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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077161
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4391 20120101AFI20240531BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20240531BHJP
   D04H 1/70 20120101ALI20240531BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20240531BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20240531BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
D04H1/4391
D04H1/4382
D04H1/70
A61F13/512
A61F13/532 200
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189046
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 吉彦
【テーマコード(参考)】
3B200
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA04
3B200BB03
3B200DB05
3B200DC04
4L047AA25
4L047AB02
4L047BD02
4L047CA10
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、所定の条件によって開閉を制御可能な開孔部を有する不織布に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る不織布は、形状記憶繊維を含有し、かつ、不織布本体と、複数の開孔部と、を有する。複数の開孔部各々は、不織布の厚み方向に開孔する開孔本体と、開孔本体を覆うことが可能に構成された蓋部と、を有する。蓋部は、不織布本体に連結された連結部を有する。複数の開孔部各々は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、連結部が厚み方向に屈曲することで開孔本体が開放される開形状と、開形状よりも平面視における開孔面積が小さい閉形状と、が切り替わるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶繊維を含有する不織布であって、
前記不織布は、
不織布本体と、
前記不織布本体に形成された複数の開孔部と、を有し、
複数の前記開孔部各々は、
前記不織布の厚み方向に開孔する開孔本体と、
前記開孔本体を覆うことが可能に構成された蓋部と、を有し、
前記蓋部は、前記不織布本体に連結された連結部を有し、
複数の前記開孔部各々は、
40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記連結部が前記厚み方向に屈曲することで前記開孔本体が開放される開形状と、前記開形状よりも平面視における開孔面積が小さい閉形状と、が切り替わるように構成される
不織布。
【請求項2】
複数の前記開孔部は、
40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記開形状から前記閉形状に切り替わる第1開孔部を含む
請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
複数の前記開孔部は、
40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記閉形状から前記開形状に切り替わる第2開孔部を含む
請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記第2開孔部の前記開孔本体は、溝状に構成される
請求項3に記載の不織布。
【請求項5】
前記不織布は、前記厚み方向とそれぞれ直交する、繊維配向方向と、該方向と直交する方向とを有し、
前記連結部は、前記繊維配向方向と交差する
請求項1から4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布では、前記厚み方向と直交する平面上に延びる主面に対し、前記開形状における屈曲した前記連結部のなす角度は、30度以上130度以下である
請求項1から5のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項7】
前記不織布は、吸収性物品用の不織布である
請求項1から6のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の不織布を備えた
吸収性物品。
【請求項9】
形状記憶繊維を含有する不織布の製造方法であって、
複数の第1凸部を備えた第1支持体に、形状記憶繊維を含有する原形不織布を押圧し、かつ複数の前記第1凸部によって前記原形不織布を切り開くことで、開形状の複数の第2開孔部を形成する第1カット工程を含む
不織布の製造方法。
【請求項10】
前記第1カット工程では、前記第1支持体が80℃以上200℃以下に加熱されており、
さらに、前記第1カット工程の後、前記原形不織布に形成された開形状の複数の前記第2開孔部を、60℃以下で平坦化し、閉形状の複数の前記第2開孔部を形成する平坦化工程を含む
請求項9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
前記平坦化工程により閉形状の複数の前記第2開孔部が形成された中間体不織布に、さらに、開形状の前記複数の第1開孔部を形成する第2カット工程であって、
複数の前記第1凸部と異なるパターンで配置された複数の第2凸部を備え、60℃以下に維持された第2支持体に、前記中間体不織布を押圧し、かつ複数の前記第2凸部によって前記中間体不織布を切り開くことで、開形状の複数の前記第1開孔部を形成する第2カット工程を含み、
前記第1開孔部は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記開形状から前記閉形状に切り替わり、
前記第2開孔部は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記閉形状から前記開形状に切り替わる、
請求項10に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶繊維を含有する不織布及びそれを備えた吸収性物品、並びに当該不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
形状記憶能を有する繊維を用いて不織布を形成する技術が知られている。特許文献1には、天然繊維及び/又は合成繊維製シートと形状記憶性ポリマーからなる粉体の塗布層を有してなることを特徴とする形状記憶性を有する繊維製シートが開示されている。特許文献2には、ガラス転移点が37℃以下、融点が150℃以上の形状記憶能を有するコポリエステルとこのコポリエステルより融点が20℃以上低いポリマーとからなることを特徴とし、不織布を構成しうる複合バインダー繊維が開示されている。特許文献3には、不織布繊維ウェブと、前記不織布繊維ウェブに接合されたストリップと、を含む物品であって、前記ストリップが形状記憶ポリマーを含むものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02-118178号公報
【特許文献2】特開平05-279922号公報
【特許文献3】特許第5774020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、形状記憶能を有する不織布であって、温水等の刺激によって開閉できる開孔を有する不織布については知られていない。
【0005】
本発明は、所定の条件によって開閉を制御可能な開孔部を有する不織布に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る不織布は、形状記憶繊維を含有し、かつ、不織布本体と、複数の開孔部と、を有する。
複数の前記開孔部各々は、
前記不織布の厚み方向に開孔する開孔本体と、
前記開孔本体を覆うことが可能に構成された蓋部と、を有する。
前記蓋部は、前記不織布本体に連結された連結部を有する。
複数の前記開孔部各々は、
40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、前記連結部が前記厚み方向に屈曲することで前記開孔本体が開放される開形状と、前記開形状よりも平面視における開孔面積が小さい閉形状と、が切り替わるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不織布によれば、所定の条件によって開孔部の開閉が制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る不織布の断面図であり、(A)は開孔部が開形状である態様を示し、(B)は開孔部が閉形状である態様を示す。
図2】上記不織布を、第2主面から見た平面図(裏面図)であり、(A)は開孔部が開形状である態様を示し、(B)は開孔部が閉形状である態様を示す。
図3】上記不織布の製造方法を示すフローチャートである。
図4】上記不織布の製造過程を模式的に示す図であり、縦軸は各工程における温度を示す。
図5】上記不織布の製造に用いられる第1支持体の平面図である。
図6】上記第1支持体の第1凸部を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図7】上記第1支持体の第1凸部によって原形不織布を切り開く過程を示す模式的な断面図である。
図8】上記不織布を吸収性物品に用いた場合の作用効果を説明する模式的な断面図である。
図9】上記実施形態の変形例に係る第1支持体の第1凸部を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は第1凸部によって原形不織布を切り開く過程を示す模式的な断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る不織布を、第2主面から見た平面図(裏面図)であり、(A)は開孔部が閉形状である態様を示し、(B)は開孔部が開形状である態様を示す。
図11】上記不織布の製造方法を示すフローチャートである。
図12】上記不織布の製造過程を模式的に示す図であり、縦軸は各工程における温度を示す。
図13】上記不織布を吸収性物品に用いた場合の作用効果を説明する模式的な断面図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る不織布を、第2主面から見た平面図(裏面図)であり、温水等の刺激前の態様を示す。
図15】上記不織布を、第2主面から見た平面図(裏面図)であり、温水等の刺激後の態様を示す。
図16】上記不織布の製造方法を示すフローチャートである。
図17】上記不織布の製造過程を模式的に示す図であり、縦軸は各工程における温度を示す。
図18】上記不織布の製造に用いられる第1支持体の平面図である。
図19】上記不織布を吸収性物品に用いた場合の作用効果を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
[本発明の概要]
本発明は、形状記憶繊維を含有する不織布10に関する。不織布10は、図1に例示するように、不織布本体11と、不織布本体11に形成された複数の開孔部20と、を有する。各開孔部20は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、開形状と、閉形状と、が切り替わることを特徴とする。開孔部20が開形状の例は、図1(A)に示す。開孔部20が閉形状の例は、図1(B)に示す。開形状と閉形状の切り替えは、形状記憶繊維の作用により、不織布10が賦形された一時的形状から記憶された記憶形状へ復帰することにより行われる。
【0011】
