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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077123
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】転動体保持器、リニアガイド
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
F16C29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188979
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】中谷 草太
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA19
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA22
3J104BA24
3J104BA25
3J104BA33
3J104DA18
(57)【要約】
【課題】転動体保持器を容易に取り付け可能とする。
【解決手段】転動体保持器34Aは、案内レール2に沿って移動するスライダユニット3のユニット本体部30に取り付けられ、転動体4を保持する。転動体保持器34Aの端部には、ユニット本体部30の第1エンドキャップ32に設けられた第1スライダ係合部32cに係合させられる第1保持器係合部310が備えられている。第1保持器係合部310は、第1嵌合部311と、第1嵌合部311との間に嵌合隙間Sを形成する第1出張部312と、を有している。第1保持器係合部310は、嵌合隙間S内に第1スライダ係合部32cが嵌め込まれるようにして、第1スライダ係合部32cに係合可能となっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールに沿って移動するスライダユニットのユニット本体部に取り付けられ、前記案内レールに設けられたレール軌道溝と前記ユニット本体部に設けられたスライダ軌道溝との間に配置された複数の転動体を前記ユニット本体部に保持させる転動体保持器であって、
前記スライダ軌道溝に沿って延在するとともに前記スライダ軌道溝に対向するように配置され、前記ユニット本体部に前記転動体を保持させる保持器本体部と、
前記保持器本体部の端部に設けられ、前記ユニット本体部に設けられたスライダ係合部に係合させられる保持器係合部と、を備え、
前記保持器係合部は、
前記保持器本体部の端部から延びる嵌合部と、
前記保持器本体部の端部から延びるとともに、前記嵌合部との間に嵌合隙間を形成する出張部と、を有し、
前記ユニット本体部は、前記スライダ軌道溝が形成されるスライダ本体部と、前記スライダ本体部の両端部にそれぞれ設けられた一対のエンドキャップと、を有しており、
前記スライダ係合部は、一対の前記エンドキャップのうちの一方の前記エンドキャップに形成されるとともに、他方の前記エンドキャップ側に向って突出しており、
前記保持器係合部は、前記嵌合隙間内に前記スライダ係合部が嵌め込まれるようにして、前記スライダ係合部に係合可能となっている、転動体保持器。
【請求項2】
案内レールと、前記案内レールに沿って移動するスライダユニットと、前記案内レールに設けられたレール軌道溝と前記スライダユニットに設けられたスライダ軌道溝との間に配置された複数の転動体と、を備えるリニアガイドであって、
前記スライダユニットは、
前記スライダ軌道溝が形成されたスライダ本体部、及び前記スライダ本体部の両端部にそれぞれ設けられた一対のエンドキャップを有するユニット本体部と、
前記ユニット本体部に取り付けられ、前記転動体を前記ユニット本体部に保持させる転動体保持器と、を備え、
一対の前記エンドキャップのうちの一方の前記エンドキャップには、他方の前記エンドキャップ側に向って突出するスライダ係合部が設けられ、
前記転動体保持器は、
前記スライダ軌道溝に沿って延在するとともに前記スライダ軌道溝に対向するように配置され、前記ユニット本体部に前記転動体を保持させる保持器本体部と、
前記保持器本体部の端部に設けられ、前記スライダ係合部に係合させられる保持器係合部と、を備え、
前記保持器係合部は、
前記保持器本体部の端部から延びる嵌合部と、
前記保持器本体部の端部から延びるとともに、前記嵌合部との間に嵌合隙間を形成する出張部と、を有し、
前記保持器係合部は、前記嵌合隙間内に前記スライダ係合部が嵌め込まれるようにして、前記スライダ係合部に係合する、リニアガイド。
【請求項3】
前記レール軌道溝と前記スライダ軌道溝との対向方向において、前記嵌合部は、前記スライダ係合部よりも前記スライダ軌道溝側に位置し、前記出張部は、前記スライダ係合部よりも前記レール軌道溝側に位置している、請求項2に記載のリニアガイド。
【請求項4】
前記一方のエンドキャップには、差込孔が設けられ、
