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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077135
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】大豆加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/00 20210101AFI20240531BHJP
【FI】
A23L11/00 A
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189000
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116943
【氏名又は名称】旭松食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】小原 弘幹
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LG01
4B020LP02
4B020LP03
4B020LP04
4B020LP08
4B020LP15
4B020LP30
(57)【要約】
【課題】被処理物に対して磨砕力を発揮する混錬機の狭隘な間隙に前記被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法。連続して製造を行っている間に成形条件の細かな調整を行うことなしに連続製造を可能とし、製造される大豆加工品の形状・大きさを所望の形状・大きさで安定させることができ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造できる大豆加工品の製造方法を提案する。
【解決手段】被処理物を浸漬した後の浸漬大豆とし、浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている浸漬大豆を混錬機による磨砕・成形工程に供するとともに、混錬機による磨砕・成形工程を、混錬機の温度を所定の温度範囲に保って行う。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対して磨砕力を発揮する混錬機の狭隘な間隙に前記被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法であって、
前記被処理物を浸漬した後の浸漬大豆とし、
前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆を前記混錬機による磨砕・成形工程に供するとともに、
前記混錬機による磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を所定の温度範囲に保って行う
大豆加工食品の製造方法。
【請求項2】
所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が13w/w%以上で17w/w%以下であり、
前記磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を93℃~112℃の温度範囲に保って行う
請求項1記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項3】
篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される請求項1又は2記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項4】
篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が20w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される請求項1又は2記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項5】
篩目が5meshパス以下サイズの成形物が10w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される請求項1又は2記載の大豆加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記混錬機がコロイドミルである請求項3記載の大豆加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大豆加工品の製造方法に関し、特に、被処理物に対して剪断力、混錬力、磨砕力などを発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物に対して剪断力、混錬力、磨砕力などを発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法に関しては従来から種々の提案が行われている。
【0003】
特許文献1には、コロイドミルを用いて、豆類又は穀類を原料とし、外観が繊維状で、適当な弾力と肉のようなテクスチャーを有する繊維状食品素材を製造する方法が提案されている。豆類又は穀類を原料とし、その含有水分を30~60重量%に調節し、しかる後これをコロイドミルで摩砕して繊維状にする繊維状食品素材の製造法である。種々の肉類の加工食品に対し、肉の代用品として使用できる食品素材を製造できるとされている。
【0004】
特許文献2には、特許文献1で提案されている製造方法などに使用される磨砕成形機に改良を加えて、生産効率、製品の均質性および成形性を向上させ、安定した多量生産を可能にするとされている磨砕成形機が提案されている。
【0005】
特許文献3には、脱脂大豆粉またはこれを更に加工した大豆蛋白に、食用油及び水を添加したもの、あるいは丸大豆、脱皮大豆または脱脂大豆粉に水を添加したものを原料とし、二軸型エクストルーダーで処理することにより肉様食品を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53-81645号公報
