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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024077173
(43)【公開日】2024-06-07
(54)【発明の名称】車両監視装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20240531BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20240531BHJP
【FI】
G06F11/07 178
G06F11/07 140R
G06F11/34 176
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189072
(22)【出願日】2022-11-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】菅原 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徳也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聖剛
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮介
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042GB08
5B042KK07
5B042MA08
5B042MA09
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】車両で発生する不特定の異常を監視可能とする。
【解決手段】車両監視装置10のプロセッサ11は、車載装置で発生したイベントのログ情報を取得することと、取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定することと、診断要と判定した場合に診断データを外部のサーバ26に送信することと、を行う。プロセッサ11がサーバ26に送信する診断データには、診断要との判定したログ情報と、診断要との判定前後に取得したログ情報と、が含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両監視装置であって、
車載装置で発生したイベントのログ情報を取得することと、
取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定することと、
診断要と判定した場合に診断データを外部のサーバに送信することと、
を行うプロセッサを有しており、
前記診断データには、診断要との判定したログ情報と、診断要との判定前に取得したログ情報と、が含まれる
車両監視装置。
【請求項2】
前記診断データには、診断要と判定後に取得したログ情報が含まれる請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、診断要との判定が2回行われ、かつ1回目の判定に応じて前記サーバに送信すべき第1の診断データと、2回目の判定に応じて前記サーバに送信すべき第2の診断データと、に重複するログ情報が含まれる状態となる場合、前記第1の診断データと前記第2の診断データをマージした単一の診断データを前記サーバに送信する請求項2に記載の車両監視装置。
【請求項4】
前記診断データは、既定期間に取得したログ情報の集合であり、前記既定期間は、診断要と判定したログ情報の取得時を基準に設定されている請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定し、かつマッチしたパターンにより前記既定期間を変更する請求項4に記載の車両監視装置。
【請求項6】
前記診断データは、イベントの発生順序が連続した既定数のログ情報の集合である請求項1に記載の車両監視装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定し、かつマッチしたパターンにより前記既定数を変更する請求項6に記載の車両監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両監視装置として、特許文献1に記載のシステムが知られている。この文献の車両監視装置は、車載装置で発生したイベントのログ情報を取得して診断の要否を判定する。そして、この車両監視装置は、診断要と判定したイベントのログ情報を外部のサーバに送信する。サーバは、受信したログ情報に基づいて、異常の有無を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-55558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイバー攻撃等の不特定の脅威による異常を監視の対象に含める場合、異常の疑いがあると判定されたイベントのログ情報だけでは、サーバが異常の有無を的確に診断できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する車両監視装置は、車両に搭載される。同車両監視装置は、車載装置で発生したイベントのログ情報を取得することと、取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定することと、診断要と判定した場合に診断データを外部のサーバに送信することと、を行うプロセッサを有している。診断データには、診断データには、診断要との判定したログ情報と、診断要との判定前に取得したログ情報と、が含まれている。
