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  • 特開-台車用駆動装置および電動台車 図1
  • 特開-台車用駆動装置および電動台車 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077106
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】台車用駆動装置および電動台車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240531BHJP
   B60B 19/00 20060101ALI20240531BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B60B19/00 H
B60B19/00 D
B62B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188951
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 秀平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 等
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
【テーマコード(参考)】
3D050
3D101
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
3D050KK03
3D050KK14
3D101BB16
3D101BB22
3D101BB24
3D101BB25
(57)【要約】
【課題】全方位移動が可能な省電力型の台車用駆動装置および電動台車を提供する。
【解決手段】台車100を駆動するために台車本体12に搭載される駆動装置10であって、前記台車本体12の下面において想定した仮想的な四角形14の一方の対角に配置され、前記台車100の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段22を有するとともに駆動手段24によって駆動される2つの駆動操舵輪16A、16Bと、他方の対角に配置された2つのオムニホイル18A、18Bとを備えるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車を駆動するために台車本体に搭載される駆動装置であって、
前記台車本体の下面において想定した仮想的な四角形の一方の対角に配置され、前記台車の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段を有するとともに駆動手段によって駆動される2つの駆動操舵輪と、他方の対角に配置された2つのオムニホイルとを備えることを特徴とする台車用駆動装置。
【請求項2】
前記台車を前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回させるために、2つの前記駆動操舵輪の前記操舵手段および前記駆動手段を所定の動作に切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の台車用駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の台車用駆動装置を備えることを特徴とする台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車用駆動装置および電動台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット台車や電動台車などの全方位移動方式には、4WD・4WS方式やメカナム方式、オムニホイル方式などの機構で考案されているものが大多数である。4WD・4WS方式は、全方位移動が比較的簡単に実現できる代わりに走行軸および操舵軸それぞれに駆動源が必要となり、8個の動力が必要でコストアップ、駆動源占有スペース増、重量増、消費電力増などの問題がある。
【0003】
メカナム方式は、回転するホイル周囲全体に45°程度の角度を付けた小型のフリーローラーが取り付けられており、4つのホイルを制御して駆動させることにより全方位移動を簡単に実現できる(例えば、特許文献1を参照)。しかし、ホイル周囲全体に小型のローラーがあるため、屋内などのきれいな環境下での使用が前提となっており、大きな塵などがある環境では機構部の目詰まりなどが発生してしまい、更に建設現場などによくある多少の段差(数十ミリ程度)の乗り越えが難しいのが現状である。
【0004】
オムニホイル方式は、回転するホイル周囲全体にメカナムより大きなフリーローラーをホイルと平行に取り付けたもので、通常3輪または4輪の組み合わせで全方位移動を簡単に実現できる(例えば、特許文献2を参照)。しかし、メカナム方式のホイルと同様に塵などに多少弱いこと、ホイルを進行方向に対して平行に設置することができないため、段差乗り越えなどに対して不利なホイル配置となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-52417号公報
