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特開2024-77090設定提案装置、透析装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077090
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】設定提案装置、透析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A61M1/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188926
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】竹林 正明
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕平
(72)【発明者】
【氏名】清水 佑志
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077HH03
4C077HH12
4C077HH17
4C077HH21
4C077JJ03
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】設定が複雑な透析装置における設定を簡便に行うことができる設定提案装置、透析装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】循環血液量変化率に係る推移の変化に伴って除水速度を変更する透析処理部19を備える透析装置1は、少なくとも1回の透析治療における患者の循環血液量変化率に係る推移を示す推移データを含む患者透析状況データを患者に対応付けて記憶する患者透析状況データ記憶部32と、透析対象患者の指定を受け付ける患者指定受付部11と、患者透析状況データ記憶部32から抽出した、透析対象患者の過去の患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための警報1ラインを設定する閾値ライン設定部14と、閾値ライン設定部14が設定した警報1ラインと、警報1ラインの設定に用いた患者透析状況データとを、操作表示パネル36に出力する提案グラフ出力部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1回の透析治療における患者の循環血液量変化率に係る推移を示す推移データを含む患者透析状況データを、前記患者に対応付けて記憶する患者透析状況データ記憶部と、
透析対象患者の指定を受け付ける患者指定受付手段と、
前記患者透析状況データ記憶部から抽出した、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための動作切換閾値ラインを設定する閾値データ設定手段と、
前記閾値データ設定手段が設定した前記動作切換閾値ラインと、前記動作切換閾値ラインの設定に用いた前記患者透析状況データとを、表示部に出力するグラフ出力手段と、
を備える、透析治療に係る設定提案装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設定提案装置において、
前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、直近に記憶された前回の前記患者透析状況データに基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定する、設定提案装置。
【請求項3】
請求項1に記載の設定提案装置において、
前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、直近に記憶された前回を含む複数回の前記患者透析状況データの平均値に基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定する、設定提案装置。
【請求項4】
請求項1に記載の設定提案装置において、
前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、周期的な透析サイクルのうちタイミングが同じである過去の前記患者透析状況データに基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定する、設定提案装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載の設定提案装置において、
前記閾値データ設定手段は、前記患者透析状況データの特定のタイミングの値を、前記動作切換閾値ラインとして設定する、設定提案装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の設定提案装置において、
前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに対して平滑化処理をして補正ラインを生成する平滑化手段を備え、
前記グラフ出力手段は、前記平滑化手段が生成した前記補正ラインを、前記動作切換閾値ラインとして出力する、設定提案装置。
【請求項7】
請求項6に記載の設定提案装置において、
前記グラフ出力手段は、前記平滑化手段が生成した前記補正ラインのうち特定のタイミングの値を、前記動作切換閾値ラインとして出力する、設定提案装置。
【請求項8】
請求項6に記載の設定提案装置において、
前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに対する平滑化の有無に係る指定を受け付ける補正指定手段を備え、
前記平滑化手段は、前記補正指定手段により平滑化をする旨の指定を受け付けたことに応じて、前記補正ラインを生成する、設定提案装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の設定提案装置を含む透析装置であって、
