(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077152
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ステータ、回転電機、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/26 20060101AFI20240531BHJP
【FI】
H02K1/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189028
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 篤司
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA13
5H601DD01
5H601DD11
5H601FF05
5H601GB36
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絶縁シートをスロット部内に配置する際に絶縁シートの一部が削れることを抑制しつつ、回転電機のトルクが低下することを抑制する。
【解決手段】ステータ10は、コアバック21、ティース22を有し、周方向に隣り合うティース同士の間にそれぞれスロット部23が設けられたステータコア20と、スロット部内に位置する導体部31と、少なくとも一部がスロット部内において導体部とステータコアとの間に位置する絶縁シート40と、を備える。軸方向に見て、スロット部23の内縁は、ティースの周方向一方側の面とコアバックの径方向一方側の面との接続部である第1接続部23aと、ティースの周方向他方側の面とコアバックの径方向一方側の面との接続部である第2接続部23bと、を有する。第1接続部と第2接続部とは、軸方向に見て、スロット部の周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線CL1を挟んで互いに非対称な形状である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を囲む環状のコアバック、および前記コアバックから径方向一方側に延び周方向に間隔を空けて配置される複数のティースを有し、周方向に隣り合う前記ティース同士の間にそれぞれスロット部が設けられたステータコアと、
前記スロット部内に位置する導体部と、
少なくとも一部が前記スロット部内において前記導体部と前記ステータコアとの間に位置する絶縁シートと、
を備え、
軸方向に見て、前記スロット部の内縁は、前記ティースの周方向一方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第1接続部と、前記ティースの周方向他方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第2接続部と、を有し、
前記第1接続部と前記第2接続部とは、軸方向に見て、前記スロット部の周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線を挟んで互いに非対称な形状である、ステータ。
【請求項2】
前記第1接続部および前記第2接続部は、軸方向に見て、曲線状であり、
前記第1接続部の曲率半径と前記第2接続部の曲率半径とは、互いに異なっている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記絶縁シートは、軸方向に見て第1端部から第2端部まで延びる形状であり、かつ、第1周方向延伸部および第1径方向延伸部を有し、
前記第1周方向延伸部は、周方向に延び、前記導体部と前記コアバックとの径方向の間に位置し、
前記第1径方向延伸部は、前記第1周方向延伸部の周方向一方側の端部から径方向一方側に延び、前記ティースの周方向他方側の面と前記導体部との周方向の間に位置し、
前記第1周方向延伸部の周方向他方側の端部は、前記第1端部であり、かつ、前記第1接続部の周方向一方側に位置し、
前記第1接続部の曲率半径は、前記第2接続部の曲率半径よりも小さい、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記絶縁シートは、
前記第1径方向延伸部の径方向一方側の端部から周方向他方側に延びる第2周方向延伸部と、
前記第2周方向延伸部の周方向他方側の端部から径方向他方側に延び、前記ティースの周方向一方側の面と前記導体部との周方向の間に位置する第2径方向延伸部と、
前記第2径方向延伸部の径方向他方側の端部から周方向一方側に延び、少なくとも一部が前記第1周方向延伸部と前記導体部との径方向の間に位置する第3周方向延伸部と、
を有し、
前記第3周方向延伸部の周方向一方側の端部は、前記第2端部であり、かつ、前記第1周方向延伸部と前記第1径方向延伸部との接続部分の周方向他方側に位置する、請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記第1端部は、前記仮想線よりも周方向他方側に位置し、
前記第2端部は、前記仮想線よりも周方向一方側に位置する、請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記第1端部は、前記スロット部内の周方向他方側の端部に位置する、請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記導体部は、軸方向に延び、
前記スロット部内には、前記導体部が径方向に並んで複数配置され、
前記絶縁シートは、軸方向に見て、前記スロット部内において複数の前記導体部を囲んでいる、請求項4に記載のステータ。
【請求項8】
前記導体部は、平角線によって構成され、
前記スロット部内において最も径方向他方側に配置された前記導体部は、前記コアバックの径方向一方側の面との間で前記第1周方向延伸部および前記第3周方向延伸部を径方向に挟む平面部を有する、請求項7に記載のステータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に隙間を介して対向するロータと、
を備える、回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載の回転電機と、
前記回転電機に接続されたギヤ機構と、