前記差込孔は、前記レール軌道溝と前記スライダ軌道溝との対向方向において、前記スライダ係合部よりも前記スライダ軌道溝側に位置し、
前記差込孔には、前記嵌合部が差し込まれる、請求項3に記載のリニアガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動体保持器、及び転動体保持器を備えるリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
案内レールと、案内レールに沿って移動するスライダユニットとを備えるリニアガイドがある。このようなリニアガイドは、案内レールに設けられたレール軌道溝とスライダユニットに設けられたスライダ軌道溝との間に配置された複数の転動体を備えている。例えば、特許文献1には、スライダユニットから転動体が脱落することを防止するため、転動体保持器によって転動体を保持することが記載されている。この転動体保持器は、スライダユニットに設けられた一対のエンドキャップに転動体保持器の両端部がそれぞれ嵌め込まれることによって、ユニット本体部に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-3102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転動体保持器の両端部を一対のエンドキャップにそれぞれ取り付ける場合、まず、転動体保持器の一方の端部が一方のエンドキャップに嵌め込まれる。その後、転動体保持器の他方の端部が他方のエンドキャップに嵌め込まれる。その場合、転動体保持器の一方の端部がエンドキャップに嵌め込まれた状態では、転動体保持器の姿勢が不安定になり、他方の端部の嵌め込み作業に手間が掛かることが考えられる。このため、本技術分野では、ユニット本体部への取り付けが容易な転動体保持器、及びこの転動体保持器を備えるリニアガイドが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の転動体保持器は、案内レールに沿って移動するスライダユニットのユニット本体部に取り付けられ、案内レールに設けられたレール軌道溝とユニット本体部に設けられたスライダ軌道溝との間に配置された複数の転動体をユニット本体部に保持させる転動体保持器であって、スライダ軌道溝に沿って延在するとともにスライダ軌道溝に対向するように配置され、ユニット本体部に転動体を保持させる保持器本体部と、保持器本体部の端部に設けられ、ユニット本体部に設けられたスライダ係合部に係合させられる保持器係合部と、を備え、保持器係合部は、保持器本体部の端部から延びる嵌合部と、保持器本体部の端部から延びるとともに、嵌合部との間に嵌合隙間を形成する出張部と、を有し、ユニット本体部は、スライダ軌道溝が形成されるスライダ本体部と、スライダ本体部の両端部にそれぞれ設けられた一対のエンドキャップと、を有しており、スライダ係合部は、一対のエンドキャップのうちの一方のエンドキャップに形成されるとともに、他方のエンドキャップ側に向って突出しており、保持器係合部は、嵌合隙間内にスライダ係合部が嵌め込まれるようにして、スライダ係合部に係合可能となっている。
【0006】
この転動体保持器は、保持器係合部の嵌合隙間内にスライダユニットのエンドキャップに形成されたスライダ係合部が嵌め込まれることによって、ユニット本体部に取り付けられる。つまり、転動体保持器は、嵌合隙間を形成する嵌合部と出張部とによってスライダ係合部を挟み込むようにして、ユニット本体部に取り付けられる。このため、転動体保持器をユニット本体部に取り付ける際に、保持器係合部が設けられた側の端部のみがエンドキャップのスライダ係合部に係合した状態であっても、転動体保持器の姿勢が安定する。これにより、この転動体保持器では、転動体保持器の姿勢が安定した状態で、他方の端部をエンドキャップに取り付けることができる。このように、この転動体保持器では、ユニット本体部への取り付けを容易とすることができる。
【0007】
本発明のリニアガイドは、案内レールと、案内レールに沿って移動するスライダユニットと、案内レールに設けられたレール軌道溝とスライダユニットに設けられたスライダ軌道溝との間に配置された複数の転動体と、を備えるリニアガイドであって、スライダユニットは、スライダ軌道溝が形成されたスライダ本体部、及びスライダ本体部の両端部にそれぞれ設けられた一対のエンドキャップを有するユニット本体部と、ユニット本体部に取り付けられ、転動体をユニット本体部に保持させる転動体保持器と、を備え、一対のエンドキャップのうちの一方のエンドキャップには、他方のエンドキャップ側に向って突出するスライダ係合部が設けられ、転動体保持器は、スライダ軌道溝に沿って延在するとともにスライダ軌道溝に対向するように配置され、ユニット本体部に転動体を保持させる保持器本体部と、保持器本体部の端部に設けられ、スライダ係合部に係合させられる保持器係合部と、を備え、保持器係合部は、保持器本体部の端部から延びる嵌合部と、保持器本体部の端部から延びるとともに、嵌合部との間に嵌合隙間を形成する出張部と、を有し、保持器係合部は、嵌合隙間内にスライダ係合部が嵌め込まれるようにして、スライダ係合部に係合する。