【0006】
不特定の脅威による車載装置の異常を監視の対象に含める場合、異常時に発生するイベントが不明確であるため、診断要と判定したイベントのログ情報だけでは、異常を的確に診断できない場合がある。異常時には、診断要と判定する前にも、不特定の脅威による異常時には、診断要と判定したログ情報の取得前にも、異常の兆候となるイベントが発生している場合がある。そのため、不特定の脅威により異常についても、異常の有無や種別を診断できる可能性が高くなる。したがって、上記車両監視装置には、既知ではない不特定の異常も監視できるようにするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の車両監視装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の車両監視装置が実行する監視ルーチンのフローチャートである。
図3】第2実施形態の車両監視装置が実行する監視ルーチンのフローチャートである。
図4】車両監視装置の変更例が実行する監視ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、車両監視装置の第1実施形態を、図1及び図2を参照して詳細に説明する。
<車両監視装置の構成>
図1に示すように、本実施形態の車両監視装置10を搭載した車両20は、複数の電子制御ユニット22が車載装置として設けられている。電子制御ユニット22は、車両20が有する車載コンピュータであり、プログラムを実行することで所定の機能を実現する。複数の電子制御ユニット22には、例えばエンジン制御機能を有する電子制御ユニット、変速制御機能を有する電子制御ユニット、操舵制御機能を有する電子制御ユニット、ブレーキ制御機能を有する電子制御ユニットが含まれる。各電子制御ユニット22は、車載ネットワーク21に接続されている。
【0009】
車両監視装置10は、車載ネットワーク21に接続されており、各電子制御ユニット22と相互にデータを送受信することが可能である。車両監視装置10は、プロセッサ11とストレージ12とを備えている。プロセッサ11は、プログラムを実行することで、車載装置の監視機能を実現する。ストレージ12は、監視に用いるデータを記憶する記憶装置である。
【0010】
各電子制御ユニット22には、セキュリティセンサ23が設置されている。セキュリティセンサ23は、設置された電子制御ユニット22において、異常の兆候となるイベントの発生を検知する。そして、セキュリティセンサ23は、そうしたイベントを検知すると、同イベントのログ情報を生成して車両監視装置10に送信する。ここでの異常には、車外からのサイバー攻撃により生じた異常が含まれる。イベントには、電子制御ユニット22が実行したプロセス、他の車載装置や車外の装置とのアクセス等が含まれる。セキュリティセンサ23が車両監視装置10に送信するログ情報には、イベントの種別を示す情報が含まれる。
【0011】
また、車両監視装置10は、無線通信装置24に接続されている。無線通信装置24は、移動体通信サービス等の無線通信網25を介して車外の装置との無線通信を行う装置である。無線通信装置24は、無線通信網25を介した、外部のデータセンタに設置されたサーバ26と車両監視装置10とのデータの送受信を実現する。
【0012】
<車載装置の監視動作>
次に、車両監視装置10による車両20の監視動作について説明する。
図2に、車両監視装置10のプロセッサ11が実行する監視ルーチンのフローチャートを示す。プロセッサ11は、各電子制御ユニット22のセキュリティセンサ23からログ情報を受信する毎に、同ルーチンを実行する。
【0013】
本ルーチンを開始すると、プロセッサ11は、まずステップS100において、受信したログ情報をストレージ12に格納する。プロセッサ11は、ログ情報の取得順に値が大きくなる通し番号を、ログ情報の識別子であるID番号として設定している。そして、プロセッサ11は、車載装置から受信したログ情報と共に、そのログ情報のID番号及び取得時刻をストレージ12に格納する。
【0014】
次のステップS110においてプロセッサ11は、ストレージ12に格納されたログ情報に基づいて診断の要否を判定する。この判定に際してプロセッサ11は、ストレージ12に格納したログ情報が示すイベントの発生パターンが、予め設定された複数のパターンのいずれかにマッチする場合に、診断要と判定している。
