(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077020
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】自動調製装置
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188805
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】501008462
【氏名又は名称】株式会社AKシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】矢川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】徳永 英治
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀樹
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047CC04
4C047HH03
4C047HH04
4C047HH07
4C047JJ18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】薬剤の漏洩が生じず簡便な構造で自動的に薬剤を調製して調製薬剤を生成できる、自動調製装置を提供する。
【解決手段】自動調製装置1は、医薬品容器装着部2と、吸引器具装着部3と、薬剤容器配置部4と、薬剤容器出し入れ制御部5と、重量測定部6と、薬剤容器接続制御部7と、移動制御部8と、前記薬剤容器出し入れ制御部、前記重量測定部、前記薬剤容器接続制御部および前記移動制御部を制御する全体制御部9と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に投与可能な調製薬剤を生成する自動調製装置であって、
接続器具を接続した点滴溶液を収容する点滴用医薬品容器を装着する医薬品容器装着部と、
前記接続器具を接続した吸引器具を装着する吸引器具装着部と、
薬剤を収容する複数の薬剤容器を配置する薬剤容器配置部と、
前記薬剤容器配置部から前記薬剤容器を取り出すおよび前記薬剤容器を前記薬剤容器配置部に戻す、薬剤容器出し入れ制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器の重量を測定する重量測定部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器を、前記接続器具に接続する薬剤容器接続制御部と、
前記吸引器具による、前記点滴溶液および前記薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を制御する移動制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部、前記重量測定部、前記薬剤容器接続制御部および前記移動制御部を制御する全体制御部と、を備え、
前記接続器具は、
内部空間である管路と、
前記吸引器具の吸引口と前記管路内部とを接続する吸引器具接続部と、
前記点滴用医薬品容器の出入り口と前記管路内部とを接続する点滴用医薬品容器接続部と、
前記薬剤容器の開口部と前記管路内部とを接続する薬剤容器接続部と、を有し、
前記吸引器具接続部、前記点滴用医薬品容器接続部および前記薬剤容器接続部による接続で、前記吸引器具、前記点滴用医薬品容器および前記薬剤容器は、前記管路と併せて閉鎖空間を形成可能であり、
前記移動制御部は、前記吸引器具の制御により、
前記点滴用医薬品容器から前記吸引器具に向けた前記点滴溶液の移動、
前記吸引器具から前記薬剤容器に向けた前記点滴溶液の移動、
前記薬剤容器から前記吸引器具に向けた前記薬剤の移動および
前記吸引器具から前記点滴用医薬品容器に向けた前記薬剤の移動、
の少なくとも一つを制御し、
前記点滴溶液および前記薬剤の混合による調製薬剤を生成する、自動調製装置。
【請求項2】
前記全体制御部は、
前記薬剤容器出し入れ制御部により、前記薬剤容器配置部の前記薬剤容器を取り出して前記重量測定部にて重量を測定させ、
前記薬剤容器出し入れ制御部により、前記重量測定部の前記薬剤容器を、前記薬剤容器配置部に戻し、
前記薬剤容接続制御部により、前記薬剤容器配置部の前記薬剤容器を、前記薬剤容器接続部に接続し、
前記接続器具に接続された前記点滴用医薬品容器、前記吸引器具および前記薬剤容器との接続状態において、前記移動制御部により、前記点滴溶液および前記薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を行わせ、
前記点滴用医薬品容器において、前記点滴陽的および前記薬剤を混合した調製薬剤を生成する、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項3】
前記薬剤容器が液体の前記薬剤を収容している場合であって、
前記移動制御部は、
前記吸引器具と前記薬剤容器とを薬剤移動可能な接続状態とし、
前記薬剤容器から前記薬剤を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを薬剤移動可能な接続状態とし、
前記吸引器具が吸引した前記薬剤を、前記点滴用医薬品容器に吐出させ、
前記点滴用医薬品容器において、前記薬剤と前記点滴溶液とが混合されて調製薬剤が生成される、請求項2記載の自動調製装置。
【請求項4】
前記薬剤容器が固体の前記薬剤を収容している場合であって、
前記移動制御部は、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを溶液移動可能な接続状態とし、
前記点滴用医薬品容器から、前記点滴溶液を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記薬剤容器とを溶液移動可能な接続状態とし、
前記吸引器具が吸引した前記点滴溶液を、前記薬剤容器に吐出させ、
前記薬剤溶液内部において、前記点滴溶液に前記薬剤を溶解させた溶解薬剤を生成させ、
前記薬剤容器から、前記溶解薬剤を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを溶液移動可能な接続状態にし、
前記吸引器具が吸引した前記溶解薬剤を前記点滴用医薬品容器に吐出させ、
前記点滴用医薬品容器内部において、前記溶解薬剤と前記点滴溶液とが混合されて調製薬剤が生成される、請求項2記載の自動調製装置。
【請求項5】