前記グラフ出力手段が出力した前記動作切換閾値ラインと、透析時における前記患者の前記推移データとの関係に基づいて除水速度を制御する除水速度制御手段を備える、透析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の透析装置において、
前記グラフ出力手段が出力した前記動作切換閾値ラインに対する変更操作を受け付けるライン変更受付手段を備え、
前記除水速度制御手段は、前記ライン変更受付手段が受け付けた変更後の前記動作切換閾値ラインと、透析時における前記患者の前記推移データとの関係に基づいて除水速度を制御する、透析装置。
【請求項11】
少なくとも1回の透析治療における患者の循環血液量変化率に係る推移を示す推移データを含む患者透析状況データを、前記患者に対応付けて記憶する患者透析状況データ記憶部を備えるコンピュータが実行するプログラムであって、
前記コンピュータを、
透析対象患者の指定を受け付ける患者指定受付手段と、
前記患者透析状況データ記憶部から抽出した、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための動作切換閾値ラインを設定する閾値データ設定手段と、
前記閾値データ設定手段が設定した前記動作切換閾値ラインと、前記動作切換閾値ラインの設定に用いた前記患者透析状況データとを、表示部に出力するグラフ出力手段と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータを、
前記グラフ出力手段が出力した前記動作切換閾値ラインと、透析時における前記患者の前記推移データとの関係に基づいて除水速度を制御する除水速度制御手段としてさらに機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定提案装置、透析装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透析患者のベッドサイドに設置された透析装置を用いて、透析患者に対する血液透析治療(以下、単に透析治療という。)を行っている。透析治療では、患者の血液状態によって適切な条件設定、特に除水速度の制御を行うことが重要である。
そこで、それぞれの患者の血液状態を監視しつつ、経時的に患者に適応した血液透析処理条件の条件設定、特に除水速度の制御を容易に行える血液透析装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-154348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日では、医療機器の高度化に伴い、動作パラメータの設定が複雑化し、設定に熟練を要する機器が増加している。このことから、医療機関においては、医療機器の設定を簡便にする方法が求められている。
【0005】
従って、本発明は、設定が複雑な透析装置における設定を簡便に行うことができる設定提案装置、透析装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1回の透析治療における患者の循環血液量変化率に係る推移を示す推移データを含む患者透析状況データを、前記患者に対応付けて記憶する患者透析状況データ記憶部と、透析対象患者の指定を受け付ける患者指定受付手段と、前記患者透析状況データ記憶部から抽出した、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための動作切換閾値ラインを設定する閾値データ設定手段と、前記閾値データ設定手段が設定した前記動作切換閾値ラインと、前記動作切換閾値ラインの設定に用いた前記患者透析状況データとを、表示部に出力するグラフ出力手段と、を備える、透析治療に係る設定提案装置に関する。
【0007】
また、設定提案装置において、前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、直近に記憶された前回の前記患者透析状況データに基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定することが好ましい。
【0008】
また、設定提案装置において、前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、直近に記憶された前回を含む複数回の前記患者透析状況データの平均値に基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定することが好ましい。
【0009】
また、設定提案装置において、前記閾値データ設定手段は、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データとして、周期的な透析サイクルのうちタイミングが同じである過去の前記患者透析状況データに基づいて、前記動作切換閾値ラインを設定することが好ましい。
【0010】
また、設定提案装置において、前記閾値データ設定手段は、前記患者透析状況データの特定のタイミングの値を、前記動作切換閾値ラインとして設定することが好ましい。
【0011】
また、設定提案装置において、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに対して平滑化処理をして補正ラインを生成する平滑化手段を備え、前記グラフ出力手段は、前記平滑化手段が生成した前記補正ラインを、前記動作切換閾値ラインとして出力することが好ましい。
【0012】
また、設定提案装置において、前記グラフ出力手段は、前記平滑化手段が生成した前記補正ラインのうち特定のタイミングの値を、前記動作切換閾値ラインとして出力することが好ましい。
【0013】
