(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077046
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】紙製液体包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 77/30 20060101AFI20240531BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B65D77/30 C
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188853
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】浜村 政博
(72)【発明者】
【氏名】堀越 達也
(72)【発明者】
【氏名】山下 吉美
【テーマコード(参考)】
3E067
4F100
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】ヒートシール強度に優れた、紙製液体包装袋を提供すること。
【解決手段】紙基材上にバリア塗工層を備えるバリア原紙、ナイロン層、熱可塑性樹脂層をこの順に有し、前記ナイロン層と前記熱可塑性樹脂層とが、前記バリア原紙のバリア塗工層側に設けられている紙製バリア材料からなり、
前記紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下である紙製液体包装袋。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上にバリア塗工層を備えるバリア原紙、ナイロン層、熱可塑性樹脂層をこの順に有し、前記ナイロン層と前記熱可塑性樹脂層とが、前記バリア原紙のバリア塗工層側に設けられている紙製バリア材料からなり、
前記紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下であることを特徴とする紙製液体包装袋。
【請求項2】
前記ナイロン層の厚さが、5μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紙製液体包装袋。
【請求項3】
前記ナイロン層が、ナイロン6またはナイロン66を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製液体包装袋。
【請求項4】
前記紙製バリア材料の厚さが、200μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製液体包装袋。
【請求項5】
前記紙基材と前記ナイロン層との間、前記ナイロン層と前記熱可塑性樹脂層との間の少なくとも一方に、接着剤層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の紙製液体包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製液体包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
詰替え用のシャンプー、リンス、液体洗剤等の容器として、樹脂フィルムを主体とする液体包装袋が用いられている。また、樹脂フィルムを主体とする液体包装袋は、醤油、ソース、わさび等の調味料、ジュース等の飲料等の容器としても用いられている。液体包装袋は、フィルムの厚さが薄いため、剛直なプラスチック製容器と比べると、プラスチックの使用量を減らすことができる。
【0003】
一方、さらにプラスチック使用量を削減した、紙製包装材料も知られている。例えば、本出願人は、軟包装体用途に用いることのできる紙製バリア材料を提案している(特許文献1)。
これらの紙製バリア材料を用いて包装袋(軟包装体)を成形することは可能であるが、液体を充填することは困難であった。これは、液体を充填した包装袋は、衝撃等が加わった際に内部の圧力が高まるが、紙製バリア材料からなる包装袋は、衝撃が加わった際の圧力に耐えきれずに破袋が生じやすいためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒートシール強度に優れた、紙製液体包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.紙基材上にバリア塗工層を備えるバリア原紙、ナイロン層、熱可塑性樹脂層をこの順に有し、前記ナイロン層と前記熱可塑性樹脂層とが、前記バリア原紙のバリア塗工層側に設けられている紙製バリア材料からなり、
前記紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下であることを特徴とする紙製液体包装袋。
2.前記ナイロン層の厚さが、5μm以上30μm以下であることを特徴とする1.に記載の紙製液体包装袋。
3.前記ナイロン層が、ナイロン6またはナイロン66を主成分とすることを特徴とする1.または2.に記載の紙製液体包装袋。
4.前記紙製バリア材料の厚さが、200μm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製液体包装袋。
5.前記紙基材と前記ナイロン層との間、前記ナイロン層と前記熱可塑性樹脂層との間の少なくとも一方に、接着剤層を有することを特徴とする1.または2.に記載の紙製液体包装袋。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙製液体包装袋は、紙を主体とするため、従来の樹脂フィルムを主体とする液体包装袋と比較して、化石資源使用量を削減することができる。本発明の紙製液体包装袋は、ヒートシール強度に優れており、衝撃が加わっても破袋しにくい。本発明の紙製液体包装袋は、バリア性に優れており、調味料、飲料、ゼリー等の飲食物を充填しても風味が損なわれにくい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の紙製液体包装袋は、紙基材上にバリア塗工層を備えるバリア原紙、ナイロン層、熱可塑性樹脂層をこの順に有し、ナイロン層と熱可塑性樹脂層とがバリア原紙のバリア塗工層側に設けられている紙製バリア材料からなり、紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下である。なお、本発明において、紙製液体包装袋を構成する紙製バリア材料は、バリア原紙、ナイロン層、熱可塑性樹脂層をこの順に有するものであればよく、それぞれの層間やバリア原紙のナイロン層とは反対側にその他の層を有していてもよい。紙製バリア材料が有することのできるその他の層としては、特に制限されないが、例えば、接着層、インク受容層、蒸着フィルム等のバリア性フィルム層、(包装袋外側の)熱可塑性樹脂層等が挙げられる。
