IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人フロンティア株式会社の特許一覧

特開2024-77166ストレッチ性高密度織物および繊維製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077166
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】ストレッチ性高密度織物および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/56 20210101AFI20240531BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20240531BHJP
   D03D 15/292 20210101ALI20240531BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20240531BHJP
   D06M 15/227 20060101ALI20240531BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240531BHJP
   D06C 15/08 20060101ALI20240531BHJP
   D06C 7/00 20060101ALI20240531BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20240531BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240531BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240531BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20240531BHJP
   A47G 9/02 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
D03D15/56
D03D15/283
D03D15/292
D06M15/277
D06M15/227
D06M15/643
D06C15/08
D06C7/00 Z
D01F8/14 B
A41D31/00 502B
A41D31/00 503K
A41D31/00 503L
A41D31/00 502Q
A41D31/04 B
A41B11/00 B
A47G9/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189053
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 彰大
【テーマコード(参考)】
3B018
3B102
3B154
4L033
4L041
4L048
【Fターム(参考)】
3B018AC01
3B102BA11
3B102BA12
3B154AA07
3B154AB19
3B154AB27
3B154BA35
3B154BB02
3B154BB12
3B154BC22
3B154DA16
4L033AA07
4L033AB04
4L033AC03
4L033CA12
4L033CA22
4L033CA59
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA09
4L041BA22
4L041BC04
4L041BD13
4L041CA05
4L041CA08
4L041EE12
4L048AA21
4L048AA22
4L048AA26
4L048AA28
4L048AA30
4L048AA34
4L048AA51
4L048AA56
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB21
4L048AC12
4L048BA01
4L048CA01
4L048CA04
4L048CA15
4L048DA01
4L048DA13
4L048DA24
4L048DA25
4L048EA01
4L048EB00
(57)【要約】
【課題】ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物および繊維製品を提供する。
【解決手段】織物の経方向および緯方向のうち一方に単繊維繊度0.1~5.0dtexの伸縮性マルチフィラメントAが配され、他方に単繊維繊度が0.00002~5.0dtexのマルチフィラメントBが配され、伸縮性マルチフィラメントAが配された方向の織物伸度が10%以上であり、かつ織物のカバーファクターCFが2550~4550の範囲内であることを特徴とするストレッチ性高密度織物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物の経方向および緯方向のうち一方に単繊維繊度0.1~5.0dtexの伸縮性マルチフィラメントAが配され、他方に単繊維繊度が0.00002~5.0dtexのマルチフィラメントBが配され、伸縮性マルチフィラメントAが配された方向の織物伸度が10%以上であり、かつ織物のカバーファクターCFが2550~4550の範囲内であることを特徴とするストレッチ性高密度織物。
ただし、カバーファクターは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項2】
前記伸縮性マルチフィラメントAが、ポリウレタン繊維、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、または仮撚捲縮加工糸からなる、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項3】
織物がツイル組織またはサテン組織を有する、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項4】
織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が1000mmHO以上である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項5】
織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されておらず、耐水圧が800mmHO以上である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項6】
織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が700mmHO以上である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項7】
織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工を施されておらず、耐水圧が500mmHO以上である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項8】
織物において、防水用コーティング加工またはラミネート加工が施されていない、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
【請求項9】