また、設定提案装置において、前記透析対象患者の過去の前記患者透析状況データに対する平滑化の有無に係る指定を受け付ける補正指定手段を備え、前記平滑化手段は、前記補正指定手段により平滑化をする旨の指定を受け付けたことに応じて、前記補正ラインを生成することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、上記の設定提案装置を含む透析装置であって、前記グラフ出力手段が出力した前記動作切換閾値ラインと、透析時における前記患者の前記推移データとの関係に基づいて除水速度を制御する除水速度制御手段を備える、透析装置に関する。
【0015】
また、透析装置において、前記グラフ出力手段が出力した前記動作切換閾値ラインに対する変更操作を受け付けるライン変更受付手段を備え、
前記除水速度制御手段は、前記ライン変更受付手段が受け付けた変更後の前記動作切換閾値ラインと、透析時における前記患者の前記推移データとの関係に基づいて除水速度を制御することが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記の設定提案装置や透析装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムに関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設定が複雑な透析装置における設定を簡便に行うことができる設定提案装置、透析装置及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る透析装置の機能ブロックを示す図である。
図2】本実施形態に係る透析装置の患者透析状況データ記憶部の例を示す図である。
図3】本実施形態に係る透析装置の設定提案処理を示すフローチャートである。
図4図3の続きである。
図5】本実施形態に係る透析装置での表示例を示す図である。
図6】本実施形態に係る透析装置での表示例を示す図である。
図7】本実施形態に係る透析装置での表示例を示す図である。
図8】本実施形態に係る透析装置でのスムージング処理に関する例を示す図である。
図9】本実施形態に係る透析装置でのスムージング処理に関する例を示す図である。
図10】本実施形態に係る透析装置の透析及びデータ保存処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
[透析装置1]
図1は、本実施形態に係る透析装置1の機能ブロックを示す図である。
図2は、本実施形態に係る透析装置1の患者透析状況データ記憶部32の例を示す図である。
【0020】
透析装置1は、医療機関において、透析治療を行う患者のベッドサイド等に設置され、患者に対して透析治療のための透析処理を行う装置である。
図1に示すように、透析装置1は、制御部10と、記憶部30と、操作表示パネル36(表示部)と、操作ボタン37と、各種ポンプ38と、各種計測装置39とを備える。
制御部10は、透析装置1を制御する中央処理装置(CPU)である。制御部10は、記憶部30に記憶されているオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラムを適宜読み出して実行することにより、上述したハードウェアと協働し、各種機能を実行する。
【0021】
制御部10の説明の前に、記憶部30について説明する。
記憶部30は、制御部10が各種の処理を実行するために必要なプログラム、データ等を記憶するためのハードディスク、半導体メモリ素子等の記憶領域である。
記憶部30は、プログラム記憶部31と、患者透析状況データ記憶部32と、患者情報記憶部33とを備える。
プログラム記憶部31は、後述する制御部10の各種機能を実行するためのプログラム等、各種のプログラムを記憶するための記憶領域である。プログラム記憶部31に記憶されるプログラムには、例えば、後述するBV(循環血液量)調整プログラムを含む。プログラム記憶部31に記憶されるプログラムは、制御部10の各機能部や、複数の機能部ごとに別プログラムであってもよいし、1つのプログラムであってもよい。
【0022】
患者透析状況データ記憶部32は、患者の透析状況を示す患者透析状況データを記憶するための記憶領域である。患者透析状況データ記憶部32に記憶する各項目の例を、図2に示す。
図2に示す患者透析状況データ記憶部32は、患者ID(IDentification)と、透析日時と、推移データと、透析終了時の総除水量と、透析開始時の除水速度と、設定値とを含む各項目を有する。
患者IDは、患者を識別する識別情報である。
透析日時は、透析処理を開始した日時である。
推移データは、例えば、患者の循環血液量変化率の推移データ(例えば、%BV△で表すことができる。)や、ヘマトクリット測定値の推移データといった、血液の状態を示す血液パラメータの推移データである。推移データは、上記の推移データの他、血圧、静脈圧、除水量、除水速度等の推移を表す時系列データを含んでもよい。
透析終了時の総除水量は、透析終了時に計測した除水量の総量である。
透析開始時の除水速度は、予め設定される透析開始時における除水速度である。
設定値は、透析装置1に設定する各種の患者に係る値であり、例えば、患者の透析前後での体重や、DW(ドライウェイト)、目標除水量といった、患者の重さに関する値のうち少なくとも1つを含んでよく、さらに処置内容、患者の血液検査結果等を含んでもよい。
【0023】
記憶部30には、その他、透析装置1に対して予め設定する、例えば、過去データとして使用する範囲を示す指定条件等が記憶されている。また、記憶部30には、例えば、患者の基本情報を記憶する患者情報記憶部等を記憶してもよい。患者情報記憶部は、例えば、患者IDに対応付けて、患者の氏名、生年月日といった患者の基本情報や透析歴等を記憶してもよい。
【0024】
次に、制御部10について説明する。