前記重量測定部は、前記薬剤容器の重量測定を介して、前記薬剤容器から前記点滴用医薬品容器へ移動される前記薬剤の量を確認する、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項6】
前記薬剤容器配置部は、前記薬剤容器が収容する前記薬剤が、対象とする薬剤であるかを検査する、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項7】
前記薬剤容器配置部は、前記点滴用医薬品容器に移動される前記薬剤の順序に応じて、前記複数の薬剤容器を並べる、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項8】
前記薬剤容器、前記吸引器具および前記点滴用医薬品容器の少なくとも一つを、攪拌させる攪拌部を更に備える、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項9】
前記攪拌部は、装着されている前記吸引器具および前記点滴用医薬品容器を回転させることで攪拌を行う、および振動により攪拌を行う、の少なくとも一方で攪拌する、請求項8記載の自動調製装置。
【請求項10】
前記点滴用医薬品容器で生成される前記調製薬剤を検査する検査部を、更に備える、請求項1記載の自動調製装置。
【請求項11】
前記吸引器具、前記点滴用医薬品容器および前記薬剤容器を、陰圧環境に設置可能な陰圧空間を更に備える、請求項1から10のいずれか記載の自動調製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の曝露などを防止して、正確かつ効率的に目標とする調製薬剤を自動で調剤する自動調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に処方する薬剤は、医療現場で調製して調剤しなければならない場合が多い。いわゆる錠剤やカプセル薬のように、既に製造されたものを服薬するだけの薬剤ばかりではなく、患者の病状や特性に応じて、複数の要素を調合して薬剤とする必要がある場合もあるからである。あるいは、複数の要素を最初から調合してしまうと、薬剤としての品質や効能が劣化する問題になることもある。このような場合にも、患者に投与あるいは服用させる直前に調合することが必要である。
【0003】
このように、患者に投与や服用させるための薬剤を、医療現場において調剤することが行われている。患者それぞれに対応させるため、調剤内容もさまざまである。
【0004】
また、散薬や錠剤などの固形薬剤だけでなく、いわゆる点滴投与などを行なうための液体薬剤が調剤されることもある。例えば、抗がん剤や抗生剤のように、液体薬剤で点滴投与される薬剤もある。このような液体薬剤の場合には、必要な液体薬剤をバイアル瓶やアンプルから取り出して、生理食塩水などの輸液と混合調剤することが行われる。混合調剤された薬剤は、点滴などにより患者に投与される。
【0005】
このような複数の薬剤を混合調剤する際に、特に曝露防止対策が必要な薬剤を混合調剤するときは、一般的にドラフト内部で作業者が手作業を含んで実施することが行われている。例えば、必要な薬剤の入ったバイアル瓶やアンプルなどがドラフト内部に置かれる。併せて生理食塩水や基礎的な点滴溶液の入った点滴バッグもセットされる。
【0006】
例えば1つの方法として、ドラフト内で作業者は注射針を取り付けた注射器を用いて、バイアル瓶やアンプル瓶から定められた量の薬剤を抽出する。さらに、抽出した薬剤を点滴バッグに注入し生理食塩水やその他薬剤等と混合させる。
【0007】
あるいは、点滴バッグから溶解用として生理食塩水やその他液体薬剤等を、注射針を取り付けた注射器を用いて定められた量を抽出したのち、バイアル瓶に定められた量を注入し、バイアル瓶内の固形もしくは粉末の薬剤等を溶解させる。溶解されたバイアル瓶内の液体薬剤等を再度注射器に抽出したのち、点滴バッグに再注入することで混合させる。混合作業は、薬剤の種類や数によって、複数回であってもよい。この混合薬剤を含んだ点滴バッグなどが、患者に投与される。
【0008】
ここで、このような作業者による手作業ではいくつかの問題があった。
【0009】
一つには、注射器を用いて薬剤を抽出・注入する際に、注射針からの飛び跳ねや、バイアル瓶などへの注射針の抜き差し時にバイアル瓶口などから薬剤が吹き出すなどが生じる可能性がある。薬剤を無駄にするという問題や薬剤による作業環境や点滴バッグ等の汚染のほか、薬剤が作業者にかかってしまい曝露するという身体的危険の問題に繋がってしまう。
【0010】
さらに、手作業による調製作業は、例えば薬剤による曝露防止のため、注射針のバイアル瓶への抜き差しや薬剤の移送動作の際には、バイアル瓶と注射器間の圧力調節を行うなどの特別な手技を必要とするなど、調製に関する知識や経験が必要となる。
【0011】
もちろん、作業者の作業負担が大きく、患者に必要な調製薬剤を提供する時間コストや費用コストが高まる問題があった。
【0012】
このように、手作業での調剤は、身体的危険性や調剤ミス、あるいは作業コスト(時間、手間、費用)が大きくなるなどの問題があった。
【0013】
このような手作業での調剤の問題に対応するために、自動調剤に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013-52250号公報
【特許文献2】特開2014-121750号公報
【特許文献3】特開2015-150112号公報
【特許文献4】特開2016-536079号公報
【特許文献5】特表2017-502795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1は、混注装置1は、薬剤容器10を保持する第1ロボットアーム21と注射器11の注射針を上記第1ロボットアーム21により保持されている上記薬剤容器10の口部に差し込む動作及び上記注射器11の注射針を輸液バッグ12の混注口に差し込む動作を行う第2ロボットアーム22とからなる混注動作部2と、上記混注動作部2を収容する混注処理室204と、上記混注処理室204内に薬剤容器10及び注射器11を供給する供給部100と、上記混注処理室204の外側で輸液バッグ12を保持し、この輸液バッグ12の混注口を上記混注処理室204に形成された混注連通口202bに位置させる輸液バッグ保持部4と、を備える装置を開示する。
【0016】
特許文献1は、注射器や輸液バッグなどをセットした状態で、人間ではなくロボットが手作業の代わりの調剤作業を行う。つまり、上述した薬剤の抽出や注入、混合などの作業をロボットが行う。
【0017】