織物において、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
ただし、引裂き強度はJIS L 1096-2010 8.17 D法により測定するものとする。
【請求項10】
織物において、滑脱抵抗力が3mm以下である、請求項1に記載のストレッチ性高密度織物。
ただし、滑脱抵抗力はJIS L 1096-2010 8.23 B法(荷重117.7N)により測定するものとする。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物を用いてなる、衣料、裏地、芯地、靴下、腹巻、帽子、手袋、寝衣、布団側地、布団カバー、カーシート表皮材の群より選ばれるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐水性の織物は、高密度織物に撥水加工を施すことによって作られており、スポーツ用途を中心に幅広い衣料分野で使用されている。織物に耐水性を付与するには一般に、織物の経糸および緯糸の使用本数を多くし、織物組織を高密度化することで達成される。しかし、織物組織を高密度化することで糸交点の周囲に余裕が無い組織構造となり、従来の耐水性織物は、組織が硬直化していて伸縮性に乏しく、風合いが硬くなっており、かかる織物で衣料を構成すると、ドレープ性に欠ける、着心地が悪くなる、さらに仕立て映えが良くない、といった問題を有していた。
【0003】
一方、伸縮性を高めるため織密度を小さくすると、耐水性が低下してしまい、十分に満足出来る効果を上げることは出来なかった。
これらの問題点を解決するために、例えば、特許文献1、2などでは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いて、カバーファクターCFを所定の範囲とした織物が提案されている。しかしながら、かかる織物では、ストレッチ性は有するものの、耐水性とストレッチ性とは相反する性質であり、耐水性の点でまだ満足とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-336547号公報
【特許文献2】国際公開第2002/008504号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、織物を構成する糸条などを巧みに工夫することによりストレッチ性だけでなく耐水性にも優れた織物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。かくして、以下の発明が提供される。
【0007】
1.織物の経方向および緯方向のうち一方に単繊維繊度0.1~5.0dtexの伸縮性マルチフィラメントAが配され、他方に単繊維繊度が0.00002~5.0dtexのマルチフィラメントBが配され、伸縮性マルチフィラメントAが配された方向の織物伸度が10%以上であり、かつ織物のカバーファクターCFが2550~4550の範囲内であることを特徴とするストレッチ性高密度織物。
ただし、カバーファクターは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
2.前記伸縮性マルチフィラメントAが、ポリウレタン繊維、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、または仮撚捲縮加工糸からなる、上記1に記載のストレッチ性高密度織物。
3.織物がツイル組織またはサテン組織を有する、上記1または2に記載のストレッチ性高密度織物。
4.織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が1000mmHO以上である、上記1~3のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
5.織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されておらず、耐水圧が800mmHO以上である、上記1~3のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
6.織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が700mmHO以上である、上記1~3のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
7.織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工を施されておらず、耐水圧が500mmHO以上である、上記1~3のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
8.織物において、防水用コーティング加工またはラミネート加工が施されていない、上記1~3のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
9.織物において、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上である、上記1~8のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
ただし、引裂き強度はJIS L 1096-2010 8.17 D法により測定するものとする。
10.織物において、滑脱抵抗力が3mm以下である、上記1~8のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物。
ただし、滑脱抵抗力はJIS L 1096-2010 8.23 B法(荷重117.7N)により測定するものとする。
11.上記1~10のいずれかに記載のストレッチ性高密度織物を用いてなる、衣料、裏地、芯地、靴下、腹巻、帽子、手袋、寝衣、布団側地、布団カバー、カーシート表皮材の群より選ばれるいずれかの繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明のストレッチ性高密度織物(以下、「織物」ということもある。)は、織物の経方向および緯方向のうち一方に単繊維繊度0.1~5.0dtexの範囲内の伸縮性マルチフィラメントAが配され、他方に単繊維繊度が0.00002~5.0dtexの範囲内のマルチフィラメントBが配され、伸縮性マルチフィラメントAが配された方向の織物伸度が10%以上(より好ましくは12~30%)であり、かつ織物のカバーファクターCFが2550~4550の範囲内である。なお、該伸度は、JIS L1096-2010 8.16 B法により測定される。
【0010】
前記伸縮性マルチフィラメントAとしては、ポリトリメチレンテレフタレートからなる1成分で構成される繊維、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に接合された複合繊維(コンジュゲートフィラメント糸)、弾性繊維(ポリウレタン系繊維、ポリエーテルエステル系繊維、吸水性エラストマー繊維など)、未延伸ポリエステル繊維、仮撚捲縮加工糸などが例示される。
【0011】
ここで、前記複合繊維としては、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートからなる複合繊維であることが好ましい。具体的な2成分としては、ポリトリメチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートなどが例示される。