【0009】
バリア原紙は、紙基材上にバリア塗工層を備える。
(紙基材)
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、これらの1種、または2種以上を配合して用いることができる。これらの中でも、紙基材中への異物混入が発生し難いこと、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
【0010】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を必要に応じて使用することができる。
また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0011】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0012】
紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
このようにして得られる紙基材としては、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知のものが例示可能である。
【0013】
紙基材の坪量は、30g/m2以上110g/m2以下である。坪量が30g/m2未満では、強度が不足する場合があり、坪量が110g/m2を超えるとコシが強くなり、折り曲げ部分の反発力が強くなるため、折り曲げ部分のヒートシール強度が不足する場合がある。紙基材の坪量は、35g/m2以上であることが好ましく、40g/m2以上であることがより好ましく、90g/m2以下であることが好ましく、70g/m2以下であることがより好ましい。
【0014】
(バリア塗工層)
本発明のバリア原紙は、バリア塗工層を備える。バリア塗工層は、バリア塗工層形成用の塗料を各種の塗工装置で塗工し、乾燥することにより形成することができる。
バリア塗工層は、水蒸気バリア性、ガス(酸素)バリア性のいずれかを有することが好ましく、少なくともガスバリア性を有することがより好ましく、水蒸気バリア性とガスバリア性の両方を有することがさらに好ましい。バリア塗工層が、水蒸気バリア性とガスバリア性の両方を併せ持つ場合、水蒸気バリア塗工層とガスバリア塗工層とを有することが、ガスバリア性と水蒸気バリア性とを両立した紙製バリア材料が得られるため好ましい。以下、水蒸気バリア塗工層を水蒸気バリア層、ガスバリア塗工層をガスバリア層ともいう。
【0015】
水蒸気バリア層とガスバリア層の積層順については特に限定されないが、水蒸気バリア性とガスバリア性がより向上するため、紙基材、水蒸気バリア層、ガスバリア層の順に積層されていることが好ましい。紙基材、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア材料が、より優れた水蒸気バリア性およびガスバリア性を併せ持つ理由は次のように推測される。ガスバリア層に用いられるガスバリア性を有する樹脂としては後述するように水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子が一般的に用いられる。そのため、紙基材上にガスバリア層、水蒸気バリア層をこの順に設けた場合、紙基材中の水分や紙基材を経由して浸透する空気中の水分などにより、ガスバリア層中の水溶性高分子や水分散性高分子などの高分子が劣化しやすくなる。一方、水蒸気バリア層は、水蒸気を防ぐために耐水性の良好な樹脂を含有するが、紙基材上に、水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有することにより、水蒸気バリア層が紙基材側からの水分によるガスバリア層への影響(劣化)を効果的に抑制することができる。このため、特に水蒸気バリア層、ガスバリア層をこの順に有する紙製バリア材料は、良好な水蒸気バリア性およびガスバリア性を発揮することができる。
【0016】
本発明のバリア原紙が、水蒸気バリア塗工層とガスバリア塗工層とを備える場合、いずれか一方のバリア塗工層が顔料を含有することが好ましく、少なくとも紙基材からより遠いバリア塗工層が顔料を含有することが、耐屈曲性が向上して折り曲げ等によるバリア性の低下を防ぐことができるためより好ましい。すなわち、紙基材上に、水蒸気バリア塗工層、ガスバリア塗工層をこの順に有するバリア原紙の場合、耐屈曲性の点からは、ガスバリア塗工層が顔料を含有することが好ましい。また、バリア性の点からは、ガスバリア塗工層と水蒸気バリア塗工層の両方が顔料を含有することがより好ましい。
【0017】
(水蒸気バリア塗工層)
水蒸気バリア塗工層は、少なくとも水蒸気バリア性樹脂を含有する。
水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、水蒸気バリア性の点からスチレン・ブタジエン系合成接着剤を使用することが好ましい。
本発明においてスチレン・ブタジエン系合成接着剤とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。目的によっては、両性またはカチオン性界面活性剤を用いても良い。
【0018】
なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子を、水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
【0019】