制御部10は、患者指定受付部11(患者指定受付手段)と、設定提案処理部12(設定提案装置)と、設定変更受付部18(ライン変更受付手段)と、透析処理部19(除水速度制御手段)と、データ保存処理部20とを備える。
患者指定受付部11は、透析装置1を用いて透析治療を行う患者(透析対象患者)の指定を受け付ける。患者指定受付部11は、操作表示パネル36を介して、例えば、患者IDを受け付ける。
設定提案処理部12は、患者に対する透析治療に係る設定を提案する。
設定提案処理部12は、過去データ抽出部13と、閾値ライン設定部14(閾値データ設定手段)と、提案グラフ出力部15(グラフ出力手段)と、平滑化受付部16(補正指定手段)と、平滑化処理部17(平滑化手段)とを備える。
【0025】
過去データ抽出部13は、患者指定受付部11が受け付けた患者IDに基づいて、患者透析状況データ記憶部32に記憶された当該患者の患者透析状況データを抽出する。ここで、過去データ抽出部13は、予め透析装置1に設定され記憶部30に記憶された指定条件にしたがって、患者透析状況データを抽出する。
過去データ抽出部13は、指定条件にしたがって、例えば、過去(直近)に記憶された前回の透析治療時の患者透析状況データを抽出してもよい。
また、過去データ抽出部13は、指定条件にしたがって、例えば、過去(直近)に記憶された前回を含む複数回分の患者透析状況データを抽出してもよい。
さらに、過去データ抽出部13は、指定条件にしたがって、例えば、周期的な透析サイクルのうちタイミングが同じである過去(直近)の患者透析状況データを抽出してもよい。ここで、周期的な透析サイクルのうちタイミングが同じであるものとしては、例えば、曜日が同じであるものが該当する。
【0026】
閾値ライン設定部14は、過去データ抽出部13が抽出した患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための警報1ライン(動作切換閾値ライン)を設定する。ここで、警報1ラインとは、透析治療時の循環血液量変化率の推移についての目標ラインをいう。また、閾値ライン設定部14は、患者透析状況データの特定のタイミング(具体的には、例えば、透析開始から60分、120分、180分、240分)の値を、警報1ラインとして設定してもよい。
提案グラフ出力部15は、閾値ライン設定部14が設定した警報1ラインと、警報1ラインの設定に用いた患者透析状況データを示すラインとを含む提案グラフを生成する。そして、提案グラフ出力部15は、生成した提案グラフを、操作表示パネル36に出力する。
また、提案グラフ出力部15は、平滑化処理部17により補正ラインを生成した場合には、生成した補正ラインを警報1ラインとして、操作表示パネル36に出力する。
【0027】
平滑化受付部16は、警報1ラインに対するスムージング(平滑化)の有無に係る指定を、操作表示パネル36を介して受け付ける。
平滑化処理部17は、平滑化受付部16によりスムージングをする旨の指定を受け付けたことに応じて、警報1ラインに対してスムージング処理(平滑化処理)をして、補正ラインを生成する。
【0028】
設定変更受付部18は、提案グラフ出力部15が出力した警報1ラインに対する変更操作を、操作表示パネル36を介して受け付ける。
透析処理部19は、透析処理を実行する。より具体的には、透析処理部19は、少なくとも患者の血液を体外循環させるための血液回路を構成する動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有した血液浄化用回路(図示せず)と、血液浄化用回路に接続可能な複数の接続部を有し血液回路にて体外循環する血液を浄化するための血液浄化器(図示せず)とを用いて、血液浄化治療をさせるための処理を行う。その処理の1つとして、透析処理部19は、後述する各種計測装置39のうちの1つであるヘマトクリット測定装置により測定され%BV△で表すことができる循環血液量変化率の推移データと、警報1ラインとの関係に基づいて除水速度を制御する。また、透析処理部19は、設定変更受付部18が警報1ラインに対する変更操作を受け付けた場合には、循環血液量変化率の推移データと、変更後の警報1ラインとの関係に基づいて除水速度を制御する。
【0029】
データ保存処理部20は、透析処理部19による透析処理による患者に関する各種のデータを、患者透析状況データ記憶部32に記憶させる。患者に関する各種のデータには、例えば、血液パラメータの推移データの他、透析治療前の体重やDW等を含み、透析治療中の処置内容を含んでもよい。
【0030】
操作表示パネル36は、操作者の指を用いたタッチ操作による入力装置としての機能と、表示装置としての機能とを有する。
操作ボタン37は、例えば、操作表示パネル36とは異なる透析装置1の筐体に有し、透析処理に関する操作の際に用いる部材である。
各種ポンプ38は、透析処理で用いるポンプであり、例えば、血液ポンプ、補液ポンプ、除水ポンプ等を含む。
各種計測装置39は、患者の体内における血液の状態に関する値を取得するものであり、ヘマトクリット測定装置等を含む。ヘマトクリット測定装置は、循環血液量変化率、ヘマトクリット測定値、酸素飽和度、PRR(Plasma Refilling Rate)といった値を計測する。
【0031】
なお、コンピュータとは、制御部、記憶装置等を備えた情報処理装置をいい、透析装置1は、制御部、記憶部等を備えた情報処理装置であり、コンピュータの概念に含まれる。
【0032】
続いて、透析装置1における処理について説明する。
[設定提案処理]
まず、透析装置1を用いて患者に対して透析治療をする際の処理について説明する。
図3及び図4は、本実施形態に係る透析装置1の設定提案処理を示すフローチャートである。
図5から図7までは、本実施形態に係る透析装置1での表示例を示す図である。
図8及び図9は、本実施形態に係る透析装置1でのスムージング処理に関する例を示す図である。
【0033】
