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特開2024-77049モータ用ロータ、該ロータの製造方法及び磁石モータ
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  • 特開-モータ用ロータ、該ロータの製造方法及び磁石モータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077049
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】モータ用ロータ、該ロータの製造方法及び磁石モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20240531BHJP
   H01F 7/02 20060101ALI20240531BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240531BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
H02K1/278
H01F7/02 E
H01F41/02 G
H02K15/03 C
H01F7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188856
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】岡田 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健介
(72)【発明者】
【氏名】松浦 透
【テーマコード(参考)】
5E062
5H622
【Fターム(参考)】
5E062CC05
5E062CD04
5E062CG03
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB02
5H622DD02
5H622QA01
(57)【要約】
【課題】ロータ表面の永久磁石の減磁を防止し、磁石量を低減することができるモータ用ロータを提供する。
【解決手段】本発明のモータ用ロータは、基材表面に強磁性材料で形成された永久磁石を複数備える。
そして、上記永久磁石は、磁化と保磁力とが異なる2種以上の相を有し、一方の相は、他方の相よりも磁化が低く保磁力が高い高保磁力相であり、他方の相は、上記一方の相よりも磁化が高く保磁力が低い高磁化相であり、上記高保磁力相と高磁化相との混合比が周方向で異なることとしたため、ロータ表面の永久磁石の減磁を防止し、磁石量を低減することができるモータ用ロータを提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、強磁性材料で形成された複数の永久磁石を備えるモータ用ロータであって、
上記永久磁石は、磁化と保磁力とが異なる2種以上の相を有し、
一方の相は、他方の相よりも磁化が低く保磁力が高い高保磁力相であり、
他方の相は、上記一方の相よりも磁化が高く保磁力が低い高磁化相であり、
上記高保磁力相と高磁化相との混合比が周方向で異なることを特徴とするロータ。
【請求項2】
上記高保磁力相が、Nd-Fe-B系合金からなることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
上記高磁化相が、Fe、Co及びNiから成る群から選ばれた1種の金属単体、またはこれらの金属を含む合金の相である特徴とする請求項1に記載の永久磁石成形体。
【請求項4】
上記高保磁力相と上記高磁化相との混合比が、連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
上記高保磁力相と上記高磁化相との混合比が、永久磁石の周方向中央部から端部に向かって連続的に変化していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
上記永久磁石は、周方向中央部が高磁化相の濃度が高く、端部が高保磁力相の濃度が高いことを特徴とする請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
上記高保磁力相と上記高磁化相との混合比が、段階的に変化していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項8】
上記強磁性材料の少なくとも1部が、上記基材表面に食い込んでアンカー部を形成し、上記基材と永久磁石とが直接結合していることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項9】
上記永久磁石の周方向両側に非磁性体を備えることを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
上記請求項1~9のいずれか1つの項に記載のロータを製造するロータ製造方法であって、
原料粉を圧縮気体で加速して固相状態のまま基材に吹き付け、上記基材上に堆積させる工程と、
上記基材上の堆積物を機械加工により成形する工程と、
上記基材上の堆積物を熱処理する工程と、を含み、
上記原料粉が、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、高磁化相を構成する強磁性材料粉末とを含み、