【0012】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートとは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルからなる繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上のものをいう。従って第3成分としての他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを含有する。
【0013】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体とトリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で適当な反応条件下で縮合させることにより製造される。
【0014】
添加する第3成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸など)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2-トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、脂環族グリコール(シクロヘキサングリコールなど)、芳香族ジオキシ化合物(ハイドロキノンビスフェノールAなど)、芳香族を含む脂肪族グリコ-ル(1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなど)、脂肪族オキシカルボン酸(p-オキシ安息香酸など)などが挙げられる。
【0015】
前記ポリエチレンテレフタレートは3成分を共重合させたものでもよい。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたものでもよい。さらには、特開2004-270097号公報や特開2004-211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物及びチタン化合物を含む触媒を用いて得られたものでもよい。
【0016】
前記のポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどには、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種又は2種以上含まれていてもよい。
前記の複合繊維は、例えば、特開2009-46800号公報に記載された方法により製造することができる。
【0017】
本発明において、前記伸縮性マルチフィラメントAが単独糸として織物に含まれていてもよいし、他の糸条(例えば、非捲縮糸など)との複合糸(空気混繊糸、複合仮撚加工糸、合撚糸など)として織物に含まれていてもよい。
その際、前記の通り、前記伸縮性マルチフィラメントAにおいて、優れたストレッチ性を得る上で、単繊維繊度が0.1~5.0dtex(より好ましくは1.0~3.0dtex、特に好ましくは1.2~2.5dtex)の範囲内であることが重要である。
【0018】
また、優れた耐水性を得る上で、織物を構成する他方のマルチフィラメントBの単繊維繊度が前記の通り、0.00002~5.0dtex(より好ましくは0.1~0.9dtex)の範囲内であることが重要である。特にマルチフィラメントBの単繊維繊度が前記伸縮性マルチフィラメントAの単繊維繊度より小さいことが好ましい。
【0019】
かかるマルチフィラメントBは非捲縮糸でもよいし仮撚捲縮加工糸でもよい。かかるマルチフィラメントBを形成する繊維としては、特に制限はないが、ポリエステルからなるポリエステル系繊維が好ましい。かかるポリエステルとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素数2~6のアルキレングリコール、すなわちエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種のグリコール、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルが例示される。
【0020】
かかるポリエステルには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。その際、使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β-ヒドロキシエトキシ安息香酸、P-オキシ安息香酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
【0021】
前記ポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートの場合について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのごときテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/ またはその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造されたものでよい。また、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、ポリ乳酸やステレオコンプレックスポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルであってもよい。
【0022】
前記ポリエステルには、必要に応じて、艶消し剤(二酸化チタン)、微細孔形成剤(有機スルホン酸金属塩)、着色防止剤、熱安定剤、難燃剤(三酸化二アンチモン)、蛍光増
白剤、着色顔料、帯電防止剤(スルホン酸金属塩)、吸湿剤(ポリオキシアルキレングリコール)、抗菌剤、その他の無機粒子の1種以上が含まれていてもよい。特に、前記ポリ
エステル中にポリエステル重量対比、艶消し剤が0.2重量%以上(より好ましくは0.2~2.5重量%)含まれていると、紫外線遮蔽効果や防透性がストレッチ性高密度織物に付加され好ましい。
【0023】
また、織物を構成する、伸縮性マルチフィラメントAやマルチフィラメントBなどの糸条において、単繊維断面形状としては、丸断面の他、楕円形断面、三角、四角、十字、扁平、くびれ付扁平、H型、W型などが例示される。
【0024】
また、織物を構成する、伸縮性マルチフィラメントAやマルチフィラメントBなどの糸条において、総繊度、フィラメント数(fil)としては優れた耐水性を得る上で、それぞれ総繊度20~220dtex(より好ましくは20~50dtex)、フィラメント数1~300本(より好ましくは50~300本)の範囲内であることが好ましい。
【0025】
本発明のストレッチ性高密度織物は、伸縮性マルチフィラメントAとマルチフィラメントBとを用い、必要に応じて他の糸条をも用いて、必要に応じて複合糸とした後、通常の織機(例えば、ウオータージェットルームなど)を使用して製織することができる。
【0026】
かくして得られたストレッチ性高密度織物において、織物のカバーファクターCFが2550~4550の範囲内であることが優れた耐水性とストレッチ性を得る上で重要である。ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【0027】