【0008】
このリニアガイドにおいて転動体保持器は、保持器係合部の嵌合隙間内にスライダユニットのエンドキャップに形成されたスライダ係合部が嵌め込まれることによって、ユニット本体部に取り付けられる。つまり、転動体保持器は、嵌合隙間を形成する嵌合部と出張部とによってスライダ係合部を挟み込むようにして、ユニット本体部に取り付けられる。このため、転動体保持器をユニット本体部に取り付ける際に、保持器係合部が設けられた側の端部のみがエンドキャップのスライダ係合部に係合した状態であっても、転動体保持器の姿勢が安定する。これにより、この転動体保持器では、転動体保持器の姿勢が安定した状態で、他方の端部をエンドキャップに取り付けることができる。このように、この転動体保持器を備えるリニアガイドでは、ユニット本体部への転動体保持器の取り付けを容易とすることができる。
【0009】
上記のリニアガイドにおいては、レール軌道溝とスライダ軌道溝との対向方向において、嵌合部は、スライダ係合部よりもスライダ軌道溝側に位置し、出張部は、スライダ係合部よりもレール軌道溝側に位置していてもよい。これにより、スライダ軌道溝内の転動体がスライダ軌道溝から飛び出そうとしても、転動体保持器の端部の嵌合部がスライダ係合部に係合することによって、転動体の飛び出しを防止できる。このように、リニアガイドでは、転動体をより確実にユニット本体部に保持させつつ、ユニット本体部に転動体保持器を容易に取り付けることができる。
【0010】
上記のリニアガイドにおいて、一方のエンドキャップには、差込孔が設けられ、差込孔は、レール軌道溝とスライダ軌道溝との対向方向において、スライダ係合部よりもスライダ軌道溝側に位置し、差込孔には、嵌合部が差し込まれていてもよい。この場合、転動体保持器をユニット本体部に取り付ける際に、転動体保持器の嵌合部を差込孔に差し込んで取付作業を行うことができる。つまり、転動体保持器の取付時に嵌合部を差込孔に差し込むことによって、転動体保持器の姿勢をより一層安定させることができる。これにより、リニアガイドでは、ユニット本体部に転動体保持器をより一層容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユニット本体部への転動体保持器の取り付けを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るリニアガイドの概略構成を示す平面図である。
図2図2は、図1のリニアガイドを案内レールの延在方向に沿って見た側面図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿って切った断面図である。
図4図4は、図3に示される転動体保持器がユニット本体部から取り外された状態を示す断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、転動体保持器をユニット本体部に取り付ける様子を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1及び図2に示されるように、リニアガイド1は、案内レール2と、案内レール2に沿って移動(相対移動)するスライダユニット3と、スライダユニット3に保持された複数の転動体4とを備えている。案内レール2は、その高さ方向に貫通するボルト孔B1を有している。案内レール2は、ボルト孔B1に差し込まれたボルトによって、例えば工作機械の基台K(図2参照)等に固定される。
【0015】
以下、説明の都合上、案内レール2に対して基台K側の方向を「下」、その反対方向を「上」と称することがある。また、図2に示される状態において、図2における左方向を「左」、図2における右方向を「右」と称することがある。なお、図1は、スライダユニット3の内部構成を示すために、スライダユニット3の左側の一部が破断された状態で示されている。同様に、図2は、スライダユニット3の内部構成を示すために、スライダユニット3の左側の部分を断面図とした状態で示されている。
【0016】
案内レール2の左側面2aには、第1レール軌道溝(レール軌道溝)M11が形成されている。第1レール軌道溝M11は、左側面2aにおいて高さ方向の略中央位置に設けられている。第1レール軌道溝M11の底部には、小溝M11aが形成されている。案内レール2の左側面2aの上端部には、第2レール軌道溝M12が形成されている。第1レール軌道溝M11、小溝M11a及び第2レール軌道溝M12は、それぞれ案内レール2の延在方向に沿って直線状に設けられている。
【0017】