【特許文献2】特開昭60-106547号公報
【特許文献3】特開昭60-199350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大豆を原料とし、被処理物に対して剪断力、混錬力、磨砕力などを発揮する混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行う肉様の大豆加工食品を製造する方法では、製造された大豆加工品を所望の同じ形状で安定させることが簡単ではなかった。
【0008】
例えば、コロイドミルを用いて肉様の大豆加工食品を製造する方法に関する上述の先行技術文献には記載されていないが、コロイドミルを用いて連続して製造を行う場合、連続製造工程の間に成形条件を一定に保っていると製造された大豆加工品の形状が同じ形状で安定せず徐々に小さくなることが知られている。
【0009】
このため、コロイドミルを用いた連続加工で大豆から大豆加工品を製造する場合、製造された大豆加工品を同じ形状で安定させるためには、連続製造工程の間における成形条件の細かな調整が必要であった。また、連続加工によって製造された大豆加工品を同じ形状で安定させるために原料として使用する大豆品種を限定することが行われることもあった。
【0010】
成形物の形状を安定させることができると大豆加工品の均一化が進み、大豆加工品に係る商品の品質向上を見込むことができる。また、後処理工程での粒径の調整でより大きな粒状大豆加工品の製造を目指す上でも有利になると考えられる。
【0011】
そこで、この発明は、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法において、連続して製造を行っている間に成形条件の細かな調整を行うことなしに連続製造を可能とする大豆加工品の製造方法、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させることのできる大豆加工品の製造方法、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造することが可能な大豆加工品の製造方法を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下のように例示することができる。
[1]
被処理物に対して磨砕力を発揮する混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法であって、
前記被処理物を浸漬した後の浸漬大豆とし、
前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆を前記混錬機による磨砕・成形工程に供するとともに、
前記混錬機による磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を所定の温度範囲に保って行う
大豆加工食品の製造方法。
【0013】
[2]
所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が13w/w%以上で17w/w%以下であり、
前記磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を93℃~112℃の温度範囲に保って行う
[1]の大豆加工食品の製造方法。
【0014】
[3]
篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される[1]又は[2]の大豆加工食品の製造方法。
【0015】
[4]
篩目が5meshパス以下のサイズの成型物が20w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される[1]又は[2]の大豆加工食品の製造方法。
【0016】
[5]
篩目が5meshパス以下のサイズの成型物が10w/w%以下である前記大豆加工食品が製造される[1]又は[2]の大豆加工食品の製造方法。
【0017】
[6]
前記混錬機がコロイドミルである[3]の大豆加工食品の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法において、連続して製造を行っている間に成形条件の細かな調整を行うことなしに連続製造を可能とする大豆加工品の製造方法を提供することができる。
【0019】
また、この発明によれば、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する上述の方法において、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させることのできる大豆加工品の製造方法を提供することができる。
【0020】
更に、この発明によれば、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する上述の方法において、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造することが可能な大豆加工品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明者は、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法において、連続して製造を行っている間に成形条件の細かな調整を行うことなしに連続製造を可能とし、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造できる大豆加工品の製造方法を鋭意検討した。
【0022】
上述した製造方法で製造した肉様の大豆加工食品の場合、発明者が検討したところによれば、成形物のサイズが5meshパス以下(成形物の大きさが5meshの篩を通過する(小さい)画分量)であると肉様食感を感じにくいことがわかった。
【0023】
そこで、上述した製造方法で肉様の大豆加工食品を製造し、5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下に抑えられている肉様の大豆加工食品を製造することを検討した。