を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、回転電機、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機において、ステータコアのティース間のスロットに絶縁シートが配置された構成が知られている。例えば、特許文献1には、絶縁シートの一部が配置される凹部がティースの側面に設けられた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような回転電機においては、スロットに絶縁シートを配置する際に、絶縁シートのうち端部などの削れやすい部分がステータコアに接触して削れる恐れがある。そのため、削れた絶縁シートの一部が回転電機の内部に残るなどの問題が生じる恐れがある。これに対して、例えば特許文献1においてティースの側面に設けられた凹部内に絶縁シートのうち端部などの削れやすい部分を配置することで、絶縁シートの一部がステータコアと接触して削れることを抑制することが考えられる。しかしながら、この場合には、凹部が設けられた分だけティースが周方向に細くなり、ティースを流れる磁束の量が減少する。そのため、回転電機のトルクが低下する問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、絶縁シートをスロット部内に配置する際に絶縁シートの一部が削れることを抑制しつつ、回転電機のトルクが低下することを抑制できる構造を有するステータ、回転電機、および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステータの一つの態様は、中心軸を囲む環状のコアバック、および前記コアバックから径方向一方側に延び周方向に間隔を空けて配置される複数のティースを有し、周方向に隣り合う前記ティース同士の間にそれぞれスロット部が設けられたステータコアと、前記スロット部内に位置する導体部と、少なくとも一部が前記スロット部内において前記導体部と前記ステータコアとの間に位置する絶縁シートと、を備える。軸方向に見て、前記スロット部の内縁は、前記ティースの周方向一方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第1接続部と、前記ティースの周方向他方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第2接続部と、を有する。前記第1接続部と前記第2接続部とは、軸方向に見て、前記スロット部の周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線を挟んで互いに非対称な形状である。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上記のステータと、前記ステータと径方向に隙間を介して対向するロータと、を備える。
【0008】
本発明の駆動装置の一つの態様は、上記の回転電機と、前記回転電機に接続されたギヤ機構と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、回転電機および駆動装置において、絶縁シートをスロット部内に配置する際に絶縁シートの一部が削れることを抑制しつつ、回転電機のトルクが低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態における駆動装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるステータコアを示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態におけるステータの一部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態におけるステータの一部を示す断面図であって、
図3の部分拡大図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態におけるステータコアの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0012】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、+X側は、車両における前側であり、-X側は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、+Y側は、車両における左側であり、-Y側は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0013】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0014】
適宜図に示す中心軸Jは、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸Jは、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、つまり中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0015】
また、以下の説明においては、左側(+Y側)を「軸方向一方側」と呼び、右側(-Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。適宜図に示す矢印θは、周方向を示している。以下の説明においては、周方向のうち右側(-Y側)から見て中心軸Jを中心として時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼び、周方向のうち右側から見て中心軸Jを中心として反時計回りに進む側、すなわち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。なお、以下の実施形態において、径方向内側は「径方向一方側」に相当し、径方向外側は「径方向他方側」に相当する。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸73を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