不織布10の用途は特に限定されない。例えば、不織布10は、例えば、吸収性物品、マスク等の衛生用品、フィルター、清掃用シートから選択された少なくとも一種の物品に用いることができる。さらに、不織布10は、衛生用品のうち、吸収性物品用の不織布10であることが好ましい。吸収性物品は、例えば、ユーザの排泄液や体液を吸収可能に構成される物品であり、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)又は尿取りパッドから選択された少なくとも一種であり得る。
【0012】
次に、形状記憶ポリマーの性質について説明する。形状記憶ポリマーは、一般に、ガラス転移点Tg等の所定の変形温度を境に可逆的に弾性率が大きく変化する性質を有する。例えば、所定の形状に賦形されていた形状記憶ポリマーを変形温度以上に加温することで、形状記憶ポリマーが柔らかくなり、容易に変形することができる。その状態で変形温度未満に冷却すると、形状記憶ポリマーは、変形した形状を維持することができ、形状固定性を発揮する。再び変形温度以上に加温すると、形状記憶ポリマーが自律的に、当初賦形されていた形状に復帰する。この形状復帰性は、例えば、記憶されている形状の賦形時に、変形温度では変化しない物理的又は化学的な結合部位(架橋点)が形成されることで発揮されると考えられる。
【0013】
本発明においては、形状記憶ポリマーのこのような性質を利用し、開孔部20が、40℃の温水に30秒間浸漬させる刺激によって開閉可能な不織布10を提供する。「40℃の温水に30秒間浸漬させる」とは、十分な深さを有する容器に40℃の温水を準備し、この容器中の温水に、不織布10の厚み全体を30秒間浸漬させることをいう。不織布10が大判である場合は、例えば、不織布10を10cm×10cmの矩形状に切断して測定用のサンプルを作製し、このサンプル全体を容器中の温水に浸漬させるようにする。なお、本発明において、「40℃の温水に30秒間浸漬させる」ことは、開形状と閉形状との切り替えを明確に定義するための条件である。本明細書では、「40℃の温水に30秒間浸漬させる」こと、及びこれと同等の熱エネルギを付与することを総称して、「温水等の刺激」とも称する。
【0014】
不織布10に含まれる形状記憶ポリマーとしては、40℃の近傍の変形温度を有する形状記憶ポリマーを選択することができる。具体的に、形状記憶繊維に含まれる形状記憶ポリマーの、水分を含まない条件における変形温度は、35℃以上47℃以下であることが好ましく、35℃以上42℃以下がより好ましく、36℃以上41℃以下が更に好ましい。不織布10は、上記範囲の変形温度を有する1種類の形状記憶ポリマーを含んでいてもよいし、2種類以上の形状記憶ポリマーを含み、上記範囲の変形温度に調整されてもよい。
【0015】
形状記憶ポリマーは、上記範囲の変形温度に基づいて適宜選択でき、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、特開平5-279922号公報参照)、ポリウレタン系樹脂(例えば、特開平2-118178号公報参照)、トランスイソプレン系樹脂(例えば、特開昭55-93806号公報参照)、ポリノルボルネン系樹脂(例えば、特開昭59-53528号公報参照)、スチレン-ブタジエン共重合体系樹脂、ビニル系樹脂とアクリル酸系樹脂又は合成ゴムとの混合物からなるもの(例えば、特開昭63-17952号公報参照)等から選択される1又は複数のポリマーを含んでいることが好ましい。特に、形状記憶ポリマーは、上記範囲の変形温度に調整しやすいことから、ポリウレタン系樹脂又はポリエステル系樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。さらに、形状記憶ポリマーは、高い形状復帰性を発揮し得ることから、ポリウレタン系樹脂を含むことがより好ましい。
【0016】
不織布10は、上記形状復帰作用を十分に発揮させる観点から、形状記憶ポリマーを主成分として含むことが好ましいが、他のポリマー及び/又は添加剤等を含んでいてもよい。不織布10における形状記憶ポリマーの含有量は、上記温水刺激によって開孔部20を確実に開閉させる観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。つまり、不織布10が形状記憶ポリマーで構成されることがより好ましい。
【0017】
また、不織布10は、構成繊維として、形状記憶繊維を主に含むことが好ましいが、他の成分からなる繊維を含んでいてもよい。不織布10における形状記憶繊維の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。つまり、不織布10が形状記憶繊維で構成されることがより好ましい。
【0018】
また、不織布10は、公知の不織布製造技術によって製造されたものであり得る。例えば、不織布10は、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布等から選択された不織布であり得る。
【0019】
本発明者は、上述の形状記憶ポリマーの性質を考慮しつつ、開孔部20の具体的な加工方法について検討した。その中で、本発明者は、形状記憶繊維を含有する不織布に対して、繊維間にピンなどを穿刺して開孔を形成した場合、40℃の温水に30秒間浸漬させても、当該開孔の面積がほとんど変化しないことを見出した。
【0020】
一方で、形状記憶繊維を含有する不織布において、支持体の端部などに沿って折り曲げられた部分は、40℃の温水に30秒間浸漬させることで、元の平坦な形状に復帰した。このことから、本発明者は、形状記憶繊維を含有する不織布に対して、一部を屈曲させるように加工することで、開閉可能な開孔部を形成できることに想到した。
【0021】
そこで、本発明の一実施形態における複数の開孔部20は、以下のように構成される。図1(A)に示すように、複数の開孔部20各々は、不織布10の厚み方向Zに開孔する開孔本体21と、複数の開孔部20各々を覆うことが可能に構成された蓋部22と、を有する。蓋部22は、不織布本体11に連結された連結部23を有する。そして、複数の開孔部20各々は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、連結部23が厚み方向Zに屈曲することで開孔本体21が開放される開形状と、開形状よりも平面視における開孔面積が小さい閉形状と、が切り替わるように構成される。なお、図1(B)には、蓋部22が開孔本体21を完全に覆った例を示す。
【0022】
本明細書において、「平面視」とは、厚み方向Zから見た平面視をいう。「平面形状」とは、平面視における形状をいう。「面積」とは、平面形状における面積をいう。「開孔面積」とは、平面視において、開孔本体21のうち蓋部22に覆われていない部分の面積をいう。なお、「開孔面積」は、不織布10中の任意の10個(10個未満の場合は最大個数)の開孔面積を測定して、これらの平均値とする。
【0023】
各図において、厚み方向Zは、不織布10の厚み方向を示す。第1平面方向X及び第2平面方向Yは、厚み方向Zに直交する方向である。第1平面方向Xは、例えば、不織布10の製造時の流れ方向に対応するMD方向(繊維配向方向)である。第2平面方向Yは、第1平面方向Xと直交する方向であり、例えば、MD方向と直交するCD方向(繊維配向方向と直交する方向)である。MD方向は、例えば、多くの繊維が配向している方向であり、引張試験においてMD方向の方がCD方向より高い強度を示すことにより判別することができる。なお、本明細書において、繊維配向方向をMD方向、該繊維配向方向と直交する方向をCD方向ということがある。
【0024】
以下、本発明の各実施形態について詳細に説明する。第1実施形態では、温水等の刺激によって、開孔部20が開形状から閉形状に変化する例について説明する。第2実施形態では、温水等の刺激によって、開孔部20が閉形状から開形状に変化する例について説明する。第3実施形態では、開孔部20が、温水等の刺激によって開形状から閉形状に変化する第1開孔部20Aと、閉形状から開形状に変化する第2開孔部20Bとを含む例について説明する。なお、上述の不織布10の基本構成については、各実施形態において共通であるので、重複する説明を省略する。
【0025】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る開孔部20は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、開形状から閉形状に切り替わる第1開孔部20Aとして構成される。本実施形態により、温水等の刺激によって開孔面積が減少する不織布10Aを提供することができる。
【0026】
第1開孔部20Aは、不織布本体11に形成される。本実施形態において、不織布本体11は、不織布10Aにおける、第1開孔部20Aの周囲の部分として構成される。不織布本体11は、厚み方向Zと直交する平面(X-Y平面)上にそれぞれ延びる、第1主面12及び第2主面13を有する。第1主面12は、図1(A)及び(B)において、厚み方向Z上方に位置する面である。第2主面13は、図1(A)及び(B)において、厚み方向Z下方に位置する面である。第2主面13は、例えば、第1開孔部20Aの第1蓋部22Aが屈曲する側に位置する。第1主面12及び第2主面13は、図1(A)及び(B)に例示するように、実質的に平坦な部分を含んでいてもよい。「実質的に平坦な部分」とは、外力を与えずに平坦なX-Y平面上に不織布10Aを載置した状態において、厚み方向Zの起伏が不織布本体11全体の厚みの25%以下である部分をいう。
【0027】
第1開孔部20Aは、開孔本体21としての第1開孔本体21Aと、蓋部22としての第1蓋部22Aと、を有する。第1蓋部22Aは、本実施形態において、第1連結部23Aによって不織布本体11に連結され、第1開孔本体21Aの少なくとも一部を覆うことが可能に構成される。第1連結部23Aは、不織布本体11に対して屈曲可能に構成される。第1連結部23Aは、第1蓋部22Aの屈曲の基軸となる部分であり、具体的には、屈曲時に形成される折れ線に沿った部分である。図2(B)において、第1連結部23Aは、破線で示されている。第1蓋部22Aの開閉は、第1連結部23Aの屈曲と平坦化によって制御される。第1連結部23Aが屈曲した状態は、例えば開形状に対応し、第1連結部23Aが開形状よりも平坦な状態は、例えば閉形状に対応する。
【0028】
第1蓋部22Aは、不織布本体11と一体に形成されることが好ましい。「第1蓋部22Aが不織布本体11と一体に形成される」とは、第1蓋部22Aが不織布本体11と別の不織布で形成されず、同一の不織布によって形成されることを意味する。これにより、第1蓋部22Aと不織布本体11との間の接合部位が不要となり、温水等の刺激による第1連結部23Aの変形が円滑となる。この場合、第1蓋部22Aは、例えば、第1開孔部20Aの形成前の原形不織布における、第1開孔部20Aの形成される領域を切り開くことで形成される。この際、第1開孔部20Aの形成される領域の全体を不織布本体11から切り離すのではなく、一部を不織布本体11から切り離さずに残すことで、不織布本体11に連結された第1連結部23Aを形成することができる。
【0029】
図2(A)及び(B)に示す例では、第1開孔部20Aが、それぞれ一対の第1蓋部22Aを有する。一対の第1蓋部22Aは、閉形状において隣り合い、かつ、開形状において第1開孔本体21Aを挟んで対向する。このような一対の第1蓋部22Aは、詳細を後述するように、例えばH字状の切り込みにより形成される。第1開孔部20Aが一対の第1蓋部22Aを有することで、1つの第1蓋部22Aの面積を小さくすることができ、第1蓋部22Aの開閉を円滑にすることができる。なお、第1開孔部20Aの第1蓋部22Aの構成はこれに限定されない。第1蓋部22Aの他の構成例については、後述する。
【0030】
