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特開2024-77069感光性組成物、硬化物および有機EL表示装置
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  • 特開-感光性組成物、硬化物および有機EL表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077069
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】感光性組成物、硬化物および有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240531BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240531BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20240531BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20240531BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240531BHJP
   H10K 59/126 20230101ALI20240531BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240531BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20240531BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20240531BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240531BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 505
G03F7/038 501
G03F7/032
G03F7/029
G09F9/30 365
H10K59/126
H10K59/122
H10K59/173
H10K50/84
H10K50/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188887
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相原 涼介
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
【テーマコード(参考)】
2H225
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC34
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC63
2H225AC75
2H225AD06
2H225AE05P
2H225AE13P
2H225AE18P
2H225AM67P
2H225AM68P
2H225AM79P
2H225AM95P
2H225AN39P
2H225AN53P
2H225AN83P
2H225AP03P
2H225BA16P
2H225BA22P
2H225BA33P
2H225BA35P
2H225CA24
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC32
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107EE27
3K107FF14
5C094AA43
5C094BA27
5C094HA08
(57)【要約】
【課題】
高い遮光性と感度を有しながら、パターンエッジ部の残渣が少なく、直線性に優れたパターンがマスク寸法通りに形成でき、その硬化物を有機EL表示装置に用いた時の長期信頼性試験後も発光面積の変化が起きにくい感光性組成物を得る。
【解決手段】
(a)顔料、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)ラジカル重合性化合物および(d)光重合開始剤を含有する感光性組成物であって、該(b)成分が、式(1)で表される繰り返し単位および、式(2)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を有し、かつ式(3)で表される繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂(b-1)と、式(1)で表される繰り返し単位および(2)で表される繰り返し単位のいずれも含有せず、フェノール性水酸基を有する樹脂(b-2)を有する感光性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)顔料、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)ラジカル重合性化合物および(d)光重合開始剤を含有する感光性組成物であって、
該(b)成分が、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を有し、かつ式(3)で表される繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂(b-1)と、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれも含有せず、フェノール性水酸基を有する樹脂(b-2)を有する感光性組成物。
【化1】
(式(1)~(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基または、炭素原子数1~5かつ酸素原子数1のアルキレンエーテル基を表し、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基を表す。mは0~4の整数を表し、nは1~4の整数を表す。なお、式(1)中、Rが2個以上存在する場合、各Rは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。)
【請求項2】
前記(b-1)成分の全繰り返し単位100モル%に対する、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率が5モル%以上、30モル%未満であり、かつ式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率が10モル%以上、40モル%以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記(b-1)成分の全繰り返し単位100モル%に対する、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率をMa、式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率をMbとしたときに、Ma/Mbが0.2以上1.0以下である、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記感光性組成物中の前記(b-1)成分の含有量をWb-1、前記(b-2)成分の含有量をWb-2としたときに、重量比率Wb-1/Wb-2が、0.25以上1.0以下である、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記感光性組成物中の固形分に対する二重結合当量が1000~3500g/molである、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項6】
さらに(e)分子内に3つ以上のメチロール基もしくはアルコキシメチル基を有する熱架橋剤を含有する、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記(d)成分が、分子内にフッ素原子を有するオキシムエステル系光重合開始剤を含有する、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記(a)成分が、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群より選択される1種以上の化合物を含有する、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【化2】
(式(4)および式(5)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、CH、CFまたはフッ素原子を表す。R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、COOH、COOR14、COO、CONH、CONHR14、CONR1415、CN、OH、OR14、OCOR14、OCONH、OCONHR14またはOCONR1415を表す。R14およびR15は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
【請求項9】
請求項1または2に記載の感光性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、硬化物および有機EL用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPCおよびテレビなどの薄型表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」)表示装置を用いた製品が多く開発されている。
【0003】