【0015】
プロセッサ11は、イベントの種別毎に、診断要との判断基準を設定している。プロセッサ11が診断要と判定する場合には、例えば以下の場合がある。下記のイベントA、イベントB、イベントC、イベントD、及びイベントEは、それぞれ異なる種別のイベントを表わしている。イベントAは、例えば正常時には殆ど発生することがないイベントである。イベントB、イベントCは、例えば正常時には、それぞれ個別に発生することがあるが、双方共に発生することは殆どないイベントである。イベントD及びイベントEは、例えば正常時にはあまり高い頻度で発生することがないイベントである。また、下記の「N」は任意の自然数を、下記の「M」は「N」よりも小さい任意の自然数を、それぞれ示している。
【0016】
・イベントAのログ情報を取得した場合。
・イベントB、イベントCの双方のログ情報を所定時間内に取得した場合。
・イベントDのログ情報を所定時間内に所定回数以上取得した場合。
・イベントEのログ情報を単位時間内に所定回数以上取得した状態が既定期間以上続いた場合。
・N種以上のイベントのログ情報を、所定時間内に取得した場合。
・M種以上のイベントのログ情報を、単位時間内に取得した状態が所定期間以上続いた場合。
【0017】
ステップS110において診断要と判定した場合(S120:YES)、プロセッサ11は、ステップS130に処理を進める。ステップS130において、プロセッサ11は、診断要と判定したログ情報を取得した時刻、すなわち現在の時刻Tを基準として、ログ情報の集約期間の開始時刻TS、及び終了時刻TEを設定する。具体的には、プロセッサ11は、時刻Tよりも既定時間TX前の時刻(T-TX)を、集約期間の開始時刻TSの値として設定する。また、プロセッサ11は、時刻Tよりも既定時間TY後の時刻(T+TY)を、集約期間の終了時刻TEの値として設定する。次いで、プロセッサ11は、ステップS140において、ログ情報の集約期間中であることを示すフラグFをセットした後、今回の本ルーチンの処理を終了する。なお、プロセッサ11は、診断要と判定したイベントの発生パターンにより、既定時間TX及び既定時間TYの値を変えている。
【0018】
一方、プロセッサ11は、ステップS110において診断不要と判定した場合(S120:NO)には、ステップS150に処理を進める。ステップS150においてプロセッサ11は、フラグFがセットされているか否かを、すなわちログ情報の集約期間中であるか否かを判定する。そして、プロセッサ11は、フラグFがセットされている場合(YES)にはステップS160に処理を進める。また、プロセッサ11は、フラグFがセットされていない場合(NO)には、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0019】
ステップS160においてプロセッサ11は、現在の時刻Tが、集約期間の終了時刻TE以降の時刻であるか否かを判定する。そして、プロセッサ11は、現在の時刻Tが、集約期間の終了時刻TE以降である場合(YES)にはステップS170に処理を進める。また、プロセッサ11は、現在の時刻Tが、集約期間の終了時刻TEよりも前の時刻である場合(NO)には、すなわち未だ集約期間中である場合には、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0020】
ステップS170においてプロセッサ11は、集約期間中に取得したログ情報を集約した診断データとしてサーバ26に送信する。より詳しくは、プロセッサ11は、ストレージ12に格納されたログ情報の中から、取得時刻が、開始時刻TS以降、かつ終了時刻TE以前のものを抽出する。そして、プロセッサ11は、抽出したログ情報を集約して診断データを生成している。すなわち、プロセッサ11は、診断要と判定したログ情報の取得時を基準に設定された既定期間である集約期間に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信している。その後、プロセッサ11は、ステップS180において、フラグFをクリアした後、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0021】
なお、サーバ26は、受信した診断データに基づいて、車両20の異常の有無や異常の種別を診断する。そして、サーバ26は、その診断の結果を車両監視装置10に送信する。さらに、異常有りと診断した場合には、サーバ26が、予め登録された車両20のユーザの携帯情報端末等に、ディーラへの車両20の入庫案内を通知するようにしてもよい。
【0022】
<実施形態の作用効果>
車両監視装置10は、車両20の監視のための処理を行うプロセッサ11を備えている。プロセッサ11は、車載装置で発生したイベントのログ情報を取得するとともに、取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定する。このときのプロセッサ11は、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定している。