しかしながら、特許文献1の技術は、ロボットなどを用いる必要があるので、装置の大型化や高額化などの問題がある。多くの病院で導入することが難しい問題がある。また、バイアル瓶や点滴バッグへの薬液の注入出は注射針を取り付けた注射器で行うので、抽出や注入の際に、外部に薬剤が漏れ出てしまう問題も残っている。さらにこうした薬剤の漏出を最小限に抑えるための対策として、価格や調製時間に影響がでる可能性がある。
【0018】
特許文献2は、実施形態に係る自動調製システムにあっては、ケースと、圧力調製部と、複数のロボットとを備える。ケースは、内部が作業空間となる。圧力調製部は、ケースの内部を外部に対して陰圧に保つ。複数のロボットは、ケースの天井面に設置され、それぞれアームを有するように構成される。また、複数のロボットは、アームを協働させて調製作業を行う自動調剤システムを開示する。
【0019】
特許文献2は、特許文献1と同じくロボットアームを手作業の代わりに用いることで自動調剤を行う。このため、上述した特許文献1と同様の問題を有している。
【0020】
特許文献3は、第1回動部15は、シリンジユニット11を搭載し、垂直面内で回動し所定角度で停止する。シリンジ13は、回動中心を通り直径方向に沿った状態で、第1回転部の半径方向外側へ前進後退駆動され、シリンジ13のプランジャ23が前進後退駆動される。第2回動部17は、輸液バッグユニット7を搭載し、輸液バッグ5の針刺し口21を、リング状の第2回動部17の内側へ向け、針刺し口21と反対側を、第2回動部17の外側へ向けた状態にして、垂直面内で第1回動部15の回りを同軸に回動し、所定角度で停止する。第1回動部15と第2回動部17が所定角度をとり、輸液バッグ5の針刺し口21へ、またはバイアル瓶3の針刺し部27へ、前進したシリンジ13の針29が届く自動調製装置を開示する。
【0021】
特許文献3も、バイアル瓶や点滴バッグへの薬液の注入出は注射針を取り付けた注射器で行うので、抽出や注入の際に、調製環境の汚染の可能性が残っている。勿論、大型化や高コストといった問題も有している。
【0022】
また、回転させながら注射針をバイアル瓶などに刺し込んで薬剤の抽出や注入をする構造により、薬剤の漏洩などの懸念もある。勿論、機械を操作する作業者に事故が生じるかもしれない懸念もある。
【0023】
特許文献4は、ロボットを用いて危険薬を含む薬剤を調合する際に病院の薬剤部を支援するように設計されたシステムを開示する。
【0024】
特許文献4も、特許文献1、2などと同様に、ロボットアームやその他のデバイスなどを多く必要として、装置の大型化や高額化となってしまう問題がある。
【0025】
また、特許文献1~3は、バイアル瓶や点滴バッグなどが露出しているので、薬剤の漏洩に加えて、薬剤の変質などの懸念もある。また、漏洩した薬剤により、装置や装置設置周辺が汚損されるなどの問題もある。勿論、作業者が薬剤の曝露を受ける危険性もある。抗がん剤のような強い薬剤であれば、曝露することでの健康被害の問題もある。
【0026】
特許文献5は、点滴バッグから流体を取り出し、そのような流体を患者に注入するために使用されるものと同じ点滴バッグアセンブリの流体ラインおよびコネクタを用いて、点滴バッグを充填することができる点滴バッグへの薬剤を充填する装置を開示する。
【0027】
バイアル瓶や点滴バッグなどをチューブで接続して、薬剤の交換や混合を行う。このため、チューブによる薬剤交換などで、作業時間が大きくなる問題がある。また、点滴バッグやバイアル瓶などの様々な容器をセットするのに手間を要する問題もある。
【0028】
また、装置に多数のチューブが接続されてしまうので、作業者が作業中にチューブに引っかかったりしてしまい、作業危険性もある。作業者にとっても危険であるし、装置にとっても危険である。
【0029】
このように、従来技術では、装置の大型化、高額化、薬剤の漏洩やこれによる被害などの問題が残っていた。
【0030】
本発明は、以上の課題に鑑み、薬剤の漏洩が生じず簡便な構造で自動的に薬剤を調製して調製薬剤を生成できる、自動調製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題に鑑み、本発明の自動調製装置は、患者に投与可能な調製薬剤を生成する自動調製装置であって、
接続器具を接続した点滴溶液を収容する点滴用医薬品容器を装着する医薬品容器装着部と、
前記接続器具を接続した吸引器具を装着する吸引器具装着部と、
薬剤を収容する複数の薬剤容器を配置する薬剤容器配置部と、
前記薬剤容器配置部から前記薬剤容器を取り出すおよび前記薬剤容器を前記薬剤容器配置部に戻す、薬剤容器出し入れ制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器の重量を測定する重量測定部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器を、前記接続器具に接続する薬剤容器接続制御部と、
前記吸引器具による、前記点滴溶液および前記薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を制御する移動制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部、前記重量測定部、前記薬剤容器接続制御部および前記移動制御部を制御する全体制御部と、を備え、
前記接続器具は、
内部空間である管路と、
前記吸引器具の吸引口と前記管路内部とを接続する吸引器具接続部と、
前記点滴用医薬品容器の出入り口と前記管路内部とを接続する点滴用医薬品容器接続部と、
前記薬剤容器の開口部と前記管路内部とを接続する薬剤容器接続部と、を有し、
前記吸引器具接続部、前記点滴用医薬品容器接続部および前記薬剤容器接続部による接続で、前記吸引器具、前記点滴用医薬品容器および前記薬剤容器は、前記管路と併せて閉鎖空間を形成可能であり、
前記移動制御部は、前記吸引器具の制御により、
前記点滴用医薬品容器から前記吸引器具に向けた前記点滴溶液の移動、
前記吸引器具から前記薬剤容器に向けた前記点滴溶液の移動、
前記薬剤容器から前記吸引器具に向けた前記薬剤の移動および
前記吸引器具から前記点滴用医薬品容器に向けた前記薬剤の移動、
の少なくとも一つを制御し、
前記点滴溶液および前記薬剤の混合による調製薬剤を生成する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の自動調製装置は、点滴用医薬品容器、薬剤容器、吸引器具などを接続して、自動で薬剤や液剤の抽出や注入、そして混合を行える。このため、手作業を可能な限り低減して、自動調製を行える。これにより、薬剤の調製に関わる労力やコストを抑えることができる。