一般に、有機EL表示装置は、発光素子の光取り出し側に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」)などの透明電極を有し、発光素子の光取り出しでない側にマグネシウムと銀の合金などの金属電極を有する。また、発光素子の画素間を分割するため、透明電極と金属電極との層間に画素分割層という絶縁層が形成される。
【0004】
近年、画素分割層に遮光性を付与することで、太陽光などの外光反射を低減し、有機EL表示装置の視認性およびコントラストを向上させる試みがなされており、黒色顔料を用いたネガ型黒色感光性材料を用いて画素分割層を形成する手法が検討されている。
【0005】
信頼性に優れた有機EL表示装置を得るため、耐熱性に優れたネガ型感光性材料(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
【0006】
また、側鎖にエポキシ基を含む樹脂を含有するネガ型感光性材料(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/101314号
【特許文献2】特開2018-60136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のようなネガ型感光性材料は、屋外での使用を想定した長期信頼性において発光特性が劣化し、硬化膜の架橋密度をさらに向上させる必要があるという課題があった。
【0009】
また、上記特許文献2のような感光性組成物を高濃度のアルカリ現像液でパターン加工する場合、樹脂とアルカリ現像液との親和性が不足し、パターンエッジ部に残渣が生じ、パターン直線性が悪化する課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は下記のとおりである。
【0011】
[1](a)顔料、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)ラジカル重合性化合物および(d)光重合開始剤を含有する感光性組成物であって、
該(b)成分が、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を有し、かつ式(3)で表される繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂(b-1)と、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれも含有せず、フェノール性水酸基を有する樹脂(b-2)を有する感光性組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)~(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基または、炭素原子数1~5かつ酸素原子数1のアルキレンエーテル基を表し、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基を表す。mは0~4の整数を表し、nは1~4の整数を表す。なお、式(1)中、Rが2個以上存在する場合、各Rは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。)
[2]前記(b-1)成分の全繰り返し単位100モル%に対する、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率が5モル%以上、30モル%未満であり、かつ式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率が10モル%以上、40モル%以下である、[1]に記載の感光性組成物。
【0014】
[3]前記(b-1)成分の全繰り返し単位100モル%に対する、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率をMa、式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率をMbとしたときに、Ma/Mbが0.2以上1.0以下である、[1]または[2]に記載の感光性組成物。
【0015】
[4]前記感光性組成物中の前記(b-1)成分の含有量をWb-1、前記(b-2)成分の含有量をWb-2としたときに、重量比率Wb-1/Wb-2が、0.25以上1.0以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0016】
[5]前記感光性組成物中の固形分に対する二重結合当量が1000~3500g/molである、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0017】
[6]さらに(e)分子内に3つ以上のメチロール基もしくはアルコキシメチル基を有する熱架橋剤を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0018】
[7]前記(d)成分が、分子内にフッ素原子を有するオキシムエステル系光重合開始剤を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0019】
[8]前記(a)成分が、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群より選択される1種以上の化合物を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性組成物。
【0020】
【化2】
【0021】
(式(4)および式(5)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、CH、CFまたはフッ素原子を表す。R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、COOH、COOR14、COO、CONH、CONHR14、CONR1415、CN、OH、OR14、OCOR14、OCONH、OCONHR14またはOCONR1415を表す。R14およびR15は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
[9][1]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物を硬化してなる硬化物。
【0022】
[10][9]に記載の硬化物を具備する有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の感光性組成物によれば、パターンエッジ部の残渣が少なく、直線性に優れたパターンがマスク寸法通りに形成でき、その硬化物を有機EL表示装置に用いた時の長期信頼性試験後も発光面積の変化が起きにくい感光性組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例における有機EL表示装置の作製手順の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の感光性組成物は、(a)成分:顔料を含有する。
【0026】
(a)成分としては、電子情報材料の分野で一般的に用いられる、有機顔料、無機顔料を用いることができる。有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料又は金属錯体系顔料などが挙げられる。
【0027】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット又はコバルトバイオレットなどが挙げられる。
【0028】
赤色の顔料としては、例えば、ピグメントレッド9,48,97,122,123,144,149,166,168,177,179,180,192,209,215,216,217,220,223,224,226,227,228,240又は254などが挙げられる(数値はいずれもカラーインデックス(以下、「CI」ナンバー))。
【0029】
オレンジ色の顔料としては、例えば、ピグメントオレンジ13,36,38,43,51,55,59,61,64,65又は71が挙げられる。
【0030】
黄色の顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12,13,17,20,24,83,86,93,95,109,110,117,125,129,137,138,139,147,148,150,153,154,166,168又は185などが挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0031】
紫色の顔料としては、例えば、ピグメントバイオレット19,23,29,30,32,37,40又は50などが挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0032】
青色の顔料としては、例えば、ピグメントブルー15,15:3,15:4,15:6,22,60又は64などが挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0033】
緑色の顔料としては、例えば、ピグメントグリーン7,10,36又は58などが挙げられる(数値はいずれもCIナンバー)。
【0034】
黒色の顔料としては、例えば、黒色有機顔料、混色有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。黒色有機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ペリレンブラック、アニリンブラック、又はベンゾフラノン顔料(特表2012-515233号公報記載)が挙げられる。
【0035】
これらの顔料を組み合わせることにより、所望の光学特性を持ったネガ型感光性組成物を得ることができるが、単位重量当たりの可視光遮光性と絶縁性の観点から、ベンゾフラノン顔料を含むことが好ましい。
【0036】