同様に、案内レール2の右側面2bには第1レール軌道溝(レール軌道溝)M21が形成されている。第1レール軌道溝M21は、右側面2bにおいて高さ方向の略中央位置に設けられている。第1レール軌道溝M21の底部には、小溝M21aが形成されている。案内レール2の右側面2bの上端部には、第2レール軌道溝M22が形成されている。第1レール軌道溝M21、小溝M21a及び第2レール軌道溝M22は、それぞれ案内レール2の延在方向に沿って直線状に設けられている。小溝M11a,M12aは、後述する転動体保持器34A,34Cとの干渉を避けるための逃げ溝として用いられる。
【0018】
スライダユニット3は、ユニット本体部30、並びに転動体保持器34A及び34Cを備えている。ユニット本体部30は、スライダ本体部31、第1エンドキャップ(エンドキャップ)32、及び第2エンドキャップ(エンドキャップ)33を備えている。スライダ本体部31の上面には、スライダユニット3によって直線運動させる対象物をスライダ本体部31に固定するためのボルト孔B2が複数設けられている。スライダ本体部31は、案内レール2の左側面2a、右側面2b及び上面2cに対向する内壁面31aを有している。つまり、スライダ本体部31は、案内レール2が嵌め込まれる凹状の内壁面31aを有している。
【0019】
なお、スライダ本体部31(ユニット本体部30)の左側部分と右側部分とは互いに同様の構成となっている。ここでは、スライダ本体部31(ユニット本体部30)の左側部分の構成について詳細に説明する。
【0020】
スライダ本体部31の内壁面31aのうち案内レール2の左側面2aと対向する左内壁面31bには、第1スライダ軌道溝(スライダ軌道溝)N11及び第2スライダ軌道溝N12が形成されている。第1スライダ軌道溝N11及び第2スライダ軌道溝N12は、それぞれ案内レール2の延在方向に沿って直線状に設けられている。第1スライダ軌道溝N11は、案内レール2の第1レール軌道溝M11と対向している。第2スライダ軌道溝N12は、案内レール2の第2レール軌道溝M12と対向している。
【0021】
スライダ本体部31の内部において第1スライダ軌道溝N11の略左側の位置には、転動体4が通過可能な第1転動体戻し孔H11が設けられている。スライダ本体部31の内部において第2スライダ軌道溝N12の略左側の位置には、転動体4が通過可能な第2転動体戻し孔H12が設けられている。第1転動体戻し孔H11及び第2転動体戻し孔H12は、それぞれ案内レール2の延在方向に沿って直線状に設けられている。
【0022】
第1エンドキャップ32及び第2エンドキャップ33は、スライダ本体部31における案内レール2の延在方向の両端部にそれぞれ取り付けられている。第1エンドキャップ32は、第1スライダ軌道溝N11、第2スライダ軌道溝N12、第1転動体戻し孔H11及び第2転動体戻し孔H12における第1エンドキャップ32側のそれぞれの開口端(一方の開口端)を塞いでいる。第2エンドキャップ33は、第1スライダ軌道溝N11、第2スライダ軌道溝N12、第1転動体戻し孔H11及び第2転動体戻し孔H12における第2エンドキャップ33側のそれぞれの開口端(他方の開口端)を塞いでいる。
【0023】
図3に示されるように、第1エンドキャップ32には、第1スライダ軌道溝N11の一方の開口端と第1転動体戻し孔H11の一方の開口端とをつなぐとともに、転動体4が通過可能な連結孔32aが形成されている。連結孔32aは、所定の曲率半径で湾曲している。第2エンドキャップ33には、第1スライダ軌道溝N11の他方の開口端と第1転動体戻し孔H11の他方の開口端とをつなぐとともに、転動体4が通過可能な連結孔33aが形成されている。連結孔33aは、所定の曲率半径で湾曲している。これにより、ユニット本体部30には、第1スライダ軌道溝N11、第1エンドキャップ32の連結孔32a、第1転動体戻し孔H11、及び第2エンドキャップ33の連結孔33aによって、転動体4が循環可能な循環路L11が形成される。
【0024】
図2に示される第2スライダ軌道溝N12及び第2転動体戻し孔H12も同様に、第1エンドキャップ32及び第2エンドキャップ33にそれぞれ形成された連結孔によって端部同士が互いにつながっている。これにより、ユニット本体部30には、第2スライダ軌道溝N12、第2転動体戻し孔H12、並びに第1エンドキャップ32及び第2エンドキャップ33にそれぞれ形成された連結孔によって、転動体4が循環可能な循環路L12が形成される。
【0025】
なお、図2に示されるように、ユニット本体部30の右側部分にも、転動体4が循環可能な循環路L21及びL22が形成されている。ユニット本体部30の右側に形成された循環路L21及び循環路L22は、ユニット本体部30の左側に形成された循環路L11及びL12とそれぞれ同様の構成となっている。このため、循環路L21及びL22の詳細な説明は省略する。
【0026】