【0024】
本願発明者の検討によれば、上述した製造方法で肉様の大豆加工食品を製造した際に、5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下に抑えられている肉様の大豆加工食品は、好ましい肉様食感を呈するものとなり、従来と比較して、代替肉用途への適応をより期待できるものになった。この観点から、上述した製造方法で肉様の大豆加工食品を製造した際に、5meshパス以下のサイズの成形物が20w/w%以下に抑えられている肉様の大豆加工食がより好ましく、上述した製造方法で肉様の大豆加工食品を製造した際に、5meshパス以下のサイズの成形物が10w/w%以下に抑えられている肉様の大豆加工食が更に好ましかった。
【0025】
このような検討から生まれた本発明の一実施形態は、
被処理物に対して磨砕力を発揮する混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法であって、
前記被処理物を浸漬した後の浸漬大豆とし、
前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆を前記混錬機による磨砕・成形工程に供するとともに、
前記混錬機による磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を所定の温度範囲に保って行う
大豆加工食品の製造方法である。
【0026】
被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法では、水分含有率によって原料の制御を行うことがあった。
【0027】
本願発明者が検討したところ、同一の水分含有率であっても目的とした形状にならない場合が存在した。これは大豆の品種ごとの特性の差であると考えられていたが、成形不良となった大豆を調べていくと成形時の浸漬大豆においてタンパク質含有率が正常に成形できている物と比較して低い傾向があることを見いだした。
【0028】
この検討結果から、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する場合、浸漬を行った後の大豆中のタンパク質含有率を調整することで、成形物の形状・サイズに変動が生じることを見出した。
【0029】
被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する方法で使用する混錬機としてコロイドミルが用いられる場合を検討すると、コロイドミルの砥石板で磨砕と同時に成形が行われている。
【0030】
そこで、磨砕の際に砥石板で発生する摩擦熱も成形に利用されていると考えられている。また、コロイドミルに対する加熱を行っていないため、成形時に発生する前述の摩擦熱のみで、成形に必要な熱が賄われていると考えられている。
【0031】
大豆が砥石板の間を通過する際に前述の摩擦熱の一部の熱は大豆に移行し、排出されるが、大部分の熱は砥石板側に残っていて、コロイドミル表面から放熱されていると考えられる。
【0032】
砥石板で発生する摩擦熱はコロイドミルの運転条件を調整し、摩擦熱の発生を抑えるか、大豆の通過量を増やし、排出量を増やすことによって制御可能である。
【0033】
しかし、コロイドミルを用いた大豆加工品の製造では、熱の生成・排出と大豆加工品の成形が同一の操作となっていることから、制御可能であるのは、熱の生成・排出と大豆加工品の成形のバランスが崩れない範囲のみで、この限定されている成形条件の範囲を逸脱する際にはその都度、成形条件を調整する必要があり、成形物の形状を安定させるためには細かな調整が必要になっていると考えられる。
【0034】
コロイドミルでの大豆加工品の成形において、砥石板同士の間隔等を成形に適した条件にしようとすると必要な熱量よりも多くの摩擦熱が発生する傾向があり、発生した熱は十分な発散ができず、砥石板及びコロイドミルに蓄積していくが、コロイドミルを用いた従来の大豆加工品の製造方法では温度コントロールは行っていなかった。
【0035】
このような事情は、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する場合に共通していると考えられる。
【0036】
本願発明者は、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する場合に、前記混錬機の温度を制御・調整することで、成形物の形状・サイズに変動が生じることを見つけ出した。
【0037】
これによって、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造するにあたり、
前記被処理物を浸漬した後の浸漬大豆とし、
前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている前記浸漬大豆を前記混錬機による磨砕・成形工程に供するとともに、
前記混錬機による磨砕・成形工程を、前記混錬機の温度を所定の温度範囲に保って行う
ことで、連続して製造を行っている間に成形条件の細かな調整を行うことなしに連続製造を可能とし、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造できることを見出したものである。
【0038】
被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行うことで、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する上述の実施形態に係る大豆加工食品の製造方法は、以下に説明する原料の調整工程と、成形工程とからなる。
【0039】
(原料の調整工程)
本発明の実施形態に係る大豆加工食品の製造方法では、被処理物に対して磨砕力を発揮するコロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させて連続的に磨砕処理、成形処理を行う。
【0040】