【特許文献2】特開平8-067268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の駆動装置が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車用駆動装置および電動台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る台車用駆動装置は、台車を駆動するために台車本体に搭載される駆動装置であって、前記台車本体の下面において想定した仮想的な四角形の一方の対角に配置され、前記台車の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段を有するとともに駆動手段によって駆動される2つの駆動操舵輪と、他方の対角に配置された2つのオムニホイルとを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の台車用駆動装置は、上述した発明において、前記台車を前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回させるために、2つの前記駆動操舵輪の前記操舵手段および前記駆動手段を所定の動作に切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る台車は、上述した台車用駆動装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る台車用駆動装置によれば、台車を駆動するために台車本体に搭載される駆動装置であって、前記台車本体の下面において想定した仮想的な四角形の一方の対角に配置され、前記台車の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段を有するとともに駆動手段によって駆動される2つの駆動操舵輪と、他方の対角に配置された2つのオムニホイルとを備えるので、従来の4WS・4WD方式に比べて駆動操舵輪の数が半分で済み、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車用駆動装置を提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の台車用駆動装置によれば、前記台車を前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回させるために、2つの前記駆動操舵輪の前記操舵手段および前記駆動手段を所定の動作に切り替える切替手段をさらに備えるので、前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回の動作を実現することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る台車によれば、上述した台車用駆動装置を備えるので、従来の4WS・4WD方式に比べて駆動操舵輪の数が半分で済み、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る台車用駆動装置の実施の形態を示す基本概念図であり、(1)は模式斜視図、(2)は適用例を示した要部斜視図である。
図2図2は、本実施の形態の動作モード1を示す図であり、(1)は模式斜視図、(2)は接地面側から見た図である。
図3図3は、本実施の形態の動作モード2を示す図であり、(1)は模式斜視図、(2)は接地面側から見た図である。
図4図4は、本実施の形態の動作モード3を示す図であり、(1)は模式斜視図、(2)は接地面側から見た図である。
図5図5は、本実施の形態の動作モード4を示す図であり、(1)は模式斜視図、(2)は接地面側から見た図である。
図6図6は、駆動操舵輪と従動輪を対角配置にした利点についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る台車用駆動装置および電動台車の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る台車用駆動装置10は、電動台車100を駆動するために台車本体12に搭載される駆動装置であって、台車本体12の下面において想定した仮想的な長方形14(四角形)の一方の対角に配置された2組の駆動操舵輪16A、16Bと、他方の対角に配置された2組のオムニホイル18A、18Bとを備える。電動台車100の下面の前側と後部には、左右方向に延設した支持部材20A、20Bがそれぞれ設けられる。前側の支持部材20Aの左と右には、一方のオムニホイル18Aと駆動操舵輪16Aがそれぞれ回動自在に固定される。後側の支持部材20Bの左と右には、他方の駆動操舵輪16Bとオムニホイル18Bがそれぞれ回動自在に固定される。
【0017】
駆動操舵輪16A、16Bは、電動台車100の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段22を有するとともに駆動用モータ24によって駆動されるものである。操舵手段22、駆動用モータ24は、電動台車100に搭載された図示しないバッテリーからの電力供給を受けて駆動する。駆動操舵輪16A、16Bの回転軸は、支持部材20A、20Bに固定された逆L字型断面のブラケット26の側面に対して回転自在に設けられている。駆動用モータ24は、駆動操舵輪16A、16Bをそれぞれ回転軸周りに回転駆動する駆動手段であり、ブラケット26の反対側の側面に固定される。操舵手段22は、駆動操舵輪16A、16Bをそれぞれ上下方向軸周りに旋回駆動するステアリング用モータと減速機とを含んで構成されており、ブラケット26の上面に固定される。前後の駆動操舵輪16A、16Bのそれぞれに設けられた操舵手段22により、各駆動操舵輪16A、16Bをそれぞれ上下方向軸周りに回動させて台車本体12の方向転換を行うことができる。
【0018】
オムニホイル18A、18Bは、従動輪として機能する。オムニホイル18A、18Bの回転軸は、支持部材20A、20Bに固定された逆U字型断面のブラケット28の左右側面に対して回転自在に固定される。オムニホイル18A、18Bを全方向移動キャスターのように用いることで、塵などの環境で電動台車100を走行させた際に、オムニホイル18A、18Bの機構部に目詰まりなどが発生しても従動輪として機能すればよいことから、従来よりも塵などの影響を考慮しなくても支障のない走行動作を実現することが可能である。また、従来のオムニホイル方式のように、オムニホイルを進行方向に対して傾けて配置する必要がないため、段差の乗り越えに対しても有利に働くことになる。
【0019】