医療従事者(医療機関において透析装置1を操作する者であり、以下、操作者という。)は、患者に対して透析治療を行う際に、まずどのような透析処理を行わせるのかの設定を、透析装置1に対して行う。以下に説明する設定提案処理は、透析装置1に対して行う設定に関する処理である。
図3のステップS(以下、「ステップS」を単に「S」という。)11において、操作者による透析装置1への操作によって、制御部10(患者指定受付部11)は、患者IDを受け付ける。
【0034】
S12において、制御部10(過去データ抽出部13)は、受け付けた患者IDに基づいて、当該患者の過去の患者透析状況データを、患者透析状況データ記憶部32から抽出する。ここで、制御部10は、予め透析装置1に設定された、過去データとして使用する範囲を示す指定条件に基づいて、当該患者の過去の患者透析状況データを抽出する。
S13において、制御部10は、指定条件に基づく所定の患者透析状況データを抽出できたか否かを判断する。所定の患者透析状況データを抽出できた場合(S13:YES)には、制御部10は、処理をS14に移す。他方、所定の患者透析状況データを抽出できなかった場合(S13:NO)には、制御部10は、処理をS19に移す。
【0035】
図5(A)は、患者IDを入力後の画面41を表示する操作表示パネル36の例を示す。
画面41は、患者名41aと、プログラム指定領域41bとを有する。患者名41aには、患者IDにより特定された患者名が表示される。また、プログラム指定領域41bは、簡便な設定ができるプログラムを実行する際に指定する領域である。
操作者は、患者名41aを見て、患者名が正しいことを確認した後、プログラム指定領域41bを選択する。そうすると、制御部10は、図示しないプログラム選択画面を出力する。操作者は、その中から警報1ラインを設定し、除水速度を制御可能なBV調整プログラムを選択する。
【0036】
図3のS12において所定の患者透析状況データが抽出できた場合には、制御部10は、図5(B)に示す選択画面42を出力する。制御部10は、選択画面42を、画面41の上に重ねるように出力してもよいし、画面41に代えて出力してもよい。なお、図3のS12において所定の患者透析状況データが抽出できなかった場合には、制御部10は、図示しない通常の設定画面を出力するので、図3のS19において、制御部10は、通常の設定処理を行い、その後、本処理を終了する。通常の設定処理をする場合とは、所定の患者透析状況データが抽出できなかった場合、つまり、患者の過去の患者透析状況データが保存されていない場合である。そのため、操作者は、患者の状態を考慮して最初から設定する必要がある。それゆえ、操作者は、この場合には、熟練した医療従事者が操作者として一から設定することが望ましい。
【0037】
あるいは、操作者が未熟な医療従事者であれば、均等な速度で最低限度の除水を行うBV調整プログラムを使用しない設定をすることになる。その際、制御部10は、各種計測装置39のうちの1つであるヘマトクリット測定装置により測定され%BV△で表すことができる循環血液量変化率の推移データを測定し、今回の患者透析状況データとして患者透析状況データ記憶部32に記憶する。そうすれば、次回の透析以降は、患者透析状況データ記憶部32に記憶された当該患者の過去の患者透析状況データを元に、簡易設定が可能である。
【0038】
図3のS14において、制御部10は、条件設定処理を行う。
ここで、条件設定処理について、画面例に基づいて説明する。
選択画面42は、簡易設定をするための選択画面である。図5(B)に例示する選択画面42は、簡易設定のボタン42aを有する。ボタン42aは、簡単な設定を可能にするためのボタンである。また、選択画面42には、循環血液量変化率(%)の異なる4つのアイコンが示されている。この4つのアイコンに対応する提案グラフは、予め設定されているものである。
【0039】
操作者が選択画面42のボタン42aを選択すると、制御部10は、図5(C)に示す条件設定画面43を出力する。
条件設定画面43は、今回の透析治療における目標除水量と、除水時間とを設定するための画面である。操作者が、条件設定画面43において、目標除水量と除水時間とを設定して、設定のためのボタン43aを選択すると、制御部10は、次に、図5(D)に示す条件設定画面44を出力する。
条件設定画面44は、今回の透析治療における除水速度と、最大除水速度とを設定するための画面である。操作者が、条件設定画面44において、除水速度と、最大除水速度とを設定して、設定のためのボタン44aを選択することで、制御部10は、条件設定処理が終了したと判断して、処理を図3のS15に移す。
【0040】
図3のS15において、制御部10(閾値ライン設定部14)は、S12の処理で抽出した患者透析状況データを用いて、警報1ラインを設定する。
S16において、制御部10(提案グラフ出力部15)は、設定した警報1ラインを含む提案グラフを生成し、操作表示パネル36に出力する。
【0041】
図6(A)は、提案グラフを含み、操作表示パネル36に出力される画面45の例を示す。制御部10は、図5(D)の条件設定画面44においてボタン44aの選択を受け付けると、画面45を操作表示パネル36に出力する。図6(A)に示す提案グラフは、過去(直近)に記憶された前回の透析治療時の患者透析状況データを抽出した場合の例である。
画面45は、グラフ領域45aと、調整ボタン45bから45dまでと、選択領域45eと、設定ボタン45fとを有する。
【0042】
グラフ領域45aは、提案グラフを出力する領域である。グラフ領域45aは、グラフ51aから51eまでを含む。
実線で示すグラフ51aは、前回の患者透析状況データに係る循環血液量変化率の推移を示すラインである。
グラフ51bは、前回の透析処理時において設定した警報1ラインである。
太い点線で示すグラフ51cは、今回の透析処理で用いる警報1ラインの候補である。