【0033】
また、接続器具により、点滴用医薬品容器、薬剤容器、吸引器具などの口が接続されている。これにより、薬剤や点滴溶液などの抽出、注入、移動の際に、薬剤や点滴溶液が外部に漏洩することが防止できる。これにより、薬剤の品質劣化や周辺の汚損、作業者の曝露などを防止できる。
【0034】
また、抽出や注入される薬剤や点滴溶液の量は、正確に移送される。これにより、最終的に調製されて得られる調製薬剤は、適切な混合比率で生成されて点滴用医薬品容器に収容される。
【0035】
加えて、重量検査などの処理を介して調製されることで、薬剤などの量が確実かつ正確に計量される。これにより、目的とする調製薬剤が正確に作られ、人的作業のバラツキやミスなども防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施の形態1における自動調製装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における接続器具による各要素が接続されている状態を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、各要素のセット前の状態を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、各要素がセットされた状態を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、対象となる薬剤容器の取り出しと重量測定を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、対象となる薬剤容器の取り出しと重量測定を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における自動調製の動作において、薬剤容器の接続器具への移動を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における自動調製の動作において、薬剤容器の接続器具への移動を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における自動調製の動作において、薬剤容器の接続器具への移動を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施の形態1における自動調製の動作における、薬剤容器から点滴用医薬品容器への薬剤移動を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施の形態1における自動調製装置での吸引器具による点滴溶液の吸引を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施の形態1における自動調製装置での吸引器具から薬剤容器に点滴溶液を吐出する状態を示す模式である。
【
図13】本発明の実施の形態1における自動調製装置での溶解薬剤の吸引を示す模式図である。
【
図14】本発明の実施の形態2における回転による攪拌を示す模式図である。
【
図15】本発明の実施の形態2における検査部を備える自動調製装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第1の発明に係る自動調製装置は、患者に投与可能な調製薬剤を生成する自動調製装置であって、
接続器具を接続した点滴溶液を収容する点滴用医薬品容器を装着する医薬品容器装着部と、
前記接続器具を接続した吸引器具を装着する吸引器具装着部と、
薬剤を収容する複数の薬剤容器を配置する薬剤容器配置部と、
前記薬剤容器配置部から前記薬剤容器を取り出すおよび前記薬剤容器を前記薬剤容器配置部に戻す、薬剤容器出し入れ制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器の重量を測定する重量測定部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部により取り出された前記薬剤容器を、前記接続器具に接続する薬剤容器接続制御部と、
前記吸引器具による、前記点滴溶液および前記薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を制御する移動制御部と、
前記薬剤容器出し入れ制御部、前記重量測定部、前記薬剤容器接続制御部および前記移動制御部を制御する全体制御部と、を備え、
前記接続器具は、
内部空間である管路と、
前記吸引器具の吸引口と前記管路内部とを接続する吸引器具接続部と、
前記点滴用医薬品容器の出入り口と前記管路内部とを接続する点滴用医薬品容器接続部と、
前記薬剤容器の開口部と前記管路内部とを接続する薬剤容器接続部と、を有し、
前記吸引器具接続部、前記点滴用医薬品容器接続部および前記薬剤容器接続部による接続で、前記吸引器具、前記点滴用医薬品容器および前記薬剤容器は、前記管路と併せて閉鎖空間を形成可能であり、
前記移動制御部は、前記吸引器具の制御により、
前記点滴用医薬品容器から前記吸引器具に向けた前記点滴溶液の移動、
前記吸引器具から前記薬剤容器に向けた前記点滴溶液の移動、
前記薬剤容器から前記吸引器具に向けた前記薬剤の移動および
前記吸引器具から前記点滴用医薬品容器に向けた前記薬剤の移動、
の少なくとも一つを制御し、
前記点滴溶液および前記薬剤の混合による調製薬剤を生成する。
【0038】
この構成により、曝露などの危険性がなく、自動で薬剤と点滴溶液を混合した調製薬剤を生成できる。
【0039】
本発明の第2の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記全体制御部は、
前記薬剤容器出し入れ制御部により、前記薬剤容器配置部の前記薬剤容器を取り出して前記重量測定部にて重量を測定させ、
前記薬剤容器出し入れ制御部により、前記重量測定部の前記薬剤容器を、前記薬剤容器配置部に戻し、
前記薬剤容接続制御部により、前記薬剤容器配置部の前記薬剤容器を、前記薬剤容器接続部に接続し、
前記接続器具に接続された前記点滴用医薬品容器、前記吸引器具および前記薬剤容器との接続状態において、前記移動制御部により、前記点滴溶液および前記薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を行わせ、
前記点滴用医薬品容器において、前記点滴溶液および前記薬剤を混合した調製薬剤を生成する。
【0040】
この構成により、全体を適切に制御することでの適正な調製薬剤の自動調製を行える。作業者は、指示手続を行うあるいはプログラミングをすることで、調製を実行できる。