カバーファクターCFが2550未満では、優れたストレッチ性を得ることはできるが、糸交点(組織点)の周囲に余裕があるため、耐水性が低下するおそれがある。また、CFが4550より大きくなると、糸交点の周囲に余裕が無くなり、優れたストレッチ性が得られなくなるおそれがある。
【0028】
また、織物の組織は特に限定されず、2重織でもよい。優れたストレッチ性と耐水性を得る上で、経糸または緯糸同士の重なりができ隙間ができにくい立体構造を得ることができ、かつ糸交点の周囲にストレッチ性を与える余裕ができやすいツイル組織やサテン組織が好ましい。
【0029】
かかる織物には、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、常法の染色加工、アルカリ減量加工、起毛加工を行ってもよい。さらには、紫外線遮蔽剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等を付加適用してもよい。なお、布帛に複合繊維が含まれる場合は、染色加工などの熱履歴により、複合繊維の潜在捲縮が顕在化(コイル状)する。
【0030】
また、かかる織物には、撥水加工を施すことが好ましい。かかる撥水加工において、撥水剤の種類は特に限定されない。例えば、フッ素系化合物でもよいし、炭化水素系化合物、シリコーン系化合物などの環境に配慮した撥水剤が例示される。必要に応じて、制電剤、メラミン樹脂、触媒を混合して撥水剤の濃度が3~15重量%程度の加工剤とし、ピックアップ率50~90%程度で、該加工剤を用いて布帛の表面を処理することが好ましい。加工剤で布帛の表面を処理する方法としては、パッド法、スプレー法などが例示される。なかでも、加工剤を布帛内部まで浸透させる上でパッド法が好ましい。前記ピックアップ率とは、布帛(加工剤付与前)重量に対する加工剤の重量割合(%)である。
【0031】
なお、前記制電剤としては、ポリエチレングリコール基を含有するポリエステル系樹脂、ポリエチレングリコール基を含有するウレタン系樹脂、ポリエチレングリコール基を含有するポリカチオン系化合物とジグリシジルエーテルとの反応物等などが好ましい。高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩、燐酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、アミン塩型、第4級アンモニウム塩、イミダリン型4級塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン系界面活性剤、イミダリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性界面活性剤などの制電性化合物でもよい。
【0032】
また、前記撥水加工工程の、前工程および後工程のうち少なくともどちらか一方の工程で、織物にカレンダー加工を施すと、糸間の隙間が小さくなりやすく、優れた耐水性が得られ好ましい。その際、カレンダー加工の条件としては、温度130℃以上(より好ましくは140~195℃)、線圧200~25000N/cmの範囲内であることが好ましい。
【0033】
また、かかる織物には、優れたストレッチ性を得る上で防水用コーティング加工(撥水加工ではなく防水性を高めるための樹脂加工)またはラミネート加工が施されていないことが好ましい。特に、防水用コーティング加工およびラミネート加工がともに施されていないことが好ましい。
【0034】
本発明のストレッチ性高密度織物において、例えば、以下の(1)~(4)の態様が好ましく例示される。
1.織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が1000mmHO以上(より好ましくは1000~3000HO)である。
2.織物にフッ素系撥水剤が付着しており、カレンダー加工が施されておらず、耐水圧が800mmHO以上(より好ましくは800~3000HO)である。
3.織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工が施されており、耐水圧が700mmHO以上(より好ましくは700~3000HO)である。
4.織物に炭化水素系化合物またはシリコーン系化合物が付着しており、カレンダー加工を施されておらず、耐水圧が500mmHO以上(より好ましくは500~3000HO)である。
【0035】
本発明のストレッチ性高密度織物は、前記の構成を有するので、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れる。その際、織物において、経方向または緯方向(好ましくは経方向および緯方向)の引裂強度が7N以上(より好ましくは7~100N)であることが好ましい。ただし、引裂き強度はJIS L 1096-2010 8.17 D法により測定するものとする。
【0036】
また、織物において、滑脱抵抗力が3mm以下(より好ましくは0.001~3mm)であることが好ましい。ただし、滑脱抵抗力はJIS L 1096-2010 8.23 B法(荷重117.7N)により測定するものとする。
また、織物において、目付けとしては耐水性と軽量性を両立する上で100~250g/m)の範囲内であることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の繊維製品は、前記のストレッチ性高密度織物を用いてなる、衣料、裏地、芯地、靴下、腹巻、帽子、手袋、寝衣、布団側地、布団カバー、カーシート表皮材より選択される繊維製品である。
かかる繊維製品は前記のストレッチ性高密度織物を用いているので、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れる。
【0038】
なお、前記のストレッチ性高密度織物はサッカーシャツ、ゴルフシャツ、テニスシャツ、バスケットシャツ、卓球シャツ、バドミントンシャツ、ランニングシャツ、サッカーパンツ、テニスパンツ、バスケットパンツ、卓球パンツ、バドミントンパンツ、ランニングパンツ、ゴルフパンツ、各種スポーツ用アンダーシャツ、各種スポーツ用インナーウエア、セーター、Tシャツ、ジャージ、トレーナー、ウインドブレーカー、医療用衣料(ガウンなど)、防塵衣など各種繊維製品に用いてもよい。
【実施例0039】
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)カバーファクター
下記式により織物のカバーファクターCFを算出した。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
(2)織物の伸度
JIS L 1096-2010 8.16 B法により、織物の伸度を測定した。
(3)織物の耐水圧
JIS L 1092-2009(A法)の耐水度試験により、織物の耐水圧を測定した。
(4)織物の引裂強度
JIS L 1096-2010 8.17 D法により引裂強度(N)を測定した。
(5)織物の滑脱抵抗力
JIS L 1096-2010 8.23 B法 荷重117.7N(mm)により測定した。
(6)織物の目付け
JIS L 1096-2010 8.3により目付け(g/m)を測定した。
【0040】