【0023】
診断が必要と判定した場合、プロセッサ11は、診断データを外部のサーバ26に送信する。このときのプロセッサ11は、診断要と判定したログ情報に加えて、その前後の既定期間に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信する。すなわち、プロセッサ11がサーバ26に送信する診断データには、診断要との判定したログ情報と、診断要との判定前に取得したログ情報と、診断要との判定後に取得したログ情報と、が含まれている。サーバ26は、受信した診断データに基づいて車両20の異常診断を実施して、その結果を車両監視装置10に送信する。
【0024】
車両20で発生する異常には様々な種類がある。既知の異常については、異常時に生じる電子制御ユニット22等の挙動を予測できる。よって、セキュリティセンサ23が検知して車両監視装置10にログ情報を送信するイベントに、そうした異常時の挙動を含めれば、既知の異常は検知できる。
【0025】
一方、近年には、車両20が外部からのサイバー攻撃に曝される可能性が指摘されている。サイバー攻撃の方法は進化しており、電子制御ユニット22等に与える影響を前もって把握できない場合がある。このような不特定の脅威による異常については、異常時に発生するイベントを前もって把握し切れないことが多い。ただし、不特定の脅威による異常が発生した場合、電子制御ユニット22等が正常時と異なる挙動を示すことがあり、そうした挙動を傍証として異常が発生している可能性があると判断することはできる。本実施形態の場合、各電子制御ユニット22のセキュリティセンサ23が車両監視装置10にログ情報を送信するイベントとして、異常の傍証となる挙動を含めている。そして、プロセッサ11は、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定している。これにより、不特定の脅威による異常であっても、診断要と判定できる可能性が高くなる。
【0026】
なお、不特定の脅威による異常の場合、その異常時にどのようなイベントが発生するか明らかでない。そのため、診断要と判定したイベントのログ情報だけでは、異常診断を適切に実施できない場合がある。ただし、そうした場合の車両20では、診断要と判定したイベント以前にも、異常の兆候となるイベントが発生していることがある。そのため、プロセッサ11は、異常診断のためにサーバ26に送信する診断データに、診断要と判定したイベントのログ情報に加えて、診断要と判定したログ情報の取得前に取得したログ情報も含めている。また、そうした場合、診断要と判定したイベントの以降にも、異常の兆候となるイベントが発生している可能性がある。そのため、プロセッサ11は、診断データに、診断要と判定したログ情報の取得後に取得したログ情報も含めている。そのため、サーバ26での異常診断において、不特定の脅威による異常についても診断できる可能性が高くなる。
【0027】
上記のようにプロセッサ11は、診断要と判定した場合、診断要と判定したログ情報の取得時を基準に設定した集約期間中に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信している。異常の種類によっては、サーバ26での異常診断に、長期間のイベントのログ情報を必要とするものがある。また、診断要と判定するイベントの発生パターンには、最終的に診断要と判定する時点よりも以前に発生したイベントを含むものがある。そのため、診断要と判定したイベントの発生パターンに拘わらず、一律の期間のログ情報を診断データとして生成した場合には、診断データに含めるログ情報に過不足が生じる場合がある。これに対してプロセッサ11は、診断要と判定したイベントの発生パターンによって、既定時間TX及び既定時間TYを変えている。すなわち、プロセッサ11は、診断要と判定したイベントの発生パターンにより、診断データとしてサーバ26に送信するログ情報の集約期間を変更している。そのため、サーバ26での診断処理に供するログ情報に過不足が生じ難くなる。
【0028】
以上の本実施形態の車両監視装置10によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)車両監視装置10のプロセッサ11は、電子制御ユニット22で発生したイベントのログ情報を取得するとともに、取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定する。そして、プロセッサ11は、診断要と判定した場合に診断データを外部のサーバ26に送信する。診断データには、診断要と判定したログ情報と、診断要との判定前に取得したログ情報と、が含まれている。不特定の脅威による異常については、診断要と判定したログ情報だけでは、診断が難しい場合がある。不特定の脅威による異常時には、診断要と判定したログ情報の取得前にも、異常の兆候となるイベントが発生している場合がある。そのため、不特定の脅威により異常についても、異常の有無や種別を診断できる可能性が高くなる。
