(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077140
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】流量制御弁および流量制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20240531BHJP
F16K 1/04 20060101ALI20240531BHJP
F16K 1/06 20060101ALI20240531BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20240531BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
F16K1/04 A
F16K1/06
F16K27/02
F16K31/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189009
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】503451240
【氏名又は名称】アルメックスコーセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100171572
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100213425
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 正憲
(74)【代理人】
【識別番号】100221707
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100224915
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 茉友
(74)【代理人】
【識別番号】100229116
【弁理士】
【氏名又は名称】日笠 竜斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
【テーマコード(参考)】
3H051
3H052
3H062
5H307
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051CC11
3H051FF01
3H052AA01
3H052BA13
3H052EA01
3H062AA02
3H062AA15
3H062CC02
3H062EE08
3H062HH02
5H307BB01
5H307DD11
5H307EE02
5H307EE06
5H307EE12
5H307FF06
5H307FF12
5H307HH04
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量を制御する流量制御装置に適用可能で、汎用性に富む流量制御弁を提供する。
【解決手段】弁機能を備える弁本体10と、流体の流れる配管100に同軸状に接続される連通路6を備える配管接続部5とからなり、弁本体10は、弁体11を開閉動作させるアクチュエータとして、直動型モータ12を内蔵するとともに、弁体11が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされ、ニードル11は、配管接続部5の連通路6の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィス15を開閉動作する構成とされており、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量を制御する流量制御装置に適用可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を流れる各種流体の流量を調整するものであって、
弁機能を備える弁本体と、前記配管に同軸状に接続される連通路を備える配管接続部とからなり、
前記弁本体は、弁体を開閉動作させるアクチュエータとして直動型モータを内蔵するとともに、前記弁体が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされ、
前記ニードルは、前記配管接続部の連通路の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィスを開閉動作する構成とされている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記弁座オリフィスの入口に対する前記配管接続部からの流体流路は、弁座オリフィスの入口近傍周囲において、前記入口へ向かう複数の小径連通路を備え、これら小径連通路は前記入口を中心として放射状に延びて均等配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記弁座オリフィスの入口に対する前記配管接続部からの流体流路は、前記配管接続部の流体流路入口に連通し、前記弁座オリフィスの円筒外周に延びる外側円環状連通路と、前記弁オリフィスの入口に連通し、前記弁座オリフィスの円筒外周に延びる内側円環状連通路と、これら外側円環状連通路と内側円環状連通路に接続流通する前記複数の小径連通路とから構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記弁座オリフィスの入口から出口に至るオリフィス流体流路は、その軸線が前記配管接続部の連通路の軸線に対して垂直な直線状に延びるとともに、このオリフィス流体流路の近傍で前記配管接続部の流体流路出口に連通している
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項5】
制御すべき流体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の前記弁座オリフィスが交換設定可能とされる一方、前記ニードルが、これら複数種類の弁座オリフィスの異なる口径に共通して対応可能な形状寸法に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記弁本体は、前記直動型モータとニードルを備える弁本体主要部と、前記弁座オリフィスを備えるオリフィス部とを備えてなり、
このオリフィス部は前記弁本体主要部に対して、分離可能な構成とされている
ことを特徴とする請求項5に記載の流量制御弁。
【請求項7】
前記弁本体と前記配管接続部は、互いに分離可能に一体接続される構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項8】