転動体4は、球状に形成されている。転動体4は、案内レール2に沿ってスライダユニット3がスライドすることにより、循環路L11,L12,L21及びL22のそれぞれの中で循環する。図1及び図2に示されるように、循環路L11内を循環する複数の転動体4のうち、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との間に配置された転動体4は、転動体保持器34Aによってユニット本体部30に保持されている。転動体保持器34Aは、第1レール軌道溝M11に設けられた小溝M11aに嵌り込んでいる。循環路L21内を循環する転動体4も同様に、転動体保持器34Cによってユニット本体部30に保持されている。転動体保持器34Cは、第1レール軌道溝M21に設けられた小溝M21aに嵌り込んでいる。
【0027】
次に、転動体保持器34A及び34Cの構成及びユニット本体部30への取付方法の詳細について説明する。ここでは、転動体保持器34Aの構成及び取付方法を代表させて説明する。転動体保持器34Cの構成及び取付方法は転動体保持器34Aの構成及び取付方法と同様である。
【0028】
図1及び図3に示されるように、転動体保持器34Aは、ユニット本体部30に取り付けられ、転動体4をユニット本体部30に保持させる。ここでは、転動体保持器34Aは、棒状を呈しており、その両端部がユニット本体部30の第1エンドキャップ32及び第2エンドキャップ33にそれぞれ取り付けれる。なお、図3(及び図4)では転動体4が省略されている。
【0029】
より詳細には、図3及び図4に示されるように、転動体保持器34Aは、保持器本体部300、第1保持器係合部(保持器係合部)310、及び第2保持器係合部(保持器係合部)320を備えている。保持器本体部300は、棒状を呈している。保持器本体部300は、第1スライダ軌道溝N11に沿って延在し、第1スライダ軌道溝N11に対向するように配置される。保持器本体部300は、ユニット本体部30に転動体4を保持させる。
【0030】
第1保持器係合部310は、保持器本体部300における第1エンドキャップ32側の端部(一方の端部)に設けられている。第1保持器係合部310は、第1エンドキャップ32に設けられた第1差込孔(差込孔)32d(図4参照)に一部が差し込まれるとともに、第1スライダ係合部(スライダ係合部)32cに係合させられる。
【0031】
なお、第1エンドキャップ32には、上述した連結孔32aに加え、すくい上げ部32b、第1スライダ係合部32c、及び第1差込孔32dが設けられている。すくい上げ部32bは、案内レール2の第1レール軌道溝M11内に張り出している。すくい上げ部32bは、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との間を転動する転動体4を第1エンドキャップ32の連結孔32aに導入する。第1スライダ係合部32cは、第2エンドキャップ33側に向って突出している。第1スライダ係合部32cは、すくい上げ部32bよりもスライダ本体部31から離れた位置に設けられている。
【0032】
第1差込孔32dは、第1スライダ係合部32cに隣接して設けられている。第1差込孔32dは、第1レール軌道溝M11と第1スライダ軌道溝N11との対向方向において、第1スライダ係合部32cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置している。第1差込孔32dには、後述する第1保持器係合部310の第1嵌合部311の先端部を差し込み可能となっている。
【0033】
第1スライダ係合部32cに係合する第1保持器係合部310は、第1嵌合部(嵌合部)311、及び第1出張部(出張部)312を有している。第1嵌合部311は、保持器本体部300の第1エンドキャップ32側の端部から延びている。第1出張部312は、保持器本体部300の第1エンドキャップ32側の端部から延びるとともに、第1嵌合部311との間に嵌合隙間Sを形成している(図4参照)。嵌合隙間Sの形状は、第1スライダ係合部32cの形状と略一致している。
【0034】
第1嵌合部311は、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第1出張部312から離反するように第1スライダ軌道溝N11側に向って湾曲している。なお、第1嵌合部311は、第1エンドキャップ32の連結孔32a内の転動体4の移動を妨げないようになっている。
【0035】
第1保持器係合部310は、第1嵌合部311の先端部が第1差込孔32dに差し込まれるとともに嵌合隙間S内に第1スライダ係合部32cが嵌め込まれるようにして、第1スライダ係合部32cに係合する。より詳細には、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第1嵌合部311は、第1スライダ係合部32cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置し、第1差込孔32dに差し込まれている。第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第1出張部312は、第1スライダ係合部32cよりも第1レール軌道溝M11側に位置している。