【0041】
本発明の第3の発明に係る自動調製装置では、第2の発明に加えて、前記薬剤容器が液体の前記薬剤を収容している場合であって、
前記移動制御部は、
前記吸引器具と前記薬剤容器とを薬剤移動可能な接続状態とし、
前記薬剤容器から前記薬剤を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを薬剤移動可能な接続状態とし、
前記吸引器具が吸引した前記薬剤を、前記点滴用医薬品容器に吐出させ、
前記点滴用医薬品容器において、前記薬剤と前記点滴溶液とが混合されて調製薬剤が生成される。
【0042】
この構成により、液体の薬剤の場合に、薬剤と点滴溶液との混合による調製薬剤を生成できる。
【0043】
本発明の第4の発明に係る自動調製装置では、第2の発明に加えて、前記薬剤容器が固体の前記薬剤を収容している場合であって、
前記移動制御部は、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを溶液移動可能な接続状態とし、
前記点滴用医薬品容器から、前記点滴溶液を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記薬剤容器とを溶液移動可能な接続状態とし、
前記吸引器具が吸引した前記点滴溶液を、前記薬剤容器に吐出させ、
前記薬剤溶液内部において、前記点滴溶液に前記薬剤を溶解させた溶解薬剤を生成させ、
前記薬剤容器から、前記溶解薬剤を前記吸引器具に吸引させ、
前記吸引器具と前記点滴用医薬品容器とを溶液移動可能な接続状態にし、
前記吸引器具が吸引した前記溶解薬剤を前記点滴用医薬品容器に吐出させ、
前記点滴用医薬品容器内部において、前記溶解薬剤と前記点滴溶液とが混合されて調製薬剤が生成される。
【0044】
この構成により、固体の薬剤の場合に、薬剤と点滴溶液との混合による調製薬剤を生成できる。固体の薬剤を最初に溶解させてからの調製薬剤の生成により、最適な調製薬剤生成ができる。
【0045】
本発明の第5の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記重量測定部は、前記薬剤容器の重量測定を介して、前記薬剤容器から前記点滴用医薬品容器へ移動される前記薬剤の量を確認する。
【0046】
この構成により、正確に調製薬剤を生成できる。
【0047】
本発明の第6の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記薬剤容器配置部は、前記薬剤容器が収容する前記薬剤が、対象とする薬剤であるかを検査する。
【0048】
この構成により、ミスのない調製薬剤を生成できる。
【0049】
本発明の第7の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記薬剤容器配置部は、前記点滴用医薬品容器に移動される前記薬剤の順序に応じて、前記複数の薬剤容器を並べる。
【0050】
この構成により、混合をさせる順序に応じて薬剤を混合していくことができる。
【0051】
本発明の第8の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記薬剤容器、前記吸引器具および前記点滴用医薬品容器の少なくとも一つを、攪拌させる攪拌部を更に備える。
【0052】
この構成により、撹拌が適切に進み、品質の高い調製薬剤が生成できる。
【0053】
本発明の第9の発明に係る自動調製装置では、第8の発明に加えて、前記攪拌部は、装着されている前記吸引器具および前記点滴用医薬品容器を回転させることで攪拌を行う、および振動により攪拌を行う、の少なくとも一方で攪拌する。
【0054】
この構成により、容易かつ確実に攪拌できる。
【0055】
本発明の第10の発明に係る自動調製装置では、第1の発明に加えて、前記点滴用医薬品容器で生成される前記調製薬剤を検査する検査部を、更に備える。
【0056】
この構成により、生成された調製薬剤の品質を把握することができる。
【0057】
本発明の第11の発明に係る自動調製装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記吸引器具、前記点滴用医薬品容器および前記薬剤容器を、陰圧環境に設置可能な陰圧空間を更に備える。
【0058】
この構成により、品質維持などを更に高めることができる。
【0059】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0060】
(実施の形態1)
【0061】
図1は、本発明の実施の形態1における自動調製装置の模式図である。
図2は、本発明の実施の形態1における接続器具による各要素が接続されている状態を示す平面図である。
【0062】
自動調製装置1は、患者に投与可能な調製薬剤を生成する。自動調製装置1は、医薬品容器装着部2、吸引器具装着部3、薬剤容器配置部4、薬剤容器出し入れ部5、重量測定部6、薬剤容器接続制御部7、移動制御部8、全体制御部9を備える。また、必要に応じて表示部10を備えていてもよい。
【0063】
なお、図の見やすさのために、
図2以降において各要素の一部や符号を省略する場合がある。
【0064】
医薬品容器装着部2は、接続器具100を接続した点滴用医薬品容器200を装着する。
図1では、医薬品容器装着部2に、点滴用医薬品容器200が装着されている。また、点滴用医薬品容器200には接続器具100が接続されている。接続器具100は、手作業などで点滴用医薬品容器200に接続されればよい。
【0065】
吸引器具装着部3は、接続器具100を接続した吸引器具300を装着する。
図1では、この状態が示されている。接続器具100は、手作業などで接続されればよい。
【0066】
薬剤容器配置部4は、複数の薬剤容器400を配置する。薬剤容器400のそれぞれは、調製薬剤に用いられる薬剤を収容している。薬剤容器配置部4は、複数の薬剤容器400を配置可能としている。このとき、薬剤容器配置部4は、使用される薬剤容器400の順に配置しておくことも好適である。これにより、調製の指示を確実に守ることができ、作業も効率的である。
【0067】
薬剤容器出し入れ部制御部5は、薬剤容器配置部4に配置されている薬剤容器400を取り出すあるいは戻すことを制御する。薬剤容器400を、点滴溶液との混合に用いる場合には、薬剤容器400を取り出して接続器具100に接続する。この接続のための薬剤容器400の取り出しを、薬剤容器出し入れ制御部5が行う。薬剤容器400の混合のための使用が終わった後では、接続器具100から薬剤容器400が取り外される。取り外された薬剤容器400は薬剤容器配置部4に戻される。薬剤容器出し入れ制御部5は、この薬剤容器400を戻すことを行う。なお、後述するように、薬剤容器400の接続器具100との接続や取り外しは、薬剤容器接続制御部7が行う。