前記直動型モータの直動軸は、内蔵型送りねじ機構により軸方向へ往復動作する構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項9】
前記内蔵型送りねじ機構は、前記直動型モータのロータに形成された雌ねじ部と、前記直動軸に形成されて、前記雌ねじ部に螺進退可能に係合された雄ねじ部とからなり、前記ロータの回転により、前記直動軸が軸方向へ往復動作する
ことを特徴とする請求項8に記載の流量制御弁。
【請求項10】
前記送りねじ機構は、ボールねじ機構である
ことを特徴とする請求項8に記載の流量制御弁。
【請求項11】
前記直動型モータが直動型ステッピングモータである
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項12】
前記直動型モータが直動型サーボモータである
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項13】
各種流体が流れる配管に介装配置されて、流体の流量を制御する装置であって、
前記配管を流れる流体の流量を調整する流量調整手段と、
前記配管を流れる流体の流量を計測する流量計測手段と、
前記流量計測手段の計測結果に応じて前記流量調整手段を駆動制御する制御手段とを備えてなり、
前記流量調整手段が請求項1~12のいずれか一つに記載の流量制御弁から構成されている
ことを特徴とする流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流量制御弁および流量制御装置に関し、さらに詳細には、各種流体が流れる配管に介装配置されて、流体の流量を制御する流量制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種流体の連通路に介装配置されて、流体の流量を制御する流量制御装置が種々開発されるとともに、各種分野において広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される流量制御装置は、小流量の気体流量制御に適したもので、
図9(a)に示すように、気体流量計a、流量制御弁bおよび制御部cから構成されてなり、気体の流れる配管dに介装配置される。
【0004】
上記気体流量計aは、配管d内を流れる気体(酸素)の質量流量を計測するもので、熱式流量計からなり、センサ部eが配管dに設けられており、配管dから分岐したバイパス細管fを備えて、このバイパス細管fに上記配管dを流れる気体の一部が流れ込むようになっている。このバイパス細管fには、サーモレジスタf1、f2が設けられている。また、配管dにおける気体流量計aの下流側には、配管dを流れる気体流量を制御するための上記流量制御弁bが設けられている。
【0005】
そして、サーモレジスタf1、f2に電流が流れて2つのサーモレジスタf1、f2が加熱(発熱)された状態で、バイパス細管f内を気体が流れると、サーモレジスタf1,f2間に温度差が生じ、この際に生ずる抵抗値の変化が、ブリッジ回路gによって取り出され、増幅器hを介して出力された電気信号に基づいて気体の総流量が検知され、この検出値を、予め流量設定された設定器iからの設定信号と比較演算回路jにて比較することで、制御部cが、流量制御弁bを上記気体流量計aの計測結果に応じて駆動制御し、これにより、配管dを流れる気体の流量が予め設定した設定流量となるように制御調整される。上記流量制御弁bとしては、ソレノイドバルブやピエゾバルブが使用されている。
【0006】
また、特許文献2に開示される流量制御装置は、大流量の気体流量制御に適したもので、
図9(b)に示すように、気体流量計k、流量制御弁lおよび制御部mから構成されてなり、気体の流れる配管dに介装配置される。
【0007】
上記流量制御弁lは、油圧アクチュエータとしての油圧シリンダnと、この油圧シリンダnにより上記配管dの連通開度を開閉調整する弁体oとを備えてなり、上記油圧シリンダnの油圧源である油圧ポンプpが上記制御部mに電気的に接続されている。
【0008】
上記気体流量計kは、配管d内を流れる気体の質量流量を計測するもので、例えば上記特許文献1と同様な熱式流量計が適用される。
【0009】
そして、上記気体流量計kにより気体の質量流量が計測されると、
上記制御部mが、流量制御弁lを上記気体流量計kの計測結果に応じて駆動制御し、これにより配管dを流れる気体の流量が予め設定した設定流量となるように制御調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-259039号公報
【特許文献2】特開平11-338548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献2に開示される流量制御装置では、それぞれ以下に述べるような問題があり、その改良が要望されていた。
【0012】
すなわち、特許文献1の流量制御装置においては、上記流量制御弁bとして、ソレノイドバルブやピエゾバルブが使用されているところ、ソレノイドバルブは、弁体を開閉動作させるアクチュエータがソレノイドであり、またピエゾバルブは、アクチュエータとしてのピエゾ素子で弁体の開閉動作を行う。これらいずれのアクチュエータも、弁体を開閉動作させるための往復ストロークが小さくて、開弁力や閉弁力も比較的小さく、これがため大流量の流体制御には適用できない。
【0013】
一方、特許文献2の流量制御装置においては、流量制御弁lは、弁体を開閉動作させるアクチュエータが油圧駆動する油圧シリンダnであり、その油圧駆動回路が複雑かつ大型であるとともに、弁体を開閉動作させるための往復ストロークも大きくて、特許文献1の気体流量制御装置とは逆に、小流量あるいは微小流量の気体流量制御には適用できない。
【0014】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量を制御する流量制御装置に適用可能で、汎用性に富む流量制御弁を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的とすることは、上記流量制御弁を流量調整手段として備えて、弁本体の構造が簡単かつ小型であるとともに、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適した流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明の流量制御弁は、配管を流れる各種流体の流量を調整するものであって、弁機能を備える弁本体と、上記配管に同軸状に接続される連通路を備える配管接続部とからなり、上記弁本体は、弁体を開閉動作させるアクチュエータとして直動型モータを内蔵するとともに、上記弁体が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされ、上記ニードルは、上記配管接続部の連通路の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィスを開閉動作する構成とされていることを特徴とする。