上記堆積させる工程が、吹き付け箇所に応じて、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変える処理を含むことを特徴とするロータ製造方法。
【請求項11】
上記混合比を変える処理が、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、高磁化相を構成する強磁性材料粉末と、の混合比が異なる複数の混合粉を、吹き付け箇所に応じて切り替える処理であることを特徴とする請求項10に記載のロータ製造方法。
【請求項12】
上記混合比を変える処理が、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末の吹き付け量と高磁化相を構成する強磁性材料粉末の吹き付け量とを、吹き付け箇所に応じてそれぞれ変化させる処理であることを特徴とする請求項10に記載のロータ製造方法。
【請求項13】
上記堆積させる工程が、上記高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、上記高磁化相を構成する強磁性材料粉末とのうち、延性が高い強磁性材料の粉末を、延性が低い強磁性材料の粉末を吹き付けた後に吹き付ける処理を含むことを特徴とする請求項10に記載のロータ製造方法。
【請求項14】
上記堆積物を熱処理する工程が、300℃以上の温度で加熱する処理を含むことを特徴とする請求項10に記載のロータ製造方法。
【請求項15】
ロータとステータとを備える磁石モータであって、
上記ロータが、請求項1~9のいずれか1つのロータであることを特徴とする磁石モータ。
【請求項16】
上記ロータの永久磁石は、上記高磁化相の濃度が回転方向前方で高く、上記高保磁力相の濃度が回転方向後方で高いことを特徴とする請求項15に記載の磁石モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用ロータ及び及び該ロータの製造方法に係り、更に詳細には表面磁石型モータに適したモータ用ロータ、該ロータの製造方法及び磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータの表面に永久磁石を有する表面磁石型モータが知られており、例えば、特許文献1には、磁石量を最小に抑えるためにセグメント磁石を用いたロータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-155372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表面磁石型モータは、回転方向に対して後ろ側部分で逆磁界が大きく、永久磁石の回転方向後ろ側に、永久磁石を減磁させる磁束が直接印加されて減磁し易いため、この部分の磁力が減磁しないよう、磁石厚などを設計する必要がある。
【0005】
具体的には、永久磁石の回転方向後ろ側の厚さを厚くするなどの対策が取られることが多く、このような対策では、永久磁石の回転方向後ろ側と前側との厚さを揃えるために、回転方向前側に余剰な磁石を設けて厚くしなければならず、回転方向前側の磁石量を低減することが困難であり、コストが上昇してしまう。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロータ表面の永久磁石の減磁を防止し、磁石量を低減することができるモータ用ロータ、該ロータの製造方法及び磁石モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、磁化と保磁力とが異なる2種以上の相を有し、これらの相の混合比が周方向で異なる永久磁石を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のモータ用ロータは、基材表面に強磁性材料で形成された永久磁石を複数備える。
そして、上記永久磁石は、磁化と保磁力とが異なる2種以上の相を有し、一方の相は、他方の相よりも磁化が低く保磁力が高い高保磁力相であり、他方の相は、上記一方の相よりも磁化が高く保磁力が低い高磁化相であり、上記高保磁力相と高磁化相との混合比が周方向で異なることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のロータ製造方法は、上記ロータを製造する製造方法である。
そして、原料粉を圧縮気体で加速して固相状態のまま基材に吹き付け、上記基材上に堆積させる工程と、上記基材上の堆積物を機械加工により成形する工程と、上記基材上の堆積物を熱処理する工程と、を含み、
上記原料粉が、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、高磁化相を構成する強磁性材料粉末とを含み、
上記堆積させる工程が、吹き付け箇所に応じて、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変える処理を含むことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の磁石モータは、上記ロータとステータとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁化と保磁力とが異なる2種以上の相を有し、これらの相の混合比が周方向で異なる永久磁石を用いることとしたため、ロータ表面の永久磁石の減磁を防止し、磁石量を低減することができるモータ用ロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モータ用ロータを軸と直交する方向で切ったときの一例を示す断面図である。