この際、被処理物は、浸漬を行った後の大豆である浸漬大豆とし、前記混錬機による磨砕・成形工程に供する浸漬大豆を準備する原料の調整工程として、浸漬を行った後の浸漬大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されているように大豆を浸漬する工程を採用している。
【0041】
上述したように、浸漬した大豆を原料として前記混錬機を用いて磨砕・成形工程を行って肉様の大豆加工食品を連続的に製造する場合、浸漬を行った後の大豆中のタンパク質含有率を調整することで、成形物の形状・サイズに変動が生じる。
【0042】
浸漬を行った後の浸漬大豆中のタンパク質含有率を所望の範囲に調整することで、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造できる。
【0043】
本願発明者の検討によれば、所定の範囲に調整されている前記浸漬を行った後の前記浸漬大豆中のタンパク質含有率が13w/w%以上で17w/w%以下であることが、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造する上で望ましく望ましい。
【0044】
浸漬大豆のタンパク質含有率で浸漬の管理を行うということは今まで実施されておらず、従来は、浸漬後の水分のみ管理を行っていた。本発明では浸漬後の大豆中のタンパク質含有率を13w/w%以上で17w/w%以下に調整することで、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造できるようにしたものである。
【0045】
すなわち、浸漬後の大豆中のタンパク質含有率を13w/w%以上で17w/w%以下に調整することで、原料大豆のタンパク質含量の影響を低減し、安定した成形を可能にした。
【0046】
これにより、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下である大豆加工食品、好ましくは、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が20w/w%以下である大豆加工食品、より好ましくは、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が10w/w%以下である大豆加工食品を製造することも可能である。
【0047】
上述している浸漬後の浸漬大豆中のタンパク質含有率は、大豆乾燥重量に対して、タンパク質係数5.71として測定したものである。
【0048】
浸漬後の浸漬大豆中のタンパク質含有率の調整は、例えば、原料大豆の浸漬程度の違いにより行うことができる。水温や浸漬時間には特段の制限はないが、浸漬時間が長くなる際には、水温25℃以下であることが望ましい。
【0049】
このように調整した大豆から水を切り、蒸気を用いて加熱し大豆表面の殺菌を行ったものを次工程の成形工程に供する。
【0050】
(成形工程)
本発明の実施形態に係る大豆加工食品の製造方法では、上述した原料の調整工程で調整した原料(浸漬後の大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている大豆)を被処理物として用い、コロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させ、被処理物に対して磨砕力を発揮して連続的に磨砕処理、成形処理を行う。この際、前記混錬機の温度を所定の温度範囲に保って磨砕・成形を行う成形工程を採用している。
【0051】
上述したような混錬機での大豆加工品の成形において、混錬機の狭隘な間隙を形成している部材同士の間隔等を成形に適した条件にしようとすると必要な熱量よりも多くの摩擦熱が発生する傾向があり、発生した熱は十分な発散ができず、狭隘な間隙を形成している部材や混錬機に蓄積していく。
【0052】
本実施形態では、上述したように摩擦熱が発生しても、磨砕・成形中の混錬機の温度範囲を93℃~112℃に制御し、このように温度制御されている混錬機により磨砕・成形工程を連続的に行うようにした。
【0053】
磨砕・成形中の混錬機を93℃~112℃の温度範囲に制御する方法としては、混錬機の狭隘な間隙を形成している部材を冷却できれば良いので、混錬機の狭隘な間隙を形成している部材に水などの冷媒を流動させる方法を採用することができる。
【0054】
例えば、混錬機がコロイドミルである場合、コロイドミルの砥石板が冷却できれば良いので、コロイドミルの砥石板に水などの冷媒を流動させ、上述したように摩擦熱が発生しても、砥石板を93℃~112℃の温度範囲に保ち、コロイドミルを93℃~112℃の温度範囲に保つことができる。なお、コロイドミルで一方の砥石板が固定され、他方の砥石板が回転している構成の場合、固定されている砥石板の方だけを冷却することでコロイドミルの温度制御を行う構成にすることができる。
【0055】
従来のコロイドミルでは、砥石板は、鉄製または人工砥石製を選択可能であるが、食品衛生の観点から材質は金属であることが望ましい。
【0056】
コロイドミルとしては、大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造する際に従来から使用されているものであって、上述したように砥石板を冷却する等により、磨砕・成形工程を行っている間93℃~112℃の温度範囲に制御できるものであればいずれも採用できる。
【0057】
例えば、スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)をコロイドミルとして使用することができる。スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)はミル全体を冷却する機構を備えているので、磨砕・成形工程を行っている間93℃~112℃の温度範囲に制御する上で有利である。
【0058】
上述したように、93℃~112℃の温度範囲に制御されながら、上述した調整工程で調整した原料(浸漬後の大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている大豆)を連続的に磨砕・成形するコロイドミルは、その砥石板同士の間隔を0.05mm~0.1mm、回転数1800rpm~2200rpmで使用することができる。
