(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077043
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】誤組み付け検知装置及び誤組み付け検知方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20190101AFI20240531BHJP
F16C 7/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G01M13/00
F16C7/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188847
(22)【出願日】2022-11-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 怜真
(72)【発明者】
【氏名】副島 純
(72)【発明者】
【氏名】大貫 健一
(72)【発明者】
【氏名】岩下 将吾
(72)【発明者】
【氏名】愛川 加奈
【テーマコード(参考)】
2G024
3J033
【Fターム(参考)】
2G024AA06
2G024BA08
2G024CA03
2G024CA12
2G024FA02
3J033AA04
3J033DA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロッド部とキャップ部との誤組み付けを簡単且つ精度よく検知できる必要がある。
【解決手段】誤組み付け検知装置10は、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する。誤組み付け検知装置は、ロッド部とキャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクを取得するトルク取得部60と、ボルトの締付角度を取得する角度取得部62と、締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、誤組み付けであると判定する判定部64とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する誤組み付け検知装置であって、
前記ロッド部と前記キャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクを取得するトルク取得部と、
前記締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得部と、
前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定部と、
を備える、誤組み付け検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の誤組み付け検知装置であって、
前記第1トルクは、前記ボルトの座面の着座に対応したトルクである、誤組み付け検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の誤組み付け検知装置であって、
前記ロッド部と前記キャップ部とは、複数の前記ボルトによって締め付けられ、
前記トルク取得部は、複数の前記ボルトのうちの第1ボルトの前記締付トルクである第1締付トルクと、複数の前記ボルトのうちの第2ボルトの前記締付トルクである第2締付トルクと、を取得し、
前記角度取得部は、前記第1ボルトの前記締付角度である第1締付角度と、前記第2ボルトの前記締付角度である第2締付角度と、を取得し、
前記判定部は、前記第1締付角度及び前記第2締付角度のいずれかが前記角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する、誤組み付け検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の誤組み付け検知装置であって、
前記判定部は、前記第1ボルト及び前記第2ボルトのうち先に前記第1トルクに達した方のボルトの前記締付角度が前記角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する、誤組み付け検知装置。
【請求項5】
コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する誤組み付け検知方法であって、
前記ロッド部と前記キャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得ステップと、
前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定ステップと、
を備える、誤組み付け検知方法。
【請求項6】
請求項5記載の誤組み付け検知方法であって、
前記角度取得ステップ及び前記判定ステップは、前記ボルトの本締め付け前の仮締め付け時に行われる、誤組み付け検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤組み付け検知装置及び誤組み付け検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクティングロッドをクランクシャフトに取り付ける場合、例えば、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られたロッド部とキャップ部とをクランクシャフトに組み付ける。この場合、ロッド部及びキャップ部の各々の破断面は均一にならない。そのため、互いに異なる鋳造体から得られたロッド部とキャップ部とを組み付ける、いわゆる誤組み付けが発生した場合、ロッド部の破断面とキャップ部の破断面とが精度よく噛み合わないという問題がある。