水蒸気バリア層は、顔料を含むことができる。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、水蒸気バリア性の向上と、ガスバリア層を形成するための塗料の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリンがより好ましい。また、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」とも言う。)が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する無機顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、水蒸気バリア層中を水蒸気分子が迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、結果として水蒸気バリア性の改善効果が小さくなる場合がある。
【0020】
本発明において、水蒸気バリア性の向上とガスバリア層との密着性の点から、水蒸気バリア層は、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料に加え、平均粒子径が5μm以下の顔料を含有することが好ましい。平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0021】
平均粒子径が5μm以下の顔料を含有することにより、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料により形成された水蒸気バリア層中の空隙をより埋めることができるため、さらに優れた水蒸気バリア性が発現する。つまり、水蒸気バリア層に平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で大きな平均粒子径の無機顔料により形成される空隙に小さな平均粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気はこれらの顔料を迂回して通過するために移動する距離が長くなり、平均粒子径が異なる顔料を含有していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を発揮するものと推測される。
平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が水蒸気バリア層中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。一方、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より多いと、水蒸気バリア層中の大きな平均粒子径の無機顔料が形成する空隙を平均粒子径が5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性の向上が期待できない。
【0022】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で顔料100重量部に対して、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で5重量部以上200重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で10重量部以上150重量部以下である。なお、顔料は、水蒸気バリア層の任意成分であり、含まない(0重量部)こともできる。
また、水蒸気バリア層には、上記した水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0023】
水蒸気バリア層には、多価金属塩などに代表される架橋剤を配合することができる。架橋剤は、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加し、水蒸気バリア層がより緻密な構造となり、より良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
架橋剤の種類は特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸等の1種または2種以上を使用することができる。
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られない場合がある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となる場合がある。
【0024】
水蒸気バリア層用の塗料に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗料へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると、架橋剤と極性溶媒が結合を作るため、塗料へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらず、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成される。
【0025】
水蒸気バリア性向上の観点から、水蒸気バリア層に撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノインなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤などを例示することができ、単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、水蒸気バリア性能発現の観点からパラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。
【0026】
撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、乾燥重量で、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、撥水剤1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部未満であると、水蒸気バリア性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、100重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成し難くなるため、ガスバリア性が低下する場合がある。