【0017】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)弁座オリフィスの入口に対する上記配管接続部からの流体流路は、弁座オリフィスの入口近傍周囲において、上記入口へ向かう複数の小径連通路を備え、これら小径連通路は上記入口を中心として放射状に延びて均等配置されている。
【0018】
(2)上記弁座オリフィスの入口に対する上記配管接続部からの流体流路は、上記配管接続部の流体流路入口に連通し、上記弁座オリフィスの円筒外周に延びる外側円環状連通路と、上記弁座オリフィスの入口に連通し、上記弁座オリフィスの円筒外周に延びる内側円環状連通路と、これら外側円環状連通路と内側円環状連通路に接続流通する上記複数の小径連通路とから構成されている。
【0019】
(3)上記弁座オリフィスの入口から出口に至るオリフィス流体流路は、その軸線が上記配管接続部の連通路の軸線に対して垂直な直線状に延びるとともに、このオリフィス流体流路の近傍で上記配管接続部の流体流路出口に連通している。
【0020】
(4)制御すべき流体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の上記弁座オリフィスが交換設定可能とされる一方、上記ニードルが、これら複数種類の弁座オリフィスの異なる口径に共通して対応可能な形状寸法に設定されている。
【0021】
(5)上記弁本体は、上記直動型モータとニードルを備える弁本体主要部と、上記弁座オリフィスを備えるオリフィス部とを備えてなり、
このオリフィス部は上記弁本体主要部に対して、分離可能な構成とされている。
【0022】
(6)上記弁本体と上記配管接続部は、互いに分離可能に一体接続される構成とされている。
【0023】
(7)上記直動型モータの直動軸は、内蔵型送りねじ機構により軸方向へ往復動作する構成とされている。
【0024】
(8)上記内蔵型送りねじ機構は、上記直動型モータのロータに形成された雌ねじ部と、上記直動軸に形成されて、上記雌ねじ部に螺進退可能に係合された雄ねじ部とからなり、上記ロータの回転により、上記直動軸が軸方向へ往復動作する。
【0025】
(9)上記送りねじ機構は、ボールねじ機構である。
【0026】
(10)上記直動型モータが直動型ステッピングモータである。
【0027】
(11)上記直動型モータが直動型サーボモータである。
【0028】
また、本発明の流量制御装置は、各種流体が流れる配管に介装配置されて、流体の流量を制御する装置であって、上記配管を流れる流体の流量を調整する流量調整手段と、上記配管を流れる流体の流量を計測する流量計測手段と、上記流量計測手段の計測結果に応じて上記流量調整手段を駆動制御する制御手段とを備えてなり、上記流量調整手段が上記流量制御弁から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の流量制御弁によれば、弁機能を備える弁本体と、各種流体が流れる配管に同軸状に接続される連通路を備える配管接続部とからなり、上記弁本体は、弁体を開閉動作させるアクチュエータとして直動型モータを内蔵するとともに、上記弁体が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされ、上記ニードルは、上記配管接続部の連通路の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィスを開閉動作する構成とされているから、以下に列挙する特有の効果が得られ、弁本体の構造が簡単かつ小型であるとともに、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適用可能で、汎用性に富む流量制御弁を提供することができる。
【0030】
(1)弁機能を有する弁本体は、弁体を開閉動作させるアクチュエータとして直動型モータを内蔵するとともに、上記弁体が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされており、弁本体の構造が簡単かつ小型である。
【0031】
(2)弁体を開閉動作させるアクチュエータが直動型モータであることから、弁体を開閉動作させるための往復ストロークが小さい場合から大きい場合まで対応可能であるとともに、上記弁体が先細テーパ形状のニードルで構成されていることから、弁座オリフィスに対するニードルの往復ストローク位置により、弁座オリフィスの開口度(環状開口オリフィス)を微小なものから大きなものまで調整可能であり、微小流量から大流量までの流体の流量調整に対応可能で、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適用可能である。
【0032】
(3)上記ニードルが流体の連通路の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィスを開閉動作する構成とされて、この弁座オリフィスの入口に対する配管接続部からの流体流路が、弁座オリフィスの入口近傍周囲において、上記入口へ向かう複数の小径連通路を備え、これら小径連通路が上記入口を中心として放射状に延びて均等配置されていることにより、上記流体流路の形成空間が構造的に狭く制限を受けているにも関わらず、上記弁座オリフィスの入口へ流れる流体の安定した流量を確保することができ、これにより、上記ニードルが流体の流れ方向に対して垂直な方向に弁座オリフィスを開閉動作する構成において、精度の高い流体の流量調整を行うことができる。
【0033】
(4)上記弁座オリフィスの入口に対する上記配管接続部からの流体流路が、上記配管接続部の流体流路入口に連通し、上記弁座オリフィスの円筒外周に延びる外側円環状連通路と、上記弁座オリフィスの入口に連通し、上記弁座オリフィスの円筒外周に延びる内側円環状連通路と、これらが外側円環状連通路と内側円環状連通路に接続流通する上記複数の小径連通路とから構成されていることにより、上記複数の小径連通路の配置構成による上記(3)の効果がより確実に発揮され得る。
【0034】
(5)制御すべき流体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の上記弁座オリフィスが交換設定可能とされる一方、上記ニードルが、これら複数種類の弁座オリフィスの異なる口径に共通して対応可能な形状寸法に設定されていることにより、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適宜選択的に対応させることができる。