【0036】
言い換えると、第1保持器係合部310は、第1嵌合部311が第1差込孔32dに差し込まれた状態で、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において第1スライダ係合部32cを挟み込むようにして、第1スライダ係合部32c(第1エンドキャップ32)に係合している。
【0037】
第1保持器係合部310と同様に、第2保持器係合部320は、保持器本体部300における第2エンドキャップ33側の端部(他方の端部)に設けられている。第2保持器係合部320は、第2エンドキャップ33に設けられた第2差込孔(差込孔)33d(図4参照)に一部が差し込まれるとともに、第2スライダ係合部(スライダ係合部)33cに係合させられる。
【0038】
なお、第2エンドキャップ33には、上述した連結孔33aに加え、すくい上げ部33b、第2スライダ係合部33c、及び第2差込孔33dが設けられている。すくい上げ部33bは、案内レール2の第1レール軌道溝M11内に張り出している。すくい上げ部33bは、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との間を転動する転動体4を第2エンドキャップ33の連結孔33aに導入する。第2スライダ係合部33cは、第1エンドキャップ32側に向って突出している。第2スライダ係合部33cは、すくい上げ部33bよりもスライダ本体部31から離れた位置に設けられている。
【0039】
第2差込孔33dは、第2スライダ係合部33cに隣接して設けられている。第2差込孔33dは、第1レール軌道溝M11と第1スライダ軌道溝N11との対向方向において、第2スライダ係合部33cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置している。第2差込孔33dには、後述する第2保持器係合部320の第2嵌合部321の先端部を差し込み可能となっている。
【0040】
第2スライダ係合部33cに係合する第2保持器係合部320は、第2嵌合部321、及び第2出張部322を有している。第2嵌合部321は、保持器本体部300の第2エンドキャップ33側の端部から延びている。第2出張部322は、保持器本体部300の第2エンドキャップ33側の端部から延びるとともに、第2嵌合部321との間に嵌合隙間Sを形成している(図4参照)。嵌合隙間Sの形状は、第2スライダ係合部33cの形状と略一致している。
【0041】
第2嵌合部321は、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第2出張部322から離反するように第1スライダ軌道溝N11側に向って湾曲している。なお、第2嵌合部321は、第2エンドキャップ33の連結孔33a内の転動体4の移動を妨げないようになっている。
【0042】
第2保持器係合部320は、第2嵌合部321の先端部が第2差込孔33dに差し込まれるとともに嵌合隙間S内に第2スライダ係合部33cが嵌め込まれるようにして、第2スライダ係合部33cに係合する。より詳細には、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第2嵌合部321は、第2スライダ係合部33cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置し、第2差込孔33dに差し込まれている。第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において、第2出張部322は、第2スライダ係合部33cよりも第1レール軌道溝M11側に位置している。
【0043】
言い換えると、第2保持器係合部320は、第2嵌合部321が第2差込孔33dに差し込まれた状態で、第1スライダ軌道溝N11と第1レール軌道溝M11との対向方向において第2スライダ係合部33cを挟み込むようにして、第2スライダ係合部33c(第2エンドキャップ33)に係合している。転動体保持器34Cについても、転動体保持器34Aと同様の構成によってユニット本体部30に係合している。
【0044】
次に、転動体保持器34Aのユニット本体部30への取付方法について説明する。図5(a)及び図5(b)に示されるように、転動体保持器34Aの第1保持器係合部310を第1エンドキャップ32側に向ける。そして、スライダ本体部31側から第1エンドキャップ32の第1スライダ係合部32cに向って転動体保持器34Aを差し込むようにして、第1嵌合部311を第1差込孔32dに差し込むとともに第1保持器係合部310を第1スライダ係合部32cに係合させる。
【0045】
その後、転動体保持器34Aを弓状に湾曲させ、転動体保持器34Aの第2嵌合部321を第2エンドキャップ33の第2差込孔33dに差し込むとともに第2保持器係合部320を第2スライダ係合部33cに係合させる。なお、転動体保持器34Aの第1保持器係合部310側と第2保持器係合部320側とは同様の構成であるため、第2保持器係合部320側が第2エンドキャップ33に先に取り付けられてもよい。転動体保持器34Cについても、転動体保持器34Aと同様の方法によってユニット本体部30に取り付けることができる。