[実施例1]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度66dtex/144fil、マルチフィラメントB)、緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維(総繊度56dtex/36fil、伸縮性マルチフィラメントA)を用いて、ウォータージェットルーム織機で3/2ツイル組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施したあとでカレンダー加工を施した。
【0041】
かくして得られた織物において、目付け172g/m、経密度322本/2.54cm、緯密度214本/2.54cm、カバーファクターは経2492、緯1513、合計4005、経伸度1%、緯伸度15%、耐水圧1114mmHO、引裂強度は経緯ともに10N以上、滑脱抵抗力3mm以下あり、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物であった。
【0042】
[実施例2]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度66dtex/144fil、マルチフィラメントB)、緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維(総繊度56dtex/36fil、伸縮性マルチフィラメントA)を用いて、ウォータージェットルーム織機で2/2ツイル組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施した。
【0043】
かくして得られた織物において、目付け145g/m、経密度241本/2.54cm、緯密度194本/2.54cm、カバーファクターは経1869、緯1223、合計3092、経伸度1%、緯伸度17%、耐水圧825mmHO、引裂強度は経緯ともに10N以上、滑脱抵抗力3mm以下あり、耐水性だけでなくストレッチ性にも優れたストレッチ性高密度織物であった。
【0044】
[実施例3]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度66dtex/144fil、マルチフィラメントB)、緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維(総繊度56dtex/36fil、伸縮性マルチフィラメントA)を用いて、ウォータージェットルーム織機で2/2ツイル組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、非フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施したあとでカレンダー加工を施した。
【0045】
かくして得られた織物において、目付け149g/m、経密度256本/2.54cm、緯密度192本/2.54cm、カバーファクターは経1983、緯1428、合計3411、経伸度1%、緯伸度18.0%、耐水圧610mmHO、引裂強度は経緯ともに7N以上、滑脱抵抗力3mm以下であり、耐水性だけでなくストレッチ性にも優れたストレッチ性高密度織物であった。
【0046】
[実施例4]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度66dtex/144fil、マルチフィラメントB)、緯糸として、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)成分とポリエチレンテレフタレート(PET)成分とがサイドバイサイド型に接合された複合繊維(総繊度56dtex/36fil、伸縮性マルチフィラメントA)を用いて、ウォータージェットルーム織機で2/2ツイル組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、非フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施した。
【0047】
かくして得られた織物において、目付け142g/m、経密度245本/2.54cm、緯密度180本/2.54cm、カバーファクターは経1900、緯1273、合計3137、経伸度1%、緯伸度20.0%、耐水圧510mmHO、引裂強度は経緯ともに7N以上、滑脱抵抗力3mm以下であり、耐水性だけでなくストレッチ性にも優れたストレッチ性高密度織物であった。
【0048】
[比較例1]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度110dtex/288fil)、緯糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度110dtex/288fil)を用いてウォータージェットルーム織機で平組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施したあとでカレンダー加工を施した。
【0049】
かくして得られた織物において、目付け167g/m、経密度167本/2.54cm、緯密度116本/2.54cm、カバーファクターは経1119、緯1160、合計2279、経伸度1%、緯伸度2%、耐水圧1050mmHO、引裂強度は経緯ともに10N以上、滑脱抵抗力3mm以下であり、耐水性は優れているがストレッチ性に劣る織物であった。
【0050】
[比較例2]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度44dtex/144fil)、緯糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度44dtex/144fil)をウォータージェットルーム織機で平組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施したあとでカレンダー加工を施した。
【0051】
かくして得られた織物において、目付け74g/m、経密度168本/2.54cm、緯密度145本/2.54cm、カバーファクターは経1064、緯917、合計1981、経伸度3%、緯伸度13.5%、耐水圧503mmHO、引裂強度は経緯ともに7N以上、滑脱抵抗力3mm以下であり、ストレッチ性に優れているが耐水性は劣る織物であった。
【0052】
[比較例3]
経糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度44dtex/144fil)、緯糸として、セミダルポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸(総繊度44dtex/144fil)をウォータージェットルーム織機で平組織織物を製織した。そして、該織物に分散染料で130℃×30分で染色加工を行い、非フッ素系撥水剤を用いて撥水加工を施したあとでカレンダー加工を施した。
【0053】
かくして得られた織物において、目付け68g/m、経密度168本/2.54cm、緯密度144本/2.54cm、カバーファクターは経1064、緯911、合計1975、経伸度3%、緯伸度9.5%、耐水圧321mmHO、引裂強度は経緯ともに7N以上、滑脱抵抗力3mm以下であり、ストレッチ性に優れているが耐水性は劣る織物であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、ストレッチ性だけでなく耐水性にも優れたストレッチ性高密度織物および繊維製品が得られ、その工業的価値は極めて大である。