第1開孔本体21Aは、図2(A)に示すように、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度が130度以下となるように第1連結部23Aを十分に屈曲させた場合の、平面視における開孔として構成される。なお、前記角度は、不織布10中の任意の10個(10未満の場合は最大個数)を測定して、これらの平均値とする(他の蓋部の角度も同様)。第1開孔本体21Aの平面形状は特に限定されず、例えば、多角形状、円形状、楕円形状、それらに類する形状、その他の形状から適宜選択することができる。図2(A)に示す例では、第1開孔本体21Aが矩形状に構成される。これにより、図2(B)に示すように、第1蓋部22Aも矩形状等の多角形状で構成され、第1蓋部22AをH字状等の単純な形状の切り込みで形成することができる。
【0031】
本実施形態において、第1開孔部20Aの開形状は、図1(A)及び図2(A)に示すように、不織布10Aを40℃の温水に30秒間浸漬させる前の、第1蓋部22Aの第1連結部23Aが屈曲した形状である。また、第1開孔部20Aの閉形状は、図1(B)及び図2(B)に示すように、不織布10Aを40℃の温水に30秒間浸漬させた後の、開形状よりも平面視における開孔面積が小さくなった形状である。
【0032】
第1開孔部20Aの開孔面積の減少の判定方法について説明する。まず、温水への浸漬前の開孔面積を算出する。開孔面積の算出は、例えば、任意の平坦面(X-Y平面)上に不織布10Aを配置し、その厚み方向Z上方から不織布10Aを撮像した画像を解析することにより行うことができる。開孔面積は、第1開孔本体21Aのうち第1蓋部22Aに覆われていない部分の面積とする。不織布10A中の任意の10個(10未満の場合は最大個数)の第1開孔部20Aの開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「温水浸漬前の開孔面積」とする。
続いて、不織布10Aを40℃の温水に30秒間浸漬させた後の開孔面積を、上述の方法で算出する。温水浸漬前の開孔面積を算出した第1開孔部20Aと同一、又は同様の形状の任意の10個(10未満の場合は最大個数)の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「温水浸漬後の開孔面積」とする。
温水浸漬後の開孔面積が温水浸漬前の開孔面積よりも減少していた場合、温水の接触によって開孔面積が減少したと判定する。
【0033】
本実施形態における不織布10Aでは、例えば、閉形状に対応する実質的に平坦な形状が記憶されている。そして、不織布10Aでは、開形状に対応する、第1連結部23Aの屈曲形状が加工により付与されている。このため、不織布10Aでは、温水等の刺激前は第1蓋部22Aの屈曲形状が維持され、温水等の刺激により、記憶されていた平坦な形状に近づくように形状復帰する。
【0034】
(製造方法)
続いて、図3及び図4を参照し、本実施形態に係る不織布10Aの製造方法について説明する。図3のフローチャートに示すように、本実施形態に係る不織布10Aの製造方法は、例えば、原形不織布の作製工程S11と、第1カット工程S12と、を含む。なお、原形不織布は、予め作製されたものを用いることもできる。この場合は、当該製造方法は、原形不織布の作製工程S11を含まず、第1カット工程S12のみを含んでいてもよい。
【0035】
原形不織布101の作製工程S11では、図4に示すように、形状記憶ポリマーを含む形状記憶繊維の原材料を用いて原形不織布101を作製する。原形不織布101の原材料は、形状記憶ポリマーの他、他の樹脂や添加物を含んでいてもよい。本工程では、原材料を形状記憶ポリマーの溶融温度Taよりも高い第1温度T1に加熱し、不織布に成形する。不織布への成形方法は特に限定されず、例えば、スパンボンド法、メルトブローン法等を適用できる。あるいは、当該成形方法は、繊維ウェブを形成し、その後エアスルー法、ニードルパンチ法、スパンレース法等によって繊維を融着させてもよい。第1温度T1は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上である。
【0036】
なお、原形不織布101の製造上の流れ方向をMD方向(第1平面方向X)、それと直交する方向をCD方向(第2平面方向Y)とする。製造効率を高める観点から、原形不織布101は、MD方向に延びる長尺状に構成されることが好ましい。
【0037】
第1温度T1で成形された原形不織布101は、図4に示すように、室温RTまで冷却される。室温RTは、例えば15℃以上35℃以下とする。これにより、形状記憶ポリマーの架橋点が形成され、加工前の第1記憶形状を記憶した原形不織布101が形成される。第1記憶形状の原形不織布101は、開孔部は形成されておらず、例えば全体が実質的に平坦に構成される。
【0038】
続いて第1カット工程S12では、図4に示すように、第1支持体R1に原形不織布101を押圧し、かつ、第1支持体R1の複数の第1凸部R10によって原形不織布101を切り開く。これにより、開形状の第1開孔部20Aを有する、第1加工形状の不織布10Aが作製される。第1カット工程S12は、本実施形態において、形状記憶ポリマーの変形温度Tbよりも低い温度で行われ、例えば室温RTで行われる。不織布は繊維で構成されるため、加工が比較的容易であり、室温RTによっても一時的な形状を付与することができる。
【0039】
第1支持体R1は、生産性を高める観点からロール状に構成されることが好ましい。この場合、ロール状の第1支持体R1と対向してフラットロールRfを設けることで、長尺状の原形不織布101を連続的に送り出しながら、原形不織布101を第1支持体R1に押圧することが可能になる。
【0040】
図5に示すように、第1支持体R1は、第1開孔部20Aを形成するための、複数の第1凸部R10を有する。第1凸部R10は、第1支持体R1の支持面R13から厚み方向Zに突出し、鋭利な先端部E(第1先端部E1及び第2先端部E2)を含んでいる。鋭利な先端部Eは、原料不織布110を切り開く部分であり、原料不織布110の切り込みに対応する形状を有している。このため、先端部Eは、線状の平面形状を有する。「線状の平面形状」とは、第1支持体R1の支持面R13を厚み方向Zから見た際に、支持面R13に沿って線状に延在する形状を意味する。この「線状」は、直線状でも、曲線状でもよく、複数の線が組み合わされた形状でもよい。例えば、図5に示す先端部Eは、H字状の平面形状を有する。
【0041】
図6(A)、(B)に示すように、例えば第1凸部R10は、鋭利な第1先端部E1を含む一対の第1カット部R11と、鋭利な第2先端部E2を含み、一対の第1カット部R11の間を接続する第2カット部R12と、を含む。第1カット部R11は、第1開孔部20Aの周縁を切り開く部分であり、その厚み方向Zにおける先端の第1先端部E1は、例えば第1方向に延在する。第2カット部R12は、一対の第1蓋部22Aの間を切り開く部分であり、その厚み方向Zにおける先端の第2先端部E2は、例えば第1方向と交差する第2方向に延在する。図6に示す例において、「第1方向」は第1平面方向Xであり、「第2方向」は第2平面方向Yである。第1凸部R10の形状は、図6に示す例に限定されず、第1蓋部22Aの形状に応じて適宜設定することができる。
【0042】
図7を参照して、第1凸部R10によって原形不織布101を切り開く過程について説明する。図7では、原形不織布101の断面をドットパターンで示している。また、ロール状の第1支持体R1では、支持面R13は湾曲しているが、図7では模式的に平坦に記載している。
【0043】
図7(A)に示すように、第1凸部R10に原形不織布101を押圧すると、第1凸部R10の第2先端部E2に沿って原形不織布101が伸長/破断する。これと同時に、原形不織布101は第1先端部E1にて破断する。このように、原形不織布101を支持面R13に向かってさらに押圧することで、図7(B)に示すように、原形不織布101が第1先端部E1及び第2先端部E2に沿って破断する。破断された部分が、第1蓋部22Aを形成する。
【0044】
ここで、図7(A)に示す態様において、原形不織布101には、第1カット部R11及び第2カット部R12と当接している部分から、第1開孔部20Aの形成領域の外側に向かう張力(図7(A)の矢印参照)が発生している。図7(B)に示す原形不織布101の破断時には、第2先端部E2によって切り開かれた一対の第1蓋部22Aが、第2カット部R12の側面に沿うように折り曲げられる。これにより、第1カット工程S12では、図7(B)に示すように、第1連結部23Aが屈曲した開形状である第1開孔部20Aが形成される。
【0045】
なお、図6及び図7では、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度αが約90度の第1開孔部20Aを形成する例について記載している。一方で、角度αは、第2カット部R12の基部の第1方向(第1平面方向X)に沿った幅寸法Dによって調整することができる。第2カット部R12の形状による角度αの調整方法については後述する。
【0046】
以上の製造方法により、第1記憶形状である実質的に平坦な形状が記憶され、かつ、第1加工形状である開形状の第1開孔部20Aが付与された、不織布10Aが作製される。上記方法では、第1連結部23Aが屈曲された形状に加工されるため、この部分の形状記憶繊維が屈曲されて十分に歪んだ状態となる。
【0047】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の不織布10Aでは、開形状の第1開孔部20Aを有する不織布10Aを40℃の温水に30秒間浸漬させることで、第1連結部23Aの弾性率が高まり、自律的に第1記憶形状に近い状態に復帰する。これにより、図4の「温水等の刺激後」に示すように、第1連結部23Aが平坦化し、第1開孔部20Aが閉形状となる。そして、温水等の刺激後、室温RT程度に冷却された不織布10Aでは、その復帰した形状が維持される。
【0048】
これにより、本実施形態の不織布10Aによれば、例えば、開形状では第1開孔部20Aから水分や空気が通過しやすく、閉形状では水分や空気が透過しにくくなる。このため、不織布10Aが吸収性物品に用いられる場合は、例えば、排泄液が第1開孔部20Aを透過した後に第1開孔部20Aが閉形状となり、排泄液が肌側に戻りにくい構成となり得る。また、不織布10Aが吸収性物品以外の物品に用いられる場合には、例えば、息や体温、汗、蒸気などの刺激により第1開孔部20Aが閉形状となり得るため、使用前後の判別や、使用後における水分の遮断や通気の抑制などに用いることができる。
【0049】
以下、図8を用いて、不織布10Aが吸収性物品1Aに適用された場合の例について説明する。図8(A)に示すように、吸収性物品1Aは、吸収体30と、吸収体30に積層された不織布10Aと、を有する。図8では、不織布10Aが吸収性物品1Aの表面シートとして、吸収体30上に配置されている例を示す。
【0050】
図8(A)に示すように、着用者の排泄液WLは、例えば、不織布10Aの排泄部対向領域Pに接触する。これにより、排泄液WLは、排泄部対向領域Pに存在する開形状の第1開孔部20Aを通過する。この結果、排泄液WLが吸収体30に素早く吸収される。
【0051】
排泄部対向領域Pに位置する第1開孔部20Aの第1連結部23Aは、排泄液WLと接触することで加温される。これにより、図8(B)に示すように、第1連結部23Aが、第1記憶形状に復帰するように平坦化し、第1蓋部22Aが第1開孔本体21Aの少なくとも一部を覆う。これに伴い、第1開孔部20Aの開孔面積も減少する。図8(B)には、排泄液WLの通過後に、第1蓋部22Aが第1開孔本体21Aを完全に覆った例を示す。排泄液WLの通過後、周囲の空気によって冷却された閉形状の第1開孔部20Aは、その形状に維持される。
【0052】
図8(B)に示すように、吸収体30に保持された排泄液WLは、開孔面積の減少によって第1主面12側に戻りにくくなる。これにより、吸収性物品1Aに着用者の体圧等の外力が付加された場合でも、第1主面12上への液戻りを抑制することができる。したがって、不織布10Aにより、当該液戻りによる不快感や肌トラブルを抑制することができる。さらに、当該液戻りを抑制することで、吸収性物品1Aの外部への液漏れを抑制することもできる。
【0053】