【0059】
なお、狭隘な間隙に被処理物を通過させ、被処理物に対して磨砕力を発揮して連続的に磨砕処理、成形処理を行う混錬機として従来からこの技術分野で使用されていたものであればコロイドミルに限らず、種々の従来公知の混錬機を用い、上述した成形工程を行うことで大豆加工食品を製造することができる。
【0060】
すなわち、上述した調整工程で調整した原料(浸漬後の大豆中のタンパク質含有率が所定の範囲に調整されている大豆)を被処理物として用い、コロイドミル、エクストルーダーなどの混錬機の狭隘な間隙に被処理物を通過させ、被処理物に対して磨砕力を発揮して連続的に磨砕処理、成形処理を行う際に、前記混錬機の温度範囲を93℃~112℃に制御し、このように温度制御されている混錬機により磨砕・成形工程を連続的に行うことで、製造される大豆加工品の形状・大きさを、所望の形状・大きさで安定させ、所望の大きさの範囲の大豆加工品を安定的に製造することができる。
【0061】
これにより、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が50w/w%以下である大豆加工食品、好ましくは、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が20w/w%以下である大豆加工食品、より好ましくは、篩目が5meshパス以下のサイズの成形物が10w/w%以下である大豆加工食品を製造することも可能である。
【0062】
以下、狭隘な間隙に被処理物を通過させ、被処理物に対して磨砕力を発揮して連続的に磨砕処理、成形処理を行う混錬機としてコロイドミルを使用している本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例及び、上述した実施の形態に限られることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【実施例0063】
浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて磨砕・成形工程を行うことで肉様の大豆加工食品を製造するにあたり、コロイドミルの温度を制御・調整することで、成形物のサイズがどのようになるかを検討した。
【0064】
コロイドミルとしてスーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)(砥石板の大きさは直径24cm)を用いた。
【0065】
スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)は、ミル全体を冷却する機構を備えるので、その機構を用いて、コロイドミルによる磨砕・成形工程におけるコロイドミルの温度管理を行った。
【0066】
スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)では上部側の砥石板が固定、下部側の砥石板が回転している。ここでは、回転している下部側の砥石板への冷却機構設置は行わず、固定されている上部側の砥石板を水冷によって冷却することでコロイドミルによる磨砕・成形工程におけるコロイドミルの温度管理を行った。
【0067】
大気圧下で、コロイドミル(スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社))の砥石板同士の間隔を0.07mm、砥石板の回転数を2100rpmとし、浸漬した大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造した。
【0068】
(試験1-1)
タンパク質含有率37w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬した後の丸大豆のタンパク質含有率を16w/w%に調整した。タンパク質含有率は丸大豆乾燥重量に対してタンパク質係数5.71として測定したものである。
【0069】
浸漬後の丸大豆の表面を殺菌するべく、蒸気で加熱した後、コロイドミルによる磨砕・成形を連続的に行って成形物を得た。
【0070】
コロイドミルによる磨砕・成形工程の間コロイドミルの温度管理を行わなかったところ、コロイドミルの上部側の砥石板の温度は116℃になっていた。
【0071】
(試験1-2)
コロイドミルによる連続的な磨砕・成形の際に上部側の砥石板の温度を112℃に保つこと以外に成形条件の細かな調整を行うことなく、その他は、試験1-1と同様にして成形物を得た。
【0072】
(試験1-3)
コロイドミルによる連続的な磨砕・成形の際に上部側の砥石板の温度を100℃に保つこと以外に成形条件の細かな調整を行うことなく、その他は、試験1-1と同様にして成形物を得た。
【0073】
(試験1-4)
コロイドミルによる連続的な磨砕・成形の際に上部側の砥石板の温度を93℃に保つこと以外に成形条件の細かな調整を行うことなく、その他は、試験1-1と同様にして成形物を得た。
【0074】
(試験1-5)
コロイドミルによる連続的な磨砕・成形の際に上部側の砥石板の温度を85℃に保つこと以外に成形条件の細かな調整を行うことなく、その他は、試験1-1と同様にしてコロイドミルによる連続的な磨砕・成形を試みた。しかし、粉砕されたものがコロイドミル内に詰まってしまい、成形品を得ることが困難であった。
【0075】
(評価)
試験1-1~試験1-5で得られた成形物について試験用篩を用いて、3mesh及び5meshで篩い、3meshオン以上のサイズ、3meshパス~5meshオンのサイズ、5meshパス以下のサイズの区分に分け、成形物中に含まれる割合を比較した。結果は表1の通りであった。
【0076】
表1において「3meshオン以上」は、成形物の大きさが3mesh以上の篩を通過できない(大きい)画分量、「3meshパス~5meshオン」は、成形物の大きさが3meshの篩は通過するが、5meshの篩は通過できない程度の大きさである画分量、「5meshパス以下」は、成形物の大きさが5meshの篩を通過する(小さい)画分量である。
【0077】
【表1】