【0003】
特許文献1には、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部及びキャップ部の各々の破断面を研磨する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、ロッド部及びキャップ部の各々の破断面を均一にできるものの、研磨作業が面倒である。このような研磨作業を無くすためには、ロッド部とキャップ部との誤組み付けを簡単且つ精度よく検知できる必要がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する誤組み付け検知装置であって、前記ロッド部と前記キャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクを取得するトルク取得部と、前記締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得部と、前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定部と、を備える、誤組み付け検知装置である。
【0008】
本発明の他の態様は、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する誤組み付け検知方法であって、前記ロッド部と前記キャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得ステップと、前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定ステップと、を備える、誤組み付け検知方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロッド部とキャップ部との誤組み付けを簡単且つ精度よく検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る誤組み付け検知装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、コネクティングロッドを得るための鍛造体の平面図である。
【
図3】
図3は、コネクティングロッドと2本のボルトとを示す平面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る誤組み付け検知方法を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1ボルト及び第2ボルトの仮締め付けの説明図である。
【
図6】
図6は、ロッド部とキャップ部とが正しく組み付けられた場合の回転角度と締結トルクとの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ロッド部とキャップ部とが誤組み付けされた場合の回転角度と締結トルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図3に示すように、誤組み付け検知装置(以下、単に「検知装置10」という)は、コネクティングロッド12を得るための鋳造体14を破断して得られるロッド部16とキャップ部18との誤組み付けを検知する。
【0012】
図2及び
図3に示すように、コネクティングロッド12を得るための鋳造体14は、例えば、アルミニウム合金の鋳造によって成形された一体成形品である。鋳造体14は、コネクティングロッド12に対応した形状及び大きさを有する。
【0013】
図2において、鋳造体14は、一方向に延在している。鋳造体14の一端部には、円形状の小径孔20を有する小端部22が設けられている。鋳造体14の他端部には、円形状の大径孔24を有する大端部26が設けられている。大端部26には、鋳造体14の延在方向に沿って延びた2つのねじ孔28が形成されている。以下、2つのねじ孔28のうちの一方を「第1ねじ孔28a」といい、2つのねじ孔28のうちの他方を「第2ねじ孔28b」ということがある。第1ねじ孔28aと第2ねじ孔28bとは、鋳造体14の幅方向に大径孔24を挟むように位置する。
【0014】
図2及び
図3に示すように、コネクティングロッド12は、鋳造体14の大端部26を破断して鋳造体14の延在方向に二分割することによって得られる。具体的には、コネクティングロッド12は、ロッド部16とキャップ部18とを備える。ロッド部16は、コネクティングロッド12の大部分を形成する。
【0015】
ロッド部16の一端部には、上述した小端部22が設けられている。コネクティングロッド12の小端部22には、図示しないエンジンのピストンが連結可能である。ロッド部16の他端部には、接続端部30が設けられている。
【0016】
キャップ部18は、2本のボルト32によってロッド部16の接続端部30に接続可能である。以下、2本のボルト32のうち一方を「第1ボルト32a」といい、2本のボルト32のうちの他方を「第2ボルト32b」ということがある。接続端部30とキャップ部18とは、互いに接続された状態で、上述した大端部26を形成する。大端部26には、クランクシャフト100が連結可能である(
図5参照)。
【0017】
接続端部30は、鋳造体14の大端部26を破断することによって形成された第1破断面34を有する。接続端部30には、ロッド側第1孔36aとロッド側第2孔36bとが形成されている。ロッド側第1孔36aとロッド側第2孔36bとは、第1破断面34に開口する。
【0018】