図1に示すように、駆動装置100は、回転電機60と、回転電機60に接続されたギヤ機構70と、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容するハウジング80と、回転電機60を制御する制御装置64と、を備える。本実施形態において回転電機60は、モータである。
【0017】
ハウジング80は、回転電機60およびギヤ機構70を内部に収容している。ハウジング80は、回転電機60を内部に収容するモータハウジング81と、ギヤ機構70を内部に収容するギヤハウジング82と、を有する。本実施形態においてモータハウジング81の内部およびギヤハウジング82の内部には、オイルOが収容されている。
【0018】
ギヤ機構70は、回転電機60の回転を車両の車軸73に伝達する。ギヤ機構70は、回転電機60に接続された減速装置71と、減速装置71に接続された差動装置72と、を有する。差動装置72には、車軸73が接続されている。
【0019】
回転電機60は、中心軸Jを中心として回転可能なロータ61と、ステータ10と、を備える。ロータ61は、ステータ10と径方向に隙間を介して対向している。ロータ61は、ステータ10の径方向内側に位置する。ロータ61は、シャフト62と、ロータ本体63と、を有する。シャフト62は、中心軸Jを中心として軸方向に延びている。シャフト62の軸方向一方側(+Y側)の端部は、ギヤハウジング82内に突出している。シャフト62の軸方向一方側の端部には、減速装置71が接続されている。ロータ本体63は、シャフト62の外周面に固定されている。図示は省略するが、ロータ本体63は、ロータコアと、マグネットと、を有する。
【0020】
本実施形態においてステータ10は、ロータ61の径方向外側に位置する。ステータ10は、ロータ61を囲む環状である。ステータ10は、ステータコア20と、コイル30と、絶縁シート40と、を備える。
【0021】
図2に示すように、ステータコア20は、中心軸Jを囲む環状である。ステータコア20は、中心軸Jを中心とする略円環状である。ステータコア20は、磁性体製である。ステータコア20は、例えば、複数の板部材が軸方向に積層されることで構成されている。当該板部材は、例えば、電磁鋼板である。ステータコア20は、コアバック21と、複数のティース22と、を有する。コアバック21は、中心軸Jを囲む環状である。本実施形態においてコアバック21は、中心軸Jを中心とし、軸方向両側に開口する円筒状である。
【0022】
複数のティース22は、コアバック21から径方向内側に延びている。複数のティース22は、周方向に間隔を空けて配置されている。複数のティース22は、周方向の一周に亘って等間隔に配置されている。
図3に示すように、ティース22は、ティース本体部22aと、アンブレラ部22bと、を有する。ティース本体部22aは、コアバック21から径方向内側に延びている。ティース本体部22aの周方向の寸法は、径方向内側に向かうに従って小さくなっている。
【0023】
ティース本体部22aは、周方向一方側(+θ側)の側面22cと、周方向他方側(-θ側)の側面22dと、を有する。側面22cと側面22dとは、軸方向に見て、コアバック21から径方向内側に延びている。1つのティース22において側面22cと側面22dとは、軸方向に見て、径方向内側に向かうに従って互いに周方向に近づく向きに延びている。本実施形態において、周方向に隣り合う一対のティース22のうち周方向一方側に位置する一方のティース22の側面22dと、周方向他方側に位置する他方のティース22の側面22cとは、軸方向に見て、互いに平行に延びている。
【0024】
アンブレラ部22bは、ティース本体部22aの径方向内側の端部に繋がっている。アンブレラ部22bは、ティース本体部22aの径方向内側の端部よりも周方向の両側に突出している。アンブレラ部22bの径方向内側の面は、ティース22の径方向内側の端面であり、軸方向に見て、中心軸Jを中心とする円弧状である。
【0025】
ステータコア20には、周方向に隣り合うティース22同士の間にそれぞれスロット部23が設けられている。スロット部23は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。複数のスロット部23は、周方向に一周に亘って等間隔に配置されている。各スロット部23は、周方向に隣り合う一対のティース22と、コアバック21のうち当該一対のティース22の径方向外側の端部同士を繋ぐ部分と、によって構成されている。スロット部23の内縁は、軸方向に見て、径方向に長い略長方形状である。
【0026】
スロット部23は、径方向内側の端部に、径方向内側に開口する開口部23cを有する。開口部23cは、周方向に隣り合うアンブレラ部22b同士の間に設けられている。開口部23cの周方向の寸法は、スロット部23のうち開口部23cよりも径方向外側に位置する部分における周方向の寸法よりも小さい。
【0027】
図4に示すように、軸方向に見て、スロット部23の内縁は、第1接続部23aと、第2接続部23bと、を有する。第1接続部23aは、ティース22の周方向一方側(+θ側)の面である側面22cとコアバック21の径方向内側の面である内周面21aとの接続部である。第2接続部23bは、ティース22の周方向他方側(-θ側)の面である側面22dとコアバック21の径方向内側の面である内周面21aとの接続部である。第1接続部23aは、軸方向に見て略長方形状のスロット部23の内縁のうち径方向外側かつ周方向他方側の角部である。第2接続部23bは、軸方向に見て略長方形状のスロット部23の内縁のうち径方向外側かつ周方向一方側の角部である。第1接続部23aと第2接続部23bとは、周方向に間隔を空けて配置されている。
【0028】
本実施形態において第1接続部23aおよび第2接続部23bは、軸方向に見て、曲線状である。そのため、ティース22とコアバック21とを滑らかに繋ぐことができ、各接続部においてティース22に生じる応力を好適に分散して受けることができる。第1接続部23aは、軸方向に見て、径方向外側かつ周方向他方側(-θ側)に凹となる円弧状である。第2接続部23bは、軸方向に見て、径方向外側かつ周方向一方側(+θ側)に凹となる円弧状である。第1接続部23aの曲率半径と第2接続部23bの曲率半径とは、互いに異なっている。本実施形態において第1接続部23aの曲率半径は、第2接続部23bの曲率半径よりも小さい。
【0029】