表1に示した評価結果から、浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて磨砕・成形工程を行うことで肉様の大豆加工食品を連続的に製造するにあたり、大気圧化で、コロイドミルの温度を制御・調整することで、成形物のサイズに変動が生じることを確認できた。
【0078】
コロイドミルを用いた磨砕・成形工程後の成形物のサイズが5meshパス以下(成形物の大きさが5meshの篩を通過する(小さい)画分量)では肉様食感を感じにくいことから、5meshパス以下のサイズのものが50w/w%を下回ることを基準とすると、試験1-2、試験1-3、試験1-4は、5meshパス以下のサイズのものが50w/w%を下回っていた。
【0079】
そこで、浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて磨砕・成形工程を行って肉様の大豆加工食品を連続的に製造する場合、磨砕・成形工程を、コロイドミルの温度を93℃~112℃の温度範囲に保って行うことで、このような温度管理・制御以外の細かな成形条件の調整を行うことなく、肉様食感を感じることのできる成形物が得られることを確認できた。
【実施例0080】
実施例1の検討結果を踏まえて、浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて肉様の大豆加工食品を製造する際に、浸漬を行った後の大豆中のタンパク質含有率を制御・調整することで、成型物のサイズがどのようになるかを検討した。
【0081】
実施例1と同じく、コロイドミルとしてスーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社)(砥石板の大きさは直径24cm)を用い、回転している下部側の砥石板への冷却機構設置は行わず、固定されている上部側の砥石板を水冷によって冷却することでコロイドミルによる磨砕・成形工程におけるコロイドミルの温度を管理し、大気圧下で、コロイドミルの温度が93℃~112℃の温度範囲から外れることがないようにしてコロイドミルによる磨砕・成形工程を行った。
【0082】
実施例1と同じく、コロイドミル(スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社))の砥石板同士の間隔を0.07mmmm、砥石板の回転数を2100rpmとし、浸漬した大豆を原料として肉様の大豆加工食品を製造した。
【0083】
(試験2-1)
タンパク質含有率34w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬を行った後の丸大豆中のタンパク質含有率を20w/w%に調整した。タンパク質含有率は丸大豆乾燥重量に対してタンパク質係数5.71として測定した。
【0084】
浸漬後の丸大豆の表面を殺菌するべく、蒸気で加熱した後、上述したコロイドミル(スーパーマスコロイダー MKHP 10-40 JIV(増幸産業株式会社))の条件で、磨砕・成形を行ったが粒状の形状にならず、粒度の測定ができなかった。
【0085】
(試験2-2)
タンパク質含有率41w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬を行った後の丸大豆中のタンパク質含有率を17w/w%に調整した以外は試験2-1と同様にしてコロイドミルによる磨砕・成形を行って成形物を得た。
【0086】
(試験2-3)
タンパク質含有率37w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬を行った後の丸大豆中のタンパク質含有率を15w/w%に調整した以外は試験2-1と同様にしてコロイドミルによる磨砕・成形を行って成形物を得た。
【0087】
(試験2-4)
タンパク質含有率35w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬を行った後の丸大豆中のタンパク質含有率を13w/w%に調整した以外は試験2-1と同様にしてコロイドミルによる磨砕・成形を行って成形物を得た。
【0088】
(試験2-5)
タンパク質含有率34w/w%の丸大豆を浸漬し、浸漬を行った後の丸大豆中のタンパク質含有率を12w/w%に調整した以外は試験2-1と同様にしてコロイドミルによる磨砕・成形を行って成形物を得た。
【0089】
(評価)
試験2-1~2-5で得られた成形物について試験用篩を用いて、3mesh及び5meshで篩い、3meshオン以上のサイズ、3meshパス~5meshオンのサイズ、5meshパス以下のサイズの区分に分け、成型物中に含まれる割合を比較した。結果は表2の通りであった。
【0090】
【表2】
表2に示した評価結果から、浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて磨砕・成形工程を行って肉様の大豆加工食品を連続的に製造する場合で、磨砕・成形工程を、コロイドミルの温度を93℃~112℃の温度範囲に保って行う際に、浸漬を行った後の大豆中のタンパク質含有率を調整することで、成形物のサイズに変動が生じることを確認できた。
【0091】
コロイドミルを用いた磨砕・成形工程後の成形物のサイズが5meshパス以下(成形物の大きさが5meshの篩を通過する(小さい)画分量)では肉様食感を感じにくいことから、5meshパス以下のサイズのものが50w/w%を下回ることを基準とすると、試験2-2、試験2-3、試験2-4は、5meshパス以下のサイズが50w/w%を下回っていた。
【0092】
そこで、浸漬した大豆を原料としてコロイドミルを用いて磨砕・成形工程を行って肉様の大豆加工食品を連続的に製造する場合で、磨砕・成形工程を、コロイドミルの温度を93℃~112℃の温度範囲に保って行う際に、浸漬を行った後の大豆中のタンパク質含有率を13w/w%以上で17w/w%以下に調整しておくことで、前述した温度管理・制御以外の細かな成型条件の調整を行うことなく、肉様食感を感じることのできる成型物が得られることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は肉様大豆加工食品の製造に利用可能である。