水蒸気バリア層表面の濡れ張力は、水蒸気バリア性の向上とガスバリア層との密着性から、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
【0027】
(ガスバリア塗工層)
ガスバリア塗工層は、少なくともガスバリア性樹脂を含有する。
ガスバリア性樹脂としては、水溶性高分子、または、水懸濁性高分子を用いることができ、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系樹脂、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がより好ましく、重合度が400~1700であるポリビニルアルコール系樹脂がさらに好ましく、重合度が800~1400であるポリビニルアルコール系樹脂がよりさらに好ましい。
【0028】
ガスバリア層は、顔料を含むことができる。顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコアーシェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの中で、顔料は、平均粒子径が3μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料であることが好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の扁平顔料であることがより好ましい。
【0029】
ガスバリア層に顔料、特に扁平顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過するために移動する距離が長くなる。このため、顔料を含有するガスバリア層は、顔料を含有しないガスバリア層と比較して、ガスバリア性に優れ、特に高湿度雰囲気下で優れたガスバリア性を発揮する。
ガスバリア層における顔料の配合量は、乾燥重量で、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、顔料90重量部以下であることが好ましい。なお、顔料は、ガスバリア層の任意成分であり、含まない(0重量部)こともできる。ガスバリア層の顔料配合量をこの範囲内とすることにより、優れた耐屈曲性を発揮することができる。また、ガスバリア層が顔料を含有することにより、ガスバリア層と接する層との密着性が向上する。顔料の配合量が少なくなると、耐屈曲性は向上するが、ガスバリア性は低下する。そのため、顔料の配合量は、紙製バリア材料に求めるガスバリア性と耐屈曲性とのバランス等に応じて調整することができ、例えば、ガスバリア性樹脂100重量部に対し、5重量部以上80重量部以下とすることができる。
ガスバリア層には、上記した水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0030】
ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は、ガスバリア層に含有される水溶性高分子と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量は、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られない場合がある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となる場合がある。
【0031】
ガスバリア層は、界面活性剤を含有することが、ガスバリア層と水蒸気バリア層との密着性が向上し、バリア性が向上するため好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものではなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でもよく、単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
水蒸気バリア層の上にガスバリア層を設ける場合、水蒸気バリア層との密着性の観点から、ガスバリア層用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することがより好ましい。また、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して、ガスバリア層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層とガスバリア層との密着性の観点から好ましい。
【0032】
(水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工)
水蒸気バリア層、ガスバリア層の形成用塗料の紙基材への塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられるが、水系塗工であることが好ましい。
水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0033】
本発明において、水蒸気バリア層の塗工量は、乾燥重量で3g/m2以上50g/m2以下とすることが好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が3g/m2未満であると、紙基材を塗料が完全に被覆することが困難となり、十分な水蒸気バリア性が得られなくなることや、ガスバリア層用の塗料が紙基材まで浸透して均一なガスバリア塗工層が形成できずガスバリア性が不十分となる場合がある。一方、水蒸気バリア層の塗工量が50g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。水蒸気バリア層の塗工量は、5g/m2以上がより好ましく、7g/m2以上がさらに好ましく、また、40g/m2以下がより好ましく、30g/m2以下がさらに好ましく、20g/m2以下がよりさらに好ましい。
水蒸気バリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0034】