第1接続部23aと第2接続部23bとは、軸方向に見て、スロット部23の周方向の中心を通り径方向に延びる第1仮想線CL1を挟んで互いに非対称な形状である。言い換えれば、第1接続部23aと第2接続部23bとは、軸方向に見て、第1仮想線CL1を対称軸として互いに線対称にならない形状である。第1仮想線CL1は、軸方向に見て、スロット部23の内面のうち周方向一方側に位置する側面22dとスロット部23の内面のうち周方向他方側に位置する側面22cとの間の周方向の中心を通る。第1接続部23aと第2接続部23bとは、軸方向に見て、ティース22の周方向の中心を通り径方向に延びる第2仮想線CL2を挟んで互いに非対称な形状でもある。第2仮想線CL2は、ティース本体部22aの周方向の中心を通る。
【0030】
本実施形態においてコイル30は、平角線によって構成されている。コイル30は、例えば、全節巻きのコイルである。コイル30は、各スロット部23内に位置する導体部31を有する。つまり、ステータ10は、導体部31を備える。導体部31は、スロット部23内において軸方向に延びている。導体部31は、平角線によって構成されている。軸方向と直交する断面において導体部31の形状は、周方向に長い角丸の略長方形状である。各スロット部23内には、導体部31が径方向に並んで複数配置されている。
【0031】
図示は省略するが、コイル30は、異なるスロット部23内に位置する導体部31同士をステータコア20よりも軸方向一方側において接続する第1接続導体部と、異なるスロット部23内に位置する導体部31同士をステータコア20よりも軸方向他方側において接続する第2接続導体部と、を有する。当該第1接続導体部と当該第2接続導体部との少なくとも一方は、導体部31とは別部材であり、溶接により導体部31と接続されている。
【0032】
絶縁シート40は、絶縁性を有する材料によって構成されたシート状の部材である。絶縁シート40を構成する材料は、絶縁性を有するならば特に限定されない。本実施形態において絶縁シート40は、絶縁紙である。絶縁シート40は、各スロット部23内にそれぞれ設けられている。絶縁シート40は、少なくとも一部がスロット部23内において導体部31とステータコア20との間に位置する。絶縁シート40によって、導体部31とステータコア20との間が絶縁されている。本実施形態において絶縁シート40は、可撓性を有する。
【0033】
本実施形態において絶縁シート40は、軸方向に延びる軸回りに巻かれた略四角筒状である。
図3に示すように、軸方向に見て、絶縁シート40の外形は、径方向に長い略長方形状である。本実施形態において絶縁シート40は、スロット部23内において複数の導体部31を囲んでいる。そのため、絶縁シート40によって複数の導体部31とステータコア20との間をまとめて絶縁することができる。
図1に示すように、絶縁シート40の軸方向の寸法は、ステータコア20の軸方向の寸法よりも大きい。絶縁シート40は、ステータコア20よりも軸方向の両側に突出している。
図3に示すように、絶縁シート40は、軸方向に見て、第1端部40aから第2端部40bまで延びる形状である。絶縁シート40は、例えば、筒状に巻かれた状態で、軸方向のいずれか一方の側からスロット部23内に挿入されて、スロット部23内に配置される。
【0034】
ここで、例えば第1端部40aなどは、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際にステータコア20と接触すると、一部が削れやすい。これに対して、例えば、ティース22の側面に凹部を設けて、第1端部40aなどの絶縁シート40における削れやすい部分を当該凹部内に逃がすことで、絶縁シート40の一部が削れることを抑制することが考えられる。しかしながら、この場合には、当該凹部が設けられた分だけティース22が周方向に細くなり、ティース22を流れる磁束の量が減少する。そのため、回転電機60のトルクが低下する問題がある。
【0035】
これに対して、本実施形態によれば、ティース22の周方向一方側の側面22cとコアバック21の内周面21aとの第1接続部23aと、ティース22の周方向他方側の側面22dとコアバック21の内周面21aとの第2接続部23bとは、軸方向に見て、スロット部23の周方向の中心を通り径方向に延びる第1仮想線CL1を挟んで互いに非対称な形状である。そのため、第1接続部23aと第2接続部23bとをそれぞれ異なる目的に応じた形状にすることが可能となる。具体的には、第1接続部23aを絶縁シート40のうち削れやすい部分が接触することを抑制しやすい形状としつつ、第2接続部23bをティース22に流れる磁束の量を多くしやすい形状とすることが可能である。これにより、第1接続部23aの近くに絶縁シート40のうちステータコア20と接触した際に削れやすい部分を配置することで、ティース22の側面22c,22dに凹部を設けることなく、絶縁シート40の一部がステータコア20に接触して削れることを抑制できる。これにより、凹部を設ける必要がないため、凹部に起因してティース22に流れる磁束の量が減少することがない。また、第2接続部23bをティース22に流れる磁束の量を多くしやすい形状とすることで、例えば第1接続部23aが絶縁シート40との接触を避けるために磁束が流れにくい形状となったとしても、ティース22に流れる磁束の量が減少することを抑制できる。以上により、本実施形態によれば、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に絶縁シート40の一部が削れることを抑制しつつ、回転電機60のトルクが低下することを抑制できる。また、絶縁シート40の一部が削れることを抑制できるため、絶縁シート40から削れた部分が回転電機60内に異物として残ることを抑制できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1接続部23aおよび第2接続部23bは、軸方向に見て、曲線状である。第1接続部23aの曲率半径と第2接続部23bの曲率半径とは、互いに異なっている。そのため、第1接続部23aの曲率半径を小さくしつつ、第2接続部23bの曲率半径を大きくすることが可能である。第1接続部23aの曲率半径を小さくすることで、第1接続部23aがスロット部23内に向けて迫り出すことを抑制できる。そのため、第1接続部23aの近くに絶縁シート40のうち削れやすい部分を配置することで、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に絶縁シート40のうち削れやすい部分がステータコア20と接触することをより抑制できる。また、第2接続部23bの曲率半径を大きくすることで、第2接続部23bをスロット部23内に迫り出させることができる。そのため、第2接続部23bにおいてティース22の周方向の寸法を大きくすることができ、ティース22に流れる磁束の量をより多くできる。したがって、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に絶縁シート40の一部が削れることをより抑制しつつ、回転電機60のトルクが低下することをより抑制できる。