加えて、吸収性物品1Aが長時間着用される場合は、複数回にわたって排泄された排泄液WLを吸収する場合もある。本実施形態の不織布10Aでは、排泄液WLと接触した領域の第1開孔部20Aが閉形状となるため、2回目以降に排泄された排泄液WLは、閉形状の第1開孔部20Aから透過しにくくなる。このため、当該排泄液WLは、閉形状の第1開孔部20A上を伝って、排泄部対向領域Pの周囲の開形状の第1開孔部20Aへ拡散し得る。この結果、吸収体30の未使用領域へ排泄液WLを分散して吸収させることができ、吸収体30の吸収容量を高めることができる。したがって、吸収性物品1Aによれば、肌の不快感や肌トラブルを抑制しながら、長時間の使用も可能となる。
【0054】
(第1開孔部の詳細な構成例)
以下、第1開孔部20Aの詳細な構成例について説明する。
第1開孔部20Aの開閉に伴う作用をより効果的に得るため、温水等の刺激によって、第1開孔部20Aの開孔面積が十分に減少することが好ましい。このような観点から、第1開孔部20Aについて、開形状の開孔面積に対する閉形状の開孔面積の割合は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらにより好ましくは50%以下、さらに一層好ましくは45%以下、さらにより一層好ましくは40%以下である。このような第1開孔部20Aを有する不織布10Aを吸収性物品に用いることで、液戻りの防止効果を高めて、肌トラブルをより効果的に抑制することができる。
【0055】
上記開孔面積の割合は、以下のように算出することができる。まず、温水への浸漬前の開孔面積を「開形状の開孔面積」として算出する。開孔面積の算出は、例えば、任意の平坦面(X-Y平面)上に不織布10Aを配置し、その厚み方向Z上方から不織布10Aを撮像した画像を解析することにより行うことができる。開孔面積は、第1開孔本体21Aのうち第1蓋部22Aに覆われていない部分の面積とする。不織布10A中の任意の10個(10未満の場合は最大個数)の第1開孔部20Aの開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「温水浸漬前の開孔面積」とする。
続いて、不織布10Aを40℃の温水に30秒間浸漬させた後の開孔面積を、上述の方法で算出する。温水浸漬前の開孔面積を算出した第1開孔部20Aと同一、又は同様の形状の任意の10個の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「閉形状の開孔面積」とする。算出された値を用いて、開形状の開孔面積に対する閉形状の開孔面積の割合((閉形状の開孔面積)/(開形状の開孔面積)×100)を算出する。
【0056】
また、第1開孔部20Aの開形状の開孔面積は、開形状における作用を十分に発揮させる観点から、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上、さらに好ましくは15mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは28mm以下、さらに好ましくは25mm以下である。開形状の第1開孔部20Aをこのような面積とすることで、不織布10Aを吸収性物品に用いた場合に、良好な液透過性を得ることができる。
【0057】
また、不織布10Aに占める第1開孔部20Aの開形状の開孔面積合計の割合は、良好な液透過性を得るとともに、不織布10Aの形状を維持する観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは13%以上、さらに好ましくは17%以上であり、好ましくは35%以下、より好ましくは33%以下、さらに好ましくは28%以下である。
【0058】
さらに、温水等の刺激によって第1開孔部20Aの開孔面積を十分に減少させる観点から、第1連結部23Aは、繊維配向方向(MD方向:図2における第1平面方向X)と交差することが好ましく、繊維配向方向(MD方向)と直交することがより好ましい。第1連結部23Aは、屈曲加工時に形成される折れ線に沿った部分であるため、第1連結部23Aが繊維配向方向(MD方向)と交差することにより、第1連結部23Aが繊維配向方向(MD方向)に沿って屈曲し得る。第1連結部23Aが繊維配向方向(MD方向)と交差することにより、第1連結部23Aの形状記憶繊維を十分に屈曲させることができ、第1連結部23Aを効果的に形状復帰させることができる。
繊維配向方向は、下記の方法により決定することができる。まず、日本電子(株)社製の走査電子顕微鏡JCM-5100(商品名)に不織布を静置し、平面視における画像(測定する繊維が10本以上計測できる倍率に調整;70倍以上300倍以下)を印刷し、透明PET製シート上に繊維をなぞる。前記の画像をパソコン内に取り込み、株式会社ネクサス社製のnexusNewQube[商品名](スタンドアロン版)画像処理ソフトウエアを使用し、前記画像を二値化する。次いで、前記二値化した画像を、繊維配向解析プログラムである、Fiber Orientation Analysis 8.13 Singleソフト(商品名)を用い、フーリエ変換し、パワースペクトルを得、楕円近似した分布図から、配向角を得る。配向角は繊維が最も配向している角度を示しており、その角度方向を、「繊維配向方向」とする。
【0059】
また、第1開孔部20Aの開孔面積を十分に減少させる観点からは、加工時に、第1連結部23Aを大きく屈曲させることも好ましい。このため、開形状における、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度は、好ましくは120度以下、より好ましくは90度以下である。また、加工のしやすさ等の観点から、当該角度は、好ましくは40度以上、より好ましくは60度以上である。なお、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度は、任意の10個(10未満の場合は最大個数)の第1蓋部22Aの角度の平均値とすることができる。
【0060】
第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度は、図6図7及び図9を参照し、第2カット部R12の基部の第1方向(第1平面方向X)における幅寸法Dによって調整することができる。
図9(A)~(C)には、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度αを約120度とすることができる第1凸部R10の例を示している。この第1凸部R10は、図6及び図7に示す例と同様の配置の第1カット部R11(第1先端部E1)及び第2カット部R12(第2先端部E2)を有するが、図6及び図7に示す例と比較して、第2カット部R12の基部の幅寸法Dが狭い。
ここで、第2カット部R12の基部の幅寸法Dは、第2カット部R12の支持面R13と接続する部分(基部)における第1方向(例えば第1平面方向X)に沿った寸法を意味する。
図9(C)に示す例では、図7(B)に示す例と比較して、第2カット部R12の基部の幅寸法Dが狭いことで、第2先端部E2によって切り開かれた一対の第1蓋部22Aが第2カット部R12の側面に沿うように折り曲げられる際に、その屈曲する角度αを大きくすることができる。一例として、このように第2カット部R12の基部の幅寸法Dを調整することで、第1蓋部22Aと第2主面13とのなす角度αを調整することができる。
【0061】
第1開孔部20Aの配置は、開形状において得られる作用を考慮して設定することができる。図2(A)に示す例において、第1開孔部20Aは、第1配列方向に沿った複数の第1の列L11と、第1配列方向とは交差する第2配列方向に沿った複数の第2の列L12と、をなして配置されている。同図に示す例において、「第1配列方向」は第1平面方向Xであり、「第2配列方向」は第2平面方向Yである。「第1の列L11が第1配列方向に沿う」とは、第1開孔部20Aの中心点を結んだ線が直線状になる態様に限定されず、複数の第1開孔部20AがX-Y平面内の任意の一方向に沿って間隔をあけて並んでいればよい。同様に、「第2の列L12が第2配列方向に沿う」とは、第1開孔部20Aの中心点を結んだ線が直線状になる態様に限定されず、複数の第1開孔部20AがX-Y平面内の第1の列L11と交差する方向に沿って間隔をあけて並んでいればよい。
【0062】
この場合、図2(A)に示すように、第1の列L11と第2の列L12とが交わる位置に第1開孔部20Aが配置され、第1開孔部20Aが格子状に配置されていてもよい。あるいは、第2実施形態に係る図10を参照し、隣り合う第1の列L11に属する第1開孔部20Aは、第1配列方向(第1平面方向X)に相互にずれて配置されていてもよい。このように、第1開孔部20Aを規則的に配置することで、不織布10AのX-Y面内における液透過性のばらつきを抑制することができる。したがって、繰り返しの排泄時においても、より効果的に、排泄液を拡散させることができる。
【0063】
第1開孔部20Aをより規則的に配置する観点から、第1の列L11において隣り合う第1開孔部20Aの間隔は、実質的に一定であることが好ましい。同様に、第2の列L12において隣り合う第1開孔部20Aの間隔は、実質的に一定であることが好ましい。「間隔が実質的に一定」とは、各列において任意の3箇所の第1開孔部20Aの間隔を測定し、最も狭い間隔を100%とした場合に、最も広い間隔と狭い間隔との差異が20%以下に収まっていることをいう。
【0064】
また、第1蓋部22Aは、上記構成に限定されない。例えば、面積のより小さな第1蓋部22Aを形成する観点から、第1開孔部20Aが、複数対の第1蓋部22Aをそれぞれ有していてもよい。この構成において、対をなす第1蓋部22Aは、閉形状において隣り合い、かつ、開形状において第1開孔本体21Aを挟んで対向する。このような複数対の第1蓋部22Aは、例えば、十字状等の2本以上の交差する切り込みによって形成され得る。
あるいは、第1開孔部20Aが、それぞれ一つの第1蓋部22Aを有していてもよい。このような第1蓋部22Aは、例えば、第1開孔部20Aの周縁に沿った切り込みによって形成され得る。
【0065】
(不織布本体の厚み及び坪量の例)
不織布本体11の厚み方向Zにおける厚みは、第1開孔部20Aの開閉作用を十分に得る等の観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。
不織布本体11の坪量は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上であり、好ましくは150g/m以下、より好ましくは130g/m以下である。
なお、上記数値は、温水との接触前の不織布本体11を用いて、25℃にて測定したものとする。
【0066】
不織布本体11の厚みの測定方法について説明する。測定対象の不織布10Aを10cm×10cmの矩形状に切断し、測定用のサンプルを得る。10cm×10cmがとれない場合はできるだけ大きな面積に切る。測定試料に0.5Paの荷重をかけた状態で、レーザー厚み計(オムロン株式会社製ZSLD80)を使用し、サンプル中の5箇所の厚みを測定し、平均値を算出する。
【0067】
不織布本体11の坪量の測定方法について説明する。測定対象である不織布10Aを所定の大きさに切断し、測定用の小片を得る。それらの小片の質量を測定し、求めた質量を各小片の面積で除して小片の坪量を算出する。小片5個の坪量の平均値を、不織布10Aの坪量とする。
【0068】
[第2実施形態]
図1及び図10(A)、(B)に示すように、本発明の第2実施形態に係る開孔部20は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、閉形状から開形状に切り替わる第2開孔部20Bとして構成される。本実施形態により、温水等の刺激によって開孔する不織布10Bを提供することができる。なお、第2開孔部20Bが形成される不織布本体11は、第1実施形態と同様に構成されるため、説明を省略する。
【0069】
第2開孔部20Bは、第1開孔部20Aと同様に、開孔本体21としての第2開孔本体21Bと、蓋部22としての第2蓋部22Bと、を有する。第2蓋部22Bは、本実施形態において、第2連結部23Bによって不織布本体11に連結され、第2開孔本体21Bの少なくとも一部を覆うことが可能に構成される。第2連結部23Bは、不織布本体11に対して屈曲可能に構成される。
【0070】