キャップ部18は、鋳造体14の大端部26を破断することによって形成された第2破断面38を有する。第2破断面38は、第1破断面34の形状に対応する形状を有する。キャップ部18には、キャップ側第1孔40aとキャップ側第2孔40bとが形成されている。キャップ側第1孔40aとキャップ側第2孔40bとは、第2破断面38に開口する。
【0019】
第1破断面34と第2破断面38とを合わせた状態で、ロッド側第1孔36aとキャップ側第1孔40aとは、互いに連通して第1ねじ孔28aを形成する。第1ねじ孔28aには、第1ボルト32aが螺合可能である。また、ロッド側第2孔36bとキャップ側第2孔40bとは、互いに連通して第2ねじ孔28bを形成する。第2ねじ孔28bには、第2ボルト32bが螺合可能である。
【0020】
このように形成されるコネクティングロッド12では、
図5に示すように、ロッド部16とキャップ部18とでクランクシャフト100を挟み込んだ状態で、ロッド部16とキャップ部18とを2本のボルト32で締め付けることにより大端部26にクランクシャフト100を取り付ける。大端部26にクランクシャフト100を取り付ける際に、互いに異なる鋳造体14から得られたロッド部16とキャップ部18とが組み付けられる可能性がある。このような事象は、誤組み付けと称される。
【0021】
ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされた場合、第1破断面34の形状と第2破断面38の形状とが互いに対応していないため、第1破断面34と第2破断面38とが密着し難い。そのため、ロッド部16とキャップ部18とを組み付けた際に、大端部26とクランクシャフト100との間に必要以上の隙間が形成され得る。本実施形態の検知装置10は、このようなロッド部16とキャップ部18との誤組み付けを検知し得る。
【0022】
図1に示すように、検知装置10には、締結装置42が設けられる。
図1及び
図5において、締結装置42は、第1ボルト32aを回転させるための第1締結部44aと、第2ボルト32bを回転させるための第2締結部44bとを有する。第1締結部44a及び第2締結部44bの各々は、いわゆるナットランナーとして構成され得る。
【0023】
第1締結部44aは、第1トルクセンサ46aと第1角度センサ48aとを含む。第1トルクセンサ46aは、ロッド部16とキャップ部18とを2本のボルト32で締め付ける際、第1ボルト32aの締付トルク(「第1締付トルク」という)を検出する。第1トルクセンサ46aは、検出した第1締付トルク(トルク検出信号)を検知装置10に供給する。第1角度センサ48aは、第1ボルト32aの回転角度(「第1回転角度」という)を検出する。第1角度センサ48aは、例えば、エンコーダである。第1角度センサ48aは、検出した第1回転角度(角度検出信号)を検知装置10に供給する。
【0024】
第2締結部44bは、第2トルクセンサ46bと第2角度センサ48bとを含む。第2トルクセンサ46bは、ロッド部16とキャップ部18とを2本のボルト32で締め付ける際、第2ボルト32bの締付トルク(「第2締付トルク」という)を検出する。第2トルクセンサ46bは、検出した第2締結トルク(トルク検出信号)を検知装置10に供給する。第2角度センサ48bは、第2ボルト32bの回転角度(「第2回転角度」という)を検出する。第2角度センサ48bは、例えば、エンコーダである。第2角度センサ48bは、検出した第2回転角度(角度検出信号)を検知装置10に供給する。
【0025】
図1に示すように、検知装置10は、演算部50と、記憶部52と、操作部54と、表示部56とを備える。演算部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(processor)、すなわち、処理回路(processing circuitry)によって構成される。
【0026】
演算部50は、締結制御部58と、トルク取得部60と、角度取得部62と、判定部64と、表示制御部66とを有する。トルク取得部60と、角度取得部62と、判定部64と、締結制御部58と、表示制御部66とは、記憶部52に記憶されているプログラムが演算部50によって実行されることによって実現され得る。
【0027】
なお、トルク取得部60、角度取得部62、判定部64、締結制御部58、及び表示制御部66の少なくとも一部が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって実現されるようにしてもよい。また、トルク取得部60、角度取得部62、判定部64、締結制御部58、及び表示制御部66の少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されるようにしてもよい。
【0028】
記憶部52は、不図示の揮発性メモリと、不図示の不揮発性メモリとによって構成される。揮発性メモリとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用され、処理または演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用され、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶部52の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられていてもよい。
【0029】
操作部54は、ユーザが検知装置10を操作する際に用いられる。操作部54としては、キーボード、マウス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