【0037】
本実施形態において第1端部40aおよび第2端部40bは、導体部31とコアバック21との径方向の間に位置する。第1端部40aは、第2端部40bよりも径方向外側に位置する。第1端部40aは、コアバック21の内周面21aと接触している。
図4に示すように、第1端部40aは、第1仮想線CL1よりも周方向他方側(-θ側)に位置する。第2端部40bは、第1仮想線CL1よりも周方向一方側(+θ側)に位置する。
【0038】
図3に示すように、絶縁シート40は、第1周方向延伸部41aと、第1径方向延伸部42aと、第2周方向延伸部41bと、第2径方向延伸部42bと、第3周方向延伸部41cと、を有する。
【0039】
第1周方向延伸部41aは、周方向に延びている。第1周方向延伸部41aは、導体部31とコアバック21との径方向の間に位置する。第1周方向延伸部41aの周方向他方側(-θ側)の端部は、第1端部40aである。
図4に示すように、第1周方向延伸部41aの周方向他方側の端部、すなわち第1端部40aは、第1接続部23aの周方向一方側(+θ側)に位置する。ここで、上述したように、第1端部40aは絶縁シート40のうちで削れやすい部分であり、第1接続部23aの曲率半径は第2接続部23bの曲率半径よりも小さい。そのため、曲率半径が比較的小さくスロット部23内に迫り出すことが抑制された第1接続部23aの周方向一方側に、削れやすい第1端部40aを配置することで、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に第1端部40aがステータコア20と接触することを抑制できる。これにより、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に絶縁シート40の一部が削れることをより抑制できる。
【0040】
本実施形態において第1端部40aは、第1接続部23aと僅かな隙間を介して周方向に対向して配置されている。本実施形態において第1端部40aは、スロット部23内の周方向他方側(-θ側)の端部に位置する。第1端部40aは、導体部31の周方向他方側の面よりも周方向一方側(+θ側)に位置する。なお、第1端部40aは、導体部31の周方向他方側の面と周方向において同じ位置に位置してもよいし、導体部31の周方向他方側の面よりも周方向他方側に位置してもよい。第1周方向延伸部41aは、コアバック21の内周面21aに接触している。本実施形態において第1周方向延伸部41aの周方向一方側の端部は、第2接続部23bに接触している。
【0041】
第1径方向延伸部42aは、第1周方向延伸部41aの周方向一方側(+θ側)の端部から径方向内側に延びている。第1径方向延伸部42aは、ティース22の周方向他方側(-θ側)の側面22dと導体部31との周方向の間に位置する。本実施形態において第1径方向延伸部42aは、スロット部23内に配置された複数の導体部31と側面22dとの周方向の間に位置する。第1径方向延伸部42aは、各導体部31の周方向一方側の面と側面22dとに接触している。第1径方向延伸部42aの径方向外側の端部は、第2接続部23bに接触している。第1周方向延伸部41aと第1径方向延伸部42aとの接続部分43は、軸方向に見て、第2接続部23bに沿った円弧状であり、第2接続部23bに接触している。
【0042】
図3に示すように、第1径方向延伸部42aの径方向内側の端部は、アンブレラ部22bのうちティース本体部22aよりも周方向他方側(-θ側)に突出した部分の径方向外側に位置する。第1径方向延伸部42aの径方向内側の端部は、アンブレラ部22bと隙間を介して径方向に対向している。第1径方向延伸部42aが径方向に対向するアンブレラ部22bは、第1径方向延伸部42aが接触する側面22dを有するティース22のアンブレラ部22bである。
【0043】
第2周方向延伸部41bは、第1径方向延伸部42aの径方向内側の端部から周方向他方側(-θ側)に延びている。第2周方向延伸部41bは、複数の導体部31の径方向内側に位置する。第2周方向延伸部41bは、例えば、複数の導体部31のうち最も径方向内側に位置する導体部31の径方向内側の面と接触している。第2周方向延伸部41bは、開口部23cの径方向外側に間隔を空けて対向して配置されている。
【0044】
第2径方向延伸部42bは、第2周方向延伸部41bの周方向他方側(-θ側)の端部から径方向外側に延びている。第2径方向延伸部42bは、ティース22の周方向一方側(+θ側)の側面22cと導体部31との周方向の間に位置する。本実施形態において第2径方向延伸部42bは、スロット部23内に配置された複数の導体部31と側面22cとの周方向の間に位置する。第2径方向延伸部42bは、各導体部31の周方向他方側の面と側面22cとに接触している。
【0045】
第2径方向延伸部42bの径方向内側の端部は、アンブレラ部22bのうちティース本体部22aよりも周方向一方側(+θ側)に突出した部分の径方向外側に位置する。第2径方向延伸部42bの径方向内側の端部は、アンブレラ部22bと隙間を介して径方向に対向している。第2径方向延伸部42bが径方向に対向するアンブレラ部22bは、第2径方向延伸部42bが接触する側面22cを有するティース22のアンブレラ部22bである。
図4に示すように、第2径方向延伸部42bの径方向外側の端部は、第1接続部23aの径方向内側に位置する。第2径方向延伸部42bの径方向外側の端部は、第1接続部23aと隙間を介して対向している。
【0046】