【0068】
重量測定部6は、薬剤容器出し入れ制御部5により取り出された薬剤容器400の重量を測定する。取り出された薬剤容器400は、上述の通り点滴容器との混合のために接続器具100に接続される。その接続の前に重量測定部6で重量が測定される。接続の前後での重量変化により、適正な量の吸引が行われたかを確認することもできる。
【0069】
薬剤容器接続制御部7は、薬剤容器配置部4から薬剤容器出し入れ制御部5を介して取り出された薬剤容器400を、接続器具100に接続する。この接続により、薬剤容器400に収容されている薬剤と点滴溶液の混合による調製薬剤の生成に繋げることができる。
【0070】
移動制御部8は、接続器具100に接続されている吸引器具300(例えば、シリンジ)による、点滴溶液および薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を制御する。例えば、点滴用医薬品容器200の点滴溶液を吸引したり、点滴用医薬品容器200に薬剤を注入したりする。薬剤容器400の薬剤についても同様である。
【0071】
全体制御部9は、薬剤容器配置部4、薬剤容器出し入れ制御部5、重量測定部6、薬剤容器接続制御部7、移動制御部8を制御する。全体動作の制御を行うことで、作業者の指示に基づく(あるいはプログラミングに基づく)自動動作を行わせる。また、接続器具100と点滴用医薬品容器200などが接続されている場合に、その上下位置関係を反転させるなどの制御も行う。これは、例えば、接続器具100などを支持する構造部材の回転などで、上下位置反転が行われればよい。
【0072】
図2にも示される通り、接続器具100は、内部空間である管路110,吸引器具接続部120、点滴用医薬品容器接続部130、薬剤容器接続部140を有する。吸引器具接続部120は、吸引器具100の吸引口と管路110内部とを接続する。点滴用医薬品容器接続部130は、点滴用医薬品容器200の出入り口と管路110内部を接続する。薬剤容器接続部140は、薬剤容器400の開口部と管路110内部とを接続する。
【0073】
吸引器具接続部120、点滴用医薬品容器接続部130、薬剤容器接続部140による接続で、吸引器具300、点滴用医薬品容器200、薬剤容器400は、管路110と合わせて閉鎖空間を形成可能である。薬剤や点滴溶液は、この閉鎖空間内部を移動する。移動の結果、薬剤と点滴溶液との混合が行われて調製薬剤が生成される。
【0074】
移動制御部8は、接続器具100を制御する。これにより、
点滴用医薬品容器200から吸引器具300に向けた点滴溶液の移動、
吸引器具300から薬剤容器400に向けた点滴溶液の移動、
薬剤容器400から吸引器具300に向けた薬剤の移動および
吸引器具300から点滴用医薬品容器200に向けた薬剤の移動、
の少なくとも一つが制御される。
【0075】
これらのように、接続器具100を介して、薬剤と点滴溶液とが混合されることになり、これらの混合により目的とする調製薬剤が生成される。
【0076】
全体制御部9は、薬剤容器出し入れ制御部5による薬剤容器配置部4の薬剤容器400の取り出しを指示する。更には、取り出された薬剤容器400の重量測定部6での重量測定を指示する。また、重量測定部6の薬剤容器400を、薬剤容器配置部4に戻すことを指示する。
【0077】
全体制御部9は、薬剤容器接続制御部7による薬剤容器配置部4の薬剤容器400を、接続器具100の薬剤容器接続部140に接続することを指示する。加えて、接続器具100と薬剤容器400との分離も指示する。
【0078】
全体制御部9は、接続器具100を中心とした点滴用医薬品容器200,吸引器具300、薬剤容器400の接続状態において、移動制御部8による点滴溶液および薬剤の少なくとも一方の吸引および吐出を指示する。
【0079】
全体制御部9は、この例のように、各要素や制御部を制御することで、点滴用医薬品容器200において、点滴溶液および薬剤を混合した調製薬剤を生成することの全体を制御する。
【0080】
全体制御部9に対して作業者による指示もしくはプログラミングにより、目的とする調製薬剤に合わせて、自動で必要な薬剤容器400の薬剤と点滴溶液が混合される。勿論、必要な薬剤量により混合される。人手の介在が無いので、正確かつ安全に調製薬剤の生成が行える。また、薬剤を点滴溶液に混合させる場合、点滴溶液を薬剤に混合させてから最終的に点滴用医薬品容器200に調製薬剤を生成させる場合などの、移動順序や混合手順などの違いにも対応できる。
【0081】
もちろん閉鎖空間の内部で薬剤や点滴溶液が移動するので、曝露の問題もない。
【0082】
これにより、従来の安全性、正確性、手間の困難性などの問題を解消できる。また、ロボットアームなどの大掛かりな装置を必要とせず、従来装置よりも安価でスピーディな調製が行える。
【0083】
(動作手順)
次に動作手順について説明する。ここでは、薬剤容器400が液体の薬剤を収容しており、薬剤容器400の薬剤を点滴用医薬品容器200に移動させて、点滴用医薬品容器200内部でこれらを混合して調製薬剤を生成する場合について説明する。
【0084】
図3は、本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、各要素のセット前の状態を示す模式図である。
図1で説明した自動調製装置1の各要素を備えている。セット前においては、接続器具100などの器具がまだ装着されていない状態である。
【0085】
図4は、本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、各要素がセットされた状態を示す模式図である。接続器具100を接続した点滴用医薬品容器200は、医薬品容器装着部2に装着されている。同じく接続器具100に接続された吸引器具300が、吸引器具装着部3に装着されている。すなわち、薬剤容器400以外に調製薬剤を生成するのに必要な点滴用医薬品容器200と吸引器具300とは、接続器具100に接続されて、自動調製装置1に装着された状態である。
【0086】
接続器具100は、