【0046】
以上のように、例えば、転動体保持器34Aは、嵌合隙間S内に第1エンドキャップ32に形成された第1スライダ係合部32cが嵌め込まれることによって、ユニット本体部30に取り付けられる。つまり、転動体保持器34Aは、嵌合隙間Sを形成する第1嵌合部311と第1出張部312とによって第1スライダ係合部32cを挟み込むようにして、第1エンドキャップ32に取り付けられる。このため、転動体保持器34Aをユニット本体部30に取り付ける際に、第1保持器係合部310が設けられた側の端部のみが第1スライダ係合部32cに係合した状態であっても、転動体保持器34Aが倒れることなく姿勢が安定する。これにより、この転動体保持器34Aでは、転動体保持器34Aの姿勢が安定した状態で、他方の端部(第2保持器係合部320側の端部)を第2エンドキャップ33に取り付けることができる。このように、転動体保持器34A及び34C並びにこの転動体保持器34A及び34Cを備えるリニアガイド1では、ユニット本体部30に転動体保持器34A及び34Cを容易に取り付けることができる。
【0047】
例えば、転動体保持器34Aでは、第1レール軌道溝M11と第1スライダ軌道溝N11との対向方向において、第1嵌合部311は第1スライダ係合部32cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置し、第2嵌合部321は第2スライダ係合部33cよりも第1スライダ軌道溝N11側に位置している。これにより、第1スライダ軌道溝N11内の転動体4が第1スライダ軌道溝N11から飛び出そうとしても、転動体保持器34Aの端部の第1嵌合部311及び第2嵌合部321が第1スライダ係合部32c及び第2スライダ係合部33cにそれぞれ係合し、転動体4の飛び出しを防止できる。転動体保持器34Cについても転動体保持器34Aと同様に、転動体4の飛び出しを防止できる。このように、リニアガイド1では、転動体4をより確実にユニット本体部30に保持させつつ、ユニット本体部30に転動体保持器34A及び34Cを容易に取り付けることができる。
【0048】
例えば、転動体保持器34Aが係合する第1スライダ係合部32c及び第2スライダ係合部33cに隣接する位置には、第1差込孔32d及び第2差込孔33dがそれぞれ設けられている。第1差込孔32d及び第2差込孔33dには、転動体保持器34Aの第1嵌合部311及び第2嵌合部321がそれぞれ差し込み可能となっている。この場合、転動体保持器34Aをユニット本体部30に取り付ける際に、例えば、転動体保持器34Aの第1嵌合部311を第1差込孔32dに差し込んで取付作業を行うことができる。つまり、転動体保持器34Aの取付時に第1嵌合部311を第1差込孔32dに差し込むことによって、転動体保持器34Aの姿勢をより一層安定させることができる。転動体保持器34Cについても、転動体保持器34Aと同様に取り付けることができる。これにより、リニアガイド1では、ユニット本体部30に転動体保持器34A及び34Cをより一層容易に取り付けることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、転動体保持器34Aは、両端部にそれぞれ第1保持器係合部310及び第2保持器係合部320を備えている。これに限定されず、転動体保持器34Aは、第1保持器係合部310及び第2保持器係合部320のいずれか一方のみを有していてもよい。例えば、転動体保持器34Aが第1保持器係合部310のみを有している場合、まず第1保持器係合部310を第1スライダ係合部32cに係合させ、その後に他方の端部をユニット本体部30に取り付ければよい。転動体保持器34Cも同様に、一方の端部のみに保持器係合部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…リニアガイド、2…案内レール、3…スライダユニット、4…転動体、30…ユニット本体部、31…スライダ本体部、32…第1エンドキャップ(エンドキャップ)、32c…第1スライダ係合部(スライダ係合部)、32d…第1差込孔(差込孔)、33…第2エンドキャップ(エンドキャップ)、33c…第2スライダ係合部(スライダ係合部)、33d…第2差込孔(差込孔)、34A,34C…転動体保持器、300…保持器本体部、310…第1保持器係合部(保持器係合部)、311…第1嵌合部(嵌合部)、312…第1出張部(出張部)、320…第2保持器係合部(保持器係合部)、321…第2嵌合部(嵌合部)、322…第2出張部(出張部)、M11…第1レール軌道溝(レール軌道溝)、M21…第1レール軌道溝(レール軌道溝)、N11…第1スライダ軌道溝(スライダ軌道溝)、S…嵌合隙間。
図1
図2
図3
図4
図5