第3周方向延伸部41cは、第2径方向延伸部42bの径方向外側の端部から周方向一方側(+θ側)に延びている。第3周方向延伸部41cの少なくとも一部は、第1周方向延伸部41aと導体部31との径方向の間に位置する。本実施形態では、第3周方向延伸部41cの周方向他方側(-θ側)の端部を除く全体が、第1周方向延伸部41aと導体部31との径方向の間に位置する。第3周方向延伸部41cは、第1周方向延伸部41aの径方向内側の面と、複数の導体部31のうち最も径方向外側に位置する導体部31の径方向外側の面と、に接触している。第3周方向延伸部41cが接触する導体部31の面は、コアバック21の径方向内側の面である内周面21aとの間で第1周方向延伸部41aおよび第3周方向延伸部41cを径方向に挟む平面部31aである。つまり、スロット部23内において最も径方向外側に配置された導体部31は、平面部31aを有する。平面部31aは、第1仮想線CL1と直交する平坦面である。
【0047】
第3周方向延伸部41cの周方向一方側(+θ側)の端部は、第2端部40bである。第3周方向延伸部41cの周方向一方側の端部、すなわち第2端部40bは、第1周方向延伸部41aと第1径方向延伸部42aとの接続部分43の周方向他方側(-θ側)に位置する。本実施形態において第2端部40bは、接続部分43と僅かな隙間を介して周方向に対向して配置されている。
【0048】
ここで、第1端部40aと同様に、第2端部40bは、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際、仮にステータコア20に接触すると削れやすい。しかしながら、本実施形態では、第2端部40bは、第1周方向延伸部41aの径方向内側に位置する第3周方向延伸部41cの周方向一方側(+θ側)の端部である。そのため、第2端部40bは、筒状に折り曲げられた絶縁シート40の内側に位置し、筒状の絶縁シート40の外側には露出していない。これにより、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に第2端部40bがステータコア20と接触することを抑制できる。したがって、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に絶縁シート40の一部が削れることをより抑制できる。
【0049】
また、第3周方向延伸部41cの周方向一方側(+θ側)の端部は、第2端部40bであり、接続部分43の周方向他方側(-θ側)に位置する。つまり、本実施形態において絶縁シート40は、第3周方向延伸部41cの周方向一方側の端部に繋がる他の部分を有していない。そのため、筒状に折り曲げられた絶縁シート40の部分同士が重ね合わされる部分を、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされる部分のみにできる。これにより、例えば、ティース22と導体部31との間に絶縁シート40の部分同士が周方向に重ね合わされる部分が設けられる場合に比べて、スロット部23内のうち導体部31を配置できる空間を周方向に大きくできる。したがって、導体部31の周方向の寸法を大きくでき、コイル30に流される電流を好適に大きくできる。そのため、回転電機60を大型化することなく、回転電機60のトルクを向上できる。
【0050】
また、例えば、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされる部分がスロット部23の開口部23cと対向する位置に配置される場合、ステータ10の組立時などに、第1周方向延伸部41aが第3周方向延伸部41cから離れて、第1端部40aなどが開口部23cからスロット部23の外部にはみ出る恐れがある。そのため、この場合には、ステータ10を組み立てにくくなる恐れがある。
【0051】
これに対して、本実施形態によれば、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされる部分が、導体部31とコアバック21との径方向の間に配置される。そのため、第1周方向延伸部41aが第3周方向延伸部41cから径方向に離れることをコアバック21によって抑制できる。したがって、ステータ10の組立時などに、第1周方向延伸部41aが第3周方向延伸部41cから離れることを抑制でき、ステータ10を組み立てにくくなることを抑制できる。また、ステータ10を組み立てた後には、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが重ね合わされる部分を導体部31とコアバック21とによって挟んで押さえることができる。これにより、絶縁シート40をスロット部23内に好適に保持しておくことができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、上述したように、スロット部23内において最も径方向外側に配置された導体部31は、コアバック21の内周面21aとの間で第1周方向延伸部41aおよび第3周方向延伸部41cを径方向に挟む平面部31aを有する。そのため、平面部31aによって、第1周方向延伸部41aおよび第3周方向延伸部41cを好適にコアバック21に対して押さえつけておくことができる。したがって、絶縁シート40をより好適にスロット部23内に保持しておくことができる。
【0053】
ここで、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとの径方向の間には、僅かな隙間が生じる場合がある。この場合において導体部31に比較的大きい電流が流れると、導体部31から当該隙間へと電流が流れる場合がある。当該隙間を流れる電流は、当該隙間のうち第2端部40bと第1周方向延伸部41aとの間の部分から周方向他方側(-θ側)に流れて、当該隙間のうち第1端部40aと第3周方向延伸部41cとの間の部分からステータコア20へと流れる恐れがある。そのため、絶縁シート40による導体部31とステータコア20との間の絶縁性をより向上させるためには、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが重ね合わされる部分の周方向の寸法を大きくし、導体部31とステータコア20との間の沿面距離を大きくすることが好ましい。
【0054】