第2蓋部22Bは、第1蓋部22Aと同様に構成される。具体的に、各第2開孔部20Bは、一対の第2蓋部22Bを有する。一対の第2蓋部22Bは、閉形状において隣り合い、かつ、開形状において第2開孔本体21Bを挟んで対向する。図10(A)に示す例では、第2蓋部22Bは、H字状の切り込みにより形成される。なお、第2蓋部22Bは、第1実施形態で説明したように、複数対の第2蓋部22Bを有していてもよいし、一つの第2蓋部22Bを有していてもよい。第2開孔本体21Bも、第1開孔本体21Aと同様に構成される。図10(A)及び(B)に示す例では、第2開孔本体21Bが矩形状に構成される。
【0071】
本実施形態において、第2開孔部20Bの閉形状は、図1(B)及び図10(A)に示すように、不織布10Bを40℃の温水に30秒間浸漬させる前の、第2連結部23Bが平坦化した形状である。また、第2開孔部20Bの開形状は、図1(A)及び図10(B)に示すように、不織布10Bを40℃の温水に30秒間浸漬させた後の、第2連結部23Bが屈曲し、閉形状よりも第2開孔部20Bの開孔面積が増加した形状である。40℃の温水に30秒間浸漬させる前後における第2開孔部20Bの開孔面積の比較は、第1実施形態と同様に行うことができる。
【0072】
本実施形態における不織布10Bでは、例えば、開形状に対応する、第2蓋部22Bの第2連結部23Bが屈曲した形状が、第2記憶形状として記憶されている。そして、不織布10Bでは、閉形状に対応する平坦化された形状(第2加工形状)が付与されている。このため、不織布10Bでは、温水等の刺激前は閉形状に対応する第2加工形状が維持され、温水等の刺激により、開形状に対応する第2記憶形状に近づくように形状復帰する。
【0073】
(製造方法)
続いて、図11及び図12を参照し、本実施形態に係る不織布10Bの製造方法について説明する。図11のフローチャートに示すように、本実施形態に係る不織布10Bの製造方法は、例えば、原形不織布の作製工程S11と、加温を伴う第1カット工程S22と、平坦化工程S23と、を含む。なお、当該製造方法は、第1実施形態と同様に、原形不織布の作製工程S11を含んでいなくてもよい。
【0074】
原形不織布101の作製工程S11では、図12に示すように、形状記憶ポリマーを含む形状記憶繊維の原材料を用いて、開孔部を有さない原形不織布101を作製する。原形不織布101の作製工程S11は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0075】
図12に示すように、第1カット工程S22では、第1実施形態の第1カット工程S12と同様に、第1支持体R1に原形不織布101を押圧し、かつ、第1支持体R1の複数の第1凸部R10によって原形不織布101を切り開く。これにより、屈曲された第2連結部23Bを有する第2蓋部22Bが形成され、開形状の第2開孔部20Bを有する第2記憶形状の中間体不織布102が作製される。この第1カット工程S22における第2開孔部20Bの形成は、例えば図7を参照して説明したように行われる。
【0076】
本実施形態の第1支持体R1は、図示しない加熱機構を有しており、80℃以上200℃以下の温度T2に加熱されることが可能に構成される。本実施形態では、第1支持体R1が温度T2に加熱された状態で、第1カット工程S22が行われる。この温度T2では、形状記憶繊維に含有される形状記憶ポリマーが大きく軟化して、形状記憶ポリマーの架橋点が再形成される。これにより、温度T2で付与された第2記憶形状が、中間体不織布102の形状記憶ポリマーに記憶される。中間体不織布102は、その後室温RTまで冷却される。
【0077】
図12に示すように、第1支持体R1は、第1実施形態と同様に、線状の平面形状を有する複数の第1凸部R10を有する。第1凸部R10の平面形状及び配置は、図5及び図6に示す例に限定されず、第2開孔部20Bの形状及び配置に鑑みて適宜設定され得る。また、図12に示す例では、第1支持体R1は、例えばロール状に構成され、フラットロールRfと対向して配置される。
【0078】
続いて、平坦化工程S23では、中間体不織布102の開形状の第2開孔部20Bを60℃以下で平坦化する。これにより、閉形状の第2開孔部20Bを有する第2加工形状の不織布10Bが形成される。平坦化工程S23は、好ましくは室温RTに維持された、実質的に平坦な周面をそれぞれ有する一対のフラットロールRfにより行われる。この場合、平坦化工程S23では、一対のフラットロールRf間に原形不織布101を挟み込むことで、長尺状の中間体不織布102を連続的に送り出しながら、中間体不織布102を押圧して平坦化することが可能になる。
【0079】
以上の製造方法により、開形状の第2開孔部20Bを含む第2記憶形状が記憶され、かつ、閉形状の第2開孔部20Bを含む第2加工形状が付与された、不織布10Bが作製される。
【0080】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の不織布10Bでは、閉形状の第2開孔部20Bを有する不織布10Bを40℃の温水に30秒間浸漬させることで、第2連結部23Bが軟化して、第2記憶形状に近い状態に復帰する。これにより、図12の「温水等の刺激後」に示すように、第2開孔部20Bが開形状に切り替わる。そして、温水との接触後、室温RT程度に冷却された不織布10Bは、その復帰した形状で維持される。
【0081】
本実施形態では、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、第2開孔部20Bが閉形状から開形状に切り替わるように構成されることで、例えば、閉形状では不織布10Bの繊維の隙間から水分や空気を透過させることができ、開形状では第2開孔部20Bによって水分の通過や通気が促進される。これにより、不織布10Bが吸収性物品に用いられる場合は、排泄液の透過後に第2開孔部20Bが開形状となり、通気が促進される。また、不織布10Bが吸収性物品以外の物品に用いられる場合には、息や体温、汗、蒸気などの刺激により第2開孔部20Bが開形状となり得るため、使用前後の判別や、使用後における通気や通液の促進などに用いることができる。
【0082】
以下、図13を用いて、不織布10Bが吸収性物品1Bに適用された場合の例について説明する。図13(A)に示すように、吸収性物品1Bは、吸収体30と、吸収体30に積層された不織布10Bと、を有する。図13では、不織布10Bが吸収性物品1Bの表面シートとして、吸収体30上に配置されている例を示す。
【0083】
図13(A)に示すように、不織布10Bの排泄部対向領域Pに排泄された着用者の排泄液WLは、不織布10Bの繊維の隙間を通って、閉形状の第2開孔部20Bを有する不織布10Bを透過することができる。これにより、排泄液WLが吸収体30に吸収される。一方、排泄部対向領域Pに位置する第2開孔部20Bの第2連結部23Bは、排泄液WLと接触することで加温される。これにより、図13(B)に示すように、連結部23が、第2記憶形状に復帰するように屈曲し、第2開孔部20Bが開形状に切り替わる。
【0084】
図13(B)に示すように、吸収体30に保持された排泄液WLからは、着用者の体温や排泄液WL自体の温度によって水分が蒸発しやすい。本実施形態の不織布10Bでは、排泄液WL透過後の第2開孔部20Bが開放されるため、図13(B)の破線で示すように、水蒸気が第2開孔部20Bを介して外部へ放出される。つまり、排泄液WLの排泄後に、吸収性物品1Bの通気性が向上する。したがって、本実施形態の不織布10Bによれば、吸収性物品1Bの着用中のムレ感を防止することができ、肌の不快感やムレによる肌トラブルを防止することができる。
【0085】
(第2開孔部20Bの詳細な構成)
以下、第2開孔部20Bの詳細な構成について説明する。なお、第1実施形態と重複する部分(例えば各構成の定義、測定方法等)については、説明を省略する。
【0086】
第2開孔部20Bの開閉に伴う作用をより効果的に得るため、温水等の刺激によって、第2開孔部20Bが確実に開孔することが好ましい。このような観点から、第2開孔部20Bの閉形状の開孔面積に対する、開形状の開孔面積の割合は、好ましくは150%以上、より好ましくは160%以上、さらに好ましくは200%以上、さらにより好ましくは250%以上、さらにより一層好ましくは260%以上であり、好ましくは400%以下、より好ましくは350%以下、さらに好ましくは300%以下である。このような第2開孔部20Bを有する不織布10Bを吸収性物品に用いることで、良好な通気性を得ることができ、ムレを効果的に抑制することができる。
【0087】
第2開孔部20Bの面積に対する開形状における開孔面積の割合は、以下のように算出することができる。
まず、温水への浸漬前の開孔面積を「閉形状の開孔面積」として算出する。開孔面積の算出は、例えば、任意の平坦面(X-Y平面)上に不織布10Bを配置し、その厚み方向Z上方から不織布10Bを撮像した画像を解析することにより行うことができる。開孔面積は、第2開孔本体21Bのうち第2蓋部22Bに覆われていない部分の面積とする。不織布10B中の任意の10個(10未満の場合は最大個数)の第2開孔部20Bの開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「閉形状(温水浸漬前)の開孔面積」とする。
続いて、不織布10Bを40℃の温水に30秒間浸漬させた後の開孔面積を、上述の方法で算出する。温水浸漬前の開孔面積を算出した第2開孔部20Bと同一、又は同様の形状の任意の10個(10未満の場合は最大個数)の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定する。この平均値を、「開形状(温水浸漬後)の開孔面積」とする。算出された値を用いて、第2開孔部20Bの閉形状の開孔面積に対する、開形状の開孔面積の割合((開形状の開孔面積)/(閉形状の開孔面積)×100)を算出する。
【0088】
また、第2開孔部20Bの閉形状の開孔面積は、閉形状における作用を確実に得る観点から、好ましくは6mm以上、より好ましくは6.5mm以上、さらに好ましくは8mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは29.5mm以下、さらに好ましくは28mm以下である。
【0089】
第1実施形態と同様に、開状態において、第2連結部23Bは、繊維配向方向(MD方向:図2における第1平面方向X)と交差することが好ましく、繊維配向方向(MD方向)と直交することがより好ましい。これにより、開形状の第2開孔部20Bが形成される中間体不織布102において、第2連結部23Bの形状記憶繊維を十分に屈曲させることができ、第2連結部23Bを効果的に形状復帰させることができる。
【0090】
また、不織布10Bに占める第2開孔部20Bの開形状の開孔面積合計の割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは8%以上であり、好ましくは68%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。
【0091】
開形状における、第2蓋部22Bと第2主面13とのなす角度は、好ましくは120度以下、より好ましくは90度以下である。また、加工のしやすさ等の観点から、当該角度は、好ましくは40度以上、より好ましくは60度以上である。
【0092】
第2開孔部20Bの配置は、開形状において得られる作用を考慮して配置することができる。図10(B)に示す例では、第2開孔部20Bは、第1配列方向(例えば第1平面方向X)に沿った複数の第1の列L21と、第1配列方向と交差する第2配列方向(第2平面方向Y)に沿った複数の第2の列L22と、をなして配置されている。
【0093】
図10(B)に示す第2開孔部20Bでは、隣り合う第1の列L21に属する第2開孔部20Bが、第1配列方向(第1平面方向X)に相互にずれて配置されている。但しこれに限定されず、図2(A)に示すように、第1の列L21と第2の列L22とが交わる位置に第2開孔部20Bが配置され、第2開孔部20Bが格子状に配置されていてもよい。なお、第1実施形態と同様に、第2開孔部20Bをより規則的に配置する観点から、各列において隣り合う第2開孔部20Bの間隔は、実質的に一定であることが好ましい。
【0094】
[第3実施形態]