【0035】
(6)上記弁本体は、上記直動型モータとニードルを備える弁本体主要部と、上記弁座オリフィスを備えるオリフィス部とを備えてなり、このオリフィス部は上記弁本体主要部に対して、分離可能な構成とされていることにより、上記ニードルと弁座オリフィスに上記(5)の構成を採用することで、制御対象となる流体の流量に柔軟に対応できる流量制御弁を構築することができ、製造コストさらには製品コストの低減化を図ることができる。
【0036】
(7)上記弁本体と上記配管接続部は、互いに分離可能に一体接続される構成とされていることにより、流量制御弁の分解組立が容易で、メンテナンスがし易く、また上記オリフィス部の上記弁本体主要部に対する分離交換も可能で、上記(6)の効果がさらに有効に発揮され得る流量制御弁を構築することができる。
【0037】
(8)本発明の流量制御装置は、配管を流れる流体の流量を調整する流量調整手段と、上記配管を流体の流量を計測する流量計測手段と、上記流量計測手段の計測結果に応じて上記流量調整手段を駆動制御する制御手 段とを備えてなり、上記流量調整手段が本発明に係る流量制御弁から構成されているから、上記(1)~(7)に挙げられる効果をすべて有効に発揮することができ、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適した流量制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る流量制御装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図3】同流量制御装置の主要構成部の内部構成を示す正面断面図である。
【
図4】同主要構成部を構成する流量制御弁の弁本体と配管接続部の接続部位の内部構成を拡大して示し、
図4(a)は正面断面図、
図4(b)は
図4(a)のB-B線に沿った平面断面図である。
【
図5】同弁本体におけるニードルと弁座オリフィスの開閉動作を説明するための断面図で、
図5(a)は弁座オリフィスの全開状態、
図5(b)は弁座オリフィスの全閉状態を示す。
【
図6】同流量制御弁における弁本体の弁本体主要部とオリフィス部を分離した状態を示す正面断面図である。
【
図7】同流量制御弁の弁本体と配管接続部を分離した状態を示す正面断面図である。
【
図8】同流量制御装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図9】従来の流量制御装置を示し、
図9(a)は小流量の気体流量制御に適した装置を示し、
図9(b)は大流量の気体流量制御に適した装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0040】
本発明に流量制御装置を
図1~
図8に示し、この流量制御装置1は、具体的には、各種気体が流れる配管100(
図2)に介装配置されて、当該気体の質量流量を制御する気体流量制御装置であって、
図1から
図3に示すように、流量調整手段としての流量制御弁2、流量計測手段としての気体流量計3および制御部(制御手段)4を主要部として構成されている。
【0041】
図示の実施形態の流量制御装置1は、上記配管100の適宜個所に介装配置して使用されるユニット構造とされている。
【0042】
具体的には、上記配管100に連通接続される配管接続部5が装置基台としての基台ブロックの形態とされ、この配管接続部5上に、上記流量制御弁2と気体流量計3が一体的に組立てられてなり、配管100を流れる気体に対して、気体流量計3が上流側に配置されるとともに、流量制御弁2が下流側に配置される構成とされている。また、配管接続部5上の気体流量計3の後側には、各種電子回路が組み込まれてなる制御基板80が起立状に設けられている。
【0043】
配管接続部5は、
図2および
図3に示すように、気体の流れる配管100に連通接続される連通路6を備えるとともに、この連通路6に上記流量制御弁2および気体流量計3が連通接続される構成とされている。
【0044】
上記連通路6は、
図2に示すように、配管100の上流側部位100aに連通接続される上流側連通路7と、配管100の下流側部位100bに連通接続される下流側連通路8とからなり、これら上下側連通路7、8は、気体流量を調整制御する上記流量制御弁2を介して連通接続されている。
【0045】
上流側連通路7は、流入側が上記配管100の上流側部位100aに連通接続されるとともに、流出側が上記流量制御弁2の流量調整部2aに連通接続されている。上流側連通路7の途中個所には、この上流側連通路7を流れる気体を上記気体流量計3のセンサ部60へ分流させるための接続オリフィス9aと、この気体をセンサ部60から上流側連通路7に還流させるための接続オリフィス9bが設けられている。
【0046】
これに関連して、上流側連通路7の内部には、
図3に示すように、層流素子65が層流素子ホルダ66を介して嵌装されている。この層流素子65は、上流側連通路7を流れる気体を層流化する層流作用と、この気体を上記センサ部60のバイパス細管62へ所定の分流比をもって分流する機能を有する。
【0047】
下流側連通路8は、流入側が上記流量制御弁2の流量調整部2aに連通接続されるとともに、流出側が配管100の下流側部位100bに連通接続されている。この配管接続部5の下流側連通部8は、後述するように、流量制御弁2の流量調整部2aにおける気体流路の一部を形成しており、これにより配管接続部5は流量制御弁2の主要構成部を構成している。
【0048】
流量制御弁2は、配管100を流れる気体の質量流量を調整するものであって、具体的には、弁機能を備える弁本体10と、上記配管100に連通接続される上記配管接続部5とを主要部として構成されている。
【0049】
上記弁本体10は、
図2、
図3および
図4に示すように、弁体11を開閉動作させるアクチュエータとして直動型モータ12を内蔵するとともに、上記弁体11が先細テーパ形状のニードルで構成された小型簡素なニードル弁の形態とされている。
【0050】
図示の実施形態における直動型モータ12としては、直動型ステッピングモータが好適に使用されており、このステッピングモータ12は、弁本体10の頂部(上端部)に設けられたモータドライバ基板70上のモータドライバ71(
図8)を介して上記制御部4に電気的に接続されている。
【0051】
なお、本実施形態において、モータドライバ基板70が弁本体10の頂部に設けられていることにより、モータドライバ基板70の設置スペースを自由に確保することができ、これにより、流量制御弁2と気体流量計3のそれぞれの機能を別個独立した形式に分離することが可能となり、メンテナンスが容易になるという利点がある。
【0052】