点線で示すグラフ51d及びグラフ51eは、調整ボタン45b及び調整ボタン45dにより調整可能な警報1ラインの調整幅を示すラインである。なお、グラフ51d及びグラフ51eは、次に説明する調整ボタン45b及び調整ボタン45dを押下した際にグラフ51c(今回の透析処理で用いる警報1ラインの候補)が調整された結果を模式的に示したものである。そのため、実際には、グラフ51d及びグラフ51eは、グラフ領域45aには表示されない。
【0043】
調整ボタン45bから45dまでは、警報1ラインを調整するためのボタンである。調整ボタン45bは、警報1ラインを示すグラフ51cをグラフ51eに移動させるためのボタンである。調整ボタン45cは、移動させた警報1ラインを、元のグラフ51cの位置に戻すためのボタンである。調整ボタン45dは、警報1ラインを示すグラフ51cをグラフ51dに移動させるためのボタンである。操作者は、過去の透析結果(その過去の透析時に患者が体調を崩した等)や、これから透析するにあたり患者の状態が過去よりもよい等の患者の状態から警報1ラインのきつめ(-)や緩め(+)を、調整ボタン45b及び45dによって調整する。
選択領域45eは、警報1ラインを、スムージング処理をした補正ラインにするか否かを選択するための領域である。「スムージング有」は、スムージング処理をするものであり、「スムージング無」は、スムージング処理をしないものである。初期値として、最初に出力する画面45は、「スムージング無」であってもよい。
【0044】
設定ボタン45fは、グラフ領域45aにおいて設定したグラフ51cを、警報1ラインとして確定するためのボタンである。操作者が設定ボタン45fを選択すると、制御部10は、図6(B)に示すグラフ画面46を出力する。
グラフ画面46は、設定した警報1ラインを含むグラフを確認し、保存するための画面である。グラフ画面46は、グラフ表示領域46aと、ボタン46bから46dまでとを有する。
グラフ表示領域46aは、グラフ52cと、グラフ52fから52hまでとを含む。
【0045】
グラフ52cは、図6(A)の画面45において設定した警報1ラインである。グラフ52fは、警報2ラインであり、グラフ52gは、警報3ラインであり、グラフ52hは、警報4ラインである。グラフ52fは、グラフ52cから「-3」した位置に描画されるラインであり、グラフ52g、52hは、それぞれグラフ52cの最終地点の値から「-4」、「-7」した位置に描画されるラインである。ここで、警報2ラインは、除水速度を低下させる基準になるラインである。また、警報3ライン及び警報4ラインは、初期の除水速度に対して、予め設定された割合(除水変化率)の除水速度にするラインである。なお、警報2ラインもしくは警報4ラインを下回った場合には、補液を行うこともある。なお、警報1ラインからの変化量である「-3」、「-4」、「-7」の値は一例であり、この値に限定されるものではない。
【0046】
ボタン46bは、設定した条件を保存するためのボタンである。ボタン46bが選択されると、当該患者の次回の透析治療における設定時には、図7(A)に例示する選択画面42-2に示すように、保存された条件がアイコン42-2xとして表示される。そのため、当該患者の次回以降の透析治療時には、より簡易に設定を行うことができる。
【0047】
ボタン46cは、設定した条件を変更するためのボタンであり、選択されると図7(B)に示す変更画面47に遷移する。図7(B)に示す変更画面47は、警報1ラインから警報4ラインまでを個々に微調整を可能にするための変更画面である。操作者は、変更画面47と、変更画面47にて「設定」ボタンを選択することにより出力される変更画面48とを用いて、警報1ライン等を微調整することができる。微調整の後、操作者が変更画面48で「設定」ボタンを選択すると、制御部10は、図6(B)に示すグラフ画面46を出力する。
ボタン46dは、設定した条件を今回の透析処理に限って設定するためのボタンである。
【0048】
図4のS21において、制御部10は、スムージングの有無に関する指定を受け付けたか否かを判断する。スムージングの有無に関する指定を受け付けた場合(S21:YES)には、制御部10は、処理をS22に移す。他方、スムージングの有無に関する指定を受け付けていない場合(S21:NO)には、制御部10は、処理をS23に移す。
S22において、制御部10(提案グラフ出力部15)は、指定に対応した処理後の提案グラフを、操作表示パネル36に出力する。その後、制御部10は、処理をS21に移す。
【0049】
例えば、図6(A)の画面45において、選択領域45eを、「スムージング無」から「スムージング有」にする操作を受け付けた場合(図4のS21:YES)には、制御部10は、スムージングの有無に関する指定を受け付けたと判断する。そして、制御部10(平滑化処理部17)は、抽出した過去の透析治療時の患者透析状況データに対してスムージング処理をして補正ラインを生成し、制御部10(提案グラフ出力部15)は、生成した補正ラインを、警報1ラインとして、操作表示パネル36に出力する(図4のS22)。
また、例えば、図6(A)の画面45において、選択領域45eを、「スムージング有」から「スムージング無」にする操作を受け付けた場合(図4のS21:YES)にも、制御部10は、スムージングの有無に関する指定を受け付けたと判断する。そして、制御部10(提案グラフ出力部15)は、閾値ライン設定部14が設定した警報1ラインを、操作表示パネル36に出力する(図4のS22)。
【0050】
ここで、スムージング処理について、より詳細に説明する。
図8(A)は、補液工程を含む場合の元波形60aを示すグラフ60である。また、図9(A)は、補液工程を含まない場合の元波形70aを示すグラフ70である。元波形60a及び元波形70aは、いずれも抽出した過去の透析治療時の患者透析状況データに対応する。各グラフの横軸は、時間軸であり、縦軸は、循環血液量変化率である。スムージング処理は、元波形60aや70aに対して各種のノイズ除去処理を実行して、補正ラインを生成するものである。