図1図14及び図15に示すように、本発明の第3実施形態に係る開孔部20は、40℃の温水に30秒間浸漬させた場合に、開形状から閉形状に切り替わる第1開孔部20Aと、閉形状から開形状に切り替わる第2開孔部20Bと、を含む。図14は、温水浸漬前の不織布10Cの例を示し、図15は、温水浸漬後の不織布10Cの例を示す。本実施形態より、温水等の刺激によって、開孔のパターンが切り替わる不織布10Cを提供することができる。なお、第1開孔部20A及び第2開孔部20Bが形成される不織布本体11は第1実施形態と同様に構成されるため、説明を省略する。
【0095】
第1開孔部20Aは、第1実施形態と同様に、第1開孔本体21Aと、第1蓋部22Aと、を有する。第1蓋部22Aは、本実施形態において、第1連結部23Aによって不織布本体11に連結され、第1開孔本体21Aの少なくとも一部を覆うことが可能に構成される。第1連結部23Aは、不織布本体11に対して屈曲可能に構成される。
【0096】
図14及び図15に示す例では、各第1開孔部20Aが一対の第1蓋部22Aを有する。一対の第1蓋部22Aは、閉形状において隣り合い、かつ、開形状において第1開孔本体21Aを挟んで対向する。さらに、図14及び図15に示す例では、一対の第1蓋部22Aが第1平面方向X(繊維配向方向)に対向しており、第1連結部23Aが当該方向と交差するように配置されている。このような一対の第1蓋部22Aは、例えば、第1実施形態と同様に、H字状の切り込みにより形成される。
【0097】
第2開孔部20Bは、第2実施形態と同様に、第2開孔本体21Bと、第2蓋部22Bと、を有する。第2蓋部22Bは、本実施形態において、第2連結部23Bによって不織布本体11に連結され、第2開孔本体21Bの少なくとも一部を覆うことが可能に構成される。第2連結部23Bは、不織布本体11に対して屈曲可能に構成される。
【0098】
図14及び図15に示す例では、各第2開孔部20Bが一対の第2蓋部22Bを有する。一対の第2蓋部22Bは、閉形状において隣り合い、かつ、開形状において第2開孔本体21Bを挟んで対向する。さらに、図14及び図15に示す例では、一対の第2蓋部22Bが第2平面方向Y(CD方向)に対向しており、第2連結部23Bが当該方向と交差するように配置されている。このような一対の第2蓋部22Bは、第1実施形態と同様に、H字状の切り込みにより形成されるが、第1蓋部22Aよりも第1平面方向Xに細長い形状を有する。このような細長いH字状の切り込みを、以下、I字状の切り込みと称する。
【0099】
本実施形態における不織布10Cでは、例えば、閉形状の第1開孔部20Aと、開形状の第2開孔部20Bとを有する形状が、第3記憶形状として記憶されている。そして、不織布10Cでは、開形状の第1開孔部20Aと、閉形状の第2開孔部20Bとを有する形状(第3加工形状)が加工により付与されている。このため、不織布10Cは、温水等の刺激前は第3加工形状が維持され、温水等の刺激により、第3記憶形状に近づくように構成される。
【0100】
(製造方法)
続いて、図16及び図17を参照し、本実施形態に係る不織布10の製造方法について説明する。図16のフローチャートに示すように、本実施形態に係る不織布10の製造方法は、例えば、原形不織布の作製工程S11と、第1カット工程S32と、平坦化工程S33と、第2カット工程S34と、を含む。なお、当該製造方法は、第1実施形態と同様に、原形不織布の作製工程S11を含んでいなくてもよい。
【0101】
原形不織布101の作製工程S11では、図17に示すように、形状記憶ポリマーを含む形状記憶繊維の原材料を用いて、開孔部を有さない原形不織布101を作製する。原形不織布の作製工程S11は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0102】
第1カット工程S32では、図17に示すように、第2実施形態の第1カット工程S22と同様に、80℃以上200℃以下の温度T2に加熱された第1支持体R1に原形不織布101を押圧し、かつ、第1支持体R1の複数の第1凸部R10によって原形不織布101を切り開く。これにより、開形状の第2開孔部20Bを有する、第3記憶形状の第1中間体不織布102が作製される。加工後の第1中間体不織布102は、室温RTまで冷却される。
【0103】
図18に示すように、本実施形態における第1支持体R1は、例えば、I字状の先端部E(第1先端部E1及び第2先端部E2)を含む第1凸部R10を有する。具体的に、この第1凸部R10は、図5及び図6に示す第1凸部R10と同様に、鋭利な第1先端部E1を含む一対の第1カット部R11と、鋭利な第2先端部E2を含み、一対の第1カット部R11の間を接続する第2カット部R12と、を含む。この例において、一対の第1先端部E1の延在する第1方向は、第2平面方向Yであり、第2先端部E2の延在する第2方向は、第1平面方向Xである。本実施形態では、第2先端部E2の延在方向における長さが、第1先端部E1の延在方向における長さよりも大きく構成される。このような第1凸部R10により、細長いI字状の第2開孔部20Bが形成される。また、第1実施形態と同様に、第2カット部R12の基部の第1方向(第2平面方向Y)に沿った幅寸法によって、第2蓋部22Bと第2主面13とのなす角度αを調整することができる。なお、第1支持体R1の第1凸部R10の形状及び配置は、第2開孔部20Bの形状及び配置に応じて適宜設定される。
【0104】
続いて、図17に示す平坦化工程S33では、第2実施形態の平坦化工程S33と同様に、第1中間体不織布102の開形状の第2開孔部20Bを60℃以下で平坦化する。同図に示す例において、平坦化工程S33では、好ましくは室温RTに維持された、実質的に平坦な周面をそれぞれ有する一対のフラットロールRfを用いる。これにより、閉形状の第2開孔部20Bを有する第2中間体不織布103が形成される。
【0105】
続いて、第2カット工程S34では、図17に示すように、第1凸部と異なるパターンで配置された複数の第2凸部を備え、60℃以下に維持された第2支持体R2に第2中間体不織布103を押圧し、かつ、第2支持体R2の複数の第2凸部R20によって第2中間体不織布103を切り開く。第2カット工程S34では、好ましくは室温RTに維持された、実質的に平坦な周面をそれぞれ有する一対のフラットロールRfを用いる。これにより、開形状の第1開孔部20Aと、閉形状の第2開孔部20Bと、を含む第3加工形状の不織布10Cが作製される。なお、第2支持体R2の第2凸部R20の形状及び配置は、第1開孔部20Aの形状及び配置に応じて適宜設定される。
【0106】
以上の製造方法により、開形状の第2開孔部20Bを有する第3記憶形状が記憶され、かつ、開形状の第1開孔部20Aと、閉形状の第2開孔部20Bとを有する第3加工形状が付与された、不織布10Cが作製される。
【0107】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の不織布10では、開形状の第1開孔部20Aと、閉形状の第2開孔部20Bとを有する不織布10Cを40℃の温水に30秒間浸漬させることで、図17の「温水等の刺激後」に示すように、閉形状の第1開孔部20Aと、開形状の第2開孔部20Bと、を有する第2記憶形状に復帰する。そして、温水等の刺激の後、室温RT程度に冷却された不織布10Cは、その復帰した形状で維持される。
【0108】
本実施形態の不織布10Cによれば、温水等の刺激があった箇所の開孔パターンを切り替えることができる。これにより、不織布10Cが吸収性物品に用いられる場合は、詳細を後述するように、素早く排泄液を吸収でき、かつ、排泄液を拡散させて吸収体を有効活用することができる。また、不織布10Cが吸収性物品以外の物品に用いられる場合には、例えば、息や体温、汗、蒸気などの刺激により開孔パターンが変化するため、使用前後の判別や、使用後における通気や通液の調整などに用いることができる。
【0109】
以下、図19を用いて、不織布10Cが吸収性物品1Cに適用された場合の例について説明する。図19(A)に示すように、吸収性物品1Cは、吸収体30と、吸収体30に積層された不織布10Cと、を有する。図19では、不織布10Cが吸収性物品1Cの表面シートとして、吸収体30上に配置されている例を示す。
【0110】
図19(A)に示すように、着用者の排泄液WLは、例えば、不織布10Cの排泄部対向領域Pに接触する。排泄部対向領域Pには、開形状である第1開孔部20Aと、閉形状である第2開孔部20Bとが存在し得る。排泄部対向領域P上の排泄液WLは、より透過しやすい開形状の第1開孔部20Aから吸収体30側へ移行する。第1開孔部20Aが開形状であることで、排泄液WLが吸収体30に素早く吸収される。
【0111】
その後、図19(B)に示すように、排泄液WLの刺激によって、第1蓋部22Aが第3記憶形状に復帰するように平坦化し、第1開孔部20Aの開孔面積が減少する。一方で、排泄液WLの接触により、第2開孔部20Bは開形状となり、第2開孔部20Bの開孔面積が増加する。
【0112】
排泄液WLとの接触後に、第1開孔部20Aが閉形状に切り替わることで、第1開孔部20Aからの第1主面12側への液戻りを抑制することができる。さらに、次の排泄液WLが排泄された場合、開孔した第2開孔部20Bにより、排泄液WLを透過させることもできる。あるいは、排泄液WLが、第2開孔部20Bを伝って、排泄部対向領域Pの周囲へ拡散することもできる。この場合は、開形状に切り替わる第2開孔部20Bが、排泄液WLを、排泄部対向領域Pの周囲へ誘導する誘導部として機能し得る。つまり、第2開孔部20Bにより、2回目以降の排泄液WLを、最初の排泄液WLとは異なる位置に分散させることができる。
【0113】
このように、本実施形態では、従来相反する技術であった、素早く液を吸収することと、液を分散又は拡散させて多量の液を吸収することとを両立することができる。第1開孔部20Aが排泄液WLを素早く吸収して吸収体30側に閉じ込めることで、液戻りや液残りによる肌の不快感や肌トラブルを抑制することができる。さらに、閉形状から開形状に切り替わった第2開孔部20Bにより、吸収体30の吸収領域を有効活用し、吸収体30の吸収容量を高めることができる。したがって、吸収性物品1Cによれば、肌の不快感や肌トラブルを抑制しながら、長時間の使用も可能となる。
【0114】
(開孔部の詳細な構成例)
以下、第1開孔部20A及び第2開孔部20Bの詳細な構成例について説明する。なお、第1実施形態と重複する部分(例えば各構成の定義、測定方法等)については、説明を省略する。
【0115】
本実施形態において、第2開孔部20Bの第2開孔本体21Bは、溝状に構成されることが好ましい。溝状とは、第2開孔本体21Bの長手方向における最大寸法を長さ寸法、当該長手方向に直交する幅方向における最大寸法を幅寸法とした場合に、長さ寸法に対する幅寸法の割合が80%以下となるような形状をいう。このような第2開孔部20Bを有する不織布10Cを吸収性物品1Cに用いた場合、第2開孔部20Bによる排泄液の拡散作用を効果的に得ることができる。具体的には、第2開孔部20Bに排泄液が接触することで、第2開孔部20Bが開形状となり、溝状の第2開孔部20Bが発現する。次の排泄液が排泄された場合、この溝状の第2開孔部20Bに沿って排泄液が流動しやすくなるため、第2開孔部20Bを伝って排泄液が拡散し得る。そして、排泄液が排泄された領域とは異なる領域まで排泄液が誘導され、当該異なる領域に位置する開形状の第1開孔部20Aから排泄液が吸収され得る。このように、第2開孔本体21Bを溝状に構成することで、排泄液をより効果的に拡散させることができ、排泄液WLの吸収容量の向上に寄与することができる。
【0116】
上記排泄液の誘導作用を効果的に発揮する観点から、溝状の第2開孔本体21Bにおいて、上記長さ寸法に対する上記幅寸法の割合が、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。また、開閉可能な第2蓋部22Bを形成する観点から、上記長さ寸法に対する上記幅寸法の割合が、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
【0117】
また例えば、上記排泄液の誘導作用を効果的に発揮する観点から、溝状の第2開孔部20Bの長さ寸法は、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であり、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。