図2で説明したように、接続器具100にこれらの要素が接続されることで閉鎖空間が形成される。接続器具100は、移動方向を切り替えて、吸引器具300による吸引と吐出の移動方向をコントロールできる。例えば、薬剤容器400から吸引器具300への薬剤の移動、吸引器具300から点滴用医薬品容器200への薬剤の移動、点滴用医薬品容器200から吸引器具300への点滴溶液の移動、吸引器具300から薬剤容器400への点滴溶液の移動など、接続器具100は、移動方向を切り替えることができる。この切り替えは、移動制御部8の制御に基づいて行われる。
【0087】
図4の段階では、薬剤容器400は、薬剤容器配置部4に配置されている。ここで、薬剤容器配置部4は、複数の薬剤容器400を配置可能である。これにより、調製薬剤の生成に必要となる複数の種類の薬剤を収容する薬剤容器400をセットできる。例えば、薬剤A、薬剤Bを、混合に用いることを、薬剤容器配置部4への配置により設定できる。
【0088】
また、薬剤容器配置部4は、点滴用医薬品容器200に移動される薬剤の順序に応じて、薬剤容器400を並べていることも好適である。これにより、薬剤容器出し入れ制御部5は、順番に薬剤容器400を取り出すことで、生成のための順序を間違えることがない。
【0089】
各要素がセットされると、薬剤容器400の取り出しが開始される。
図5、
図6は、本発明の実施の形態1における自動調製装置の動作において、対象となる薬剤容器の取り出しと重量測定を示す模式図である。
【0090】
薬剤容器出し入れ制御部5は、薬剤配置部4に配置されている対象となる薬剤容器400を取り出す。
図5では、右端にある薬剤容器400が取り出されている。把持などにより、薬剤容器出し入れ制御部5は、薬剤容器400を掴んで移動させる。
【0091】
薬剤容器出し入れ制御部5は、
図6のように、取り出した薬剤容器400を重量測定部6にセットする。重量測定部6は、薬剤容器400の重量を測定する。この測定により、薬剤吸引前後の重量変化による適正量の移動も確認できる。
【0092】
図7、
図8、
図9は、本発明の実施の形態1における自動調製の動作において、薬剤容器の接続器具への移動を示す模式図である。
【0093】
重量測定の終わった薬剤容器400を、薬剤容器出し入れ制御部5は、薬剤容器接続制御部7に移動させる。
図7のように、薬剤容器出し入れ制御部5は、薬剤容器配置部4から重量測定の終わった薬剤容器400を取り出す。その後で、
図8に示すように、薬剤容器400を薬剤容器接続制御部7にセットする。
【0094】
薬剤容器接続制御部7は、セットされた薬剤容器400を接続器具100に接近させて接続させる。接続器具100の薬剤容器接続部140に、薬剤容器400を接続する。一例として、
図8のように、薬剤容器接続制御部7は、薬剤容器400を上昇させて接続器具100に接続させる。このとき、薬剤容器400と接続器具100との接続が適切に行われるように、画像処理などを用いて方向や位置を調整することもよい。
【0095】
図9は、この薬剤容器400が接続器具100に接続された状態を示している。接続されることで、各要素の全てが、接続器具100を介した閉鎖空間で接続された状態となる。
【0096】
図10は、本発明の実施の形態1における自動調製の動作における、薬剤容器から点滴用医薬品容器への薬剤移動を示す模式図である。
【0097】
図9のように、接続器具100に薬剤容器400が接続された状態になると、吸引器具300による薬剤容器400からの薬剤の吸引が可能となる。移動制御部8は、まず
図9の左側のように吸引器具300により、薬剤容器400から吸引器具300に薬剤を吸引させる。この吸引により、薬剤容器400の液体の薬剤が、吸引器具300に移動する。
【0098】
次いで、移動制御部8は、吸引器具300から点滴用医薬品容器200への方向に移動方向を切り替える。この状態で、移動制御部8は、吸引器具300の薬剤を点滴用医薬品容器200に吐出させる。吸引器具300の吐出動作により吐出させる。この吐出によって、薬剤は点滴用医薬品容器200に移動する。
【0099】
図9の右側はこの状態を示している。
図9の矢印はこの移動方向を示している。
【0100】
もちろん、薬剤容器配置部4に配置されていて調製薬剤に必要な他の薬剤についても、上記と同じ動作が行われる。
【0101】
こうして、点滴用医薬品容器200内部で、薬剤と点滴溶液が混合されて調製薬剤が生成される。点滴用医薬品容器200が患者に使用される。
【0102】
(薬剤容器の薬剤が固体の場合)
薬剤容器400が固体の薬剤を収容している場合には、次のような手順で動作する。薬剤が固体の場合には、まず吸引器具300が点滴溶液を吸引し、吸引した点滴溶液を薬剤容器400に吐出する。薬剤容器400内部では、固体の薬剤が点滴溶液により溶解される。これにより溶解薬剤が生成される。
【0103】
吸引器具300は、薬剤容器400から溶解薬剤を吸引する。吸引器具300内部には溶解薬剤が収容される。吸引器具300は、この溶解薬剤を点滴用医薬品容器200に吐出する。点滴用医薬品容器200内部で、点滴溶液と溶解薬剤とが混合されて、調製薬剤が生成される。
【0104】
図11は、本発明の実施の形態1における自動調製装置での吸引器具による点滴溶液の吸引を示す模式図である。
【0105】
図11に示されるように、吸引器具300と点滴用医薬品容器200とが接続されている。移動制御部8は、吸引器具300と点滴用医薬品容器200とを溶液移動可能な接続状態にする。吸引器具300は、点滴用医薬品容器200から点滴溶液を吸引する。吸引すると、吸引器具300内部に点滴溶液が収容される。
【0106】
図11の後で、
図12の動作に移行する。
図12は、本発明の実施の形態1における自動調製装置での吸引器具から薬剤容器に点滴溶液を吐出する状態を示す模式である。なお、
図11のように吸引器具300と点滴用医薬品容器200とが、接続器具100を介して接続されている状態の後で、
図12のように、接続器具100に薬剤容器400が接続されてもよい。あるいは、薬剤容器400が先に接続器具100に接続されていることでもよい。このとき、接続器具100に、吸引器具300、点滴用医薬品容器200,薬剤容器400が接続されることで、薬剤などの移動が開始される。
【0107】
図12では、薬剤容器400が接続器具100に接続される。さらに、接続器具100は、吸引器具300と薬剤容器400とを溶液移動可能な状態にする。吸引器具300は、収容している点滴溶液を薬剤容器400に吐出させる。この吐出により、固体の薬剤を収容する薬剤容器400に液体の点滴溶液が入ってくる。
【0108】
この結果、薬剤容器400内部で固体の薬剤が点滴溶液に溶解する。溶解薬剤が生成される。
【0109】
図12の後で、
図13の状態となって、薬剤容器400内部の溶解薬剤が吸引器具300により吸引される。吸引器具300内部に溶解薬剤が収容される。