【0029】
(2)プロセッサ11は、サーバ26に送信する診断データに、診断要と判定したログ情報の取得後に取得したログ情報も含めている。不特定の脅威による異常時には、診断要と判定したログ情報の取得後にも、異常の兆候となるイベントが発生する場合がある。そのため、不特定の脅威により異常についても、異常の有無や種別を診断できる可能性が更に高くなる。
【0030】
(3)プロセッサ11は、診断要と判定したログ情報の取得時を基準として、その取得の前後の期間を集約期間として設定している。そして、プロセッサ11は、その集約期間に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信している。これにより、診断要と判定したログ情報、その判定前及び判定後にそれぞれ取得したログ情報を含む診断データを生成できる。
【0031】
(4)プロセッサ11は、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定している。そして、プロセッサ11は、診断要と判定したイベントの発生パターンにより、診断データとしてサーバ26に送信するログ情報の集約期間を変えている。そのため、異常診断に用いるログ情報に過不足が生じ難くなる。
【0032】
(5)車両監視装置10が送信した診断データに基づいて、外部のデータセンタに設置されたサーバ26において異常診断を行っている。そのため、車両20では負荷が高いために困難な異常診断を行える。また、車両20の製造後に新たに判明した情報に基づいて異常診断を行える。
【0033】
(第2実施形態)
次に、車両監視装置の第2実施形態を、図3を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の車両監視装置10のハードウェア構成は、図1に示した第1実施形態の車両監視装置10の構成と共通している。
【0034】
<第2実施形態の監視ルーチン>
図3に、本実施形態の車両監視装置10のプロセッサ11が実行する監視ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンと図2のルーチンとは、ステップS120での診断要との判定後の処理が相違している。すなわち、本ルーチンのステップS100~ステップS120は、図2と共通している。なお、図3では、ステップS120で診断不要と判定した場合(NO)の処理については省略しているが、その場合には図2のステップS150~ステップS180の処理が行われる。
【0035】
本ルーチンにおいてプロセッサ11は、ステップS110の判定で診断要と判定した場合(S120:YES)、ステップS125に処理を進める。ステップS125においてプロセッサ11は、フラグFがセットされているか否かを判定する。上述のようにフラグFは、診断データとしてサーバ26に診断データとして送信するログ情報の集約期間中であるか否かを示すフラグである。よって、ここでフラグFがセットされている場合は、今回の診断要との判定以前にも、診断要と判定されており、かつその判定に応じたログ情報の集約期間中である場合である。
【0036】
フラグFがセットされていない場合(S125:NO)、プロセッサ11は、ステップS130においてログ情報の集約期間の開始時刻TS、及び終了時刻TEを設定する。そして、プロセッサ11は、ステップS140において、ログ情報の集約期間中であることを示すフラグFをセットした後、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0037】
一方、フラグFがセットされている場合(S125:YES)、プロセッサ11は、ステップS135において、現在の時刻Tを基準として、ログ情報の集約期間の終了時刻TEを再設定する。詳しくは、ステップS135においてプロセッサ11は、現在の時刻Tよりも既定時間TY後の時刻(T+TY)を、集約期間の終了時刻TEの値として設定し直す。そして、プロセッサ11は、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0038】
<第2実施形態の作用効果>
第1実施形態の場合と同様に本実施形態のプロセッサ11は、診断要と判定すると(S120:YES)、その前後の期間に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信する。こうした診断データとしてサーバ26に送信するログ情報の集約期間中に、再び診断要との判定がなされる場合がある。このとき、プロセッサ11が、2回の診断要の判定に対して、それぞれ個別に診断データを送信するものとする。このときの1回目の判定に応じてプロセッサ11がサーバ26に送信する診断データを第1の診断データとする。また、2回目の判定に応じてプロセッサ11がサーバ26に送信する診断データを第2の診断データとする。このとき、第1の診断データと第2の診断データとには、重複するログ情報が含まれることになる。