図示の実施形態の弁本体10は、基本構成として、ニードル11が上記配管100を流れる気体の流れ方向に対して垂直方向に開閉移動する方式とされており、具体的には、上記ニードル11は、上記配管接続部5の連通路6の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィス15を開閉動作する構成とされている。
【0053】
上記弁本体10は、上記直動型ステッピングモータ12とニードル11を備える弁本体主要部20と、上記弁座オリフィス15を備えるオリフィス部21とを備えてなり、本発明の特徴構成として、後述するように、オリフィス部21が、上記弁本体主要部20に対して分離可能な構成(
図6)とされるとともに、さらに、上記弁本体10と上記配管接続部5が、互いに分離可能に一体接続される構成(
図7)とされている。
【0054】
上記弁本体主要部20において、ステッピングモータ12は、上下両モータホルダ25、26を介して、弁ハウジング27に一体的に保持固定されて、弁ハウジング27に同軸状に内蔵されている。
【0055】
上記上側モータホルダ25は、締付ネジ等の固定手段(図示省略)により、弁ハウジング27に一体的に嵌合固定されるとともに、回転止めネジ等(図示省略)により、ステッピングモータ12を回転止めする構造とされている。
【0056】
また、上記下側モータホルダ26は、締付ネジ等の固定手段(図示省略)により、弁ハウジング27に一体的に嵌合固定されるとともに、その下端部位(先端部位)26aが弁ハウジング27の下側(先端側)へ突出しており、この下側モータホルダ26の下端部位26aが上記配管接続部5の嵌合接続部29に嵌合固定される構造とされている。
【0057】
下側モータホルダ26が上記配管接続部5の嵌合接続部29に嵌合固定されて、上記弁本体20が配管接続部5に一体的に接続された状態において、弁本体20のステッピングモータ12およびニードル11の軸線は、上記配管接続部5の連通路6の軸線に対して垂直となるように位置決め固定される。
【0058】
また、下側モータホルダ26の下端部位26aにおいて、上記オリフィス部21との間には弁室28が形成されており、後述するように、ニードル11の先端テーパ部11aがこの弁室28に臨む構成とされている。
【0059】
図3において、31、32および33は、それぞれこれら部位の気密性を保持するためのOリングを示しており、これにより、ステッピングモータ12およびニードル11を取り巻く収納空間の気密性・密閉性が確保されている。
【0060】
ニードル11を開閉動作させる上記直動型ステッピングモータ12は、上述したように、弁ハウジング27内に一体的に設けられたビルトインモータの形態とされるとともに、その直動軸35が、内蔵型送りねじ機構36により軸方向へ往復動作する構成とされてなる、省スペースタイプの構造を備えてなる。
【0061】
上記内蔵型送りねじ機構36は、
図2に概略を示すように、ステッピングモータ12のロータ37の内径円筒面に形成された雌ねじ部36aと、上記直動軸35に形成されて、上記雌ねじ部36aに螺進退可能に係合された雄ねじ部36bとからなり、上記ロータ37の回転による送りねじ機構36の送りねじ作用により、上記直動軸35が上下軸方向へ往復動作する。
【0062】
これに関連して、上記直動軸35は、上記雄ねじ部36bを挟んでその両側軸部35aおよび35bが、ステッピングモータ12の軸受38,39により軸方向へ往復摺動可能に軸支されるとともに、回転止め構造(図示省略)により回転止めされている。
【0063】
そして、上記送りねじ機構36の送りねじ作用により、直動軸35は、軸受38、39に摺動案内されながら,上下軸方向へ直線的に往復動作する構成とされている。
【0064】
上記直動軸35の下端部(先端部)には、弁体としての上記ニードル11が同軸上に一体形成ないしは一体接続されている。これに関連して、下側モータホルダ26には、ニードル11を摺動案内する案内スリーブ40が設けられており、この案内スリーブ40を介して、ニードル11の先端テーパ部11aが上記弁室28内に臨んでいる。41は案内スリーブ40とニードル11の摺動部位の気密性を保持するためのOリングを示している。
【0065】
そして、ステッピングモータ12の駆動による直動軸35の上下直線往復動作により、ニードル11が上下垂直方向へ直線的に往復移動して、その先端テーパ部11aが、上記配管接続部5の連通路6の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィス15を開閉動作する。
【0066】
具体的には、ニードル11が下方へ移動して、その先端テーパ部11aが弁座オリフィス15に密着することにより、閉弁状態となり(
図5(a)参照)、逆に、ニードル11が上方離へ移動して、その先端テーパ部11aが弁座オリフィス15から離隔することにより、開弁状態となる(
図5(b)参照)。また、ニードル11の先端テーパ部11aの弁座オリフィス15に対する上下軸方向位置により、弁座オリフィス15の開度が変化して、配管接続部5の下流側連通路8さらには配管100を流れる気体の質量流量が調整される。
【0067】
上記ニードル11と弁座オリフィス15の作動境界空間を形成する上記弁室28は、ニードル11と弁座オリフィス15による高精度の気体流量調整を行うために、上記配管接続部5の上流側連通路7から弁本体10に流入する気体の均一で安定した流量を確保する必要があるところ、上記ニードル11と弁座オリフィス15の軸線が、上記配管接続部5の連通路6の軸線に対して垂直となる配置構成である。したがって、上記上流側連通路7を流れる気体の流れは、上記弁室28を介して垂直に折れ曲がることになり、しかも、この部位の気体流路の形成空間は、構造的に狭くて制限を受けかつ複雑とならざるを得ない。
【0068】
本発明者らは、このような構造的に狭く複雑な気体流路の形成空間について、上記配管接続部5の上流側連通路7から弁本体10の弁室28へ流入する気体の均一で安定した流量を確保すべく、種々の試験・研究を行った結果、次のような気体流路45を完成するに至った。
【0069】
すなわち、
図4を参照して、上記弁座オリフィス15の入口15a(つまり弁室28)に対する上記配管接続部5の上流側連通路7からの流体流路45は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、弁座オリフィス15の入口15a近傍周囲において、上記入口15aへ向かう複数(図示例においては4つ)の小径連通路47,47、…を備え、これら小径連通路47、47、…は上記入口15aを中心として水平方向へ放射状に延びてかつ円周方向へ均等に配置(4等配)されている。
【0070】