ベンゾフラノン顔料としては、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物およびそれらの異性体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0037】
【化3】
【0038】
(式(4)および式(5)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、CH、CFまたはフッ素原子を表す。R、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、COOH、COOR14、COO、CONH、CONHR14、CONR1415、CN、OH、OR14、OCOR14、OCONH、OCONHR14またはOCONR1415を表す。R14およびR15は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
感光性組成物中における(a)成分の含有量は、単位膜厚当たりの遮光性の観点から、感光性組成物の固形分100重量%中に、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。一方、(a)成分の含有量は、露光時の感度向上および細線加工性の観点から、感光性組成物の固形分100重量%中に、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
【0039】
本発明の感光性組成物は(b)成分:アルカリ可溶性樹脂を含有する。
【0040】
(b)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シロキサンポリマ系樹脂又はポリイミド樹脂などが挙げられる。中でも、感光性組成物の貯蔵安定性および、感光特性に優れる点から、(b)成分がアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0041】
アクリル樹脂としては、カルボキシル基を有するアクリル樹脂が好ましい。カルボキシル基を有するアクリル樹脂としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物との共重合体が好ましい。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸又はビニル酢酸などが挙げられる。これらは単独で用いても、また、共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0042】
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソ-ブチル、メタクリル酸イソ-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ペンチル、ベンジルアクリレート若しくはベンジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン若しくはα-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレート等の不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート若しくはグリシジルメタクリレート等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル若しくはプロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル若しくはα-クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、1,3-ブタジエン若しくはイソプレン等の脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基若しくはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート又はポリブチルメタクリレートなどが挙げられる。アルカリ現像液に対する溶解性の観点から、(b)成分がメタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びスチレンからなる群から選ばれる不飽和カルボン酸またはエチレン性不飽和化合物を共重合して得られる構造を有する2~4元共重合体で、酸価70~150(mgKOH/g)のアクリル樹脂を含むことが好ましい。適切なエチレン性不飽和化合物を選択して2~4元共重合体とすることにより、耐熱性をより向上させたり、溶剤溶解性をより向上させたりすることができる。また、酸価をこの範囲とすることで、高濃度アルカリ現像液に対する溶解速度を適正な範囲とすることが容易となる。
【0043】
(b)成分の重量平均分子量(Mw)は2千~10万であることが好ましく、1万~5万であることがより好ましい。この範囲とすることにより、(b)成分のアルカリ現像液への溶解速度を適正な範囲に調整しやすくなり、熱硬化時のリフロー性制御により低テーパー角形状の形成が容易となる。なお、重量平均分子量(Mw)は、GPC分析装置を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を測定して求める。具体的には、(b)成分の重量平均分子量は下記条件により測定する。
【0044】
測定装置:Waters2695(Waters社製)
カラム温度:50℃
流速:0.4mL/min
検出器:2489 UV/Vis Detector(測定波長 260nm)
展開溶剤:NMP(塩化リチウム0.21重量%、リン酸0.48重量%含有)
ガードカラム:TOSOH TSK guard column(東ソー(株)製)
カラム:TOSOH TSK-GEL a-2500、TOSOH TSK-GEL a-4000 直列(いずれも東ソー(株)製)
測定回数:2回(平均値を(b)成分の重量平均分子量とする)。
【0045】
また、(b)成分が、側鎖にエチレン性不飽和基を有するアクリル樹脂を含有することが好ましい。かかるアクリル樹脂を含有すると、露光、現像の際の感度が向上しやすくなる。エチレン性不飽和基としては、アクリル基又はメタクリル基が好ましい。このようなアクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基を有するアクリル系(共)重合体のカルボキシル基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得ることができる。
【0046】
本発明の感光性組成物は、下記(b-1)成分および、(b-2)成分を含有する。
【0047】
(b-1)成分:式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれか1種以上を有し、かつ式(3)で表される繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂。
【0048】
【化4】
【0049】
(式(1)~(3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基または、炭素原子数1~5かつ酸素原子数1のアルキレンエーテル基を表し、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基を表す。mは0~4の整数を表し、nは1~4の整数を表す。なお、式(1)中、Rが2個以上存在する場合、各Rは相互に異なっていてもよいし同じでもよい。)
(b-1)成分は、式(1)で表される繰り返し単位を構成するモノマーおよび式(2)で表される繰り返し単位を構成するモノマーのいずれか1種以上と、式(3)で表される繰り返し単位を構成するモノマーを共重合することで得ることができる。前記共重合の方法としては、例えば特開平5-19467号公報記載の方法などが挙げられるが、公知の方法を使用することができる。
【0050】
式(1)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、具体的にはアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル(以下、GMAという場合がある。)、4―ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(以下、4HBAGEという場合がある)、(3―エチルオキセタン―3―イル)メチルアクリレート、(3―メチルオキセタン―3―イル)メチルアクリレート、(3―エチルオキセタン―3―イル)メチルメタクリレート、(3―メチルオキセタン―3―イル)メチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロ―2H―ピラン―2―イルアクリラートなどが挙げられるが、メタクリル酸グリシジルであることが好ましい。
【0051】
式(2)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、具体的には3,4―エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルエチルメタアクリレート、3,4―エポキシシクロヘキシルエチルアクリレートなどが挙げられるが、3,4―エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートであることが好ましい。
【0052】
(b-1)成分中の式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率Maは、その硬化膜を用いた有機EL表示装置の長期信頼性を向上させる観点から、5モル%以上が好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。また、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位の合計モル比率Maは、パターン開口部の残渣を抑制する観点から30モル%未満が好ましく、20モル%以下がさらに好ましい。