【0118】
さらに、吸収体30は、一般に縦長に構成されるため、吸収体30を有効活用するためには、吸収体30の長手方向に沿って液を誘導できることが好ましい。このため、溝状の第2開孔部20Bは、吸収体30の長手方向に沿って形成されていることが好ましく、具体的に、第2開孔部20Bの長手方向と、吸収体30の長手方向とのなす角度が、45度以下であることが好ましい。図14及び図15に示す例では、第2開孔部20Bは、第1平面方向Xに沿って配置されている。
【0119】
また、第2開孔部20Bの面積は、上記作用を効果的に発揮させる観点から、好ましくは6mm以上、より好ましくは6.5mm以上、さらに好ましくは8mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは29.5mm以下、さらに好ましくは28mm以下である。
【0120】
第2開孔部20Bについて、閉形状の開孔面積に対する、開形状の開孔面積の割合は、好ましくは150%以上、より好ましくは160%以上、さらに好ましくは200%以上、さらにより好ましくは250%以上であり、好ましくは400%以下、より好ましくは350%以下、さらに好ましくは300%以下である。
【0121】
また、不織布10Cに占める第2開孔部20Bの開形状の開孔面積合計の割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは8%以上であり、好ましくは68%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。
なお、第1開孔部20Aの面積、開形状の開孔面積に対する閉形状の開孔面積の割合、及び不織布10Cに占める第1開孔部20Aの開形状の開孔面積合計の割合の好ましい範囲は、第1実施形態と同様である。
【0122】
開形状における、第1蓋部22A又は第2蓋部22Bと第2主面13とのなす角度は、好ましくは120度以下、より好ましくは100度以下であり、好ましくは40度以上、より好ましくは60度以上である。
【0123】
第1開孔部20Aと第2開孔部20Bとの配置は、これらの作用を考慮して配置することができる。図14に示す例では、第1開孔部20Aは、第1配列方向(例えば第1平面方向X)に沿った複数の第1の列L31と、第1配列方向と交差する第2配列方向(第2平面方向Y)に沿った複数の第2の列L32と、をなして配置されている。同様に、第2開孔部20Bは、第1配列方向(例えば第1平面方向X)に沿った複数の第3の列L33と、第1配列方向と交差する第2配列方向(第2平面方向Y)に沿った複数の第4の列L34と、をなして配置されている。
【0124】
図14の例では、第1の列L31の第1開孔部20Aと、第3の列L33の第2開孔部20Bとが、隣り合って配置されている。同様に、この例では、第2の列L32の第1開孔部20Aと、第4の列L34の第2開孔部20Bとが、隣り合って配置されている。このような配置により、第1開孔部20Aと第2開孔部20Bとを混在した状態で配置させることができる。これにより、温水等の刺激によって、第1開孔部20Aと第2開孔部20Bの双方を開閉させることができる。したがって、不織布10Cを吸収性物品1Cに用いた場合に、1回の排泄液との接触によって、第1開孔部20Aの閉孔と第2開孔部20Bの開孔とを実現でき、第2開孔部20Bによる排泄液の分散又は拡散作用を発揮させることができる。
【0125】
なお、第1実施形態と同様に、第1開孔部20Aと第2開孔部20Bをより規則的に配置する観点から、各列において隣り合う第1開孔部20Aと第2開孔部20Bの間隔は、実質的に一定であることが好ましい。
【0126】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0127】
開孔部20の配置は上述の例に限定されず、例えば他の規則的な配置であってもよいし、ランダムな配置でもあってもよい。開孔部20及び蓋部22の平面形状についても、上述の例に限定されない。
【0128】
また、開孔部20の製造方法は上述の例に限定されない。例えば、開形状の開孔部は、カッター等によって蓋部22の形状に切断した後、別工程において蓋部22の連結部23を屈曲させてもよい。
【0129】
不織布10の賦形に用いられる支持体の構成も、上述の例に限定されない。例えば、支持体はロール状に限定されず、金型であってもよいし、その他の賦形が可能な構成であってもよい。
【0130】
以上の実施形態では、不織布10が吸収性物品に用いられる場合、表面シートとして用いられる例について説明したが、これに限定されない。本発明の不織布10は、例えば吸収性物品の、表面シートと吸収体との間に配置される中間シートとして用いられてもよい。
【0131】
また、不織布10の用途も上述の例に限定されず、吸収性物品以外にも様々な物品に適用することができる。
【実施例0132】
[試験例1 第1実施形態に係る試験例]
試験例1として、形状記憶繊維を含有する不織布サンプルに、第1開孔部を形成し、温水への浸漬によって閉形状となるか否か検討した。
【0133】
(実施例1-1)
実施例1-1のサンプルとして、形状記憶繊維を含有する不織布サンプルを作製した。まず、市販のポリウレタン系の形状記憶ポリマー(「NICS 3 DF-SMP300N」、エヌシーアイ販売株式会社製)を準備した。このポリマーを溶融紡糸し、短繊維化したものをカーディングによりウェブにし、次いでエアスルー法により不織布にすることで平坦なシート状の原形不織布を作製した。原形不織布の成形温度は、180℃とした。そして、成形後の原形不織布を室温まで冷却した。この原形不織布のサイズは10cm×20cmであった。
【0134】
続いて、図4に示すような凸部を有する加工ロール(第1支持体)と、平坦なフラットロールを準備した。2つのロールは室温とした。この加工ロールの凸部の平面形状はH字状であり、一対の第1カット部の長さ寸法は4mm、第2カット部の長さ寸法は4mm、凸部の高さ寸法は5mmとした。ここで、加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を3.5mmとした。これら2つのロールを回転させながら、フラットロールによって原形不織布を加工ロールに押圧することで、原形不織布を切り開いた。これにより、原形不織布に、図2(A)に示すような開形状の第1開孔部を形成した。この第1開孔部の蓋部の連結部は、繊維配向方向(MD方向)に沿って屈曲していた。なお、サンプルにおける第1開孔部の数は、220個であった。
【0135】
表1に示すように、このサンプルの厚みは0.9mmであった。このサンプルの坪量は、100g/mであった。開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度(屈曲角度)は、90度であった。
【0136】
(実施例1-2)
加工ロールに挟み込む原形不織布の向きを90度回転した以外は、実施例1-1と同様に、実施例1-2の不織布サンプルを作製した。この第1開孔部の蓋部の連結部は、CD方向に沿って屈曲していた。表1に示すように、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、90度であった。なお、サンプルにおける第1開孔部の数は、実施例1-1と同一の220個であった。
【0137】
(実施例1-3)
加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を1mmとした以外は、実施例1-1と同様に、実施例1-3の不織布サンプルを作製した。表1に示すように、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、120度であった。なお、サンプルにおける第1開孔部の数は、実施例1-1と同一の220個であった。
【0138】
(比較例1-1)
比較例1-1の不織布サンプルとして、実施例1-1と同様の平坦な原形不織布を作製し、この原形不織布に打ち抜き加工によって開孔を形成した。具体的には、原形不織布の位置を固定具によって固定して、実施例1-1と同様の位置に、パンチを用いて打ち抜き加工した。これにより、矩形の複数の開孔部を形成した。不織布なお、サンプルにおける第1開孔部の数は、実施例1-1と同一の220個であった。但し、比較例1-1のサンプルでは、蓋部が形成されなかった。
【0139】
(比較例1-2)
比較例1-2の不織布サンプルとして、開孔部を形成していない加工前の原形不織布を準備した。
【0140】
(温水浸漬後の開孔率の評価)
各実施例及び各比較例のシート状のサンプルを10cm×10cmに切り取った。切り取ったサンプルを平坦な作業台に配置し、厚み方向上方からサンプルを撮像した。この画像を解析し、サンプル中の任意の10個の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定した。この平均値を、「開形状(温水浸漬前)の開孔面積」とした。切り取ったサンプルが入るサイズのトレイに、40℃の温水を加えた。このトレイ中の温水に、切りとったサンプル全体を、30秒間浸漬させた。温水からシートを取り出した後、任意の10個の開孔面積の平均値を測定した。この平均値を、「閉形状(温水浸漬後)の開孔面積」とした。そして、開形状の開孔面積に対する閉形状の開孔面積の割合((閉形状の開孔面積)/(開形状の開孔面積)×100)を、「温水浸漬後の開孔率」として算出した。この結果を、表1に示す。
【0141】
【表1】
【0142】
表1に示すように、比較例1-1のシートは、温水への浸漬によって多少軟化していたものの、その温水浸漬後の開孔率は90%であり、開孔面積にほとんど変化がなかった。また、開孔が形成されていない比較例1-2では、そもそも開孔率が定義できなかった。
【0143】
一方で、実施例1-1~1-3のサンプルにおける温水浸漬後の開孔率は、いずれも80%以下であり、温水の浸漬によって開孔面積が減少したことがわかった。また、CD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例1-2のサンプルよりも、MD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例1-1のサンプルの方が、開孔率が小さくなった。このことから、MD方向に沿って連結部が屈曲する開孔部を形成することで、温水の浸漬によって開孔面積がより確実に減少することがわかった。さらに、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度が90度である実施例1-1は、当該角度が120度である実施例1-3よりも、温水浸漬後の開孔率が小さかった。このことから、蓋部と第2主面とのなす角度を90度以下とすることで、温水の浸漬によって開孔面積がより一層確実に減少することがわかった。
【0144】
[試験例2 第2実施形態に係る試験例]
試験例2として、形状記憶繊維を含有する不織布サンプルに、閉形状である第2開孔部を形成し、温水への浸漬によって開形状となるか否か検討した。
【0145】
(実施例2-1)
実施例2-1のサンプルとして、閉形状である第2開孔部を有する不織布サンプルを作製した。まず、実施例1-1と同様の平坦な原形不織布を作製した。そして、I字状の凸部を有する加工ロール(第1支持体)と、それに対向する平坦なフラットロールを準備した。ここで、加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を4.0mmとした。2つのロールは、80℃に加熱した状態とした。加工ロールの凸部の形状及び配置は、実施例1-1と同一とした。
【0146】
これら2つのロールを回転させながら、フラットロールによって原形不織布を加工ロールに押圧することで、原形不織布を切り開いた。これにより、原形不織布に開形状の第2開孔部を形成し、中間体不織布を作製した。この第2開孔部の連結部は、MD方向に沿って屈曲していた。第2開孔部の形成後の中間体不織布は、室温まで冷却した。
【0147】
表2に示すように、このサンプルの不織布本体の厚みは1.1mmであった。このサンプルの坪量は、124g/mであった。サンプル全体の第2開孔部の数は、112個とした。開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度(屈曲角度)は、90度であった。
