(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077102
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】感知継手及び感知継手を含む消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
A62C35/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188947
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】趙 明修
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 辰基
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CA09
2E189CB02
2E189CC01
(57)【要約】
【課題】 弁体の調整を簡便に行うことができるとともに、製品の歩留まりを改善することができる感知継手及びその感知継手を含む消火設備を提供する。
【解決手段】 消火液で満たされた一次側配管と開放型ヘッドを備えた二次側配管とを繋ぐ流路を形成し、当該流路を囲む弁座を有する本体と、前記弁座を閉塞する弁体と、前記弁体を前記弁座に押圧するとともに、火炎を感知すると前記弁体の押圧を解除する感熱部と、を具備し、前記弁体が、前記弁座を覆うディスク、前記ディスクから前記一次側配管側に突出する突出部、及び、前記突出部と前記流路との間を封止するシール材、を含むこと、を特徴とする感知継手。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液で満たされる一次側配管と開放型ヘッドを備えた二次側配管とを繋ぐ流路を形成し、当該流路を囲む弁座を有する本体と、
前記弁座を閉塞する弁体と、
前記弁体を前記弁座に押圧するとともに、火炎を感知すると前記弁体の押圧を解除する感熱部と、を具備し、
前記弁体が、前記弁座を覆うディスク、前記ディスクから前記一次側配管側に突出する突出部、及び、前記突出部と前記流路との間を封止するシール材、を含むこと、
を特徴とする感知継手。
【請求項2】
前記シール材が、前記突出部の外周面に取り付けられたOリングであること、
を特徴とする請求項1に記載の感知継手。
【請求項3】
前記突出部の外周面には周方向に沿って溝が形成され、
前記シール材が前記溝に嵌め込まれていること、
を特徴とする請求項2に記載の感知継手。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の感知継手を含む消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感知継手及び感知継手を含む消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1(特開2016-202577号公報)は、配管連結口とヘッド連結口と感熱部取付口とを有する本体と、感熱部取付口に接続される感熱部と、配管連結口とヘッド連結口とが連通しないように封止する弁体と、を有する感熱開放継手を開示している。この感熱開放継手において、弁体は、後端部に突起部を有し、突起部に皿バネが設けられている。皿バネは、感熱体が弁体を押圧する力により配管連結口に圧接されており、これにより配管連結口を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された感熱開放継手では、配管連結口を封止するように皿バネを適切に調整することは難しく、しかも製品の歩留まりが悪い。
【0005】
そこで、本発明は、弁体の調整を簡便に行うことができるとともに、製品の歩留まりを改善することができる感知継手及びその感知継手を含む消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
消火液で満たされる一次側配管と開放型ヘッドを備えた二次側配管とを繋ぐ流路を形成し、当該流路を囲む弁座を有する本体と、
前記弁座を閉塞する弁体と、
前記弁体を前記弁座に押圧するとともに、火炎を感知すると前記弁体の押圧を解除する感熱部と、を具備し、
前記弁体が、前記弁座を覆うディスク、前記ディスクから前記一次側配管側に突出する突出部、及び、前記突出部と前記流路との間を封止するシール材、を含むこと、
を特徴とする感知継手、を提供する。
【0007】
また、本発明の感知継手では、前記シール材が、前記突出部の外周面に取り付けられたOリングであること、が好ましい。
【0008】
また、本発明の感知継手では、前記突出部の外周面には周方向に沿って溝が形成され、前記シール材が前記溝に嵌め込まれていること、が好ましい。
【0009】
本発明は、上記のいずれかに記載の感知継手を含む消火設備をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体の調整を簡便に行うことができるとともに、製品の歩留まりを改善することができる感知継手及びその感知継手を含む消火設備を提供する
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る消火設備1の構成例を示す概略図である。
【
図3】開放された状態の感知継手10の断面図である。
【
図4】開放後に水圧が低下した状態の感知継手10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る感知継手及び消火設備の代表的な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0013】
消火設備1は、消火液(例えば消火水、泡水溶液など)を用いて消火を行う設備であり、例えばスプリンクラー設備、水噴霧消火設備、及び泡消火設備が挙げられる。
図1に示すように、消火設備1は、配管(一次側配管2及び二次側配管3)、感知継手10、ヘッド(閉鎖型ヘッド4及び開放型ヘッド5)、更には、図示しない加圧ポンプや水槽等を備えている。ここでは、感知継手10よりも上流側の配管を一次側配管2と呼び、感知継手10よりも下流側の配管を二次側配管3と呼ぶこととする。
【0014】
一次側配管2は図示しない加圧ポンプと接続されており、消火設備1及び感知継手10の使用時(監視時)に、内部には消火液が充填されている。すなわち、一次側配管2は、閉鎖型ヘッド4及び感知継手10に消火液を供給する。なお、閉鎖型ヘッド4は、感熱機能と散水機能とが一体となった消火用ヘッドである。
【0015】