【0053】
式(3)で表される繰り返し単位を構成するモノマーとしては、具体的には2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレートなどが挙げられるが、2-ヒドロキシエチルメタクリレートであることが好ましい。
【0054】
(b-1)成分中の式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率Mbは、現像液との親和性を向上させ、パターン直線性を向上させる観点から10モル%以上が好ましいく、15モル%以上がより好ましい。また、式(3)で表される繰り返し単位の合計モル比率Mbは微細パターンの密着性の観点から40モル%以下であることが好ましい。
【0055】
また、Ma/Mbの比率は、有機EL表示装置の長期信頼性の観点から0.2以上が好ましく、0.25以上であることがさらに好ましい。一方、Ma/Mbの比率は、感光性組成物をパターニングする際、パターン直線性や開口部残渣の観点から1.0以下であることが好ましい。
【0056】
本発明の感光性組成物中の(b-1)成分の含有量は、パターニング時の残渣抑制の観点から、感光性組成物の固形分100重量%中に、40重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。また、(b-1)成分の含有量は、架橋度を向上させその硬化物を有機EL表示装置に用いた際の長期信頼性の観点から、感光性組成物の固形分100重量%中、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。
【0057】
(b-2)成分:式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれも含有せず、フェノール性水酸基を含有する樹脂。
【0058】
(b-2)成分がフェノール性水酸基を有することにより、露光による過剰なラジカル反応が抑制され、マスクバイアスを低減させることができる。
【0059】
(b-2)成分である、フェノール性水酸基を有する樹脂としては、フェノール性水酸基含有エポキシアクリレート樹脂、フェノール性水酸基含有アクリル樹脂、フェノール樹脂、フェノール性水酸基含有シロキサンポリマ系樹脂又はフェノール性水酸基含有ポリイミド樹脂などが挙げられる。中でも、感光性組成物の保存安定性、パターン加工性の観点から、フェノール樹脂または、フェノール性水酸基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0060】
フェノール樹脂は、フェノール化合物と、アルデヒド化合物又はケトン化合物とを反応させて得られる、フェノール性水酸基を有する樹脂であり、フェノール化合物に由来する芳香族構造を有する。アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物が芳香族構造を有する場合、それらに由来する芳香族構造も有する。従って、フェノール樹脂を組成物に含有させることで、得られる硬化物の耐熱性を向上させることができる。そのため、硬化物を耐熱性が要求される用途に用いる場合などに好適である。
【0061】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、2-エチルフェノール、3-エチルフェノール、4-エチルフェノール、4-n-プロピルフェノール、4-n-ブチルフェノール、4-t-ブチルフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、カテコール、レゾルシノール、1,4-ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール又はフロログルシノールなどが挙げられる。
【0062】
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド又はサリチルアルデヒドなどが挙げられる。
【0063】
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン又はベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0064】
フェノール樹脂は、フェノール化合物と、アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、を酸触媒下で反応させて得られるノボラック樹脂であることが好ましい。フェノール化合物と、アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物と、の反応は、溶媒中又は無溶媒下で行うことができる。
【0065】
また、フェノール樹脂としては、酸触媒の代わりに塩基触媒を用いる以外は同様の反応によって得られる、レゾール樹脂であっても構わない。
【0066】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸若しくは多価カルボン酸又はこれらの無水物あるいはイオン交換樹脂などが挙げられる。塩基触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はイオン交換樹脂などが挙げられる。
【0067】
フェノール性水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、共重合可能なフェノール性水酸基含有のエチレン性不飽和化合物を用いて、前記アクリル樹脂と同様の方法により得ることができる。
【0068】
共重合可能なフェノール性水酸基含有のエチレン性不飽和化合物としては、4―ヒドロキシフェニルメタクリレート(以下、PQMA)、(4―ヒドロキシフェニル)メチルメタクリレート、(4―ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、(4―ヒドロキシフェニル)プロピルメタクリレート、2―ヒドロキシスチレン、3―ヒドロキシスチレン、4―ヒドロキシスチレン、2,4―ジヒドロキシスチレン、2,6―ジヒドロキシスチレン、2,4,6―トリヒドロキシスチレン、2,3,4,5―テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2―ヒドロキシ―α―メチルスチレン、3-ヒドロキシ―α―メチルスチレン、4―ヒドロキシ―α―メチルスチレン、1―(2―ヒドロキシフェニル)プロピレン、1―3―ヒドロキシフェニル)プロピレン又は1―(4―ヒドロキシフェニル)プロピレンなどが挙げられる。
【0069】
本発明の感光性組成物中の(b-2)成分の含有量は、高い露光感度を維持する観点から、感光性組成物の固形分100重量%中に、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。また、(b-2)成分の含有量は、過剰な光架橋反応を抑制し、パターン直線性を向上観点から、感光性組成物の固形分100重量%中、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。
【0070】
本発明の感光性組成物は、前記(b-1)成分と(b-2)成分を含有し、感光性組成物中の(b-1)成分の含有量をWb-1、(b-2)成分の含有量をWb-2としたときに、重量比率Wb-1/Wb-2が0.25以上1.0以下であることが好ましい。感光性組成物の硬化物を有機EL表示装置に適用した場合、長期発光信頼性を向上させる観点から、Wb-1/Wb-2は0.25以上が好ましく、0.4以上がさらに好ましい。また、現像液との相溶性を向上し、パターン直線性をより向上させる観点から、Wb-1/Wb-2は1.0以下が好ましく、0.8以下がさらに好ましい。
【0071】
本発明の感光性組成物中の(b)成分の含有量は、露光時の感度向上の観点から、感光性組成物の固形分100重量%中に、60重量%以下が好ましく、50重量%以下が好ましい。また、(b)成分の含有量は硬化膜の柔軟性を向上させ、クラックを現象させる観点から、感光性組成物の固形分100重量%中、10重量%以上が好ましく、20重量%以上が好ましい。
【0072】
本発明の感光性組成物は(c)成分:ラジカル重合性化合物を含有する。
ラジカル重合性化合物とは、分子内にラジカル重合性基を持つ成分を指し、ラジカル重合性基とは、室温においてメチルラジカルが付加可能な基であって、メチルラジカルが付加した場合に、別のラジカルを発生させる基をいう。室温におけるメチルラジカル発生方法としては、アセチルオキシムエステル構造を有する光重合開始剤に活性化学線(放射線)を照射する方法が挙げられる。メチルラジカルが付加した場合に発生する別のラジカルを検出する方法としては、電子スピン共鳴分析が挙げられる。また、メチルラジカルが付加した場合に別のラジカルが発生したことを確認する方法としては、ラジカル重合性基を有する化合物、及びアセチルオキシムエステル構造を有する光重合開始剤を溶剤に溶解させた組成物に対して活性化学線を照射し、活性化学線の照射前後における粘度上昇、又は、ゲル化若しくは膜化などの外観変化の有無によって確認する方法が挙げられる。活性化学線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、又はX線などが挙げられる。なお、メチルラジカルがラジカル重合性基に付加した場合に発生する別のラジカルは、さらに別のラジカル重合性基に付加可能であることが好ましい。また、さらに別のラジカル重合性基に付加した場合に、同様に、さらに別のラジカルを発生することが好ましい。メチルラジカルがラジカル重合性基に付加した場合に発生する別のラジカルは、炭素ラジカル、酸素ラジカル、窒素ラジカル、又は硫黄ラジカルが好ましく、炭素ラジカルがより好ましい。(c)成分が有するラジカル重合性基としては、露光時の感度向上の観点から、エチレン性不飽和結合が好ましく、アクリル基、メタクリル基がより好ましい。(c)成分は、ラジカル重合性基を2種以上有してもよい。