本発明において、ガスバリア層の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2g/m2未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなる場合がある。一方、20g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。ガスバリア層の塗工量は、0.5g/m2以上がより好ましく、1g/m2以上がさらに好ましく、2g/m2以上がよりさらに好ましく、また、17g/m2以下がより好ましく、14g/m2以下がさらに好ましく、10g/m2以下がよりさらに好ましい。
ガスバリア層は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。ガスバリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全てのガスバリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0035】
(ナイロン層)
ナイロン層は、バリア原紙のバリア塗工層側に設けられる。
ナイロン層は、ナイロンを主成分とする層であり、ナイロンの他に可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤等の添加剤を含有することができる。なお、主成分とするとは、ナイロン層全体に対して50重量%以上を占めることを意味する。ナイロン層が含むナイロンとしては特に制限されず、ナイロン6、ナイロン66、MXナイロン等を使用することができるが、ナイロン6またはナイロン66が好ましい。これは、MXナイロンは、ナイロン6およびナイロン66と比較してコシが強いため、折り曲げた際に元に戻ろうとする力が強く、折り曲げ部分のヒートシール強度が不足する場合があるためである。ナイロンは、1種または均一なブレンドが可能であれば2種以上を使用することができる。ナイロンとしては、ナイロン6またはナイロン66を合計で50重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましく、95重量%以上含むことがよりさらに好ましく、97重量%以上含むことがよりさらに好ましい。
ナイロン層としては、1軸あるいは2軸延伸のナイロンフィルムを利用することができ、直接押出しによる無延伸ナイロンも利用することができる。
【0036】
ナイロン層は、バリア原紙のバリア塗工層側に積層される。バリア原紙のバリア塗工層側にナイロン層を配置することにより、屈曲した際にバリア塗工層が破壊されることによるバリア性の低下を防止することができる。
ナイロン層の厚さは特に制限されないが、5μm以上30μm以下であることが好ましい。ナイロン層の厚さが5μm未満では封緘強度が低下して破袋が起こりやすくなる場合があり、ナイロン層の厚さが30μmを超えるとナイロン層のコシが強くなり、折り曲げ部分のヒートシール強度が不足する場合がある。ナイロン層の厚さは、6μm以上がより好ましく、7μm以上がさらに好ましく、8μm以上がよりさらに好ましく、また、27μm以下がより好ましく、24μm以下がさらに好ましく、20μm以下がよりさらに好ましい。
ナイロン層は、バリア原紙のバリア塗工層上に直接積層することもでき、他の層を介して積層することもできる。他の層の一つとしては、バリア塗工層とナイロン層とを接続して界面での剥がれを防止することのできる接着剤層が好ましい。接着剤層の材質は、バリア塗工層とナイロン層の両方との接着性に優れていれば特に制限されず、マレイン変性ポリエチレン等の変性樹脂(固体)のほか、1液硬化型、2液硬化型の液体接着剤等を単独、または混合して使用することができる。
接着剤層等の他の層の形成方法は特に制限されず、塗工、押出ラミネート、サンドラミネート、ドライラミネート等の公知の方法で形成することができる。
【0037】
(熱可塑性樹脂層)
本発明において、紙製バリア材料は、少なくともナイロン層側に熱可塑性樹脂層を有する。熱可塑性樹脂層は、紙製バリア材料の両面に形成することもできる。
熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂材料としては、ヒートシール用途に用いられているものを特に制限することなく用いることができ、例えば、ガラス転移温度が100℃以下である熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、-20℃以上85℃以下であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂の融点は、80℃以上120℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のヒートシール用途に用いられる熱可塑性樹脂を特に制限することなく使用することができる。これらの中で、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、スチレン-アクリル酸エステル系共重合樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)が、ヒートシール強度の点から好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂が、ゴミとして流出した場合の環境負荷軽減の点から好ましい。
【0038】
熱可塑性樹脂層は、アンチブロッキング剤、シランカップリング剤等の添加剤を含むことができる。アンチブロッキング剤としては、顔料、ワックス、金属石鹸等を特に制限することなく使用することができる。
熱可塑性樹脂層の厚さは、10μm以上60μm以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂層の厚さが10μm未満ではヒートシール強度が不足する場合があり、60μmを超えると熱可塑性樹脂層がヒートシール可能な温度まで昇温するのに時間がかかるため加工スピードが遅くなる場合がある。熱可塑性樹脂層の厚さは、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上がさらに好ましく、25μm以上がよりさらに好ましく、また、55μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、40μm以下がよりさらに好ましい。