図示の実施形態の気体流路45の具体的な構成は、上流側連通路7の気体流路入口(流体流路入口)45aに連通するとともに、上記弁座オリフィス15の円筒外周の全周に延びる外側円環状連通路46と、上記弁座オリフィス15の入口15a(弁室28)に連通し、上記弁座オリフィス15の円筒外周の全周に延びる内側円環状連通路48と、これら外側円環状連通路46と内側円環状連通路48に接続流通する4つの小径連通路47、47、…とから構成されている。
【0071】
この場合、上記上流側連通路7からの気体流路入口45aと外側円環状連通路46との接続部は、3つの直線状小径連通路49,49,49によって形成されて、この部位の気体の所定流量が確保されている。これは、図示の実施形態においては、上記接続部が構造的に単一の連通路を形成するための十分な開口断面空間が確保できない等の理由によるものである。したがって、十分な開口断面空間が確保できる場合には、上記3つの直線状小径連通路49,49,49の合計開口断面積を有する単一の連通路(図示省略)が形成されても良い。
【0072】
また、上記3つの直線状小径連通路49,49,49の合計開口断面積は、弁座オリフィス15の開口断面積(つまりオリフィス気体流路50の開口断面積)以上であり、かつ、弁座オリフィス15から上記下流側連通路8への気体流路出口8aに要求される開口断面積以下に設定されている。このような構成とすることにより、気体流路入口45aと気体流路出口8a間に圧力差を生じて、配管100を流れる気体の質量流量を高精度に制御することが可能となる。
【0073】
さらに、上流側連通路7からの気体流路入口45aと外側円環状連通路46との接続部を構成する上記3つの直線状小径連通路49,49,49に関し、これら直線状小径連通路49,49,49の合計開口断面積は、気体流路45に流したい流量によって決定される。
【0074】
換言すれば、3つの直線状小径連通路49,49,49の合計開口断面積は、気体流路45の必要入力管路の開口断面積に等しく設定されるところ、図示例においては、同一開口断面積の3つの直線状小径連通路49,49,49が形成されていることから、3つの直線状小径連通路49,49,49それぞれの開口断面積は、上記気体流路45の必要入力管路の開口断面積の1/3に設定されている。
【0075】
また、上記弁座オリフィス15を備えるオリフィス部21は、適用対象となる配管100つまり配管接続部5との関係で、これらの規格寸法等に対応する弁座オリフィス15を備える仕様に設計されている。
【0076】
すなわち、オリフィス部21には、上記弁座オリフィス15の入口15aから出口15bに至るオリフィス気体流路(オリフィス流体流路)50が形成されており、このオリフィス気体流路50は、その軸線が上記配管接続部5の下流側連通路8の軸線に対して垂直な直線状に延びるとともに、このオリフィス気体流路50の近傍で上記下流側連通路8の気体流路出口(流体流路出口)8aに連通している。図示例においては、オリフィス気体流路50の出口つまり弁座オリフィス15の出口15aと、下流側連通路8の気体流路出口8aとの間には、気体流通空間(流体流通空間)51が設けられている。
【0077】
このようなオリフィス部21の構造を採用することにより、つまり、弁座オリフィス15の入口15aから出口15bまでの軸線が接続配管の連通路6の軸線に対して垂直に設定されるとともに、弁座オリフィス15から上記下流側連通路8への気体流路出口8aに至る流路形成部が一体構造とされることにより、弁座オリフィス15の入口15aから配管接続部5の下流側連通路8までの気体流路において、
図4(a)に示すように、下流側連通路8への気体流路出口8aが、弁座オリフィス15の出口15aよりも下側位置に配置される。
【0078】
以上のように、配管接続部5の上流側連通路7から弁本体10の流量調整部2aを介して下流側連通路8に至る気体流路45、50、51が構成されることにより、
図4(a)および
図4(b)に示すように、気体は、これら気体流路45、50、51を矢符で示すように流れる。これにより、弁座オリフィス15を流れる気体の均一で安定した流量が確保されて、ニードル11と弁座オリフィス15による高精度の気体流量調整を行うことができる。
【0079】
本実施形態の流量制御弁2は、以下に述べるように、微小流量から大流量までの広範囲にわたる気体の流量制御に適宜選択的に対応可能な構成とされている。
【0080】
すなわち、本実施形態においては、制御すべき気体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の弁座オリフィス15,15、…(図示例においては、これら複数種類の弁座オリフィス15、15、…をそれぞれ備える複数種類のオリフィス部21、21、…)が交換設定可能とされる一方、上記ニードル11が、これら複数種類の弁座オリフィス15,15、…の異なる口径に共通して対応可能な形状寸法に設定されている。したがって、制御すべき気体の流量に対応した口径の弁座オリフィス15を備えるオリフィス部21を上記ニードル11に適用することにより、微小流量から大流量までの広範囲にわたる気体の流量制御に適宜選択的に対応させることができる。
【0081】
この目的のため、前述したように、弁座オリフィス15を備えるオリフィス部21が、
図6に示すように、上記弁本体主要部20に対して分離可能な構成とされている。
【0082】
具体的には、
図6において、オリフィス部21は、その円筒本体21aが下側モータホルダ26の弁室形成凹部55に同軸状に挿入されるとともに、嵌合フランジ部21bが下側モータホルダ26の嵌合肩部26bに当接支持された状態で、締付ネジ等の固定手段(図示省略)により、上記下側モータホルダ26の下端部位26aに一体的にかつ取外し交換可能に組合せ固定される構造とされている。56は、下側モータホルダ26とオリフィス部21の一体組合せ固定時における上記弁室形成凹部55と円筒本体21aの間の気密性を保持するためのOリングを示している。
【0083】
そして、この一体組合せ固定状態において、上記弁室形成凹部55の円筒内周面55aとオリフィス部21の円筒本体21aとの間に、弁室28と内側円環状連通路48(
図4)が形成される。
【0084】
また、本実施形態の流量制御弁2は、分解組立が容易な構造を備える。
【0085】
すなわち、本実施形態においては、前述したように、上記弁本体10と上記配管接続部5が、
図7に示すように、互いに分離可能に一体接続される構成とされている。
【0086】
具体的には、