図2】本発明のモータ用ロータの要部断面図である。
図3】モータ用ロータを軸と直交する方向で切ったときの他の一例を示す断面図である。
図4】高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変えるコールドスプレー装置の一例を示す概略図である。
図5】高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変えるコールドスプレー装置の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<モータ用ロータ>
本発明のモータ用ロータについて詳細に説明する。
本発明のモータ用ロータは、軸やロータコアなどの基材と、強磁性材料で形成された永久磁石とを備え、図1に示すように、上記複数の永久磁石が上記基材の周方向に並んで設けられる。
【0014】
上記永久磁石は、それぞれ磁化と保磁力とが異なる2種以上の強磁性材料を含有し、これらの強磁性材料に対応した2種以上の相を有する。
【0015】
そして、一方の相は、他方の相よりも磁化が低く保磁力が高い高保磁力相であり、他方の相は、上記一方の相よりも磁化が高く保磁力が低い高磁化相であり、上記高保磁力相と高磁化相との混合比が周方向で異なる。
【0016】
これにより、永久磁石の磁化・保磁力が場所ごとに異なることが求められる磁石モータに好適し使用できる。
【0017】
上記高保磁力相を構成する強磁性材料としては、例えば、Nd-Fe-B系合金を挙げることができる。Nd-Fe-B系合金は、最大エネルギー積(BHmax)が大きな永久磁石を得ることができ、大きな保磁力を要する箇所に好ましく使用できる。
【0018】
上記Nd-Fe-B系合金が含むことができる他の元素としては、例えば、Pt,Pm,Gd,Tb,Dy,Eu,Hoなどが挙げられ、これらの元素を2種以上含んでいてもよい。
【0019】
上記高磁化相を構成する強磁性材料としては、Fe、Co及びNiから成る群から選ばれた1種の金属単体、またはこれらの金属を含む合金を挙げることができ、中でもFeを主成分(50質量%以上)とする合金(鉄系軟磁性体)であることが好ましい。
【0020】
Feを主成分とする合金(鉄系軟磁性体)が含むことができる他の元素としては、例えば、Al,Si,B,N,Cu,Znなどが挙げられ、これらの元素を2種以上含んでいてもよい。
【0021】
上記の金属単体や合金は延性を有するので、永久磁石に延性を付与することができ、例えば、切削、研磨などの機械加工を可能にする。
また、後述するコールドスプレー法で、基材に原料粉を吹き付けた際、原料粉が基材表面で変形し、後から衝突する原料粉を受け止めて、原料粉の割れや跳ね返りを防止するので、堆積効率を向上させることができる。
【0022】
上記永久磁石は、高保磁力相と高磁化相との混合比が周方向で変化していれば、段階的に変化していても、連続的に変化していてもよく、要求されるモータの特性に応じて選択できる。
【0023】
上記混合比を段階的に変化させることで、保磁力を必要とする部位のみに保磁力が高いNd-Fe-B系合金の混合率を高めることができ、局所的に高い保磁力を求められるモータにおいてNd-Fe-B系合金の使用量を削減して低コスト化することができる。
また、上記混合比を連続的に変化させることで、ロータがエアギャップ中に作り出す磁束の変化が滑らかになりトルクリプルの抑制を図ることができる。
【0024】
上記混合比を連続的に変化させる場合は、周方向前方から後方に向けて変化させてもよく、周方向中央部から前端又は後端に向けて変化させてもよい。
【0025】
例えば、周方向中央部を高磁化相の濃度を高くし、周方向端部を高保磁力相の濃度を高くすることで、トルク密度に最も影響を与える磁石中央部の磁化が高くなり、トルク密度を向上させることができる。
【0026】
上記永久磁石は、強磁性材料の少なくとも1部が、図2に示すように、上記基材表面に食い込んでアンカー部を形成し、基材と永久磁石とが直接結合していることが好ましい。
このように、永久磁石が基材表面に機械的結合していることで磁石モータの遠心力に対する強度を高めることができる。
【0027】
上記アンカー部を形成する強磁性材料は、高保磁力相と高磁化相とを構成する強磁性材料のうち、延性が小さく硬い材料であり、Nd-Fe-B系合金と鉄系軟磁性体との組み合わせである場合は、Nd-Fe-B系合金がアンカー部を形成する。
【0028】
また、本発明のモータ用ロータは、上記永久磁石の周方向両側に非磁性体を備えることができる。図3に示すように、周方向に並んだ永久磁石と永久磁石との間に非磁性体を配置することで、永久磁石間で漏洩する磁束量を減らすことができトルク密度の向上を図ることができる。
【0029】
上記非磁性体としては、銅(Cn)やアルミニウム(Al)などの金属の他、Al-Cu系合金などの合金を挙げることができる。
【0030】
<ロータ製造方法>
本発明のロータ製造方法は、上記本発明のロータを製造する方法であり、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、高磁化相を構成する強磁性材料粉末とを含む原料粉を、圧縮気体で加速して固相状態のまま基材に吹き付けて上記基材上に堆積させる工程と、上記基材上の堆積物を機械加工により成形する工程と、上記基材上の堆積物を熱処理する工程と、を含む。