図8(B)は、特定周波数を除去した補正ライン61bを含むグラフ61である。また、図9(B)は、特定周波数を除去した補正ライン71bを含むグラフ71である。いずれの補正ライン61b及び71bも、特定周波数を除去しているため、元波形60a及び70aと比較してなめらかなラインを形成している。
【0051】
図8(C)は、移動平均をとった補正ライン62bを含むグラフ62である。また、図9(C)は、移動平均をとった補正ライン72bを含むグラフ72である。移動平均は、例えば、30分の単位で行う。
図8(D)は、3次近似曲線で表した補正ライン63bを含むグラフ63である。また、図9(D)は、3次近似曲線で表した補正ライン73bを含むグラフ73である。
【0052】
図8(E)は、下限値トレースをした補正ライン64bを含むグラフ64である。また、図9(E)は、下限値トレースをした補正ライン74bを含むグラフ74である。
図8(F)は、下限値トレースと3次近似曲線とをした補正ライン65bを含むグラフ65である。また、図9(E)は、下限値トレースと3次近似曲線とをした補正ライン75bを含むグラフ75である。
制御部10は、元波形に対して上記したいずれかのノイズ除去処理を行うことで、スムージングを行い、補正ラインを生成する。補正ラインは、いずれかノイズ除去を行っても、なめらかなラインを描くものにできる。
なお、元波形が異常値を含む場合には、制御部10は、スムージング対象にしないようにしてもよい。また、元波形が短いものについては、制御部10は、元波形の透析終わり時の循環血液量変化率の値を維持するものとして、特定の時間(例えば、240分まで)を補完してもよい。
【0053】
図4のS23において、制御部10は、警報1ラインの変更操作を受け付けたか否かを判断する。警報1ラインの変更操作を受け付けた場合(S23:YES)には、制御部10は、処理をS24に移す。他方、警報1ラインの変更操作を受け付けていない場合(S23:NO)には、制御部10は、処理をS25に移す。
S24において、制御部10(設定変更受付部18)は、変更操作に対応して警報1ラインを変更する。そして、制御部10は、変更後の警報1ラインを、操作表示パネル36に出力する。その後、制御部10は、処理をS21に移す。
【0054】
例えば、図6(A)の画面45において、調整ボタン45bが選択された場合(図4のS23:YES)には、制御部10は、警報1ラインの変更操作を受け付けたと判断する。そして、制御部10(設定変更受付部18)は、警報1ラインを示すグラフ51cをグラフ51eに移動させる処理をして、制御部10(提案グラフ出力部15)は、移動後の警報1ラインを操作表示パネル36に出力する(図4のS24)。
また、例えば、図6(A)の画面45において、調整ボタン45dが選択された場合(図4のS23:YES)にも、制御部10は、警報1ラインの変更操作を受け付けたと判断する。そして、制御部10(設定変更受付部18)は、警報1ラインを示すグラフ51cをグラフ51dに移動させる処理をして、制御部10(提案グラフ出力部15)は、移動後の警報1ラインを操作表示パネル36に出力する(図4のS24)。
【0055】
図4のS25において、制御部10は、設定の確定操作を受け付けたか否かを判断する。例えば、図6(A)の画面45において、設定ボタン45fの選択操作を受け付けた場合に、制御部10は、設定の確定操作を受け付けたと判断する。設定の確定操作を受け付けた場合(S25:YES)には、制御部10は、処理をS26に移す。他方、設定の確定操作を受け付けていない場合(S25:NO)には、制御部10は、処理をS21に移す。
S26において、制御部10は、設定の確定処理を行う。例えば、図6(B)のグラフ画面46においてボタン46bが選択された場合には、制御部10は、設定提案処理による設定値を次回以降の設定において使用可能に保存した上で、今回の透析処理で使用可能に保存する。また、ボタン46cが選択された場合には、制御部10は、図7(B)に例示する変更画面47を操作表示パネル36に出力し、グラフの微調整を行う。さらに、ボタン46dが選択された場合には、制御部10は、当該設定値を、今回の透析処理で使用可能に保存する。その後、制御部10は、本処理を終了する。
【0056】
[透析及びデータ保存処理]
次に、上記の設定提案処理の終了後に行う透析処理及びその後の処理について説明する。
図10は、本実施形態に係る透析装置1の透析及びデータ保存処理を示すフローチャートである。
操作者は、患者の目標除水量、除水速度等を入力し、透析装置1の透析開始ボタン(図示せず)を選択する。そうすることで、図10のS31において、透析装置1の制御部10は、透析開始操作を受け付ける。
【0057】
S32において、制御部10(透析処理部19)は、今回の透析処理で使用可能に保存された設定(具体的には、目標除水量、除水時間、除水速度、最大除水速度等)に基づいて透析処理を開始する。制御部10は、各種計測装置39により測定された循環血液量変化率をもとに、設定した警報1ラインに沿うように除水速度を制御する。そうすることで、透析装置1によって患者にやさしい透析を行うことができる。
S33において、制御部10は、透析処理が終了したか否かを判断する。透析処理が終了した場合(S33:YES)には、制御部10は、処理をS34に移す。他方、透析処理が終了していない場合(S33:NO)には、制御部10は、透析処理が終了するまで、本処理にとどまる。
【0058】
S34において、制御部10(データ保存処理部20)は、今回の透析処理で得た患者透析状況データを、患者透析状況データ記憶部32に記憶させる。その後、制御部10は、本処理を終了する。
このように、制御部10は、透析処理をするたびに透析処理で得た患者透析状況データを記憶させるので、次回の透析治療における設定の際に、記憶した患者透析状況データを利用することができる。