【0073】
(c)成分は、ラジカル重合性基を2つ以上有する化合物を含むことが好ましい。かかる(c)成分としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6―ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレート、フルオレンジアクリレート系オリゴマー、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6―ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2,2―ビス[4―(3-アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ビス[4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]メタン、ビス[4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]スルホン、ビス[4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]エーテル、4,4’―ビス[4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]シクロヘキサン、9,9―ビス[4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[3―メチル―4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[3―クロロ―4―(3―アクリロキシ―2―ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジアクリレート、ビスクレゾールフルオレンジメタアクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0074】
本発明の感光性組成物中の(c)成分の含有量は、露光時の感度向上の観点から、(b)成分と(c)成分の合計含有量100重量%中に、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。一方、(c)成分の含有量は、加熱焼成工程におけるリフロー性の観点から、(b)成分と(c)成分の合計含有量100重量%中に、80重量%以下が好ましく、60重量%以下が好ましい。
【0075】
本発明の感光性組成物において、感光性組成物中の固形分の二重結合当量は、1000~3500g/molであることが好ましい。露光時の過剰な光硬化を抑制し、パターン直線性を向上させ、パターンエッジ部分の残渣を抑制する観点から二重結合当量を1000g/mol以上が好ましく、1500g/molがさらに好ましい。また、二重結合当量を上記範囲とすることで硬化膜の硬度や耐薬品性を向上させることができる。一方、遮光性の高い膜においても高感度を維持するため、二重結合当量は3500g/mol以下が好ましく、3000g/mol以下がさらに好ましい。また、二重結合当量を上記範囲とすることにより硬化膜の柔軟性が向上し、折り曲げタイプの有機EL表示装置にも適用することが可能となる。
【0076】
ここでいう固形分の二重結合当量とは、エチレン性不飽和二重結合基1mol当たりの固形分重量をいう。固形分の二重結合当量の単位はg/molである。二重結合当量の値から、固形分中のエチレン性不飽和二重結合基の数を求めることができる。二重結合当量は、ヨウ素価から算出することができる。
【0077】
なお、本発明において、固形分とは、感光性組成物中の有機溶剤以外の成分をいう。
【0078】
本発明の感光性組成物は、(d)成分:光重合開始剤を含有する。
【0079】
(d)成分は、露光によって結合開裂および/または反応してラジカルを発生する化合物を指す。(d)成分として、例えば、カルバゾール系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。(d)成分は、これらを2種以上含有してもよい。中でも、後述する露光工程において、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)からなる混合線に対する感度が高いことから、(d)成分が、オキシムエステル系光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0080】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、IRGACURE(登録商標、以下同様) OXE01、IRGACURE OXE02(以上、商品名、BASF(株)製)、N-1818、N-1919、NCI-831(以上、商品名、ADEKA(株)製などが挙げられる。
【0081】
本発明の感光性組成物において、(d)成分が、分子内にフッ素原子を有するオキシムエステル系光重合開始剤を含有することがより好ましい。
【0082】
分子内にフッ素原子を有することにより、塗膜の疎水性を向上させることができ、高濃度アルカリ現像液に対する溶解速度を遅くさせることができる。
【0083】
分子内にフッ素原子を有するオキシムエステル系光重合開始剤としては、式(6)で表される光重合開始剤があげられる。
【0084】
【化5】
【0085】
14はフルオロアルキル基を表す。R14の例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基などが挙げられる。中でも、(d)成分が、R14が2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基で表される、IRGACURE OXE03を含むことが好ましい。
【0086】
感光性組成物中における(d)成分の含有量は、露光に対する感度向上の観点から、(b)成分および(c)成分の合計量100重量部に対して、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、(d)成分の含有量は、細線加工性の観点から、(b)成分および(c)成分の合計量100重量部に対して、60重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましい。
【0087】
本発明の感光性組成物は、さらに(e)分子内に3つ以上のメチロール基もしくはアルコキシメチル基を有する熱架橋剤を含有してもよい。
【0088】
メチロール基またはアルコキシメチル基を少なくとも3つ有する化合物の好ましい例としては、例えば、DMOM―PC、TriML-P、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HMOM-TPPHBA、(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NICALAC MX-270、MX-100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)など公知のものが挙げられる。
【0089】
(e)成分の含有量は、架橋密度を向上させ、その硬化膜を有する有機EL表示装置の長期信頼性が向上させる観点から、感光性組成物から有機溶剤を除いた固形分100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がさらに好ましい。一方、組成物の保存安定性、パターン加工性の観点から、10重量部以下が好ましい。
【0090】
本発明の感光性組成物は、有機溶剤を含有してもよい。
【0091】
有機溶剤としては、例えば、エーテル類、アセテート類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、アミド類、アルコール類などが挙げられる。
【0092】
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0093】
アセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0094】
エステル類としては、例えば、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、等が挙げられる。
【0095】
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が挙げられる。
【0096】
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0097】
アミド類としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0098】
アルコール類としては、例えば、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等などが挙げられる。
【0099】
本発明の感光性組成物は、これらの有機溶剤を2種以上含有してもよい。また、有機溶剤の1気圧における沸点は、パターニング後に低温焼成を行う場合においても溶剤が揮発しやすいことから、170℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
【0100】
本発明の感光性組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させたり、塗膜の膜厚均一性を向上させたりすることができる観点から、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、日本油脂社のディスフォームシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられる。また、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられる。アクリル系および/またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどが挙げられる。本発明の感光性組成物に含有させることができる界面活性剤は、上記の例示に限定されない。