【0039】
このときの2回の判定は、近い時期に行われており、共通の原因によるものである可能性が高い。それにも拘わらず、上記の場合、サーバ26には診断データが2回送信される。また、2回の診断データには、重複するログ情報が含まれる。そのため、上記の場合には、サーバ26へのデータ送信量が増加する。また、サーバ26では、それぞれの診断データに対して個別に異常診断を実施するため、サーバ26の負荷も増加する。
【0040】
これに対して、本実施形態のプロセッサ11は、第1の診断データに含めるログ情報の集約期間中に2回目の診断要との判定が行われた場合、その2回目の診断要と判定に関わったログ情報の取得時を基準として、集約期間の終了時刻TEを更新する。すなわち、プロセッサ11は、集約期間の開始時刻TSは、1回目の判定時に設定した時刻を維持したまま、集約期間の終了時刻TEは、2回目の判定に応じた時刻に変更している。これにより、プロセッサ11は、本来であれば、2回の判定に応じてそれぞれ個別にサーバ26に送信すべき第1及び第2の診断データをマージした単一の診断データを生成してサーバ26に送信している。そのため、サーバ26への診断データの送信回数が減る。また、サーバ26への重複したログ情報の送信も回避できる。よって、本実施形態の車両監視装置10には、サーバ26へのデータ送信量の増加を抑える効果がある。さらに、診断データの送信回数と共にサーバ26で実施する診断の回数も減る。そのため、本実施形態の車両監視装置10には、サーバ26の負荷を抑える効果もある。
【0041】
(他の実施形態)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
<診断データのためのログ情報の集約方法>
上記実施形態では、プロセッサ11は、診断要と判定したログ情報の取得時を基準として、その取得前後の既定期間を集約期間に設定していた。そして、プロセッサ11は、集約期間中に取得したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信していた。プロセッサ11が、イベントの発生順序が連続した既定数のログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信するようにしてもよい。すなわち、ログ情報を取得した期間ではなく、ログ情報の数で、診断データとしてサーバ26に送信するログ情報の量を規定するようにしてもよい。
【0043】
図4に、そうした場合の図2の監視ルーチンの変更例を示す。プロセッサ11は、図2のルーチンと同様に、ログ情報の受信毎に本ルーチンを実行している。図4のルーチンにおいて、プロセッサ11は、診断要と判定した場合、診断要と判定したログ情報と、その判定前に取得した「P」個のログ情報と、その判定後に取得した「Q」個のログ情報と、の集合を診断データとしてサーバ26に送信する。
【0044】
本ルーチンを開始すると、プロセッサ11はステップS200において、受信したログ情報をストレージ12に格納する。このとき、プロセッサ11は、ログ情報の取得順に値が大きくなる通し番号であるID番号と共に、受信したログ情報をストレージ12に格納する。以下の説明では、今回の本ルーチンの実行時に格納するログ情報のID番号を最新ログ番号LNと記載する。
【0045】
次のステップS210においてプロセッサ11は、ストレージ12に格納されたログ情報に基づいて診断の要否を判定する。診断要と判定した場合(S220:YES)、プロセッサ11は、ステップS230に処理を進める。ステップS230において、プロセッサ11は、最新ログ番号LNを、基準ログ番号LSの値として設定する。次にプロセッサ11はステップS240においてフラグFをセットした後、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS210において診断不要と判定した場合(S220:NO)、プロセッサ11はステップS250に処理を進める。ステップS250においてプロセッサ11は、フラグFがセットされているか否かを判定する。フラグFがセットされていない場合(NO)には、プロセッサ11はそのまま今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0047】
これに対してフラグFがセットされている場合(S250:YES)、プロセッサ11はステップS260に処理を進める。ステップS260において、プロセッサ11は、基準ログ番号LSに「Q」を加算した値を求めるとともに、最新ログ番号LNがその求めた値以上であるか否かを判定する(LN≧LS+Q)。その求めた値よりも最新ログ番号LNが小さい場合(NO)には、プロセッサ11は、そのまま今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS260において肯定判定した場合(YES)にはプロセッサ11はステップS270において、ID番号が「LS-P」から「LS+Q」までのログ情報をストレージ12から抽出する。さらに、ステップS270において、プロセッサ11は、抽出したログ情報の集合を診断データとしてサーバ26に送信する。そして、プロセッサ11は、ステップS280においてフラグFをクリアした後、今回の本ルーチンの処理を終了する。