【0059】
このように、本実施形態に係る透析装置1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、透析対象患者の指定を受け付けると、患者透析状況データ記憶部32から抽出した、透析対象患者の過去の患者透析状況データに基づいて、除水速度を変更する制御を行うための警報1ラインを設定し、設定した警報1ラインと、警報1ラインの設定に用いた患者透析状況データとを、操作表示パネル36に出力するようにした。
【0060】
これにより、透析治療を行う際に、過去の当該患者の実績データである患者透析状況データを用いて警報1ラインを設定するので、警報1ラインに基づいて患者に対する除水速度を変化させることができる。そのようにすることで、患者の血圧低下を防ぐ、患者に優しい透析治療を行うことができる。また、当該患者の過去の患者透析状況データがあれば、当該患者の透析装置1での設定提案データの1つである警報1ラインを出力する。よって、熟練した医療従事者でなくても、警報1ラインを設定できるので、簡易に設定を行うことができる。
【0061】
また、本実施形態では、患者の過去の患者透析状況データとして、直近に記憶された前回の患者透析状況データに基づいて、警報1ラインを設定するようにした。
これにより、過去に1回でも透析装置1で透析治療をした患者であれば、警報1ラインを設定することができて便利である。
【0062】
また、本実施形態では、抽出した過去の透析治療時の患者透析状況データに対してスムージング処理をして補正ラインを生成し、生成した補正ラインを警報1ラインとして出力するようにした。また、本実施形態では、スムージングをする旨の指定を受け付けたことに応じて、補正ラインを生成するようにした。
これにより、操作者の操作によって、警報1ラインを滑らかなラインにすることができ、患者の状態に応じて警報1ラインの設定をすることができる。また、警報1ラインを滑らかなラインにすることによって、除水速度も滑らかに変化させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、警報1ラインに対する変更操作を受け付けた場合に、変更後の警報1ラインに基づいて除水速度を変更するようにした。
これにより、患者の過去の患者透析状況データに基づいて設定した警報1ラインを、操作者が微調整等の変更ができるようになり、透析治療開始前の患者の状態に応じて変更ができる。
【0064】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0065】
本実施形態においては、透析装置は、患者の過去の患者透析状況データとして、直近に記憶された前回の患者透析状況データに基づいて、警報1ラインを設定するものを説明したが、これに限定されない。
透析装置は、例えば、患者の過去の患者透析状況データとして、直近に記憶された前回を含む複数回の患者透析状況データの平均値に基づいて、警報1ラインを設定してもよい。平均値を用いることで、透析処理時に特殊な事情が生じた場合であっても、その状態を平準化した警報1ラインの設定ができる。
また、透析装置は、患者の過去の患者透析状況データとして、周期的な透析サイクルのうちタイミングが同じである過去の患者透析状況データに基づいて、警報1ラインを設定してもよい。これは、ある患者の透析治療日が、例えば、月曜日、水曜日、金曜日の週3回である場合、当該患者が透析治療をする曜日が月曜日である場合には、直近に記憶された月曜日の前回の患者透析状況データに基づいて、警報1ラインを設定するものである。同じタイミングの値を用いることで、患者の曜日による体調の変化を考慮した警報1ラインの設定ができる。
上記のような患者の過去の患者透析状況データを用いた場合であっても、透析装置は、患者透析状況データの特定のタイミングの値を用いて警報1ラインを設定してもよい。
【0066】
本実施形態においては、スムージング処理をして生成した補正ラインを、警報1ラインとして出力するものを説明したが、生成した補正ラインの特定のタイミングの値を、警報1ラインとして出力してもよい。ここで、特定のタイミングの値とは、例えば、透析開始から60分、120分、180分、240分の値をいう。
【0067】
本実施形態においては、透析装置の記憶部に各患者の患者透析状況データを記憶するものを例に説明したが、これに限定されない。例えば、透析装置から着脱可能なUSB等の記憶媒体に各患者の患者透析状況データを記憶させ、異なる透析装置を用いた場合であっても、記憶媒体から当該患者の患者透析状況データを抽出できるようにしてもよい。又は、透析装置に対して通信可能に接続されたデータベース等のデータ蓄積装置に、各患者の患者透析状況データを記憶させ、透析装置からデータ蓄積装置にアクセスして、当該患者の患者透析状況データを抽出できるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態においては、透析装置に設定提案装置が行う処理を含むものを例に説明したが、これに限定されない。設定提案装置は、透析装置とは別の装置であってもよく、その場合、設定提案装置での設定内容を、透析装置が取得できるようになっていればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 透析装置(設定提案装置)
10 制御部
11 患者指定受付部
13 過去データ抽出部
14 閾値ライン設定部
15 提案グラフ出力部
16 平滑化受付部
17 平滑化処理部
18 設定変更受付部
19 透析処理部
20 データ保存処理部
30 記憶部
31 プログラム記憶部
32 患者透析状況データ記憶部
36 操作表示パネル
37 操作ボタン
38 各種ポンプ
39 各種計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10