熱可塑性樹脂層は1層であってもよく、2層以上の隣接する多層で構成してもよい。熱可塑性樹脂層を2層以上の隣接する多層で構成する場合は、熱可塑性樹脂層の厚さの合計を上記範囲とすることが好ましい。
【0039】
ナイロン層と熱可塑性樹脂層の形成方法は特に制限されず、押出ラミネート、サンドラミネート、ドライラミネート等の公知の方法で形成することができる。フィルムをラミネートする場合は、ナイロンフィルムは、例えばポリエチレン等、他の樹脂フィルムと予め積層された積層ナイロンフィルムを利用することもできる。
熱可塑性樹脂層を、紙基材のナイロン層上に設ける場合、必要に応じて、ナイロン層と熱可塑性樹脂層との間に両者を接着する接着剤層を設けることもできる。この接着剤層としては、上記したバリア原紙のバリア塗工層とナイロン層との間に設けることのできる接着剤等を用いることができる。
【0040】
本発明の紙製液体包装袋を構成する紙製バリア材料の厚さは200μm以下であることが好ましい。紙製バリア材料の厚さが200μmを超えると、熱可塑性樹脂層がヒートシール可能な温度まで昇温するのに時間がかかるため加工スピードが遅くなる場合がある。紙製バリア材料の厚さは、180μm以下が好ましく、160μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。一方、紙製バリア材料が薄くなりすぎると紙製液体包装袋の強度が不足する場合があるため、紙製バリア材料の厚さは、40μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、60μm以上であることがさらに好ましい。
本発明の紙製液体包装袋を構成する紙製バリア材料の坪量は、60g/m2以上180であることが好ましい。紙製バリア材料の坪量は、80g/m2以上であることがより好ましく、100g/m2以上であることがさらに好ましく、170g/m2以下であることがより好ましく、160g/m2以下であることがより好ましい。
【0041】
本発明の紙製液体包装袋は、紙製バリア材料をヒートシール加工することにより形成される。本発明の紙製液体包装袋の形状は、特に制限されず、縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋、スパウト袋などが挙げられる。また、本発明の紙製液体包装袋は、収容された液体を取り出すためのスパウトを有することもできる。
本発明の紙製液体包装袋が収容する液体は、流動性を有するものであればよくゾル状でもよい。本発明の紙製液体包装袋が収容する液体としては、例えば、シャンプー、ボディーソープ、ハンドソープ、洗顔料、化粧落とし、洗濯用洗剤、食器用洗剤等の液状洗浄剤、化粧水、乳液、ヘアトリートメント、リンス、整髪料等の液状化粧料、醤油、ソース、酢、めんつゆ、ケチャップ、マヨネーズ、わさび等の液状調味料、水、清涼飲料、食用油、ゼリー等の飲食品等が挙げられる。
【実施例0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた紙製バリア材料、紙製液体包装袋について、以下に示す評価法に基づいて試験を行った。
【0043】
(評価方法)
(1)酸素透過度/耐屈曲性
紙製バリア材料について、MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃―0%RH条件にて測定した。
測定は、シートサンプルそのまま(折り無)と、塗工面側を山折りに折り曲げたシートサンプルに対し、370gのゴム製ローラーを自重で10往復転がして十字の折り目をつけたサンプル(折り有)について行い、折り有のサンプルは、その十字が治具の中央に位置するようにして測定した。
また、以下の基準で耐屈曲性を評価した。
OK:折り有サンプルの酸素透過度が、10cc/m2・day・atm未満
NG:折り有サンプルの酸素透過度が、10cc/m2・day・atm以上
【0044】
(2)水蒸気透過度/耐屈曲性
紙製バリア材料について、Lyssy社製、L80-5000を使用し、40℃-90%RH条件にて測定した。
測定は、シートサンプルそのまま(折り無)と、塗工面側を山折りに折り曲げたシートサンプルに対し、370gのゴム製ローラーを自重で10往復転がして十字の折り目をつけたサンプル(折り有)について行い、折り有のサンプルは、その十字が治具の中央に位置するようにして測定した。
また、以下の基準で耐屈曲性を評価した。
OK:折り有サンプルの水蒸気透過度が、20g/m2・day未満
NG:折り有サンプルの水蒸気透過度が、20g/m2・day以上
【0045】
(3)封緘強度
サン科学社製、封緘強度測定器を使用し、圧空破裂方法で測定した。
得られた紙製バリア材料から、三方シール包装機(コマック社製 ERL-1301型)を用いて、縦シール温度170℃、横シール温度180℃、製袋速度50袋/分の条件で、袋の大きさが縦120mm、横112.5mm、シール幅が縦9mm、横8mmの三方シール袋である紙製液体包装袋を作製した。
作製した紙製液体包装袋に測定器のエア注入針を差し込んで、エア注入量が10sec間で100mmHgずつ上がる条件にてエアを注入し、エア漏れ、破袋する圧力を測定した。
◎:封緘強度が、300mmHg(測定上限)以上
○:封緘強度が、100mmHg以上、300mmHg未満
×:封緘強度が、100mmHg未満
【0046】
(4)落下強度
1mの高さから5回落下させて、破袋、水漏れを評価した。
封緘強度試験同様に、三方シール包装機を用いて、同じ製袋条件で、常温水100gを充填した三方シール袋である紙製液体包装袋を作製した。
垂直方向、水平方向に水充填紙製液体包装袋をそれぞれに落下させて、破袋、水漏れを評価した。
○:破袋も水漏れもしない。
△:破袋しないが水漏れする。
×:破袋する。
【0047】
(5)加圧強度
自社製、加圧強度試験治具を使用し、破袋、水漏れを評価した。この加圧強度試験治具は、金属板を上下方向のみに移動できるように固定したものであり、金属板の重さ、枚数等により所定の荷重を付与することができる。
封緘強度試験同様に、常温水100gを充填した三方シール袋である紙製液体包装袋を作製した。
加圧強度試験治具の台座に水充填紙製液体包装袋を横にして置き、その上に金属板を置き、45kgfの荷重を加えた。24時間後の破袋、水漏れを評価した。