これに対して、本実施形態によれば、上述したように、第1端部40aは、第1仮想線CL1よりも周方向他方側(-θ側)に位置し、第2端部40bは、第1仮想線CL1よりも周方向一方側(+θ側)に位置する。そのため、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされる部分の周方向の寸法を好適に大きくできる。これにより、導体部31とステータコア20との間の沿面距離を好適に大きくすることができる。したがって、導体部31からステータコア20へと電流が流れることを好適に抑制できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、第1端部40aは、スロット部23内の周方向他方側(-θ側)の端部に位置する。そのため、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされる部分の周方向の寸法をより好適に大きくできる。これにより、導体部31とステータコア20との間の沿面距離をより好適に大きくすることができる。したがって、導体部31からステータコア20へと電流が流れることをより好適に抑制できる。
【0056】
なお、第1端部40aをスロット部23内の周方向他方側(-θ側)の端部に配置すると、第1端部40aが第1接続部23aに近づくが、上述したように第1接続部23aは第1端部40aと接触しにくい形状となっている。そのため、第1端部40aをスロット部23内の周方向他方側の端部に配置する構成としても、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に、第1端部40aがステータコア20と接触することを抑制できる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、絶縁シート40の部分同士が重ね合わされる部分を絶縁シート40の径方向外側に位置する部分のみとすることで、スロット部23内において導体部31を配置する空間の周方向の大きさを好適に確保しつつ、かつ、絶縁シート40の当該重ね合わされる部分がばらけることを抑制できる。さらに、第1端部40aをスロット部23内の周方向他方側(-θ側)の端部に配置することで当該重ね合わされる部分の周方向の寸法を大きくして導体部31とステータコア20との間の沿面距離を大きくできる。これらの構成によって、導体部31を大きくしてコイル30に流せる電流の量を多くしつつ、ステータ10を組み立てやすくし、かつ、絶縁シート40によって導体部31とステータコア20とを好適に絶縁できる。また、スロット部23内における絶縁シート40の配置をこれらの効果を得られる配置としても、第1端部40aが対向する第1接続部23aの曲率半径を小さくすることで、絶縁シート40をスロット部23内に配置する際に第1端部40aが第1接続部23aに接触することを抑制できる。さらには、第1端部40aを逃がす必要のない第2接続部23bについては曲率半径を大きくすることで、第2接続部23bにおいてティース22を周方向に大きくすることができ、ティース22に流れる磁束の量を多くできる。以上のように本実施形態によれば、絶縁シート40によって導体部31とステータコア20とを好適に絶縁しつつ、ステータ10の組み立てを容易にでき、かつ、回転電機60のトルクを好適に向上できる。
【0058】
本実施形態においてステータ10を組み立てる作業者等は、一部同士を互いに重ね合わせて筒状に折り曲げた状態の絶縁シート40を、ステータコア20の各スロット部23内に軸方向のいずれか一方の側から挿入する。このとき、作業者等は、絶縁シート40のうち重ね合わされた部分が径方向外側に位置する向きで、絶縁シート40をスロット部23内に挿入する。当該重ね合わされた部分とは、第1周方向延伸部41aと第3周方向延伸部41cとが径方向に重ね合わされた部分である。本実施形態において絶縁シート40は可撓性を有するため、筒状に折り曲げられた状態の絶縁シート40は、弾性変形した状態となっている。これにより、筒状に折り曲げられた状態でスロット部23内に挿入された絶縁シート40は、復元変形しようとしてスロット部23の内面に押し付けられ、スロット部23内に保持される。
【0059】
作業者等は、各スロット部23内に挿入された筒状の絶縁シート40の内側のそれぞれに、複数の導体部31を軸方向に挿入する。作業者等は、導体部31をスロット部23内に挿入した後、導体部31の軸方向両側の端部のうちの少なくとも一方を、上述した図示しない第1接続導体部または第2接続導体部と溶接する。第1接続導体部と第2接続導体部とのうちの一方が導体部31と一体成形されている場合には、作業者等は、第1接続導体部と第2接続導体部とのうちの他方のみを導体部31に溶接する。一方、第1接続導体部と第2接続導体部とのいずれもが導体部31と別体である場合には、作業者等は、第1接続導体部と第2接続導体部との両方を導体部31に溶接する。以上により、ステータ10が組み立てられる。
【0060】
なお、本明細書において「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置などを含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0061】
以下、上述した第1実施形態とは異なる実施形態について説明する。以下の実施形態の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。また、以下の実施形態において説明を省略した構成としては、矛盾しない範囲内において、上述した第1実施形態と同様の構成を採用できる。
【0062】
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態のステータコア220におけるスロット部223において、第1接続部223aは、軸方向に見て、角形状である。言い換えれば、第1接続部223aは、軸方向に見て、ピン角状である。より詳細には、第1接続部223aは、軸方向に見て、略90°を成す角形状である。第1接続部223aは、ティース22の側面22cとコアバック21の内周面21aとがほぼ直角に繋がって作られている。第1接続部223aがこのような形状である場合、第1接続部223aがスロット部223内に迫り出すことをより抑制できる。したがって、絶縁シート40をスロット部223内に配置する際に、絶縁シート40の第1端部40aが第1接続部223aに接触することをより好適に抑制できる。