感知継手10は、露出天井のダクトや格子天井などの障害物6がある場合に使用される。感知継手10は、火災を感知すると、弁体13を開放して、二次側配管3を介して開放型ヘッド5に消火液を供給する。つまり、感知継手10を火災感知部として天井面下部に設け、さらに散水部として障害部下に開放型ヘッド5を設置することで、有効な火災感知、散水を可能にする。感知継手10の詳細については追って述べる。
【0016】
二次側配管3の基端部は感知継手10に接続され、先端部は開放型ヘッド5に接続される。監視時においては、一次側配管2内の消火液は感知継手10により封止されているので、二次側配管3内は空である(空気で満たされている)。
【0017】
次いで、感知継手10を詳細に説明する。
図2に示すように、感知継手10は、本体11、弁体13、感熱部15、及びフレーム17を具備する。
【0018】
本体11は、一次側配管2と二次側配管3とを繋ぐ流路113を形成する。本体11は例えば金属材料で作製されている。
【0019】
本体11は、一次側配管2と端部111において接続され、二次側配管3と端部112において接続される。一次側配管2と二次側配管3とは端部111,112において略直角に接続されているので、本体11の流路113は略L字状に屈曲している。
【0020】
本体11の流路113を囲むように弁座114が形成されている。弁座114には弁体13が載置される。ここでは、弁座114は、流路113のうち弁座114の上流に位置する縮径部115の内径を、他の部分の内径よりも小さくすることで形成される(
図3参照)。
縮径部115の長さ(弁座114から上流側に向かって計った距離)は、後述する突出部133の厚みと略等しいか大きいことが好ましい。これにより、突出部133及びシール材134による流路113(縮径部115)の封止が確実となる。
【0021】
本体11のうち弁座114に対向する位置には、フレーム17が取り付けられている。フレーム17は弁体13及び感熱部15を保持する金属部材である。フレーム17は、感熱部15の端部を押圧するネジ171を有する。またフレーム17は、本体11の流路113の内部と外部とを連通する貫通孔172を有する。
【0022】
弁体13は、弁座114(又は縮径部115)を閉塞して一次側配管2内の消火液を止水する。弁体13は、ロッド131、ディスク132、突出部133、及び、シール材134、を含む。
【0023】
ロッド131は、フレーム17の貫通孔172に挿通される。ロッド131の一方の端部131Aには凹部が形成され、この凹部に感熱部15の先端が挿入される。この状態で感熱部の他端がネジ171によって押圧されることで、弁体13が本体11の流路113を閉塞する。
ロッド131の他方の端部131Bの外径は、フレーム17の貫通孔172の内径よりも大きい。弁体13が開放されて水圧によりフレーム17側に移動した時に、ロッド131の端部131Bがフレーム17の貫通孔172を塞ぎ、貫通孔172からの消火液の漏水を抑制する。
【0024】
ディスク132は、ロッド131の端部131Bに取り付けられて、弁座114を覆う。ここではディスク132は円板状ないしリング状の金属板であり、弁座114の内径よりも大きい外径を有する。
【0025】
突出部133は、ディスク132(又はロッド131の端部131B)から一次側配管2側に突出する。突出部133は円柱状であり、縮径部115の内径よりもやや小さい外径を有する。突出部133は周方向に沿って溝を有し、この溝にシール材134が取り付けられている。
【0026】
シール材134は、突出部133の外周面に取り付けられて、突出部133と本体11の流路113(すなわち縮径部115)との間を封止する。シール材134は例えばOリングであり、樹脂材料ないしゴム材料で作製されてよい。突出部133の外周に取り付けられた状態で、縮径部115の内径よりも大きい外径を有する。これにより、弁体13は、一旦弁座114から外れると元に戻らない。
【0027】
感熱部15は、弁体13を弁座114に押圧するとともに、火炎を感知すると弁体13の押圧を解除する。感熱部15は例えばグラスバルブであり、一端においてロッド131の端部131Aを押圧し、他端においてネジ171から押圧される。
【0028】
したがって、感熱部15による弁体13の押圧の解除に伴って、消火液が一次側配管2から二次側配管3に流れると、弁体13は元に戻らず、一次側配管2の開放状態を維持する(
図4参照)。つまり、一旦開放された弁体13は、突出部133の下部分が縮径部115に入ることがあるものの、一次側配管2からの消火液により容易に押し上げられて、消火液を二次側配管3に流す。
【0029】
次いで、消火設備1及び感知継手10の動作を説明する。
警戒時には、感知継手10の弁体13が一次側配管2内の消火液を止水し、二次側配管3及び開放型ヘッド5への漏水を防止している(
図2参照)。
このとき、弁体13では、ディスク132が弁座114を覆うだけでなく、突出部133及びシール材134が縮径部115を封止することによっても、一次側配管2内の消火液を止水している。これにより、ディスク132の寸法及び形状を弁座114に正確に合わせる必要がなくなり、弁体13の調整を簡略化することができる。したがって、感知継手10の歩留まりを大幅に改善することができる。
【0030】
感知継手10が火炎を感知すると、感熱部15が例えば破裂等により弁体13の押圧を解除する。弁体13は、一次側配管2内の水圧により二次側に押し込まれ、一次側と二次側との間の封止を解除する(
図3参照)。その結果、消火液が一次側配管2から二次側配管3に流れる。
【0031】
一旦解除された弁体13は、シール材134の外径が縮径部115の内径よりも大きいことから、再び流路113を閉鎖することはしない。したがって、消火液の一次側から二次側への流れを妨げない。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。ここでは、突出部133と流路113との間を封止するシール材の代表的な実施形態として、突出部133の外周面に取り付けられたOリングを一例として示したが、例えば、突出部133と流路113との間を封止するシール材は、縮径部115の内周面に取り付けられたOリングであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 消火設備
2 一次側配管
3 二次側配管
4 閉鎖型ヘッド
5 開放型ヘッド
6 障害物
10 感知継手
11 本体
13 弁体
15 感熱部
113 流路
114 弁座
115 縮径部
132 ディスク
133 突出部
134 シール材