【0148】
続いて、室温に維持された2つの対向するフラットロールを準備した。そして、これら2つのロールを回転させながら、2つのロール間に中間体不織布を挟み込むことで、中間体不織布を平坦化した。これにより、閉形状の第2開孔部を形成した。この平坦化加工後であって、温水浸漬前の第2開孔部の開孔本体は、蓋部によって覆われていた。
【0149】
(実施例2-2)
加工ロールに挟み込む原形不織布の向きを90度回転した以外は、実施例2-1と同様に、実施例2-2の不織布サンプルを作製した。この第2開孔部の連結部は、CD方向に沿って屈曲していた。表2に示すように、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、90度であった。
【0150】
(実施例2-3)
加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を1mmとした以外は、実施例2-1と同様に、実施例2-3の不織布サンプルを作製した。表2に示すように、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、120度であった。平坦化加工後であって、温水浸漬前の開孔面積は6.5mmであった。
【0151】
(比較例2-1)
比較例2-1の不織布サンプルとして、実施例2-1と同様の平坦な原形不織布を作製し、この原形不織布にピンを穿刺する加工によって開孔を形成した。具体的には、原形不織布の位置を固定具によって固定して、実施例2-1と同様の位置に、ピンを穿刺した。但し、比較例2-1のサンプルでは、蓋部が形成されなかった。このため、平坦化加工前後において、開孔面積は変化しなかった。
【0152】
(比較例2-2)
比較例2-2の不織布サンプルとして、開孔部を形成していない、実施例2-1における加工前の平坦な原形不織布を準備した。
【0153】
(温水浸漬後の開孔率の評価)
各実施例及び各比較例のシート状のサンプルを10cm×10cmに切り取った。切り取ったサンプルを平坦な作業台に配置し、厚み方向上方からサンプルを撮像した。この画像を解析し、サンプル中の任意の10個の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定した。この平均値を、「閉形状(温水浸漬前)の開孔面積」とした。切り取ったサンプルが入るサイズのトレイに、40℃の温水を加えた。このトレイ中の温水に、切りとった部分全体を、30秒間浸漬させた。温水からシートを取り出した後、任意の10個の開孔の面積の平均値を測定した。この平均値を、「開形状(温水浸漬後)の開孔面積」とした。閉形状の開孔面積に対する、開形状の開孔面積の割合((開形状の開孔面積)/(閉形状の開孔面積)×100)を、本試験例に係る「温水浸漬後の開孔率」として算出した。この結果を、表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
表2に示すように、比較例2-1のシートは、温水への浸漬によって多少軟化していたものの、その温水浸漬後の開孔率は90%であり、開孔面積にほとんど変化がなかった。また、開孔が形成されていない比較例2-2では、そもそも開孔率が定義できなかった。
【0156】
一方で、実施例2-1~2-3のサンプルにおける温水浸漬後の開孔率は、いずれも200%以上であり、温水の浸漬によって開孔したことがわかった。また、CD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例2-2のサンプルよりも、MD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例2-1のサンプルの方が、開孔率が大きくなった。このことから、MD方向に沿って連結部が屈曲する開孔部を形成することで、温水の浸漬によってより確実に開孔することがわかった。さらに、実施例2-1,2-3の結果から、開孔形成時における蓋部と第2主面とのなす角度を90度以下とすることで、温水の浸漬によってより一層確実に開孔することがわかった。
【0157】
[試験例3 第3実施形態に係る試験例]
試験例3として、形状記憶繊維を含有する不織布サンプルに、開形状である第1開孔部と、閉形状である第2開孔部と、を形成し、温水への浸漬によってこれらが開閉するか否か検討した。
【0158】
(実施例3-1)
実施例3-1のサンプルとして、開形状である第1開孔部と、閉形状である第2開孔部と、を有する不織布サンプルを作製した。まず、実施例1-1と同様の平坦なシート状の原形不織布を作製した。そして、I字状の凸部を有する加工ロール(第1支持体)と、それに対向する平坦なフラットロールを準備した。2つのロールは、80℃に加熱した状態とした。加工ロールの凸部の形状及び配置は、実施例2-1と同一とした。
【0159】
これら2つのロールを回転させながら、フラットロールによって原形不織布を加工ロールに押圧することで、原形不織布を切り開いた。ここで、加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を4.0mmとした。これにより、原形不織布に開形状の第2開孔部を形成し、第1中間体不織布を作製した。この第2開孔部の蓋部の連結部は、MD方向と交差するように設けられた。第2開孔部の形成後の原形不織布は、室温まで冷却した。
【0160】
表3に示すように、このサンプルの不織布本体の厚みは1.0mmであった。このサンプルの坪量は、112g/mであった。開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、90度であった。
【0161】
続いて、室温に維持された2つの対向するフラットロールを準備した。そして、これら2つのロールを回転させながら、2つのロール間に第1中間体不織布を挟み込むことで、第1中間体不織布を平坦化した。これにより、閉形状の第2開孔部を有する第2中間体不織布を形成した。この平坦化加工後の第2開孔部の開孔本体は、蓋部によって全体が覆われていた。
【0162】
続いて、H字状の凸部を有する加工ロール(第2支持体)と、それに対向する平坦なフラットロールを準備した。2つのロールは、室温に維持した。加工ロールの凸部の形状及び配置は、実施例1-1と同一とした。
【0163】
これら2つのロールを回転させながら、フラットロールによって第2中間体不織布を加工ロールに押圧することで、第2中間体不織布を切り開いた。ここで、加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を3.5mmとした。これにより、第2中間体不織布に開形状の第1開孔部を形成し、不織布サンプルを作製した。この第1開孔部の連結部は、MD方向に沿って屈曲していた。開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、90度であった。
【0164】
(実施例3-3)
第1加工ロール及び第2加工ロールの第2カット部の基部の幅寸法を1mmとした以外は、実施例3-1と同様に、実施例3-3の不織布サンプルを作製した。表3に示すように、開形状における第2蓋部と第2主面とのなす角度と、開形状における第1蓋部と第2主面とのなす角度は、いずれも120度であった。
【0165】
(実施例3-2)
第1加工ロール及び第2加工ロールに挟み込む原形不織布の向きを90度回転した以外は、実施例3-1と同様に、実施例3-2の不織布サンプルを作製した。この第2開孔部の蓋部の連結部は、CD方向に沿って屈曲していた。表3に示すように、開形状における、蓋部と第2主面とのなす角度は、90度であった。
【0166】
(比較例3-1)
比較例3-1の不織布サンプルとして、実施例3-1と同様の平坦な原形不織布を作製し、この原形不織布にピンを穿刺する加工によって開孔を形成した。具体的には、原形不織布の位置を固定具によって固定して、実施例3-1の開孔部と同様の位置に、ピンを穿刺した。比較例3-1のサンプルでは、蓋部が形成されなかった。このため、平坦化加工前後において、開孔面積は変化しなかった。また、比較例3-1で用いたピン穿刺によっては、閉形状である第2開孔部は形成できなかった。
【0167】
(比較例3-2)
比較例3-2の不織布サンプルとして、開孔部を形成していない、実施例3-1における加工前の平坦な原形不織布を準備した。
【0168】
(温水浸漬後の開孔率の評価)
各実施例及び各比較例のシート状のサンプルを10cm×10cmに切り取った。切り取ったサンプルを平坦な作業台に配置し、厚み方向上方からサンプルを撮像した。この画像を解析し、切りとったサンプル中の任意の10個の第1開孔部及び第2開孔部の開孔面積を算出して、これらの平均値を測定した。これらの平均値を、表3に示すように、「温水浸漬前の開孔面積」とした。
切り取ったサンプルが入るサイズのトレイに、40℃の温水を加えた。このトレイ中の温水に、切りとったサンプル全体を、30秒間浸漬させた。温水からサンプルを取り出した後、第1開孔部及び第2開孔部のそれぞれについて、任意の10個の開孔面積の平均値を測定した。これらの平均値を、「温水浸漬後の開孔面積」とした。
第1開孔部については、温水浸漬前(開形状)の開孔面積に対する、温水浸漬後(閉形状)の開孔面積の割合((閉形状の開孔面積)/(開形状の開孔面積)×100)を、「温水浸漬後の開孔率」として算出した。第2開孔部については、温水浸漬前(閉形状)の開孔面積に対する、温水浸漬後(開形状)の開孔面積の割合((開形状の開孔面積)/(閉形状の開孔面積)×100)を、本試験例に係る「温水浸漬後の開孔率」として算出した。この結果を、表3に示す。
【0169】
【表3】
【0170】
表3に示すように、比較例3-1のシートは、温水への浸漬によって多少軟化していたものの、その温水浸漬後の開孔率は90%であり、開孔面積にほとんど変化がなかった。また、開孔が形成されていない比較例3-2では、そもそも開孔率が定義できなかった。
【0171】
一方で、実施例3-1、3-2、3-3のサンプルにおける、第1開孔部の温水浸漬後の開孔率は、いずれも80%以下であり、温水の浸漬によって開孔面積が減少したことがわかった。また、試験例1と同様に、CD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例3-2のサンプルよりも、MD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例3-1のサンプルの方が、開孔率が小さくなった。このことから、MD方向に沿って連結部が屈曲する開孔部を形成することで、温水の浸漬によって開孔面積がより確実に減少することがわかった。さらに、実施例3-1,3-3の結果から、第1蓋部と第2主面とのなす角度を90度以下とすることで、温水の浸漬によって開孔面積がより一層確実に減少することがわかった。
【0172】
実施例3-1、3-2、3-3のサンプルにおける、第2温水浸漬後の開孔率は、いずれも200%以上であり、温水の浸漬によって開孔したことがわかった。また、CD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例3-2のサンプルよりも、MD方向に沿って連結部が屈曲するように構成された実施例3-1のサンプルの方が、開孔率が大きくなった。このことから、MD方向に沿って連結部が屈曲する開孔部を形成することで、温水の浸漬によってより確実に開孔することがわかった。さらに、実施例3-1,3-3の結果から、開孔形成時における第2蓋部と第2主面とのなす角度を90度以下とすることで、温水の浸漬によってより一層確実に開孔することがわかった。
【0173】
このように、本試験例の結果から、温水の刺激によって閉形状に切り替わる第1開孔部と、開形状に切り替わる第2開孔部と、の双方を含む不織布を作製できることがわかった。
【符号の説明】
【0174】
10,10A,10B,10C 不織布
11 不織布本体
20 開孔部
21 開孔本体
22 蓋部
23 連結部
20A 第1開孔部
20B 第2開孔部
1A,1B,1C 吸収性物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19