表示部56には、不図示の表示素子が備えられている。表示素子としては、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス表示素子等が用いられる。このような表示素子が備えられた不図示のタッチパネルによって、操作部54と表示部56とが構成されるようにしてもよい。
【0031】
締結制御部58は、締結装置42の動作の制御を司る。締結制御部58は、締結装置42に制御信号を適宜供給する。締結制御部58は、第1締結部44aの動作を制御して、第1ボルト32aを締め付ける。また、締結制御部58は、第2締結部44bの動作を制御して、第2ボルト32bを締め付ける。
【0032】
トルク取得部60は、第1トルクセンサ46a及び第2トルクセンサ46bから供給された第1締結トルク及び第2締結トルク(トルク検出信号)を取得する。
【0033】
角度取得部62は、締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際のボルト32の回転角度である締付開始角度を取得する。また、角度取得部62は、締付トルクが予め決定された第2トルクに達した際のボルト32の回転角度である締付終了角度を取得する。角度取得部62は、締付開始角度と締付終了角度との差分である締付角度を取得する。角度取得部62は、例えば、締付終了角度から締付開始角度を減算することにより締付角度を取得し得るが、これに限定されない。
【0034】
第1トルク及び第2トルクは、予め決定され、記憶部52に記憶されている。第1トルクは、ボルト32の座面の着座に対応した着座トルク(トルク閾値)である。第1トルクの大きさは、適宜設定可能である。第2トルクは、第1トルクよりも大きい制御トルク(トルク閾値)である。
【0035】
第2トルクは、例えば、第1トルクの2倍以上の大きさに設定される。第2トルクは、ボルト32の本締めの前に行われる仮締めの際の目標トルクに設定し得る。ボルト32の仮締めは、本締めの際にボルト32に目標とする軸力が作用するように、ボルト32の座面及びねじ山等をなじませるために行われる。第2トルクの大きさは、適宜設定可能である。
【0036】
ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされた場合の締付角度は、ロッド部16とキャップ部18とが正しく組み付けされた場合(誤組み付けではない場合)の締付角度よりも大きい。すなわち、ロッド部16とキャップ部18とが正しく組み付けされている場合、ボルト32の座面が着座した際に第1破断面34と第2破断面38とが互いに密着する。そのため、ロッド部16とキャップ部18とが正しく組み付けされた場合には、締付トルクが第2トルクに達するまでに要する回転角度は比較的小さい。一方、ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされていた場合、ボルト32の座面が着座した際に第1破断面34と第2破断面38とが互いに密着せず、ボルト32の締め付けが進行するに応じて第1破断面34と第2破断面38とが変形していく。そのため、ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされた場合には、締付トルクが第2トルクに達するまでに要する回転角度が比較的大きい。本願発明者等の実験等によれば、誤組み付けされた場合の締結角度は、正しく組み付けされた場合の締結角度の例えば2倍以上となった。
【0037】
判定部64は、角度取得部62によって取得された締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、誤組み付けであると判定する。また、判定部64は、角度取得部62によって取得された締結角度が角度閾値以下である場合に、ロッド部16とキャップ部18とは正しい組み付けである(誤組み付けではない)と判定する。
【0038】
角度閾値は、予め決定され、記憶部52に記憶されている。角度閾値は、ロッド部16とキャップ部18とが正しく組み付けられた場合の締付角度よりも大きく、ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされた場合の締付角度よりも小さい値に設定される。
【0039】
表示制御部66は、表示部56の表示の制御を司る。表示制御部66は、判定部64による判定結果等を、表示部56の図示しない表示画面に表示する。
【0040】
次に、本実施形態に係る誤組み付け検知方法について
図4を用いて説明する。
【0041】
ステップS1において、鋳造体14を破断することによりロッド部16とキャップ部18とを用意する。また、ロッド部16とキャップ部18とでクランクシャフト100を挟み込んだ状態で、コネクティングロッド12の第1ねじ孔28aに第1ボルト32aを挿入すると共に第2ねじ孔28bに第2ボルト32bを挿入する。この後、ステップS2に遷移する。
【0042】
ステップS2において、
図5に示すように、締結装置42は、第1ボルト32a及び第2ボルト32bの仮締め付けを行う。第1締結部44aが第1ボルト32aを締め付ける際、第1トルクセンサ46aが第1締結トルクを検知装置10に供給すると共に第1角度センサ48aが第1回転角度を検知装置10に供給する。また、第2締結部44bが第2ボルト32bを締め付ける際、第2トルクセンサ46bが第2トルクを検知装置10に供給すると共に第2角度センサ48bが第2回転角度を検知装置10に供給する。トルク取得部60は、第1締結トルク及び第2締結トルクを取得する。角度取得部62は、第1回転角度及び第2回転角度を取得する。なお、第1ボルト32aの締め付けと第2ボルト32bの締め付けとは、同時に行われる。