【0101】
本発明の感光性組成物は、高分子分散剤を含有してもよい。高分子分散剤とは、黒色顔料表面への化学的結合または吸着作用を有する親和性基と、親溶媒性を有する高分子鎖または基とを併せ持つものをいう。高分子分散剤はエチレン性不飽和基を有していないため、多量に添加すると目的の感光性能を悪化させる懸念があり、分散安定性、感光性能を加味して適正な添加量とすることが望ましい。高分子分散剤は、後述の湿式メディア分散処理において、黒色顔料の分散媒への濡れ性を向上させて黒色顔料の解凝集を促進し、立体障害および/または静電反発効果により粒度および粘度を安定化させ、さらに、感光性組成物の貯蔵時あるいは塗布時の色分離の発生を抑制する効果を奏する。
【0102】
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤、カルボジイミド系分散剤などが挙げられる。黒色顔料分散の長期保存安定性を向上させる観点から、高分子分散剤はアミノ基を有することが好ましい。
【0103】
本発明の感光性組成物を製造する方法としては、例えば、分散機を用いて(b)成分、(c)成分、(d)成分および有機溶剤中に直接(a)成分を分散させる方法、分散機を用いて(b)成分および有機溶剤中に(a)成分を分散させて黒色分散液を作製し、その後黒色分散液と(c)成分、(d)成分を混合する方法などが挙げられる。
【0104】
分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなどが挙げられる。これらの中でも、分散効率化および微分散化の観点から、ビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、例えば、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどが挙げられる。ビーズミルのビーズとしては、例えば、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズなどが挙げられる。ビーズミルのビーズ径は、0.03~1.0mmが好ましい。(a)成分の平均一次粒子径および一次粒子が凝集して形成された二次粒子の粒子径が小さい場合には、0.03~0.10mmの微小な分散ビーズが好ましい。この場合、微小なビーズと分散液とを分離することが可能な、遠心分離方式によるセパレーターを有するビーズミルが好ましい。
【0105】
一方で、サブミクロン程度の粗大な粒子を含有する(a)成分を分散させる場合には、十分な粉砕力が得られるため、ビーズ径が0.10mm以上のビーズが好ましい。なお、ビーズ径は、顕微鏡観察により無作為に選択した100個のビーズについて、円相当径を測定し、その数平均値を求めることにより算出することができる。
【0106】
本発明の感光性組成物において、動的光散乱法により測定される感光性組成物中の粒子成分の、体積を基準とする粒度分布における50%累積径が、20~60nmであることが好ましい。以下、上述の50%累積径をメジアン径D50という場合がある。メジアン径D50が60nm以下であることにより、顔料分散液の粘度安定性が向上しやすくなり、最終的に得られる硬化物の高いパターン直線性が得られやすく、その硬化物を有する有機EL表示装置の配線短絡による画素非点灯の発生を回避しやすくなる。また、メジアン径D50が20nm以上、より好ましくは40nm以上であることにより、単位重量当たりの遮光性が向上しやすくなる。メジアン径D50は、動的光散乱式粒子径測定装置「nanoPartica SZ-100(堀場製作所製)」を用いて、細かい粒子径の側を基点(0%)とした累積の体積平均径として算出する。
【0107】
本発明の硬化物は、本発明の感光性組成物を硬化してなる。
【0108】
硬化物を製造する方法は、例えば、感光性組成物を塗布工程、前記塗膜を乾燥する工程、前記塗膜を露光する工程、露光された塗膜を現像する工程、および加熱硬化をする工程を含むことができる。
【0109】
以下に各工程の詳細について述べる。なお、本発明においては、基板上に形成された膜のうち、基板上に感光性組成物を塗布後、加熱硬化する前までの間の膜を塗膜といい、加熱硬化後の膜を硬化物という。
【0110】
まず、感光性組成物を塗布する工程について述べる。この工程では、本発明の感光性組成物を基板にスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで塗布し、塗膜を得る。これらの中でスリットコート法が好ましく用いられる。スリットコート法での塗布速度は10mm/秒~400mm/秒の範囲が一般的である。塗膜の膜厚は、感光性組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1~10μm、好ましくは1.0~5.0μmになるように塗布される。
【0111】
基板としては例えば、ガラス、石英、シリコン、セラミック、プラスチックおよびそれらの上に部分的にITO、Cu、Agなどの電極が形成されたものなどが挙げられる。
【0112】
塗布に先立ち、感光性組成物を塗布する基板を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20重量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0113】
次に、塗膜を乾燥する工程について述べる。この工程では、感光性組成物を塗布後、塗膜を乾燥する。この工程における乾燥とは、減圧乾燥または加熱乾燥を表す。減圧乾燥と加熱乾燥は両方実施してもよいし、いずれか一方のみでもよい。
【0114】
加熱乾燥について述べる。この工程をプリベークとも言う。乾燥は、通常、ホットプレート、オーブン、赤外線などを使用する。加熱温度は塗膜の種類や目的により様々であり、50℃から180℃の範囲で1分間~数時間行うことが好ましい。
【0115】
次に、前記塗膜を露光する工程について述べる。この工程では、得られた塗膜からパターンを形成するために、塗膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光部を光硬化させることが好ましい。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0116】
次に、露光された塗膜を現像する工程について述べる。この工程では、露光後、現像液を用いて未露光部を除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TMAH)、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。
【0117】
一般的な黒色顔料を含む感光性組成物の場合、底部の光硬化が進みにくく、例えば2.38重量%TMAHのような高濃度のアルカリ現像液を用いて現像される場合、微細パターンの加工が困難である。組成物中の二重結合当量を小さくすることによりパターンを残存させることが可能であるが、パターンエッジ部分の直線性が悪化したり、膜表面の過剰硬化した層が現像で剥離し、パターンエッジ部に残渣を生じる原因となる。本発明の感光性組成物は、感光性組成物中の固形分の二重結合当量を1000g/mol~3500g/molの範囲とすることにより、一定の感度を維持しながらも光による過剰硬化を抑制でき、パターン直線性を向上し、エッジ部の残渣を低減することができる。
【0118】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0119】
次に、加熱硬化する工程について述べる。この工程では、加熱硬化により光硬化のみでは不十分な場合にラジカル重合性基の反応をさらに進めることができるため、耐熱性を向上させることができる。
【0120】
加熱温度は150~300℃が好ましい。また、加熱時間は0.25~5時間が好ましい。加熱温度を連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【0121】
本発明の有機EL表示装置は、本発明の硬化物を具備する。有機EL表示装置は、少なくとも基板、第一電極、第二電極、発光画素、平坦化層および画素分割層を有する。マトリックス状に形成された複数の画素を有するアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が好ましい。アクティブマトリックス型の有機EL表示装置は、ガラスなどの基板上に、発光画素を有し、発光画素および発光画素以外の部位の下部を覆うように設けられた平坦化層を有する。さらに、平坦化層上に、少なくとも発光画素の下部を覆うように設けられた第一電極と、少なくとも発光画素の上部を覆うように設けられた第二電極を有する。また、アクティブマトリックス型の有機EL表示装置は発光画素間を分割するために、絶縁性の画素分割層を有し、本発明の硬化物は、画素分割層に好適に用いることができる。
【0122】
また、本発明の感光性組成物は、高精細かつ開口部に残渣を生じないパターンが形成可能であるため、固体撮像素子やマイクロLED、ミニLED表示装置向けの黒色隔壁、液晶表示装置用のカラーフィルターに用いられるブラックマトリクスおよびブラックカラムスペーサーにも用いることができる。
【実施例0123】
以下に本発明を実施例および比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。なお、用いた化合物のうち略語を使用しているものについて、名称を以下に示す。
【0124】
メタクリル酸メチル(MMA)
メタクリル酸(MAA)
スチレン(St)
メタクリル酸-2-エチルヘキシル(2EHMA)
メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル(HEMA)
グリシジルメタクリレート(GMA)
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ECHMA)
(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート(OXE-30(大阪有機化学工業株式会社製))。
【0125】
<評価方法>
[分子量]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー(株)の試験装置)を使用し、キャリアーをテトラヒドロフラン、分子量スタンダードとしてポリスチレンを用いて測定した重量平均分子量(Mw)の値とする。
【0126】
[感度]
各実施例および比較例により得られた感光性組成物を、ITO基板上に、ミカサ(株)製スピンナー(MS-A150)を用いて、所定の膜厚となるように塗布し、100℃のホットプレート上で2分間加熱乾燥した。この塗膜に対して、ユニオン光学(株)製マスクアライナー(PEM-6M)を用い、HOYA(株)製ネガマスク1(ライン・アンド・スペース1μmを最小、50μmを最大として、1μm刻みのパターンを有するネガ型マスク)を介して、高圧水銀灯を光源として500mJ/cmを最大露光量とし、10mJ/cmごとに露光量を下げて露光し、2.38重量%TMAH水溶液のアルカリ現像液で60秒間現像することでパターニング基板を得た。次に、得られたパターニング基板を熱風オーブン中230℃で60分間焼成して硬化物を得た。プリベーク後の膜厚を(TPB)μmと現像後の膜厚(TDEV)μmにおいて、現像残膜率((TDEV)/(TPB)×100)が70%以上となる最小露光量を感度とした。
【0127】
評価
A:50mJ/cm未満
B:50mJ/cm以上100mJ/cm未満
C:100mJ/cm以上150mJ/cm未満
D:150mJ/cm以上200mJ/cm未満
E:200mJ/cm以上。
【0128】
[最小残しパターン]
各実施例および比較例により得られたパターニング基板を光学顕微鏡で観察し、パターン部分に欠けや剥がれの発生していない最小ライン・アンド・スペースパターンを最小残しパターンとした。
【0129】
評価
A:最小残しパターン1~4μm
B:最小残しパターン5~9μm
C:最小残しパターン10~14μm
D:最小残しパターン15μm以上。
【0130】
[パターン直線性]
各実施例および比較例により得られたパターニング基板を光学顕微鏡で観察し、マスク開口幅50μmのライン・アンド・スペースパターンにおける開口寸法を10μmごとに10点測定し、その最大幅と最小幅の差W(μm)を以下の方法で算出した。
【0131】
最大幅と最小幅の差が小さいほど、パターン直線性が高く、有機EL表示装置の視認性にも優れる。
【0132】
評価
A:最大幅と最小幅の差Wが0.5μm未満
B:最大幅と最小幅の差Wが0.5μm以上、1.0μm未満
C:最大幅と最小幅の差Wが1.0μm以上、2.0μm未満
D:最大幅と最小幅の差Wが2.0μm以上。
【0133】
[残渣]
各実施例および比較例により得られたパターニング基板を光学顕微鏡で観察し、各開口部における長径0.1μm以上3.0μm未満の現像残渣の個数を計数した。50μmの開口部1箇所あたりに観測された現像残渣の平均個数から、以下の判定基準に基づいて評価した。
【0134】
評価
A:現像残渣が全く観られない
B:5個未満の残渣が観られる
C:5個以上、10個未満の現像残渣が観られる
D:10個以上の現像残渣が観られる。
【0135】
[マスクバイアス]
各実施例および比較例により得られた感光性組成物の硬化物のうち、パターン形成できた最小露光量におけるマスク開口幅50μmライン・アンド・スペースパターンの開口幅を光学顕微鏡で測長し、マスク設計値と硬化物の開口幅の差の絶対値が小さいほどマスクバイアスが小さく良好であると判定した。
【0136】
評価
S:マスクバイアス0.6μm未満
A:マスクバイアス0.6μm以上1.0μm未満
B:マスクバイアス1.0μm以上2.0μm未満
C:マスクバイアス2.0μm以上3.0μm未満
D:マスクバイアス3.0μm以上。
【0137】
[有機EL表示装置の長期信頼性評価]
各実施例および比較例で得られたネガ型感光性組成物を用いた有機EL表示装置の作製手順の概略図を図1に示す。まず、38mm×46mmの無アルカリガラス基板1に、ITO透明導電膜10nmをスパッタ法により基板全面に形成し、第一電極(透明電極)2としてエッチングした。また同時に、第二電極を取り出すための補助電極3も形成した。得られた基板をセミコクリーン56(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこの基板全面に、ネガ型感光性組成物をスピンコート法により塗布し、100℃のホットプレート上で2分間プリベークした。この膜にフォトマスクを介して高圧水銀灯を光源として各ネガ型感光性組成物の最小露光量で露光した後、2.38重量%TMAH水溶液で現像し、不要な部分を溶解させ、純水でリンスした。得られた樹脂パターンを、熱風オーブン中230℃で60分間加熱処理した。このようにして、幅70μm、長さ260μmの開口部が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の絶縁層4を、基板有効エリアに限定して形成した。このようにして、1辺が16mmの四角形である基板有効エリアに絶縁層開口率25%の絶縁層を形成した。絶縁層の厚さは約1.0μmであった。
【0138】
次に、前処理として窒素プラズマ処理を行った後、真空蒸着法により発光層を含む有機EL層5を形成した。なお、蒸着時の真空度は1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に発光層に、ホスト材料としての化合物(GH-1)とドーパント材料としての化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
【0139】
【化6】
【0140】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgおよびAgを体積比10:1で10nm蒸着して第二電極(非透明電極)6とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でキャップ状ガラス板を、エポキシ樹脂系接着剤を用いて接着することで封止をし、1枚の基板上に1辺が5mmの四角形であるトップエミッション方式の有機EL表示装置を4つ作製した。なお、ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニターにおける表示値である。
【0141】
作製した有機EL表示装置を、発光面を上にして80℃に加熱したホットプレートに載せ、波長365nm、照度0.6kmW/cmのUV光を照射した。照射直後(0時間)、500時間、1000時間経過後に、有機EL表示装置0.625mAの直流駆動により発光させ、発光画素の面積に対する発光部の面積率(画素発光面積率)を測定した。この評価方法による1000時間経過後の画素発光面積率として、80%以上であれば長期信頼性が優れていると言え、90%以上であればより好ましい。
【0142】
評価
A:画素発光面積率 95%以上
B:画素発光面積率 90%以上、95%未満
C:画素発光面積率 80%以上、90%未満
D:画素発光面積率 80%未満。
【0143】
<製造例>
(合成例1:アルカリ可溶性樹脂D-1)
PGMEA 160.0gを攪拌装置、温度計、還流冷却機、滴下用ポンプを備えた耐圧容器に仕込み反応容器内を窒素で満たした後90℃まで昇温を行い、St 8.97g、MMA 9.97g、MLDA 0.55g、MAA 6.06g、2EHMA 12.75g、重合開始剤としてAIBN 2.0g、MDM 3.0gを混合したものを滴下用ポンプにて3時間かけて滴下して共重合を行った。その後、反応容器内を空気で置換してGMA 2.24gを滴下用ポンプにて1時間かけて滴下して付加反応させ、さらに2時間容器内を攪拌した。その結果、アミン価5mgKOH/g、酸価76mgKOH/g、二重結合当量2540g/mol、重量平均分子量7000の特性値を有する固形分濃度20重量%のアルカリ可溶性樹脂(D-1)溶液が得られた。
【0144】
(合成例2:アルカリ可溶性樹脂P-1)
PGMEA 160.0gを攪拌装置、温度計、還流冷却機、滴下用ポンプを備えた耐圧容器に仕込み反応容器内を窒素で満たした後60℃まで昇温を行い、St 13.67g、MMA 8.07g、HEMA 13.41g、GMA 4.84g、重合開始剤としてAIBN 2.00gを滴下用ポンプにて6時間かけて滴下して共重合を行った。その結果、重量平均分子量9000の固形分濃度20重量%のアルカリ可溶性樹脂(P-1)溶液が得られた。
【0145】
(合成例3~16:アルカリ可溶性樹脂P-2~P-15)
合成例2と同様の方法で、添加する原料を表1に記載の通りとすることで固形分濃度20重量%のアルカリ可溶性樹脂(P-2)~(P-15)溶液が得られた。
【0146】
(合成例17:フェノール性水酸基含有樹脂H-1)
特開2015-74717号公報の実施例1記載の方法により、水酸基価384mgKOH/gのフェノール性水酸基含有樹脂H-1を合成し、PGMEA80g中に、H-1を20g添加して樹脂分を溶解させることによりH-1の固形分20重量%溶液を得た。得られた反応物の重量平均分子量は8800であった。
【0147】
(製造例1 黒色顔料分散液(DB-1)の製造)