図7において、配管接続部5には、上方に向けて開口する嵌合接続部29が設けられており、この嵌合接続部29に、弁本体10の先端部分、つまり下側モータホルダ26の下端部位26aとオリフィス部21の一体組立部分が上側から嵌合接続されるとともに、下側モータホルダ26の当接係合部26cが配管接続部5の当接肩部5aに当接係合した状態で、締付ネジ等の固定手段(図示省略)により、弁本体10と配管接続部5が一体的にかつ分離可能に接続固定される構造とされている。57は弁本体10と配管接続部5の一体接続固定時における上記嵌合接続部29とオリフィス部21の嵌合フランジ部21b間の気密性を保持するためのOリングを示している。
【0087】
そして、この一体接続固定状態において、上記嵌合接続部29の円筒内周面29aと下側モータホルダ26の下端部位26aの円筒外周面26dとの間に、上記気体流路45の外側円環状連通路46(
図4)が形成される。
【0088】
気体流量計3は上記配管100を流れる気体の質量流量を計測するもので、具体的には熱式質量流量計からなり、配管接続部5の上流側連通路7、センサ部60、流量測定部61を主要部として構成されている。
【0089】
上記センサ部60は、具体的には熱式センサ部で、
図2および
図3に示すように、気体の流れる上記配管100から分岐した毛細管からなるバイパス細管62を備えて、このバイパス細管62に上記配管100を流れる気体の一部が流れ込むように構成されている。このバイパス細管62には、2つの巻線ヒータ(発熱抵抗線)63a、63bが、上流側と下流側に設けられている。
【0090】
上記バイパス細管62はその流入口62aと流出口62bが上記上流側連通路7の途中個所に設けられた接続オリフィス9a、9bを介して、上流側連通路7にそれぞれ連通接続されており、上流側連通路7を流れる気体が、前記層流素子65により層流化されて上記流入口62aからバイパス細管62に流入されるとともに、上記流出口62bから上流側連通路7に還流される。
【0091】
流量測定部61は、上記センサ部60の2つの巻線ヒータ63a、63bに給電するとともに、センサ部60から入力される計測信号を演算して気体の質量流量を算出する部位で、
図2に示すように、ブリッジ回路65、増幅回路66および演算部67などからなり、前記制御基板80(
図1)上に組み込まれている。
【0092】
そして、上記流量測定部61により上記センサ部60の巻線ヒータ63a、63bに給電されて、これら2つの巻線ヒータ63a、63bが加熱(発熱)されると、上記バイパス細管62内に気体が流れない場合には、上下両巻線ヒータ63a、63bが同じ温度でバランスするが、バイパス細管62内を気体が流れた場合には、上流側の巻線ヒータ63aは流れる気体により熱を奪われ、逆に、下流側の巻線ヒータ63bは上流側の巻線ヒータ63aから気体に奪われた熱により温度が上昇する。これにより、測温センサとしての巻線ヒータ63a、63b間に温度差が生じ、この際に生ずる抵抗値の変化(温度変化)が、上記ブリッジ回路65で電気信号(電圧差)に変換され、この電気信号が増幅回路66で増幅されて、気体流量に応じた計測信号として演算部67へ送られる。この演算部67では、増幅回路66からの計測信号を予め流量設定部85から入力された設定信号と比較して流量を演算し、その演算結果を制御部44へ送るとともに、表示部84に表示する。
【0093】
制御部4は、気体流量計3の計測結果に応じて上記流量制御弁2を駆動制御するもので、上記配管接続部5に設けられた制御基板80上に組み込まれている。
【0094】
この制御部4は、具体的には、CPU,ROM,RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、上記気体流量計3の流量測定部61からの計測結果に従って流量制御弁2の流量調整工程を実行させるためのプログラム等が組み込まれるとともに、流量制御弁2のアクチュエータであるステッピングモータ12の駆動に必要な種々の情報などが、予めデータとしてまたはキーボード等により適宜選択的に入力設定されている。例えば、外部設定入力手段である操作パネル等からなる流量設定部85(
図2,
図8)により対象となる配管100に流す気体流量が適宜入力設定される。
【0095】
また、本装置の気体流量計3には、気体の圧力を検知する圧力センサ(図示省略)が選択的に設けられる。この圧力センサは、配管100の上流側部位100b(
図2)を流れる気体の圧力を検知する。
【0096】
この圧力センサの検知結果は圧力測定部86(
図8)から制御部4へ送られるとともに、上記表示部84にも表示される。
【0097】
そして、流量制御弁2は、制御部4により、計測された気体の質量流量に圧力も加味した高精度な気体の流量制御を行う。
【0098】
しかして、以上のように構成された気体流量制御装置1において、配管100を流れる気体の質量流量が気体流量計3により計測されて、その計測結果に従って、制御部4が、流量制御弁2のアクチュエータである直動型ステッピングモータ12を駆動制御して、弁体であるニードル11を弁座オリフィス15に対して開閉動作させて、配管100を流れる気体の質量流量が予め設定された値となるように自動調整する。
【0099】
以上詳述したように、本実施形態の流量制御弁2によれば、以下に列挙する特有の効果が得られる。
【0100】
(a)弁機能を有する弁本体10は、弁体11を開閉動作させるアクチュエータとして直動型ステッピングモータ12を内蔵するとともに、上記弁体11が先細テーパ形状のニードルで構成されたニードル弁の形態とされているから、弁本体10の構造が簡単かつ小型である。
【0101】
(b)上記ニードル(弁体)11を開閉動作させるアクチュエータが直動型ステッピングモータ12であることから、ニードル11を開閉動作させるための往復ストロークが小さい場合から大きい場合まで対応可能であるとともに、上記ニードル11が先細テーパ形状であることから、弁座オリフィス15に対するニードル11の往復ストローク位置により、弁座オリフィス15の開口度(環状開口オリフィス)を微小なものから大きなものまで調整可能であり、これにより、微小流量から大流量の気体の流量調整まで幅広く対応可能で、微小流量の気体から大流量の気体の流量制御に適用可能である。
【0102】
(c)上記ニードル11が気体の連通路の軸線に対して垂直な方向に弁座オリフィス15を開閉動作する構成とされて、この弁座オリフィス15の入口15aに対する配管接続部5からの気体流路45が、弁座オリフィス15の入口15a近傍周囲において、上記入口15aへ向かう複数の小径連通路47、47、…を備え、これら小径連通路47、47、…が上記入口15を中心として放射状に延びて均等配置されていることにより、上記気体流路45の形成空間が構造的に狭くて制限を受けているにも関わらず、上記弁座オリフィス15の入口15aへ流れる気体の安定した流量を確保することができ、これにより、上記ニードル11が気体の流れ方向に対して垂直な方向に弁座オリフィス15を開閉動作する構成において、精度の高い気体の流量調整を行うことができる。
【0103】