【0043】
本実施形態において、演算部50は、
図6及び
図7に示すようなグラフを作成し得る。
図6及び
図7において、実線は、第1ボルト32aの第1回転角度と第1締結トルクとの関係を示すグラフであり、一点鎖線は、第2ボルト32bの第2回転角度と第2締結トルクとの関係を示すグラフである。
図6は、ロック部とキャップ部18とが正しく組み付けられた場合のグラフである。
図7は、ロック部とキャップ部18とが誤組み付けされた場合のグラフである。すなわち、ロック部とキャップ部18とが正しく組み付けられている場合には
図6のグラフが作成され、ロック部とキャップ部18とが誤組み付けされている場合には
図7のグラフが作成される。これらグラフから理解されるように、ボルト32の仮締め付けにおいて、ボルト32の回転角度が大きくなると締結トルクが上昇する。表示制御部66は、演算部50が作成したグラフをリアルタイムに表示部56の不図示の表示画面に表示し得る。この後、ステップS3に遷移する。
【0044】
図4のステップS3において、判定部64は、締結トルクが予め決定された第1トルクに達したか否かを判定する。締結トルクが第1トルクに達した場合(ステップS3においてYES)、ステップS4に遷移する。締結トルクが第1トルクに達していない場合(ステップS3においてNO)、ステップS3が繰り返される。
【0045】
第1締結トルクは、第1ボルト32aの座面が着座した後で第1トルクに達する。第2締結トルクは、第2ボルト32bの座面が着座した後で第1トルクに達する。第1ボルト32aと第2ボルト32bとを同時に締め付けた場合であっても、第1ボルト32aの座面が着座するタイミングと第2ボルト32bの座面が着座するタイミングとは、僅かにずれ得る。そのため、2本のボルト32のうち先に着座した方のボルト32の締結トルクが先に第1トルクに達する。
【0046】
角度取得部62は、第1締結トルクが第1トルクに達した際の第1回転角度を第1締付開始角度として取得する。また、角度取得部62は、第2締結トルクが第1トルクに達した際の第2回転角度を第2締付開始角度として取得する。
図6及び
図7では、第1締付開始角度と第2締付開始角度とを同じ角度(基準角度)として表示している。
図6及び
図7に示す例では、第2ボルト32bは第1ボルト32aよりも先に着座している。換言すれば、第2締結トルクは第1締結トルクよりも先に第1トルクに達する。
【0047】
ステップS4において、判定部64は、締結トルクが予め決定された第2トルクに達したか否かを判定する。締結トルクが第2トルクに達した場合(ステップS4においてYES)、ステップS5に遷移する。締結トルクが第2トルクに達していない場合(ステップS4においてNO)、ステップS4が繰り返される。
【0048】
ステップS5において、角度取得部62は、締付角度を取得する。より具体的に、角度取得部62は、第1締付終了角度と第1締結開始角度との差分である第1締付角度を取得する。なお、第1締結終了角度は、第1締結トルクが第2トルクに達した際の第1回転角度である。第1回転角度は、上述したように、第1角度センサ48aが取得する第1ボルト32aの回転角度である。
【0049】
また、角度取得部62は、第2締付終了角度と第2締結開始角度との差分である第2締付角度を取得する。なお、第2締結終了角度は、第2締結トルクが第2トルクに達した際の第2回転角度である。第2回転角度は、上述したように、第2角度センサ48bが取得する第2ボルト32bの回転角度である。
図6及び
図7では、第2ボルト32bが第1ボルト32aよりも先に着座するため、第2締付角度は第1締付角度よりも大きくなる。この後、ステップS6に遷移する。
【0050】
ステップS6において、締結制御部58は、締結装置42の動作を停止する。この段階で、ボルト32の仮締め付けが完了する。この後、ステップS7に遷移する。
【0051】
ステップS7において、判定部64は、締付角度が角度閾値よりも大きいか否かを判定する。より具体的には、判定部64は、第1締付角度及び第2締付角度のいずれかが角度閾値よりも大きいか否かを判定する。判定部64は、2本のボルト32のうち先に第1トルクに達した方のボルト32の締付角度が角度閾値よりも大きいか否かを判定し得る。
図6及び
図7の例では、第2締付角度が角度閾値よりも大きいか否かを判定する。なお、ステップS7において、判定部64は、第1締付角度及び第2締付角度の両方が角度閾値よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0052】
締付角度が角度閾値よりも以下である場合(ステップS7においてNO)、ステップS8に遷移して、判定部64は、誤組み付けではないと判定する。この後、ステップS9に遷移する。
【0053】
ステップS9において、締結制御部58は、締結装置42の動作を制御して、第1ボルト32a及び第2ボルト32bを弛める。この後、ステップS10に遷移する。
【0054】
ステップS10において、締結制御部58は、締結装置42の動作を制御して、第1ボルト32a及び第2ボルト32bの本締め付けを行う。これにより、コネクティングロッド12の大端部26に対するクランクシャフト100の取り付けが完了する。この後、
図4に示す処理が完了する。
【0055】