【0049】
図3の監視ルーチンも、同様に変更できる。例えば、図3のステップS130及びステップS135をそれぞれ、図4のステップS230の処理に置き換える。そして、図3のステップS110において診断不要と判定した場合(S120:NO)に処理を進める先を、図4のステップS250とする。
【0050】
なお、こうした場合のプロセッサ11が、診断要と判定したイベントの発生パターンに応じて「P」及び「Q」の値を変えるようにしてもよい。そうした場合、上記実施形態において「TX」及び「TY」を可変値とした場合と同様に、異常診断に用いるログ情報に過不足が生じ難くなるという効果が得られる。
【0051】
<診断データのためのログ情報の集約範囲>
・プロセッサ11が診断データに含めるログ情報に、診断要との判定後に取得したログ情報を含めないようにしてもよい。すなわち、プロセッサ11が、診断要と判定したログ情報と、その判定前に取得したログ情報と、を診断データとしてサーバ26に送信するようにしてもよい。
【0052】
・プロセッサ11が診断データとしてサーバ26に送信するログ情報の集約期間や個数を、診断要と判定したイベントの発生パターンに拘わらず、固定した期間、数としてもよい。
【0053】
<その他>
・電子制御ユニット22以外の車載装置を、車両監視装置10の監視対象に含めるようにしてもよい。例えば、画像や音声等により乗員に情報や娯楽を提供する車載インフォテイメント装置や、車載ネットワーク21に設置されたデータ中継装置等を、車両監視装置10が監視の対象とする車載装置に含めることができる。
【0054】
図2図4の監視ルーチンにおけるストレージ12へのログ情報の格納後の処理を、ログ情報の受信毎に逐次実行する代わりに、既定の時期にバッチ処理として纏めて行うようにしてもよい。すなわち、プロセッサ11は、既定の時期となるまでは、受信したログ情報のストレージ12への格納処理(図2及び図3のS100、図4のS200)を監視ルーチンの処理として実行する。そして、既定の時期にプロセッサ11は、ストレージ12に格納したログ情報のそれぞれに対して、図2図4の診断の要否判定(図2及び図3のS120、図4のS220)以降の処理を順次実行する。
【0055】
(付記事項)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[付記1]車両に搭載される車両監視装置であって、車載装置で発生したイベントのログ情報を取得することと、取得したログ情報に基づいて診断の要否を判定することと、診断要と判定した場合に診断データを外部のサーバに送信することと、を行うプロセッサを有しており、前記診断データには、診断要との判定したログ情報と、診断要との判定前に取得したログ情報と、が含まれる車両監視装置。
【0056】
[付記2]前記診断データには、診断要と判定後に取得したログ情報が含まれる[付記1]に記載の車両監視装置。
[付記3]前記プロセッサは、診断要との判定が2回行われ、かつ1回目の判定に応じて前記サーバに送信すべき第1の診断データと、2回目の判定に応じて前記サーバに送信すべき第2の診断データと、に重複するログ情報が含まれる状態となる場合、前記第1の診断データと前記第2の診断データをマージした単一の診断データを前記サーバに送信する[付記2]に記載の車両監視装置。
【0057】
[付記4]前記診断データは、既定期間に取得したログ情報の集合であり、前記既定期間は、診断要と判定したログ情報の取得時を基準に設定されている[付記1]~[付記3]のいずれかに記載の車両監視装置。
【0058】
[付記5]前記プロセッサは、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定し、かつマッチしたパターンにより前記既定期間を変更する[付記4]に記載の車両監視装置。
【0059】
[付記6]前記診断データは、イベントの発生順序が連続した既定数のログ情報の集合である[付記1]~[付記3]のいずれかに記載の車両監視装置。
[付記7]前記プロセッサは、取得したログ情報が示すイベントの発生パターンが、複数のパターンのいずれかにマッチする場合に診断要と判定し、かつマッチしたパターンにより前記既定数を変更する[付記6]に記載の車両監視装置。
【符号の説明】
【0060】
10 車両監視装置
11 プロセッサ
12 ストレージ
20 車両
21 車載ネットワーク
22 電子制御ユニット(車載装置)
23 セキュリティセンサ
24 無線通信装置
25 無線通信網
26 サーバ
図1
図2
図3
図4