にまたはその上に搭載される、時計ムーブメントのフレーム、または
- 当該ムーブメント内のその他のモジュール、
から独立して、要素の組立または保持、特に旋回を可能にする組立体を意味する。
【0128】
実施形態または変形例が何であれ、制御要素は、好ましくは、第一及び第二パーツ、及び係止要素とは別個である。
【0129】
実施形態または変形例が何であれ、第一構成C1は、連結装置の分解または部分的分解構成、特に係止要素が除去された構成ではない。
【0130】
実施形態または変形例が何であれ、第二構成C2において、連結装置は、パーツの一方及びまたは他方が第一方向への相対回転に促されると、第一及び第二パーツの接続を可能にし、第二方向への相対回転中にパーツ間の自由相対回転を可能にする。パーツの一方及びまたは他方が第一方向への相対回転に促される際の第一及び第二パーツの接続は、第一方向への相対回転中のパーツ間の、典型的には逃げ角または死角を補うための、小さな角度振幅、例えば360°より小さい、特に90°より小さい、または15°より小さい、または10°より小さい角度振幅にわたる、わずかな自由相対運動を除外しない。
【符号の説明】
【0131】
40 連結装置
41 第一パーツ
42 第二パーツ
43 阻止要素
44 第二素子要素
45 制御要素
46 弾性アーム
100 手動巻き上げ連鎖
200 自動巻き上げ連鎖
250 自動巻き上げモジュール
300 時計ムーブメント
400 時計
A1 第一軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】