黒色顔料(a-1)としてIrgaphor Black S0100CF(BASF社製)400g、アルカリ可溶性樹脂(D-1)の20重量%PGMEA溶液を333.3g、高分子分散剤として、特開2020-070352号公報の合成例2に記載のアミン価20mgKOH/gの分散剤33.40g及び1233.3gのPGMEAをタンクに仕込み、ホモミキサーで20分撹拌し、予備分散液を得た。0.10mmφジルコニアビーズを70体積%充填した遠心分離セパレーターを具備した(株)広島メタル&マシナリー製分散機ウルトラアペックスミルに、得られた予備分散液を供給し、回転速度10m/sで3時間分散を行い、固形分濃度25重量%、黒色顔料/樹脂(重量)=80/20の黒色顔料分散液(DB-1)を得た。
【0148】
(製造例2 黒色顔料分散液(DB-2)の製造)
製造例1と同様の方法で、投入する顔料を(a-2)スルホン酸基により表面が修飾されたカーボンブラック(キャボット製TPK1227)とすることで黒色顔料分散液(DB-2)を得た。
【0149】
(実施例1)
75.0gの黒色顔料分散液(DB-1)に、アルカリ可溶性樹脂(P-1)の20重量%PGMEA溶液を75.00g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を131.25g、光重合開始剤としてIrgacure OXE-03(BASF(株)製)を2.18g、ラジカル重合性化合物として、HX-220(日本化薬(株)製)を11.25g、TMOM-BP(本州化学工業(株)製)を1.5g、シリコーン系界面活性剤“BYK”(登録商標)333(ビックケミー社製)を0.08g、PGMEAを203.75g添加して、固形分濃度15重量%、黒色顔料/樹脂(重量比)=20/80の感光性組成物(PB-1)を得た。さらに得られた感光性組成物の硬化物と、その硬化物を具備する有機EL表示装置を前述の方法に従って作成した。
【0150】
(実施例2~3)
実施例1と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂を(P-1)に代えて、それぞれ(P-2)、(P-3)とすることで感光性組成物(PB-2)、(PB-3)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0151】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、投入する黒色顔料分散液を(DB-1)に代えて、(DB-2)とすることで感光性組成物(PB-4)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0152】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、投入する光重合開始剤をOXE-03に代えて、NCI-831(ADEKA(株)製)とすることで感光性組成物(PB-5)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0153】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、75.0gの黒色顔料分散液(DB-1)に、アルカリ可溶性樹脂(P-1)の20重量%PGMEA溶液を75.00g、水酸基含有樹脂(H-1)を131.25g、光重合開始剤としてNCI-831を2.18g、ラジカル重合性化合物として、HX-220(日本化薬(株)製)を12.75g、シリコーン系界面活性剤“BYK”(登録商標)333(ビックケミー社製)を0.08g、PGMEAを203.75g添加して、感光性組成物(PB-6)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0154】
(実施例7)
実施例6と同様の方法で、投入するラジカル重合性化合物として、HX-220を7.50g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)(以下DPHAと呼ぶ場合がある)を5.25gとすることで、感光性組成物(PB-7)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0155】
(実施例8)
実施例6と同様の方法で、投入するラジカル重合性化合物として、HX-220を9.75g、DPHAを3.00gとすることで、感光性組成物(PB-8)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0156】
(実施例9)
実施例6と同様の方法で、投入するラジカル重合性化合物として、HX-220を5.25g、BPE-900(新中村化学(株)製)を7.50gとすることで、感光性組成物(PB-9)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0157】
(実施例10)
実施例6と同様の方法で、投入するラジカル重合性化合物として、BPE-900を7.50g、BPE-1300N(新中村化学(株)製)を5.25gとすることで、感光性組成物(PB-10)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0158】
(実施例11)
実施例6と同様の方法で、投入するラジカル重合性化合物として、BPE-900を3.75g、BPE-1300N(新中村化学(株)製)を9.00gとすることで、感光性組成物(PB-11)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0159】
(実施例12)
実施例6と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)を33.75g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を172.5g、ラジカル重合性化合物をBPE-900を3.75g、BPE-1300Nを9.00gとすることで、感光性組成物(PB-12)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0160】
(実施例13)
実施例12と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)を41.25g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を165.00gとすることで、感光性組成物(PB-13)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0161】
(実施例14)
実施例12と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)を103.13g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を103.13gとすることで、感光性組成物(PB-14)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0162】
(実施例15)
実施例12と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)を112.50g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を93.75gとすることで、感光性組成物(PB-15)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0163】
(実施例16~27)
実施例11と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂をそれぞれ(P-1)から、(P-4)~(P-15)に変更することで、感光性組成物(PB-16)~(PB-27)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0164】
(比較例1)
実施例11と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)の代わりに(D-1)を103.13g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)を103.13gとすることにより、感光性組成物(PB-28)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0165】
(比較例2)
実施例11と同様の方法で、投入するアルカリ可溶性樹脂(P-1)を103.13g、フェノール性水酸基含有樹脂(H-1)の代わりに(D-1)を103.13gすることにより、感光性組成物(PB-29)とその硬化物およびその硬化物を具備する有機EL表示装置を得た。
【0166】
アルカリ可溶性樹脂の組成について、表1に示す。また、各実施例および比較例の組成について表2に示し、それらの評価結果を表3に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
【表3】
【0170】
実施例記載の感光性組成物は、感度、パターン直線性に優れ、残渣も小さく、マスクバイアスが小さいことに加えて、その硬化物を用いた有機EL表示装置の長期信頼性試験後の発光特性も良好であった。
【0171】
一方で比較例の感光性組成物は、比較例1の感光性組成物は、式(3)で表される繰り返し単位を有するアルカリ可溶性樹脂(b-1)成分を含んでおらず、キュア時に樹脂の熱硬化が進まないため、その硬化膜を有機EL表示装置に用いた場合に長期信頼性後のEL表示特性が劣る結果となった。 また、比較例2に記載の感光性組成物では、式(1)で表される繰り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位のいずれも含有せず、フェノール性水酸基を有する樹脂(b-2)成分を含んでおらず、マスクバイアスが大きく、パターンの直線性悪化や残渣が多く生じる結果となった。
【符号の説明】
【0172】
1:無アルカリガラス基板
2:第一電極(透明電極)
3:補助電極
4:絶縁層
5:有機EL層
6:第二電極(非透明電極)
図1