締結角度が角度閾値よりも大きい場合(ステップS7においてYES)、ステップS11に遷移する。ステップS11において、判定部64は、ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けであると判定する。この場合、締結制御部58は、第1ボルト32a及び第2ボルト32bの本締め付けを行わない。また、表示制御部66は、表示部56の不図示の表示部56に誤組み付けである旨を表示し得る。これにより、ユーザは、第1ボルト32a及び第2ボルト32bの本締め付けが行われる前段階において、ロッド部16とキャップ部18との誤組み付けを知ることができる。この後、
図4に示す処理が完了する。
【0056】
このような誤組み付け検知方法において、ステップS3~ステップS5は角度取得ステップであり、ステップS7及びステップS11は、判定ステップである。
【0057】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0058】
本願発明者は、鋭意検討により、ロッド部16とキャップ部18とが誤組み付けされた場合、正しく組み付けられた場合と比較して、締付角度が大きくなることを突き止めた。このような現象を利用して、本実施形態では、締付角度が角度閾値よりも大きい場合にロッド部16とキャップ部18との誤組み付けであると判定している。これにより、ロッド部16とキャップ部18との誤組み付けを簡単且つ精度よく検知できる。
【0059】
本発明において、ステップS5は、ステップS6の後に行われてもよい。第1トルクは、ボルトの座面が着座する前のトルクに設定されてもよい。誤組み付け検知方法は、コネクティングロッドをクランクシャフトに取り付ける工程とは別に実施してもよい。
【0060】
[実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。
【0061】
本発明の一態様は、コネクティングロッド(12)を得るための鋳造体(14)を破断することにより得られるロッド部(16)とキャップ部(18)との誤組み付けを検知する誤組み付け検知装置(10)であって、前記ロッド部と前記キャップ部とをボルト(32)で締め付ける際の締付トルクを取得するトルク取得部(60)と、前記締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得部(62)と、前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定部(64)と、を備える誤組み付け装置である。
【0062】
このような構成によれば、締付角度が角度閾値よりも大きい場合にロッド部とキャップ部との誤組み付けであると判定しているため、ロッド部とキャップ部との誤組み付けを簡単且つ精度よく検知できる。
【0063】
上記の誤組み付け検知装置において、前記第1トルクは、前記ボルトの座面の着座に対応したトルクであってもよい。
【0064】
このような構成によれば、ロッド部の破断面とキャップ部の破断面とが互いに接触してからの締付角度を取得できる。
【0065】
上記の誤組み付け検知装置において、前記ロッド部と前記キャップ部とは、複数の前記ボルトによって締め付けられ、前記トルク取得部は、複数の前記ボルトのうちの第1ボルト(32a)の前記締付トルクである第1締付トルクと、複数の前記ボルトのうちの第2ボルト(32b)の前記締付トルクである第2締付トルクと、を取得し、前記角度取得部は、前記第1ボルトの前記締付角度である第1締付角度と、前記第2ボルトの前記締付角度である第2締付角度と、を取得し、前記判定部は、前記第1締付角度及び前記第2締付角度のいずれかが前記角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定してもよい。
【0066】
このような構成によれば、ロッド部とキャップ部との誤組み付けを精度よく判定できる。
【0067】
上記の誤組み付け検知装置において、前記判定部は、前記第1ボルト及び前記第2ボルトのうち先に前記第1トルクに達した方のボルトの前記締付角度が前記角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定してもよい。
【0068】
このような構成によれば、ロッド部とキャップ部との誤組み付けをより簡単に判定できる。
【0069】
本発明の他の態様は、コネクティングロッドを得るための鋳造体を破断することにより得られるロッド部とキャップ部との誤組み付けを検知する誤組み付け検知方法であって、前記ロッド部と前記キャップ部とをボルトで締め付ける際の締付トルクが予め決定された第1トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付開始角度と、前記締付トルクが前記第1トルクよりも大きい予め決定された第2トルクに達した際の前記ボルトの回転角度である締付終了角度との差分である締付角度を取得する角度取得ステップ(S3~S5)と、前記締付角度が予め決定された角度閾値よりも大きい場合に、前記誤組み付けであると判定する判定ステップ(S7、S11)と、を備える誤組み付け方法である。
【0070】
このような方法によれば、上述した誤組み付け装置と同様の効果を奏する。
【0071】
上記の誤組み付け検知方法において、前記角度取得ステップ及び前記判定ステップは、前記ボルトの本締め付け前の仮締め付け時に行われてもよい。
【0072】
このような構成によれば、コネクティングロッドにクランクシャフトを取り付ける際にロッド部とキャップ部との誤組み付けを効率よく判定できる。
【0073】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0074】
10…検知装置
12…コネクティングロッド
14…鋳造体
16…ロッド部
18…キャップ部
32…ボルト
32a…第1ボルト
32b…第2ボルト
60…トルク取得部
62…角度取得部
64…判定部