図13は、本発明の実施の形態1における自動調製装置での溶解薬剤の吸引を示す模式図である。
【0110】
さらに、吸引器具300は、吸引した溶解薬剤を点滴用医薬品容器200に吐出する。これにより、点滴用医薬品容器200内部に溶解薬剤が入る。溶解薬剤は、点滴用医薬品容器200内部で点滴溶液と混合される。
【0111】
この混合により、調製薬剤が生成される。薬剤容器400が収容する薬剤が固体の場合でも、調製薬剤を生成することができる。
【0112】
また、複数の薬剤容器400からの薬剤を必要とする場合には、薬剤容器配置部4に配置された複数の薬剤容器400について、上述の動作が繰り返されればよい。このとき、固体の薬剤を収容している薬剤容器400、液体の薬剤を収容している薬剤容器400が混在している場合には、それぞれに合わせた動作がミックスして行われればよい。
【0113】
また、薬剤容器配置部4においては、混合する順に薬剤容器400が並んでいる。このため、薬剤容器出し入れ制御部5は、薬剤容器配置部4に並んでいる順番に応じて、薬剤容器400を取り出せばよい。これにより、調製薬剤の生成の正確性を高めることができる。
【0114】
なお、薬剤容器400の重量検査などは、
図5、
図6などで説明したのと同様であり、必要に応じて行われる。重量測定部6は、薬剤容器400の重量測定を介して、薬剤容器400から点滴用医薬品容器200に移動される薬剤の量を確認する。
【0115】
(陰圧空間)
接続器具100,吸引器具300,点滴用医薬品容器200,薬剤容器400を、陰圧環境に設置可能な陰圧空間500を更に備えることも好適である。
図12などには、陰圧空間500が示されている。これは、他の
図1~などでも同様に示されている。
【0116】
例えば、ドラフトなどの装置が陰圧空間500を構成すればよい。
【0117】
陰圧空間500内部で、自動調製装置1が動作することにより、衛生環境の維持や安全性の向上が実現できる。
【0118】
(実施の形態2)
【0119】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、種々の工夫やバリエーションについて説明する。
【0120】
(薬剤の検査)
薬剤容器配置部4は、薬剤容器400が収容する薬剤が、調製薬剤の生成の対象とする薬剤であるかを検査することも好適である。薬剤容器配置部4には、調製に用いる薬剤容器400が配置されている。
【0121】
薬剤容器配置部4は、薬剤容器400に貼付されたバーコード、二次元バーコードなどを光学的に読み取ったり、薬剤容器の色味を検出したり、文字をスキャンしたりして、薬剤が適切なものであるかを検査する。
【0122】
このような検査する機能を有することで、配置された薬剤容器400に間違いがないかを事前確認できる。これにより、誤った調製薬剤を生成することを防止できる。
【0123】
(攪拌部)
薬剤容器400,吸引器具300および点滴用医薬品容器200の少なくとも一つを攪拌させる攪拌部を更に備えることも好適である。例えば、次のような場合にそれぞれを攪拌させる。
【0124】
(1)固体の薬剤を収容する薬剤容器400に点滴溶液が供給された場合の薬剤容器400
(2)溶解薬剤を吸引した吸引器具300
(3)薬剤が混合された点滴用医薬品容器200
など、薬剤(溶解薬剤を含む)と点滴溶液とが混合される要素において、攪拌部は、攪拌を行うことが好適である。攪拌がされることにより、混合が適切に進む。混合での分散や均一性が高まり、調製薬剤の精度が高まる。
【0125】
攪拌部は、振動を付与することで、攪拌を行ってもよい。振動素子を備えることで、振動を付与できる。
【0126】
また、
図14のように装着されている吸引器具300,点滴用医薬品容器200を回転させることで攪拌がなされてもよい。
図14は、本発明の実施の形態2における回転による攪拌を示す模式図である。
【0127】
図14では、装着部が回転している。この回転による振動で攪拌させてもよい。装着部に回転部材が備わっており、この回転によって吸引器具300や点滴用医薬品容器200が回転させられてもよい。回転と振動とが混合して攪拌がなされてもよい。
【0128】
(検査部)
【0129】
点滴用医薬品容器200で生成される調製薬剤を検査する検査部を更に備えることも好適である。
図15は、本発明の実施の形態2における検査部を備える自動調製装置の模式図である。検査部12がさらに備わっている。
【0130】
検査部12は、点滴用医薬品容器200で生成された調製薬剤を検査する。例えば、光学検査や重量検査を通じて、適切に調製薬剤が生成されたかどうかを検査する。
【0131】
あるいは、画像検査により、その色味や透明度などから調製薬剤の適性を検査することでもよい。また、画像検査により、調製薬剤に異物が混入していないかなどを確認することもできる。
【0132】
このような検査機能が追加されることで、生成された調製薬剤の信頼性を更に高めることができる。
【0133】
検査部12は、検査結果が適切でない場合には、その結果を作業者に通知することも好適である。あるいは、検査結果が適切である(合格である)場合にも通知することもよい。音声・発光・表示機能などを用いて通知すればよい。表示部10に結果が表示されてもよい。
【0134】
この通知がなされることで、作業者は自動調製装置1の手順や動作方法の問題を見出して対応することができる。
【0135】
また、検査部12での検査結果を生成された点滴用医薬品容器200と紐づけることで、患者への投与におけるミスを防止することもできる。
【0136】
以上のように、実施の形態1~2における自動調製装置1は、接続器具100により点滴溶液や薬剤の曝露を防止できる。加えて、接続器具100で接続するだけで、移動制御部8により薬剤や点滴溶液の移動と、これによる調製薬剤の生成を行える。簡易で大型化することを防止して、自動での調製薬剤の生成を行える。結果として、作業者の負担や手間を削減できる。また、安全性も高めて、低コストでスピーディな自動調製を行うことができる。
【0137】
なお、実施の形態1~2で説明された自動調製装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0138】
1 自動調製装置
2 医薬品容器装着部
3 吸引器具装着部
4 薬剤容器配置部
5 薬剤容器出し入れ制御部
6 重量測定部
7 薬剤容器接続制御部
8 移動制御部
9 全体制御部
10 表示部
12 検査部
100 接続器具
200 点滴用医薬品容器
300 吸引器具
400 薬剤容器