【0063】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。スロット部の内縁に設けられた第1接続部と第2接続部とは、軸方向に見て、スロット部の周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線を挟んで互いに非対称な形状であれば、それぞれどのような形状であってもよい。例えば、第1接続部および第2接続部は、軸方向に見て、折れ線状であってもよい。スロット部内に配置される導体部の数は、1つ以上であれば、特に限定されない。導体部は、丸線で構成されてもよい。コイルは、少なくとも1つの導体部を有するならば、どのような構成であってもよい。
【0064】
絶縁シートは、少なくとも一部がスロット部内において導体部とステータコアとの間に位置するならば、どのような形状であってもよい。絶縁シートの第1端部および第2端部は、どのように配置されてもよい。絶縁シートに一部同士が重ね合わされた部分が設けられる場合、当該重ね合わされた部分は、スロット部内のいずれの箇所に位置してもよい。絶縁シートは、一部同士が重ね合わされた部分を有しなくてもよい。
【0065】
上述した第1実施形態において絶縁シート40とステータコア20とが互いに接触していた部分の少なくとも一部は、互いに接触していなくてもよい。上述した第1実施形態において絶縁シート40と導体部31とが互いに接触していた部分の少なくとも一部は、互いに接触していなくてもよい。上述した第1実施形態において絶縁シート40は、アンブレラ部22bに接触していてもよい。
【0066】
本発明が適用される回転電機は、アウターロータ型の回転電機であってもよい。この場合、径方向外側が「径方向一方側」に相当し、径方向内側が「径方向他方側」に相当する。回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、車両以外の機器に搭載されてもよい。本発明が適用される駆動装置の用途は、特に限定されない。駆動装置は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機、および駆動装置が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸は、鉛直方向と直交する水平方向に対して傾いていてもよいし、鉛直方向に延びてもよい。
【0067】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸を囲む環状のコアバック、および前記コアバックから径方向一方側に延び周方向に間隔を空けて配置される複数のティースを有し、周方向に隣り合う前記ティース同士の間にそれぞれスロット部が設けられたステータコアと、前記スロット部内に位置する導体部と、少なくとも一部が前記スロット部内において前記導体部と前記ステータコアとの間に位置する絶縁シートと、を備え、軸方向に見て、前記スロット部の内縁は、前記ティースの周方向一方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第1接続部と、前記ティースの周方向他方側の面と前記コアバックの径方向一方側の面との接続部である第2接続部と、を有し、前記第1接続部と前記第2接続部とは、軸方向に見て、前記スロット部の周方向の中心を通り径方向に延びる仮想線を挟んで互いに非対称な形状である、ステータ。
(2) 前記第1接続部および前記第2接続部は、軸方向に見て、曲線状であり、前記第1接続部の曲率半径と前記第2接続部の曲率半径とは、互いに異なっている、(1)に記載のステータ。
(3) 前記絶縁シートは、軸方向に見て第1端部から第2端部まで延びる形状であり、かつ、第1周方向延伸部および第1径方向延伸部を有し、前記第1周方向延伸部は、周方向に延び、前記導体部と前記コアバックとの径方向の間に位置し、前記第1径方向延伸部は、前記第1周方向延伸部の周方向一方側の端部から径方向一方側に延び、前記ティースの周方向他方側の面と前記導体部との周方向の間に位置し、前記第1周方向延伸部の周方向他方側の端部は、前記第1端部であり、かつ、前記第1接続部の周方向一方側に位置し、前記第1接続部の曲率半径は、前記第2接続部の曲率半径よりも小さい、(2)に記載のステータ。
(4) 前記絶縁シートは、前記第1径方向延伸部の径方向一方側の端部から周方向他方側に延びる第2周方向延伸部と、前記第2周方向延伸部の周方向他方側の端部から径方向他方側に延び、前記ティースの周方向一方側の面と前記導体部との周方向の間に位置する第2径方向延伸部と、前記第2径方向延伸部の径方向他方側の端部から周方向一方側に延び、少なくとも一部が前記第1周方向延伸部と前記導体部との径方向の間に位置する第3周方向延伸部と、を有し、前記第3周方向延伸部の周方向一方側の端部は、前記第2端部であり、かつ、前記第1周方向延伸部と前記第1径方向延伸部との接続部分の周方向他方側に位置する、(3)に記載のステータ。
(5) 前記第1端部は、前記仮想線よりも周方向他方側に位置し、前記第2端部は、前記仮想線よりも周方向一方側に位置する、(4)に記載のステータ。
(6) 前記第1端部は、前記スロット部内の周方向他方側の端部に位置する、(5)に記載のステータ。
(7) 前記導体部は、軸方向に延び、前記スロット部内には、前記導体部が径方向に並んで複数配置され、前記絶縁シートは、軸方向に見て、前記スロット部内において複数の前記導体部を囲んでいる、(4)から(6)のいずれか一項に記載のステータ。
(8) 前記導体部は、平角線によって構成され、前記スロット部内において最も径方向他方側に配置された前記導体部は、前記コアバックの径方向一方側の面との間で前記第1周方向延伸部および前記第3周方向延伸部を径方向に挟む平面部を有する、(7)に記載のステータ。
(9) (1)から(8)のいずれか一項に記載のステータと、前記ステータと径方向に隙間を介して対向するロータと、を備える、回転電機。
(10) (9)に記載の回転電機と、前記回転電機に接続されたギヤ機構と、を備える、駆動装置。
【0068】
以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
10…ステータ、20,220…ステータコア、21…コアバック、22…ティース、23,223…スロット部、23a,223a…第1接続部、23b…第2接続部、31…導体部、31a…平面部、40…絶縁シート、40a…第1端部、40b…第2端部、41a…第1周方向延伸部、41b…第2周方向延伸部、41c…第3周方向延伸部、42a…第1径方向延伸部、42b…第2径方向延伸部、43…接続部分、60…回転電機、61…ロータ、70…ギヤ機構、100…駆動装置、CL1…第1仮想線(仮想線)、J…中心軸