○:破袋も水漏れもしない。
△:破袋しないが水漏れする。
×:破袋する。
【0048】
(6)落球強度
自社製、落球強度試験治具を使用し、破袋、水漏れを評価した。この落球強度試験治具は、台座と台座の四隅から伸びる4本の支柱とを備え、支柱の間にボールを落下させることにより、落下速度と落下位置のずれを抑えることができる。
封緘強度試験同様に、常温水100gを充填した三方シール袋である紙製液体包装袋を作製した。
落球強度試験治具の台座に水充填三方シール袋である紙製液体包装袋を横にして置き、1mの高さからバスケットボール(一般用7号)を5回落とし、破袋、水漏れを評価した。
○:破袋も水漏れもしない。
△:破袋しないが水漏れする。
×:破袋する。
【0049】
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量45g/m2の紙を得た。
次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量45g/m2の原紙を得た。得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて、速度300m/min、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、紙基材を得た。
【0050】
(水蒸気バリア層用塗料の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度45%の水蒸気バリア層用塗料を得た。
【0051】
(ガスバリア層用塗料の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のカオリンスラリーを調整した。ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるように調整し、PVA水溶液を得た。得られたカオリンスラリーと、PVA水溶液を固形分で顔料:PVA=100:100として固形分濃度が10%となるように混合し、ガスバリア層用塗料を得た。
【0052】
(バリア原紙の作製)
得られた紙基材上に、水蒸気バリア層用塗料を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、次いで、ガスバリア層用塗料を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥し、バリア原紙を得た。
【0053】
(紙製バリア材料の作製)
得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて1.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し、80℃にて1sec乾燥の上、ポリエチレン/ナイロン6/ポリエチレン=10μm/10μm/10μmの積層フィルム(グンゼ社製 ヘプタックスBタイプ(#30)、二軸延伸)をポリエチレン(旭化成社製 サンテックL1850K)15μmでサンドラミネートし、積層フィルム側の最表面に更にポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)30μmを押出しラミネートにより積層して、厚さ142μmの紙製バリア材料を得た。
得られた紙製バリア材料を幅225mmに裁断してロール状に巻回した。これを三方シール包装機(コマック社製 ERL-1301型)を用いて、縦シール温度170℃、横シール温度180℃、製袋速度50袋/分の条件で、袋の大きさが縦120mm、横112.5mm、シール幅が縦9mm、横8mm、常温水100g充填した三方シール袋である紙製液体包装袋を作製した。
【0054】
[実施例2]
実施例1で得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(主剤:DIC社製 LX-500、硬化剤:DIC社製 KW-75)をロール塗工にて3.0g/m2(乾燥重量)塗布して接着剤層を形成し、80℃にて1sec乾燥の上、あらかじめ同じ接着剤、条件でドライラミネートによりナイロン6フィルム(興人フィルム&ケミカル社製 ボニールW(15μm)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(30μm))とを貼り合わせたフィルムのナイロン面側をドライラミネートにより積層した以外は実施例1と同様にして、厚さ126μmの紙製バリア材料を得た。
実施例1と同様にして紙製液体包装袋を作製した。
【0055】
[比較例1]
実施例1で得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、実施例1と同様にして接着剤層を形成、乾燥の上、ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 カーネルKC577T)60μmを押出しラミネートにより積層して、厚さ117μmの紙製バリア材料を得た。
実施例1と同様にして紙製液体包装袋を作製した。
【0056】
[比較例2]
実施例1で得られたバリア原紙のバリア塗工層上に、実施例2と同様にして接着剤層を形成、乾燥の上、あらかじめ同じ接着剤、条件でドライラミネートによりペットフィルム(ユニチカ社製 エンブレットPTM-12(#12)、二軸延伸)とポリエチレンフィルム(スカイフィルム社製 HR653H(#30))とを貼り合わせたフィルムのペットフィルム面側をドライラミネートにより積層して、厚さ120μmの紙製バリア材料を得た。
実施例1と同様にして紙製液体包装袋を作製した。
【0057】
【0058】
【0059】
本発明である実施例1、2で得られた紙製液体包装袋は、封緘強度も300mmHgを超え、常温水を充填したものは落下強度、加圧強度、落球強度に特に優れるものであった。しかも、酸素バリア性、水蒸気バリア性に対しても優れた性能を有するとともに、屈曲時のバリア性の劣化抑制にも優れていた。
比較例1で得られた紙製液体包装袋は、落下強度、加圧強度、落球強度が低く、更に屈曲時の酸素バリア性の劣化が大きいものであった。比較例2で得られた紙製液体包装袋は、落下強度、加圧強度、落球強度の過酷試験に十分に耐えられないものであった。