(d)上記弁座オリフィス15の入口15aに対する上記配管接続部5からの気体流路45が、上記配管接続部5の気体流路入口45aに連通し、上記弁座オリフィス15の円筒外周の全周に延びる外側円環状連通路46と、上記弁座オリフィス15の入口15aに連通し、上記弁座オリフィス15の円筒外周の全周に延びる内側円環状連通路48と、これら外側円環状連通路46と内側円環状連通路48に接続流通する上記複数の小径連通路47、47、…とから構成されていることにより、上記複数の小径連通路47、47、…の配置構成による上記効果がより確実に発揮され得る。
【0104】
(e)制御すべき気体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の弁座オリフィス15、15、…(図示例においては、これら複数種類の弁座オリフィス15、15、…をそれぞれ備える複数種類のオリフィス部21、21、…)が交換設定可能とされる一方、上記ニードル11が、これら複数種類の弁座オリフィス15、15、…の異なる口径に共通して対応可能な形状寸法に設定されていることにより、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適宜選択的に対応させることができる。
【0105】
(f)上記弁本体10は、上記直動型ステッピングモータ12とニードル11を備える弁本体主要部20と、上記弁座オリフィス15を備えるオリフィス部21とを備えてなり、このオリフィス部21は上記弁本体主要部20に対して、分離可能な構成とされていることにより、上記ニードル11と弁座オリフィス15に上記(e)の構成を採用することで、制御対象となる気体の流量に柔軟に対応できる流量制御弁を構築することができ、製造コストさらには製品コストの低減化を図ることができる。
【0106】
(g)上記弁本体10と上記配管接続部5は、互いに分離可能に一体接続される構成とされていることにより、流量制御弁2の分解組立が容易で、メンテナンスがし易く、また上記オリフィス部21の上記弁本体主要部20に対する分離交換も可能で、上記(f)の効果がさらに有効に発揮され得る流量制御弁2を構築することができる。
【0107】
さらに、本実施形態の流量制御装置1によれば、上記の流量制御弁2を備えていることにより、この流量制御弁2による上述した特有の効果をすべて発揮することができ、微小流量から大流量までの広範囲にわたる流体の流量制御に適した流量制御装置1を提供することができる。
【0108】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その範囲内において種々設計変更可能であり、例えば以下に列挙するような改変が可能である。
【0109】
(1)図示の実施形態の流量制御弁2において、上記弁座オリフィス15の入口15aに対する配管接続部5からの気体流路45は、弁座オリフィス15の入口15a近傍周囲において、
図4(b)に示すように、上記入口15aへ向かう4つの小径連通路47、47、…が入口15aを中心として放射状に延びて均等配置されているが、この小径連通路47の配設数は、図示例に限定されず、制御対象となる気体の流量等に応じて適宜増減可能である。
【0110】
(2)図示の実施形態の流量制御弁2においては、微小流量から大流量までの広範囲にわたる気体の流量制御に適宜選択的に対応可能とするため、制御すべき気体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した口径を有する複数種類の弁座オリフィス15,15、…をそれぞれ備える複数種類のオリフィス部21、21、…が準備される構成とされているが、単一のオリフィス部21において、制御すべき気体の異なる複数の流量にそれぞれ対応して弁座オリフィス15の口径を調整設定可能な構成とすることも可能である。
【0111】
例えば、具体的には図示しないが、単一のオリフィス部21の円筒本体21aの頂部(先端部)に、弁座オリフィス15の入口15aの口径(入口口径)を規定するオリフィス口径規定部品が、螺合取付等の着脱構造により取外し交換可能に設けられる構造とするとともに、制御すべき気体の異なる複数の流量にそれぞれ対応した入口口径を有する複数種類の上記オリフィス口径規定部品を準備するようにする。
【0112】
(3)図示の実施形態における、オリフィス部21の弁本体主要部20に対する分離可能な構成(
図6)と、上記弁本体10と上記配管接続部5の分離可能な一体接続構成(
図7)の具体的な構造については、図示の実施形態に限定されることなく、同様な機能が発揮され範囲で適宜設計変更可能である。
【0113】
(4)図示の実施形態においては、ニードル11を開閉動作させる直動型モータとして直動型ステッピングモータ12を備えているが、目的に応じて、この直動型ステッピングモータ12に替えて直動型サーボモータ(図示省略)を備えることも可能である。
【0114】
(5)図示の実施形態における気体流量計3は、そのセンサ部60として、二つの巻線ヒータ63a、63bが使用される熱式センサが採用されているが、例えば、特開2016-42047号公報に開示されるように、気体の流れを検知する熱式MEMS(Micro-Electro-Mechanical-Systems:マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)フローセンサチップを備える熱式センサ(図示省略)が採用されても良い。
【0115】
(6)図示の実施形態の流量制御弁2は、気体の質量流量を制御する気体流量制御装置1に採用されているが、本発明の流量制御弁は、このような気体流量制御装置1に限らず、各種流体通路を流れる流体の流量を制御する流量制御装置に広く対象とすることができ、例えば、液体の流量を制御する液体流量制御装置に適用することもでき、この場合は、流体の流量を計測する流量計測手段として、各種の液体流量計が使用される。
【符号の説明】
【0116】
1 流量制御装置
2 流量制御弁(流量調整手段)
2a 流量制御弁の流量調整部
3 気体流量計(流量計測手段)
4 制御部(制御手段)
5 配管接続部
6 配管接続部の連通路
7 上流側連通路
8 下流側連通路
10 弁本体
11 ニードル(弁体)
11a ニードルの先端テーパ部
12 直動型ステッピングモータ(直動型モータ)
15 弁座オリフィス
15a 弁座オリフィスの入口
20 弁本体主要部
21 オリフィス部
28 弁室
35 直動軸
45 気体流路(流体流路)
45a 気体流路入口(流体流路入口)
46 外側円環状連通路
47 小径連通路
48 内側円環状連通路
49 直線状小径連通路
59 オリフィス気体流路(オリフィス流体流路)
51 気体流通空間(流体流通空間)
100 配管
100a 配管の上流側部位
100b 配管の下流側部位