【0031】
上記堆積させる工程は、吹き付け箇所に応じて、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変える処理を含む。
これにより、上記高保磁力相と高磁化相との混合比を周方向で異ならせることができ、周方向で磁化と保磁力とが異なる永久磁石を形成できる。
【0032】
高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と高磁化相を構成する強磁性材料粉末との混合比を変える方法としては、高保磁力相を構成する強磁性材料粉末の吹き付け量と高磁化相を構成する強磁性材料粉末の吹き付け量とを、吹き付け箇所に応じてそれぞれ変化させながら吹き付ける方法や、予めこれらの混合比が異なる複数の混合粉を作製し、これらの混合粉を吹き付け箇所に応じて切り替える方法を挙げることができる。
【0033】
図4に示すロータ製造装置は、2つの粉末供給装置を有し、これらの粉末供給装置には、それぞれガスボンベが接続されている。ガスボンベの開閉バルブによって上記粉末供給装置に流入する圧縮ガスの量を制御することで、噴射ノズルに混合粉末を供給し、吹き付け箇所に応じた混合比で吹き付けて基材上に堆積させることができる。
【0034】
図5に示すロータ製造装置は、予め原料粉を混合器で混合して所望の混合比に調整した混合粉を作製する。この混合粉を混合粉末供給装置に流入する圧縮ガスによって、噴射ノズルに混合粉末を供給することで、吹き付け箇所に応じた混合比で吹き付けて基材上に堆積させることができる。
【0035】
上記堆積させる工程が、上記高保磁力相を構成する強磁性材料粉末と、上記高磁化相を構成する強磁性材料粉末とのうち、延性が高い強磁性材料の粉末を、延性が低い強磁性材料の粉末を吹き付けた後に吹き付ける処理を含むことが好ましい。
【0036】
延性が高い強磁性材料の粉末は密着性がより高いため、あとから吹き付けることで永久磁石全体の強度を高めることができる。
【0037】
上記堆積物を成形する工程は、基材上に原料粉を堆積させて形成した永久磁石を機械加工により成形する工程であり、上記堆積物を研磨、切削などの機械加工により堆積物の表面を平滑に成形することでロータの機械精度を向上できる。
【0038】
上記堆積物を熱処理する工程は、基材表面の堆積物を磁界中で加熱し冷却する処理であり、永久磁石の内部に生じた応力を緩和すると共に、外部から磁界を印加して初磁化させ、上記堆積物を永久磁石とする工程である。
【0039】
熱処理する工程での加熱温度は、300℃以上であることが好ましい。
上記強磁性材料が、Nd-Fe-B系合金と鉄系軟磁性体との組み合わせである場合は、鉄の応力緩和に適した温度は、650℃であるとともにNd-Fe-B系合金の保磁力が650℃近傍で最大になるため、加熱温度は、600℃~700℃であることが好ましい。
【0040】
また、熱処理する工程では、1T以上の磁束密度を印加し、上記磁束密度を印加したまま冷却する処理を含むことが好ましい。これにより、永久磁石成形体の磁気異方性の向上を図ることができ、その結果、永久磁石成形体の保磁力を高めることができる。上記印加する磁束密度は、1.5T以上であることがより好ましい。この初磁化は加熱した後であってもよい。
【0041】
<磁石モータ>
本発明の磁石モータは、上記本発明のモータ用ロータとステータとを備える。
上記ロータは、その表面に磁化の高い部位と保磁力の高い部位とがあるため、トルク密度増加と磁石使用量の低減とを両立できる。
【0042】
本発明の磁石モータは、ロータ表面の永久磁石が、図1に示すように、上記高磁化相の濃度が、図1中、矢印で示す回転方向前方で高く、上記高保磁力相の濃度が回転方向後方で高いことが好ましい。
【0043】
具体的には、回転方向後方でNd-Fe-B系合金相の比率を高め、回転方向前方で鉄系軟磁性体相の比率を高める。
【0044】
表面磁石型モータは、永久磁石の回転方向後方に前方よりも大きな逆磁界が印加されるため、回転方向後方では高い保磁力と磁石を厚くすることによって減磁が生じないことを保障している。
【0045】
上記Nd-Fe-B系合金は保磁力が高く、鉄系軟磁性体は磁化が高く保磁力が小さいため、Nd-Fe-B系合金相と鉄系軟磁性体相との混合比を、上記のように周方向で変えることで逆磁界に対する耐性が向上する。
【0046】
したがって、逆磁界が印加される箇所の厚さを厚くする必要がなく、逆磁界が印加され難い部分に余剰な磁石を設けて厚くする必要がなく、永久磁石全体を薄くすることができる。
また、逆磁界が比較的小さい回転方向前方で鉄系軟磁性体相の混合比を高めることで、磁化が大きくなり、トルク密度の改善を図ることができる。
【0047】
したがって、回転方向前方から後方にかけて永久磁石中のNd-Fe-B系合金相と鉄系軟磁性体相との混合比を変化させることで、要求されるトルク密度を担保しつつ、総磁石量を低減することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 基材
2 永久磁石
21 高保磁力相
211 アンカー部
22 高磁化相
3 非磁性体
4 噴射ノズル
5 粉末供給装置
51 混合粉末供給装置
52 混合器
6 カスボンベ
7 開閉バルブ
8 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5