上記の実施の形態において、電動台車100を前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回させるために、2つの駆動操舵輪16A、16Bの操舵手段22と駆動用モータ24の動作を所定の動作に切り替える切替手段を備えてもよい。次に、この切替手段による電動台車100の動作の一例として、動作モード1(前進・後退モード)、動作モード2(横行モード)、動作モード3(斜め移動モード)、動作モード4(その場旋回モード)について説明する。
【0020】
(動作モード1:前進・後退モード)
図2に示すように、操舵手段22を前進/後退モードに設定し、右側の駆動用モータ24を正転させ、左側の駆動用モータ24を逆転させると、電動台車100は前進方向に移動する。左右の駆動用モータ24をそれぞれ逆に動作させると、電動台車100は後退方向に移動する。
【0021】
(動作モード2:横行モード)
図3に示すように、操舵手段22を横行モードに設定し、右側の駆動用モータ24を正転させ、左側の駆動用モータ24を逆転させると、電動台車100は右方向に横行する。左右の駆動用モータ24をそれぞれ逆に動作させると、電動台車100は左方向に横行する。
【0022】
(動作モード3:斜め移動モード)
図4に示すように、操舵手段22を斜めモードに設定し、右側の駆動用モータ24を正転させ、左側の駆動用モータ24を逆転させると、電動台車100は斜め右方向に横行する。左右の駆動用モータ24をそれぞれ逆に動作させると、電動台車100は斜め左方向に横行する。このモードは、操舵手段22の動かし方によって、前進/後退モードから横行モードの範囲の自由な範囲で斜め移動が可能となる。
【0023】
(動作モード4:その場旋回モード)
図5に示すように、操舵手段22をその場旋回モードに設定し、右側の駆動用モータ24を正転させ、左側の駆動用モータ24も正転させると、電動台車100は旋回中心Oを中心として反時計回りにその場旋回を行う。左右の駆動用モータ24をそれぞれ逆転させると、電動台車100は旋回中心Oを中心として時計回りにその場旋回を行う。
【0024】
上記のように構成した台車用駆動装置10は、従来の4WD・4WS方式のうち2組の駆動系(2WD・2WS)を平面視で一方の対角に配置し、他方の対角に2組のオムニホイルを配置したものであることから、2WD・2WS+2オムニホイル方式と呼ぶこともできる。本実施の形態によれば、従来の4WS・4WD方式に比べて駆動操舵輪の数が半分で済むことから、省電力、省スペース、軽量化を図れるとともに、従来の4WS・4WD方式と同様の動作機能を半分の駆動系で実現することができる。また、塵や段差がある環境でも全方位移動が可能である。したがって、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車用駆動装置および電動台車を提供することができる。
【0025】
次に、駆動操舵輪と従動輪を対角配置にした利点の理由の一つについて説明する。
図6(1)は、本発明の実施例の車輪の平面配置図、(2)は比較例の車輪の平面配置図である。実施例では、駆動操舵輪16A、16Bと従動輪18A、18Bを対角に配置しているのに対し、比較例では、これらを対角に配置していない。トレッド幅をL、駆動力をPとすると、従動輪18A側に障害物があった場合、図6(2)の比較例では、従動輪18A側に2P×Lのモーメントが発生し、従動輪18Aを中心として台車本体12は旋回してしまう。一方、図6(1)の実施例では、従動輪18AにP×Lのモーメントが発生するが、従動輪18A側の後輪の駆動操舵輪16BがPの力で従動輪18Aを押すので、旋回しにくい。したがって、実施例のように駆動操舵輪と従動輪を対角配置にすれば障害物があっても旋回しにくくなり走行動作が安定するので有利である。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る台車用駆動装置によれば、台車を駆動するために台車本体に搭載される駆動装置であって、前記台車本体の下面において想定した仮想的な四角形の一方の対角に配置され、前記台車の前後方向に対する角度を変更可能な操舵手段を有するとともに駆動手段によって駆動される2つの駆動操舵輪と、他方の対角に配置された2つのオムニホイルとを備えるので、従来の4WS・4WD方式に比べて駆動操舵輪の数が半分で済み、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車用駆動装置を提供することができる。
【0027】
また、本発明に係る他の台車用駆動装置によれば、前記台車を前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回させるために、2つの前記駆動操舵輪の前記操舵手段および前記駆動手段を所定の動作に切り替える切替手段をさらに備えるので、前進、後退、横行、斜め移動またはその場で旋回の動作を実現することができる。
【0028】
また、本発明に係る台車によれば、上述した台車用駆動装置を備えるので、従来の4WS・4WD方式に比べて駆動操舵輪の数が半分で済み、塵や段差がある環境でも全方位移動を実現可能な省電力型の台車を提供することができる。
【0029】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る台車用駆動装置および電動台車は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「8.働きがいも経済成長も」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る台車用駆動装置および電動台車は、施工現場などで使用される搬送台車に有用であり、特に、省電力を図るのに適している。
【符号の説明】
【0031】
10 台車用駆動装置
12 台車本体
14 長方形(四角形)
16A,16B 駆動操舵輪
18A,18B オムニホイル
20A,20B 支持部材
22 操舵手段
24 駆動用モータ(駆動手段)
26,28 ブラケット
100 電動台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6